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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20230807BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230807BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230807BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01L23/30 B
C08L63/00 A
C08L63/00 C
H01L23/14 R
H01L23/14 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019021087
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2020129589
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】高麗 亜希
(72)【発明者】
【氏名】大鷲 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】足羽 剛児
(72)【発明者】
【氏名】松川 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】小迫 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】匹田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】大久保 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】大角 浩太郎
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-355954(JP,A)
【文献】特開平04-268786(JP,A)
【文献】特開2017-039842(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159152(WO,A1)
【文献】特開平03-108362(JP,A)
【文献】特開2011-077224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14、23/28-23/31、23/36-23/373
H05K 3/28
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、
前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えており、
前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1が、前記第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大き前記比誘電率ε1と前記比誘電率ε2との差(ε1‐ε2)が5以上である、半導体装置。
【請求項2】
樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、
前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂を備えており、
前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1と、前記樹脂シートの比誘電率εrとの差(ε1-εr)が2以上である、半導体装置。
【請求項3】
前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1が3~30、前記樹脂シートの比誘電率εrが3~9である、請求項1~3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の封止樹脂及び第2の封止樹脂が、エポキシ化合物及びシリコーン化合物から選択される少なくも1つの熱硬化性化合物、無機粒子(a)、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物から形成され、前記無機粒子(a)が、シリカ、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び二酸化チタンからなる群から選択される一種以上である、請求項1又は3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の封止樹脂の厚さが0.1~100mmであり、前記第2の封止樹脂の厚さが0.5~100mmである、請求項1又は3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の金属層の厚みが0.3~3mmである、請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記樹脂シートが、熱硬化性化合物、無機粒子(b)、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物から形成される、請求項1~のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記無機粒子(b)は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化ケイ素からなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記無機粒子(b)が、窒化ホウ素凝集粒子を含有する、請求項8又は9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物、及びシリコーン化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項8~10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記樹脂シートの第1の金属層が設けられた面と反対側の面に、第2の金属層が設けられている、請求項1~11のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び通信機器等では、絶縁性を有する樹脂シート上に金属層からなる配線パターンが形成されたプリント配線板が用いられている。半導体装置は、例えば、上記したプリント配線板の配線パターン上に、半導体素子などが実装され、さらに、通常は、該半導体素子を光、熱、湿気、埃などの物理的衝撃から保護するため、半導体素子を封止する封止材が、プリント配線板上に設けられている。
【0003】
半導体装置は、一般的には、プリント配線板の配線パターンの端部の電界集中などにより絶縁破壊が生じやすく、絶縁性を高めることが必要となる。また、近年半導体装置の高電圧化、小型化、高集積化に伴い、プリント配線板にはより優れた絶縁特性が要求されている。
特許文献1では、絶縁回路基板に関する発明が記載されており、電位差のある二つの隣接配線パターン間に、特定の新たな配線パターンを配設することにより、優れた絶縁特性を示すことが記載されている。
