(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】発酵乾燥装置、セメント製造システム、および発酵乾燥方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/02 20060101AFI20230807BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20230807BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20230807BHJP
C04B 7/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C02F11/02
B01F35/00
B09B3/60 ZAB
C04B7/00
(21)【出願番号】P 2020061487
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597150795
【氏名又は名称】中部エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 友子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和敏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 智恵美
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-077002(JP,A)
【文献】特開平08-131994(JP,A)
【文献】特開2010-120778(JP,A)
【文献】特開2000-219585(JP,A)
【文献】特表2018-508458(JP,A)
【文献】特開2005-185880(JP,A)
【文献】特開平11-029385(JP,A)
【文献】特開2005-230626(JP,A)
【文献】特開2005-288237(JP,A)
【文献】特開2018-172272(JP,A)
【文献】特開2003-082360(JP,A)
【文献】特開2007-312676(JP,A)
【文献】特開2003-145105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B09B 1/00- 5/00
B01F 35/00-35/95
C04B 7/00- 7/60
C05F 1/00-17/993
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、該容器内に外気を取り入れるための送気手段と、該容器内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置であって、
前記発酵乾燥装置は、前記送気手段により前記容器内に外気を導入し、かつ、前記排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、発酵原料を前記撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させる装置であり、
前記発酵乾燥装置は、前記容器内の前記発酵原料の重量を直接的または間接的に算出する重量センサと、前記重量センサによって算出された前記発酵原料の重量に基づき、単位時間あたりの減少重量である減少重量速度を発酵指標として算出する発酵指標算出手段を有し、
前記回転軸は、前記容器内に縦方向に設けられ、前記容器の下方に位置する機械室に設けられた駆動手段としての油圧シリンダの駆動により水平方向に回転する軸であり、前記油圧シリンダは、前記機械室内において、ピストンが水平方向に伸縮するように配置され、前記ピストンの直線運動が、アームによって回転運動に変換されることで、前記回転軸を回転させ、
前記重量センサは、前記容器および前記駆動手段が設けられた前記機械室を有する装置本体の荷重を受けるように
、前記機械室の下方であって、前記装置本体の外側の底面に配置されており、
前記発酵乾燥装置は、前記重量センサによって算出される前記発酵原料の重量からノイズを除去するノイズ除去手段を有し、前記発酵指標算出手段は、前記ノイズ除去手段によって除去された重量に基づいて、前記減少重量速度を算出し、
前記発酵乾燥装置は、前記回転軸
が回転時と回転停止時を繰り返すように間欠的に回転させて前記発酵原料を発酵および乾燥させる装置であり、
前記ノイズ除去手段は、
前記回転軸の間欠運転において、前記回転軸の回転時には、その回転時に前記重量センサによって算出される重量を前記ノイズとして除去するとともに、直前の回転軸の回転停止時に算出された重量を前記発酵指標算出手段に出力することを特徴とする発酵乾燥装置。
【請求項2】
前記発酵乾燥装置は、前記発酵指標算出手段によって算出された前記減少重量速度に基づいて、前記容器内に導入される外気の量を調整する入気量調整手段を、さらに有することを特徴とする請求項1記載の発酵乾燥装置。
【請求項3】
前記減少重量速度は、前記発酵指標算出手段によって所定時間間隔ごとに算出され、前記入気量調整手段は、任意の算出時の減少重量速度がその前回に算出された減少重量速度に対して、増加した場合には前記容器内に導入される外気の量を増加させ、減少した場合には前記容器内に導入される外気の量を減少させることを特徴とする請求項2記載の発酵乾燥装置。
【請求項4】
前記発酵原料が下水汚泥を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の発酵乾燥装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の発酵乾燥装置と、前記発酵乾燥装置における発酵乾燥処理によって得られる発酵乾燥物を使用するセメント製造装置とを有することを特徴とするセメント製造システム。
【請求項6】
容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、該容器内に外気を取り入れるための送気手段と、該容器内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置における発酵乾燥方法であって、
前記発酵乾燥装置は、前記送気手段により前記容器内に外気を導入し、かつ、前記排気手段により前記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を前記撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させて、発酵乾燥物を排出する装置であり、
前記発酵乾燥装置は、前記容器内の前記発酵原料の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを有し、
前記発酵乾燥方法は、前記重量センサによって算出された前記発酵原料の重量に基づき、単位時間あたりの減少重量である減少重量速度を発酵指標として算出する発酵指標算出工程を有し、
