(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】反射光学素子を製造する方法、反射光学素子および反射光学素子の使用
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230802BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B5/10 C
G02B5/10 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022028436
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2020048144の分割
【原出願日】2016-01-18
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】102015100918.8
(32)【優先日】2015-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】マルクス バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ビンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー アンデレル
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-053687(JP,A)
【文献】特開2005-259949(JP,A)
【文献】特表2013-522889(JP,A)
【文献】特開平06-308294(JP,A)
【文献】特開2011-238904(JP,A)
【文献】特表2013-542582(JP,A)
【文献】特開昭61-042978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0122429(US,A1)
【文献】特開2005-004145(JP,A)
【文献】米国特許第06822251(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
H05G 2/00
G02B 5/10、6/42
H01S、H01L、B23K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光学素子であって、基板(12)と、前記基板(12)の第1表面上(36)に配置された、少なくとも1つのガルバニック層からなるオーバーコート(16)と、流体を受容する少なくとも1つの空洞(14)と、を備え、前記少なくとも1つのガルバニック層の材料は導電性を有し、
i)前記基板(12)の材料は導電性を有し、且つ/または、
ii)導電層が、前記基板(12)と前記オーバーコート(16)との間に配置される
反射光学素子であって、
前記少なくとも1つの空洞(14)は、前記第1表面(36)に隣接して配置され、前記オーバーコート(16)は、前記少なくとも1つの空洞(14)上にも延在し、および前記少なくとも1つの空洞(14)には、前記オーバーコート(16)の材料が無く、前記オーバーコート(16)において、前記基板(12)から反対を向いた表面(46)上に配置された、少なくとも1つの反射層(18)を備え、該少なくとも1つの反射層(18)は、光学有効面(20)を備え
、
さらに、前記少なくとも1つの空洞(14)は、少なくとも1つの開口(38)を備え、該開口(38)は、前記反射層(18)の前記光学有効面(20)につながる、反射光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の反射光学素子であって、前記少なくとも1つの空洞(14)は、1つまたは複数のチャネル(22、24、26、28、30、32、34)の形状である反射光学素子。
【請求項3】
請求項2に記載の反射光学素子であって、前記チャネル(22、24、26、28、30、32、34)は、数マイクロメートルから約1ミリメートルの範囲にある、幅を有する反射光学素子。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の反射光学素子であって、
前記基板(12)は、鋼、銅合金、および/またはアルミニウム‐シリコンを含む反射光学素子。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか一項に記載の反射光学素子であって、
前記オーバーコート(16)は、銅、ニッケル、および/またはリンを含むニッケル(NiP)を含む反射光学素子。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の反射光学素子であって、
前記基板(12)の材料および
前記オーバーコート(16)の材料は、少なくとも略同一の熱膨張係数を有する反射光学素子。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の反射光学素子であって、
前記オーバーコート(16)の材料は、
前記基板(12)の材料の熱膨張係数を上回る熱膨張係数を有する反射光学素子。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の反射光学素子であって、
前記オーバーコート(16)は、均一な厚さを有するか、または
前記基板(12)の
前記第1表面(36)に亘って変化する厚さを有する反射光学素子。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか一項に記載の反射光学素子(10)の使用であって、VUV、EUVスペクトル領域、もしくは更なる短波スペクトル領域におけるアプリケーション用の光学系(100)におけるミラーとしての使用、または高強度光で材料を処理するための使用。
【請求項10】
請求項1~
8の何れか一項に記載の反射光学素子(10)の使用であって、EUVマイクロリソグラフィ用の光学系(100)におけるコレクタミラーとしての使用。
【請求項11】
請求項1~
8の何れか一項に記載の反射光学素子(10)の使用であって、光学系において光学補償器および/または光学マニピュレータとして使用され、
