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  • 特許-アルデヒド捕捉剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】アルデヒド捕捉剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20230804BHJP
   C07C 239/20 20060101ALI20230804BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A61L9/01 K
C07C239/20
B01J20/22 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019114364
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2020006159
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018122238
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 拓里
(72)【発明者】
【氏名】平井 憲次
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-099194(JP,A)
【文献】特表平02-500749(JP,A)
【文献】特表2014-506879(JP,A)
【文献】特開昭59-163350(JP,A)
【文献】特開昭61-000438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0226875(US,A1)
【文献】特開2018-108578(JP,A)
【文献】特開昭56-142288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-22
A62D 9/00
B01J 20/00-28
B60H 3/00
C07C 239/20
F24F 8/95-99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Arは、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-カルボキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、又は4-カルボキシフェニル基を表す。)
で表されるO-アリールヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩を1種以上含み、さらに水を含むことを特徴とするアルデヒド捕捉剤。
【請求項2】
請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤を使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類の捕捉剤(以下、「アルデヒド捕捉剤」ということもある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類は、生活環境における代表的な臭気物質であり、臭い閾値が極めて低いために低濃度でも不快臭の原因となる。これらのアルデヒド類は屋内や自動車内において合成樹脂、合板、タバコの煙等から発生し、シックハウス症候群やシックカー症候群の原因となることが知られている。また、これらのアルデヒド類は発癌性も疑われており、人が日常的にこれらに曝されると、健康を害するリスクがある。そのため、厚生労働省により室内濃度指針値として、アセトアルデヒドは0.03ppm、ホルムアルデヒドは0.08ppmと規定されている。したがって、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に除去する手段が求められている。
【0003】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の低級アルデヒドは沸点が低いため、消臭剤として汎用されるシリカゲルや活性炭等の無機系多孔質材では捕捉効率が低い。そこで、ヒドラジン誘導体、アミン、アミノ酸、又は尿素誘導体等からなるアルデヒド捕捉剤とアルデヒド類を化学反応させることによりアルデヒド類を捕捉する方法が開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
しかしながら、これら特許文献に記載の方法は、捕捉効率が不十分である、捕捉剤自体が臭気源となる、又は一旦アルデヒド類を捕捉しても経時的にアルデヒド類を再放出する等の問題があった。また、これら特許文献に記載のアルデヒド捕捉剤をシックハウス症候群やシックカー症候群を予防する目的で住居内や自動車内で使用する場合、これらの場所は夏場等に高温になるため、性能が低下する点が問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-358536号公報
【文献】特開平11-4879号公報
【文献】特開2012-120708公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉するアルデヒド捕捉剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のO-アリールヒドロキシルアミン誘導体又はこれらの化学的に許容される塩を含むアルデヒド捕捉剤がアルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
[1]
一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Arは、化学的に許容される任意の位置に、ハロゲン原子、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基からなる群より選ばれる1つ以上の置換基が置換されていてもよい炭素数4~14のアリール基若しくはヘテロアリール基を表す。)
で表されるO-アリールヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩を1種以上含むことを特徴とするアルデヒド捕捉剤。
[2]
