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特許7326450音波洗浄システムおよびワークピースを音波洗浄する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】音波洗浄システムおよびワークピースを音波洗浄する方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
B08B3/12 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021540475
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 US2020012375
(87)【国際公開番号】W WO2020150029
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】62/794,689
(32)【優先日】2019-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コーグリン, マイケル ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジアンチー
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/067955(WO,A1)
【文献】特開2005-349380(JP,A)
【文献】特公昭34-002740(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3202764(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00~ 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波の伝播を可能にする液体を含むように構成されたタンクと、
前記タンク内に配置されたインサートであって、前記インサートが、第1の開口部を有する第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部であって、第2の開口部を有する第2の端部とを含み、前記インサートが、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間にワークピースを受け入れるように構成されている、インサートと、
前記タンクの床に配置されたトランスデューサ支持体と、
前記トランスデューサ支持体により前記床からある距離だけ持ち上げられて、前記第2の開口部に隣接して配置された音波トランスデューサであって、少なくとも部分的に前記インサート内に配置されている音波トランスデューサと、
を備え
前記トランスデューサ支持体は、前記音波トランスデューサの底部の一部のみを支持し、前記音波トランスデューサの前記底部の残りの部分と前記床との間にスペースを形成する、音波洗浄システム。
【請求項2】
前記インサートの前記第2の端部が、前記床から、ある距離を置いて配置されている、請求項1に記載の音波洗浄システム。
【請求項3】
前記インサートが、第1の材料を含み、前記第1の材料が、超音波およびメガソニック波のうちの少なくとも1つを反射する、請求項1または2に記載の音波洗浄システム。
【請求項4】
前記インサートが、円筒形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の音波洗浄システム。
【請求項5】
前記インサートが、前記ワークピースを前記インサート内に吊るすように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の音波洗浄システム。
【請求項6】
ワークピースを音波洗浄する方法であって、
タンクの床に配置されたトランスデューサ支持体と、前記トランスデューサ支持体により前記床からある距離だけ持ち上げられて支持された音波トランスデューサとを備える前記タンクを、液体で満たすことと、
第1の開口部を有する第1の端部と、第2の開口部を有する第2の端部であって、前記第1の端部の反対側にある第2の端部とを有するインサートを、前記音波トランスデューサが少なくとも部分的に前記インサート内に配置されるように、前記タンク内に配置することと、
前記ワークピースを前記インサート内に配置することと、
前記音波トランスデューサを作動させることと、
を含み、
前記トランスデューサ支持体は、前記音波トランスデューサの底部の一部のみを支持し、前記音波トランスデューサの前記底部の残りの部分と前記床との間にスペースを形成する、方法。
【請求項7】
前記音波トランスデューサが、完全に前記インサート内に配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インサートが、円筒形インサートである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ワークピースを前記インサート内に配置することが、前記ワークピースを前記インサート内に吊るすことを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
音波の伝播を可能にする液体を含むように構成されたタンクと、
前記タンク内に配置されたインサートであって、前記インサートが、第1の開口部を有する第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部であって、第2の開口部を有する第2の端部とを含み、前記インサートが、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間にワークピースを受け入れるように構成されており、前記インサートが、円筒形である、インサートと、
