(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】作物の収穫量を予測する方法及び装置、作物の栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230804BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20230804BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230804BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20230804BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
A01G22/05 Z
C12Q1/68
G06Q50/02
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019169301
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】筧 雄介
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】東出 忠桐
(72)【発明者】
【氏名】今西 俊介
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0166774(US,A1)
【文献】施設トマトの収量増加を目的とした受光と物質生産の関係の利用,園芸学研究,2018年
【文献】キュウリの環境制御,大規模施設園芸・植物工場共通テキスト,2018年
【文献】Prediction of Tomato Yield on the Basis of Solar Radiation Before Anthesis under Warm Greenhouse Conditions,HortScience,2009年
【文献】Decreasing or Non-decreasing Allocation of Dry Matter to Fruit in Japanese Tomato Cultivars in Spite of the Increase in Total Dry Matter of Plants by CO2 Elevation and Fogging,The Horticulture Journal,2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 22/05
C12Q 1/68
G06Q 50/02
C12N 15/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の特定の栽培条件のうち特定の遺伝子発現量に影響を与える特定の環境因子の値と、該特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量との間の関係式と、前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式とから、前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式を取得する、関係式取得工程、及び
前記特定の環境因子及び
前記作物の光利用効率の関係式に、
前記特定の環境因子の値を入力して、該
特定の環境因子の値に対応する
前記作物の光利用効率の値を算出し、算出した
前記作物の光利用効率の値から作物の収穫量を予測する、収穫量予測工程
、
を含む、作物の収穫量を予測する方法。
【請求項2】
前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式を取得する際に、作物の特定の栽培条件における光利用効率が、作物の積算受光量及び総乾物重量に基づく回帰分析によって算出される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子が、光合成関連遺伝子である、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
光合成関連遺伝子が、光化学系I複合体の反応中心タンパク質サブユニットA又はB(PsaA又はPsaB)遺伝子である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定の環境因子が、作物に曝露される二酸化炭素の濃度である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
作物が、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ及びトウガラシからなる群より選択されるナス科の作物である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
作物が、トマトである、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
