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特許7325375熱硬化性シリコーン組成物、シート、及びシリコーン硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】熱硬化性シリコーン組成物、シート、及びシリコーン硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/08 20060101AFI20230804BHJP
   C08F 130/08 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C08F299/08
C08F130/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020085761
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178936
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
(72)【発明者】
【氏名】小川 敬典
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108396(JP,A)
【文献】米国特許第06342324(US,B1)
【文献】特開平06-306294(JP,A)
【文献】特開2016-124967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/08
C08F 30/08
C08F 130/08
C08F 230/08
C08F 290/06
C08F 290/14
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa1(R SiO1/2b1(X1/2c1 (1)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち50~99.9%はメチル基であり、かつ、0.1~50%はアルケニル基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a1は0.2~0.8、b1は0.2~0.8、c1は0~0.1であり、a1+b1+c1=1である。)
(B)下記平均単位式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa2(R SiO1/2b2(X1/2c2 (2)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換のアルケニル基を含まない一価炭化水素基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a2は0.2~0.8、b2は0.2~0.8、c2は0~0.1であり、a2+b2+c2=1である。)
(C)下記平均単位式(3)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO)a3(R SiO1/2b3 (3)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち20%以上がメチル基であり、かつ、0.0001~25%はアルケニル基であり、a3は0.9980~0.9999、b3は0.0001~0.002であり、a3+b3=1である。)
(D)100℃における半減期が1時間以上の有機過酸化物
(E)溶剤
を含むものである熱硬化性シリコーン組成物であって、
前記(B)成分の添加量が、前記(A)成分100質量部に対して1~100質量部であり、
前記(C)成分の添加量が、前記(A)成分100質量部に対して5~100質量部であり、かつ、
前記(D)成分の配合量が、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部であることを特徴とする熱硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(A)~(E)成分の合計100質量部に対して(F)蛍光体20~500質量部を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱硬化型シリコーン組成物から形成されたものであることを特徴とするシート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーン硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機過酸化物により硬化する熱硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、その発光効率の目覚ましい向上を背景とし、低い消費電力、高寿命、意匠性などを特長として液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト向けや、車のヘッドライト等の車載分野ばかりではなく一般照明向けでも急激に市場を拡大しつつある。
【0003】
LEDの発光スペクトルは、LEDチップを形成する半導体材料に依存するためその発光色は限られている。そのため、LEDを用いてLCDバックライトや一般照明向けの白色光を得るためにはLEDチップ上にそれぞれのチップに適合した蛍光体を配置し、発光波長を変換する必要がある。具体的には、青色発光するLEDチップ上に黄色蛍光体を設置する方法、青色発光するLEDチップ上に赤および緑の蛍光体を設置する方法、紫外線を発するLEDチップ上に赤、緑、青の蛍光体を設置する方法などが提案されている。これらの中で、LEDチップの発光効率やコストの面から青色LED上に黄色蛍光体を設置する方法、および青色LED上に赤および緑の蛍光体を設置する方法が現在最も広く採用されている。
【0004】
LEDチップ上に蛍光体を設置する具体的な方法の1つとして、LEDチップ上に、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを反応させる付加硬化型シリコーン組成物中に蛍光体を分散させたシートを貼りつける方法が提案されている。しかし、この方法では蛍光体シートを作製する際に付加反応が進んでしまわないようにシートを低温で保管しなければならず、また、組成中に付加反応制御剤を多量に添加する必要があった(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-001791号公報
【文献】特開2013-001792号公報
【文献】特開2013-138216号公報
【文献】特開2014-114446号公報
【文献】特開2014-116598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、反応制御剤を添加せずとも未硬化状態における安定性に優れ、高硬度の硬化物を与える熱硬化性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明では、
