(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】真空装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230804BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230804BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230804BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/30 541L
G03F7/20 504
G03F7/20 506
G03F7/20 521
B25J15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019151411
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】篠原 義明
(72)【発明者】
【氏名】川口 通広
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-204316(JP,A)
【文献】特開2010-64231(JP,A)
【文献】特開2018-78265(JP,A)
【文献】特開2007-48984(JP,A)
【文献】特開平7-147311(JP,A)
【文献】特開2009-141091(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/027
G03F 7/20
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を減圧されたチャンバと、
前記チャンバ内へ処理対象を搬送する搬送ロボットと
、
前記搬送ロボットを駆動する駆動源と、
を備え、
前記搬送ロボットは、
前記駆動源からの発熱が伝熱されるアーム部と、
前記アーム部の先端部に設けられ、該アーム部よりも熱伝導率の低い支持部と、
前記支持部と前記処理対象との間に設けられ、前記支持部よりも熱伝導率の高いプレートと、
前記支持部上に設けられ、前記処理対象に接触して該処理対象を支持する支持パッドとを備え、
前記支持部と前記プレートとの間には、前記支持部と前記プレートとを接触させる接触領域と、該支持部と該プレートとの間を離間させるスペース領域とがあ
り、
前記プレートは、前記接触領域において前記支持部に接触し、前記支持部よりも熱伝導率の高い突出部を有することを特徴とする、真空装置。
【請求項2】
前記プレートは、前記支持部と前記処理対象との間の前記支持パッド中に介在している、請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記プレートの輻射率は、前記処理対象の輻射率よりも低い、請求項1または請求項2に記載の真空装置。
【請求項4】
前記支持部には、セラミックが用いられ、
前記プレートには、銅、アルミニウムまたは金が用いられ、
前記支持パッドには、樹脂が用いられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項5】
前記プレートの外縁は、略鉛直方向から見たときに前記処理対象の外縁よりも外側にある、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項6】
前記支持部の表面には、導電性材料がコーティングされている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項7】
前記支持パッドの熱伝導率は、前記アーム部の熱伝導率よりも低い、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の真空装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム描画装置では、マスクにパターンを描画するために、搬送ロボットが真空チャンバ内にマスクを搬入し、描画ステージ上に載置する。マスクをステージへ載置するまでに、マスクは、搬送ロボットとの接触により、搬送ロボットからの熱を受ける。搬送ロボットの熱は、ロボットアームを介してマスクに伝わるため、マスクと搬送ロボットのパッドとの接触箇所のみに伝わる。従って、マスクの面内に温度ばらつきが発生し、マスクの熱膨張が不均一になる。