作物の特定の栽培条件のうち特定の遺伝子発現量に影響を与える特定の環境因子の値と、該特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量との間の関係式と、前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式とから、前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式を取得する、関係式取得手段と、
前記特定の環境因子及び
前記作物の光利用効率の関係式に、
前記特定の環境因子の値を入力して、該
特定の環境因子の値に対応する
前記作物の光利用効率の値を算出し、算出した
前記作物の光利用効率の値から作物の収穫量を予測する、収穫量予測手段
と、
を含む、作物の収穫量を予測する装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の作物の収穫量を予測する装置を備える、作物の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の収穫量を予測する方法及び装置、作物の栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光、CO2濃度、温度及び水分量等の環境因子を人工的に制御して作物を栽培する、作物栽培装置が開発されている。このような装置は、植物工場とも称される。作物栽培装置又は植物工場は、自然環境の影響を受けることなく、安定的に作物生産を行うことができる。
【0003】
従来、作物の栽培においては、実際に作物を栽培して、作物の外観及び重量等を指標に試行錯誤を重ね、作物品種に適した栽培条件、例えば、光、温度、CO2濃度及び水分量等の環境因子の最適値を見出してきた。しかしながら、このような手法では、指標の判断及び栽培条件の決定は、農業者の経験又は直感に依存することが多く、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を迅速に行うことが困難である。これは、環境因子を人工的に制御できる作物栽培装置又は植物工場における作物の栽培でも同様である。このため、作物栽培装置又は植物工場において、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を行う技術が求められていた。
【0004】
例えば、特許文献1は、人工的に制御された明暗サイクル下で栽培光を照射して植物を栽培するための栽培光制御方法を記載する。当該文献はまた、植物の生育に伴い発現が増加する内在性遺伝子の発現量を生物発光で識別することができるように改変された植物体の生物発光に基づいて植物体の生育状態を診断する分子診断方法を記載する。
【0005】
作物の乾物重量の予測は、果実の新鮮重量の予測へと広く普及している(非特許文献1)。乾物重量の増加に対する機構モデルで使用される光合成に基づく方法に匹敵する、新鮮重量の予測の一般的な方法が、必要とされている(非特許文献2)。非特許文献3は、収穫量の構成要素が階層型構造をとり、上位階層の要素が下位階層の要素によって決定されることを記載する。地上部の全乾物生産は、光利用効率(以下、「LUE」とも記載する)によって、且つ受光量によって決定される(非特許文献3)。受光量は、吸光係数(light extinction coefficient)及び葉面積指数(leaf area index, LAI)によって決定される。葉面積は、群落の受光の重要な決定要因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Booteら, Improving the CROPGRO-Tomato model for predicting growth and yield response to temperature., Hort Science, 第47巻, p. 1038-1049, 2012年
【文献】Heuvelinkら, Effect of Leaf Area on Tomato Yield., Acta Horticulturae, 第2005巻, p. 691, 2004年
【文献】Higashide and Heuvelink, Physiological and morphological changes over the past 50 years in yield components in tomato., Journal of American Society for Horticultural Science, 第134(4)巻, p. 460-465, 2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように、従来の作物の栽培における栽培条件の最適化及び収穫量の予測は、農業者の経験又は直感に依存することが多く、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を迅速に行うことが困難であった。この問題は、新規品種の栽培、及び新規圃場、作物栽培装置又は植物工場における栽培を開始するときに特に顕著となる。このような新規の栽培では、従来品種の栽培及び従来圃場等における栽培の経験等が参考にできない場合があるからである。このため、作物の栽培、例えば、作物栽培装置又は植物工場における作物の栽培において、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を簡便且つ迅速に行う技術が依然として求められていた。