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa1(R SiO1/2b1(X1/2c1 (1)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち50~99.9%はメチル基であり、かつ、0.1~50%はアルケニル基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a1は0.2~0.8、b1は0.2~0.8、c1は0~0.1であり、a1+b1+c1=1である。)
(B)下記平均単位式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa2(R SiO1/2b2(X1/2c2 (2)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換のアルケニル基を含まない一価炭化水素基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a2は0.2~0.8、b2は0.2~0.8、c2は0~0.1であり、a2+b2+c2=1である。)
(C)下記平均単位式(3)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO)a3(R SiO1/2b3 (3)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち20%以上がメチル基であり、かつ、0.0001~25%はアルケニル基であり、a3は0.9980~0.9999、b3は0.0001~0.002であり、a3+b3=1である。)
(D)有機過酸化物
(E)溶剤
を含むものである熱硬化性シリコーン組成物を提供する。
【0008】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物であれば、反応制御剤を添加しなくとも未硬化状態における安定性に優れ、高硬度の硬化物を与えることが可能である。
【0009】
また、前記(B)成分の添加量が、前記(A)成分100質量部に対して1~100質量部であることが好ましい。
【0010】
また、前記(C)成分の添加量が、前記(A)成分100質量部に対して5~100質量部であることが好ましい。
【0011】
このようなものであれば、より機械特性に優れる硬化物を与えるものとなる。
【0012】
また、前記(A)~(E)成分の合計100質量部に対して(F)蛍光体20~500質量部を含むものであることが好ましい。
【0013】
このようなものであれば、光半導体素子から発せられた光を効率的に目的の波長の光に波長変換することが可能となる。
【0014】
また本発明では、上記の熱硬化型シリコーン組成物から形成されたものであるシートを提供する。
【0015】
このようなシートであれば、未硬化状態における安定性に優れるため、広範な用途への応用が可能であり、LED素子等の光半導体装置の表面被覆用途に特に有用なものとなる。
【0016】
さらに本発明では、上記の熱硬化性シリコーン組成物の硬化物であるシリコーン硬化物を提供する。
【0017】
このようなシリコーン硬化物であれば、機械特性に優れるものとなる。また、未硬化状態における安定性に優れる熱硬化性シリコーン組成物の硬化物であるため、広範な用途への応用が可能であり、LED素子等の光半導体装置の表面被覆用途に特に有用なものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、必ずしも反応制御剤を添加しなくても未硬化状態における安定性に優れ、高硬度の硬化物を与えるため、広範な用途への応用が可能であり、蛍光体シート及びLEDの表面被覆用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、多量の反応制御剤を添加しなくても未硬化状態における安定性に優れ、高硬度の硬化物を与える熱硬化性シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、有機過酸化物を含む特定の熱硬化性シリコーン組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、
(A)下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa1(R SiO1/2b1(X1/2c1 (1)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち50~99.9%はメチル基であり、かつ、0.1~50%はアルケニル基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a1は0.2~0.8、b1は0.2~0.8、c1は0~0.1であり、a1+b1+c1=1である。)
(B)下記平均単位式(2)で表されるオルガノポリシロキサン、
(SiOa2(R SiO1/2b2(X1/2c2 (2)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換のアルケニル基を含まない一価炭化水素基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a2は0.2~0.8、b2は0.2~0.8、c2は0~0.1であり、a2+b2+c2=1である。)
(C)下記平均単位式(3)で表されるオルガノポリシロキサン、
(R SiO)a3(R SiO1/2b3 (3)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち20%以上がメチル基であり、かつ、0.0001~25%はアルケニル基であり、a3は0.9980~0.9999、b3は0.0001~0.002であり、a3+b3=1である。)
(D)有機過酸化物
(E)溶剤
を含むものである熱硬化性シリコーン組成物である。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[熱硬化性シリコーン組成物]
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、後述する(A)、(B)、(C)、(D)、(E)成分、及び必要に応じて(F)成分を含有するものである。
【0024】
<(A)成分>
(A)成分は、下記平均単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(SiOa1(R SiO1/2b1(X1/2c1 (1)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち50~99.9%はメチル基であり、かつ、0.1~50%はアルケニル基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a1は0.2~0.8、b1は0.2~0.8、c1は0~0.1であり、a1+b1+c1=1である。)
【0025】
は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0026】