特許文献2では、熱硬化性樹脂中に、2種類の無機充填材を含有させた絶縁シートに関する発明が記載されており、無機充填材の粒径、比誘電率、シート中の存在位置などを制御することにより、優れた絶縁性を有する絶縁シートが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-77224号公報
【文献】特開2012-15557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の技術では、絶縁シートに接する新たな配線パターンを配設したり、あるいは絶縁シート中の無機充填材の種類や粒径の組み合わせなどを制御することにより、絶縁性を高めている。しかしながら、これら従来の技術では、設計が複雑になったり、また無機充填材の組み合わせは有限であるため、絶縁性の調整に大きな制限があった。
以上から、本発明は、従来とは異なる簡便な手段で、半導体装置の絶縁性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備える半導体装置において、封止材を構成する封止樹脂の比誘電率、樹脂シートの比誘電率を調整することにより上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0007】
[1]樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えており、前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1が、前記第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大きい、半導体装置。
[2]樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂を備えており、前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1と、前記樹脂シートの比誘電率εrとの差(ε1-εr)が-2.5よりも大きい、半導体装置。
[3]前記封止材が、前記樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えている、上記[2]に記載の半導体装置。
[4]前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1が3~30、前記樹脂シートの比誘電率εrが3~9である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体装置。
[5]前記第1の封止樹脂及び第2の封止樹脂が、エポキシ化合物及びシリコーン化合物から選択される少なくも1つの熱硬化性化合物、無機粒子(a)、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物から形成され、前記無機粒子(a)が、シリカ、が窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び二酸化チタンからなる群から選択される一種以上である、上記[1]又は[3]に記載の半導体装置。
[6]前記樹脂シートが、熱硬化性化合物、無機粒子(b)、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物から形成される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体装置。
[7]前記無機粒子(b)は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化ケイ素からなる群から選択される1種以上である、上記[6]に記載の半導体装置。
[8]前記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物、及びシリコーン化合物から選択される少なくとも1種を含む、上記[6]又は[7]に記載の半導体装置。
[9]前記樹脂シートの第1の金属層が設けられた面と反対側の面に、第2の金属層が設けられている、上記[1]~[8]のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁性に優れる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の半導体装置の別の例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の半導体装置の別の例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の半導体装置の別の例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の半導体装置の別の例を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の半導体装置の別の例を模式的に示す断面図である。
図7】工程(1)で製造する積層体Aを模式的に示す断面図である。
図8】工程(2)で製造する積層体10Aを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の半導体装置は、樹脂シートと、前記樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備える積層体と、前記積層体に実装される半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、さらに以下の要件(I)又は(II)を満足する。
<要件(I)> 封止材が、樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えており、第1の封止樹脂の比誘電率ε1が、前記第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大きいこと。
<要件(II)> 封止材が、樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂を備えており、前記第1の封止樹脂の比誘電率ε1と、前記樹脂シートの比誘電率εrとの差(ε1-εr)が-2.5よりも大きいこと。
上記要件(I)又は要件(II)を満足することにより、半導体装置の絶縁性が良好になる。
【0011】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の半導体装置の一例を示す。
図1に示す半導体装置10は、樹脂シート12と、前記樹脂シート12の一方の面の一部に設けられた第1の金属層13と、前記樹脂シート12の他方の面に設けられた第2の金属層11とを備える積層体と、第1の金属層13上に接続導電部15を介して実装された半導体素子16と、該半導体素子16を封止する封止材14とを備えている。第1の金属層13は、樹脂シート12の一方の面上に形成された配線パターンである。
【0012】
