(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20230803BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2020194947
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】松野 豊
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186693(JP,A)
【文献】特表2014-506013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 - 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
表面に酸化膜が形成された基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(a)の後に(b)を行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(a)と(b)
とを
この順に複数回行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項3】
(a)は、前記第1ガスを前記基板に対して物理吸着させる雰囲気で行う請求項1又は2記載の基板処理方法。
【請求項4】
(b)は、前記第2ガスを前記基板に吸着した前記第1ガスと反応させる雰囲気で行う請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(b)の後に(a)を行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項6】
(e)では、(b)と(a)を複数回行う請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(a)は、前記第1ガスを前記基板に対して物理吸着させる雰囲気で行う請求項5又は6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)では、前記基板の表面に形成された酸化膜に前記第1ガスを供給する請求項
2、5乃至7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記酸化膜は、Si、Al、Ge、Ga、Zr、Ti、Hfの少なくとも1つ以上を含む請求項
1又は8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1ガスは、H
2とO
2、H
2O、H
2O
2の少なくとも1つ以上を含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第2ガスは、NH
3、N
2とH
2、N
2H
2、N
3H
3、N
2H
4、その他アミン基を含むガスの少なくとも1つ以上を含む請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第3ガスは、前記ハロゲン元素としてCl又はFを含み、Ti、Zr、Hfの第4族元素、Mo、Wの第6族元素、の少なくとも1つ以上を含む請求項1乃至11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)
表面に酸化膜が形成された基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給させる手順と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給させる手順と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給させる手順と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給させる手順と、を有し、
(e)(a)の後に(b)を行わせる手順と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する手順と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する手順と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する手順と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する手順と、を有し、
(e)(a)と(b)
とを
この順に複数回行う手順と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項15】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給させる手順と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給させる手順と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給させる手順と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給させる手順と、を有し、
(e)(b)の後に(a)を行わせる手順と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項16】
表面に酸化膜が形成された基板に水素と酸素を含む第1ガス、窒素と水素を含む第2ガス、ハロゲン元素を含む第3ガス及び反応ガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する処理と、
(d)前記基板に対して前記反応ガスを供給する処理と、を有し、
(e)(a)の後に(b)を行う処理と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する処理と、
を行わせるように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項17】
基板に水素と酸素を含む第1ガス、窒素と水素を含む第2ガス、ハロゲン元素を含む第3ガス及び反応ガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する処理と、
(d)前記基板に対して前記反応ガスを供給する処理と、を有し、
(e)(a)と(b)
とを
この順に複数回行う処理と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する処理と、
を行わせるように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項18】
基板に水素と酸素を含む第1ガス、窒素と水素を含む第2ガス、ハロゲン元素を含む第3ガス及び反応ガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する処理と、
(d)前記基板に対して前記反応ガスを供給する処理と、を有し、
(e)(b)の後に(a)を行う処理と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する処理と、
を行わせるように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項19】