前記少なくとも1つの空洞(14)は、
前記光学有効面(20)の不所望な変形を補償するため、または
前記光学有効面(20)において所望される変形を生じさせるために、可変の圧力を受ける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年1月22日付けで出願された独国特許出願第10 2015 10
0 918.8号の優先権を主張する。本願は、上記独国出願の全内容を、参照により本
出願に援用する。
【0002】
本発明は、光と相互作用する光学有効面および流体を受容する少なくとも1つの空洞を
備える、反射光学素子を製造する方法に関する。
【0003】
本発明は更に、そうした反射光学素子に関する。
【0004】
最後に本発明は、そうした反射光学素子の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
高い光強度で作動する、および/またはVUVまたはEUVスペクトル領域のような著
しい短波スペクトル領域の光で作動する光学系で使用される反射光学素子は、作動の間に
高い熱負荷を受ける。反射光学素子の例として、例えば切断、穿孔、溶接、ハンダ付けま
たは溶解のために、非常に高いレーザパワーを有するレーザ光で材料を処理する光学系で
、使用される反射光学素子がある。反射光学素子の更なる例として、著しい短波スペクト
ル領域、特にEUV領域、またはX線領域においてさえ使用される光学系で使用される反
射光学素子がある。具体例としては、マイクロリソグラフィ投影露光装置のEUV光源で
使用されるコレクタミラーがある。
【0006】
こうした反射光学素子の光学特性を損ねる可能性のある、またはこうした反射光学素子
の寿命を短くする可能性のある高い熱負荷のために、このような反射光学素子を、例えば
ガス状流体、または例えば水である液状流体で、積極的に冷却する必要がある。この目的
を達成するために、通常は1つまたは複数のチャネルの形状である、少なくとも1つの空
洞を、該当する反射光学素子に成形する。流体は、光学素子から熱を取り去るために、こ
のチャネルを貫流する。
【0007】
しかしながら、本発明による反射光学素子において、少なくとも1つの空洞は冷媒を導
く目的に限定されない。
【0008】
少なくとも1つの空洞が光学素子に一体化された反射光学素子を製造可能な、多数の製
造方法が提案されている。
【0009】
独国特許出願公開第10 2005 053 415号明細書は、EUVアプリケーシ
ョン用のコレクタの個々のミラーシェルを製造する方法を開示する。上記方法においては
、先ずミラーシェルにおいて、光学有効面を有する光学層が、コアに対してガルバニック
的に付与される。および続いて、この層に対して、所望の厚みに達するまで、基板がガル
バニック的に付与される。コアが除去された後、光学層から反対側を向いた基板の表面か
ら、基板内へ、空洞が成形される。空洞はその後、導電性材料で充填される。およびそれ
に続いて、空洞には、基板の空いた表面側に最上層が施される。事前にチャネル内に導入
されていた充填剤は、続いて、例えば溶剤または加熱により、再び除去される。
【0010】
この製造方法の欠点は、少なくとも1つの空洞を基板内に、後で導入すること、すなわ
ち、基板に光学有効層に施された後に、空洞を導入することである。これにより、光学層
の光学特性が損なわれる可能性がある。例えば、光学層が工程において、不所望に変形す
る可能性がある。
【0011】
既知の製造方法の更なる実施形態においては、チューブ形状のプレハブ製造された冷却
ラインを、ミラーシェルの光学層の後ろ側に、例えばハンダ付け、電気めっき等で取り付
けることが提案されている。こうした方法は、比較的複雑である。
【0012】
少なくとも1つの空洞を反射光学素子内に導入する、更なる従来の方法は、独国特許出
願公開第10 2010 034 476号明細書、または米国特許第6,792,01
6号明細書が開示する。これらの方法においては、反射光学素子を2つのシェル、すなわ
ち基部と頂部から製造し、それらをハンダ付けまたは接着剤結合等で接続する。少なくと
も1つの空洞は、2つのシェルの何れか一方に導入された。大面積の光学素子においては
、このような場合、特に、すくなくとも1つの空洞内の流体が圧力下にあり、および光学
素子が真空状態で作動される際に、2つのシェルが作動の間に、少なくとも部分的に、互
いに分離するリスクがある。
【0013】
米国特許出願公開第2006/0227826号明細書は、光学素子が製造された後に
、径方向に導かれた孔として、冷却チャネルを反射光学素子の基板内に導入する方法を開
示する。
【0014】
従来技術から既知の、流体を受容する少なくとも1つの空洞を備える反射光学素子を製
造する、全ての方法は、以下の欠点を有する。つまり、それらの方法は、複雑であり、お
よび球面、非球面、自由形状であるべき高精度の光学有効面に求められる要求に対応して
いない。またはそれらの方法は、複雑な方法で高価な工具により機械加工可能な材料の使
用を要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】独国特許出願公開第10 2005 053 415号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2010 034 476号明細書
【文献】米国特許第6,792,016号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0227826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、当初に記載した種類の反射光学素子を製造する方法を提供する、という課題
に基づく。この方法により、少なくとも部分的に上述の欠点が回避され、特に複雑性が低
減され、および特に非球面または自由曲面の、光学有効面として望ましい任意の形状の表
面に、容易に対応可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様により、本発明は、光と相互作用する光学有効面および流体を受容する少な
くとも1つの空洞を備える、反射光学素子を製造する方法を提供する。方法は:
a)第1材料からなる基板を提供するステップと、
b)少なくとも1つの空洞を、基板の第1表面から基板内に導入するステップと、
c)すくなくとも1つの空洞を、第2材料で充填するステップと、
d)オーバーコートを第1表面に、少なくとも1つの空洞の領域においてさえ付与する
ステップであって、少なくとも1つの第3材料からなる、少なくとも1つの層を、ガルバ
ニック的および/または化学的に堆積させることにより、前記オーバーコートを付与する
ステップと、
e)第2材料を、少なくとも1つの空洞から出して空にするステップと、
f)少なくとも1つの反射層をオーバーコートに付与するステップであって、ステップ
e)の前、またはステップe)の後に実行するステップf)と、を含む。
【0018】
従って、本発明による製造方法において、少なくとも1つの空洞が、例えば基板を機械
加工することにより基板内に導入される。および空洞の導入の後でのみ、反射光学素子の
製造が継続される。反射光学素子の光学構造は、少なくとも1つの空洞が基板内に導入さ
れた側にある少なくとも基板のオーバーコート、およびオーバーコートに付与された少な
くとも1つの反射層、を備える。これにより、特許文献1である独国特許出願公開第10
2005 053 415号明細書から既知の方法に対して、以下の利点が生じる。つ
まり、オーバーコートおよび少なくとも1つの反射層からなる光学構造が、少なくとも1
つの空洞を基板内に導入することから悪影響を受けない。なぜなら当該空洞は、既に作成
されているためである。第2材料を、少なくとも1つの空洞から出して空にするステップ
は、少なくとも1つの反射層をオーバーコーティングに付与する前、または後で実行可能
であり、光学素子の光学構造を損なわない。
【0019】
更に本発明による方法において、反射光学素子は、従来技術においてある程度提案され
ているように、2つのシェルから構成されているわけでもない。これらのシェルは続いて
、接着接合、ハンダ付け等により互いに結合される。むしろ本発明による方法においては
、基板上に少なくとも1つの空洞を導入した後に、オーバーコートが基板上に構成される
。当該オーバーコートは、少なくとも1つの空洞上へも延在する。この場合、1つまたは
複数の層をガルバニック的および/または化学的に堆積させることにより、オーバーコー
トを付与する。オーバーコートおよび基板からなる合成物は、従来技術が開示するように
、2つのシェルが接着接合、ハンダ付け等により接着される場合よりも、不所望な分離に
対して耐性を有する。電気化学的および/または化学的に堆積させたオーバーコートは、
特に容易に、非球面または自由形状の光学表面と組み合わせ可能である。なぜなら、例え
ば銅のような極めて微細な機械加工が可能な材料を、オーバーコート用に使用可能なため
である。オーバーコートは、別個のカバーを接着接合またはハンダ付で製造することが、
困難であるか、または比類なく複雑となる、大型ミラー光学機器とも容易に組み合わせ可
能である。対照的に、ガルバニック的および/または化学的に堆積させたオーバーコート
は、制御が容易な工程により、比較的短時間で容易に実現可能である。更に、ガルバニッ
ク的または化学的に堆積させて基板をオーバーコートすることには、一般的に、張力の無
い状態でオーバーコートを付与可能である、という利点がある。
【0020】
本発明による方法を用いて、反射光学素子において、少なくとも1つの空洞を、オーバ
ーコートの厚さに応じて、素子の光学有効面に特に近接して実現可能である。また特に、
1mm未満である横断面寸法が極めて僅かなチャネル形状の空洞を、特に容易に実現可能
である。
【0021】
ガルバニックオーバーコートの場合には、基板の材料が導電性であり、ガルバニックオ
ーバーコートの前に、基板に導電性コートが付与されるのを防止可能とすることが有利で
ある。化学的な堆積である場合には、基板の材料もまた非導電性とすることができる。オ
ーバーコートの付与に先立つ導電層は、同様に不要である。
【0022】
方法の好適な形態において、ステップa)は、更に:基板の第1表面を、光学有効面の
基本形状に対応する表面形状に成形するステップ、を含む。
【0023】
この手順において、反射光学素子の光学表面の基本形状を、例えば凹状、凸状または類
似の様式で基板の第1表面内へ施すことにより、基板が粗加工される。この基本形状は、
続いて基板をオーバーコートする間にも実質的に保持される。従ってオーバーコートの表
面は、例えば非球面化、または自由形状へ、続いて依然として微細に成形、または機械加
工され、光学有効面の精密な微細形状が製造される必要がある。この微細形状は、反射層
を塗布されても、もはや変形しない。
【0024】
更なる好適な形態において、第2材料は、熱を付与することで液化可能な材料、および
/または溶媒に溶解可能な材料である。
【0025】
オーバーコートの前に、少なくとも1つの空洞に充填される第2材料は、この形態にお
いて、加熱すること、および/または第2材料を溶媒中で溶解させて、特に容易に液化可
能である。その後第2材料は、例えば流出させること、または吸引もしくは洗浄すること
で、少なくとも1つの空洞から除去可能である。
【0026】
好適には、第2材料は導電性である。
【0027】
特に導電性の基板と組み合わせると、この手法は、基板をガルバニックオーバーコート
する場合、事前に導電性のコーティングを、少なくとも1つの空洞の領域に付与する必要
がない、という利点を有する。
【0028】
第2材料として好適な例は、ワックス、ポリマーまたは塩である。これらも、例えば黒
鉛、金属粒等の導電性物質を混合することにより、導電性とすることができる。
【0029】
基板、および/または少なくとも1つの空洞に充填する第2材料が、導電性でなく、ガ
ルバニック的に堆積させることでオーバーコートすることを意図する場合、好適には、ス
テップc)の後であり、ステップd)の前に、導電層を基板の第1表面に付与する。この
場合、追加的な導電層を極めて薄くできる。
【0030】
方法の、更なる好適な形態において、ステップd)またはステップe)に続いて、オー
バーコートの表面は、光学有効面の達成されるべき微細な形状に従って、特にサブトラク
ティブ法により、微細に機械加工される。
