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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】偏波多重光送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/06 20060101AFI20230804BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20230804BHJP
   G02B 6/126 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H04J14/06
H04B10/50
G02B6/126
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019184058
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021061509
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】種村 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/06
H04B 10/50 - 10/588
G02B 6/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気信号で第1連続光を変調して第1変調光を出力する第1変調手段と、
第2電気信号で第2連続光を変調して第2変調光を出力する第2変調手段と、
入射面と、第1方向における長さが前記入射面の前記第1方向における長さより短い出射面とを有し、前記入射面に入射された前記第1変調光及び前記第2変調光を偏波多重して前記出射面から出力する偏波多重手段と、
を備えており、
前記偏波多重手段は、
前記入射面に入射された第1偏波の1次成分の光を前記第1偏波とは直交する第2偏波の0次成分の光に変換して前記出射面から出力し、前記入射面に入射された前記第1偏波の0次成分の光については前記第1偏波の0次成分の光のまま前記出射面から出力する様に構成された変換手段を有し、
前記入射面には、前記第1変調光及び前記第2変調光それぞれについて、前記第1偏波の0次成分及び1次成分が入射されることを特徴とする偏波多重光送信装置。
【請求項2】
前記偏波多重手段は、
前記第1変調手段が出力する前記第1変調光を前記入射面の第1領域に入射し、前記第2変調手段が出力する前記第2変調光を前記入射面の前記第1領域とは異なる第2領域に入射する入射手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域の前記第1方向における長さは等しいことを特徴とする請求項2に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域の前記第1方向における長さは前記入射面の前記第1方向の長さの半分であることを特徴とする請求項3に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項5】
前記入射手段により前記入射面に入射される前記第1変調光及び前記第2変調光は、前記第1偏波であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項6】
前記入射手段は、前記入射面に入射される前記第1変調光の0次成分に対する前記第1変調光の1次成分の強度の比と、前記入射面に入射される前記第2変調光の1次成分に対する前記第2変調光の0次成分の強度の比と、を等しくする様に構成されることを特徴とする請求項5に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項7】
前記入射手段は、前記入射面に入射される前記第1変調光の0次成分と前記第1変調光の1次成分の強度を等しくし、前記入射面に入射される前記第2変調光の0次成分と前記第2変調光の1次成分の強度を等しくする様に構成されることを特徴とする請求項6に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項8】
前記偏波多重手段は基板上に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項9】
前記第1方向は、前記入射面から前記出射面に向かう方向と、前記基板から前記基板上に形成された前記偏波多重手段に向かう方向との両方に直交する方向であることを特徴とする請求項8に記載の偏波多重光送信装置。
【請求項10】