(a)
表面に酸化膜が形成された基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(a)の後に(b)を行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(a)と(b)
とを
この順に複数回行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項21】
(a)基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(b)の後に(a)を行う工程と、
(f)(e)の後に、(c)と(d)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAMのワードラインとして例えば低抵抗なタングステン(W)膜が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-66263号公報
【文献】国際公開第2019/058608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、TiN膜を成膜する際、薄膜では連続膜になりにくく、島状に成長してしまい、被覆率が低くなってしまうことがある。
【0005】
本開示は、被覆率を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理容器に収容する工程と、
(b)前記基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(e)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(f)(b)と(c)を行う工程と、
(g)(f)の後に、(d)と(e)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被覆率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5(A)~
図5(D)は、
図4に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
【
図6】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
【
図7】
図7(A)~
図7(D)は、
図6に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
【
図8】
図8(A)~
図8(D)は、
図6に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
【
図9】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
【
図10】
図10(A)~
図10(D)は、
図9に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
【
図11】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
【
図12】
図12(A)及び
図12(B)は、本開示の他の実施形態における基板処理装置の処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図13】
図13(A)は、
図4に示す基板処理シーケンスと
図9に示す基板処理シーケンスにより、ベア基板上と、酸化膜が形成された基板上に、それぞれ形成されたTiN膜の膜厚を比較して示した図である。
図13(B)は、
図4に示す基板処理シーケンスにより、ベア基板上と、酸化膜が形成された基板上に、それぞれ形成されたTiN膜の成膜レートと、前工程を行わないで成膜工程を行った場合の、ベア基板上と、酸化膜が形成された基板上に、それぞれ形成されたTiN膜の成膜レートを比較して示した図である。
【
図14】
図14(A)は、
図4に示す基板処理シーケンスにより、ベア基板上、酸化膜が形成された基板上に、それぞれTiN膜を形成した場合の第1ガス供給時間とTiN膜の膜厚との関係を示した図である。
図14(B)は、
図6に示す基板処理シーケンスにより、ベア基板上、酸化膜が形成された基板上に、それぞれTiN膜を形成した場合の、前工程におけるサイクル数とTiN膜の膜厚との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に処理容器を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、処理容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,532及び開閉弁であるバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、水素(H)と酸素(O)を含む第1ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、窒素(N)とHを含む第2ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。本開示では、第2ガスを、後述する第3ガスと反応させる反応ガスとしても用いる。また、第2ガスを、還元ガスと称することもできる。
【0021】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、ハロゲン元素を含む第3ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201内に供給される。
【0022】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えばN2ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320,330、MFC312,322,332、バルブ314,324,334、ノズル410,420,430により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310から第1ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により第1ガス供給系が構成されるが、ノズル410を第1ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から第2ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により第2ガス供給系が構成されるが、ノズル420を第2ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管330から第3ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により第3ガス供給系が構成されるが、ノズル430を第3ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から反応ガスとして第2ガスを供給する場合、第2ガス供給系を反応ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a、ノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420,430に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245、APC(Auto Pressure Controller)バルブ243、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a、排気路206、排気管231、APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532、バルブ314,324,334,514,524,534、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、表面に酸化膜が形成されたウエハ200に対して膜を形成する工程の一例について、