封止材14は、前記樹脂シート12の一方の面上に設けられた第1の封止樹脂14aと、前記第1の封止樹脂14a上に設けられた第2の封止樹脂14bとを備えている。第1の封止樹脂14a及び第2の封止樹脂14bは、それぞれ一定の体積割合を有する層であり、これら2つの層により封止材14を形成している。第1の封止樹脂14aは、樹脂シート12の一方の面上12aのうち、前記第1の金属層13が存在しない部分と、第1の金属層13の側面13aと、第1の金属層13の上面13bに沿って、略一定の厚さで存在している。第2の封止樹脂14bは、第1の封止樹脂14aの上に設けられており、第2の封止樹脂14bの第1の封止樹脂14aに接する面の形状は、第1の封止樹脂の形状に対応する形状であり、第2の封止樹脂14bの第1の封止樹脂14aに接する面とは逆側の面の形状は平坦である。
【0013】
本発明の一実施形態において、半導体装置10における、第1の封止樹脂14aの比誘電率ε1は、前記第2の封止樹脂14bの比誘電率ε2よりも大きくなるように調整されており、要件(I)を満足している。一般に、樹脂シートと、金属層と、封止材との3つが接する部分に電界集中による絶縁破壊が生じやすいが、本発明の半導体装置10は、このように、要件(I)を満足するように比誘電率の調整を行っていることにより、絶縁破壊が生じ難く絶縁性に優れる。
また、本発明の別の実施形態において半導体装置10における第1の封止樹脂14aの比誘電率ε1と、樹脂シート12の比誘電率εrとの差(ε1-εr)が-2.5よりも大きくなるように調整されており、要件(II)を満足している。本発明の半導体装置10は、このように、要件(II)を満足するように比誘電率の調整を行っており、絶縁破壊が生じ難く絶縁性に優れる。
本発明では、要件(I)及び(II)のいずれか一方を充足するとよいが、絶縁性がより優れたものとなる観点からは、要件(I)及び(II)の両方を充足することが好ましい。
【0014】
図2~5は、本発明の半導体装置の別の例を示す。封止樹脂14a、14bは、図1の構成に限定されず種々の形状を有することができる。例えば、半導体装置10における封止材を構成する第1の封止樹脂14a及び第2の封止樹脂14bは、封止樹脂を形成するための樹脂組成物の塗布量に応じて、種々の形状を有する。具体的には、図2に示す半導体装置では、半導体装置における封止材が、第1及び第2の封止樹脂で構成され、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12aのみに略一定の厚さで積層され、第1の封止樹脂14aに第2の封止樹脂14bが積層されている。図3で示す半導体装置では、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12a及び第1の金属層の側面13aに略一定の厚さで積層され、第1の封止樹脂14aに第2の封止樹脂14bが積層されている。図4で示す半導体装置では、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12aと、第1の金属層の側面13a及び上面13bを覆い、かつ上面(すなわち、第1の封止樹脂の樹脂シートと接する面とは逆側の面)が平坦となるように積層され、この第1の封止樹脂14aに第2の封止樹脂14bが積層されている。
また、要件(II)を満足する半導体装置10の場合は、図5で示すように、封止材14が第1の封止樹脂14aのみで構成されている場合でも、本発明の効果を奏することができる。
半導体素子16は、封止材14によって封止されるが、図1、4、5に示すように、第1の封止樹脂14aによって封止されてもよいし、図2、3に示すように、第2の封止樹脂14bによって封止されていてもよい。また、図示しないが、第1及び第2の封止樹脂14a、14bの両方によって封止されてもよい。すなわち、封止材14は、第1及び第2の封止樹脂14a、14bによって構成され、その全体で半導体素子16を封止するが、封止材を構成する個々の第1の封止樹脂、第2の封止樹脂のそれぞれは、必ずしも半導体素子を封止している必要はなく、封止材が半導体素子を封止していればよい。
また、図1~5の例では、第2の金属層11が設けられたが第2の金属層11は省略されてもよい。
半導体装置は、これら図1~5のいずれの形態でも、本発明の効果を奏することができる。
【0015】
以下、本発明の半導体装置を構成する各部材について詳細に説明する。
【0016】
<封止材>
本発明の半導体装置は、半導体素子を封止する封止材を備えている。本発明において、後述する第1の封止樹脂、第2の封止樹脂は、封止材を構成する樹脂である。封止材を構成する個々の第1の封止樹脂、第2の封止樹脂のそれぞれは、必ずしも半導体素子を封止している必要はなく、封止材が半導体素子を封止していればよい。
【0017】
(要件(I)を満足する半導体装置の封止材)
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、要件(I)を満足する。上記要件(I)を満足する半導体装置の封止材は、樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂と、前記第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えている。
樹脂シート12の一方の面上の一部には、後述する第1の金属層13が設けられているため、第1の封止樹脂14aは、第1の金属層が設けられていない樹脂シートの面上の少なくとも一部、好ましくは第1の金属層が設けられていない樹脂シートの面上のすべてに接触するように設けられる。また、第1の封止樹脂14aは、さらに、上述した図3、4に示すように第1の金属層の側面13a及び第1の金属層の上面13bの少なくともいずれかにも存在してもよい。第2の封止樹脂14bは、第1の封止樹脂14aの上に設けられ、樹脂シートとは接触しない。
【0018】
本発明の一実施形態において、第1の封止樹脂の比誘電率ε1は、第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大きい。一般に、樹脂シートと、金属層と、封止材の接する部分において絶縁破壊が生じやすいが、このように比誘電率を調整している本発明の半導体装置は絶縁破壊が生じ難く、絶縁性に優れる。絶縁性を高める観点から、比誘電率ε1と比誘電率ε2との差(ε1-ε2)は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは20以上であり、そして通常は50以下である。
第1の封止樹脂の比誘電率ε1は、絶縁性を高める観点から、好ましくは3~30であり、より好ましくは5~30であり、更に好ましくは9~30である。
第2の封止樹脂の比誘電率ε2は、絶縁性を高める観点から、好ましくは3~9であり、より好ましくは3~6であり、更に好ましくは3~4である。
なお、本発明における比誘電率は、23℃での周波数1MHzにおける比誘電率である。
【0019】
第1の封止樹脂の厚さは、0.03~100mmであることが好ましく、0.05~10mmであることがより好ましく、0.1~5mmであることが更に好ましい。なお、第1の封止樹脂の厚さは、第1の封止樹脂が樹脂シート12の面上12aにのみ存在する場合は、該12aを基準とした厚さである。第1の封止樹脂が樹脂シート12の面上12a及び金属層13の側面13aに存在する場合は、該12a及び側面13aを基準とした厚みである。第1の封止樹脂が樹脂シート12の面上12a、金属層13の側面13a、及び金属層13の上面13bに存在する場合は、該12a、側面13a、上面13bを基準とした厚みである。厚みは、基準とする面に対してそれぞれ等間隔で10点測定して、平均値として算出する。