これは、描画精度の悪化に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本実施形態は、マスクの温度の面内均一性を向上させることができる真空装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による真空装置は、内部を減圧されたチャンバと、チャンバ内へ処理対象を搬送する搬送ロボットとを備え、搬送ロボットは、アーム部と、アーム部の先端部に設けられ、該アーム部よりも熱伝導率の低い支持部と、支持部と処理対象との間に設けられ、支持部よりも熱伝導率の高いプレートと、支持部上に設けられ、処理対象に接触して該処理対象を支持する支持パッドとを備え、支持部とプレートとの間には、支持部とプレートとを接触させる接触領域と、該支持部と該プレートとの間を離間させるスペース領域とがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による荷電粒子ビーム描画装置の構成の一例を示す図。
【
図2】荷電粒子ビーム描画装置の構成の一例を示す図。
【
図3】第1実施形態による搬送ロボットの先端部の構成例を示す平面図および側面図。
【
図4】搬送ロボットからステージ上に載置されたマスクの温度変化を示すグラフ。
【
図5】第2実施形態による搬送ロボットの先端部の構成例を示す平面図および側面図。
【
図6】第3実施形態による搬送ロボットの先端部の構成例を示す側面図。
【
図7】第4実施形態による搬送ロボットの先端部の構成例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による荷電粒子ビーム描画装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示す荷電粒子ビーム描画装置10は、例えば、処理対象(マスクW)に電子ビームを照射して所定のパターンを描画する。尚、本実施形態は、描画装置の他、露光装置、電子顕微鏡、光学顕微鏡等の電子ビームや光を処理対象に照射する装置であってもよい。従って、処理対象は、マスクの他、半導体基板等であってもよい。荷電粒子ビームは、例えば、電子ビーム、光、イオンビーム等でよい。
【0009】
真空装置としての荷電粒子ビーム描画装置10は、描画チャンバ1と、電子鏡筒2と、ロボットチャンバ3と、搬送ロボット4と、ロードロックチャンバ5とを備えている。
【0010】
描画チャンバ1は、真空引きされており、マスク(マスクブランクス)Wを載置する描画ステージ1aを収容している。電子鏡筒2は、図示しない電子銃、アパーチャアレイ等を有し、電子ビーム(荷電粒子ビーム)を描画ステージ1a上のマスクWへ照射する。ロボットチャンバ3は、描画チャンバ1とロードロックチャンバ5との間に配置されており真空引きされている。ロボットチャンバ3は、その内部に搬送ロボット4を収容しており、描画チャンバ1とロードロックチャンバ5との間でマスクWを搬送するために用いられる。搬送ロボット4は、ロボットチャンバ3内において、回転機構41を軸に回転可能に構成されており、昇降ロッド42、ロボットアーム43、エンドエフェクタ44でマスクWを搬送する。ロードロックチャンバ5は、外部とロボットチャンバ3との間でマスクWを搬送する際に用いられる。ロードロックチャンバ5は、外部からマスクWを搬入する際には、大気開放されるが、マスクWをロボットチャンバ3へ搬送する際には、ロボットチャンバ3と同様に真空引きされる。描画チャンバ1とロボットチャンバ3との間、および、ロボットチャンバ3とロードロックチャンバ5との間には、それぞれゲートバルブ6,7が設けられている。
【0011】
図2は、荷電粒子ビーム描画装置10の構成の一例を示す図である。搬送ロボット4は、ロボットチャンバ3内に収容され、マスクWを保持するエンドエフェクタ44を有し、マスクWを搬送する。搬送ロボット4は、回転機構41と、昇降ロッド42と、ロボットアーム43と、エンドエフェクタ44とを備えている。回転機構41は、ロボットアーム43およびエンドエフェクタ44を、略鉛直方向の軸を中心として回転させることができる。昇降ロッド42は、回転機構41において、ロボットアーム43およびエンドエフェクタ44を昇降させることができる。ロボットアーム43は、昇降ロッド42に取り付けられ、複数のシャフトを屈伸させてマスクWを保持して搬送する。回転機構41には、回転機構41、昇降ロッド42、ロボットアーム43を動作させる駆動源が内蔵されている。エンドエフェクタ44は、ロボットアーム43の先端部に設けられており、マスクWを保持可能なように構成されている。搬送ロボット4のより詳細な構成は、