の全数のうちアルケニル基が占める数の割合は、0.1~50%、好ましくは0.1~30%、特に好ましくは0.3~20%である。0.1%未満では、組成物の硬化性が不十分となり、50%を超えると硬化物が脆くなる。
【0027】
また、R中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、好ましくは炭素数が1~3のアルキル基であり、耐熱性の面からメチル基が最も好ましい。
【0028】
の全数のうちメチル基が占める数の割合は、50~99.9%、好ましくは60~97%である。50モル%未満の場合は得られる硬化物の耐熱性が不十分となる。
【0029】
は水素原子又はアルキル基であり、このアルキル基としては、Rとして例示したものと同様の有機基が挙げられ、特に、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0030】
a1は0.2~0.8であり、b1は0.2~0.8であり、c1は0~0.1であり、a1+b1+c1=1である。a1、b1及びc1が上記範囲外であると、得られる硬化物の硬さ及び/又は強度が不十分となる。
【0031】
a1は好ましくは0.3~0.7、特に好ましくは0.4~0.6であり、b1は好ましくは0.3~0.7、特に好ましくは0.4~0.6であり、c1は好ましくは0~0.05である。
【0032】
(A)成分の分子量は限定されないが、トルエン溶媒を用いたGPC測定(標準ポリスチレン換算)による重量平均分子量(Mw)が500~20,000であることが好ましく、より好ましくは700~15,000、特に好ましくは、1,000~10,000である。
【0033】
(A)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0034】
<(B)成分>
(B)成分は下記平均単位式(2)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(SiOa2(R SiO1/2b2(X1/2c2 (2)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換のアルケニル基を含まない一価炭化水素基であり、Xは水素原子又はアルキル基である。a2は0.2~0.8、b2は0.2~0.8、c2は0~0.1であり、a2+b2+c2=1である。)
【0035】
中のアルケニル基を含まない一価炭化水素基としては、(A)成分におけるR中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基と同様のものが挙げられ、中でも耐熱性の面からメチル基が最も好ましい。
【0036】
は水素原子又はアルキル基であり、このアルキル基としては、(A)成分においてRとして例示したものと同様の有機基が挙げられ、特に、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0037】
a2は0.2~0.8であり、b2は0.2~0.8であり、c2は0~0.1であり、a2+b2+c2=1である。a2、b2及びc2が上記範囲外であると、得られる硬化物の硬さ及び/又は強度が不十分となる。
【0038】
a2は好ましくは0.3~0.7、特に好ましくは0.4~0.6であり、b2は好ましくは0.3~0.7、特に好ましくは0.4~0.6であり、c2は0.01~0.1とすることができるが、好ましくは0~0.05である。
【0039】
(B)成分の分子量は限定されないが、トルエン溶媒を用いたGPC測定(標準ポリスチレン換算)による重量平均分子量(Mw)が500~20,000であることが好ましく、より好ましくは700~15,000、特に好ましくは、1,000~10,000である。
【0040】
(B)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0041】
(B)成分の配合量は、硬化物の硬度の点から、(A)成分100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~70質量部、更に好ましくは7~50質量部である。
【0042】
<(C)成分>
(C)成分は下記平均単位式(3)で表されるオルガノポリシロキサンである。
(R SiO)a3(R SiO1/2b3 (3)
(式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Rの全数のうち20%以上がメチル基であり、かつ、0.0001~25%はアルケニル基であり、a3は0.9980~0.9999、b3は0.0001~0.002であり、a3+b3=1である。)
【0043】
は、(A)成分におけるRと同様のものが挙げられ、R中のアルケニル基として、好ましくは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、ビニル基であることが特に好ましい。
【0044】
の全数のうちアルケニル基が占める数の割合は、0.0001~25%、好ましくは0.1~20%、特に好ましくは0.3~20%である。0.0001%未満では、組成物の硬化性が不十分となり、25%を超えると硬化物が脆くなる。
【0045】
また、R中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル置換又は非置換の一価炭化水素基が例示され、中でも耐熱性の面からメチル基が最も好ましい。全Rのうち、これらの一価炭化水素基の含有率が20モル%以上であれば、安定した耐熱性を付与できるため好ましく、より好ましくは40モル%以上である。
【0046】
の全数のうちメチル基が占める数の割合は、20~99.9999%、好ましくは40~99.9%である。20モル%未満の場合は得られる硬化物の耐熱性が不十分となる。
【0047】
a3は0.9980~0.9999であり、好ましくは0.9985~0.9999であり、更に好ましくは、0.9987~0.9999である。b3は0.0001~0.002であり、好ましくは0.0001~0.0015であり、更に好ましくは、0.0001~0.0013である。またa3+b3=1である。
【0048】
(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
(C)成分の配合量は、硬化物の硬度の点から、(A)成分100質量部に対して好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~70質量部、更に好ましくは30~60質量部である。
【0050】
<(D)成分>
(D)成分は、有機過酸化物であり、熱により分解してラジカルを生成することで本発明の熱硬化性シリコーン組成物を硬化させるものである。
【0051】
有機過酸化物の具体例としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0052】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。
【0053】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート及びビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサヒドロテレフタレートが挙げられる。