第2の封止樹脂の厚さは、0.5~100mmであることが好ましく、1~50mmであることが更に好ましい。なお、第2の封止樹脂の厚さは、第1の封止樹脂の表面から最も厚い部分の厚さである。
【0020】
封止材は、異なる2種の封止樹脂である第1の封止樹脂及び第2の封止樹脂が、樹脂シートに積層されて形成されたものが好ましい。第2の封止樹脂の上にさらに第3の封止樹脂を積層してもよい。この場合、第3の封止樹脂の比誘電率は特に限定されない。
このような第3の封止樹脂を用いる一実施態様を図6に示す。樹脂シート12の面上に設けられる封止材14が三層構造を形成している。該封止材は、樹脂シート12に近い側から順に、第1の封止樹脂14a、第2の封止樹脂14b、第3の封止樹脂14cがこの順に積層されて形成されている。
このように封止材が三層構造を形成している場合も、本発明の効果を奏する。なお、同様に、第3の封止樹脂の上にさらに別の封止樹脂を積層し、封止材を四層構造以上としてもよい。
【0021】
第1及び第2の封止樹脂の比誘電率は、後述する封止樹脂の種類を調整することにより調整でき、より詳細には、封止樹脂を形成するための樹脂組成物の組成により調整することができる。
【0022】
(要件(II)を満足する半導体装置の封止材)
本発明の別の実施形態に係る半導体装置は、要件(II)を満足する。上記要件(II)を満足する半導体装置の封止材は、樹脂シートの一方の面上に設けられた第1の封止樹脂を備える。第1の封止樹脂の比誘電率ε1と、樹脂シートの比誘電率εrとの差(ε1-εr)は-2.5より大きい。これにより、本発明の半導体装置は、絶縁性が良好となる。ε1-εrは、-1以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましい。
【0023】
要件(II)を満足する半導体装置の封止材は、図5に示すように第1の封止樹脂のみからなるものでもよいが、図1図4に示すように第1の封止樹脂と、第1の封止樹脂上に設けられた第2の封止樹脂とを備えることが好ましい。この場合、絶縁性をより高める観点から、要件(I)で示すように、第1の封止樹脂の比誘電率ε1は、第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大きいことが好ましい。
要件(II)を満足する半導体装置の封止材における、第1の封止樹脂、第2の封止樹脂は、上記要件(I)を満足する半導体装置の封止材で説明した第1の封止樹脂、第2の封止樹脂と同じものを使用するとよい。したがって、比誘電率ε1、比誘電率ε2、比誘電率ε1と比誘電率ε2との差、第1及び第2の封止樹脂のそれぞれの体積割合などは、要件(I)を満足する半導体装置の封止材で説明した内容を、要件(II)を満足する半導体装置の封止材にも適用できる。
【0024】
(封止樹脂の組成)
本発明の第1及び第2の封止樹脂の種類は、比誘電率が上記のとおりであれば特に限定されない。第1及び第2の封止樹脂は、好ましくは、いずれも、エポキシ化合物及びシリコーン化合物から選択される少なくも1つの熱硬化性化合物、無機粒子(a)及び有機粒子の少なくとも一方から選択されるフィラー、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物から形成される。なお、以下、第1の封止樹脂を形成するための樹脂組成物を樹脂組成物(1)と、第2の封止樹脂を形成するための樹脂組成物を樹脂組成物(2)と記載することもある。
【0025】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
上記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物であることが好ましい。
【0026】
シリコーン化合物は、縮合硬化型シリコーン化合物、付加反応硬化型シリコーン化合物のいずれでもよいが、付加反応硬化型シリコーン化合物が好ましい。付加反応硬化型シリコーン化合物としては、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを含むものが好ましい。
熱硬化性化合物の含有量は、樹脂組成物全量基準で、好ましくは2~95質量%であり、より好ましくは3~50質量%であり、更に好ましくは5~30質量%である。
【0027】
フィラーは、無機粒子(a)及び有機粒子の少なくとも一方から選択され、比誘電率を所望の範囲に調整しやすい観点から、無機粒子(a)であることが好ましい。
有機粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。
無機粒子(a)としては、例えば、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、マイカ、ベーマイト、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などが挙げられ、シリカ、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましい。
第1の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(1)に含まれる無機粒子(a)としては、比誘電率ε1を所望の範囲に調整しやすい観点から、シリカ、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、酸化アルミニウム及び二酸化チタンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
第2の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(2)に含まれる無機粒子(a)としては、比誘電率ε2を所望の範囲に調整しやすい観点から、シリカ、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、シリカを含むことが好ましい。
フィラーの含有量は、樹脂組成物全量基準で、好ましくは1~98質量%、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは50~95質量%である。
【0028】
熱硬化剤としては、特に限定されず、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール熱硬化剤)、アミン化合物(アミン熱硬化剤)、チオール化合物(チオール熱硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。
【0029】
シアネートエステル化合物としては、特に限定されず、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0030】
シアネートエステル化合物の市販品としては、特に限定されず、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