前記発酵乾燥装置の前記回転軸は、前記容器内に縦方向に設けられ、前記容器の下方に位置する機械室に設けられた駆動手段としての油圧シリンダの駆動により水平方向に回転する軸であり、前記油圧シリンダは、前記機械室内において、ピストンが水平方向に伸縮するように配置され、前記ピストンの直線運動が、アームによって回転運動に変換されることで、前記回転軸を回転させ、
前記重量センサは、前記容器および前記駆動手段が設けられた前記機械室を有する装置本体の荷重を受けるように
、前記機械室の下方であって、前記装置本体の外側の底面に配置されており、
前記発酵乾燥方法は、前記重量センサによって算出される前記発酵原料の重量からノイズを除去するノイズ除去工程を有し、前記発酵指標算出工程は、前記ノイズ除去工程によって除去された重量に基づいて、前記減少重量速度を算出し、
前記発酵乾燥装置は、前記回転軸
が回転時と回転停止時を繰り返すように間欠的に回転させて前記発酵原料を発酵および乾燥させる装置であり、
前記ノイズ除去工程は、
前記回転軸の間欠運転において、前記回転軸の回転時には、その回転時に前記重量センサによって算出される重量を前記ノイズとして除去するとともに、直前の回転軸の回転停止時に算出された重量を前記発酵指標算出工程に用いることを特徴とする発酵乾燥方法。
【請求項7】
前記発酵乾燥方法は、前記発酵指標算出工程で算出された前記減少重量速度に基づいて、前記発酵原料の投入量、前記発酵原料の組成、および、前記発酵乾燥物の排出量の少なくとも1つを調整する調整工程を、さらに有することを特徴とする請求項6記載の発酵乾燥方法。
【請求項8】
前記発酵乾燥方法は、前記発酵指標算出工程で算出された前記減少重量速度に基づいて、前記容器内に導入される外気の量を調整する入気量調整工程を、さらに有することを特徴とする請求項6または請求項7記載の発酵乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乾燥装置、セメント製造システム、および発酵乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜排泄物や、食品廃棄物、下水汚泥などの発酵原料の発酵・乾燥を行う装置として、微生物の発酵作用を利用した発酵乾燥装置が知られている。この装置は、円筒縦型のタンク形状であり、密閉容器内に投入された発酵原料に強制通気しつつ乾燥と発酵を行なっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、送気手段と、排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置が開示されている。この装置では、所定時間当たりの発酵熱量や蒸発水分量を発酵指標とし、この発酵指標に基づいて容器内に導入される外気の量を調整している。指標となる発酵熱量や蒸発水分量は、容器に導入する外気の温度と流量、および容器内から排出される内気の温度と流量に基づいて算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、発酵熱量や蒸発水分量を発酵指標として、外気の量を調整することで、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施している。しかし、発酵指標の算出には、送気手段および排気手段に、温度センサや流量センサなどが必要となり、装置全体が煩雑になりやすい。また、各センサなどの設置費用やメンテナンス費用なども必要となるため、コスト増となる傾向がある。
【0006】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、低コストかつ簡易な構造でありながら、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できる発酵乾燥装置、セメント製造システム、および発酵乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発酵乾燥方法は、容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、該容器内に外気を取り入れるための送気手段と、該容器内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置における発酵乾燥方法であって、上記発酵乾燥装置は、上記送気手段により上記容器内に外気を導入し、かつ、上記排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、上記容器内に投入される発酵原料を上記撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させて、発酵乾燥物を排出する装置であり、上記発酵乾燥装置は、上記容器内の上記発酵原料の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを有し、上記発酵乾燥方法は、上記重量センサによって算出された上記発酵原料の重量に基づき、単位時間あたりの減少重量である減少重量速度を発酵指標として算出する発酵指標算出工程を有することを特徴とする。容器(発酵槽)内では発酵の進行に伴い、有機物が分解し及び発酵熱により水分が蒸発し、結果として、内容物の重量が減少する。従って、内容物の重量変化は発酵指標として有効であると考えられる。
【0008】
上記発酵乾燥方法は、上記発酵指標算出工程で算出された上記減少重量速度に基づいて、上記発酵原料の投入量、上記発酵原料の組成、および、上記発酵乾燥物の排出量の少なくとも1つを調整する調整工程を、さらに有することを特徴とする。
【0009】
上記発酵乾燥方法は、上記発酵指標算出工程で算出された上記減少重量速度に基づいて、上記容器内に導入される外気の量(入気量)を調整する入気量調整工程を、さらに有することを特徴とする。
【0010】
本発明の発酵乾燥装置は、容器内に設けられた回転軸およびこれに付設された複数の撹拌翼と、該容器内に外気を取り入れるための送気手段と、該容器内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段とを備えてなる密閉型の発酵乾燥装置であって、上記発酵乾燥装置は、上記送気手段により上記容器内に外気を導入し、かつ、上記排気手段により上記容器内から内気を排気しつつ、発酵原料を上記撹拌翼で撹拌しながら発酵および乾燥させる装置であり、上記発酵乾燥装置は、上記容器内の上記発酵原料の重量を直接的または間接的に算出する重量センサと、上記重量センサによって算出された上記発酵原料の重量に基づき、単位時間あたりの減少重量である減少重量速度を発酵指標として算出する発酵指標算出手段を有することを特徴とする。
【0011】
上記発酵乾燥装置は、上記発酵指標算出手段によって算出された上記減少重量速度に基づいて、上記容器内に導入される外気の量(入気量)を調整する入気量調整手段を、さらに有することを特徴とする。
