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  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図1
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図2
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図3
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図4
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図5A
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図5B
  • 特許-蓄電池用水系電解質および蓄電池 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】蓄電池用水系電解質および蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20230807BHJP
【FI】
H01M10/36 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019104780
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020198259
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒場 慎一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 圭
(72)【発明者】
【氏名】保坂 知宙
(72)【発明者】
【氏名】地口 健人
(72)【発明者】
【氏名】井田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梅田 有希
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-259473(JP,A)
【文献】特開2017-174809(JP,A)
【文献】特開2015-079685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒と、
カチオンおよびフッ素非含有無機アニオンからなる金属塩と、
を含み、
前記金属塩が下記一般式(1)で表される、
蓄電池用水系電解質。
Ca x/2 1-x An 一般式(1)
〔一般式(1)中、Anは、前記フッ素非含有無機アニオンを表し、xは、数値を表す。〕
【請求項2】
前記フッ素非含有無機アニオンは、硝酸、硫酸、亜硝酸、リン酸、および塩化物からなる群から選択される少なくとも一種である、
請求項1に記載の蓄電池用水系電解質。
【請求項3】
前記フッ素非含有無機アニオンは、硝酸である、請求項1または請求項2に記載の蓄電池用水系電解質。
【請求項4】
前記カチオンは、
Li、Na、およびKからなる群から選択される少なくとも1種と、Caと、からなる、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の蓄電池用水系電解質。
【請求項5】
前記一般式(1)中、xは、下記式(2)で表される、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の蓄電池用水系電解質。
0.5≦x<1 式(2)
【請求項6】
前記蓄電池用水系電解質における、前記フッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が、3.6mol/kg以上飽和濃度以下の範囲である、
請求項1~請求項の何れか1項に記載の蓄電池用水系電解質。
【請求項7】
正極と、
負極と、
請求項1~請求項の何れか1項に記載の蓄電池用水系電解質と、
を備えた蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池用水系電解質および蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池に用いる電解質として、有機溶媒を用いた電解質が知られている。しかし、有機溶媒のイオン伝導度は水溶液と比べて極めて低く、急速な充電および放電特性が十分ではない。このため、水溶液を電解質として用いた蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-020749号公報
【文献】特開2017-126500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水系電解質を用いた場合、広い電位窓の蓄電池を提供することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広い電位窓を有する蓄電池用水系電解質および蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の蓄電池用水系電解質は、水系溶媒と、カチオンおよびフッ素非含有無機アニオンからなる金属塩と、を含み、前記金属塩が下記一般式(1)で表される
Ca x/2 1-x An 一般式(1)
〔一般式(1)中、Anは、前記フッ素非含有無機アニオンを表し、xは、数値を表す。〕
【0007】