【0031】
この微細な機械加工は、特にオーバーコートの表面の微細な成形を意味する、と理解さ
れる。こうした成形は、製造されるべき光学素子の、光学有効面において所望される微細
な成形に、可及的に精密に対応する。好適には、オーバーコートの材料は、続くサブトラ
クティブ法による微細な機械加工を、特には超精密な機械加工を、労力をより増大させず
、および工具の磨耗を増大させずに可能とするよう、選択される。特にサブトラクティブ
法による微細な機械加工に有利な、ガルバニックオーバーコート用の材料は、銅および(
ガルバニック)ニッケル、ならびに化学的オーバーコートの場合には、特にリンを含むニ
ッケル(NiP)(化学ニッケル)である。
【0032】
微細な機械加工、または微細な成形の間に、例えば回折格子、または非球面化、または
自由曲面の光学有効構造を、オーバーコート内へ、特に比較的容易な工程で施すことがで
きる。
【0033】
更に好適には、オーバーコートにおいて、このようにして微細に機械加工された表面は
、続いて特に研磨され、平滑化される。
【0034】
更に、更なる好適な形態において装備されたオーバーコートの微細に機械加工された表
面の形状は、特にイオンビーム成形により、続いて更に修正可能である。
【0035】
方法の、更なる好適な形態において、少なくとも1つの空洞は圧力を受ける。一方オー
バーコートの表面は、微細に機械加工される。
【0036】
圧力は、正圧(過大圧)または負圧(過小圧)とすることができる。
【0037】
この手法の結果、後に光学有効面を作動させる間に発生する、光学有効面の表面変形が
、反射光学素子の製造において、既に考慮される。反射光学素子の作動の間に発生する、
そうした表面変形は、特に反射光学素子が真空状態で作動される場合に、少なくとも1つ
の空洞を通過する流体が圧力下にあることで引き起こされる可能性がある。作動の間に、
光学有効面において、例えばバルジの発生が予測可能なポイント(通常は、少なくとも1
つの空洞の領域)では、この手法により、光学素子の作動の間に発生するバルジを補償可
能な程度に、オーバーコートの表面を除去可能である。反対に、作動の間に光学有効面に
おいてへこみの発生が予測可能な場合、こうした後の作動状態を、微細な機械加工の間に
空洞内を過小圧とすることで、いわばシュミュレーション可能であり、こうした作動状態
を微細な機械加工の間に考慮可能である。換言すると、素子の作動の間に発生する作動状
態が、この手法により、オーバーコートの表面を微細に機械加工する間にもたらされる。
【0038】
方法の、更なる好適な形態において、ステップb)は、ミリング加工、旋盤加工、穿孔
加工、腐食、および/またはレーザアブレーションにより実行される。
【0039】
少なくとも1つの空洞を基板内に導入する、こうした技術は、それらが容易に実行可能
であること、および容易に制御可能であることを特徴とする。
【0040】
更に、好適な形態において、ステップd)は、オーバーコートが、均一または不均一な
厚さで、基板の第1表面に亘って配置されつつ生じるよう、実施する。
【0041】
ガルバニックオーバーコートの場合、ガルバニックオーバーコートは、電極同士を互い
に対応させて、位置させること、および間隔を空けることにより実現可能である。事前に
選択された長波表面変形を、オーバーコートの厚さを変化させることで、少なくとも1つ
の空洞の圧力を変化させることにより、追加的かつ有利に、操作および設定可能である。
【0042】
更にこの方法において、好適には第3材料が、オーバーコートの間に連続的または段階
的に変化可能である。
【0043】
このようにして、例えば合金を使用したガルバニック工程におけるオーバーコートの間
、合金の組成物は、オーバーコートの間に、連続的または段階的に変化可能である。従っ
て、例えばオーバーコートの少なくとも最上位層は、特に容易に機械加工が可能な材料か
ら構成可能である。
【0044】
更なる態様により本発明は、基板と、ガルバニック的または化学的に基板の第1表面上
に堆積された、少なくとも1つの層からなるオーバーコートと、流体を受容する少なくと
も1つの空洞と、を備える反射光学素子を提供する。少なくとも1つの空洞は、第1表面
に隣接して配置されている。オーバーコートは、少なくとも1つの空洞上にも延在する。
および少なくとも1つの空洞には、オーバーコートの材料が無い。そして反射光学素子は
、少なくとも1つの反射層を備える。少なくとも1つの反射層は、オーバーコートにおい
て、基板から反対を向いた表面上に配置されている。少なくとも1つの反射層は、光学有
効面を備える。
【0045】
従来技術から既知の反射光学素子と比較すると、本発明による反射光学素子は、より少
ない労力で、特に非球面または自由形状である、特に所望通りに成形された表面を備えて
製造可能である。好適には流体用の複数のチャネルである、少なくとも1つの空洞を、表
面に近接して配置した結果、反射光学素子は、特に効率的に冷却可能であるばかりでなく
、光学系におけるマニピュレータまたは補償器として、特に良好に使用可能である。なぜ
ならチャネルは、負圧または過小圧としても理解される圧力を受け、それにより光学有効
面の表面の形状を、目標通りに変更可能なためである。少なくとも1つの空洞には、オー
バーコートの材料が無い。そのため空洞は、極めて小さい寸法で実現可能であり、空洞に
オーバーコートの材料が詰まる、または空洞の容積が低減される恐れが無い。従って、製
造の間に空洞の容積をより大きくする必要が無い。
【0046】
好適には、本発明による反射光学素子は、上述の形態の1つまたは複数に従って、製造
されている。
【0047】
好適には、少なくとも1つの空洞は、1つまたは複数のチャネルの形状で構成されてい
る。
【0048】
特に反射光学素子が、マニピュレータおよび/または補償器として使用される場合、例
えば気体または液体である流体が通過する複数のチャネルが適している。好適には、個々
のチャネルにおける流体の圧力は、チャネル毎に互いに別個に制御可能とする。
【0049】
好適にはチャネルが、数マイクロメートルから約1ミリメートル以上の範囲にある、幅
を有する。
【0050】
流体が通過するためのチャネルをそのように小型化することにより、特に、ガルバニッ