前記タンクの床に配置されたトランスデューサ支持体と、
前記トランスデューサ支持体により前記床からある距離だけ持ち上げられて、少なくとも部分的に前記インサート内に配置された音波トランスデューサと、
を備え
前記トランスデューサ支持体は、前記音波トランスデューサの底部の一部のみを支持し、前記音波トランスデューサの前記底部の残りの部分と前記床との間にスペースを形成する、音波洗浄システム。
【請求項11】
前記音波トランスデューサが、完全に前記インサート内に配置されている、請求項1または10に記載の音波洗浄システム。
【請求項12】
前記第1の材料が、ステンレス鋼である、請求項3に記載の音波洗浄システム。
【請求項13】
前記ワークピースを前記インサート内に吊るすように構成された支持体を、さらに備える、請求項1または10に記載の音波洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、装置および方法に関し、より具体的には、音波洗浄システムおよびワークピースを音波洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]処理チャンバ部品などの、半導体産業で使用されるワークピースは、ワークピースから微粒子やその他の不要な材料を除去するために、頻繁な洗浄を多くの場合に必要とする。例えば、ワークピースは、処理チャンバ内の基板上に薄膜を堆積する際に汚染される可能性がある。例えば、汚染物質は、処理チャンバ内で処理されている基板上に落下する可能性があり、基板処理中に形成される最終的なデバイスに欠陥を引き起こす可能性がある。
【0003】
[0003]音波洗浄システムは、そのようなワークピースを洗浄するための、液体で満たされているタンクを含む。高周波音波が、トランスデューサを介して生成され、液体を通ってタンク内のワークピースに伝播する。音波は、ワークピースの近くにキャビテーションを引き起こし、ワークピースから汚れやグリースなどの微粒子を分離させる。
【0004】
[0004]当技術分野における音波洗浄システムの1つの欠点は、洗浄中に音波がワークピース上に適切に集束されないことである。従来の音波洗浄システムでは、トランスデューサによって生成された超音波および/またはメガソニック波は、トランスデューサが配置されているタンクのコーナーによって減衰される。例えば、タンクのコーナーは、超音波トランスデューサによって生成された超音波および/またはメガソニック波を分散させるか、または他の方法で減衰させる。さらに、従来の音波洗浄システムは、その中に配置されたワークピースよりもはるかに大きいタンクを有している。これらのタンクでは、超音波および/またはメガソニック波が、大きなタンク全体に分散され、ワークピース上に十分に集束されない。したがって、従来の音波洗浄システムの超音波トランスデューサによって生成されたエネルギーは、ワークピースに効率的に供給されず、音波洗浄は非効率である。
【0005】
[0005]したがって、当技術分野で必要とされるのは、ワークピースへの音波の集束が改善された装置および方法である。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本明細書の実施形態は、音波洗浄のための装置および方法を含む。装置および方法は、ワークピースへの音波の集束を改善し、その結果、ワークピースの洗浄が改善される。
【0007】
[0007]一実施形態では、音波洗浄システムが提供される。音波洗浄システムは、音波の伝播を可能にする液体を含むように構成されたタンクと、タンク内に配置されたインサートとを含む。インサートは、第1の開口部を有する第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを含む。第2の端部は、第2の開口部を有する。インサートは、第1の開口部と第2の開口部との間にワークピースを受け入れるように構成されている。音波洗浄システムは、第2の開口部に隣接して配置された音波トランスデューサをさらに含む。
【0008】
[0008]別の実施形態では、ワークピースを音波洗浄する方法が提供される。この方法は、音波トランスデューサおよびインサートを含むタンクを液体で満たすことと、ワークピースをインサート内に配置することと、音波トランスデューサを作動させることと、を含む。
【0009】
[0009]さらに別の実施形態では、音波洗浄システムが提供される。音波洗浄システムは、音波の伝播を可能にする液体を含むように構成されたタンクと、タンク内に配置されたインサートとを含む。インサートは、第1の開口部を有する第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを含む。第2の端部は、第2の開口部を有する。インサートは、第1の開口部と第2の開口部との間にワークピースを受け入れるように構成されており、インサートは円筒形である。音波洗浄システムは、円筒形インサート内に配置された音波トランスデューサをさらに含む。
【0010】
[0010]本開示の上記の特徴が、詳細に理解されるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって得られ、そのいくつかが、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、例示的な実施形態のみを示し、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではなく、他の同等に有効な実施形態を認めることができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による、音波洗浄システムの等角図を示している。