【0012】
上記減少重量速度は、上記発酵指標算出手段によって所定時間間隔ごとに算出され、上記入気量調整手段は、任意の算出時の減少重量速度がその前回に算出された減少重量速度に対して、増加した場合には上記容器内に導入される外気の量を増加させ、減少した場合には上記容器内に導入される外気の量を減少させることを特徴とする。
【0013】
上記回転軸は、上記容器内に縦方向に設けられ、駆動手段の駆動により水平方向に回転する軸であり、上記重量センサは、上記容器および上記駆動手段を有する装置本体の荷重を受けるように配置されており、上記発酵乾燥装置は、上記重量センサによって算出される上記発酵原料の重量からノイズを除去するノイズ除去手段を有し、上記発酵指標算出手段は、上記ノイズ除去手段によって除去された重量に基づいて、上記減少重量速度を算出することを特徴とする。
【0014】
上記発酵乾燥装置は、上記回転軸を間欠的に回転させて上記発酵原料を発酵および乾燥させる装置であり、上記ノイズ除去手段は、上記回転軸の回転時には、その回転時に上記重量センサによって算出される重量を上記ノイズとして除去するとともに、直前の回転停止時に算出された重量を上記発酵指標算出手段に出力することを特徴とする。
【0015】
上記発酵原料が下水汚泥を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のセメント製造システムは、本発明の発酵乾燥装置と、その発酵乾燥装置における発酵乾燥処理によって得られる発酵乾燥物を使用するセメント製造装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発酵乾燥方法は、密閉型の発酵乾燥装置を用い、減少重量速度を発酵指標として算出する発酵指標算出工程を有するので、発酵指標を取得するためのセンサとしては発酵原料の重量を算出する重量センサのみで済み、低コストかつ簡易な構造で発酵指標を算出できる。さらに、減少重量速度は容器内の発酵原料の発酵状態の良し悪しを表すことから、発酵状態に即して、入気量や、入気温度、発酵原料の投入量、発酵原料の組成、発酵乾燥物の排出量などを調整して、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の発酵乾燥装置の一例を示す縦断面図である。
【
図2】試験例1の各パラメータの経時変化を示す図である。
【
図3】試験例2の各パラメータの経時変化を示す図である。
【
図4】試験例1および試験例2の重量の経時変化を示す図である。
【
図5】試験例1の減少重量速度と算出スパンとの関係を示す図である。
【
図6】試験例1の減少重量速度と算出スパンとの関係を示す図である。
【
図7】試験例1の発酵熱量と減少重量速度との関係を示す図である。
【
図8】試験例1の排気温度と減少重量速度との関係を示す図である。
【
図9】発酵鶏糞の添加による排気温度の変化を示す図である。
【
図10】発酵鶏糞の添加による発酵原料の重量の変化を示す図である。
【
図11】発酵鶏糞の添加量の違いによる重量の変化を示す図である。
【
図12】発酵乾燥装置の回転時の状態を説明するための図である。
【
図13】ノイズ除去による重量の経時変化の一例を示す図である。
【
図14】インバータ周波数の調整の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】重量センサの他の設置位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発酵乾燥装置の概要を
図1に基づいて説明する。
図1は発酵乾燥装置の構成の一例を示す縦断面図である。
図1に示すように、発酵乾燥装置1は、円筒縦型の容器2と、容器2内に縦方向に設けられた回転軸3と、回転軸3周りに多段に付設された複数枚の撹拌翼4と、容器2内に外気を取り入れるための送気手段としての送気ブロワ6と、容器2内に蓄積する内気を容器外部に排出するための排気手段9とを備えてなる密閉縦型の発酵乾燥装置(コンポ)である。本発明における該装置は、容器2の内容積が10m
3以上である業務用の大型の装置を主な対象としている。撹拌翼4の形状は、特に制限なく、例えば、回転軸3から容器2の内壁側に向けて直線的に延設されたピッチドパドル形状とし、その回転方向前側に傾斜面を有する形状などとできる。
【0020】
最下段の撹拌翼の下部に通気孔4aを有し、送気ブロワ6から送られる外気(入気)を回転軸内に設けられた配管6aを介して該通気孔より容器内に導入している。発酵槽である容器2は、金属製外層と断熱層とを有する断熱容器であり、かつ、通気孔から導入される以外の外気とは接触しにくい気密性容器である。また、容器2の上部に発酵原料の投入口2aと、排気口2cとを有し、底部に処理後の発酵乾燥物の取出口2bを有する。排気口2cは排気手段9に連結されている。投入口2aおよび取出口2bには、容器の気密性を確保するための開閉可能な蓋などが設けられている。
【0021】
図1に示す形態では、容器2の下方に機械室5が設けられ、この機械室内に回転軸3の駆動手段である油圧シリンダ8と、上述の送気ブロワ6が設けられている。回転軸3は、機械室5内に貫通しており、油圧シリンダ8により所定回転数で回転させられる。送気ブロワ6としては、入気量を調整可能とするため、ブロワ回転数をインバータ周波数で制御できるものを用いることが好ましい。また、配管6aの途中に、送気量を調整する送気バルブを設けてもよい。
【0022】
容器内で発生したガスや水蒸気などは、排気口2cから排気手段9を介して外気へ排気される。排気手段9は、排気管10と、排気ブロワ11と、脱臭装置12とを有する。排気ブロワ11は、容器内のガスなどを強制的に排気させる。脱臭装置12は、例えば、ガスなどに洗浄液としての水を接触させて臭気成分を捕捉する水洗スクラバーなどである。臭気成分としては、プロピオン酸、ノルマル酪酸、イソ吉草酸などの低級脂肪酸やアンモニアなどが挙げられる。
【0023】
図1に示す形態では、送気ブロワ6から送られる外気を加温するためのヒータ7が設けられている。ヒータ7は必須ではなく、例えば、排気手段9からの排気の熱を利用して送気ブロワ6から容器内に導入される外気を加温する熱交換手段(図示省略)を設けてもよい。この場合、ヒータを不要とでき、ランニングコストの低減が図れる。熱交換手段の形態や設置場所は特に限定されず、例えば、排気が充満された熱交換装置内に容器内導入前の送気配管を通すことなどが挙げられる。
【0024】
発酵乾燥装置1は、容器2外周の少なくとも一部を空間を介して覆うように設置された外部断熱パネルを有する態様としてもよい。外部断熱パネルを設け、容器との二重断熱構造とすることで、屋外に設置する該装置においてより安定した処理が可能になる。外部断熱パネルの形状としては、例えば、該パネルで構成される装置外壁が上記容器の円筒外周に略外接する四角筒状などが挙げられる。
【0025】