図4及び
図5を用いて説明する。本工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)ウエハ200を処理容器に収容する工程と、
(b)ウエハ200に対してHとOを含む第1ガスを供給する工程と、
(c)ウエハ200に対してNとHを含む第2ガスを供給する工程と、
(d)ウエハ200に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(e)ウエハ200に対して反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(f)(b)と(c)を行う工程と、
(g)(f)の後に、(d)と(e)を行うことにより、ウエハ200に対して膜を形成する工程を有する。
【0038】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0039】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器内に収容される。すなわち、表面に酸化膜が形成されたウエハ200を処理容器に収容する。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
[前工程]
(第1ガス供給)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に第1ガスを流す。第1ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。また、ノズル420,430内への第1ガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,530内に不活性ガスを流してもよい。
【0042】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御する第1ガスの供給流量は、例えば0.01~1slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~600℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0043】
このとき、ウエハ200に対して第1ガスが供給されることとなる。第1ガスとしては、HとOを含むガスである、例えば水蒸気(H
2Oガス)を用いることができる。第1ガスとして、H
2Oガスを用いた場合、H
2Oガスの供給により、
図5(A)に示すように、表面に酸化膜としてのSiO
2膜が形成されたウエハ200(表面の下地膜)上に、H
2O分子が一分子層物理吸着する。ここで、H
2O分子が複数層積層されると、後述する第2ガス供給により、第2ガスが、複数層のうち、表面で反応してOH基が生成されてしまう。つまり、下層部分にH
2O分子が存在するため、OH基がウエハ200表面に吸着せず、ウエハ200の表面がOH終端にならない場合がある。そのため、一分子層のH
2O分子がウエハ200上に物理吸着する条件で、ウエハ200に対して第1ガスを供給する。すなわち、第1ガス供給は、一分子層のH
2O分子がウエハ200上に物理吸着させる雰囲気で実行する。H
2O分子は、温度が高くなるにつれてウエハ200から脱離し易くなる。このため、本工程における温度を、ウエハ200の温度が、例えばH
2Oの沸点以上の可能な限り低い温度とする。例えば、第1ガス供給時における温度を、ウエハ200の温度が、例えばH
2Oの沸点以上であって後述する成膜工程における成膜温度と同じ温度となるように設定して行う。これにより、H
2O分子をウエハ200上に物理吸着させることができる。
【0044】
(第2ガス供給)
第1ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ314を閉じて、第1ガスの処理室201内への供給を停止する。このときバルブ324を開き、ガス供給管320内に、第2ガスを流す。つまり、第1ガスの供給後にパージガスを供給しないで第2ガスの供給を開始する。これにより、ウエハ200上に物理吸着したH2O分子の量が減ることを抑制することができる。第2ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、第2ガスが供給される。なお、このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル410,430内への第2ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流してもよい。なお、第1ガスの供給後、第2ガスの供給前に、パージガスを供給してもよい。パージガスを供給することにより、気相中のH2Oガスと第2ガスの反応を抑制することができる。
【0045】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する第2ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。第2ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~600秒の範囲内の時間とする。
【0046】
このとき、ウエハに対して第2ガスが供給されることとなる。ここで、第2ガスとしては、NとHを含むガスである、例えばアンモニア(NH
3)ガスを用いることができる。第2ガスは、ウエハ200上のH
2O分子と反応する条件でウエハ200に対して供給する。すなわち、第2ガス供給は、ウエハ200上に物理吸着したH
2O分子と反応させる雰囲気で実行する。第2ガスとして、NH
3ガスを用いた場合の反応について、
図5(B)に示す。NH
3ガスは、
図5(B)に示すように、ウエハ200上に吸着されたH
2O分子と反応し、アンモニウム(NH
4
+)と水酸化物イオン(OH
-)を生成する。本工程における温度を、第2ガスがウエハ200上のH
2O分子と反応する条件であって、例えば、第2ガス供給時における温度を、ウエハ200の温度が、例えば後述する成膜工程における成膜温度と同じ温度となるように設定して行う。そして、第2ガスであるNH
3が、ウエハ200上に物理吸着したH
2OからHを切り離して、ウエハ200上にOH終端を形成する。すなわち、第2ガスの供給により、ウエハ200の表面は、OH基が吸着されてOH基で終端される。なお、本開示において、「終端」や「吸着」とは、ウエハ200表面の全てが覆われていない状態も含み得る。ガスの供給条件や、ウエハ200の表面状態により、ウエハ200の表面の全てが覆われない場合がある。また、自己制限的に、反応が停止することにより、全てが覆われない場合がある。
