(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20230802BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20230802BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G21C17/00 500
G08B21/24
A61G12/00 B
(21)【出願番号】P 2020011420
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】500216466
【氏名又は名称】住重アテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝秀
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-124982(JP,U)
【文献】特開昭58-045597(JP,A)
【文献】特開昭61-173185(JP,A)
【文献】特開2007-241669(JP,A)
【文献】特開2008-243133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0353817(US,A1)
【文献】上蓑 義朋,II. 理研RIビームファクトリーの放射線管理,RADIOISOTOPES,日本,日本アイソトープ協会,2008年04月25日,Vol. 57, No. 4,pp. 261-266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
G08B 21/24
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線管理区域内で使用されるべき専用履物が放射線管理区域の出入口を通過することを検知する検知装置と、
前記出入口の通過が検知された専用履物の装用者に向けて警告する警告装置と、を備え
、
前記警告装置は、前記専用履物に設けられ、音、光および振動の少なくとも一つを用いて警告することを特徴とする管理システム。
【請求項2】
放射線管理区域内で使用されるべき専用履物が放射線管理区域の出入口を通過することを検知することと、
前記出入口の通過が検知された専用履物の装用者に向けて警告することと、を備え
、
前記警告は、前記専用履物に設けられる警告装置によって、音、光および振動の少なくとも一つを用いてなされることを特徴とする管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線管理区域の管理システムおよび管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を使用する医療機関や研究機関などでは、放射性物質を取り扱うための放射線管理区域が設定され、管理区域外に放射性物質が拡散しないように対策が講じられる。例えば、管理区域内のみで使用する専用靴を用意し、管理区域内に入るときに専用靴に履き替え、管理区域から出るときに専用靴を脱ぐことで、専用靴に付着する放射性物質の拡散または飛散が防止される。また、管理区域の出入口には、靴を履き替えるためのスノコが用意される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療機関では、検査のために車椅子やベッドに乗せた状態の患者を管理区域に搬入したり、患者の転倒を防止したりする観点から、管理区域の出入口にスノコや段差などの障害を設けることが難しい。管理区域の出入口となる境界に障害がない場合、管理区域の境界が見過ごされ、患者や医療従事者が専用の履物を履き替えずに管理区域外に退出してしまうことがある。そうすると、履物を介して管理区域外が放射性物質で汚染されるおそれが生じる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、放射線管理区域内で使用される専用履物を適切に管理する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の管理システムは、放射線管理区域内で使用されるべき専用履物が放射線管理区域の出入口を通過することを検知する検知装置と、出入口の通過が検知された専用履物の装用者に向けて警告する警告装置と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、管理方法である。この方法は、放射線管理区域内で使用されるべき専用履物が放射線管理区域の出入口を通過することを検知することと、出入口の通過が検知された専用履物の装用者に向けて警告することと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線管理区域内で使用される専用履物が管理区域外に出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る管理システムが設置される放射線管理区域を模式的に示す図である。
【
図2】管理区域で使用される専用履物を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る管理システム10が設置される放射線管理区域20を模式的に示す図である。放射線管理区域20(単に管理区域20ともいう)は、放射性物質が取り扱われる場所であり、例えば、病院などの医療機関、大学や企業などの研究機関に設けられる。管理区域20の使用目的は特に問わないが、本実施の形態では、患者に放射性物質(非密封線源)を医薬品として投与し、放射線を用いて検査や治療をする核医学診療のための管理区域20を例示して説明する。
【0013】
管理区域20は、
図1において太線で囲われる領域である。管理区域20は、例えば放射線を遮蔽可能な遮蔽壁により囲われている。管理区域20は、汚染検査室21、居室22、処置室23、検査室24、除染室25、準備室26および廃棄物保管室27といった複数の部屋を有する。管理区域20の出入口30は、汚染検査室21に設けられており、管理区域20への立ち入りおよび管理区域20からの退出は、出入口30にてなされる。したがって、管理区域20は、出入口30を通らなければ、管理区域20に出入りすることが原則できないように構成されている。また、管理区域20の汚染検査室21以外の部屋22~27は、汚染検査室21を通らなければ出入りできないように構成されている。なお、
図1の廃棄物保管室27には搬出口32が設けられているが、これは廃棄物保管室27で保管される廃棄物を搬出するための出入口であり、管理区域20に出入りするためのものではない。
【0014】
管理区域20の出入口30は、いわゆるバリアフリー構造となっており、段差やスノコといった障害物が存在しないように構成される。出入口30をバリアフリー構造とすることで、車椅子やベッドに乗せた状態の患者を管理区域20に搬入することが容易となり、管理区域20に徒歩で立ち入る患者等が段差などで転倒してしまうことを防止できる。管理区域20の出入口30には、管理区域20の境界を示すライン表示が設けられてもよく、例えば黄色の区画線が引かれてもよい。