【0009】
それ故、本発明は、作物の栽培、例えば、作物栽培装置又は植物工場における作物の栽培において、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を簡便且つ迅速に行う手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、作物の生育時の遺伝子発現を網羅的に分析することにより、栽培条件における環境因子の変化に応答して、特定の遺伝子発現量が変化することを見出した。また、本発明者らは、作物の特定の栽培条件における作物の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式から、作物の栽培条件における環境因子及び作物の光利用効率の関係式が取得できること、この環境因子及び作物の光利用効率の関係式に基づき、任意の環境因子の値に対応する作物の収穫量を予測し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 作物の特定の栽培条件のうち特定の遺伝子発現量に影響を与える特定の環境因子の値と、該特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量との間の関係式と、前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式とから、前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式を取得する、関係式取得工程、及び
前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式に、前記特定の環境因子の値を入力して、該特定の環境因子の値に対応する前記作物の光利用効率の値を算出し、算出した前記作物の光利用効率の値から作物の収穫量を予測する、収穫量予測工程、
を含む、作物の収穫量を予測する方法。
(2) 前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式を取得する際に、作物の特定の栽培条件における光利用効率が、作物の積算受光量及び総乾物重量に基づく回帰分析によって算出される、前記実施形態(1)に記載の方法。
(3) 遺伝子が、光合成関連遺伝子である、前記実施形態(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 光合成関連遺伝子が、光化学系I複合体の反応中心タンパク質サブユニットA又はB(PsaA又はPsaB)遺伝子である、前記実施形態(3)に記載の方法。
(5) 前記特定の環境因子が、作物に曝露される二酸化炭素の濃度である、前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 作物が、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ及びトウガラシからなる群より選択されるナス科の作物である、前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 作物が、トマトである、前記実施形態(6)に記載の方法。
(8) 作物の特定の栽培条件のうち特定の遺伝子発現量に影響を与える特定の環境因子の値と、該特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量との間の関係式と、前記特定の栽培条件における作物の前記特定の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式とから、前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式を取得する、関係式取得手段と、
前記特定の環境因子及び前記作物の光利用効率の関係式に、前記特定の環境因子の値を入力して、該特定の環境因子の値に対応する前記作物の光利用効率の値を算出し、算出した前記作物の光利用効率の値から作物の収穫量を予測する、収穫量予測手段と、
を含む、作物の収穫量を予測する装置。
(9) 前記実施形態(8)に記載の作物の収穫量を予測する装置を備える、作物の栽培装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、作物の栽培、例えば、作物栽培装置又は植物工場における作物の栽培において、栽培条件の最適化及び収穫量の予測を簡便且つ迅速に行う手段を提供することができる。
【0013】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、光合成遺伝子であるPsaAおよびPsaBの発現と光利用効率(LUE)との関係を示すグラフである。図中、Aは、それぞれの品種のBC02実験の栽培期間全体を通じた平均値の関係性であり、Bは、BC02実験において十分なDMPのとき(30 g/m
2/日)の関係性である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<1. 作物の収穫量を予測する方法>