【0031】
フェノール化合物としては、特に限定されず、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0032】
フェノール化合物の市販品としては、特に限定されず、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEHC-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。
【0033】
アミン化合物としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0034】
チオール化合物としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0035】
イミダゾール化合物としては、特に限定されず、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン及び2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0036】
ホスフィン化合物としては、特に限定されず、アルキルホスフィン化合物、アリールホスフィン化合物などが挙げられる。
アルキルホスフィン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンなどが挙げられる。
アリールホスフィン化合物としては、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、ビスジフェニルホスフェノエタン、ビスジフェニルホスフィノブタン等が挙げられる。
【0037】
酸無水物としては、特に限定されず、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0038】
活性エステル化合物としては、特に限定されず、市販品としては、DIC社製「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」及び「EXB9416-70BK」等が挙げられる。
【0039】
熱硬化剤の配合量は適宜選択されるが、エポキシ化合物100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。
【0040】
硬化触媒としては、例えば、上記したアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを反応させるヒドロシリル化反応用触媒が挙げられる。具体的には、錫系触媒、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。中でも、白金系触媒が好ましい。
硬化触媒を用いる場合は、熱硬化性化合物100質量部に対して、硬化触媒の含有量は、好ましくは0.001質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上であり、更に好ましくは0.05質量部以上であり、そして好ましくは0.5質量部以下である。
【0041】
上記した第1及び第2の封止樹脂を形成するための樹脂組成物としては、上記した各成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、分散剤、離型剤、着色剤などの添加剤を含んでもよい。
【0042】
<樹脂シート>
本発明の半導体装置は、樹脂シートを備えている。樹脂シートの比誘電率εrは、特に限定されないが、半導体装置の絶縁性を向上させる観点から、好ましくは3~9である。
また、樹脂シートの比誘電率εrと、上記した第1の封止樹脂の比誘電率ε1との差(ε1-εr)は、半導体装置の絶縁性を向上させる観点から、-2.5より大きいことが好ましく、-1以上であることがより好ましく、0以上であることが更に好ましく、2以上であることが更に好ましい。
なお、樹脂シートの比誘電率は、後述する樹脂シートを形成させための樹脂組成物の組成により調整することができる。以下、樹脂シートを形成させための樹脂組成物を樹脂組成物(r)と記載することがある。
本発明の樹脂シートは、熱硬化性化合物、無機粒子(b)、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する樹脂組成物(r)から形成されることが好ましい。
【0043】
熱硬化性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物、及びシリコーン化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、エポキシ化合物が好ましい。樹脂組成物(r)に含有されるエポキシ化合物としては、前述した封止樹脂を形成させるための樹脂組成物に含有される成分として説明したエポキシ化合物と同様のものが使用できる。
【0044】
オキセタン化合物としては、例えば、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-メチル-3-グリシジルオキセタン、3-エチル-3-グリシジルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、ジ{1-エチル(3-オキセタニル)}メチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。
なお、酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0046】
シリコーン化合物は、縮合硬化型シリコーン化合物、付加反応硬化型シリコーン化合物のいずれでもよいが、付加反応硬化型シリコーン化合物が好ましい。付加反応硬化型シリコーン化合物としては、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを含むものが好ましい。
【0047】
樹脂組成物(r)中の熱硬化性化合物の含有量は、樹脂組成物(r)全量基準で、3~60質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0048】
樹脂組成物(r)は、熱硬化性化合物、並びに熱硬化剤及び硬化触媒の少なくとも一方を含有する。
熱硬化性化合物として、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物などを用いる場合は、熱硬化剤を用い、熱硬化性化合物として、シリコーン化合物を用いる場合は、硬化触媒を用いればよい。
【0049】
樹脂組成物(r)に含有される熱硬化剤としては、前述した封止樹脂を形成させるための樹脂組成物に含有される成分として説明した熱硬化剤と同様のものが使用でき、その配合量も同様である。
【0050】
硬化触媒としては、例えば、上記したアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを反応させるヒドロシリル化反応用触媒が挙げられる。具体的には、錫系触媒、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。中でも、白金系触媒が好ましい。