【0054】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt-ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0055】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びビス(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。
【0056】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。
【0057】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0058】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t-ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t-ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t-ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t-ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド及びトリス(t-ブチル)アリルシリルパーオキサイドが挙げられる。
【0059】
(D)成分としては、未硬化状態における安定性の点から、100℃における半減期が1時間以上の有機過酸化物が好ましい。
【0060】
(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0061】
(D)成分の配合量は、有効量(即ち、所謂触媒量)でよいが、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、特に0.1~5質量部を配合することが好ましい。
【0062】
<(E)成分>
(E)成分の溶剤は、本組成物を構成する上記(A)~(D)成分を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶剤を使用することができる。該溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、リグロイン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ゴム揮発油、シリコーン系溶剤などが挙げられる。中でもトルエン、ヘプタン、酢酸エチルが好適に用いられる。
【0063】
(E)成分は、本発明の熱硬化性シリコーン組成物の塗布作業時の蒸発速度に応じて、1種を単独で用いても2種以上を組合せて混合溶剤として用いてもよい。
【0064】
(E)成分の配合量は特に制限されないが、塗布作業時の作業性の点から、(A)~(D)成分の合計100質量部に対して好ましくは50~200質量部、より好ましくは100~150質量部である。
【0065】
<(F)成分>
本発明の熱硬化性シリコーン組成物には、(F)蛍光体を含有させてもよい。蛍光体を熱硬化性シリコーン組成物へ混合、分散させることで、光半導体素子から発せられた光を効率的に目的の波長の光に波長変換することが可能となる。
【0066】
蛍光体は、光半導体素子から放出される青色光、紫色光、紫外光を吸収して波長を変換し、光半導体素子から放出される光と異なる波長の赤、橙色、黄色、緑色、青色領域の波長の光を放出するものである。これにより、光半導体素子から放出される光の一部と、蛍光体から放出される光の一部とが混合して、白色を含む多色系の光半導体デバイスが得られる。
【0067】
上述のような蛍光体には、緑色に発光する蛍光体、青色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体等の種々の蛍光体がある。本発明に用いられる具体的な蛍光体としては、有機蛍光体、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料等公知の蛍光体が挙げられる。有機蛍光体としては、アリルスルホアミド・メラミンホルムアルデヒド共縮合染色物やペリレン系蛍光体等を挙げることができ、長期間使用可能な点からペリレン系蛍光体が好ましく用いられる。本発明に特に好ましく用いられる蛍光物質としては、無機蛍光体が挙げられる。以下に本発明に用いられる無機蛍光体について記載するが、これに限定されるわけではない。
【0068】
緑色に発光する蛍光体として、例えば、SrAl:Eu、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:Ce,Tb、SrAl125:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga:Euなどが挙げられる。
【0069】
青色に発光する蛍光体として、例えば、Sr(POCl:Eu、(SrCaBa)(POCl:Eu、(BaCa)(POCl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(POl2:Eu,Mnなどが挙げられる。
【0070】
緑色から黄色に発光する蛍光体として、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット酸化物蛍光体、及び、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体などが挙げられる(いわゆるYAG系蛍光体)。具体的には、Ln12:A(Lnは、Y、Gd、Laから選ばれる少なくとも1以上である。Mは、Al、Caの少なくともいずれか一方を含む。Aは、ランタノイド系である。)、(Y1-xGa(Al1-yGa12:A(Aは、Ce、Tb、Pr、Sm、Eu、Dy、Hoから選ばれる少なくとも1以上である。0<x<0.5、0<y<0.5である。)を使用することができる。
【0071】
赤色に発光する蛍光体として、例えば、YS:Eu、LaS:Eu、Y:Eu、GdS:Euなどが挙げられる。
【0072】
また、青色LEDに対応し発光する蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、LuAl12:Ce、YAl12:CeなどのYAG系蛍光体、TbAl12:CeなどのTAG系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu系蛍光体やCaScSi12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)SiO:Euなどのシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)Si:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSiAlN:Eu等のナイトライド系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Euなどのオキシナイトライド系蛍光体、さらには(Ba,Sr,Ca)Si:Eu系蛍光体、CaMgSi16Cl:Eu系蛍光体、SrAl:Eu,SrAl1425:Eu等の蛍光体が挙げられる。