ク層でオーバーコートする前に、基板の一方の表面から基板内に、チャネルを導入可能で
ある。
【0051】
更に好適には、少なくとも1つの空洞は、少なくとも1つの開口を備える。開口は、反
射層の光学有効面につながる。
【0052】
この形態において、少なくとも1つの空洞を通過する流体は、光学素子の反射面の光学
有効面を洗浄するために使用可能である。
【0053】
更なる好適な形態において、基板は、特にオーステナイト鋼またはマルテンサイト鋼で
ある鋼、銅合金、および/または特にシリコン含有量が35%までのアルミニウム‐シリ
コンを示す。
【0054】
上述の材料は、特に少なくとも1つの空洞を導入し、および光学有効面の基本形状を粗
加工するための機械加工が容易であるため、基板の材料に極めて適している。上述の材料
は、他の材料と比較すると、工程において切削工具が受ける磨耗を増加させずに、特に容
易に機械加工が可能である。
【0055】
好適には、オーバーコートは、銅、ニッケル、および/またはリンを含むニッケル(N
iP)を示す。
【0056】
これらの材料によっても、オーバーコートの表面を極めて精密に微細加工が可能である
ため、機械加工性が容易であるという点から、これらの材料は、オーバーオコートの材料
として特に適している。特にこれらの材料は、工具の状態を維持しつつ、同様に機械加工
が可能である。
【0057】
好適には、基板の材料およびオーバーコートの材料は、これらの材料が少なくとも略同
一の熱膨張係数を有し、好適には、熱膨張係数の差異が10ppm/K未満、更に好適に
は5ppm/K未満、また更に好適には2ppm/Kであるよう、選択される。
【0058】
有利なことに、この手法を用いる結果、作動の間に反射光学素子に対する熱的負荷が発
生しない、または、基板とオーバーコートの膨張挙動が異なることに起因する光学素子の
光学品質の減損は、少なくともごく僅かである。
【0059】
基板とオーバーコート用の材料の、特に好適な組み合わせは:基板用にアルミニウム‐
シリコン、オーステナイト鋼または銅合金、およびオーバーコート用に銅、である。基板
とオーバーコート用の材料の、更なる特に好適な組み合わせは:基板用にマルテンサイト
鋼、およびオーバーコート用にニッケル、である。
【0060】
少なくとも1つの反射層は、モリブデンとシリコン層からなるコーティングとすること
ができる。
【0061】
更に好適には、オーバーコートの材料は、基板の材料の熱膨張係数を上回る熱膨張係数
を有することができる。
【0062】
その結果、オーバーコートが基板に付与されると、オーバーコートを基板上で、引張応
力下におくことができる。
【0063】
更に好適には、オーバーコートは、均一な厚さを有するか、または製造方法に関連して
既に上述したように、基板の第1表面に亘って変化する厚さを有する。
【0064】
更なる態様により、上述の形態の1つまた複数による反射光学素子は、本発明に従い、
VUV、EUVスペクトル領域、もしくは更なる短波スペクトル領域におけるアプリケー
ション用の光学系におけるミラーとして、または高強度光で材料を処理するために使用さ
れる。
【0065】
更なる態様により、上述の形態の1つまた複数による反射光学素子は、特にEUVマイ
クロリソグラフィ用の光学系において、コレクタミラーとして使用される。
【0066】
本発明のまた更なる態様により、上述の形態の1つまたは複数による反射光学素子は、
光学補償器および/または光学マニピュレータとして使用される。その際少なくとも1つ
の空洞は、光学有効面の不所望な変形を補償するため、または光学有効面において所望さ
れる変形を生じさせるために、可変の圧力を受ける。
【0067】
従って反射光学素子は、例えば光学系の光学収差を補償するために、または一般的には
波面を意図的に変更するために、波面操作用に使用可能である。
【0068】
上述した使用において、反射光学素子は、巨視的大面積ミラー、または1次元または2
次元ミラーアレイのミラー素子とすることができる。ハニカム形状またはシリンダ形状の
合光素子としても、使用可能である。最後に反射光学素子は、任意に後部に付与されたセ
ンサ系および/またはアクチュエータ系を備える薄膜として構成可能である。
【0069】
更なる利点および特徴は、以下の記載および添付の図面より明らかとなる。
【0070】
言うまでもなく、上述の特徴、および以下に詳説される特徴は、特定された各組み合わ
せのみでなく、他の組み合わせ、または単独で、本発明の範囲を逸脱することなく使用さ
れてよい。
【0071】
本発明の実施形態は、図示され、およびその図面を参照し、以下に更に詳説される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図2】
図1の反射光学素子を製造する方法における、最初のステップを示す図である。
【
図3】
図1の反射光学素子を製造する方法における、更なるステップを示す図である。
【
図4】
図1の反射光学素子を製造する方法における、また更なるステップを示す図である。
【
図5】
図1の反射光学素子を製造する方法における、また更なるステップを示す図である。
【
図6】
図1の反射光学素子を製造する方法における、また更なるステップを示す図である。
【
図7】
図1の反射光学素子を製造する方法における、また更なるステップを示す図である。
【
図8】
図6の方法のステップの、詳細を示す図である。
【
図9】
図8の方法のステップの、変形実施形態を示す図である。
【
図10】
図9の方法のステップの、結果を示す図である。
【
図11】
図1の反射光学素子が構成可能な1つまたは複数の空洞の異なるジオメトリを示す、オーバーコートを除いた状態の、素子の基板の平面図である。
【
図12】
図1の反射光学素子が構成可能な1つまたは複数の空洞の異なるジオメトリを示す、オーバーコートを除いた状態の、素子の基板の平面図である。
【
図13】
図1の反射光学素子が構成可能な1つまたは複数の空洞の異なるジオメトリを示す、オーバーコートを除いた状態の、素子の基板の平面図である。
【
図14】
図1の反射光学素子が構成可能な1つまたは複数の空洞の異なるジオメトリを示す、オーバーコートを除いた状態の、素子の基板の平面図である。
