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特許7324812半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H01L21/31 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021156450
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047503
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 愛子
(72)【発明者】
【氏名】八島 司
(72)【発明者】
【氏名】中川 良彦
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-072422(JP,A)
【文献】特開2019-036483(JP,A)
【文献】特開2018-190657(JP,A)
【文献】特開2018-067417(JP,A)
【文献】特開2018-067418(JP,A)
【文献】特開2014-175218(JP,A)
【文献】特開昭61-168920(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う工程と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する工程と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に、複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから、前記補正係数を取得する工程と、
取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する工程と、
算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う工程と、
補正した前記マイクロ波の出力設定値で、前記マイクロ波を処理室内に供給して基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
複数の前記補正テーブルは、複数の基板処理装置間での前記マイクロ波の出力値の差を低減する補正を行う装置間機差補正テーブルを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
複数の前記補正テーブルは、複数の前記処理室間でのマイクロ波の出力値の差を低減する補正を行うプロセスモジュール間補正テーブルを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
複数の前記補正テーブルは、前記基板の処理条件を設定したレシピでのマイクロ波の出力値の差を低減する補正を行うプロセス間補正テーブルを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記装置間機差補正テーブルは、前記複数の基板処理装置間において共通の前記補正係数を設定することが可能な、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記プロセスモジュール間補正テーブルは、前記処理室毎に前記補正係数を設定することが可能な、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記プロセス間補正テーブルは、基板の処理条件を定義したレシピ毎に前記補正係数を設定することが可能な、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
複数の前記補正テーブルは、複数の基板処理装置間での前記マイクロ波の出力値の差を低減する補正を行う装置間機差補正テーブル、複数の前記処理室間での前記マイクロ波の出力値の差を低減する補正を行うプロセスモジュール間補正テーブル、および前記基板の処理条件を設定したレシピでの前記マイクロ波の出力値の差を低減する補正を行うプロセス間補正テーブルを含み、
前記マイクロ波の前記補正値を算出する工程において、前記プロセスモジュール間補正テーブル及び/又は前記プロセス間補正テーブルより取得した前記補正係数と、前記装置間機差補正テーブルより取得した前記補正係数とを合わせて前記マイクロ波の出力設定値の前記補正値を算出する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記補正係数を取得する工程において、前記プロセスモジュール間補正テーブルが存在しない場合、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行わない、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記補正係数を取得する工程において、前記プロセス間補正テーブルが存在しない場合、前記プロセスモジュール間補正テーブルまたは前記装置間機差補正テーブルのいずれかを用いて前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記補正テーブルは、前記基板の処理条件を定義したレシピの関連情報として指定することが可能な、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記マイクロ波の出力が行われていない場合は前記補正値の算出は行わない、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記マイクロ波の出力状態と、前記マイクロ波の出力からの経過時間と、補正後の前記マイクロ波の前記出力設定値を記憶する工程を更に有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記基板の処理が行われていない場合、前記経過時間をクリアする、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板を処理する処理室と、
マイクロ波の出力設定値で前記マイクロ波を前記処理室内に供給するマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う入出力装置と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する記憶装置と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから前記補正係数を取得し、取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出し、算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う演算装置と、