一般式(1)において、Arが、フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-カルボキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、4-カルボキシフェニル基、2-シアノフェニル基、3-シアノフェニル基、4-シアノフェニル基、2-エトキシカルボニルフェニル基、3-エトキシカルボニルフェニル基、4-エトキシカルボニルフェニル基、のいずれかであることを特徴とする[1]に記載のアルデヒド捕捉剤。
[3]
[1]又は[2]に記載のアルデヒド捕捉剤を使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉する。その結果、人体に有害なアルデヒド類を低減し、ヒトの生活環境を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、一般式(1)で表されるO-アリールヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩を1種以上含むことをその特徴とする。
【0013】
上記一般式(1)において、Arは、化学的に許容される任意の位置に、ハロゲン原子、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基からなる群より選ばれる1つ以上の置換基が置換されていてもよい炭素数4~14のアリール基若しくはヘテロアリール基を表す。
【0014】
炭素数1~4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
【0015】
炭素数2~4のアルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。
【0016】
炭素数4~14のアリール基若しくはヘテロアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基、フェナントリル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリミジル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、O-アリールヒドロキシルアミン誘導体(1)において、Arが、フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-カルボキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、4-カルボキシフェニル基、2-シアノフェニル基、3-シアノフェニル基、4-シアノフェニル基、2-エトキシカルボニルフェニル基、3-エトキシカルボニルフェニル基、4-エトキシカルボニルフェニル基のいずれかであるO-アリールヒドロキシルアミン誘導体が特に好ましい。
【0018】
上記のO-アリールヒドロキシルアミン誘導体は、一部又は全てが無機酸又は有機酸との化学的に許容される塩となっていてもよい。塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、過塩素酸塩、ケイ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、安価である点で無機酸塩が好ましく、塩酸塩がさらに好ましい。
【0019】
O-アリールヒドロキシルアミン誘導体(1)がカルボキシ基を含む場合は、当該カルボキシ基が分子内のヒドロキシルアミノ基と分子内塩を形成してもよい。また、カルボキシ基の一部又は全てがカルボン酸塩となっていてもよい。カルボン酸塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
本発明のアルデヒド捕捉剤に用いるO-アリールヒドロキシルアミン誘導体(1)又はその化学的に許容される塩は一部市販されているが、文献(Org.Lett.,3巻,139-142,2001年.、Org.Lett.,16巻,1830-1832,2014年.)記載の方法に従って調製することができる。
【0021】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、目的、用途に応じて任意の形態で使用することができる。例えば、O-アリールヒドロキシルアミン誘導体(1)又はその化学的に許容される塩(以下、「O-アリールヒドロキシルアミン類」という。)を任意の溶媒に溶解又は分散させて液状アルデヒド捕捉剤として使用したり、O-アリールヒドロキシルアミン類又は前記の液状アルデヒド捕捉剤を任意の担体に担持し、固体状アルデヒド捕捉剤として使用したり、又はゴム等に練り込んで使用することができる。また、これらの捕捉剤を合板や自動車天井材等のアルデヒド発生源となる材料に適用することで、当該材料から環境中へのアルデヒド類放出を抑制することができる。
【0022】
本発明の液状アルデヒド捕捉剤を調製する際に用いる溶媒としては、O-アリールヒドロキシルアミン類を溶解又は分散できるものであれば特に制限はないが、水の他、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトンを例示することができ、これらのうち2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。該溶媒としては、O-アリールヒドロキシルアミン類に対する溶解性が良い点で水、アルコール、ケトン、NMP、DMSO又はこれらの混合溶媒が好ましく、水がさらに好ましい。
【0023】
本発明の液状アルデヒド捕捉剤を調製する際の溶媒へのO-アリールヒドロキシルアミン類の溶解量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、本発明の液状アルデヒド捕捉剤に対して1~50重量%の範囲が好ましく、5~30重量%の範囲がさらに好ましい。
【0024】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤を調製する際に、O-アリールヒドロキシルアミン類を担持する担体としては、水に不溶性のものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、高分子担体として、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン)、ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー、セルロース、アガロース、デキストラン等の高分子量多糖類等が挙げられ、無機担体として、活性炭、シリカゲル、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0025】