図2】一実施形態による、タンクの上面図を示している。
図3】一実施形態による、図2のタンクのインサートの等角図を示している。
図4】一実施形態による、インサートおよびワークピースを有するタンクの断面図を示している。
図5】一実施形態による、ワークピースの音波洗浄のための方法工程のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0016]理解を容易にするために、可能な場合は、図に共通する同一の要素を示すために、同一の参照番号が使用されている。ある実施形態の要素および特徴は、さらに詳説することなく、他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図されている。
【0013】
[0017]本明細書の実施形態は、一般に、音波洗浄システムおよびワークピースを音波洗浄する方法に関する。音波洗浄システムは、液体で満たされた1つ以上のタンクを含み、高周波の波(例えば、音波)が、液体を通って伝播する。洗浄されるべき1つ以上のワークピースが、液体内に配置される。高周波音波が、超音波トランスデューサなどによって生成され、液体を通ってワークピースに伝播する。音波は、ワークピースの近くにキャビテーションを引き起こし、ワークピースから汚れやグリースなどの微粒子を分離させる。タンクのコーナーが、音波を減衰または分散させ、音波のエネルギーがワークピースに到達するのを妨げ、その結果、ワークピースの洗浄が非効率になる可能性がある。
【0014】
[0018]本明細書で使用される場合、「約」という用語は、表示値からの+/-10%の変動を指す。そのような変動は、本明細書で提供される任意の値に含まれ得ることが理解されるべきである。
【0015】
[0019]図1は、一実施形態による、音波洗浄システム100の等角図を示している。示されるように、音波洗浄システム100は、1つ以上のタンク104を含む。図1に示される音波洗浄システム100は、4つのタンク104を含み、これらは、個々にタンク104A~104Dと呼ばれる。図1には4つのタンク104A~104Dが示されているが、音波洗浄システム100は、任意の数のタンク104を含むことができる。タンク104のそれぞれは、個別の音波洗浄システムの少なくとも一部であり得る。タンク104は、互いから隔離することができる。タンク104のそれぞれは、超音波および/またはメガソニック音波の伝播を可能にする、脱イオン水などの液体で個別に満たすことができる。いくつかの実施形態では、液体は、1種以上の溶媒、SC-1(standard clean 1)および/もしくは水酸化アンモニウム(NHOH)および/もしくは過酸化水素(H)などの洗浄液、選択的堆積除去試薬(SDR)、界面活性剤、酸、塩基、またはワークピースから汚染物質および/もしくは微粒子を除去するのに役立つその他の化学物質を含む。ワークピースの例は、ウェハ製造装置の部品である。
【0016】
[0020]音波洗浄システム100は、1つ以上の電源106を含む。例えば、タンク104のそれぞれが、電源106の1つに関連付けられ得る。図1に示されるように、音波洗浄システム100は、個々に電源106A~106Dと呼ばれる4つの電源106を含む。個々の各タンク104A~104Dが、個々の電源106A~106Dのうちの1つに関連付けられ得る。より少ないまたはより多くの電源が使用されてもよい。以下でより詳細に説明するように、電源106は、タンク104内に配置されたトランスデューサ(図1には示されていない)に高周波(RF)電力を供給することができる。
【0017】
[0021]図2は、一実施形態による、タンク104Aの上面図を示している。タンク104Aは、4つの壁208A~208Dなどの壁208を含む。タンク104は、図2に示されるように、上から見たときに正方形または長方形であり得る。正方形および長方形のタンクは、壁208A~208Dを形成する材料の平らなシートを互いに固定(例えば、溶接)してタンク104Aを形成することができるので、製造が容易である。壁208A~208Dは、ステンレス鋼または他の金属などの剛性材料を含むことができる。他の材料が、壁208A~208Dに使用されてもよい。正方形および長方形のタンク104はまた、構造的完全性を提供し、正方形および/または長方形のタンク104を保持および/または支持するフレームなど(図示せず)のより大きな構造の中に容易に組み込むことができる。正方形および長方形のタンク104は、タンク104からのオーバーフローを提供する調整可能な堰などの堰(図示せず)を、さらに含むことができる。タンク104は、3つの側面、5つの側面、および6つの側面など、任意の数の側面を含む他の形状を有することができる。
【0018】
[0022]壁208A~208Dは、コーナー210A~210Dで交差している。タンク104の他の実施形態は、コーナーを形成する壁(例えば、平らな壁)を有する種々の形状を含むことができる。例えば、タンク104は、少なくともいくつかの側面がコーナーを形成する5つまたは6つの側面を含む。
【0019】