【
図15】
図1の反射光学素子が構成可能な1つまたは複数の空洞の異なるジオメトリを示す、オーバーコートを除いた状態の、素子の基板の平面図である。
【
図16】
図7の方法のステップの結果である実施形態を示す図である。
【
図17】
図1の反射光学素子が、マニピュレータ/補償器として使用される実施形態を示す図である。
【
図18】
図1の反射光学素子が、光学系において使用される実施形態を示す図である。
【0073】
図1は、汎用符号10を付記した反射光学素子の断面図である。以下に詳述するように
、反射光学素子10は、異なる光学系において多用な目的のために使用可能である。
【0074】
一般に反射光学素子10は、基板12、少なくとも1つの空洞14、オーバーコート1
6および反射層18を備える。反射層18は、光学有効面20を備える。反射光学素子1
0の作動中、光または一般的には電磁放射が、光学有効面20に入射し、光学有効面20
に反射される。
【0075】
少なくとも1つの空洞14は、流体を受容するよう機能する。こうした流体は、冷媒、
洗浄媒体、および/または少なくとも1つの空洞14に圧力を印加する媒体とすることが
できる。こうした圧力は負圧と理解可能である。最後の媒体は、素子10をマニピュレー
タ/補償器として使用する場合に有用である。言うまでもなく、上述の3つの機能(冷却
、洗浄、操作/補償)は、同一の流体により実現可能である。
【0076】
図示の実施形態において、空洞14は、チャネル22、24、26、28、30、32
、34の形状の、複数の空洞を備える。これらチャネル22乃至34は、流体密封の状態
で互いに分離可能である。または、チャネルのいくつか、もしくはチャネルの全てが、互
いに連通可能である。
【0077】
少なくとも1つの空洞14は、光学有効面20の方向を向いた、基板12の第1表面3
6に隣接して配置されている。ここでオーバーコート16は、この場合はチャネル22乃
至34である、少なくとも1つの空洞14上に延在する。
【0078】
この場合オーバーコート16は、基板12の表面36において、チャネル22乃至34
を流体密封の状態で閉鎖する。しかしながら代替的な実施形態において、例えばチャネル
28に対して破線により示されたように、少なくとも1つの空洞14が少なくとも1つの
開口38を備えることができる。この場合光学有効面20は、少なくとも1つの空洞14
を通り還流する流体により、洗浄可能である。
【0079】
図1において、基板12、オーバーコート16、反射層18の厚さ、およびチャネル2
2乃至34の寸法は、実際の尺度では図示されていない。
【0080】
チャネル22乃至34は、例えば数10μmである1mm未満の、幅および/または深
さを有することができる。
【0081】
オーバーコート16は、複数ミリメートルの厚さとすることができる。
【0082】
オーバーコート16は、ガルバニック的または化学的に第1表面36上に堆積された、
少なくとも1つの層を備える。オーバーコート16は、単層または複数層から構成可能で
ある。
【0083】
オーバーコート16は、基板12の第1表面36に直接的に付与可能であり、または間
接的に、オーバーコート16と基板12の間に付与された中間層(図示せず)により付与
可能である。
【0084】
基板12には、以下の材料が特に適している:シリコン含有量が35%までのアルミニ
ウム‐シリコン(商品名Dispal(登録商標))、特に1.4‐スチールであるオー
ステナイト鋼またはマルテンサイト鋼、または銅合金。銅合金は、例えば商品名Glid
Cop(登録商標)またはElmedur(登録商標)で販売されている。
【0085】
オーバーコート16は、特に以下の材料から成形可能である:銅、オーバーコート16
がガルバニックオーバーコートの形状の場合には(ガルバニック)ニッケル、および/ま
たはオーバーコート16が化学的に堆積されたオーバーコートとして構成されている場合
には、リンを含むニッケル(NiP)(化学ニッケル)。
【0086】
この場合、基板12の材料およびオーバーコート16の材料は、これらの材料が少なく
とも略同一の熱膨張係数を有し、反射光学素子10が、例えば光の照射に起因して温めら
れた際に、基板12とオーバーコート16の間に張力が発生しないよう、選択される。
【0087】
基板12の材料の熱膨張係数とオーバーコート16の材料の熱膨張係数の差異は、好適
には10ppm/K未満、更に好適には5ppm/K未満、また更に好適には2ppm/
Kとする。
【0088】
この場合オーバーコート16の材料は、基板12の材料の熱膨張係数を僅かに上回る熱
膨張係数を有することができる。
【0089】
図示の実施形態において、オーバーコート16は、基板12に亘って均一な厚さを有す
る。しかしながら、オーバーコート16が基板12に亘って、均一な厚さでなく、変化す
る厚さを有する、他の形態もまた考慮可能である。
図10はそうした形態を例示しており
、以下にそうした形態に関して詳述する。
【0090】
反射光学素子10を製造する方法は、以下に、
図2乃至7を参照して記載される。
【0091】
方法の最初のステップにおいて、基板12を原料の状態で供給する。この場合基板12
は、上述の基板材料に対しても当てはまるように、導電性材料から構成可能である。しか
しながらこれは、方法のために、必ずしも必要とされるわけではない。基板12は、非導
電性材料からも構成可能である。
【0092】
図2において、基板12の第1表面36は、平面状である。製造されるべき反射光学素
子が平面形状から逸脱し、曲面状を備えるよう意図される場合がある。例えば
図1の反射
光学素子のように凹状の光学有効面20、または凸状の光学有効面20を備えるよう意図
されている限り、
図3による方法のステップにおいて、先ず基板12の第1表面36を、
達成されるべき光学有効面20の基本形状に対応する表面形状に成形する。
図3に示す実
施形態において、基板12の第1表面36を、対応して凹状に事前成形する。この場合第
1表面36は、特に機械加工により事前成形可能である。
【0093】
図4による方法のステップにおいて、この場合にはチャネル22乃至34である、少な
くとも1つの空洞14を、基板12内、つまり
図3に従って事前成形された表面36内に