前記第1変調手段及び前記第2変調手段は、前記偏波多重手段と同じ前記基板上に形成されることを特徴とする請求項8又は9に記載の偏波多重光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波多重光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信容量の増大に対応するためにコヒーレント光通信技術が利用されている。図1は、コヒーレント光通信システムに利用される従来の偏波多重光送信装置の構成図である。光変調器11及び12は、それぞれ、送信するデータに対応する電気信号で連続光を変調し、同じX偏波の第1変調光及び第2変調光を出力する。なお、光変調器11及び光変調器12は、同じ集積素子上に構成され得る。光変調器12が出力する第2変調光は、偏波回転器(PR)13で、X偏波とは直交するY偏波に変換される。偏波ビーム結合器(PBC)14は、光変調器11からのX偏波の第1変調光と、PR13からのY偏波の第2変調光を偏波多重して送信する。図1に示す様に、偏波多重光送信装置は、集積素子上に形成できる光変調器11及び12に加えて、偏波の回転及び多重のための個別の光学部品を必要とし、偏波多重光送信装置のコスト及びサイズを増大させる。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2は、集積素子上に形成でき、かつ、光信号の伝搬モードを変換するテーパ型のモード変換器を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】W.D.Sacher,et al.,"Polarization rotator-splitters in standard active silicon photonics platforms",Opt.Express,22.3777,2014年
【文献】W.Yuan,et al.,"Mode-evolution-based polarization rotator-splitter design via simple fabrication process",Opt.Express,20,10163,2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信需要の増大に伴い、長距離の光通信システムのみならず、短・中距離の光通信システムに対してもコヒーレント光通信技術を適用することが検討されている。しかしながら、短・中距離の光通信システムに対してもコヒーレント光通信技術を適用するに当たり、偏波多重光送信装置のコストやサイズを抑えることが要求されている。
【0006】
本発明は、偏波多重光送信装置を小型化するための技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、偏波多重光送信装置は、第1電気信号で第1連続光を変調して第1変調光を出力する第1変調手段と、第2電気信号で第2連続光を変調して第2変調光を出力する第2変調手段と、入射面と、第1方向における長さが前記入射面の前記第1方向における長さより短い出射面とを有し、前記入射面に入射された前記第1変調光及び前記第2変調光を偏波多重して前記出射面から出力する偏波多重手段と、を備えており、前記偏波多重手段は、前記入射面に入射された第1偏波の1次成分の光を前記第1偏波とは直交する第2偏波の0次成分の光に変換して前記出射面から出力し、前記入射面に入射された前記第1偏波の0次成分の光については前記第1偏波の0次成分の光のまま前記出射面から出力する様に構成された変換手段を有し、前記入射面には、前記第1変調光及び前記第2変調光それぞれについて、前記第1偏波の0次成分及び1次成分が入射されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、偏波多重光送信装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】偏波多重光送信装置の構成図。
図2】一実施形態による偏波多重光送信装置の構成図。
図3】一実施形態による偏波回転多重部の構成図。
図4】偏波回転多重部のモード変換部の入射面での電界分布を示す図。
図5図4の電界分布を0次成分と1次成分に分解した状態を示す図。
図6】出射面における偏波状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図2は、本実施形態による偏波多重光送信装置の構成図である。光変調器11は、送信するデータに対応する第1電気信号で、図示しない光源が生成する連続光を変調して変調光Sを出力する。また、光変調器12は、送信するデータに対応する第2電気信号で、前記光源が生成する連続光を変調して変調光Sを出力する。偏波多重回転部20は、変調光S及び変調光Sを偏波多重し、偏波多重光Sを出力する。後述する様に、偏波回転多重部20は、光変調器11及び光変調器12と同じ集積素子上(基板上)に構成することができる。
【0012】
図2は、偏波回転多重部20の平面図である。偏波回転多重部20は、入射部と、モード変換部と、を備えている。入射部及びモード変換部は、基板上に形成され、図2は、基板とは逆側から見た状態を示している。以下では、モード変換部における光の伝搬方向を、単に、伝搬方向として参照する。また、基板から当該基板上に形成された偏波回転多重部20に向かう方向を高さ方向と定義し、伝搬方向及び高さ方向の両方に直交する方向を幅方向と定義する。モード変換部は、入射面21と、入射面より幅方向の長さが短い出射面22と、を有する。なお、入射面21は、実際には、入射部とモード変換部との結合面であり、外部に露出する面ではない。
【0013】