【0047】
[成膜工程]
上述した前工程を行った後、パージを行い、以下の第1ステップ~第4ステップを複数回行う。すなわち、前工程を行った後、処理室201内にN2ガス等のパージガスを供給してから、以下の第1ステップ~第4ステップを繰り返し行う。すなわち、パージにより気相中の第1ガスや第2ガスや反応副生成物を除去した後、ウエハ200上にOH基が吸着された状態で、OH基が露出したウエハ200に対して、以下の第1ステップ~第4ステップを複数回行う。前工程の後、成膜工程の前に、パージガスを供給してパージを行うことにより、処理室201内に存在する、反応副生成物や、余分なガスを除去することができ、成膜工程で形成される膜の特性を向上させることができる。
【0048】
(第3ガス供給、第1ステップ)
バルブ334を開き、ガス供給管330内に第3ガスを流す。第3ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。このとき、ノズル410,420内への第3ガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内に不活性ガスを流してもよい。
【0049】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御する第3ガスの供給流量は、例えば0.1~3.0slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~600℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。第3ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~60秒の範囲内の時間とする。
【0050】
このとき、OH基が吸着したウエハ200、すなわち、表面がOH基により終端されたウエハ200に対して第3ガスが供給されることとなる。ここで、第3ガスとしては、例えばチタン(Ti)を含み、ハロゲン元素を含むガスである四塩化チタン(TiCl
4)ガスを用いることができる。第3ガスとして、TiCl
4ガスを用いた場合、
図5(C)の様になる。すなわち、
図5(B)に示すようにOH基が露出したウエハ200に対してTiCl
4ガスが供給されることにより、
図5(C)に示すように、TiCl
4ガスに含まれるハロゲン(Cl)と、ウエハ200上に存在するOH基が反応して、TiCl
x(xは4より小さい)がウエハ200上に吸着する。つまり、ウエハ200上にTiCl
4よりも分子サイズが小さいTiCl
xが吸着するため、TiCl
4が吸着する場合に比べて、立体障害の大きさ(分子量)を低減することができる。すなわち、立体障害によるTiCl
4の吸着阻害を抑制することができ、分子サイズの小さいTiCl
xの吸着量を増加させることができる。言い換えれば、OH基が吸着したウエハ200に対してTiCl
4ガスが供給されることにより、ウエハ200上のTi元素の吸着量を増やすことができ、ウエハ200(表面の下地膜)上に吸着されるTi元素の吸着密度を増加させることができ、Ti元素の含有率の高いTi含有層を形成することができる。なお、この時、塩酸(HCl)やH
2O等の反応副生成物が生じる。これらの反応副生成物の大部分は、ウエハ200上から脱離する。結果として、下地のSiO
2膜や、SiO
2膜上に形成されるTiN膜中での不純物の残留を抑制することができる。
【0051】
(パージ、第2ステップ)
第3ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後にバルブ334を閉じ、第3ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の第3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ514,524,534を開き、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給する。不活性ガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の第3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmとする。
【0052】
(反応ガス供給、第3ステップ)
パージを開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後にバルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの処理室201内への供給を停止する。このときバルブ324を開き、ガス供給管320内に、反応ガスを流す。反応ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、反応ガスが供給される。なお、このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル410,430内への反応ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流してもよい。
【0053】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する反応ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。反応ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0054】
このとき、ウエハに対して反応ガスが供給されることとなる。ここで、反応としては、例えばアンモニア(NH
3)ガスを用いることができる。反応ガスとして、NH
3ガスを用いた場合の反応について、
図5(D)に示す。NH
3ガスは、
図5(D)に示すように、ウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH
3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiN層が形成される。具体的には、ウエハ200上に吸着したTiCl
xとNH
3が反応することにより、表面に酸化膜が形成されたウエハ200上にTiN膜が形成され、TiN膜の被覆率を向上させることができる。また、置換反応の際には、HCl、塩化アンモニウム(NH
4Cl)、H
2等の反応副生成物が生じる。
【0055】
(パージ、第4ステップ)
反応ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後にバルブ324を閉じて、反応ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応もしくは膜の形成に寄与した後の反応ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ514,524,534を開き、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給する。不活性ガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の反応ガスや上述の反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmとする。