【0073】
これらの中では、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、シリケート系蛍光体が、発光効率や輝度などの点で好ましく用いられる。
【0074】
上記以外にも、用途や目的とする発光色に応じて公知の蛍光体を用いることができる。
【0075】
蛍光体の粒子サイズは、特に制限はないが、D50が0.05μm以上のものが好ましく、3μm以上のものがより好ましい。また、D50が30μm以下のものが好ましく、20μm以下のものがより好ましい。ここでD50とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算が50%となるときの粒子径のことをいう。D50が上記範囲であると、本発明の熱硬化性シリコーン組成物(例えば、ウェハーレベル光半導体デバイス用樹脂組成物)中の蛍光体の分散性が良好で、安定な発光が得られる。
【0076】
上記蛍光体は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
(F)成分の含有量は、(A)~(E)成分の合計100質量部に対し20~500質量部であることが好ましく、50~400質量部以上であることがより好ましく、80~300質量部であることがさらに好ましい。蛍光体含有量を上記範囲とすることで、光変換効率を高めることができる。
【0078】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、蛍光体を配合することにより、蛍光体シートとしてLEDの表面被覆用途に特に好ましく用いられる。その際、蛍光体シート中の蛍光体の含有量が上記範囲であることで、優れた性能を示すLED発光装置を得ることができる。
【0079】
<任意成分>
本発明の熱硬化性シリコーン組成物には、上記(A)~(F)成分以外にも、以下に例示する接着性向上剤を含有してもよい。
【0080】
接着性向上剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有するオルガノポリシロキサン又はオルガノシラン化合物、もしくはエポキシ部位を有する基を含有するオルガノポリシロキサン又はオルガノシラン化合物が好ましい。
【0081】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基であることが好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、上記R等において例示した、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アリール基、上記アラルキル基、上記ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。具体的には(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤やその部分加水分解縮合物(シランカップリング剤のオリゴマー)等が例示される。より具体的には、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、及びケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物又はシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。
【0082】
エポキシ部位を有する基としては、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基が挙げられる。
【0083】
接着性向上剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、23℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0084】
接着性向上剤の含有量は限定されないが、上記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましい。
【0085】
また、本発明の熱硬化性シリコーン組成物には、ヒュームドシリカ、溶融石英ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の(F)成分以外の無機充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0086】
(F)成分以外の無機充填剤を使用する場合の配合量は、上記(A)成分100質量部に対し、好ましくは5~500質量部であり、より好ましくは10~200質量部である。このような範囲であると、本発明の組成物は流動性がより優れたものとなる。
【0087】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度は、好ましくは10~5,000mPa・sであり、より好ましくは20~2,000mPa・sである。このような範囲であると、得られる組成物は、作業性・取扱い性が良好となりやすく、成形、硬化時に泡や空気の巻き込みが発生しにくい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計で測定したときの値とすることができる。
【0088】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物の粘度は、(A)~(E)成分およびその他の成分の配合量、粘度、ならびに(F)成分の配合量および平均粒径などにより調節される。
【0089】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物であれば、反応制御剤を添加しなくても未硬化状態における安定性に優れ、高硬度の硬化物を与えるため、広範な用途への応用が可能であり、LED素子等の光半導体装置の表面被覆用途に特に有用なものとなる。但し、本発明の熱硬化性シリコーン組成物は(A)~(E)成分を含むものであれば、目的に応じ反応制御剤を含むことは差し支えない。
【0090】
[シート]
本発明では、上述の熱硬化性シリコーン組成物から形成されたものであるシートを提供する。シートは組成物が硬化したもの、もしくは未硬化のもののいずれであってもよいが、未硬化のものとする方が好ましい。本発明のシートであれば、LED素子等の光半導体装置の表面被覆用途に特に有用なものとなる。
【0091】
本発明のシートを作製する方法としては特に限定はされない。例えば、本発明の熱硬化性シリコーン組成物を、該組成物が硬化する温度未満の温度で加熱して(E)溶剤を揮発させることによって、シート(未硬化のシート)を得ることができる。
【0092】
[シリコーン硬化物]