本発明の発酵乾燥装置において、発酵乾燥処理の対象となる発酵原料には、家畜排泄物や、食品廃棄物、下水汚泥などを用いることができ、発酵原料が下水汚泥を含むことが好ましい。下水汚泥は、生活排水などの下水を浄化処理する浄化施設において生じる汚泥である。発酵原料に用いる下水汚泥の含水率は、例えば70質量%~90質量%であり、好ましくは、75質量%~85質量%である。発酵乾燥装置における発酵乾燥処理は、容器内において、好気性発酵菌の存在下で通気しながら好気発酵させて行なう。好気性発酵菌としては、30~90℃程度で活性化する発酵菌が好ましく、例えば、ジオバチルス属やバチルス属などが挙げられる。
【0026】
下水汚泥を発酵乾燥させる場合、発酵原料としては、下水汚泥に、さらに肉骨粉、石炭灰、および種汚泥を加えることが好ましい。具体的な数値としては、発酵原料全体に対して、下水汚泥が70質量%~85質量%、肉骨粉が10質量%~20質量%、石炭灰が5質量%~20質量%、種汚泥が1質量%~5質量%含まれることが好ましい。石炭灰は、石炭火力発電所などにおいて、副産物として発生するフライアッシュやクリンカーアッシュを指す。種汚泥は順養化された発酵菌(好気性微生物)を含む汚泥堆肥または乾燥汚泥である。また、上記発酵原料には、さらに消石灰や廃白土などが含まれていてもよい。
【0027】
図1の発酵乾燥装置1において、投入口2aから発酵原料を容器2の内部に投入し、容器内で発酵乾燥後に容器下部の取出口2bより発酵乾燥物を取り出す。発酵乾燥物の含水率は、例えば10質量%~40質量%であり、好ましくは15質量%~30質量%である。発酵および乾燥は、送気ブロワ6により最下段の撹拌翼の通気孔4aから所定の入気量で外気を導入し、かつ、排気口2cと排気手段9から内気を排気しつつ、各撹拌翼4を低速で回転させて、発酵原料の下水汚泥などを通気撹拌し、好気発酵させることで行なう。また、通気により同時に乾燥もされる。排気口2cから排気される空気は、通気孔から容器内に導入されて処理物中を通過しながら上方へ流れてきた空気に、発酵原料より生じたガスや水蒸気を含むものである。
【0028】
運転手順としては、まず、発酵乾燥装置に、該装置の内容積に対して10~30%の空間(ヘッドスペース)を残して、発酵原料を投入する。10~30%の空間を残して発酵原料を投入することにより、撹拌が十分になされるため、発酵および乾燥が効率よくなされる。投入は毎日行ない、所定の滞留期間(3日~20日程度)発酵および乾燥して、一定期間(例えば毎日)毎に所定量(例えば20質量%程度)の発酵乾燥物を取り出す。上記投入は、発酵乾燥物を取り出した後に行なう。このように、一定時間サイクルで発酵原料の一部投入と発酵乾燥物の一部取り出しを繰り返して、連続的に処理を行なう。得られる発酵乾燥物は、通常はサラサラとした粉粒状となっている。
【0029】
本発明の発酵乾燥装置1は、容器2の内部の発酵原料(以下、内容物ともいう)の重量を直接的または間接的に算出する重量センサ13を有する。
図1において、重量センサ13は、容器2および機械室5を有する装置本体1aの外側の底面に複数設けられている。重量センサ13は、ロードセルとも呼ばれ、荷重を測定するためのセンサである。ロードセルは、力に比例して変形する起歪体と、その変形量(ひずみ)を測定するひずみゲージから構成される。ひずみゲージの貼り付けられた起歪体の一方は固定され、もう一方は自由端となっている。自由端に荷重がかかると起歪体が変形するため、起歪体の変形量をひずみゲージにより電圧信号として測定し、荷重(重量)を検出する。
【0030】
図1の形態では、重量センサ13によって、発酵原料を含む装置本体1aの重量が検出される。検出された重量から、容器内に発酵原料がない状態(容器2が空の状態)の装置本体1aの重量を減算することで、容器内の発酵原料の重量を間接的に算出できる。なお、容器内の下部に重量センサを設ける構成とすることで、容器内の発酵原料の重量を直接的に算出することもできる。
【0031】
図1に示すように、発酵乾燥装置1には、該装置の運転を制御する制御盤14が備え付けられている。制御盤14により、例えば、自動運転モードと手動運転モードの切り替えや、自動運転モードの各種設定操作、手動運転モードにおける各種操作(例えば、送気ブロワ6のON/OFF、排気ブロワ11のON/OFF、油圧シリンダ8のON/OFF、バケット(図示省略)の昇降など)を行うことができる。
【0032】
本発明の発酵乾燥装置1は、重量センサ13によって検出される発酵原料の重量に基づき、単位時間あたりの減少重量である減少重量速度ΔW/tを算出する発酵指標算出手段を有する。
図1において、制御装置15は、発酵指標算出手段を有し、周知のCPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置15には、重量センサ13から発酵原料の重量(算出値)が入力される。制御装置15は、この算出値を連続で取得、記憶できる構成となっており、各種演算機能も有している。
【0033】
発酵指標算出手段は、発酵原料の重量(算出値)を任意の取得間隔(例えば1分間隔)で繰り返し取得する。そして、取得の都度、現在の時点における発酵原料の重量と、所定時間前の時点における発酵原料の重量との差分をとり、その差分を時間の差分で除算して、発酵指標となる減少重量速度ΔW/tを算出する。本発明において、上記ΔW/tの算出における、現在の時点と所定時間前の時点の時間間隔を算出スパンという。算出スパンは適宜設定でき、例えば、1分~数分程度の短い間隔から、1時間~24時間程度の比較的長い間隔に設定できる。更に1週間程度の長期スパンでもよい。ただし、後述の
図5および
図6で示すように、短期の発酵状況を把握したい場合は、ΔW/tの振れが小さく重量減少の傾向をより把握しやすいことから、算出スパンを1時間以上に設定することが好ましい。ΔW/tの単位は、例えばkg/minである。
【0034】
本発明では、算出されたΔW/tに基づいて、入気量や、入気温度、発酵原料の投入量、発酵原料の組成、発酵乾燥物の排出量などを調整することで、発酵乾燥を安定して行うことができる。
【0035】
以下には、まず、入気量の調整について説明する。
図1において、発酵乾燥装置1は、発酵指標算出手段によって算出されたΔW/tに基づいて、容器内に導入される入気量を調整する入気量調整手段を、さらに有する。発酵指標算出手段によってΔW/tが算出される度に、そのΔW/tが入気量調整手段に入力される。この入気量調整手段は、例えば制御装置15に備えられている。
【0036】
例えば、入気量調整手段は、今回算出されたΔW/tが、その前回に算出されたΔW/tに対して増加した場合には、容器内に導入される入気量を増加させ、減少した場合には、容器内に導入される入気量を減少させる。この入気量調整は、発酵・乾燥が活発に行われている場合に入気量を増加させ、発酵・乾燥の促進を図るという制御である。一方で、今回算出されたΔW/tが、その前回に算出されたΔW/tに対して増加した場合には、容器内に導入される入気量を減少させ、減少した場合には、容器内に導入される入気量を増加させてもよい。この入気量調整は、減少重量速度を一定に安定させる制御であり、例えば、スケジュール管理の面から、発酵・乾燥を予定通り進めたい場合などに適している。