硬化触媒を用いる場合は、熱硬化性化合物100質量部に対して、硬化触媒の含有量は、好ましくは0.001質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上であり、更に好ましくは0.05質量部以上であり、そして好ましくは0.5質量部以下である。
【0051】
樹脂組成物(r)に含有される無機粒子(b)は、樹脂シートの比誘電率εrを所望の範囲にする観点及び熱伝導性を向上させる観点から、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び炭化ケイ素からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。中でも、無機粒子(b)は、窒化ホウ素及び酸化アルミニウムの少なくとも1種であることがより好ましく、窒化ホウ素であること更に好ましい。
窒化ホウ素としては、例えば、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、ホウ素化合物とアンモニアとの還元窒化法により作製された窒化ホウ素、ホウ素化合物とメラミン等の含窒素化合物とから作製された窒化ホウ素、及び、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムとから作製された窒化ホウ素等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
また、熱伝導性及び絶縁性を高める観点から、窒化ホウ素としては、窒化ホウ素凝集粒子であることが好ましい。窒化ホウ素凝集粒子とは、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させた二次粒子である。
【0052】
上記窒化ホウ素凝集粒子の製造方法としては特に限定されず、噴霧乾燥方法及び流動層造粒方法等が挙げられる。窒化ホウ素凝集粒子の製造方法は、噴霧乾燥(スプレードライとも呼ばれる)方法であることが好ましい。噴霧乾燥方法は、スプレー方式によって、二流体ノズル方式、ディスク方式(ロータリ方式とも呼ばれる)、及び超音波ノズル方式等に分類でき、これらのどの方式でも適用できる。全細孔容積をより一層容易に制御できる観点から、超音波ノズル方式が好ましい。
【0053】
窒化ホウ素凝集粒子は、窒化ホウ素の一次粒子を材料として製造されることが好ましい。窒化ホウ素凝集粒子の材料となる窒化ホウ素としては特に限定されず、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、ホウ素化合物とアンモニアとの還元窒化法により作製された窒化ホウ素、ホウ素化合物とメラミン等の含窒素化合物とから作製された窒化ホウ素、及び、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムとから作製された窒化ホウ素等が挙げられる。窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、窒化ホウ素凝集粒子の材料となる窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
【0054】
また、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法としては、必ずしも造粒工程は必要ではない。窒化ホウ素の結晶の成長に伴い、窒化ホウ素の一次粒子が自然に集結することで形成された窒化ホウ素凝集粒子であってもよい。また、窒化ホウ素凝集粒子の粒子径をそろえるために、粉砕した窒化ホウ素凝集粒子であってもよい。
【0055】
樹脂組成物(r)に含まれる無機粒子(b)は、樹脂組成物(r)全量基準で、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは70~95質量%である。
【0056】
樹脂組成物(r)には、上記した成分以外に、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の一般に用いられる他の成分を含んでもよい。
【0057】
樹脂シートの厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、また600μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の半導体装置は、上記した樹脂シート(以下、第1の樹脂シートともいう)と、該第1の樹脂シート上に設けられる後述する第1の金属層とを備えるものであるが、第1の樹脂シートの第1の金属層が設けられている面とは反対の面に第2の樹脂シートを設けていてもよい。第2の樹脂シートの組成は、上記した第1の樹脂シートの組成と同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
<第1の金属層>
本発明の半導体素子は、上記した樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層を備えている。第1の金属層は、樹脂シート上に形成された配線パターンである。
第1の金属層は、熱伝導体としての機能を発揮するため、その熱伝導率は、好ましくは10W/(m・K)以上であることが好ましい。第1の金属層を構成する材料としては、アルミニウム、銅、金、銀、及びグラファイトシート等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、アルミニウム、銅、又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
【0060】
本発明の第1の金属層の厚みは、0.03~3mmであることが好ましく、0.3~1.5mmであることがより好ましい。これら下限値以上であると熱抵抗を低下させることができ、これら上限値以下であると第1の金属層と樹脂シートの密着性を良好にすることができる。
【0061】
<第2の金属層>
本発明の半導体装置は、上記した樹脂シート(第1の樹脂シート)の前記第1の金属層が設けられた面と反対側の面に、第2の金属層が設けられていることが好ましい。第2の金属層は、金属ベース板などの基材として用いることが好ましい。
第2の金属層を設ける場合、樹脂シート(第1の樹脂シート)の第1の金属層が設けられている面とは反対の面に第2の樹脂シートを設け、第2の樹脂シートを第1の樹脂シートと第2の金属層との間に配置して、第2の金属層、第2の樹脂シート、第1の樹脂シート、第1の金属層がこの順に積層された積層体としてもよい。
このように、第2の金属層を設けることで、半導体素子などの発熱体から発生する熱を、第1の金属層から樹脂シートを介して第2の金属層に伝えて放熱することができる。
【0062】
<半導体素子>
本発明の半導体装置は、半導体素子を備えている。半導体素子は、例えば、第1の金属層の上面に、はんだなどにより形成された接続導電部を介して実装される。半導体素子の種類は、特に限定されず、例えば、IC、トランジスタなどが挙げられる。
【0063】
<半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置の製造方法は、特に限定されないが、以下の工程(1)~(4)を含むことが好ましい。