本発明の熱硬化性シリコーン組成物を成形、硬化させることにより、硬化物を得ることができる。成形方法としては、インジェクションモールド法やトランスファーモールド法など、従来用いられている方法を適用することができる。さらに、本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、高い流動性を有するため、ディスペンス法、ポッティング法や各種コーティング法により成形することができる。
【0093】
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには高い温度で加熱することが好ましい。硬化条件は、成形物の形状や硬化方法等により異なり、特に制限されないが、硬化温度は130~200℃の範囲内であることが好ましく、硬化時間は好ましくは1分~24時間、より好ましくは5分~5時間である。
【0094】
また、本発明のシリコーン硬化物の硬さは、ショアDで20以上であることが好ましく、特に30~70であることが好ましい。
【実施例
【0095】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.40((CH=CH)(CHSiO1/20.05で表わされる(A)成分100質量部、構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.45で表わされる(B)成分40質量部、構成単位比((CHSiO)0.9996((CH=CH)(CHSiO1/20.0004で表わされる(C)成分50質量部、(D)成分として、有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製カヤレン6-70)3.5質量部、(E)成分としてトルエン200質量部を混合し、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0097】
[実施例2]
実施例1で得られた熱硬化性シリコーン組成物100質量部に対し、YAG蛍光体を150質量部混合し、蛍光体含有熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0098】
[実施例3]
構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.40((CH=CH)(CHSiO1/20.05で表わされる(A)成分100質量部、構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.45で表わされる(B)成分25質量部、構成単位比((CHSiO)0.9996((CH=CH)(CHSiO1/20.0004で表わされる(C)成分40質量部、(D)成分として有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製カヤレン6-70)3質量部、(E)成分としてトルエン170質量部を混合し、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0099】
[実施例4]
実施例3で得られた熱硬化性シリコーン組成物100質量部に対し、YAG蛍光体を150質量部混合し、蛍光体含有熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0100】
[比較例1]
構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.40((CH=CH)(CHSiO1/20.05で表わされる(A)成分100質量部、構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.45で表わされる(B)成分40質量部、構成単位比((CHSiO)0.9996((CH=CH)(CHSiO1/20.0004で表わされる(C)成分50質量部、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体((A)~(C)成分の合計に対し、本錯体中の白金金属が質量単位で10ppmとなる量)、下記式(4)で表わされるオルガノハイドロジェンポリシロキサン7質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.2質量部、(E)成分としてトルエン200質量部を混合し、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【化1】
【0101】
[比較例2]
構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.45で表わされる(B)成分100質量部、構成単位比((CHSiO)0.9996((CH=CH)(CHSiO1/20.0004で表わされる(C)成分50質量部、(D)成分として有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製カヤレン6-70)3.5質量部、(E)成分としてトルエン150質量部を混合し、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0102】
[比較例3]
構成単位比(SiO0.55((CHSiO1/20.40((CH=CH)(CHSiO1/20.05で表わされる(A)成分100質量部、構成単位比((CHSiO)0.9996((CH=CH)(CHSiO1/20.0004で表わされる(C)成分50質量部、(D)成分として有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製カヤレン6-70)3質量部、(E)成分としてトルエン150質量部を混合し、熱硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0103】
上記実施例1~4および比較例1~3で得られた組成物について、厚み2mmのテフロン(登録商標)製の枠に流し込み、60℃1時間、80℃1時間、100℃1時間の順に加熱することにより溶剤を揮発させ、シートを作製した。得られたシートについて以下の試験(1)、(2)を行い、物性を確認した。その結果を表1に示す。
【0104】
試験(1):シートを120℃に10分間晒した後、トルエンに可溶か否かを確認した。
試験(2):シートを150℃で3時間硬化し、得られた硬化物の外観を観察し、硬さを測定した。
・外観:目視にて亀裂の有無を観察した。
亀裂無し(○),亀裂有り(×)
・硬さ:上島製作所(株)製デュロメータタイプD型硬度計にて測定した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示されるように、実施例1~4で得られたシートは、120℃10分間の加熱後においてもトルエンに可溶であり、未硬化状態を保っていた。また、150℃で3時間加熱することにより高硬度の硬化物を与えることが示された。
【0107】
一方、ヒドロシリル化による硬化性組成物である比較例1では、反応制御剤が存在していても120℃10分間の加熱により硬化し、未硬化状態を保つことができなかった。また、(A)成分を含有しない比較例2では硬化物の硬度が著しく低下し、(B)成分を含有しない比較例3では硬化物に亀裂が発生した。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。