本発明者らは、作物の生育時の遺伝子発現を網羅的に分析することにより、栽培条件における環境因子の変化に応答して、特定の遺伝子発現量が変化することを見出した。また、本発明者らは、作物の特定の栽培条件における作物の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式から、作物の栽培条件における環境因子及び作物の光利用効率の関係式が取得できること、この環境因子及び作物の光利用効率の関係式に基づき、任意の環境因子の値に対応する作物の収穫量を予測し得ることを見出した。それ故、本発明の一態様は、作物の収穫量を予測する方法に関する。
【0017】
本発明の各態様において、作物は、特に限定されないが、例えば、ナス科の作物であり、特に、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ及びトウガラシからなる群より選択されるナス科の作物であり、とりわけ、トマトである。前記作物に本発明の各態様を適用することにより、該作物の収穫量を簡便且つ迅速に予測することができる。
【0018】
本発明の各態様は、品種による環境因子への応答を迅速に定量できることを特徴とする。それ故、本発明の別の一態様は、トマトの将来の新品種を含む、作物の品種の品種間差を判定する方法に関する。また、CO2濃度と光合成との間の関係性は、全ての植物において同一であること、並びに光合成関連遺伝子のような植物の生育に不可欠な遺伝子の機能は、種を超えて保存性が高いことが知られている。それ故、少なくともトマトを含むナス科の近縁種の作物では、光合成遺伝子、特に光化学系I複合体の反応中心タンパク質サブユニットA又はBの遺伝子発現を用いて、本明細書の実施例に示す方法と同様の方法により、LUEの予測をすることができる。
【0019】
本態様の方法は、収穫量予測工程を含む。本態様の方法はまた、所望により、環境因子及び遺伝子発現量の関係式取得工程、遺伝子発現量及び光利用効率の関係式取得工程及び環境因子及び光利用効率の関係式取得工程を含むことができる。各工程について、以下において詳細に説明する。
【0020】
[1-1. 環境因子及び遺伝子発現量の関係式取得工程]
本態様の方法は、所望により、環境因子及び遺伝子発現量の関係式取得工程を含むことができる。本工程は、作物の特定の栽培条件における環境因子の値と、該特定の栽培条件における作物の遺伝子発現量との間の関係式を取得することを含む。
【0021】
本発明の各態様において、「環境因子」は、作物の栽培条件における種々の周囲環境の因子を意味する。環境因子としては、限定するものではないが、例えば、光、二酸化炭素濃度、温度、湿度、肥料の濃度又は量、及び水分量等を挙げることができる。本発明の各態様において、環境因子は、作物に曝露される二酸化炭素の濃度又は作物の表面(例えば、葉面)に照射される光照射量であることが好ましく、作物に曝露される二酸化炭素の濃度であることがより好ましい。前記環境因子に基づき本発明の各態様を実施することにより、該作物の収穫量を簡便且つ迅速に予測することができる。
【0022】
本発明の各態様において、環境因子の値を取得するためには、当該技術分野で通常使用される各種の測定手段を用いることができる。例えば、環境因子が作物に曝露される二酸化炭素の濃度である場合、通常の二酸化炭素濃度測定器を使用すればよい。また、環境因子が作物の表面(例えば、葉面)に照射される光照射量である場合、通常の光量子計又は光量子束密度計を使用すればよい。或いは、作物栽培装置又は植物工場において本発明の各態様を実施する場合、作物栽培装置又は植物工場が備える環境因子の調節手段を介して該環境因子の値を取得してもよい。
【0023】
本発明の各態様において、「遺伝子発現」及び「遺伝子発現量」は、栽培条件における環境因子に対して応答し得る遺伝子の発現及び発現量を意味する。本発明の各態様において使用する遺伝子は、例えば、環境因子を変化させる栽培条件下で作物を栽培し、該作物における遺伝子発現のパターンを、RNAシーケンス解析、マイクロアレイ分析又は定量的リアルタイムPCR等の手段によって分析することにより、決定することができる。
【0024】
本発明の各態様において使用する遺伝子は、例えば、光合成関連遺伝子、オーキシン応答関連遺伝子、細胞周期(M期)関連遺伝子又は窒素化合物代謝プロセス関連遺伝子であり、特に、光化学系I複合体の反応中心タンパク質サブユニットA又はB(PsaA又はPsaB)遺伝子等の光合成関連遺伝子である。前記で例示した遺伝子は、いずれも物質生産量と連動して発現量が変化し、且つ環境因子(例えば、作物に曝露される二酸化炭素の濃度)の変化に応答してその発現量が顕著に変化し得る。それ故、前記遺伝子に基づき本発明の各態様を実施することにより、該作物の収穫量を簡便且つ迅速に予測することができる。
【0025】
本工程において、環境因子の値と作物の遺伝子発現量との間の関係式は、例えば、環境因子の値と作物の遺伝子発現量とを一般化線形モデルに適合させることにより、取得することができる。本工程において取得される関係式は、例えば、下記式I:
(遺伝子発現量)= A(I)×(環境因子)+ B(I) (I)
で表される。式中、A(I)及びB(I)は、作物、特に特定の品種に基づく定数である。
【0026】
[1-2. 遺伝子発現量及び光利用効率の関係式取得工程]