、第1表面36から導入する。チャネル22乃至34は、特にミリング加工、旋盤加工、
穿孔加工、腐食、および/またはレーザアブレーションである機械加工により、導入可能
である。
【0094】
図5による更なるステップにおいて、少なくとも1つの空洞14、またはこの場合チャ
ネル22乃至34に、材料40を充填する。材料40は、熱を付与することで液化可能な
材料、および/または溶媒に溶解可能な材料であり、特にワックス、ポリマーもしくは塩
である。材料40は、充填の前に液化されており、それに続いて凝固する場合に、少なく
とも1つの空洞14内に、特に容易に充填可能である。
【0095】
更に材料40は、ワックスが使用される場合に黒鉛を混合することで達成可能なように
、好適には導電性である。ポリマーを使用する場合にも、ポリマー自体が導電性でなけれ
ば、導電性粒子を混合することで、ポリマーに導電性を付与可能である。
【0096】
代替的に、材料40を少なくとも1つの空洞14に充填した後に、第1表面36を、例
えば旋盤加工またはミリング加工等による機械加工で、再加工可能である。
【0097】
図6による更なるステップにおいて、基板12を、今度はオーバーコートする。
【0098】
基板12、および少なくとも1つの空洞14に充填した材料40が、導電性である場合
、1つまたは複数のガルバニック層を、表面36上に直接に堆積させることにより、オー
バーコート可能である。言うまでもなく、オーバーコートの材料もまた導電性である。
【0099】
基板12、および/または少なくとも1つの空洞14に充填した材料40が、導電性で
なければ、ガルバニック的にオーバーコートを付与することを意図する場合、導電層(図
示せず)を、先ず基板12の第1表面36に付与可能である。
【0100】
1つまたは複数の層を化学的堆積させて、オーバーコートすることを意図する場合、基
板12および材料40の双方ともに導電性である必要はなく、また考えうる電気層も、基
板12の第1表面上に要求されない。
【0101】
ガルバニック的に比較的高速で堆積可能な材料は、好適には銅、またはガルバニックニ
ッケルである。化学的堆積に適する材料は、化学ニッケル(NiP)、すなわちニッケル
‐リン化合物である。
【0102】
この場合基板12の第1表面36は、ここではチャネル22乃至34である、少なくと
も1つの空洞14に亘ってもオーバーコートされる。この場合少なくとも1つの空洞14
内の材料40は、オーバーコート16の材料が、少なくとも1つの空洞14内に浸透する
ことを防止する。従って、完成された光学素子10における空洞14には、オーバーコー
ト16の材料が無い。オーバーコートは、一段法または複数段法により付与可能である。
すなわち、1つまたは複数の層を、ガルバニック的または化学的に堆積可能である。
【0103】
図6によれば、オーバーコート16は、均一な厚さで基板12に亘って堆積されている
。オーバーコート16をガルバニック的に堆積させる場合について、
図8はこの点に関し
、電極42および対向電極44から構成された電極配置を示す。対向電極44は、基板1
2自体により構成されている。対向電極44により、均一な厚さを有するオーバーコート
を実現可能である。
【0104】
銅をガルバニック的に基板12上に堆積させてオーバーコートする場合、オーバーコー
ト16を複数ミリメートルの厚さで堆積させる場合でさえ、高速で成長してオーバーコー
ト可能である。
【0105】
図6によるオーバーコートにおいては、基板12において粗加工された第1表面36の
基本形状が、実質的に保持される。つまり、少なくともオーバーコート16が、基板12
に亘って少なくとも実質的に均一な厚さを有する場合に、オーバーコート16の表面46
は、実質的に基板12の表面36の基本形状を有する。
【0106】
基板12をオーバーコートする間、基板12の表面36上に堆積される材料は、連続的
または段階的に変化可能である。例えば、基板12上に堆積される材料が合金の場合、合
金の組成物は、例えば材料の堆積の間に、連続的または段階的に変化可能である。
【0107】
図7による更なる方法のステップにおいて、オーバーコート16の表面46は、光学有
効面20の達成されるべき最終形状に従って微細に機械加工される。微細な機械加工は、
サブトラクティブ法により、例えばダイアモンドフライスカッターである、切削工具48
により実行される。
【0108】
オーバーコート16が、ガルバニック的または化学的に堆積された複数の層から構成さ
れている場合、少なくとも最後に付与された層は、超精密な機械加工が施し易い、容易に
切削可能な材料からなる。
【0109】
オーバーコート16の表面46が微細に機械加工される間、オーバーコート16もまた
、非球面化されるか、または自由形状を与えられ、微細に成形される。
【0110】
微細に機械加工された表面46は、必要に応じて、特に研磨され、更に平滑化される。
【0111】
続いてオーバーコート16の表面46の形状は、線で図示されたイオンビーム50のよ
うに、特にイオンビーム成形により、更に修正可能である。
【0112】
オーバーコート16の表面46の微細な機械加工の前後に、材料40は、この場合チャ
ネル22ないし34である、少なくとも1つの空洞14から出して空にされる。材料40
が、熱を付与することで液化可能な材料の場合、例えば基板12も対応して加熱される。
および材料40が、溶媒に融解可能な材料の場合、溶媒がチャネル22ないし34内に導
入される。
【0113】
オーバーコート16の表面46を微細に機械加工する間に可能な更なる手法は、この場
合、少なくとも個々のチャネル22乃至34、またはチャネル22乃至34の全てである
、少なくとも1つの空洞14を、流体の圧力P下に置くことである。その結果、表面46
が、チャネル22乃至34の領域において、いずれのチャネルが圧力下に置かれていたか
に応じて、外側へのバルジを有する。こうしたバルジは、その都度、微細な機械加工の間
に、対応して除去される。従って、同様にチャネル22乃至34が圧力下に置かれていた
反射光学素子10の作動中、および/または反射光学素子が真空で作動される際の、光学
有効面20の表面変形誤差、または形状精度誤差が防止される。
【0114】