【0056】
すなわち、処理室201内に残留する未反応もしくは膜の形成に寄与した後の反応ガスや上述の反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0057】
(所定回数実施)
前工程を行った後に、上述した第1ステップ~第4ステップを順に行うサイクルを所定回数(N回)、1回以上実行することにより、ウエハ200上に、所定の厚さの膜を形成する。ここでは、例えばTiN膜が形成される。
【0058】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510~530のそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0059】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0060】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)膜の被覆率を向上させることができ、この膜の上に形成される金属含有膜の抵抗率を低減させることができる。
(b)膜を連続的に成長させることができる。ここで連続的とは、膜の材料の結晶が連なっていること、結晶の間隔が小さいこと等を意味する。
(c)基板上に形成される膜の特性を向上させることができる。
(d)特に、酸化膜上に形成される膜の被覆率を向上させることができる。
(e)特に、酸化膜上に形成される膜を連続的に成長させることができる。
【0061】
(4)他の実施形態
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0062】
上記実施形態では、前工程として第1ガス供給と第2ガス供給をこの順に1回ずつ行う例について説明したが、これに限らず、複数回繰り返し行ってもよく、前工程におけるガス供給の順序を入れ替えてもよく、第2ガス供給後に第1ガス供給を行った場合にも適用できる。
【0063】
(変形例1)
図6は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す。本変形例では、前工程として、上述した第1ガス供給と第2ガス供給を順に行うサイクルを所定回数(M回)実行する。すなわち、成膜工程を行う前に、前工程として、ウエハ200に対して、第1ガスを供給する工程と、第2ガスを供給する工程とを順に行うサイクルを複数回行う。このとき、上述した実施形態と同様に、第1ガス供給と第2ガス供給の間でパージガスを供給しない。この場合であっても、上述した
図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0064】
第1ガスとしてH
2Oガスを、第2ガス及び反応ガスとしてNH
3ガスを、第3ガスとしてTiCl
4ガス用いた場合の反応について、
図7(A)~
図7(D)及び
図8(A)~
図8(D)に示す。H
2Oガスの供給により、
図7(A)に示すように、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ200上に、H
2O分子が一分子層物理吸着する。そして、NH
3ガスの供給により、
図7(B)に示すように、NH
3ガスが、ウエハ200上に吸着されたH
2O分子と反応し、アンモニウム(NH
4
+)と水酸化物イオン(OH
-)を生成し、ウエハ200上にOH終端を形成する。そして、2回目以降のH
2Oガスの供給により、
図7(C)に示すように、H
2O分子は、ウエハ200上のOH基が吸着していない空きサイトに吸着する。そして、2回目以降のNH
3ガスの供給により、
図7(D)に示すように、ウエハ200上に物理吸着したH
2OとNH
3が反応して、NH
4
+とOH
-が生成され、ウエハ上の空きサイトにOH終端が形成される。また、ウエハ200上に吸着しているOH基の一部とNH
3が反応した場合においては、NH
x(ここで、xは2以下であり、例えば、NH
2を生成する。)とH
2Oが生成され、NH
2がウエハ200上に吸着する。すなわち、ウエハ200上にNH
x終端が形成され、ウエハ200上に、OH終端とNH終端が形成される。ここで、OH終端やNH終端には、TiCl
xが吸着し易いため、本変形例のように、前工程として第1ガス供給と第2ガス供給を繰り返し行うことにより、ウエハ200上のOH終端とNH終端を増やすことができる。そして、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、分子サイズの小さいTiCl
xの吸着量を増加させることができ、立体障害によるTiCl
4の吸着阻害を抑制してTiCl
xの吸着を促進することができる。そして、NH
3ガスの供給により、TiN膜の被覆率を向上させることができ、下地のSiO
2膜や、SiO
2膜上に形成されるTiN膜中での不純物の残留を抑制することができる。
【0065】
(変形例2)
図9は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの他の変形例を示す。本変形例では、前工程として、第2ガスを供給した後に、第1ガスを供給し、その後にパージを行い、上述した成膜工程を行う。すなわち、成膜工程を行う前に、前工程として、ウエハ200に対して、第2ガスを供給する工程と、第1ガスを供給する工程と、をこの順にそれぞれ1回行う。このとき、第2ガス供給と第1ガス供給の間で、パージガスを供給しない。この場合であっても、上述した
図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0066】
第1ガスとしてH
2Oガスを、第2ガス及び反応ガスとしてNH
3ガスを、第3ガスとしてTiCl
4ガス用いた場合の反応について、
図10(A)~
図10(D)に示す。
図10(A)に示すように、表面に酸化膜としてのSiO
2膜が形成されたウエハ200に対して、NH
3ガスを供給することにより、ウエハ200上にNH
3が物理吸着したり、NH
2が化学吸着する。そして、
図10(B)に示すように、NH
3やNH
2が吸着したウエハ200上にH
2Oガスを物理吸着させる雰囲気で供給することにより、空きサイトにH
2Oが物理吸着される。また、NH
3とH
2Oが反応し、NH
4
+とOH
-が生成されて、ウエハ200上にOH終端が形成される。また、NH
2とH
2Oが反応し、NH
x
+とOH
-が生成され、ウエハ200上にOH終端が形成される。そして、TiCl
4ガスの供給により、
図10(C)に示すように、分子サイズの小さいTiCl
xの吸着量を増加させることができ、立体障害によるTiCl
4の吸着阻害を抑制して、TiCl
xの吸着を促進することができる。そして、NH
3ガスの供給により、
図10(D)に示すように、TiN膜の被覆率を向上させることができ、下地のSiO
2膜や、SiO
2膜上に形成されるTiN膜中での不純物の残留を抑制することができる。
【0067】
(変形例3)