本態様の方法は、所望により、遺伝子発現量及び光利用効率の関係式取得工程を含むことができる。本工程は、作物の特定の栽培条件における作物の遺伝子発現量と、該作物の光利用効率との間の関係式を取得することを含む。
【0027】
本発明の各態様において、「光利用効率(LUE)」は、作物の成長における物質生産に利用される光量を意味する。作物の物質生産量は、結果として得られる作物の収穫量と相関する。それ故、本発明の各態様において、光利用効率の変化を指標として、作物の収穫量を予測することができる。
【0028】
本発明の各態様において、特定の栽培条件における光利用効率は、作物の積算受光量及び総乾物重量に基づく線形回帰分析によって算出されることが好ましい。特定の栽培条件における光利用効率は、例えば、以下の方法で算出することができる。作物の葉面積(m2)と栽植密度(個体/m2)とを乗算し、葉面積指数(以下、「LAI」とも記載する)を計算する。LAIは直線的に増加すると仮定して、それぞれの試料採取日のLAIに基づき、光照射開始を0として最初の試料採取日まで、又は試料採取日の異なるLAIの間の等差数列を、試料採取日以外のLAIとする。前記手順で得られた日毎のLAIと、定数k=0.75とを乗算し、自然対数の底eの-k LAI乗(e - k LAI)を計算する。次に、(1 - e -k LAI)と、1日の光照射量とを乗算し、面積あたりの受光量(mol/m2/日)を計算する。各試料採取日までの積算受光量及び面積あたり総乾物重量(以下、「TDM」とも記載する)に基づき線形回帰分析を行い、傾きを光利用効率として得る。
【0029】
本工程において、作物の遺伝子発現量と該作物の光利用効率との間の関係式は、例えば、作物の遺伝子発現量と該作物の光利用効率とを一般化線形モデルに適合させることにより、取得することができる。本工程において取得される関係式は、例えば、下記式II:
(LUE予測値の傾き)= A(II)×(遺伝子発現量)+ B(II) (II)
で表される。式中、A(II)及びB(II)は、作物、特に特定の品種に基づく定数である。
【0030】
[1-3. 環境因子及び光利用効率の関係式取得工程]
本態様の方法は、所望により、環境因子及び光利用効率の関係式取得工程を含むことができる。本工程は、環境因子及び遺伝子発現量の関係式と、遺伝子発現量及び光利用効率の関係式とから、環境因子及び該作物の光利用効率の関係式を取得することを含む。
【0031】
本工程において、環境因子及び作物の光利用効率の関係式は、例えば、下記式III:
(LUE予測値)=(LUE予測値の傾き)×(環境因子)+(LUE予測値の切片)(III)
で表される。ここで、(LUE予測値の傾き)及び(LUE予測値の切片)は、前記式I及びIIに基づき、それぞれの作物、特に特定の品種における定数として決定することができる。それ故、本工程を実施することにより、それぞれの作物、特に特定の品種に対する環境因子及び光利用効率の関係式を取得することができる。
【0032】
本態様の方法において、本工程は、本態様の方法を実施する度に、毎回実施してもよい。しかしながら、本工程において取得される環境因子及び光利用効率の関係式は、それぞれの作物、特に特定の品種に対して特異的な関係を表す。このため、本態様の方法の一実施形態において、一度本工程を実施して取得された環境因子及び光利用効率の関係式を、例えばコンピューター等の演算装置に蓄積しておき、以下において説明する収穫量予測工程を実施する際に演算装置から呼び出して使用することもできる。本実施形態の場合、環境因子及び作物の光利用効率の関係式を取得する時間を短縮して、作物の収穫量をより簡便且つ迅速に予測することができる。
【0033】
[1-4. 収穫量予測工程]
本態様の方法は、収穫量予測工程を含む。本工程は、作物の栽培条件における環境因子及び作物の光利用効率の関係式に、環境因子の値を入力して、該環境因子の値に対応する作物の光利用効率の値を算出し、算出した作物の光利用効率の値から作物の収穫量を予測することを含む。
【0034】
本工程は、前記で説明した各工程を実施した後、引き続いて実施してもよく、すでに取得された環境因子及び光利用効率の関係式を、例えばコンピューター等の演算装置から呼び出して実施してもよい。後者の実施形態の場合、環境因子及び作物の光利用効率の関係式を取得する時間を短縮して、作物の収穫量をより簡便且つ迅速に予測することができる。
【0035】
本工程において算出される光利用効率は、通常は、結果として得られる作物の収穫量と相関する。それ故、本態様の方法により、実際に作物を収穫することなく、本工程において算出される光利用効率を指標として、作物の収穫量を簡便且つ迅速に予測することができる。
【0036】
<2. 作物の収穫量を予測する装置>
本発明の別の一態様は、作物の収穫量を予測する装置(以下、「収穫量予測装置」とも記載する)に関する。本態様の収穫量予測装置は、収穫量予測手段を含む。本態様の収穫量予測装置はまた、所望により、環境因子及び遺伝子発現量の関係式取得手段、遺伝子発現量及び光利用効率の関係式取得手段及び環境因子及び光利用効率の関係式取得手段を含むことができる。本態様の収穫量予測装置は、本発明の一態様の作物の収穫量を予測する方法を実施するために好適に使用することができる。