を備える基板処理装置。
【請求項16】
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う手順と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する手順と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから、前記補正係数を取得する手順と、
取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する手順と、
算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う手順と、
補正した前記マイクロ波の出力設定値で、前記マイクロ波を処理室に供給して基板を処理する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野で用いられる基板処理装置において、基板をマイクロ波で処理する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来のマイクロ波出力装置では、機差や条件の違いにより処理室内の温度が低下することがあり、基板の成膜が安定しにくいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-66254号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様の目的は、機差や条件に関わらず、安定して成膜できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う工程と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する工程と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に、複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから、前記補正係数を取得する工程と、
取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する工程と、
算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う工程と、
補正した前記マイクロ波の出力設定値で、前記マイクロ波を処理室内に供給して基板を処理する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、機差や条件に関わらず、安定して成膜できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備える処理室の縦断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備える制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置で用いる補正値取得処理のフロー図である。
図4】装置間機差補正テーブル(第一補正テーブル)の設定画面を示す図である。
図5】プロセスモジュール間機差補正テーブル(第二補正テーブル)の設定画面を示す図である。
図6】プロセス間補正テーブル(第三補正テーブル)の設定画面を示す図である。
図7】マイクロ波出力と時間経過に伴う温度低下を示すグラフである。
図8】補正値算出例を示す参考図である。
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のマイクロ波出力値の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本開示の実施形態に係る基板処理装置の処理室の縦断面図(垂直断面図)である。基板処理装置100は、処理室10と、搬送室(図示省略)と、マイクロ波供給部19とを備えている。処理室10は、基板11を処理する。マイクロ波供給部19は、導波路21と、導波口22とを備えている。基板11としては、例えば半導体基板やLCD基板等がある。なお、マイクロ波供給部19にマイクロ波発生部20を設けてもよい。
【0011】
マイクロ波発生部20は、例えば、固定周波数マイクロ波又は可変周波数マイクロ波を発生するように構成されている。このマイクロ波発生部20としては、例えばマイクロトロン、クライストロン、ジャイロトロン等が用いられる。マイクロ波発生部20で発生したマイクロ波は、導波路21を介して、処理室10内に連通する導波口22から処理室10内に輻射される。これにより、誘電加熱の効率を上げることができる。導波路21には、導波路21内部の反射電力を少なくするマッチング機構26が設けられている。
【0012】
マイクロ波供給部19は、マイクロ波発生部20、導波路21、導波口22、及びマッチング機構26を含んで構成されている。
【0013】
処理室10を形成する処理容器18は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されている。この処理容器18は、処理室10と外部とをマイクロ波的に遮蔽する構造となっている。
【0014】
処理室10内には、基板11をその上端13Aで支持する基板支持機構としての基板支持ピン13が設けられている。
【0015】
基板支持ピン13は、例えば石英やセラミックス、サファイア、又はテフロン(登録商標)等、伝熱性が低く、電気的に絶縁性が良好な材質で形成されている。このような材質とした場合、基板支持ピン13の加熱が抑制される。これにより、基板11から基板支持ピン13への熱逃げが抑制される。熱逃げが抑制されることによって基板面内を均一に加熱することが可能になる。また、基板支持ピン13の加熱が抑制されることで、基板支持ピン13の熱変形を防止できる。また、基板支持ピン13は、複数(本実施形態においては3本)で構成される。
【0016】
処理室10の側壁には、例えば窒素(N2)等のガスを供給するガス供給管52が設けられている。ガス供給管52には、上流(ガス流れ方向の上流)から順に、ガス供給源55、ガス流量を調整する流量制御装置54、ガス流路を開閉する開閉バルブ53が設けられている。開閉バルブ53を開閉することで、処理室10内にガス供給管52からガスが供給、又は供給停止される。ガス供給管52から供給されるガスは、処理室10内の酸素濃度を低酸素濃度にしたり、基板11を冷却したり、パージガスとして処理室10内のガスや雰囲気を押し出したりするのに用いられる。