図11は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの他の変形例を示す。本変形例では、前工程として、上述した第2ガス供給と第1ガス供給を順に行うサイクルを所定回数(M回)実行した後に、パージを行い、その後に上述した成膜工程を行う。すなわち、成膜工程を行う前に、前工程として、ウエハ200に対して、第2ガスを供給する工程と、第1ガスを供給する工程とを順に行うサイクルを複数回行う。このとき、第2ガス供給と第1ガス供給の間で、パージガスを供給しない。この場合であっても、上述した
図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0068】
第1ガスとしてH2Oガスを、第2ガス及び反応ガスとしてNH3ガスを、第3ガスとしてTiCl4ガス用いた場合、表面に酸化膜としてのSiO2膜が形成されたウエハ200に対して、NH3ガスを供給することにより、ウエハ200上にNH3が物理吸着したり、NH2が化学吸着する。そして、NH3やNH2が吸着したウエハ200上にH2Oガスを物理吸着させる雰囲気で供給することにより、NH3とH2Oが反応し、NH4
+とOH-が生成されて、ウエハ200上にOH終端が形成される。また、NH2とH2Oが反応し、NHx
+とOH-が生成され、ウエハ200上にOH終端が形成される。
【0069】
そして、2回目以降のNH3ガスの供給により、ウエハ200上に形成されたOH基とNH3が反応して、NH2とH2Oが生成され、NH2がウエハ200上に化学吸着する。すなわち、ウエハ200上にNHx終端が形成される。そして、2回目以降のH2Oガスの供給により、NH2とH2Oが反応して、NHx
+とOH-が生成され、ウエハ200上にOH終端が形成される。また、OH終端が形成されていないウエハ200上の空きサイトにH2Oが物理吸着する。そして、物理吸着したH2OとNH3が反応して、NH4
+とOH-が生成され、ウエハ上の空きサイトにOH終端が形成される。本変形例のように、第2ガス供給と第1ガス供給を繰り返し複数回行うことにより、ウエハ200上のOH終端を増やすことができ、分子サイズの小さいTiClxの吸着量を増加させることができる。つまり、立体障害によるTiCl4の吸着阻害を抑制して、TiClxの吸着を促進することができる。そして、NH3ガスの供給により、TiN膜の被覆率を向上させることができ、結果として、下地のSiO2膜や、SiO2膜上に形成されるTiN膜中での不純物の残留を抑制することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、前工程において用いる第2ガスとして、成膜工程において用いる反応ガスと同じNH3ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、成膜工程において用いる反応ガスと異なるガスを用いてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、前工程と成膜工程の間で、パージを行う形態を示したが、これに限るものではなく、前工程と成膜工程の間でパージを行わなくても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、第1ガス供給と第2ガス供給の間でパージを行わない形態を示したが、これに限るものではなく、第1ガス供給と第2ガス供給の間でパージを行ってもよい。これにより、処理室201内に存在する、気相中の第1ガスと第2ガスの反応を抑制することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、表面に酸化膜としてシリコン(Si)を含むSiO2膜が形成されたウエハ200に対して、前工程と成膜工程を行う場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、Si、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、Ti、ハフニウム(Hf)の少なくとも1つ以上を含む酸化膜が形成されたウエハ200を用いる場合にも、好適に適用できる。
【0074】
また、上記実施形態では、前工程において、HとOを含む第1ガスとして例えばH2Oガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、第1ガスとして、H2とO2、H2O、過酸化水素(H2O2)の少なくとも1つ以上を含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0075】
また、上記実施形態では、前工程において、NとHを含む第2ガスとして例えばNH3ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、第2ガスとして、NH3、N2とH2、ジアゼン(N2H2)、トリアゼン(N3H3)、ヒドラジン(N2H4)、その他アミン基を含むガスの少なくとも1つ以上を含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0076】
また、上記実施形態では、成膜工程において、ハロゲン元素を含む第3ガスとして例えばハロゲン元素としてClを含むTiCl4ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、ハロゲン元素としてCl又はフッ素(F)を含み、Ti、Zr、Hf等の第4族元素、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第6族元素、の少なくとも1つ以上を含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。また、ハロゲン元素としてCl又はFを含み、Si等の第14族元素、Al等の第13族元素、タンタル(Ta)等の第5族元素の少なくとも1つ以上を含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0077】
例えば、第3ガスとして、四塩化ケイ素(SiCl4)ガス、五塩化モリブデン(MoCl5)ガス、塩化アルミニウム(AlCl3)ガス、二塩化二酸化モリブデン(MoO2Cl2)ガス、六フッ化タングステン(WF6)ガス等のMByガスを用いる場合にも、好適に適用できる。この場合、ウエハ200上に形成されたOH基に、第3ガスに含まれるハロゲン元素の数よりも小さく、分子サイズの小さいMBx(xはyよりも小さい)の吸着量を増加させることができ、立体障害によるMByの吸着阻害を抑制してMBxの吸着を促進することができる。
【0078】
また、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0079】
例えば、
図12(A)に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の第1ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の第2ガスを供給するガス供給ポート332bと、上述の第3ガスを供給するガス供給ポート332cが接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の第1ガス供給系と同様の第1ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の第2ガス供給系と同様の第2ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332cには、上述の第3ガス供給系と同様の第3ガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内にガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0080】