上記フッ素非含有無機アニオンは、硝酸、硫酸、亜硝酸、リン酸、および塩化物からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0008】
上記フッ素非含有無機アニオンは、硝酸である。
【0009】
上記カチオンは、Li、Na、およびKからなる群から選択される少なくとも1種と、Caと、からなる。
【0013】
上記一般式(1)中、xは、下記式(2)で表される。
【0014】
0.5≦x<1 式(2)
【0015】
上記蓄電池用水系電解質における、上記フッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が、3.6mol/kg以上飽和濃度以下の範囲である。
【0016】
実施形態の蓄電池は、正極と、負極と、上記蓄電池用水系電解質と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施の形態に係る、蓄電池用水系電解質に含まれる金属塩の組成と、蓄電池用水系電解質中の溶解度と、の関係を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る、蓄電池用水系電解質のイオン伝導度を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る、定電流充放電試験結果を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る、蓄電池用水系電解質のCV測定結果を示す図である。
図5A図5Aは、実施の形態に係る、蓄電池用水系電解質のLSV測定結果を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aの拡大図である。
図6図6は、実施の形態に係る、電位窓測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、水系溶媒と、金属塩と、を含む。金属塩は、カチオンおよびフッ素非含有無機アニオンからなる。
【0020】
本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、水系の電解質であり、金属塩を構成するアニオンが、フッ素非含有無機アニオンである。
【0021】
このため、本実施の形態の蓄電池用水系電解質を用いた蓄電池の電位窓を広くすることができる。
【0022】
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながら、以下の推測によって本発明は限定されない。
【0023】
蓄電池用水系電解質に含まれるアニオンとして、フッ素非含有無機アニオンを用いることで、蓄電池用水系電解質中の金属塩の濃度を高濃度とすることができると考えられる。金属塩の濃度を高濃度とすることで、蓄電池用水系電解質中で多数のイオンが安定して存在し、安定した高濃度の電解質が実現される。このため、蓄電池用水系電解質は、容易に大電力を移送可能となり、高電圧および高エネルギー密度を実現することができる。従って、本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、水系電解質にも拘らず、広い電位窓を実現することができると推測される。
【0024】
以下、各成分の詳細を説明する。
【0025】
まず、水系溶媒について説明する。
【0026】
蓄電池用水系電解質に含まれる水系溶媒は、水を主溶媒とする溶媒である。主溶媒とする、とは、体積比で90%以上水を含むことを示す。なお、水系溶媒は、水を主溶媒とする溶媒であればよく、非水溶媒を含む混合溶媒であってもよい。混合溶媒に含まれる非水溶媒は、水に可溶な溶媒であればよい。非水溶媒は、例えば、メタノール等のアルコール類、並びに、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、又は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類等の非プロトン性極性溶媒などである。
【0027】
次に、金属塩について説明する。
【0028】
蓄電池用水系電解質に含まれる金属塩は、蓄電池用水系電解質の溶質であり、カチオンおよびフッ素非含有無機アニオンからなる。
【0029】
フッ素非含有無機アニオンは、フッ素を非含有の無機アニオンであればよく、その種類は限定されない。
【0030】
例えば、フッ素非含有無機アニオンは、硝酸、硫酸、亜硝酸、リン酸、および塩化物からなる群から選択される少なくとも一種である。これらの内、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンは、硝酸であることが特に好ましい。
【0031】
なお、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンは、上記群から単独または2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0032】
金属塩を構成するカチオンは、フッ素非含有無機アニオンと金属塩を構成するカチオンであればよく、その種類は限定されない。
【0033】
例えば、金属塩を構成するカチオンは、Li、Na、およびKからなる群から選択される少なくとも1種と、Caと、からなる事が好ましい。これらの内、金属塩を構成するカチオンは、KとCaからなることが好ましい。
【0034】
具体的には、金属塩は、下記一般式(1)で表される金属塩であることが好ましい。
【0035】
Cax/21-xAn 一般式(1)
【0036】
一般式(1)中、Anは、フッ素非含有無機アニオンを表し、xは、数値を表す。