工程(1)樹脂シートと、樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層とを備えた積層体Aを得る工程
工程(2)上記積層体Aの樹脂シートの一方の面上に第1の封止樹脂を積層して、積層体10Aを得る工程
工程(3)半導体素子を実装する工程
工程(4)上記積層体10Aの第1の封止樹脂の上に第2の封止樹脂を積層し、半導体装置を得る工程
【0064】
(工程(1))
工程(1)は、図7に示すように、樹脂シート12と、樹脂シートの一方の面の一部に設けられた第1の金属層13と、樹脂シート12の他方の面に設けられた第2の金属層11とを備えた積層体Aを得る工程である。
第2の金属層上に樹脂組成物(r)を塗布して、必要に応じて半硬化させた後、第1の金属層を形成させるための金属板を樹脂組成物(r)に接触するように貼り合わせ、ある程度高めの圧力(例えば、180~210℃で8~25MPa程度の圧力)を加えるプレス処理を行って、積層体を製造する。あるいは、樹脂組成物(r)からなるシートの両面を、第1の金属層を形成させるための金属板と第2の金属層とでそれぞれ挟み、上記プレス処理を行って、積層体を製造することもできる。次いで、該積層体における金属板をエッチングなど公知の方法を用いてパターニングさせて、第2の金属層と、樹脂シートと、第1の金属層とを備えた積層体Aを得ることができる。
【0065】
(工程(2))
工程(2)は、図8に示す通り、上記積層体Aの樹脂シートの一方の面上に第1の封止樹脂14aを積層して、積層体10Aを得る工程である。第1の封止樹脂14aを形成させるための樹脂組成物(1)を、樹脂シートの一方の面、すなわち樹脂シートの第1の金属層を有する面に塗布した後、加熱し硬化させて、第1の封止樹脂14aを形成させる。この場合、加熱温度を40~100℃、加熱時間を60~600分とすればよい。
このとき、第1の封止樹脂14aを形成させるための樹脂組成物の塗布量に応じて、第1の封止樹脂14aは種々の形状となる。例えば、樹脂組成物の塗布量が少ない場合は、図8(A)に示すとおり、第1の封止樹脂14aが、樹脂シートの一方の面上12aのみに略一定の厚さで積層された積層体10Aが得られる。より樹脂組成物の塗布量を多くすると、図8(B)に示すとおり、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12a及び第1の金属層13の側面13aに略一定の厚さで積層され、かつ第1の金属層の上面には積層されない積層体10Aが得られる。より樹脂組成物の塗布量を多くすると、図8(C)に示すとおり、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12aと第1の金属層13の側面13aと第1の金属層の上面13bに略一定の厚さで積層された積層体10Aが得られる。さらに塗布量を多くすると、図8(D)に示すとおり、第1の封止樹脂14aが、樹脂シート12の一方の面上12aと、第1の金属層の側面13a及び上面13bを覆い、かつ上面(すなわち、第1の封止樹脂14aの樹脂シート12と接する面とは逆側の面)が平坦となるように積層された積層体10Aが得られる。
図8の(A)~(D)のいずれを用いても、本発明の効果を発揮する半導体装置を得ることができる。工程(II)において、図8に示す(A)又は(B)で示す積層体10Aを得ることが、半導体素子の実装のし易さの観点から好ましい。
【0066】
(工程(3))
工程(3)は、半導体素子を実装する工程である。積層体10Aの第1の金属層13bの上面に、公知の方法で半導体素子を実装すればよい。例えば、はんだ等の接続導電部を用いて第1の金属層の上面に、半導体素子を実装すればよい。
積層体10Aに対して半導体素子を実装する場合は、第1の封止樹脂14aを形成させるための樹脂組成物(1)の塗布量が多い場合などにより、第1の封止樹脂が第1の金属層の上面13bを覆っている場合は、該第1の金属層の上面13bを覆っている第1の封止樹脂14aを削るなどして除去して、半導体素子を実装すればよい。
【0067】
(工程(4))
工程(4)は、上記積層体10Aの第1の封止樹脂14aの上に第2の封止樹脂14bを積層し、半導体装置を得る工程である。第2の封止樹脂14bを形成させるための樹脂組成物(2)を、第1の封止樹脂14aの上面に塗布した後、加熱し硬化させて、第2の封止樹脂14bを形成させることができる。この場合、加熱温度を40~100℃、加熱時間を60~600分とすればよい。
第2の封止樹脂14bにおける第1の封止樹脂14a側の表面の形状は、第1の封止樹脂14aの表面形状に対応する形状となる。例えば、上記した積層体10Aに第2の封止樹脂14bを積層すると、図1~4に示すように、第2の封止樹脂14bが、第1の封止樹脂14aの表面形状に対応した形状で積層される。
要件(II)を満足する半導体装置の場合では、図5に示すように、必ずしも第2の封止樹脂14bは必要ないため、第2の封止樹脂14bを積層しなくてもよい。
【0068】
なお、工程(1)~(4)において、第2の金属層を用いる態様を示したが、第2の金属層は必ずしも用いなくてもよい。第2の金属層を用いない場合は、工程(1)において、以下のようにして積層体Aを得ればよい。すなわち、第1の金属層を形成させるための金属板を準備し、該金属板表面に対して、樹脂シートを形成させるための樹脂組成物(r)を塗布した後、加熱し硬化させて、樹脂シートと、金属板とを備える積層体を得る。次いで、該積層体における金属板をエッチングなど公知の方法を用いてパターニングさせて、樹脂シートと、第1の金属層とを備えた積層体Aを得ることができる。
また、工程(3)の半導体素子を実装する工程は、工程(2)の前、すなわち、積層体Aに対して行ってもよい。
上記した工程(1)~(4)を含む工程により、本発明の半導体装置を得ることができる。上記した工程(1)~(4)を含む工程により得た本発明の半導体装置は、絶縁破壊が生じ難く、絶縁性に優れる半導体装置である。
【実施例
【0069】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例及び比較例で用いた原料]
<熱硬化性化合物>
・エポキシ化合物、新日鉄住金化学社製「YD―127」
<熱硬化剤>
・三菱ケミカル社製「jER113」
<分散剤>
・BYK社製「BYK-145」
<フィラー>
・窒化ホウ素凝集粒子、水島合金属社製「HP-40」 平均粒子径40μm
・酸化アルミニウム、昭和電工社製「AS-50」 平均粒子径9μm
・シリカ、アドマテックス社製「SO-C4」平均粒子径0.9~1.2μm
・二酸化チタン、石原産業社製「CR-60」平均粒子径0.21μm
・ポリ塩化ビニル粒子、合成品、平均粒子径10μm
【0070】
実施例及び比較例で用いた樹脂シートを形成させるための樹脂組成物(r)の組成を表1に示した。
実施例及び比較例で用いた第1の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(1)、第2の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(2)の組成を表2に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例1)