【0037】
[2-1. 関係式取得手段]
本態様の収穫量予測装置は、所望により、環境因子及び遺伝子発現量の関係式取得手段、遺伝子発現量及び光利用効率の関係式取得手段及び環境因子及び光利用効率の関係式取得手段を含むことができる。
【0038】
本手段は、例えば、環境因子の測定及び/又は調節手段、遺伝子発現量の測定手段、光利用効率の測定手段、及び関係式の計算手段を含む。
【0039】
環境因子の測定及び/又は調節手段は、当該技術分野で通常使用される各種の測定及び/又は調節手段を用いることができる。例えば、環境因子が作物に曝露される二酸化炭素の濃度である場合、通常の二酸化炭素濃度測定器を使用すればよい。また、環境因子が作物の表面(例えば、葉面)に照射される光照射量である場合、通常の光量子計又は光量子束密度計を使用すればよい。或いは、作物栽培装置又は植物工場において本発明の各態様を実施する場合、作物栽培装置又は植物工場が備える環境因子の調節手段を介して該環境因子の値を取得及び/又は調節してもよい。
【0040】
遺伝子発現量の測定手段としては、例えば、RNAシーケンス解析、マイクロアレイ分析又は定量的リアルタイムPCR等の手段を挙げることができる。
【0041】
光利用効率の測定手段としては、例えば、葉面積計、光量子計又は光量子束密度計、及びこれらの手段によって測定された葉面積及び光照射量から光利用効率を計算するための演算装置を挙げることができる。
【0042】
関係式の計算手段としては、例えば、コンピューター等の演算装置を挙げることができる。
【0043】
前記で例示した手段は、それぞれ別個の装置として構成されてもよく、各手段を実施する複数の装置を一体として含む組み合わせ装置として構成されてもよい。
【0044】
[2-2. 収穫量予測手段]
本態様の収穫量予測装置は、収穫量予測手段を含む。
【0045】
本手段は、例えば、環境因子及び光利用効率の関係式を蓄積し、入力された環境因子の値に基づき光利用効率の値を算出するための、コンピューター等の演算装置を含む。
【0046】
<3. 作物の栽培装置>
本発明の別の一態様は、作物の栽培装置に関する。本態様の栽培装置は、本発明の一態様の収穫量予測装置を備える。
【0047】
本態様の栽培装置は、当該技術分野で通常使用される作物栽培装置又は植物工場の形態であることが好ましい。
【0048】
本態様の栽培装置は、収穫量予測装置から得られる作物の収穫量の予測値に基づき、環境因子を調節する環境因子調節手段を備えることが好ましい。環境因子調節手段は、収穫量予測装置から得られる作物の収穫量の予測値を参照しながら、使用者が環境因子を最適値に調節するものであってもよい。しかしながら、環境因子調節手段は、予め設定された条件に基づき、収穫量予測装置から得られる作物の収穫量の予測値を参照しながら自動的に環境因子を最適値に調節する機能を備えることが好ましい。後者の実施形態の場合、より効率的に作物を栽培することができる。
【0049】
以上、詳細に説明したように、本発明の一態様の作物の収穫量を予測する方法により、作物の収穫量を簡便且つ迅速に予測することができる。特に、本発明の一態様の作物の収穫量を予測する方法は、品種間で最適な栽培条件に差が生じる作物の場合に、作物の収穫量を、品種毎に簡便且つ迅速に予測することができる。それ故、本発明の一態様の収穫量予測装置及び作物の栽培装置を、このような作物の栽培に適用することにより、該作物の収穫量を増大させ、且つ/又は栽培に要するコストを削減することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
<I. 材料及び方法>
[I-1. BC02実験条件]
2016年5月16日、ロックウール (Grodan(登録商標)、オランダ)で満たした植物トレイに、穂木用の種子のリンギョク(Rn)及びマナグア(Mn)(Rijk Zwaan)、並びに台木用のマキシフォート(De Ruiter Seeds)を播種した。さらに2日後に、穂木用のCF 桃太郎ヨーク(My)(タキイ種苗、京都、日本)を播種した。下記の条件を用いて、植物を育苗チャンバー(苗テラス:三菱ケミカルアグリドリーム、東京、日本)で2週間成長させた。その間、導電率(EC)を毎日1.6 dS・m-2に調整した市販の栄養液(ハイテンポ:住友化学工業株式会社、東京、日本)を用いて、朝に一回灌水した。その他の条件は、光条件:350 μmol・m-2・s-1の光合成光量子束密度(PPFD)、CO2濃度:1000 μmol・mol-1、昼/夜:16時間25℃ / 8時間17℃に設定した。5月30日に、Rn及びMnの苗を、マキシフォートに接ぎ木した。Myは接ぎ木しなかった。6月13日に、実生苗を、ロックウールキューブ(7.5 cm×7.5 cm×6.5 cm)に移植し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)の野菜花き研究部門(つくば、茨城、日本)の6列のロックウール栽培システムからなる温室区画(9×18 m)に入れた。栽植密度は、1立方メートル当たり3.3本、植物間の間隔は、20 cm、列間は、160 cmに設定した。実験は、4つの区画で行われた。Rnは、2つの区画に設定され、My及びMnは、1つずつの区画に設定した。