入射部は、変調光S及び変調光Sそれぞれを入射面21に入射させるための導波路である。図2に示す様に、変調光Sは、入射面21の領域211に入射され、変調光Sは、入射面21の領域212に入射される。ここで、領域211及び領域212の幅方向の長さは、共に、入射面21の幅方向の長さの半分とすることができる。
【0014】
モード変換部は、例えば、非特許文献1及び2に記載された様なテーパ型モード変換器に対応する。なお、光の伝搬方向は、偏波分離時とは逆方向である。つまり、非特許文献1及び2に記載されている様に、偏波分離を行う際には、面22より0次のTMモードの光を入射する。面22から入射した0次のTMモードの光は、その伝搬過程において徐々に偏波面が回転し、面21においては1次のTEモードに変換される。なお、面22より0次のTEモードの光を入射した場合、モード変換は行われず、面21から0次のTEモードの光が出射される。したがって、面22より0次のTEモードの光と0次のTMモードの光を入射すると、面21から0次のTEモードの光と、1次のTEモードの光が出射される。
【0015】
本実施形態において、入射部は、入射面21に変調光S及び変調光SそれぞれをTEモードで入射する。図4(A)は、入射面21における変調光Sの電界分布を示し、図4(B)は、入射面21における変調光Sの電界分布を示している。変調光Sは、入射面21の領域211に入射され、変調光Sは、入射面21の領域212に入射されるため、幅方向における電界分布は異なる。
【0016】
図5(A)は、図4(A)に示す入射面21における変調光Sの電界分布を、0次成分の変調光S10と、1次成分の変調光S11に分解した状態を示している。同様に、図5(B)は、図4(B)に示す入射面21における変調光Sの電界分布を、0次成分の変調光S20と、1次成分の変調光S21に分解した状態を示している。変調光Sは、領域212から入射されるため、変調光S21の幅方向に沿った電界分布は、領域211から入射される変調光S11の幅方向に沿った電界分布に対して反転した分布となる。
【0017】
変調光S11及びS21は、1次のTEモードであるため、モード変換部内を、その伝搬方向に沿って伝搬する過程で偏波面が回転し、出射面22においては0次のTMモードになる。一方、変調光S10及びS20は、0次のTEモードであるため、出射面22においては0次のTEモードのままである。
【0018】
したがって、出射面22から出射される変調光Sは、図6(A)に示す様に、互いに直交する変調光S10と変調光S11とのベクトル和であり、よって、その偏波面は、TEモードの偏波面とTMモードの偏波面それぞれに対して45度の角度になる。同様に、出射面22から出射される変調光Sは、図6(B)に示す様に、互いに直交する変調光S20と変調光S21とのベクトル和であり、よって、その偏波面は、TEモードの偏波面とTMモードの偏波面それぞれに対して45度の角度になる。但し、図5(A)及び(B)に示す様に、変調光S21の幅方向における振幅の分布は、変調光S11の幅方向における振幅の分布とは反転しているため、図6(A)及び(B)に示す様に、変調光Sと変調光Sの偏波面は直交することになる。つまり、出射面22からは、偏波が互いに直交する変調光Sと変調光Sとを偏波多重した偏波多重光Sが出力される。
【0019】
なお、図6(A)及び図6(B)に示す様に、変調光Sと変調光Sの偏波面を直交させるためには、変調光S10、変調光S11、変調光S20及び変調光S21の振幅(電界強度)を調整する必要がある。一例として、変調光S10及び変調光S11の振幅が等しく、かつ、変調光S20及び変調光S21の振幅が等しい場合、変調光Sと変調光Sの偏波面は直交する。この場合、入射部の導波路断面形状、屈折率分布、接続部の位置等は、入射面21における変調光S10及び変調光S11の振幅を等しくし、かつ、入射面21における変調光S20及び変調光S21の振幅を等しくする様に設計される。なお、変調光Sと変調光Sの偏波面を直交させるための条件は、変調光S10及び変調光S11の振幅を等しくし、かつ、変調光S20及び変調光S21の振幅を等しくすることに限定されない。例えば、変調光S10に対する変調光S11の振幅の比が、変調光S21に対する変調光S20の振幅の比が等しければ良い。いずれにしても、入射部は、変調光Sと変調光Sの偏波面を直交させる様にその光学的特性が決定される。
【0020】
図6(A)及び(B)で説明した様に、偏波多重光Sは、従来の偏波多重光送信装置が出力するのと同じ、それぞれが情報を搬送する変調光Sと変調光Sを偏波多重した信号であるため、受信側には従来と同じコヒーレント光受信装置を使用することができる。
【0021】
なお、厳密には、入射部における変調光Sと変調光Sの伝搬遅延の差による位相のずれや、損失の差による振幅の差が生じるが、従来のコヒーレント光受信装置における処理で補償されるため問題はない。
【0022】
以上、本実施形態の偏波多重光送信装置は、テーパ型のモード変換器を使用して偏波多重を行う。当該モード変換器は、光変調器と同様に集積化できるため偏波多重光送信装置のコストやサイズを抑えることができる。
【0023】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
11、12:光変調器、20:偏波回転多重部
図1
図2
図3
図4
図5
図6