【0037】
また、その他の入気量調整としては、目標となる減少重量速度ΔW/ttargetを設定し、ΔW/ttargetに対する乖離具合からインバータ周波数を調整する方法がある。例えば、今回算出されたΔW/tがΔW/ttargetを大きく下回っている場合には、送気量を通常の上げ幅よりも大きくして、今回算出されたΔW/tがΔW/ttargetをわずかに下回っている場合には、送気量を通常の上げ幅よりも小さくする制御を行うことができる。一方、今回算出されたΔW/tがΔW/ttargetを上回っている場合には、送気量を小さくする制御を行う。
【0038】
入気量調整手段による入気量の調整は、例えば、送気ブロワのインバータ周波数の増減により行なえる。また、送気量を調整可能な送気バルブを設けた構成では、この送気バルブの開度を増減させて、入気量を調整してもよい。なお、以後は、インバータ周波数を用いた制御について述べる。
【0039】
インバータ周波数を用いた制御において、インバータ周波数変更のインターバル(以下、制御指令スパンともいう)は適宜設定でき、例えば、1分~数分程度の短い間隔から、1時間~数時間程度の比較的長い間隔に設定できる。ただし、発酵原料の重量は、水の蒸発速度や発酵原料の分解速度からして数分単位では大きく変化せず、また、後述のノイズ除去手段によって、数分以上の一定時間、同じ重量値が入力されることなどから、制御指令スパンは10分以上の間隔が好ましい。また、周波数制御において、制御指令スパンは、発酵指標算出手段におけるΔW/tの算出間隔と等しくなっていてもよく、異なっていてもよい。
【0040】
インバータ周波数の変更幅は適宜設定でき、例えば、制御指令スパンが1時間の場合には、0.1Hz~2Hz程度に設定できる。インバータ周波数の変更幅を小さくし過ぎると、発酵温度上昇の際(原料投入後、6時間経過程度)に必要な入気量を供給できなくなる可能性があるため、例えば、制御指定スパンが1時間の場合には、0.5Hz~1.5Hz程度が好ましい。
【0041】
ここで、周知の発酵指標である発酵熱量と減少重量速度ΔW/tとの関係について、
図2~
図8に基づいて説明する。試験例として、制御指令スパンを3分とした試験例1と、制御指令スパンを30分とした試験例2を実施した。発酵原料には、表1に示すように、下水汚泥に、肉骨粉、石炭灰、種汚泥などを混合した混合物を用いた。
【0042】
【0043】
発酵乾燥装置には、中部エコテック社製コンポS36(容積39m3)を用いた。この装置を用いて、インバータ周波数、排気温度、送気流量、発酵熱量、および下水汚泥の重量のデータを随時取得した。各パラメータは、上記特許文献1などを参考にして、以下のように算出した。
【0044】
[送気流量(入気量)]
送気流量は、送気ブロワのブロワ回転数を制御するためのインバータ周波数と送気流量とに線形の関係があることに基づいて、下記の式(1)より算出した。
【数1】
【0045】
[発酵熱量]
発酵熱量は、下記の式(2)より算出した。
【数2】
【0046】
上記式(2)中の排気エンタルピーは、排気中の(A)水蒸気エンタルピー+(B)乾き空気エンタルピー、の式より算出した。
(A)排気(水蒸気)エンタルピーは、ノルマル換算した排気(水蒸気)流量、水分子量、標準状態モル体積、飽和蒸気比エンタルピーから算出した。飽和蒸気比エンタルピーは、飽和蒸気表のデータセットをプロットして作られた近似式より求めた。なお、ノルマル換算した排気(水蒸気)流量算出時の相対湿度(%RH)は、100%RHに固定した。
(B)排気(乾き空気)エンタルピーは、ノルマル換算した排気(乾き空気)流量、乾き空気分子量、標準状態モル体積、空気比熱、排気温度から算出した。
【0047】
上記式(2)中の送気エンタルピーは、送気中の(A)水蒸気エンタルピー+(B)乾き空気エンタルピー、の式より算出した。
(A)送気(水蒸気)エンタルピーは、ノルマル換算した送気(水蒸気)流量、水分子量、標準状態モル体積、飽和蒸気比エンタルピーから算出した。飽和蒸気比エンタルピーは、飽和蒸気表のデータセットをプロットして作られた近似式より求めた。なお、ノルマル換算した送気(水蒸気)流量算出時の相対湿度(%RH)は、75%RHに固定した。
(B)送気(乾き空気)エンタルピーは、ノルマル換算した送気(乾き空気)流量、乾き空気分子量、標準状態モル体積、空気比熱、送気温度から算出した。
【0048】
試験例1は、インバータ周波数帯を30~45Hz、インバータ周波数の変更幅を0.2Hzとした。インバータ周波数変更のインターバルは、発酵熱量の算出間隔である。具体的には、試験例1では、3分間隔で発酵熱量を算出し、3分前の発酵熱量Aと現在の発酵熱量Bとを対比して、発酵熱量Bが増加している場合(B>A)には入気量を増加させ、発酵熱量Bが減少している場合(B<A)には入気量を減少させ、これらが等しい場合(B=A)には入気量を維持させた。入気量の増減は、ブロワのインバータ周波数の増減(±0.2Hz)により行った。
【0049】
試験例2は、インバータ周波数帯を30~42Hz、インバータ周波数の変更幅を1.0Hzとした。試験例2では、30分間隔で発酵熱量を算出し、30分前の発酵熱量Aと現在の発酵熱量Bとを対比して、発酵熱量Bが増加している場合(B>A)には入気量を増加させ、発酵熱量Bが減少している場合(B<A)には入気量を減少させ、これらが等しい場合(B=A)には入気量を維持させた。入気量の増減は、ブロワのインバータ周波数の増減(±1.0Hz)により行った。
【0050】
図2および
図3には、各試験例の試験結果を示す。各図(a)に、インバータ周波数と排気温度と送気流量の経時変化を示し、各図(b)に、インバータ周波数と発酵熱量の経時変化を示す。その結果、試験例1の方が試験例2に比べて発酵状態が良好であった。具体的には、試験例1の方が排気温度および発酵熱量が高い結果となった。一方、試験例2は、排気温度および発酵熱量が比較的低く、水蒸発量が少なく容器内の処理物が水分過多となるおそれがあった。発酵熱量を発酵指標とした制御では、制御指令スパンを数分程度にした方が好ましいと考えられる。
【0051】
図4には、各試験例の重量の経時変化を示す。
図4(a)は試験例1の結果を、
図4(b)は試験例2の結果を示している。また、各図には測定値から導き出される近似式もそれぞれ示す。
図4に示すように、いずれの試験例も、時間経過とともに容器内の重量は減少する傾向であるが、発酵状態が良好であった試験例1の方が、試験例2に比べて近似式の傾きが大きかった。つまり、試験例1の方が減少重量速度が大きかった。発酵状態が良好なほど、容器内における好気性発酵による有機物の分解および発酵熱による水分の蒸発が活性化し、その結果、容器内の内容物の重量減少が大きくなると考えられる。したがって、