【0017】
ガス供給部50は、ガス供給管52、開閉バルブ53、流量制御装置54及びガス供給源55を含んで構成されている。流量制御装置54と開閉バルブ53は、制御部80と電気的に接続されており、制御部80により制御される。
【0018】
図1に示されるように、例えば直方体である処理容器18の下部であって処理室10の側壁には、処理室10内のガスを排気するガス排出管62が設けられている。ガス排出管62には、上流から順に、排気装置としての真空ポンプ64と、圧力調整バルブ63が設けられている。この圧力調整バルブ63の開度を調整することで、処理室10内の圧力が所定の値に調整される。なお、本実施形態では、一例として処理容器18を直方体としているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、処理容器18は円柱でもよいし、多面体でもよい。
【0019】
ガス排出部60は、ガス排出管62、圧力調整バルブ63及び真空ポンプ64を含んで構成されている。圧力調整バルブ63は、制御部80と電気的に接続されており、制御部80により圧力調整制御される。
【0020】
図1に示されるように、処理容器18の一側面には、処理室10の内外に基板11を搬送するための基板搬送口71が設けられている。基板搬送口71には、ゲートバルブ72が設けられている。ゲートバルブ駆動部73を駆動させてゲートバルブ72を開けることにより、処理室10内と搬送室内とが連通するように構成されている。基板搬送部70は、基板搬送口71、ゲートバルブ72及びゲートバルブ駆動部73を含んで構成されている。搬送室内には、基板11を搬送する搬送ロボット(図示省略)が設けられている。搬送ロボットには、基板11を搬送する際に基板11を支持する搬送アーム(図示省略)が備えられている。ゲートバルブ72を開くことによって、搬送ロボットにより処理室10内と搬送室内との間で、基板11を搬送することが可能なように構成されている。
【0021】
図2は、制御部80のハードウェア構成を示すブロック図である。制御部80は、演算装置102と、記憶装置104と、I/Oポート106とを備えている。演算装置102、記憶装置104、及びI/Oポート106は、内部バス108を介して各々データ交換が可能なように接続されている。
【0022】
演算装置102として、CPU又は専用の演算回路等が用いられる。
【0023】
記憶装置104は、内部記憶媒体105を有している。内部記憶媒体105内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや後述する基板処理工程や条件などを含むプロセスレシピ等が読み出し可能に格納されている。
【0024】
なお、プロセスレシピは、基板処理工程における各ステップを制御部80に実行させ、所定の結果が得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して単にプログラムともいう。ここで、本開示においてプログラムとした場合には、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、またはその両方を含む場合がある。
【0025】
I/Oポート106には、マイクロ波発生部20、開閉バルブ53、流量制御装置54、圧力調整バルブ63、真空ポンプ64、ゲートバルブ駆動部73、搬送ロボット等がバス107を介して接続されている。I/Oポート106を介して後述する補正したマイクロ波の設定値をマイクロ波発生部20に送信することが可能になる。
【0026】
また、制御部80はネットワーク110に接続されている。ネットワーク110は、半導体製造工場内に設けられたネットワークやインターネット等で構成される。
【0027】
また、制御部80には、入出力装置204と外部記憶装置206が内部バス108を介して接続されている。ここで、入出力装置204は、制御部80と一体の構成としてもよい。入出力装置204として、ディスプレイ、タッチパネル、操作端末、キーボード、マウス等が用いられる。外部記憶装置206は、外部記憶媒体207を有している。外部記憶媒体207内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや後述する基板処理工程や条件などを含むプロセスレシピ等が読み出し可能に格納されている。
【0028】
つまり、制御部80は、演算装置102が、記憶装置104の内部記憶媒体105に記憶されたプログラムを実行することにより、I/Oポート106を介してマイクロ波発生部20、開閉バルブ53、流量制御装置54、圧力調整バルブ63、真空ポンプ64、ゲートバルブ駆動部73、温度測定器(図示省略)等の各構成部の動作を制御する。
なお、本開示は、上記構成に限定されない。例えば、プログラムは、制御部80の外部に設けられた外部記憶装置206に格納するようにし、外部記憶装置206から読み出して実行してもよいし、外部記憶装置206に記録されたプログラムを内部記憶媒体105へ移動させ、内部記憶媒体105から読み出して実行するようにしてもよい。また、プログラムは、制御部80に接続されたネットワーク110から内部記憶媒体105に記憶させてから実行するようにしてもよい。
【0029】
ここで、内部記憶媒体105として、例えばハードディスク、CD-ROM、フラッシュメモリ等が用いられる。また、外部記憶媒体207として、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、MO、フラッシュメモリ等が用いられる。
【0030】
以下に、本開示のマイクロ波で基板処理装置100内の基板11を処理(本実施形態では、加熱処理)する際のマイクロ波出力値の制御方法について図3図8及び図9に基づいて説明する。
【0031】
(ステップS200)
まず、マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う。具体的には、入出力装置204を用いて補正係数の設定を行う。本実施形態では、図2に示されるように、記憶装置104の内部記憶媒体105にマイクロ波情報、装置間機差補正テーブル、プロセスモジュール間補正テーブル及びプロセス間補正テーブルが格納されている。装置間機差補正テーブルは、マイクロ波の出力値と温度測定器で測定された実際の温度との補正を目的としたテーブルであり、以下では「第一補正テーブル」と称する。また、プロセスモジュール間補正テーブルは、マイクロ波発生部20におけるマイクロ波の出力開始から時間が経過することによる出力値の低下を補正するためのテーブルであり、以下では「第二補正テーブル」と称する。プロセス間補正テーブルは、プロセス毎の基板差を補正するためのテーブルであり、以下では「第三補正テーブル」と称する。