【0037】
上記一般式(1)中、xは、下記式(2)で表されることが好ましく、下記式(3)で表されることが好ましく、下記式(4)で表されることが特に好ましい。
【0038】
0.5≦x<1 式(2)
0.7≦x<1 式(3)
0.7≦x≦0.9 式(4)
【0039】
xの値が上記式(2)~式(4)を満たすことで、蓄電池用水系電解質における金属塩の濃度を高濃度とすることができる。
【0040】
なお、蓄電池用水系電解質における金属塩の濃度が高濃度である、とは、有機溶媒を用いた場合に比べて広い電位窓を実現するための、最低濃度以上であることを示す。
【0041】
具体的には、例えば、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が3.6mol/kg以上飽和濃度以下の範囲であると、広い電位窓の蓄電池用水系電解質を実現することができると考えられる。
【0042】
なお、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度は、3.6mol/kg以上飽和濃度以下の範囲であることが好ましく、7.5mol/kg以上飽和濃度以下の範囲であることが更に好ましく、20mol/kg以上飽和濃度以下の範囲が特に好ましい。
【0043】
次に、他の成分について説明する。本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。
【0044】
他の成分は、例えば、公知の過充電防止剤、脱酸剤、高温保存後の容量維持特性およびサイクル特性を改善するための特性改善助剤等である。蓄電池用水系電解質中の、これらの他の成分の含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
【0045】
次に、蓄電池について説明する。
【0046】
本実施の形態の蓄電池は、正極と、負極と、上記蓄電池用水系電解質と、を備える。蓄電池は、充電および放電の可能な蓄電池であればよい。蓄電池は、例えば、二次電池である。
【0047】
正極および負極には、蓄電池として用いられる公知の材料を用いればよい。
【0048】
例えば、負極には、公知の正極用の材料を用いればよい。また、例えば、正極には、公知の正極用の材料を用いればよい。また、蓄電池にセパレータを用いる場合についても、公知のセパレータを用いればよい。
【0049】
蓄電池の形状は、正極、負極、および蓄電池用水系電解質を収納することができる形状であればよく、限定されない。例えば、蓄電池は、円筒型、コイン型、平板型、ラミネート型などである。
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0051】
図1は、上記一般式(1)で表される金属塩の組成と、蓄電池用水系電解質中の金属塩の溶解度との関係を示す図である。縦軸は、蓄電池用水系電解質の含水量(水系溶媒の質量モル濃度(mol/kg))を示す。横軸は、上記一般式(1)におけるxの値を示す。
【0052】
図1に示すように、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの飽和濃度(質量モル濃度)は、金属塩の組成がCa0.250.5NO(上記一般式(1)中のx=0.5)である場合、7.52mol/kgであった。また、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの飽和濃度(質量モル濃度)は、金属塩の組成がCa0.40.2NO(上記一般式(1)中のx=0.8)である場合、20.65mol/kgであった。また、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの飽和濃度(質量モル濃度)は、金属塩の組成がCa0.43220.1356NO(上記一般式(1)中のx=0.8644)である場合、20.3mol/kgであった。
【0053】
このため、広い電位窓の蓄電池用水系電解質の実現のために、金属塩の質量モル濃度を高濃度(例えば、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度を3.6mol/kg以上)に調整するためには、上記一般式におけるxの値が、上記式(2)を満たすことが好ましく、上記(3)を満たすことが更に好ましく、上記式(4)を満たすことが特に好ましい事が、確認できた。
【0054】
図2は、本実施の形態の蓄電池用水系電解質のイオン伝導度(ms/m)を示す図である。図2には、金属塩の組成がCa0.40.2NO(上記一般式(1)中のx=0.8)であり、蓄電池用水系電解質における、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が20.65mol/kgである場合を、一例として示した。
【0055】
ここで、イオン伝導度は、一般的に、蓄電池用水系電解質に含まれる金属塩の濃度が高いほど低くなることが知られている。
【0056】
一方、本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、図2に示すように、金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が20.65mol/kgといった高濃度であるにもかかわらず、室温(例えば、25℃)以上の環境であれば、蓄電池として適用可能な充分なイオン伝導度を示すことが確認できた。すなわち、本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、蓄電池として実用可能なイオン伝導度を示すことを確認することができた。