図2~
図4の結果は、減少重量速度ΔW/tが、発酵熱量と同様に、容器内の下水汚泥の発酵状態の良し悪しを測る指標(発酵指標)となることを示している。
【0052】
さらに、算出スパンの大小による減少重量速度ΔW/tへの影響を確認した。上記試験例1において1分間隔で算出された重量値を用いて、減少重量速度ΔW/tの算出スパンをそれぞれ、1分、30分、60分、180分とした場合の減少重量速度ΔW/tを
図5および
図6に示す。例えば、算出スパン60分の場合、発酵指標算出手段において、1分毎に発酵原料の重量値を取得し、現在(取得した時点)における重量値と60分前の時点における重量値との差分をとり、その差分を60分で除算して、減少重量速度ΔW/tを算出した。また、各図において、減少重量速度ΔW/tの60区画移動平均線を点線で示している。
【0053】
図5に示すように、算出スパンが1分および30分の場合には、減少重量速度がマイナスになる場合があり、移動平均線を見ても重量の推移の傾向が把握しにくいことが分かる。一方、
図6に示すように、算出スパンが60分および180分の場合には、減少重量速度がマイナスになることがない。また、移動平均線から減少重量速度が停滞している箇所などが判別できる。そのため、算出スパンが60分以上の場合には、重量変化の傾向を把握しやすく、それに基づいてより適切な制御を行うことができる。
【0054】
続いて、
図7には、算出スパン60分および180分の場合の
図6の各グラフに上記試験例1の発酵熱量の結果を重ねたグラフを示す。
図7に示すように、減少重量速度ΔW/tは、周知の発酵指標である発酵熱量の動きと同様の傾向を示すことが分かる。この結果より、減少重量速度ΔW/t(特に、算出スパンが60分以上)は、発酵指標として充分使用可能であることが分かる。減少重量速度の場合、特に、センサ類が重量センサのみで済むため、発酵熱量を用いる場合に比べて、システムなどが煩雑になりにくい。
【0055】
さらに、
図8には、算出スパン60分および180分の場合の
図6の各グラフに上記試験例1の排気温度の結果を重ねたグラフを示す。
図8に示すように、減少重量速度ΔW/tは、排気温度の動きに対しても同様の傾向を示すことが分かる。そのため、減少重量速度ΔW/tは、発酵原料の発酵状態を良好に反映しているといえる。
【0056】
以上では、算出されたΔW/tに基づいて入気量を調整する態様について述べたが、本発明の態様はこれに限定されない。以下には、算出されたΔW/tに基づいて、容器内へ投入する発酵原料を調整する態様について説明する。
【0057】
発酵乾燥装置の発酵乾燥処理において、発酵原料の投入が1日1回行なわれており、発酵原料の投入時間や、投入量、組成がある程度定まっているような運転方法がよく行われている。このように毎日同様の運転を行なう場合、例えば、任意の時間帯における減少重量速度と、前日の同時間帯における減少重量速度とを比較して、その大小によって、発酵原料の投入量の増減、発酵原料の組成の変更、発酵乾燥物の排出量の増減を調整することができる。発酵原料の組成の変更としては、例えば、副資材や発酵助剤の増減などがある。なお、同時間帯とは、完全に同じ時間帯に限らず、時間帯が半分以上重複する時間帯を含む。
【0058】
具体的には、その日の任意の時間帯(例えば、18時~翌6時までの時間帯)における減少重量速度が、前日の同時間帯(例えば、18時~翌6時までの時間帯)における減少重量速度に対して増加した場合は、発酵原料の投入量または発酵乾燥物の排出量を、前日の投入量または排出量よりも増加させる。具体的な数値として、前日の投入量または排出量の105%~120%の量にする。この場合は、発酵原料の発酵が促進されていることから、投入量を多くする、または排出量を多くすることが可能である。なお、投入量および排出量を多くしてもよい。一方、その日の任意の時間帯における減少重量速度が、前日の同時間帯における減少重量速度に対して減少した場合は、発酵原料の投入量を減少させるか、発酵助剤の添加量を増加させる。具体的な数値として、前日の発酵原料の投入量の80%~95%の量にする。この場合は、前日に比べて、その日の発酵状態が低下していることから、発酵原料の投入量を少なくするか、発酵助剤を増量することで、発酵状態の改善を図ることができる。
【0059】
副資材は、発酵原料の好気発酵を安定的に促進するための資材であり、具体的には発酵原料の含水率やpHを調整する資材や、通気性の向上を目的とする資材などがある。副資材として、例えば、肉骨粉や、石炭灰、消石灰、廃白土などが挙げられる。
【0060】
発酵助剤としては、例えば鶏糞が挙げられる。鶏糞としては、発酵していない鶏糞に加えて、鶏糞に好気発酵処理を施した発酵鶏糞を用いることができる。発酵鶏糞は、発酵処理により水分が減少しており、通常含水率が30質量%未満である。発酵鶏糞としては、1次発酵鶏糞、2次発酵鶏糞などを用いることができるが、発酵促進の点で1次発酵鶏糞が好ましい。なお、上記のいずれの鶏糞にも、採卵鶏、肉鶏が含まれる。
【0061】
発酵助剤の添加量を増加する方法として、例えば、発酵鶏糞を追加する方法がある。一形態として、発酵鶏糞の添加量は、容器内の発酵原料全量に対して3質量%以上であり、好ましくは3質量%~30質量%であり、より好ましくは3質量%~20質量%である。また、別形態として、発酵鶏糞の添加量は、容器へ投入する下水汚泥に対して3質量%~20質量%である。後述の試験例で示すように、発酵鶏糞を添加することで発酵を促進させることができる。
【0062】
また、減少重量速度を用いた別の方法として、その日の任意の時間帯における減少重量速度ΔW/tと、設定された目標値ΔW/ttargetとの乖離具合に応じて、発酵原料の投入量の増減や、発酵原料の組成(配合)の変更、発酵乾燥物の排出量の増減を調整してもよい。
【0063】
ここで、ΔW/tに基づいて発酵助剤を増減する態様について、
図9~
図10の試験結果に基づいて説明する。この試験は、中部エコテック社製コンポC-40ET(容積39m
3)を用いて約2週間(10月1日~10月13日)行った。発酵原料の投入は基本的に毎日行い、発酵乾燥物の排出後、容器内での発酵状況などを考慮して発酵原料の投入量および配合を調整しながら、所定時刻(10時~11時の間)に発酵原料を投入した。発酵原料の投入量および配合は下記の表2に示すとおりである。また、試験期間の2週目からは、発酵助剤として発酵鶏糞を所定量添加した。具体的には、10月8日には、容器内の内容物の重量に対して約10質量%の発酵鶏糞を添加し、10月9日~11日には、投入する下水汚泥の重量に対して約10質量%の発酵鶏糞を添加した。
【0064】
上記試験期間における排気温度の推移を
図9に示す。
図9に示すように、発酵鶏糞を添加していない期間に比べて、発酵鶏糞を添加した期間の方が、排気温度が高くなっている。この結果から、発酵鶏糞の添加によって、発酵原料の発酵が促進されたことが分かる。
【0065】