各区画は、2つの二重列と境界列からなり、64植物が二重列に植えられ、20植物が境界列に植えられた。境界列の植物は、移植後31日(以下、「DAT」とも記載する)の時点で、それぞれの葉面積の測定に使用した。二重列の植物は、他の全ての測定に使用した。温室では、植物に、栄養液(16.2 me/l NO3、4.5 me/l P、9.8 me/l K、9.3 me/l Ca、4.6 me/l Mg、0.07 me/l Fe、0.103 me/l B、0.017 me/l Mn、0.076 me/l Zn、0.00120 me/l Cu、0.00083 me/l Mo)を調整して供給した。移植後14日目までは、ECを3.4 dS・m-1に調整した養液を用い、その後は、同じ養液をEC 2.6 dS・m-1に調整して用いた。毎日の排水率は、供給された栄養液総量の20%に維持した。排水は、再利用しなかった。オランダの標準的栽培法に従い、植物は、高さ2.1 mで垂直に整列させた。植物が生育するにつれてつり下げをおこない、下の古い葉を剪定した。全てのわき芽は、出現したときに取り除いた。剪定したわき芽は、測定から除外した。花に、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸(トマトトーン、ISK BIOSCIENCES K.K.、東京、日本)を噴霧して着果を促進した。花房あたりの果実の数は、剪定によって調整しなかった。温室の温度は、0~101、102~122及び123~238 DATで、それぞれ29、25及び28℃に設定した自然換気によりコントロールした。 133~185DATでは、加熱開始を14℃に設定した。1日の平均気温を25℃に設定し、夜間(20:00~04:00)にヒートポンプ(Green package、ネポン、東京、日本)を用いて、126~248 DATで冷却を行った。噴霧システム(トキタ、千葉、日本)を加湿に使用し、相対湿度を70%に維持した。0~105、106~126、127~144、145~152、153~245及び246~263 DATにおける温室内の日中(08:00~16:00)CO2レベルは、それぞれ、400、600、500、600、700及び800 μmol/mol-1に維持された。264~283 DATのCO2濃度は管理できなかった。気温、相対湿度、温室内のCO2濃度及び温室外の日射量は、ユビキタス環境制御システム(Akisai、富士通、東京、日本)を用いて測定した。実験期間中の日平均積算日射量(平均±SD)、気温及び日中のCO2濃度は、それぞれ10.3±5.2 MJ・m-2・d-1、21.0±3.4℃、538±158μmol・mol-1であった。1週間に2回、品種ごとに16植物(Rn)及び8植物(My、Mn)から全ての成熟果実を収穫し、それらの新鮮重量を測定した。また、248、263、269及び283 DATにおいて、品種ごとに葉面積計(LI3100、LI-COR、Lincoln、USA)を用いて葉面積を測定し、3本の植物の葉、茎及び全ての果実の新鮮重量及び乾燥重量を分解調査し、予測モデルの作成及び検証用に用いた。
【0052】
[I-2. HA21実験条件]
HA21実験を、実生(幼植物体)からの光利用効率(LUE)の計算のため、及び同じ期間の遺伝子発現の分析のために実施した。Rn、Mn及びMyのトマト種子を、1トレイあたり450 gのロックウール(Grodan(登録商標)、オランダ)を充填した72ウェル植物トレイに播種した。播種したトレイを、連続温度28℃、暗所条件のグロースチャンバー(KG-50、小糸製作所)中に3日間置き、次いで、育苗システムTAN(育苗植物工場:Nbox、エスピックミック、日本)に移動させた。TANにおいて、植物には、1.8 dS・m-2の電気伝導度に調節した市販の栄養液(ハイテンポ:住友化学、日本)を用いて毎日施肥した。光条件:光合成光量子束密度(PPFD)は約250 μmol・m-2・s-1、昼/夜:16時間 22℃/8時間 17℃。2種類の異なるCO2条件:第1の条件は、大気CO2濃度、約400 ppmであり、第2の条件は、1200 ppmに維持した。播種後14(2枚超の本葉が展開)、17及び21日目において照明点灯後8時間経過時点で、Myの実生を採取した。15本の実生からの成長点(茎頂から約5 mm)及び全ての葉を、3個の試料群に分けた。播種後16(2枚超の本葉が展開)、19及び23日目において、Rn及びMnの実生を採取した。植物を、液体窒素で凍結させて、さらなるDNAマイクロアレイ分析まで、-80℃で保存した。個体あたり総乾物重量(以下、「TDM」とも記載する)を、遺伝子発現の試料の日齢と同じ日齢の10個超の乾燥植物から秤量した。前記処理を、3反復で実施した。
【0053】
[I-3. DNAマイクロアレイ分析]