【0032】
まず、入出力装置204を用いて図4に示される第一補正テーブルに補正係数を設定する。具体的には、マイクロ波の出力値の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定する。なお、基板処理装置100が複数の処理室10を有する場合には、各々の処理室10のマイクロ波発生部20毎の第一補正テーブルに補正係数を設定可能である。また、全てのマイクロ波発生部20の第一補正テーブルに共通の補正係数を設定することも可能である。
【0033】
次に、入出力装置204を用いて図5に示される第二補正テーブルに補正係数を設定する。具体的には、マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、マイクロ波の出力値の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定する。なお、基板処理装置100が複数の処理室10を有する場合には、モジュール毎(処理室10毎)の第二補正テーブルに補正係数を設定可能である。
【0034】
次に、入出力装置204を用いて図6に示される第三補正テーブルに補正係数を設定する。具体的には、マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、マイクロ波のオフセット値の補正係数を設定する。なお、基板処理装置100が複数の処理室10を有する場合には、モジュール毎(処理室10毎)の第三補正テーブルに補正係数を設定可能である。
【0035】
(ステップS210)
設定した補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する。具体的には、記憶装置104の内部記憶媒体105で、それぞれ補正係数が設定された第一補正テーブル、第二補正テーブル及び第三補正テーブルを記憶する。
【0036】
(ステップS220)
次に、マイクロ波の出力開始から周期的に、複数の補正テーブルのうち、少なくとも一つの補正テーブルから、補正係数を取得する。以下では、マイクロ波の補正係数を取得し、マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する処理を補正値取得処理と称する。
【0037】
まず、図3に示されるように、第二補正テーブルをダウンロードする(ステップS221)。次に、第二補正テーブルのダウンロードの成否判定を行う(ステップS222)。第二補正テーブルのダウンロードに成功している場合、第三補正テーブルをダウンロードする(ステップS223)。なお、第二補正テーブルのダウンロードに失敗した場合、補正値取得処理は終了する。言い換えると、第二補正テーブルが存在しない場合、マイクロ波の出力設定値の補正は行わない。第三補正テーブルのダウンロード後には、マイクロ波の出力状態、すなわち、マイクロ波発生部20の稼働状態を判定する(ステップS224)。マイクロ波発生部20が稼働していない場合、補正値取得処理は終了する。マイクロ波発生部20が稼働し、マイクロ波を出力している場合、レシピステップが単発か否かを判定する(ステップS225)。ステップS225において、レシピステップが単発の場合、レシピの実行状態を判定する(ステップS226)。レシピ実行状態が未実行の場合、マイクロ波の出力開始からの経過時間がクリアされる(スッテプS227)。その後、ステップS229に移行して、マイクロ波の出力設定値が内部記憶媒体105から取得される。また、ステップS225において、レシピステップが単発でない場合(言い換えると、レシピステップが複数の場合)、マイクロ波の出力開始からの経過時間が内部記憶媒体105から取得される(ステップS228)。その後、ステップS229に移行する。また、レシピ実行状態が実行中の場合、ステップS228に移行し、その後ステップS229に移行する。
【0038】
ステップS229でマイクロ波の出力設定値を内部記憶媒体105から取得した後、第三補正テーブルのダウンロードの成否を判定する(ステップS230)。第三補正テーブルのダウンロードに成功していると判定した場合、レシピコンビネーションの情報を内部記憶媒体105から取得する(ステップS231)。ここで、レシピにコンビネーションされているとは、レシピは成膜を行う手順を記載したものであり、成膜を行うための温度、ガス流量、圧力設定等をステップ単位で設定することができる。コンビネーションとはこのレシピに設定される各種設定項目を当該装置の条件に合わせて補正を行うための情報を示す。次に、取得したレシピコンビネーションの情報に第三補正テーブルのコンビネーションの情報が含まれている否かを判定する(ステップS232)。第三補正テーブルのコンビネーションの情報が含まれている場合、第三補正テーブルから補正係数を取得する(ステップS233)。第三補正テーブルから補正係数を取得した後は、第二補正テーブルから補正係数を取得する(ステップS234)。一方、ステップS230において第三補正テーブルのダウンロードに失敗していると判定した場合、ステップS234に移行して第二補正テーブルから補正係数を取得する。言い換えると、第三補正テーブルが存在しない場合、第二補正テーブル又は第一補正テーブルのいずれかを用いてマイクロ波の出力設定値の補正を行う。第二補正テーブルから補正係数を取得した後は、第一補正テーブルから補正係数を取得する(ステップS235)。
【0039】
(ステップS240)
次に、ステップS230で取得した補正係数から、マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する。具体的には、第二補正テーブル及び/又は第三補正テーブルより取得した補正係数と、第一補正テーブルより取得した補正係数とを合わせてマイクロ波の出力設定値を算出する。
【0040】
図8には、補正テーブル毎の補正値計算式が示されている。ステップS240における補正値の算出は、図8の補正値計算式により求められる。なお、各補正値計算式に関しては、内部記憶媒体15に格納されている。また、図8には、ステップS225においてレシピステップが単発の場合の補正値計算式と、プロセスレシピ実行中の場合の補正値計算式が示されている。
【0041】
図8に示される補正値計算式を用いてマイクロ波の出力設定値の補正値を算出すると、補正値取得処理が終了する。
【0042】
(ステップS250)
次に、ステップS240で算出した補正値を用いてマイクロ波の出力設定値の補正を行う。
【0043】
(ステップS260)