また、上記試験期間の各日において、18時の時点の容器内の内容物の重量と、翌日の6時の時点の容器内の内容物の重量を算出し、これらの差分ΔWおよび減少重量速度ΔW/tを算出した。この場合、ΔW/tの算出スパンは12時間となる。結果を表2に併記する。また、試験期間における容器内の内容物の重量の推移を
図10に示す。
【0066】
【0067】
表2および
図10に示すように、発酵鶏糞を添加していない期間内における減少重量速度ΔW/t(例えば直線Xの傾き)は、概ね0.4~0.5kg/minであった。これに対して、発酵鶏糞を添加した期間内における減少重量速度ΔW/t(例えば直線Yの傾き)は概ね0.8~1.1kg/minであった。発酵鶏糞を添加することで、発酵が促進され、減少重量速度ΔW/tが大幅に増大したことが分かる。
【0068】
このように、減少重量速度ΔW/tに基づいて、発酵状態の良し悪しを判断でき、例えば発酵状態が悪い場合には、発酵原料に発酵助剤を添加するといった対応が可能である。これにより、発酵乾燥を安定的に行うことができる。具体的な手法として、毎日同じ時間帯における減少重量速度ΔW/tを算出し、算出したΔW/tが所定の値以下(例えば0.5kg/min以下)である場合に、次回の発酵原料に発酵鶏糞を所定量添加することができる。
【0069】
次に、発酵原料に対する発酵鶏糞の添加量を検討した。下水汚泥の投入量に対する発酵鶏糞の添加量を5質量%程度、10質量%程度として、それぞれ所定期間発酵乾燥を行った。発酵原料の投入は基本的に毎日行い、発酵乾燥物の排出後、容器内での発酵状況などを考慮して発酵原料の投入量および配合を調整しながら、所定時刻(10時~11時の間)に発酵原料を投入した。発酵原料の投入量および配合は下記の表3に示すとおりである。また、試験3日目における所定の時間帯(18時~翌6時までの時間帯)の容器内の内容物の重量の推移を
図11に示す。
【0070】
【0071】
図11に示すように、いずれの場合も所定の時間帯における減少重量速度ΔW/t(各図の近似式の傾き)は1.0kg/min以上であり、発酵状態は良好であった。さらに、添加量10質量%の方が、添加量5質量%に比べて減少重量速度ΔW/tが大きく、発酵状態は一層良好であった。この結果から、例えば、発酵鶏糞の添加量を前日よりも多くすることで、発酵状態を一層改善できると考えられる。
【0072】
以上より、本発明の発酵乾燥装置によって算出された減少重量速度ΔW/tは、発酵乾燥処理における様々な要素の調整に用いることができる。本発明では、減少重量速度を発酵指標として用いるため、重量センサの検出精度が高いことが望ましい。そのため、重量センサは、振動の少ない、高剛性で水平な基礎の上に設置されることが好ましい。例えば、屋外環境に設置する場合、コンクリートや、鉄板などの基礎の上に設置される。
【0073】
ところで、発酵乾燥装置1による発酵・乾燥の処理において、回転軸3は常時回転しておらず、回転時と非回転時を繰り返している。つまり、発酵乾燥装置1は、回転軸3を間欠的に回転させて発酵原料を発酵・乾燥させている。発酵乾燥装置の回転時の状態を
図12を用いて説明する。
図12では、容器内の発酵原料を点線ハッチングで示すとともに、油圧シリンダの装置構成を具体的に示している。
【0074】
図12に示すように、油圧シリンダ8は、筒状のシリンダチューブ8aと、油圧室8bおよび8cと、ピストン8dと、そのピストン8dと回転軸3を接続するアーム8eと、油圧供給機構(図示省略)とを有している。油圧シリンダ8は、機械室5内において、ピストン8dが水平方向に伸縮するように配置されている。油圧供給機構から供給された圧油が油圧室8bに注入されることで、ピストン8dが回転軸3の接線方向に向かって押圧される。また、油圧室8cに圧油が供給されると、ピストン8dが基準位置に戻る。このようなピストン8dの直線運動が、アーム8eによって回転運動に変換されることで、回転軸3が水平方向に回転する。
【0075】
回転軸3の回転時(油圧シリンダ8の駆動時)には、ピストン8dの伸縮に伴って振動が生じるおそれがある。また、回転軸3の回転に伴って撹拌翼4が回転することで、発酵原料がかき分けられ、押し潰されることで鉛直方向下向きに荷重がかかることが考えられる。
図12の構成では、重量センサ13は、容器2および油圧シリンダ8を含む装置本体1aの荷重を受けるように配置されているため、回転時における油圧シリンダ8の振動や荷重変化を検出するおそれがある。その結果、発酵原料の重量の検出に影響を及ぼす可能性がある。
【0076】
このような影響を考慮して、発酵乾燥装置1は、重量センサ13によって算出される発酵原料の重量の算出値からノイズを除去するノイズ除去手段を有することが好ましい。この場合、発酵指標算出手段は、ノイズ除去手段によって除去された重量に基づいて、ΔW/tを算出する。ノイズ除去手段は、例えば、制御装置15や重量センサ13に備えられる。
【0077】
ノイズを除去する方法は特に限定されないが、例えば、回転軸3の回転時に重量センサ13によって算出される発酵原料の重量を、ノイズとして除去することができる。この場合、回転時の発酵原料の重量値(実測値)はΔW/tの算出に使用されず、固定値がΔW/tの算出に使用される。固定値としては、例えば、直前の回転停止時に算出された重量値が用いられる。
【0078】
ノイズ除去の態様について
図13を用いて説明する。
図13(a)、(b)は、それぞれ異なる態様のノイズ除去を示しており、ノイズ除去ありの場合(各図中の実線)とノイズ除去なしの場合(各図中の点線)の重量の経時変化を示す。
図13(a)では、5分間回転、10分間停止を1サイクルとした間欠運転を行った場合を示しており、容器内の内容物の重量は1分毎に算出されている。
図13(a)に示すように、ノイズ除去なしの場合は、算出の度に重量が大きく変化しており、ノイズ除去ありの場合に比べて、プラス側に15kg程度値が振れていることが分かる。そのため、重量の算出に回転時のノイズが影響していると考えられる。これに対して、ノイズ除去ありの場合は、重量が安定しており、回転軸の回転に伴うノイズ(特に、上振れ)をカットできている。
図13(a)におけるノイズ除去手段は、回転時の算出値(実測値)をノイズとして除去し、その回転時の直前の回転停止時の算出値を引き継ぐようにしている。そのため、ノイズを除去している間は発酵原料の重量が一定の値に維持され、この値が発酵指標算出手段で使用される。これにより、ΔW/tが安定して算出される。
【0079】
一方、
図13(b)のノイズ除去の方法は、回転軸の回転とは関係なく、所定時間の間における最小重量値を繰り返し記録していく方法である。具体的には、5分間の間に算出された重量値のうち最小の重量値を、次回の5分間の重量として引き継いでいく方法である。ノイズ除去された重量値は、