図3を参照して後述する。ロボットチャンバ3の周囲には、マスクWを位置決めするアライメントチャンバ8が設けられている。
【0012】
ところで、搬送ロボット4の駆動源の発熱(例えば、通電によるジュール熱)により、駆動源からの熱がロボットアーム43を介してエンドエフェクタ44に伝わり、エンドエフェクタ44の温度が上昇する場合がある。例えば、エンドエフェクタ44にマスクWを載置して描画ステージ1aに搬送する際に、マスクWの温度がエンドエフェクタ44からの熱伝導で0.04~0.05℃程度上昇してしまうことがある。LSI等の微細なパターンを描画する場合には、この程度の温度上昇でも描画精度に悪影響が及ぶ可能性がある。また、マスクWに温度ムラが生じ、マスクWの熱膨張が不均一になり、描画精度が悪化する可能性がある。
【0013】
通常、マスクWの描画は、描画ステージ1aに載置されたマスクWが描画ステージ1aの温度とほぼ等しい温度になるまで待ってから行われる。しかし、描画チャンバ1の真空中では、媒体の対流による熱伝達がほとんどなく、マスクWの熱が排熱され難い。従って、マスクWが描画ステージ1aの温度になるまでの待ち時間(ソーキング時間)は、かなり長い時間となる。また、図示しないが、ロボットチャンバ3に、マスクWの温度を均一化するためにソーキングチャンバが設けられている場合がある。しかし、ソーキングチャンバにおいても、非接触によるソーキング処理が行われるため、ソーキング時間は、やはり、比較的長い時間となってしまう。従って、エンドエフェクタ44からの熱伝導によってマスクWの温度がばらつくと、その後のソーキング時間が長期化してしまう。
【0014】
そこで、本実施形態による搬送ロボットは、以下のような構成を有する。
【0015】
図3(A)および
図3(B)は、第1実施形態による搬送ロボット4の先端部の構成例を示す平面図および側面図である。
図3(B)は、
図3(A)のB-B線に沿った断面を示している。
【0016】
搬送ロボット4は、エンドエフェクタ44と、プレート45と、支持パッド46とを備えている。支持部としてのエンドエフェクタ44は、アーム部としてのロボットアーム43の先端部に設けられており、ロボットアーム43よりも熱伝導率の低い材料で構成されている。ロボットアーム43には、例えば、ステンレス、アルミ合金等の熱伝導率の比較的高い金属が用いられている。エンドエフェクタ44には、例えば、ジルコニアなどのセラミック、PEEK(PolyEtherEtherKetone)などのエンジニアリングプラスチック等の熱伝導率の比較的低い材料が用いられている。これにより、回転機構41または昇降ロッド42で発生した熱は、ロボットアーム43を介して伝達されるが、エンドエフェクタ44にはほとんど伝導しない。
【0017】
尚、エンドエフェクタ44が帯電すると、パーティクルを吸着したり、放電による故障が生じ易くなる。これに対処するために、エンドエフェクタ44は、電子ビームによって帯電することを抑制するために、導電性の薄膜材料でコーティングされていることが好ましい。
【0018】
しかし、熱伝導率が低いとは言え、エンドエフェクタ44とロボットアーム43との接続部近傍において、エンドエフェクタ44の温度は高くなっている。一方、ロボットアーム43から離れたエンドエフェクタ44の先端部はほぼ断熱されており、その温度は低いままである。従って、エンドエフェクタ44においても、温度の面内分布(温度ばらつき)が発生している。エンドエフェクタ44の温度が面内でばらついていると、エンドエフェクタ44からの輻射によって、マスクWの温度も面内でばらつくおそれがある。
【0019】
そこで、プレート45がエンドエフェクタ44とマスクWとの間に設けられている。プレート45は、エンドエフェクタ44よりも熱伝導率の高い材料で構成されている。また、プレート45は、マスクWよりも輻射率の低い材料で構成されている。例えば、マスクWが石英である場合、プレート45には、例えば、銅、アルミニウムまたは金等の熱伝導率が高く、かつ、輻射率が低い金属材料が用いられている。
【0020】
図3(A)に示すように、プレート45は、平面上、マスクWよりも大きな面積を有する。鉛直方向から見たときに、プレート45の外縁は、マスクWのそれよりも外側にあり、プレート45は、マスクWに重畳している。また、
図3(B)に示すように、プレート45は、マスクWおよびエンドエフェクタ44の表面に対して略平行に配置されており、マスクWには直接接触していない。一方、プレート45は、突出部45aを有し、突出部45aを介してエンドエフェクタ44に接触している。突出部45aは、プレート45と同一材料で構成されている。
