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特許7325321精製ガス供給方法及び精製されたジボラン並びに精製ガス供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】精製ガス供給方法及び精製されたジボラン並びに精製ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 6/34 20060101AFI20230804BHJP
   C01B 6/00 20060101ALI20230804BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C01B6/34
C01B6/00 Z
B01D53/04 220
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019227947
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094528
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】高柳 智
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105528(JP,A)
【文献】特開平02-115016(JP,A)
【文献】特開平08-231209(JP,A)
【文献】特開平04-310509(JP,A)
【文献】特開2014-121677(JP,A)
【文献】特開平09-164319(JP,A)
【文献】特表2016-530186(JP,A)
【文献】特表2016-529448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/04
C01B 6/00
F17C 3/00
F17C 5/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源からのホウ素系の原料ガスを精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤と接触させて除去対象成分を除去することにより精製した精製ガスを精製筒の出口側から導出して供給先に供給する精製ガス供給方法であって、前記原料ガスの導入及び前記精製ガスの導出を停止した状態で、前記精製ガスが流れる経路及び精製筒内に不活性ガスを充填する段階、及び、前記経路及び精製筒内のガスを真空排気する段階を複数回繰り返して前記経路及び精製筒内から空気成分及び残留した原料ガスを排出するバッチパージ工程と、
該バッチパージ工程を終了した後に、前記不活性ガスを前記精製筒の出口側から導入して精製筒の入口側から導出し、精製筒内及び該精製筒に接続している配管内から空気成分及び残留した原料ガスを排出する流通パージ工程と、
該流通パージ工程中に精製筒入口側から排気されるガスを分析して前記除去対象成分及び原料ガスの濃度を分析する第1分析工程と、
該第1分析工程で前記除去対象成分及び原料ガスの濃度があらかじめ設定した第1設定濃度未満となったときに、前記流通パージ工程を継続しながら精製剤の加熱を開始する精製剤加熱工程と、
該精製剤加熱工程で精製筒から導出されるガスを分析して前記除去対象成分及び原料ガスの濃度を分析する第2分析工程と、
該第2分析工程で前記除去対象成分及び原料ガスの濃度があらかじめ設定した第2設定濃度未満となったときに前記精製剤加熱工程を終了し、前記精製筒内への前記不活性ガスの導入を停止して精製筒内を入口側から真空排気する加熱真空排気工程と、
該加熱真空排気工程で精製筒内があらかじめ設定した設定圧力未満になったときに前記加熱真空排気工程を終了して精製剤を冷却する冷却工程と、
該冷却工程で精製剤の温度があらかじめ設定された温度未満になったときに、前記ガス供給源からの原料ガスを精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤との接触によって精製された精製ガスを精製筒の出口側から導出して分析する第3分析工程とを順次行い、
該第3分析工程で精製ガス中の前記除去対象成分の濃度があらかじめ設定した第3設定濃度未満となったときに前記第3分析工程を終了し、供給先に精製ガスを供給する精製ガス供給工程を開始することを特徴とする精製ガス供給方法。
【請求項2】
前記精製剤は、多孔質剤であることを特徴とする請求項1記載の精製ガス供給方法。
【請求項3】