オーバーコート16の表面46が十分に機械加工されると、反射層18がオーバーコー
ト16の表面46に付与され、
図1による反射光学素子10が製造される。
【0115】
少なくとも1つの反射層18は、例えばモリブデンとシリコン(MoSi)層のスタッ
クとする。
【0116】
図9は、
図8による方法の形態の、変更形態を示す。
図10の実施形態が示すように、
この変更実施形態によれば、基板12に亘って不均一な厚さを有するオーバーコート16
が、基板12に亘って付与されている。このために
図9は、電極42が平坦である電極配
置を示す。電極42は、基板12全体から見て、基板12の表面36からの間隔が変化す
る。基板12の中央においては、表面36から電極42への間隔がより大きいため、その
部分に付与されるオーバーコート16は、電極42が基板12の表面36から対応してよ
り小さい間隔にある、基板12の端部におけるよりも、厚さが減少する。
【0117】
図10に示す以外の他の厚さのプロフィールを、オーバーコート16で達成するために
、電極42のジオメトリ、または複数の電極の間隔位置を、適宜選択可能である。これに
より、例えば波状の厚さのプロフィール等、所望される厚さのプロフィールで、オーバー
コート16を基板12に付与可能である。
【0118】
図11乃至
図15は、少なくとも1つの空洞14のための、多様な例示的ジオメトリを
示す。
図11乃至
図14は、少なくとも1つの空洞14を導入した後の、基板12の平面
図を示す
【0119】
図11は、流体を導入する流入口51、および流体を空洞14から導出する流出口52
を備える、連続的螺旋状の空洞14を示す。この場合流体は、螺旋形状で中央部から基板
12の端部に向かって循環する。
【0120】
図12は、互いに連通しない2本のチャネル22と24からなる実施形態において成形
された、空洞14のジオメトリを示す。チャネル22は、流入口51aおよび2つの流出
口52aと52bを備える。そしてチャネル24は、流入口51bおよび2つの流出口5
2cと52dを備える。
【0121】
図13は、蛇行形状で流入口51から流出口52へ、基板12に亘って延在する、1つ
の連続的な空洞14のジオメトリを示す。
【0122】
図14は、径方向外側で循環するチャネル22、中央部で循環するチャネル24、およ
びチャネル22と24を共に連結する、複数の径方向のチャネル26、28等を備える空
洞14を示す。流入口51からの流体は、先ず径方向内側のチャネル24内へ導入され、
およびスポーク状の径方向のチャネル26、28等を経て、より外側のチャネル14内へ
導かれ、そこから流出口52へ至る。
【0123】
図15は、
図14によるチャネルを備える基板12の透視図である。
【0124】
図16は、
図1の反射光学素子10を製造する方法の更なる形態を示す。この形態にお
いて、
図7によるオーバーコート16の表面46を微細に機械加工する間、光学有効構造
54が、特に機械加工により、オーバーコート16の表面46内へ施される。この場合光
学有効構造54は、例えば回折格子である。反射層18が付与される場合、光学有効構造
54は維持される。つまり、光学有効構造54は、実質的に精密に、光学有効面20の対
応する光学有効構造へと転写される。
【0125】
反射光学素子10および反射光学素子10を製造する方法の、更なる変更実施形態にお
いて、例えばチャネル22乃至34である、少なくとも1つの空洞14は、チャネル22
乃至34が基板12の表面36に向かい先細りになるよう、基板12内に導入可能である
。チャネル22乃至34が圧力を受ける際に、チャネル22乃至34が先細りの形状のた
め、光学有効面20がバルジを形成する傾向が低減される。これにより、厚さがより低減
されたオーバーコート16を実現可能である。
【0126】
一方、
図17に示されるように、反射光学素子10が光学マニピュレータとして使用さ
れる場合には、光学有効面20のバルジが望まれる可能性もある。この場合チャネル22
乃至34は、別個に、または連帯的に、目標通りに正圧Pを受ける。各チャネル22乃至
34は、異なる圧力Pを受けることもできる。その結果、
図17において個々の波頭60
が示されるように、光学有効面20において、目標通りに、所望される表面変化を設定お
よび変更可能である。これにより、素子10が使用される光学系の波面に、目標通りに影
響可能である。チャネル22乃至34が負圧を受けることも考慮可能である。その結果、
光学有効面20において、波底もまた設定可能である。そして、個々のチャネルが正圧を
受け、そして他のチャネルが負圧を受けることも可能である。
【0127】
特に、空洞またはチャネル22乃至34を、素子10の表面20に近接して配置し、お
よびオーバーコート16を薄く実現することで、反射光学素子10を、光学波面に影響す
るマニピュレータとして使用可能である。
【0128】
光学素子10は、補償器としても使用可能である。この場合空洞またはチャネル22乃
至34は、光学有効面20の不所望な変形を補償するために、可変の圧力を受ける。
【0129】
反射光学素子10は、巨視的ミラー、または1次元または2次元ミラーアレイの小型の
ミラー素子とすることができる。更に、反射光学素子10は、ハニカム状またはシリンダ
ハニカム状の実施形態の混合素子としても構成可能である。
【0130】
最後に反射光学素子10は、基板12において光学有効面20から反対を向いた側に、
関連するセンサ系またはアクチュエータ系を任意に備える薄膜として、単純に構成可能で
もある。
【0131】
図18は、EUVアプリケーション用の光学系100における反射光学素子10の使用
を示す図である。
【0132】
反射光学素子10をこのように使用する場合、反射光学素子10はEUV光源Sのコレ
クタミラーとして使用される。EUV放射は、目標102により発生される。光学系10
0は、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置であり、および光源Sの下流に、照明系I
L、レチクルR、投影レンズPO、およびウェハWを備える。
【0133】
更に反射光学素子10は、光学系において、例えばレーザ光による穿孔、アブレーショ
ン、溶融等、高強度光で材料を処理するために使用される。