ここで、架橋ポリスチレンとは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等のモノビニル芳香族化合物とジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルジフェニル、ビスビニルフェニルエタン等のポリビニル芳香族化合物との架橋共重合体を主体とするものであり、これらの共重合体にグリセロールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等のメタクリル酸エステルが共重合されていてもよい。
【0026】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤の調製において用いられる担体の形状としては、特に限定するものではないが、例えば、球状(例えば、球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、膜状(例えば、平膜など)等の一般的に分離基材として使用される形状が利用可能であり、これらのうち、球状、膜状、粒状、顆粒状、又は繊維状のものが好ましい。球状、粒状、又は顆粒状担体は、カラム法やバッチ法で使用する際、その使用体積を自由に設定できることから、特に好ましく用いられる。
【0027】
球状、粒状、又は顆粒状担体の粒子サイズとしては、通常、平均粒径1μm~10mmの範囲のものを用いることができるが、2μm~1mmの範囲が好ましい。
【0028】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤の調製において用いられる担体は多孔質でもよいし、無孔質でもよい。多孔質担体の平均細孔径としては、通常、1nm~1μmのものを用いることができるが、アルデヒド捕捉速度の点で1nm~300nmの範囲が好ましい。
【0029】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の液状アルデヒド捕捉剤又はO-アリールヒドロキシルアミン類を担体に物理的に吸着させて固定化する方法が挙げられる。
【0030】
O-アリールヒドロキシルアミン類を物理的に吸着させて固定化する方法としては、特に限定されないが、例えば、O-アリールヒドロキシルアミン類を水等の溶媒に溶解させ、次いで上記した担体を加え、O-アリールヒドロキシルアミン類を当該担体に含浸させて、さらに溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0031】
担体へのO-アリールヒドロキシルアミン類の担持量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、O-アリールヒドロキシルアミン類が1~50重量%の範囲が好ましく、5~30重量%の範囲がさらに好ましい。
【0032】
本発明のアルデヒド捕捉剤をゴム等に練り込んで使用する方法としては、特に限定されないが、例えばラテックス等のゴム原料に添加する、又は重合後のゴムに機械的に混練する等の方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1~3及び比較例1~3における5分後のアセトアルデヒド捕捉率を示す図である。
【実施例
【0034】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0035】
実施例1~3(溶液中のアルデヒド捕捉試験)
O-アリールヒドロキシルアミン類(0.23mmol)を水(2.5mL)とN-メチルピロリドン(2.5mL)の混合溶液に溶解し、アルデヒド捕捉剤を調製した。ここに、アセトアルデヒド(0.23mmol)及び内部標準物質としてジグリム(0.2重量%)を含有する水溶液5mLを混合した。1分後、5分後、10分後及び30分後に反応液の一部(0.2mL)を抜き出し、これに水素化ホウ素ナトリウム1mgを添加し、残存しているアセトアルデヒドをエタノールに還元した。この溶液をガスクロマトグラフ(GC-2014、島津製作所製)で分析し、エタノールとジグリムの面積比から残存アセトアルデヒド濃度を算出した。さらに、アルデヒド捕捉率を下式から算出した。
【0036】
アルデヒド捕捉率(%)=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100。
【0037】
比較例1~3
O-アリールヒドロキシルアミン類に代え、既存品であるケムキャッチH-6000HS(ヒドラジド系、大塚化学製)、ピペラジン(アミン系)、又はグリシン(アミノ酸系)を用いたこと以外は実施例1~3と同様に実施した。
【0038】
実施例1~3及び比較例1~3の結果を表1及び図1(5分後の捕捉率)に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1、図1より明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤は溶液中において既存のアルデヒド捕捉剤と比較して、特に初期段階での高いアルデヒド捕捉性能を示した。
【0041】
実施例4
反応時間を24時間としたこと以外は実施例1と同様に実施した結果、24時間経過後もアセトアルデヒド捕捉率は99.9%であり、本発明のアルデヒド捕捉剤は長時間経過後も高いアルデヒド捕捉性能を維持した。
【0042】
参考例1
【0043】
【化2】
【0044】
乾燥したモレキュラーシーブ4Å(6.28g)、N-ヒドロキシフタルイミド(4.05g,24.8mmol)、フェニルボロン酸(6.05g,49.6mmol)、塩化銅(I)(2.52g,25.5mmol)のクロロホルム(50mL)混合溶液に、ピリジン(2.20mL,27.3mmol)を加え、常温、空気中で4日間攪拌した。反応終了後、反応液をセライト濾過し、濾液を減圧下に濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=87:13~66:34)にて精製した。得られた固体をヘキサンで洗浄した後、乾燥することで2-フェノキシイソインドリン-1,3-ジオンの白色固体(2.47g,収率:42%)を得た。
【0045】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.92(dd,J=5.5,3.1Hz,2H),7.82(dd,J=5.5,3.1Hz,2H),7.35(dd,J=8.8,7.3Hz,2H),7.17(d,J=8.8Hz,2H),7.14(t,J=7.3Hz,1H).