次に、補正値に基づいて補正したマイクロ波の出力設定値をマイクロ波発生部20に送信する。マイクロ波発生部20では、補正したマイクロ波の出力設定値でマイクロ波発生部20からマイクロ波を発生させる。発生したマイクロ波は処理室10内に供給され、基板11上に形成された膜を処理する。ここでは、例えば膜の加熱処理が為される。
【0044】
周期的にステップS230~ステップS260を繰り返すことで、図7に示されるように、マイクロ波の出力設定値が最適化され、本開示の補正値取得処理を実行しない構成と比べて、基板11の温度(処理室10内の温度でもよい)がマイクロ波の出力開始からの経過時間によって低下していくのが抑制される。なお、図7で示すPM1は、補正値取得処理を実施しない比較例を指し、PM2は、補正値取得処理を実施した本開示の実施例を指す。また、CH1とCH2は、補正係数の値が異なるものである。
【0045】
本開示の一実施形態のプログラムは、
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う手順と、
設定した補正係数を保持する複数の補正テーブル(第一補正テーブル、第二補正テーブル及び第三補正テーブルを含む)を記憶する手順と、
マイクロ波の出力開始から周期的に複数の補正テーブルのうち、少なくとも一つの補正テーブルから、補正係数を取得する手順と、
取得した補正係数から、マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する手順と、
算出した補正値を用いて、マイクロ波の出力設定値の補正を行う手順と、
補正したマイクロ波の出力設定値で、マイクロ波を処理室10に供給して基板11を処理する手順と、
をコンピュータとしての制御部80によって基板処理装置100に実行させるプログラムである。
【0046】
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態では、マイクロ波の出力開始から周期的に、複数の補正テーブル(第一補正テーブル、第二補正テーブル及び第三補正テーブル)のうち、少なくとも一つの補正テーブルから、補正係数を取得する工程と、取得した補正係数から、マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する工程と、算出した補正値を用いて、マイクロ波の出力設定値の補正を行う工程と、補正したマイクロ波の出力設定値で、マイクロ波を処理室10内に供給して基板11を処理する工程と、を有している。このため、マイクロ波の出力開始からの経過時間及びマイクロ波の出力値に合わせたマイクロ波の出力設定値の補正を行うことにより、安定した処理室10内の温度を継続して提供することが可能となる。これにより、装置間、あるいはプロセスモジュール(処理室10)間での装置の条件に左右されることなく、安定した成膜が可能になる。
【0047】
また、本実施形態では、複数の補正テーブルは、マイクロ波の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定可能な第一補正テーブルを含んでいる。このため、装置間でのマイクロ波の出力値の差を低減するための補正を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の補正テーブルは、マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、マイクロ波の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定可能な第二補正テーブルを含んでいる。このため、プロセスモジュール間でのマイクロ波の出力値の差を低減するための補正を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、複数の補正テーブルは、マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、マイクロ波のオフセット値の補正係数を設定可能な第三補正テーブルを含んでいる。このため、成膜時のレシピとコンビネーションすることにより、ステップ単位でのマイクロ波の出力値の差を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、補正係数の設定を行う工程において、第一補正テーブルは、装置全体として共通の補正係数を設定することが可能である。このため、装置間でのマイクロ波発生部20の機差を低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、補正係数の設定を行う工程において、第二補正テーブルは、プロセスモジュール毎に補正係数を設定することが可能である。このため、プロセスモジュール間でのマイクロ波発生部20の機差を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、補正係数の設定を行う工程において、第三補正テーブルは、プロセスモジュール毎に補正係数を設定することが可能である。このため、プロセス間(レシピ間)でのマイクロ波発生部20の差を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、マイクロ波の補正値を算出する工程において、第二補正テーブル及び/又は第三補正テーブルより取得した補正係数と、第一補正テーブルより取得した補正係数とを合わせてマイクロ波の出力設定値の補正値を算出する。このように複数の補正テーブルを組み合わせて補正値を算出することにより、マイクロ波の出力値が条件に合わせて補正され、プロセスモジュール間の機差や装置間の機差による差を低減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、補正係数を取得する工程において、第二補正テーブルが存在しない場合、マイクロ波の出力設定値の補正を行わない。このため、誤った補正を行うのを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態では、補正係数を取得する工程において、第三補正テーブルが存在しない場合、第二補正テーブル又は第一補正テーブルのいずれかを用いてマイクロ波の出力設定値の補正を行う。このため、条件に合ったマイクロ波の出力設定値の補正を行うことができる。
【0056】
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上述の各実施形態では、基板に処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0057】