凍結植物組織を、マルチビースショッカー(MB831及びMB2000、安井器械、日本)を用いて、2500 rpm、5秒間を数回の条件で、微細粉末となるまで粉砕した。全RNAを、BC02実験の試料に対してはPlant RNA Mini Kit(Qiagen)を用いて、又はHA21実験の試料に対してはISOSPIN Plant RNA(ニッポンジーン、日本)を用いて、凍結植物から抽出した。抽出したRNAの純度及び量を、Nanodrop Spectrophotometer ND-1000(Thermo Fisher Scientific Life Technologies)によるA280/260比及びA230/260比を用いて確認した。RNAの濃度を25~500 ng/μLに調節した後、RNAの純度を、Agilent RNA 6000 Nano Kit及びAgilent 2100 Bioanalyszer(Agilent Technologies)(プロトコルv.03.02にしたがう)を用いてさらに確認した。DNAマイクロアレイ分析を、一色法マイクロアレイに基づく遺伝子発現分析(One-Color Microarray-Based Gene Expression Analysis, Agilent)のプロトコルを用いて実施した。cRNAを、400 ngの全RNA及び半量のQuick AMP Labeling Kit(Agilent Technologies)から調製した。iTAG2.3トマトゲノムに基づき設計されたAgilent Tomato 4x44k Microarray Chip(NCBI GEOプラットフォーム受入番号 GPL21511)を、本実施例の全てのトランスクリプトーム分析に使用した。マイクロアレイチップからのCy3シグナルを、Agilent G2565CAマイクロアレイスキャナーシステム(Agilent Technologies)を用いてスキャンした。
【0054】
[I-4. 定量的リアルタイムPCR]
前記手順で、全RNAを抽出した。QuantiTect Reverse Transcription(QIAGEN)を用いて、500 ngの全RNAから、cDNAを合成した。25 ngのcDNA、及びBC02実験の試料に対してSYBR Premix EX Taq (Takara, Japan)、又はHA21実験の試料に対してTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡、日本)を用いて、Strategene MX3000P(Agilent Technologies)によりリアルタイムPCRを実施した。温度の経時変化及びサイクルは、以下の通りに設定した:95℃ 30秒間、(95℃ 7秒間、60℃ 20秒間、72℃ 20秒間)×40サイクル、95℃ 30秒間、60℃ 30秒間、95℃ 30秒間。定量的RT-PCRで使用されたプライマーを、表1に示す。
【表1】
【0055】
[I-5. 光利用効率の計算]
LI-3100C面積測定システム(メイワフォーシス、日本)を用いて、葉面積を測定した。乾燥後に、10個超の植物体(切断した葉及び収穫した果実を含む)の乾物を測定し、計算した。前記手順で計算された個体あたり総乾物重量(TDM)と、栽植密度(育苗期の場合、植物トレイのセル密度:400個体/m2であり、定植後の場合、3.6個体/m2であった)とを乗算し、面積あたり総乾物重量を計算した。葉面積(以下、「LA」とも記載する)を、HA21実験の試料に対しては卓上葉面積計LI-3100C(メイワフォーシス、日本)を用いて、又はBC02実験の試料に対しては葉乾物重量に基づき、それぞれ計算した。葉乾物重量に基づき計算する場合、予め品種毎に葉面積と葉乾物重量との比を測定しておき、該比を品種毎の係数として用いて、葉面積を計算した。得られたcm2単位の葉面積の値を、m2単位の値に変換した。葉面積(m2)と栽植密度(個体/m2)とを乗算し、葉面積指数(以下、「LAI」とも記載する)を計算した。LAIは直線的に増加すると仮定して、それぞれの試料採取日のLAIに基づき、光照射開始を0として最初の試料採取日まで、又は試料採取日の異なるLAIの間の等差数列を、試料採取日以外のLAIとした。前記手順で得られた日毎のLAIと、定数k=0.75とを乗算し、自然対数の底eの-k LAI乗(e - k LAI)を計算した。次に、(1 - e -k LAI)と、1日の光照射量とを乗算し、面積あたりの受光量(mol/m2/日)を計算した。1日の光照射量は、育苗期(HA21実験)の場合、スペクトロマスターC-7000(セコニック)による育苗システムTAN(Nbox)のPPFD測定値:239μmol/m2/秒×60秒×60分×明期14時間 = 12.0456 mol/m2/日であり、定植後(BC02実験)の場合、10分毎のPPFD測定値(μmol/m2/秒×600秒)の1日の合計値とした。各試料採取日までの積算受光量及び面積あたり総乾物重量に基づき線形回帰分析を行い、傾きを光利用効率(LUE)とした。
【0056】
<II. 結果>
BC02実験において、使用されたトマト品種は同一条件下で生育させたので、植物成長の違いは、光利用効率(LUE)のような形質の品種間差によると考えられる。光合成遺伝子の発現を、それぞれの条件における光利用効率と比較したところ、光合成遺伝子の発現は、LUEと相関することを見出した。例えば、光合成遺伝子であるPsaAおよびPsaBの発現と光利用効率(LUE)との関係を
図1に示す。図中、Aは、それぞれの品種のBC02実験の栽培期間全体を通じた平均値の関係性であり、Bは、BC02実験において十分な量のDMPのとき(30 g/m
2/日)の関係性である。
【0057】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
【配列表】