図13(b)に示すように、基本的に実測値を下回って推移している。上述したように、撹拌中は鉛直方向下向きに荷重がかかることが想定されるため、この方法では、重量値がプラス側に振れることを考慮して、所定時間内の最小重量値以外の重量値をノイズとして除去している。この方法によっても、ノイズカット後の重量値は安定しており、重量変化の傾向を容易に把握することができるとともに、ΔW/tを安定して算出することができる。
【0080】
ノイズ除去のさらに他の方法としては、重量センサによる発酵原料の重量の算出が任意の時間間隔で実施されている構成において、前回の算出値W0からの重量変化率((W1-W0)/W0×100)が所定値以上になった場合に、今回の算出値W1をノイズとして除去することなどが挙げられる。
【0081】
次に、ΔW/tを発酵指標としたインバータ周波数の調整処理の一例について、
図14のフローチャートを用いて説明する。
図14のスタートからエンドに至るまでの処理は、所定時間毎(例えば1分ごと)に繰り返し実施される。
【0082】
まず、ステップS11において、発酵乾燥装置の回転軸が回転時か否かを判定する。具体的には、油圧シリンダの駆動回路が通電状態であるか否かを判定する。回転軸が回転時でない場合(ステップS11がNoの場合)、重量センサによって算出された重量を発酵原料の重量Wとして取得する。一方、回転軸が回転時である場合(ステップS11がYesの場合)、ノイズ除去手段によってノイズの除去を行う。ノイズ除去によって、例えば、
図13(a)に示す方法によって、直前の回転停止時に算出された重量を発酵原料の重量Wとして取得する。
【0083】
ステップS14では、ステップS12またはステップS13で取得された発酵原料の重量Wに基づいてΔW/tを算出する。続いて、算出されたΔW/tを、前回算出されたΔW/tpreと比較する。そして、算出されたΔW/tが増加している場合(ステップS15:Yes)は、ステップS16に進み、インバータ周波数を増加する。一方、算出されたΔW/tが減少している場合(ステップS15:No、ステップS17:Yes)は、ステップS18に進み、インバータ周波数を減少する。ステップS16やステップS18では、予め決められた周波数の変更幅分だけ周波数を増減させる。
【0084】
また、算出されたΔW/tが、前回算出されたΔW/tpreと等しい場合(ステップS15:No、ステップS17:No)は、ステップS19に進み、現状のインバータ周波数を維持する。
【0085】
次に、重量センサ13の設置位置について、
図15および
図16を用いて説明する。
図15は重量センサの設置位置の一例(装置本体の底面)を示す図であり、
図16は重量センサの設置位置の他の例(装置本体の側面)を示す図である。
【0086】
図15に示すように、重量センサ13は、円筒縦型の装置本体1aの円周上の外側の底面に、周方向に均等に配置できる。
図15(a)における重量センサ13は、装置本体1aの荷重を支持し、装置本体1aの安定性を保つために、3つ設けられている。設置する重量センサの数は、容器の安定性を高めたい場合や、算出される重量の精度を高めたい場合には、4つ以上としてもよい。例えば、
図15(b)では、重量センサ13が4つ設けられている。このように複数個の重量センサを設けることで、一つ当たりの重量センサに加わる荷重が過大にならないため、容器内の処理物の重量を正確に算出することができる。
【0087】
また、
図16に示すように、重量センサ13は装置本体1aの側面に設けてもよい。なお、
図16では、排気手段などの装置本体1aの外部の設備は省略している。
図16の形態では、装置本体1aは、その側面に少なくとも3つの取付部16を有し、これら取付部16は装置本体1aの周方向に均等に配置される。また、取付部16の下方には、装置本体1aを支持するための支持台17が設けられる。装置本体1aは、取付部16を、重量センサ13を介して支持台17に固定することで支持される。支持台17は、振動の少ない、高剛性の支持台であることが好ましい。装置本体1aの側面に重量センサ13を設けることで、例えば傾斜地などの、装置本体1aの底面に重量センサ13を設けることが困難な場合でも、発酵乾燥装置を設置することができる。
【0088】
図15と
図16に示す形態において、複数の重力センサ13は、いずれも装置本体1aの縦方向に直交する同一の水平面上に配置されている。すなわち、複数の重力センサ13は、
図15の形態では装置本体1aの水平底面に、
図16の形態では装置本体1aの側面位置において同じ高さに配置されている。これにより、容器内の発酵原料の重量をより正確に計測できる。上記高さは、鉛直方向の重心高さであってもよい。
【0089】
本発明の発酵乾燥装置における発酵乾燥処理によって得られる発酵乾燥物は、例えば、セメント原料、熱エネルギー源などのセメントの製造用途に用いることができる。以下には、本発明のセメント製造システムについて説明する。このシステムでは、下水汚泥などから得られた発酵乾燥物をセメント原料として使用している。
【0090】
本発明のセメント製造システムは、上述した本発明の発酵乾燥装置とセメント製造装置とを有する。このセメント製造装置は、発酵乾燥物からセメントクリンカーを焼成するまでの工程にかかる装置である。セメント製造装置は、例えば、上述の発酵乾燥装置における発酵乾燥処理によって得られる発酵乾燥物を予熱する予熱装置と、予熱された発酵乾燥物を仮焼成する仮焼炉と、仮焼成された発酵乾燥物を焼成するロータリーキルンと、ロータリーキルンによる焼成で得られたセメントクリンカーを冷却するクリンカークーラとを備えている。予熱装置としては、複数のプレヒータサイクロンを備えたサスペンションプレヒータを用いることができる。仮焼炉は、ロータリーキルンの原料供給側に接続され、クリンカークーラは、ロータリーキルンのクリンカー排出側に接続されている。
【0091】
発酵乾燥物は、原料供給口を介して予熱装置に投入され、複数のプレヒータサイクロンで順次予熱された後、仮焼炉に導入されて仮焼成される。仮焼成された発酵乾燥物は、ロータリーキルン内に導入されて、バーナーによって焼成される。焼成された発酵乾燥物は、ロータリーキルンから排出された後、クリンカークーラで冷却されて、外部へ排出される。これにより、発酵乾燥物を原料としたセメントクリンカーを製造することができる。なお、本発明に係るセメント製造装置およびセメント製造方法は、上記構成に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の発酵乾燥装置は、低コストかつ簡易な構造で、発酵原料の発酵乾燥を安定的に実施できるので、例えば、下水処理施設で生じる下水汚泥を発酵乾燥するための装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 発酵乾燥装置
1a 装置本体
2 容器
2a 投入口
2b 取出口
2c 排気口
3 回転軸
4 撹拌翼
4a 通気孔
5 機械室
6 送気ブロワ
7 ヒータ
8 油圧シリンダ
9 排気手段
10 排気管
11 排気ブロワ
12 脱臭装置
13 重量センサ
14 制御盤
15 制御装置
16 取付部
17 支持台