【0015】
汚染検査室21の出入口30の近くには、下駄箱28が設置されている。下駄箱28には、管理区域20の内部でのみ使用されるべき専用履物が収納されている。専用履物は例えばスリッパや靴であり、放射線管理区域で使用されることを示す放射能標識が付されている。出入口30を通じて管理区域20に立ち入る場合、管理区域外で使用する通常の履物を脱いで専用履物に履き替える。また、管理区域20から退出する場合、管理区域20の内部で使用した専用履物を脱いで管理区域外で使用する通常の履物に履き替える。
【0016】
管理区域20では、非密封線源である放射性物質を含む医薬品が使用され、医薬品を準備する際や医薬品を患者に投与する際に微量の放射性物質が飛散することがある。飛散した放射性物質は、重力などの影響により落下して管理区域20の床に付着する。したがって、管理区域20で使用される履物は、床に付着した放射性物質により汚染される可能性がある。履物を介して管理区域外が放射性物質で汚染されることを防止するため、管理区域20のみで使用される専用履物が用意される。
【0017】
図2は、管理区域20で使用される専用履物40を模式的に示す図である。
図2に示される専用履物40は、スリッパである。専用履物40は、管理区域20で使用されることが特定しやすいように着色されており、例えばスリッパ全体が黄色に着色されている。また、専用履物40には放射能標識42が付与されている。放射能標識42の色は赤色や黒色である。専用履物40には、無線タグ44が設けられる。無線タグ44は、専用履物40の内部に埋め込まれており、例えばスリッパの踵の内部に埋め込まれている。無線タグ44は、専用履物40の表面や内面に貼り付けされてもよいし、専用履物40のソールに埋め込まれてもよい。
【0018】
図1に戻り、管理区域20の出入口30には、管理システム10が設置される。管理システム10は、専用履物40の装用者が専用履物40を履いたまま管理区域20の外に退出しようとする場合に装用者に警告するよう構成される。管理システム10は、専用履物40の通過を検知する検知装置12と、専用履物40の通過が検知された場合に装用者に警告する警告装置14とを備える。
【0019】
検知装置12は、専用履物40に設けられる無線タグ44を無線(電波)を用いて検知する。検知装置12は、管理区域20の内部であって管理区域20の出入口30の近くに設けられる。検知装置12は、無線信号を出力するゲートを備え、ゲートを通過する無線タグ44を検知することで専用履物40の通過を検知する。検知装置12は、床面または床の内部に設置されてもよく、検知装置12が設置される床の上を無線タグ44が通過することを検知してもよい。検知装置12は、主に管理区域20の内から外への通過を検知する。検知装置12は、管理区域20の外から内への通過を検知してもよいし、管理区域20の外から内への通過を検知しないように構成されてもよい。
【0020】
警告装置14は、検知装置12による検知結果に基づいて、音、光および表示の少なくとも一つを用いて警告をする。警告装置14は、管理区域20の内部であって管理区域20の出入口30の近くに設けられる。警告装置14は、検知装置12によって専用履物40の出入口30の通過が検知された場合、所定の警告動作を実行する。警告装置14は、出入口30に設けられるスピーカに「ピー」といった警告音を出力させるよう構成されてもよい。警告装置14は、出入口30に設けられるランプを点灯または点滅させて発光により警告するよう構成されてもよい。警告装置14は、履物の交換を促す警告をしてもよく、例えば、「履物を交換してください」といったメッセージを音声出力したり、出入口30に設けられる液晶ディスプレイなどの表示装置にメッセージを表示したりしてもよい。警告装置14は、音声、発光および表示の二つ以上を組み合わせて警告動作を実行してもよい。
【0021】
つづいて、管理システム10の動作について説明する。検知装置12は、管理区域20の出入口30を専用履物40が通過するか否かを検知する。検知装置12が専用履物40の通過を検知した場合、警告装置14は、所定の警告動作を実行する。具体的には、専用履物40を履いたまま管理区域20の外に退出しようとする人に対して音声、発光または表示などにより警告をする。これにより、専用履物40を履いたままの人が下駄箱28で履物を履き替えることを促し、管理区域20の外に専用履物40が持ち出されることを防止する。
【0022】
管理区域20の出入口30は、例えば常時施錠されるなどして厳重に管理されることが望ましい。しかしながら、多くの患者に対して核医学診療がなされるような病院では、管理区域20に患者や医療従事者が出入りする回数が多く、利便性等の観点から出入りのたびに出入口30を施錠することが難しい場合がある。また、病院の規模によっては、出入口30に扉が設けられていない場合や、出入口30に扉があったとしても常時開放されているような場合もある。その結果、管理区域20の境界が見過ごされ、専用履物40を履いたまま管理区域20の外にうっかり退出してしまうことがまれではあるが発生しうる。本実施の形態によれば、管理区域20の出入口30に管理システム10を設置することで、管理区域20への出入りの利便性を阻害することなく、専用履物40が管理区域20の外に持ち出されることを防止できる。
【0023】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0024】
上述の実施の形態では、無線タグを用いて専用履物40の通過を検知する場合について示した。別の実施の形態では、出入口30をカメラで撮像し、出入口30の状況を画像認識技術を用いて解析することで専用履物40の通過を検知してもよい。例えば、出入口30を撮像した映像に放射能標識42が付与された専用履物40が含まれるか否かを検知し、専用履物40が管理区域20の出入口30に設けられる境界線を通過するか否かを検知してもよい。この場合、検知装置は、専用履物40を装用する人物を画像解析技術を用いて特定するよう構成されてもよい。
【0025】
上述の実施の形態では、検知装置12および警告装置14の双方が管理区域20の建屋に設けられる場合について示した。別の実施の形態では、検知装置および警告装置の少なくとも一方が専用履物に設けられてもよい。例えば、出入口30の通過を検知する検知装置を専用履物に設けてもよく、出入口30に設けられるゲートから出力される無線信号や光信号などを専用履物に設けられるセンサで検知してもよい。また、警告装置が専用履物に設けられてもよい。この場合、警告装置が音や光を発するように構成されてもよいし、警告装置に設けられる振動モータを駆動することで専用履物を振動させて警告するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…管理システム、12…検知装置、14…警告装置、20…管理区域、30…出入口、40…専用履物。