前記精製剤は、ゼオライト、活性炭及びモレキュラーシーブスのいずれか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の精製ガス供給方法。
【請求項4】
前記加熱真空排気工程における設定圧力は、10Paであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の精製ガス供給方法。
【請求項5】
前記第1分析工程における前記第1設定濃度は、1ppmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の精製ガス供給方法。
【請求項6】
前記第2分析工程における前記第2設定濃度及び前記第3分析工程における前記第3設定濃度は、それぞれ0.5ppmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の精製ガス供給方法。
【請求項7】
前記原料ガスは、ジボラン又はジボラン含有ガスであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の精製ガス供給方法。
【請求項8】
前記除去対象成分は、ホウ酸及び水分であることを特徴とする請求項7項記載の精製ガス供給方法。
【請求項9】
ガス供給源からの原料ガスを原料ガス導入弁を備えた原料ガス導入経路を通して精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤と接触させて除去対象成分を除去することにより精製した精製ガスを精製筒の出口側から導出して精製ガス導出経路の精製ガス導出弁を通して供給先に供給する精製ガス供給装置であって、前記原料ガス導入経路の前記原料ガス導入弁より精製筒入口側と前記精製ガス導出経路の前記精製ガス導出弁より精製筒出口側とに、入口側排気弁及び出口側排気弁を介してそれぞれ接続する排気経路と、前記精製ガス導出経路における前記排気経路の接続部と精製筒の出口側との間に設けられた精製筒出口弁と、前記精製剤を加熱するためのヒーターと、前記精製ガス導出経路の前記精製ガス導出弁と前記排気経路の接続部との間に接続した不活性ガス導入弁を備えた不活性ガス導入経路とを備え、前記排気経路には、排気弁を備えた排気経路と、真空排気弁及び真空ポンプを備えた真空排気経路と、分析弁を備えた分析経路とが接続されるとともに、前記精製筒内の圧力を検出する圧力計を備えていることを特徴とする精製ガス供給装置。
【請求項10】
前記精製剤は、多孔質剤であることを特徴とする請求項記載の精製ガス供給装置。
【請求項11】
前記精製剤は、ゼオライト、活性炭及びモレキュラーシーブスのいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の精製ガス供給装置。
【請求項12】
前記原料ガスは、ジボラン又はジボラン含有ガスであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の精製ガス供給装置。
【請求項13】
前記除去対象成分は、ホウ酸及び水分であることを特徴とする請求項12記載の精製ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製ガス供給方法及び精製されたジボラン並びに精製ガス供給装置に関し、詳しくは、半導体材料ガスとして用いられるホウ素系ガス、例えば高い反応性を有するジボランや三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、さらには、これらを含有したガス中に含まれる不純物成分を精製剤により除去して供給する精製ガス供給方法及び該方法を適用して得られた高純度、高品質のジボラン並びに前記方法を実施するのに適した構成を有する精製ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスに用いられる材料ガスは、大気中の酸素や二酸化炭素、水分といったガス状酸素含有不純物、さらには、バルブなどの制御機器からの極微量金属不純物が混入していると、半導体デバイスの性能の劣化や、品質制御の不安定化などの多大な悪影響を及ぼすため、半導体プロセス用の材料ガスには、不純物がほとんど混入していない高純度、高品質なガスが求められている。このようなことから、反応性が極めて高いジボラン(ジボラン含有ガスを含む、以下同じ。)を充填する容器として、容器の内表面の清浄度を保つことによってパーティクルや水分等の脱ガス成分を低減したり、容器内の金属表面とジボランとの接触による反応を抑制するため、金属製容器内壁を樹脂系材料でコーティングしたりすることが行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、ジボランガスの供給設備として、雰囲気温度を25℃以下に保つための冷却手段を備えることにより、テトラボランやペンタボランなどの高次ボランの発生を抑制することも行われている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-019499号公報