また例えば、
図12(B)に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の第1ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の第2ガスを供給するガス供給ポート432bと、上述の第3ガスを供給するガス供給ポート432cが接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の第1ガス供給系と同様の第1ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の第2ガス供給系と同様の第2ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432cには、上述の実施形態の第3ガス供給系と同様の第3ガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0081】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0082】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0083】
また、本開示は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本開示に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本開示に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0084】
また、本開示は、例えば、3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAM等のワードライン部分に用いることができる。
【0085】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0086】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0087】
ベアウエハ(Si基板)であるサンプル1、サンプル3と、表面にSiO2膜が形成されたウエハであるサンプル2、サンプル4を用意し、サンプル1~4に対して、それぞれ下記に示す成膜処理を行った。
【0088】
サンプル1は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図4の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を所定回数行って、ベアウエハ上にTiN膜を形成したものである。すなわち、ベアウエハに対して、第1ガス供給と第2ガス供給を行った後に、成膜工程を複数回行ったものである。処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件とした。
【0089】
サンプル2は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図4の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を所定回数行って、SiO
2膜が形成されたウエハ上にTiN膜を形成したものである。すなわち、SiO
2膜が形成されたウエハに対して、第1ガス供給と第2ガス供給を行った後に、成膜工程を複数回行ったものである。処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件であって、サンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0090】
サンプル3は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図9の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を所定回数行って、ベアウエハ上にTiN膜を形成したものである。すなわち、ベアウエハに対して、第2ガス供給と第1ガス供給を行った後に、成膜工程を複数回行ったものである。処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件とした。
【0091】
サンプル4は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図9の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を交互に所定回数行って、SiO
2膜が形成されたウエハ上にTiN膜を形成したものである。すなわち、SiO
2膜が形成されたウエハに対して、第2ガス供給と第1ガス供給を行った後に、成膜工程を複数回行ったものである。処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件であって、サンプル3における処理条件と共通の条件とした。
【0092】
図13(A)は、サンプル1~4に形成されたTiN膜の膜厚を比較して示した図である。ここでは、TiN膜の膜厚をTiの検出量で換算している。つまり、Tiの検出量が多いほど、TiN膜の膜厚が厚くなり、TiN膜の膜厚が厚いほど、連続性のある膜であることを示している。
【0093】
図13(A)に示すように、ベアウエハ上に形成されたTiN膜と比較して、SiO
2膜が形成されたウエハ上に形成されたTiN膜の方が、膜厚が小さく、連続性のある膜が形成されにくいことが確認された。また、
図13(A)に示すように、サンプル3の第2ガスを先に供給した場合と比較して、サンプル1の第1ガスを先に供給した方が、ベアウエハ上に形成されたTiN膜の膜厚が厚くなり、連続性のある膜が形成されることが確認された。
【実施例2】
【0094】
ベアウエハであるサンプル1、サンプル3と、表面にSiO2膜が形成されたウエハであるサンプル2、サンプル4を用意し、サンプル1~4に対して、それぞれ下記に示す成膜処理を行った。
【0095】
サンプル1とサンプル2は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図4の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を所定回数行って、ベアウエハ上と、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜を形成したものである。
【0096】
サンプル3とサンプル4は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図4の基板処理シーケンスにおける前工程を行わないで、上述した成膜工程を行って、ベアウエハ上と、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜を形成したものである。
【0097】
図13(B)は、サンプル1~4のウエハ上に形成されたTiの成膜レートを比較して示した図である。