参考例2
【0046】
【化3】
【0047】
アルゴン雰囲気下、2-フェノキシイソインドリン-1,3-ジオン(2.47g,10.3mmol)のクロロホルム/メタノール(42mL,5:1)溶液に、ヒドラジン一水和物(1.50mL,31.0mmol)を0℃(氷浴)で攪拌しながら滴下し、同温にて3時間攪拌した。反応終了後、生成した固体を濾別し、減圧下で濾液を濃縮した。得られた粗生成物をアミノ化シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0~84:16)にて精製し、O-フェニルヒドロキシルアミンの褐色油状物(747mg,収率:66%)を得た。
【0048】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.29(dd,J=8.8,7.3Hz,2H),7.14(d,J=8.8Hz,2H),6.94(t,J=7.3Hz),5.84(brs,2H).
参考例3
【0049】
【化4】
【0050】
乾燥したモレキュラーシーブ4Å(6.29g)、N-ヒドロキシフタルイミド(4.07g,25.0mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(6.93g,49.6mmol)、塩化銅(I)(2.48g,25.1mmol)のクロロホルム(50mL)混合溶液に、ピリジン(2.25mL,27.9mmol)を加え、常温、空気中で4日間攪拌した。反応終了後、反応液を濾過した後、濾液を減圧下に濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=85:15~64:36)にて精製した。得られた固体をヘキサンで洗浄した後、乾燥することで2-(4-フルオロフェノキシ)イソインドリン-1,3-ジオンの白色固体(2.94g,収率:46%)を得た。
【0051】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.91(dd,J=5.5,3.1Hz,2H),7.82(dd,J=5.5,3.1Hz,2H),7.22(dd,J=9.3,4.3Hz,2H),7.03(dd,J=9.3,8.0Hz,2H).
参考例4
【0052】
【化5】
【0053】
アルゴン雰囲気下、2-(4-フルオロフェノキシ)イソインドリン-1,3-ジオン(2.91g,11.3mmol)のクロロホルム/メタノール(42mL,5:1)溶液に、ヒドラジン一水和物(1.65mL,33.9mmol)を0℃(氷浴)で攪拌しながら滴下し、同温で3時間攪拌した。反応終了後、生成した固体を濾別し、減圧下で濾液を濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物をアミノ化シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0~84:16)にて精製し、O-(4-フルオロフェニル)ヒドロキシルアミンの褐色油状物(499mg,収率:35%)を得た。
【0054】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.08(dd,J=9.2,4.4Hz,2H),6.96(dd,J=9.2,8.2Hz,2H),5.87(brs,2H).19F-NMR(376MHz,CDCl3):δ-123.9(s).
参考例5
【0055】
【化6】
【0056】
アルゴン雰囲気下、2,4-ジニトロクロロベンゼン(4.04g,20.0mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(3.26g,20.0mmol)のアセトン(60mL)溶液に、トリエチルアミン(3.60mL,25.9mmol)を滴下し、常温で1時間半攪拌した。反応終了後、水を加え、析出した固体を濾過で採取した。得られた固体を冷メタノールおよびヘキサンで洗浄後、乾燥させることにより、2-(2,4-ジニトロフェノキシ)イソインドリン-1,3-ジオンの白色固体(5.84g,収率:89%)を得た。
【0057】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.99(d,J=2.7Hz,1H),8.44(dd,J=9.3,2.7Hz,1H),8.00(dd,J=5.5,3.2Hz,2H),7.92(dd,J=5.5,3.2Hz,2H),7.46(d,J=9.3Hz,1H).
参考例6
【0058】
【化7】
【0059】
アルゴン雰囲気下、2-(2,4-ジニトロフェノキシ)イソインドリン-1,3-ジオン(1.32g,4.02mmol)のジクロロメタン/メタノール(34mL,15:2)溶液に、ヒドラジン一水和物(0.585mL,12.0mmol)を0℃で滴下し、同温にて4時間半攪拌した。反応終了後、1M塩酸を加え、よく攪拌し、析出した固体を濾別し、固体をアセトニトリルで洗浄した。得られた濾液をジクロロメタンで抽出し、合一した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=52:48~31:69)にて精製し、O-(2,4-ジニトロフェニル)ヒドロキシルアミンの黄色固体(331mg,収率:41%)を得た。
【0060】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.83(d,J=2.7Hz,1H),8.45(dd,J=9.4,2.7Hz,1H),8.06(d,J=9.4Hz,1H),6.38(brs,2H).