【文献】特開平04-140598号公報
【文献】特開平08-159399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ジボランを使用する際に、ガス状酸素含有不純物や極微量金属不純物といったパーティクルをほとんど含まない状態のジボランを供給しても、供給系統に設けられている圧力制御弁や流量制御弁(マスフローコントローラ)といった機器が微少な範囲での制御ができなくなるという事象が発生することがあった。従来から、ジボランを使用する際には、ジボラン中の水分やホウ酸、高次ボランを、ゼオライトや活性炭などの一般的な吸着剤からなる精製剤に吸着させて除去するようにしている。精製剤は、加熱や不活性ガスの流通を行って再生することにより、吸着及び再生を繰り返して使用しているが、長期間の使用によって精製剤の性能が次第に劣化していくため、適当なタイミングで新たな精製剤に交換する必要があった。また、通常の再生工程は、流通ガス量や加熱温度を管理することで行っているが、ジボランを供給するときには、ジボランが水分と反応してホウ酸を発生させるため、発生したホウ酸が精製剤に強く吸着して蓄積すると、蓄積したホウ酸が供給系統に僅かずつ放出されて供給系統に流入し、各種機器に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、ジボラン供給時におけるホウ酸のように、精製剤に蓄積することによって悪影響を及ぼす成分を確実に除去した状態で原料ガスを精製して供給できる精製ガス供給方法及び該方法を適用して得られた高純度、高品質のジボラン並びに前記方法を実施するのに適した構成を有する精製ガス供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の精製ガス供給方法は、ガス供給源からのホウ素系の原料ガスを精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤と接触させて除去対象成分を除去することにより精製した精製ガスを精製筒の出口側から導出して供給先に供給する精製ガス供給方法であって、前記原料ガスの導入及び前記精製ガスの導出を停止した状態で、前記精製ガスが流れる経路及び精製筒内に不活性ガスを充填する段階、及び、前記経路及び精製筒内のガスを真空排気する段階を複数回繰り返して前記経路及び精製筒内から空気成分及び残留した原料ガスを排出するバッチパージ工程と、該バッチパージ工程を終了した後に、前記不活性ガスを前記精製筒の出口側から導入して精製筒の入口側から導出し、精製筒内及び該精製筒に接続している配管内から空気成分及び残留した原料ガスを排出する流通パージ工程と、該流通パージ工程中に精製筒入口側から排気されるガスを分析して前記除去対象成分及び原料ガスの濃度を分析する第1分析工程と、該第1分析工程で前記除去対象成分及び原料ガスの濃度があらかじめ設定した第1設定濃度未満となったときに、前記流通パージ工程を継続しながら精製剤の加熱を開始する精製剤加熱工程と、該精製剤加熱工程で精製筒から導出されるガスを分析して前記除去対象成分及び原料ガスの濃度を分析する第2分析工程と、該第2分析工程で前記除去対象成分及び原料ガスの濃度があらかじめ設定した第2設定濃度未満となったときに前記精製剤加熱工程を終了し、前記精製筒内への前記不活性ガスの導入を停止して精製筒内を入口側から真空排気する加熱真空排気工程と、該加熱真空排気工程で精製筒内があらかじめ設定した設定
圧力未満になったときに前記加熱真空排気工程を終了して精製剤を冷却する冷却工程と、該冷却工程で精製剤の温度があらかじめ設定された温度未満になったときに、前記ガス供給源からの原料ガスを精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤との接触によって精製された精製ガスを精製筒の出口側から導出して分析する第3分析工程とを順次行い、該第3分析工程で精製ガス中の前記除去対象成分の濃度があらかじめ設定した第3設定濃度未満となったときに前記第3分析工程を終了し、供給先に精製ガスを供給する精製ガス供給工程を開始することを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の精製ガス供給方法は、前記精製剤が、多孔質剤、例えば、ゼオライト、活性炭及びモレキュラーシーブスのいずれか一種又は二種以上の混合物であることを特徴としている。