表1に示すCの組成の樹脂組成物(γ)を離型PETシート(厚み40μm)上に、厚み300μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で10分間乾燥して、離型PETシート上に樹脂組成物(r)からなる樹脂シートを形成させた。その後、離型PETシートを剥がして、樹脂シートの両面を、第1の金属層を形成させるための金属板(銅板、厚さ500μm)と第2の金属層(銅板、厚さ1.0mm)とで挟み、温度150℃、圧力5MPaの条件で真空プレスすることにより積層体を得た。該積層体の第1の金属層を形成させるための金属板を塩化第2鉄によりエッチングすることによりパターニングし、樹脂シートの一方の面に第1の金属層を形成させた。
次いで、表2に示すCの組成を有する第1の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(1)を樹脂シートの一方の面に流し込んだ後、50℃で300分間加熱して、樹脂シートの一方の面上に第1の封止樹脂を形成させた。このとき、第1の封止樹脂の形状は、図8のCに示す形状であり、その厚みは0.1mmであった。その後、表2に示すBの組成を有する第2の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(2)を第1の封止樹脂上に流し込んだ後、50℃で300分間加熱して、第1の封止樹脂上に厚み19mmの第2の封止樹脂を形成させ、封止材の総厚み19.1mmの評価用試料を得た。
上記のようにして得た評価用試料について、後述する絶縁性評価を行い、その結果を表3に示した。
【0074】
(実施例2~10)
実施例1において、樹脂組成物(γ)、樹脂組成物(1)、及び樹脂組成物(2)の種類を表3のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして評価用試料を得た。該評価用試料について、後述する絶縁性評価を行い、その結果を表3に示した。
【0075】
(実施例11)
実施例1で用いた樹脂シートの代わりに、表1のFの組成の樹脂組成物(γ)からなるシートaと、表1のBの組成の樹脂組成物(γ)からなるシートbの積層体(2層構造の樹脂シート)を用いた以外は、実施例1と同様に評価用試料を作成した。このとき、シートaの上面に第1の金属層を形成させるようにした。該評価用試料について、評価した結果、実施例10と同様の評価結果が得られた。
【0076】
(実施例12)
表1に示すCの組成の樹脂組成物(γ)を離型PETシート(厚み40μm)上に、厚み300μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で10分間乾燥して、離型PETシート上に樹脂組成物(r)からなる樹脂シートを形成させた。その後、離型PETシートを剥がして、樹脂シートの両面を、第1の金属層を形成させるための金属板(銅板、厚さ500μm)と第2の金属層(銅板、厚さ1.0mm)とで挟み、温度150℃、圧力5MPaの条件で真空プレスすることにより積層体を得た。該積層体の第1の金属層を形成させるための金属板を塩化第2鉄によりエッチングすることによりパターニングし、樹脂シートの一方の面に第1の金属層を形成させた。
次いで、表2に示すCの組成を有する第1の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(1)を樹脂シートの一方の面に流し込んだ後、50℃で300分間加熱して、樹脂シートの一方の面上に第1の封止樹脂を形成させた。このとき、第1の封止樹脂の形状は、図8のCに示す形状であり、その厚みは0.1mmであった。次いで、表2に示すBの組成を有する第2の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(2)を第1の封止樹脂の上に流し込んだ後、50℃で300分間加熱して、第1の封止樹脂上に厚み1mmの第2の封止樹脂を形成させた。
その後、表2に示すDの組成を有する第3の封止樹脂を形成させるための樹脂組成物(3)を第2の封止樹脂上に流し込んだ後、50℃で300分間加熱して、第2の封止樹脂上に厚み18mmの第3の封止樹脂を形成させ、封止材の総厚み19.1mmの評価用試料を得た。該評価用試料の封止材は、図6に示すように、第1の封止樹脂、第2の封止樹脂、第3の封止樹脂がこの順に積層された三層構造を形成していた。
該評価用試料について、評価した結果、実施例1と同様の評価結果が得られた。その結果を表4に示した。
【0077】
(比較例1~4)
実施例1において、樹脂組成物(γ)、樹脂組成物(1)、及び樹脂組成物(2)の種類を表4のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして評価用試料を得た。該評価用試料について、後述する絶縁性評価を行い、その結果を表5に示した。
【0078】
(比誘電率)
岩崎通信株式会社製LCR(インピーダンス)解析装置 PSM3750にて空気中、室温(23℃)で、周波数100mHzから10MHzまでをログスケールで分割して33点、1サイクル測定し、得られる波形を読み取ることで、周波数1MHzの比誘電率を求めた。
【0079】
(絶縁性評価)
各実施例及び比較例の各評価用試料を、耐電圧試験機(EXTECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、評価用試料間に0.5kV/minの速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。評価用試料が破壊した電圧を絶縁破壊電圧(BDV)とし、以下の基準で絶縁性を判定した。
[絶縁性の判定基準]
◎:絶縁破壊電圧が10kV以上
〇:絶縁破壊電圧が8kV以上、10kV未満
△:絶縁破壊電圧が6kV以上、8kV未満
×:絶縁破壊電圧が6kV未満
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
第1の封止樹脂の比誘電率ε1を、第2の封止樹脂の比誘電率ε2よりも大きくした実施例1~12の評価用試料は、絶縁性が良好であった。これに対して、第1の封止樹脂の比誘電率ε1を、第2の封止樹脂の比誘電率ε2と同等以下とした比較例1~4の評価用試料は、絶縁性が悪かった。これらの結果より、要件(I)を満足する本発明の半導体装置は、絶縁性が良好となることが分かった。
第1の封止樹脂の比誘電率ε1と樹脂シートの比誘電率εrとの差(ε1-εγ)が-2.5よりも大きい実施例1~10の評価用試料は、絶縁性が良好であった。これに対して、ε1-εγが-2.5以下である比較例1~4の評価用試料は、絶縁性が悪かった。これらの結果より、要件(II)を満足する本発明の半導体装置は、絶縁性が良好となることが分かった。
【符号の説明】
【0084】
10 半導体装置
11 第2の金属層
12 樹脂シート
12a 樹脂シートの一方の面
13 第1の金属層
13a 第1の金属層の側面
13b 第1の金属層の上面
14 封止材
14a 第1の封止樹脂
14b 第2の封止樹脂
14c 第3の封止樹脂
15 接続導電部
16 半導体素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8