参考例7
【0061】
【化8】
【0062】
アルゴン雰囲気下、アセトヒドロキシム酸エチル(2.49g,24.2mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)溶液に、tert-ブトキシカリウム(2.70g,24.1mmol)を加え、常温で30分攪拌した後、4-フルオロベンゾニトリル(2.44g,20.1mmol)を加え、終夜攪拌した。反応終了後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0~84:16)にて精製し、4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]ベンゾニトリルの無色液体(3.47g,収率:84%)を得た。
【0063】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.58(d,J=9.0Hz,2H),7.21(d,J=9.0Hz,2H),4.19(q,J=7.1Hz,2H),2.13(s,3H),1.37(t,J=7.1Hz,2H).
参考例8
【0064】
【化9】
【0065】
4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]ベンゾニトリル(1.34g,6.56mmol)に蒸留水(2mL)、4M塩化水素ジオキサン溶液(6mL)を加え、常温で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を減圧下に濃縮し、残渣を2-プロパノールで洗浄した。このものに1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮し、4-アミノオキシベンゾニトリルの白色固体(283mg,収率:32%)を得た。
【0066】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.57(d,J=9.0Hz,2H),7.23(d,J=9.0Hz,2H),5.96(brs,2H).
参考例9
【0067】
【化10】
【0068】
アルゴン雰囲気下、アセトヒドロキシム酸エチル(1.86g,18.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)溶液に、tert-ブトキシカリウム(1.86g,16.6mmol)を加え、常温で30分攪拌した後、4-フルオロ安息香酸エチル(2.52g,15.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(15mL)溶液を加え、終夜攪拌した。反応終了後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0~83:17)にて精製し、4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]安息香酸エチルの白色固体(3.05g,収率:81%)を得た。
【0069】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.99(d,J=9.0Hz,2H),7.16(d,J=9.0Hz,2H),4.35(q,J=7.1Hz,2H),4.21(q,J=7.1Hz,2H),2.13(s,3H),1.38(t,J=7.1Hz,3H),1.37(t,J=7.1Hz,3H).
参考例10
【0070】
【化11】
【0071】
4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]安息香酸エチル(810mg,3.23mmol)のエタノール(10mL)溶液に、濃塩酸(1mL)を0℃で加え、同温にて30分攪拌した。反応終了後、反応液を減圧下に濃縮し、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に乾固させることにより、4-アミノオキシ安息香酸エチルの白色固体(477mg,収率:82%)を得た。
【0072】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.99(d,J=9.1Hz,2H),7.17(d,J=9.1Hz,2H),5.93(brs,2H),4.35(q,J=7.1Hz,2H),1.38(t,J=7.1Hz,2H).
参考例11
【0073】
【化12】
【0074】
4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]安息香酸エチル(2.24g,8.92mmol)のテトラヒドロフラン/メタノール/水(45mL,3:1:1)溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.50g,35.6mmol)を加え、常温で7時間半攪拌した。反応終了後、反応液を減圧下に濃縮し、蒸留水を加え、酢酸エチルで洗浄した。分離した水層に0.5M塩酸を滴下し、pH5に調整した後、酢酸エチルで抽出した。合一した有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に乾固させることにより、4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]安息香酸の白色固体(1.14g,収率:57%)を得た。
【0075】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.06(d,J=9.0Hz,2H),7.20(d,J=9.0Hz,2H),4.22(q,J=7.1Hz,2H),2.14(s,3H),1.37(t,J=7.1Hz,2H).
参考例12
【0076】
【化13】
【0077】
4-[(1-エトキシエチリデン)アミノオキシ]安息香酸(1.08g,4.86mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液に、濃塩酸(1.5mL)を加え、常温で1時間半攪拌した。反応終了後、析出した固体を濾取し、水、テトラヒドロフラン、ヘキサンで順次洗浄し、減圧下に乾燥することで4-アミノオキシ安息香酸の白色固体(247mg,収率:33%)を得た。
【0078】
H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ12.54(brs,1H),7.86(d,J=9.0Hz,2H),7.15(d,J=9.0Hz,2H),7.11(brs,2H).
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉する。その結果、人体に有害なアルデヒド類を低減し、ヒトの生活環境を改善することができる。
図1