【0008】
また、前記加熱真空排気工程における設定圧力が10Paであること、前記第1分析工程における前記第1設定濃度が1ppmであること、前記第2分析工程における前記第2設定濃度及び前記第3分析工程における前記第3設定濃度がそれぞれ0.5ppm、好ましくは0.1ppm未満であることを特徴としている。
【0009】
特に、前記原料ガスがジボラン又はジボラン含有ガスであり、前記除去対象成分がホウ酸及び水分であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の精製ガス供給装置は、ガス供給源からの原料ガスを原料ガス導入弁を備えた原料ガス導入経路を通して精製筒の入口側から導入し、該精製筒に充填した精製剤と接触させて除去対象成分を除去することにより精製した精製ガスを精製筒の出口側から導出して精製ガス導出経路の精製ガス導出弁を通して供給先に供給する精製ガス供給装置であって、前記原料ガス導入経路の前記原料ガス導入弁より精製筒入口側と前記精製ガス導出経路の前記精製ガス導出弁より精製筒出口側とに、入口側排気弁及び出口側排気弁を介してそれぞれ接続する排気経路と、前記精製ガス導出経路における前記排気経路の接続部と精製筒の出口側との間に設けられた精製筒出口弁と、前記精製剤を加熱するためのヒーターと、前記精製ガス導出経路の前記精製ガス導出弁と前記排気経路の接続部との間に接続した不活性ガス導入弁を備えた不活性ガス導入経路とを備え、前記排気経路には、排気弁を備えた排気経路と、真空排気弁及び真空ポンプを備えた真空排気経路と、分析弁を備えた分析経路とが接続されるとともに、前記精製筒内の圧力を検出する圧力計を備えていることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の精製ガス供給装置は、前記精製剤が多孔質剤、例えば、ゼオライト、活性炭及びモレキュラーシーブスのいずれか一種又は二種以上であることを特徴としている。特に、前記原料ガスがジボラン又はジボラン含有ガスであり、前記除去対象成分が、ホウ酸及び水分であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、精製剤に残留、蓄積するおそれのある除去対象成分を十分に除去できるので、原料ガスを精製する際に、精製剤から原料ガス中に除去対象成分が混入することがなくなり、あらかじめ設定された純度の精製ガス、特に高純度のジボランやジボランを混合したジボラン混合ガスをはじめとする三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素などのホウ素系ガスを供給先に確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の精製ガス供給方法の実施に最適な構成を有する精製ガス供給装置の一形態例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の精製ガス供給装置の一形態例を示している。本形態例に示す精製ガス供給装置は、原料ガス供給源11から供給されるホウ素系の原料ガスを精製筒12内に充填した精製剤に接触させ、原料ガス中に含まれる除去対象成分を精製剤で除去して高純度のホウ素系の精製ガスとし、この精製ガスを供給先13に供給するためのものであって、原料ガス供給源11と精製筒12の入口側とは、原料ガス導入弁14を備えた原料ガス導入経路15で接続され、精製筒12の出口側と供給先13とは、精製ガス導出弁16を備えた精製ガス導出経路17で接続されている。
【0015】
前記原料ガス導入経路15の前記原料ガス導入弁14より精製筒12の入口側と、前記精製ガス導出経路17の前記精製ガス導出弁16より精製筒12の出口側とには、入口側排気弁18及び出口側排気弁19を介してそれぞれ接続する排気経路20が設けられており、精製ガス導出経路17における排気経路20の接続部と前記精製筒12の出口側との間には、精製筒出口弁21が設けられるとともに、該精製筒出口弁21と精製筒12の出口側との間には、精製筒12内の圧力を検出するための圧力計22が設けられている。
【0016】