【0098】
図13(B)のサンプル1~4に示されているように、ベアウエハ上に形成されたTiの成膜レートと比較して、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上に形成されたTiの成膜レートの方が、成膜レートが遅く、連続性のある膜が形成されにくいことが確認された。また、
図13(B)のサンプル2とサンプル4に示されているように、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上であっても、成膜工程の前に前工程を行うことにより、Tiの成膜レートが速くなり、連続性のある膜が形成され易くなることが確認された。すなわち、酸化膜が形成されたウエハに対して、前工程を行った後に成膜工程を行うことにより、成膜レートが速くなり、連続性のある膜が形成されることが確認された。
【実施例3】
【0099】
ベアウエハであるサンプル1、サンプル3と、表面にSiO2膜が形成されたウエハであるサンプル2、サンプル4を用意し、サンプル1~4に対して、それぞれ下記に示す成膜処理を行った。
【0100】
サンプル1とサンプル2は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図4の基板処理シーケンスにより、前工程の後に成膜工程を所定回数行って、ベアウエハ上と、SiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜を形成したものである。すなわち、第1ガス供給と第2ガス供給の後に、成膜工程を所定回数行ったものである。
【0101】
サンプル3とサンプル4は、上述した基板処理装置10を用い、上述した
図6の基板処理シーケンスにより、前工程を所定回数行った後に、成膜工程を所定回数行って、ベアウエハ上と、SiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜を形成したものである。すなわち、第1ガス供給と第2ガス供給を所定回数行った後に、成膜工程を所定回数行ったものである。
【0102】
図14(A)は、第1ガスの供給時間とTiN膜の膜厚との関係を示した図であり、
図14(B)は、サイクル数とTiN膜の膜厚との関係を示した図である。
【0103】
図14(A)に示すように、前工程における第1ガスの供給時間を長くすることにより、ベアウエハ上と、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜の膜厚を微増させて形成することができ、薄い連続性のある膜を形成することができ、被覆率が向上することが確認された。また、
図14(B)に示すように、前工程における第1ガス供給と第2ガス供給のサイクル数を多くすることにより、ベアウエハ上と、表面にSiO
2膜が形成されたウエハ上に、それぞれTiN膜の膜厚を微増させて形成することができ、薄い連続性のある膜を形成することができ、被覆率が向上することが確認された。
【0104】
つまり、前工程における第1ガスの供給時間を長くする又は前工程における第1ガス供給と第2ガス供給のサイクル数を多くすることにより、ウエハ200上へのTiCl4の吸着を促進させることができ、連続性のあるTiN膜を形成することができることが確認された。すなわち、TiN膜の被覆率を向上させ、TiN膜表面に形成される金属含有膜を低抵抗化することが可能となることが確認された。
【0105】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0106】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理容器に収容する工程と、
(b)前記基板に対して水素と酸素を含む第1ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して窒素と水素を含む第2ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対してハロゲン元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(e)前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、
を有し、
(f)(b)と(c)を行う工程と、
(g)(f)の後に、(d)と(e)を行うことにより、前記基板に対して膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0107】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(f)では、(b)の後に(c)を行う。
【0108】
(付記3)
付記1又は2記載の方法であって、
(f)では、(b)と(c)を複数回行う。
【0109】
(付記4)
付記1から3のいずれか記載の方法であって、
(b)は、前記第1ガスを前記基板に対して物理吸着させる雰囲気で行う。
【0110】
(付記5)
付記1から4のいずれか記載の方法であって、
(c)は、前記第2ガスを前記基板に吸着した前記第1ガスと反応させる雰囲気で行う。
【0111】
(付記6)
付記1に記載の方法であって、
(f)では、(c)の後に(b)を行う。
【0112】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、
(f)では、(c)と(b)を複数回行う。
【0113】
(付記8)
付記6又は7記載の方法であって、
(b)は、前記第1ガスを前記基板に対して物理吸着させる雰囲気で行う。
【0114】
(付記9)
付記1から8のいずれか記載の方法であって、
(a)では、表面に酸化膜が形成された基板を前記処理容器に収容する。
【0115】
(付記10)
付記9に記載の方法であって、
前記酸化膜は、Si、Al、Ge、Ga、Zr、Ti、Hfの少なくとも1つ以上を含む。
【0116】
(付記11)
付記1から10のいずれか記載の方法であって、
前記第1ガスは、H2とO2、H2O、H2O2の少なくとも1つ以上を含む。
【0117】
(付記12)
付記1から11のいずれか記載の方法であって、
前記第2ガスは、NH3、N2とH2、N2H2、N3H3、N2H4、その他アミン基を含むガスの少なくとも1つ以上を含む。
【0118】
(付記13)
付記1から12のいずれか記載の方法であって、
前記第3ガスは、前記ハロゲン元素としてCl又はFを含み、Ti、Zr、Hf等の第4族元素、Mo、W等の第6族元素、の少なくとも1つ以上を含む。
【0119】
(付記14)
本開示の他の態様によれば、
付記1における各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【0120】
(付記15)
本開示のさらに他の態様によれば、
処理容器と、
前記処理容器内に基板を搬送する搬送系と、
前記処理容器内に水素と酸素を含む第1ガス、窒素と水素を含む第2ガス、ハロゲン元素を含む第3ガス及び反応ガスを供給するガス供給系と、
付記1における各処理(各工程)を行わせるように、前記搬送系及び前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0121】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室