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0058】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う工程と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する工程と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に、複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから、前記補正係数を取得する工程と、
取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する工程と、
算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う工程と、
補正した前記マイクロ波の出力設定値で、前記マイクロ波を処理室内に供給して基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0059】
(付記2)
好ましくは、付記1に記載の半導体装置の製造方法であって、
複数の前記補正テーブルは、前記マイクロ波の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定可能な装置間機差補正テーブルを含む。
【0060】
(付記3)
好ましくは、付記1に記載の半導体装置の製造方法であって、
複数の前記補正テーブルは、前記マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、前記マイクロ波の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定可能なプロセスモジュール間補正テーブルを含む。
【0061】
(付記4)
好ましくは、付記1に記載の半導体装置の製造方法であって、
複数の前記補正テーブルは、前記マイクロ波の出力開始から経過時間毎に、前記マイクロ波のオフセット値の補正係数を設定可能なプロセス間補正テーブルを含む。
【0062】
(付記5)
好ましくは、付記2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記装置間機差補正テーブルは、装置全体として共通の補正係数を設定することが可能である。
【0063】
(付記6)
好ましくは、付記3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記プロセスモジュール間補正テーブルは、モジュール毎に補正係数を設定することが可能である。
【0064】
(付記7)
好ましくは、付記4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記補正係数の設定を行う工程において、
前記プロセス間補正テーブルは、モジュール毎に補正係数を設定することが可能である。
【0065】
(付記8)
好ましくは、付記2に記載の半導体装置の製造方法であって、
複数の前記補正テーブルは、前記マイクロ波の出力開始から経過時間毎に前記マイクロ波の傾きとオフセット値のそれぞれの補正係数を設定可能なプロセスモジュール間補正テーブル及び/又は前記マイクロ波の出力開始から経過時間毎に前記マイクロ波のオフセット値の補正係数を設定可能なプロセス間補正テーブルを含み、
前記マイクロ波の前記補正値を算出する工程において、前記プロセスモジュール間補正テーブル及び/又は前記プロセス間補正テーブルより取得した補正係数と、前記装置間機差補正テーブルより取得した補正係数とを合わせて前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する。
【0066】
(付記9)
好ましくは、付記8に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記補正係数を取得する工程において、前記プロセスモジュール間補正テーブルが存在しない場合、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行わない。
【0067】
(付記10)
好ましくは、付記8に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記補正係数を取得する工程において、前記プロセス間補正テーブルが存在しない場合、前記プロセスモジュール間補正テーブル又は前記装置間機差補正テーブルのいずれかを用いて前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う。
【0068】
(付記11)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
マイクロ波の出力設定値で前記マイクロ波を前記処理室内に供給するマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う入出力装置と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する記憶装置と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから前記補正係数を取得し、取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出し、算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う演算装置と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0069】
(付記12)
本開示の一態様によれば、
マイクロ波の出力値を補正する補正係数の設定を行う手順と、
設定した前記補正係数を保持する複数の補正テーブルを記憶する手順と、
前記マイクロ波の出力開始から周期的に複数の前記補正テーブルのうち、少なくとも一つの前記補正テーブルから、前記補正係数を取得する手順と、
取得した前記補正係数から、前記マイクロ波の出力設定値の補正値を算出する手順と、
算出した前記補正値を用いて、前記マイクロ波の出力設定値の補正を行う手順と、
補正した前記マイクロ波の出力設定値で、前記マイクロ波を処理室に供給して基板を処理する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0070】
20 マイクロ波発生部
80 制御部
100 基板処理装置
102 演算装置
104 記憶装置
204 入出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9