【0021】
このように、熱伝導率の高いプレート45をエンドエフェクタ44とマスクWとの間に設け、このプレート45をエンドエフェクタ44と接触させる。これによって、エンドエフェクタ44の熱がプレート45に伝達し、プレート45の面内において略均一化される。即ち、エンドエフェクタ44の温度の面内分布(ばらつき)がプレート45によって均一化される。また、プレート45の輻射率は、マスクWのそれよりも低い。これにより、マスクWは、プレート45からの熱輻射による影響をあまり受けない。プレート45からの熱輻射の影響が多少あったとしても、マスクWは、プレート45によって略均一化された温度の影響を受けることになる。さらに、プレート45の外縁は、鉛直方向から見たときに、マスクWのそれよりも外側にあり、プレート45は、マスクWよりも大きい。従って、プレート45は、マスクW全体をエンドエフェクタ44からの輻射から遮ることができる。これにより、マスクWは、エンドエフェクタ44の温度の面内分布(ばらつき)にほとんど影響されない。その結果、マスクWの温度は、面内においてあまりばらつかず、略均一な温度に維持され得る。尚、銅は酸化されると輻射率が上昇する。しかし、プレート45は真空中で移動するため、プレート45に銅を用いても、酸化されず、輻射率は低い状態を維持することができる。
【0022】
また、
図3(A)に示すように、支持パッド46がマスクWの面内の3カ所に接触し支持しており、マスクWをエンドエフェクタ44上で保持可能としている。
図3(B)に示すように、支持パッド46は、エンドエフェクタ44上に設けられ、ロボットアーム43およびプレート45よりも熱伝導率の低い材料で構成されている。支持パッド46には、例えば、樹脂、セラミック等の熱伝導率が低い材料が用いられる。支持パッド46の熱伝導率は、ロボットアーム43のそれよりも低い。支持パッド46は、エンドエフェクタ44とプレート45との間およびプレート45とマスクWとの間に設けられており、プレート45を支持するとともにマスクWをも支持している。換言すると、プレート45は、エンドエフェクタ44とマスクWとの間の支持パッド46中に介在しており、マスクW全体をエンドエフェクタ44から分離している。これにより、プレート45は、マスクWをエンドエフェクタ44の輻射熱から或る程度分離することができ、温度の面内分布を緩和することができる。
【0023】
プレート45とエンドエフェクタ44との間には、接触領域としての突出部45aおよびスペース領域SPがある。突出部45aは、上述の通り、エンドエフェクタ44とプレート45とを接触させる接触領域として機能する。スペース領域SPは、エンドエフェクタ44とプレート45とを離間させる領域である。
【0024】
もし、スペース領域SPを設けることなく、プレート45全体がエンドエフェクタ44と接触していると、プレート45は、エンドエフェクタ44の温度分布をそのまま伝達することになり、温度の均一化をすることができなくなる。
【0025】
これに対し、本実施形態では、接触領域としての突出部45aおよびスペース領域SPの両方がプレート45とエンドエフェクタ44との間に設けられている。これにより、突出部45aが接触領域におけるエンドエフェクタ44の温度をプレート45に伝達する。一方、スペース領域SPは、プレート45をエンドエフェクタ44から離間させ、エンドエフェクタ44からの熱をプレート45へ伝えない。従って、プレート45は、突出部45aを介して接触領域のみの熱を面内に伝達し、プレート45の面内の温度分布を略均一にすることができる。また、プレート45自体が、輻射率の比較的小さな材料で構成されている。よって、マスクWは、プレート45の輻射の影響を受け難く、かつ、マスクWの面内の温度分布があまりばらつかない。
【0026】
図4は、搬送ロボット4からステージ1a上に載置されたマスクWの温度変化を示すグラフである。横軸は、マスクWの位置を示し、0がマスクWの中心である。縦軸は、マスクWの温度変化を示し、0は温度変化がないことを示す。温度が正(+ΔT)側に変化することは、マスクWをステージ1a上に載置したときに、マスクWの温度が上昇したことを意味する。温度が負(-ΔT)側に変化することは、マスクWをステージ1a上に載置したときに、マスクWの温度が低下したことを意味する。即ち、マスクWの面内において温度変化は0に近いことが好ましいと言える。
【0027】
ラインL0は、エンドエフェクタ44がロボットアーム43と同じ金属材料で構成され、かつ、プレート45が設けられていない場合のマスクWの温度変化を示す。この場合、温度変化は、マスクWの中心近傍において+ΔT側へ大きなピークを持ち、+Xにおいて大きく-ΔT側へ低下している。従って、マスクWの面内における温度ばらつきは大きい。