さらに、前記精製ガス導出経路17の前記精製ガス導出弁16と前記排気経路20の出口側接続部との間には、不活性ガス導入弁23を備えた不活性ガス導入経路24が接続しており、前記排気経路20には、排気弁25を備えた排気経路26と、真空排気弁27及び真空ポンプ28を備えた真空排気経路29と、分析弁30及び分析計31を備えた分析経路32とが接続されている。また、精製筒12の外周には、精製剤再生時に精製筒12内の精製剤を加熱するためのヒーター33が設けられるとともに、精製剤の温度を検出するための温度計(図示せず)が設けられている。
【0017】
前記精製筒12内に充填する前記精製剤としては、原料ガスの種類や、該原料ガス中に含まれる除去対象成分の種類及び濃度に応じて適宜な精製剤を用いることができるが、通常は、多孔質剤、例えば、ゼオライト、活性炭、モレキュラーシーブスなどを用いることができ、これらの精製剤は、一種のみを用いてもよく、目的に応じて二種以上を混合したり、積層したりして用いることができる。
【0018】
精製ガスの供給先13は、図1に示すように、通常は、精製ガス充填用に製作されたガス容器であるが、供給先13が半導体デバイスの製造設備の場合は、精製ガス導出経路17を製造設備に設けられている供給系統に接続すればよい。
【0019】
前記分析計31には、測定成分に応じた機器を使用すればよく、例えば、水分濃度については、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy;フーリエ変換赤外分光法)や、CRDS(Cavity Ring-Down Spectroscopy;キャビティリングダウン分光法)といった光学系を用いた検出方法を用いることができ、五酸化リン式や水晶振動子式といった一般的な水分計を用いることもできる。
【0020】
また、ホウ酸の濃度を測定する必要がある場合には、例えば、赤外吸収法により分析することができる。具体的には、2900~3000cm-1、1350~1450cm-1及び1200~1300cm-1の3つ領域に特徴的な吸収帯を持っているので、FT-IRやND-IR(Nondispersive Infrared;非分散型赤外線吸収法)などを使用することで測定が可能である。
【0021】
さらに、高次ボラン、例えば、テトラボランやペンタボランの場合も、FT-IRやGC(Gas Chromatography;ガスクロマトグラフィー)、GC-FT-IR、GC-ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry;誘導結合プラズマ質量分析計)等で測定可能である。
【0022】
次に、本発明方法の各工程を、前記形態例に示した精製ガス供給装置を使用し、ジボランを精製して供給する例を挙げて説明する。なお、各弁が全て閉じており、装置内にガスの流れはなく、ヒーターも停止した状態から説明を開始する。
【0023】
最初に、不活性ガス導入弁23及び精製筒出口弁21を開いて不活性ガス導入経路24から精製ガス導出経路17及び精製筒12内に不活性ガス、例えば、高純度窒素ガスを導入して充填する段階と、不活性ガス導入弁23を閉じて入口側排気弁18、出口側排気弁19及び真空排気弁27を開くとともに、真空ポンプ28を作動させて精製ガス導出経路17及び精製筒12内から空気成分及び残留した原料ガスを排出する段階とを複数回繰り返すバッチパージ工程を行う。
【0024】
前記バッチパージ工程を終了した後、各弁を閉じた状態から、不活性ガス導入弁23、精製筒出口弁21、入口側排気弁18及び排気弁25を開き、不活性ガス導入経路24から導入される前記不活性ガスを前記精製筒12の出口側から導入し、精製筒12の入口側から導出して精製筒12内及び該精製筒12に接続している配管17,15内から空気成分及び残留した原料ガスを排出する流通パージ工程を行う。この流通パージ工程中に、適宜分析弁30を開いて精製筒12の入口側から排気経路20に排気されたガスを分析経路32を通して分析計31に導入し、ガス中の除去対象となる成分及び原料ガスの濃度を分析する第1分析工程を行う。
【0025】
ジボランを供給する場合の第1分析工程では、ガス中の除去対象となる成分として水分及びホウ酸、高次ボランの濃度を、原料ガスの濃度としてジボランの濃度をそれぞれ測定し、測定した各成分の濃度が第1設定濃度未満、例えば1ppm未満となったことを確認したら流通パージ工程を継続しながら、すなわち、各弁の開閉状態を保持して精製筒12への前記不活性ガスの流通を継続しながらヒーター33を作動させて精製筒12の内部に充填した精製剤をあらかじめ設定した加熱再生温度、例えば、120~300℃に加熱して精製剤加熱工程を開始する。