【0057】
図3は、本実施の形態の蓄電池用水系電解質を用いた蓄電池の定電流充放電試験結果を示す図である。図3中、横軸は充放電の容量(mAh/g)を示し、縦軸は電圧(V)を示す。
【0058】
図3の試験条件は、以下とした。詳細には、以下構成のハーフセルを作製した。
・正極:KMn[Fe(CN)
・負極:活性炭
・セパレータ:ガラスフィルター(ADVANTEC)
・蓄電池用水系電解質:金属塩の組成がCa0.40.2NO(上記一般式(1)中のx=0.8)であり、蓄電池用水系電解質における該金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が20.65mol/kgの電解質。
【0059】
上記ハーフセルについて、以下の(i)および(ii)の条件を充放電の1サイクルとし、6サイクルの充放電を行い、各々のサイクルの容量(放電容量,充電容量)(mAh/g)の変化を測定した。測定結果を図3に示した。
【0060】
(i)充電条件:電流0.019656mA、上限電圧(充電終止電圧)1.2V vs. Ag/AgCl
(ii)放電条件:電流0.019656mA、下限電圧(放電終止電圧)-0.4V vs. Ag/AgCl
【0061】
図3に示すように、充放電の可逆的な動作を確認することができた。このため、本実施の形態の蓄電池用水系電解質を用いた蓄電池は、蓄電池として実用可能であることを確認することができた。
【0062】
図4は、本実施の形態の蓄電池用水系電解質のCV(Cyclic Voltammetry)測定結果を示す図である。図4中、横軸は電位を示し、縦軸は電流密度を示す。
【0063】
図4に示すCV測定には、3極式セルを用い、作用極としてKMn[Fe(CN)]:KB:PVdF=70:20:10(wt.%),集電体にTi箔を用いた。また、対極として、活性炭:KB:PTFE=80:10:10(wt.%),集電体にAlメッシュを用いた。参照電極としてAg/AgCl電極を用いた。電位掃引は、下電位を3.0VvsK/K、上電位を4.4V vs K/Kに設定し、掃引速度0.1mV/sで実施した。
【0064】
また、蓄電池用水系電解質として、金属塩の組成:Ca0.40.2NO(上記一般式(1)中のx=0.8)、蓄電池用水系電解質における該金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が20.65mol/kgである、電解質を用いた。
【0065】
図4に示すように、可逆的な酸化還元反応を確認することができた。このため、本実施の形態の蓄電池用水系電解質を用いた蓄電池は、蓄電池として実用可能であることを確認することができた。
【0066】
図5Aは、本実施の形態の蓄電池用水系電解質のLSV(Linear Sweep Voltammetry)測定結果を示す図である。図5Bは、図5Aの拡大図である。
【0067】
図5Aおよび図5B中、横軸は電位を示し、縦軸は電流密度(mA/cm)を示す。
【0068】
図5Aおよび図5BのLSV測定には、三極式セルを用い、作用極として、高電位側をTi箔、低電位側をAl箔とした。また、対極としてPt線を用い、参照極として銀-塩化銀電極(Ag|AgC)を用いた。また、走査速度は、0.5mV/sとした。
【0069】
また、蓄電池用水系電解質として、金属塩の組成、および、蓄電池用水系電解質における金属塩を構成するフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度、がそれぞれ以下である電解質をそれぞれ用い、各々の蓄電池用水系電解質についてLSV測定を行った。
【0070】
・金属塩の組成:Ca0.250.5NO(上記一般式(1)中のx=0.5),質量モル濃度7.52mol/kg
・金属塩の組成:Ca0.40.2NO(上記一般式(1)中のx=0.8),質量モル濃度20.65mol/kg
・金属塩の組成:Ca0.43220.1356NO(上記一般式(1)中のx=0.8644),質量モル濃度20.3mol/kg
【0071】
図6は、本実施の形態の蓄電池用水系電解質を用いた蓄電池の電位窓測定結果を示す図である。詳細には、図6は、図5A図5Bに示すLSV測定結果から、金属塩の組成およびフッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度の少なくとも一方の異なる複数種類の蓄電池用水系電解質の各々の、電位窓の測定結果を示す図である。
【0072】
図6に示すように、本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、上記一般式(1)におけるxの値が何れの値であり、且つ、フッ素非含有無機アニオンの質量モル濃度が3.6mol/kg以上の範囲内の何れの値であっても、3.10以上といった広い電位窓が実現されることを確認できた。
【0073】
ここで、蓄電池用の電解質の溶媒として有機溶媒を用いた場合には、イオン伝導度が水系溶媒を用いた場合に比べて極めて低いことが知られている。このため、蓄電池として実現可能な電位窓を実現するためには、電解質に含まれる塩の濃度を低濃度とする必要があり、広い電気窓を実現することは困難であった。
【0074】
一方、本実施の形態の蓄電池用水系電解質は、溶媒として有機溶媒を用いた場合に比べて広い電位窓を実現することが出来る。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6