【0028】
ラインL1は、本実施形態による搬送ロボット4を用いたマスクWの温度変化を示す。即ち、エンドエフェクタ44がセラミック等の熱伝導率の低い材料で構成され、かつ、プレート45が設けられている。この場合、温度変化は、+Xにおいて-ΔT側へ低下しているものの、L0に比べてピークがなく、マスクWの面内における温度ばらつきは比較的小さい。このように、本実施形態による搬送ロボット4は、マスクWの温度の面内におけるばらつきを抑制することができる。これにより、描画中におけるマスクWの変形を抑制し、描画精度の劣化を抑制することができる。
【0029】
尚、エンドエフェクタ44、プレート45および支持パッド46の形状は、
図3(A)および
図3(B)に限定されず、以下の実施形態ように変更してもよい。
【0030】
(第2実施形態)
図5(A)および
図5(B)は、第2実施形態による搬送ロボット4の先端部の構成例を示す平面図および側面図である。第2実施形態では、鉛直方向から見たときに、プレート45の大きさはマスクWよりも小さい。即ち、鉛直方向から見たときに、プレート45の外縁は、マスクWの外縁よりも内側にある。プレート45は、支持パッド46に接触しておらず離間している。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0031】
このように、プレート45は、マスクWより小さく、支持パッド46に接触していなくても、突出部45aを介してエンドエフェクタ44からの熱を面内に略均一に伝達することができる。また、プレート45の輻射率が比較的小さいので、マスクWの温度は、エンドエフェクタ44からの輻射熱の影響を受け難く、マスクWの面内においてあまりばらつかない。
【0032】
第2実施形態によれば、プレート45は、マスクWの下方全体に設けられているわけではないが、マスクWの温度の面内ばらつきを或る程度抑制することができる。
【0033】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態による搬送ロボット4の先端部の構成例を示す側面図である。第3実施形態の平面図は、
図3(A)と同様でよい。第3実施形態では、複数の脚部47が設けられている。互いに隣接する脚部47間には、スペース領域SPが設けられている。支持パッド46は、プレート45とマスクWとの間には設けられているが、プレート45とエンドエフェクタ44との間には設けられていない。複数の脚部47は、プレート45よりも熱伝導率の低い材料から構成されており、プレート45を支持し、プレート45をエンドエフェクタ44から離間している。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0034】
このように、プレート45は、複数の脚部47を介してエンドエフェクタ44からの輻射熱を受け、プレート45の面内に略均一に伝達することができる。尚、脚部47の熱伝導率は低いので、エンドエフェクタ44の熱は、脚部47を介してプレート45へはあまり伝達されない。また、プレート45の輻射率は比較的小さいので、マスクWの温度は、エンドエフェクタ44からの輻射熱の影響を受け難く、マスクWの面内においてあまりばらつかない。従って、第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態による搬送ロボット4の先端部の構成例を示す側面図である。第4実施形態の平面図は、
図5(A)と同様でよい。第4実施形態は、第2および第3実施形態の組み合わせである。即ち、鉛直方向から見たときに、プレート45の大きさはマスクWよりも小さい。尚且つ、複数の脚部47がプレート45の下に設けられている。互いに隣接する脚部47間には、スペース領域SPが設けられている。第4実施形態のその他の構成は、第2実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第4実施形態は、第2および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
10 荷電粒子ビーム描画装置、1 描画チャンバ、1a ステージ、2 電子鏡筒、3 ロボットチャンバ、4 搬送ロボット、5 ロードロックチャンバ、41 回転機構、42 昇降ロッド、43 ロボットアーム、44 エンドエフェクタ、45 プレート、46 支持パッド、45a 突出部、47 脚部、SP スペース領域