【0026】
この精製剤加熱工程においても、適宜分析弁30を開いて精製筒12の入口側から排気されるガスを分析計31に導入し、前記同様に、水分、ホウ酸、高次ボラン、ジボランの各濃度を分析する第2分析工程を行う。そして、各濃度が第2設定濃度未満、例えば0.5ppm未満、望ましくは0.1ppm未満になったときに精製剤加熱工程を終了する。
【0027】
精製剤加熱工程後は、不活性ガス導入弁23及び排気弁25を閉じるとともに、精製筒出口弁21、入口側排気弁18及び真空排気弁27を開いた状態とし、ヒーター33を作動させた状態のままで真空ポンプ28を作動させることにより、精製ガス導出経路17及び精製筒12内を精製筒入口側から真空排気する加熱真空排気工程を開始する。
【0028】
加熱真空排気工程は、圧力計22で測定した精製筒12内の圧力があらかじめ設定した設定圧力未満、例えば10Pa未満になったときに終了してヒーター33の電源を切って加熱真空排気工程を終了し、真空排気弁27を閉じてから真空ポンプ28を停止し、精製剤を冷却する冷却工程を開始する。この冷却工程は、精製筒12の外部などに設けた温度計があらかじめ設定された温度未満、例えば35℃未満になったとき、あるいは、あらかじめ設定された時間が経過したときに終了し、続けて精製ガスの供給を行わない場合は、全ての弁を閉じた待機状態とする。
【0029】
前記冷却工程の終了後に精製ガスの供給を開始する際には、まず、原料ガス導入弁14を開いて原料ガス供給源11から精製筒12への原料ガスの導入を開始するとともに、精製筒出口弁21、出口側排気弁19及び分析弁30を開き、前記原料ガス供給源11から精製筒12の入口側から導入され、該精製筒12に充填した精製剤との接触によって精製された精製ガスを精製筒12の出口側から導出し、精製筒出口弁21、出口側排気弁19及び分析弁30を介して分析計31に導入し、精製ガスを分析する第3分析工程を行う。
【0030】
そして、第3分析工程で精製ガス中の水分及びホウ酸、高次ボランの濃度があらかじめ設定された第3設定濃度未満、例えば0.5ppm未満、望ましくは0.1ppm未満になったときに第3分析工程を終了し、出口側排気弁19及び分析弁30を閉じ、精製ガス導出弁16を開いて精製ガスを供給先13、例えばガス容器に供給する精製ガス供給工程を開始する。これにより、精製剤によって水分及びホウ酸、高次ボランの濃度を十分に低減したジボランを供給先13に供給することができる。
【0031】
このように、供給先13にジボランを供給する前に、バッチパージ工程、流通パージ工程、第1分析工程、精製剤加熱工程、第2分析工程、加熱真空排気工程及び第3分析工程を順次行うことにより、精製ガス導出経路17及び精製筒12の精製剤から水分やホウ酸、高次ボランといった除去対象成分を確実に排除することができ、ホウ酸が精製剤に残留し、原料ガス供給の繰り返しによって精製剤に蓄積することを確実に防止できるので、十分に精製された状態の高純度のジボランを得ることができる。このようにして精製したジボランは、水分やホウ酸、高次ボランの濃度がそれぞれ0.5ppm未満となっているので、半導体デバイスの製造に使用する材料ガスとして最適である。
【0032】
また、ジボランを水素、窒素、アルゴンなどの希釈ガスで希釈したジボラン混合ガスにおいても、前記各工程を行うことにより、供給先に供給するジボラン混合ガス中にホウ酸、高次ボランが混入することがなくなり、半導体デバイスの製造設備におけるジボランやジボラン混合ガスの供給系統に設けられている各種機器が動作不良を起こすことがなくなる。
【0033】
なお、本発明は、前記ジボランやジボラン混合ガスに限定されるものではなく、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素などのホウ素系の各種材料ガスにも適用可能である。また、前記圧力計は、精製筒内の圧力を検出できれば、精製筒の入口側などの適宜な位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
11…原料ガス供給源、12…精製筒、13…供給先、14…原料ガス導入弁、15…原料ガス導入経路、16…精製ガス導出弁、17…精製ガス導出経路、18…入口側排気弁、19…出口側排気弁、20…排気経路、21…精製筒出口弁、22…圧力計、23…不活性ガス導入弁、24…不活性ガス導入経路、25…排気弁、26…排気経路、27…真空排気弁、28…真空ポンプ、29…真空排気経路、30…分析弁、31…分析計、32…分析経路、33…ヒーター
図1