[0023]音波トランスデューサ214が、タンク104A内に配置されている。音波トランスデューサ214は、ワークピース218の洗浄を容易にするために、タンク104A内の液体中に超音波および/またはメガソニック波を放出するように構成される。音波トランスデューサ214は、特定の振幅の超音波および/またはメガソニック周波数での振動を生成する圧電アクチュエータまたは任意の他の適切な機構を含むことができる。音波トランスデューサ214は、単一のトランスデューサであってもよいし、またはトランスデューサのアレイを含んでもよい。音波トランスデューサ214は、ワークピース218が配置されている場所に超音波エネルギーを向けるように配向されている。いくつかの実施形態では、音波トランスデューサ214は、超音波および/またはメガソニック波を、ワークピース218の縁に垂直な方向に、または垂直な方向に対してある角度で向けるように構成される。いくつかの実施形態では、音波トランスデューサ214は、ワークピース218の平均または外側の径または寸法に長さがほぼ等しくなるように寸法が決められている。他の実施形態では、音波トランスデューサ214は、ワークピース218の長さよりも長い長さを有する。電力が、電源106Aによってトランスデューサに印加される。例えば、RF電力が、電源106Aによって超音波トランスデューサに供給される。
【0020】
[0024]従来の音波洗浄システムでは、トランスデューサによって生成された超音波および/またはメガソニック波は、トランスデューサが配置されているタンクのコーナーによって減衰される。例えば、タンクのコーナーは、超音波トランスデューサによって生成された超音波および/またはメガソニック波を分散させるか、または他の方法で減衰させる。さらに、従来の音波洗浄システムは、その中に配置されたワークピースよりもはるかに大きいタンクを有している。これらのタンクでは、超音波および/またはメガソニック波が、大きなタンク全体に分散され、ワークピース上に十分に集束されない。したがって、従来の音波洗浄システムの超音波トランスデューサによって生成されたエネルギーは、ワークピースに効率的に供給されず、音波洗浄は非効率である。
【0021】
[0025]本明細書に開示される音波洗浄システム100は、タンク104内にインサート130(例えば、円筒形または他の形状のインサート)を含めることによって、従来の音波洗浄システムの欠陥を克服することができる。1つ以上のワークピース(例えば、ワークピース218)が、インサート130内に配置される。いくつかの実施形態では、1つ以上のタンク104は、インサート130を含み、1つ以上のタンク104は、インサートを含まない。図1に示されるように、すべてのタンク104が、インサート130を含み、これらは、個々にインサート130A~130Dと呼ばれる。以下でより詳細に説明するように、インサート130は、音波トランスデューサ214によって放出された波を反射するので、音波トランスデューサ214によって生成されたエネルギーは、ワークピース218の近くにとどまる。例えば、音波トランスデューサ214(図2)によって生成された波は、タンク104Aのコーナー210A~210Dによって実質的に減衰されたり、タンク104Aの容積全体に分散されたりしない。
【0022】
[0026]図3は、一実施形態による、インサート130Aの等角図を示している。いくつかの実施形態では、インサート130Aは、金属などの剛性材料を含む。いくつかの実施形態では、インサート130Aは、タンク内の液体中を伝播する音波を反射および/または集束させるアルミニウム、チタン、ステンレス鋼、および/または合金材料を含む。インサート130Aは、可撓性材料などの他の材料を含むことができる。インサート130Aに使用される材料は、タンク104A内の液体と適合性がある(すなわち、インサートの材料は、液体によって実質的に腐食したり、他の仕方で化学的に変化したりしない)。図3に示される実施形態では、インサート130Aは円筒形である。円筒形の形状は、超音波および/またはメガソニック波をワークピース218へ集束および/または反射させる。しかしながら、多角形のインサートなどの、インサート130Aの他の形状も企図されている。図3に示される実施形態では、インサート130Aは、ワークピース218を取り囲むスリーブの形態である。しかしながら、ワークピース210は、インサート130Aの外側に配置することができることも企図されている。いくつかの実施形態では、インサート130Aの壁は、中実である。
【0023】
[0027]図3に示されるように、インサート130Aは、第1の端部332A(例えば、上端)および反対側の第2の端部332B(例えば、下端)を含む。壁334が、第1の端部332Aと第2の端部332Bとの間に延びている。壁334は、内面334Aおよび外面334Bを含む。インサート130Aは、第1の端部332Aの近くに配置された第1の開口部336A(例えば、上部開口部)と、第2の端部332Bの近くに配置された反対側の第2の開口部336B(例えば、下部開口部)とを含む。いくつかの実施形態では、第1の開口部336Aおよび第2の開口部336Bの両方が、同じサイズである。いくつかの実施形態では、チャネル333が、第1の端部332Aと第2の端部332Bとの間にインサート130Aを横切って延びている。インサート130Aは、図2および図3に示されるように、第1の端部332Aから見たときに円形または楕円形である。他の実施形態では、インサート130Aは、第1の端部332Aから見たときに、八角形および六角形の形状を含む他の形状を有する。
【0024】
[0028]図4は、一実施形態による、インサート130Aおよびワークピース218を有するタンク104Aの断面図を示している。示されるように、タンク104Aは、インサート130Aおよび音波トランスデューサ214を支持することができる床408を含む。タンク104Aは、少なくとも部分的に液体440で満たされている。液体440は、音波トランスデューサ214によって生成された超音波および/またはメガソニック波が、液体440全体に少なくとも部分的に伝播することを可能にする。いくつかの実施形態では、液体440は、脱イオン水を含む。いくつかの実施形態では、液体440は、1種以上の溶媒、SC-1(standard clean 1)および/もしくは水酸化アンモニウム(NHOH)および/もしくは過酸化水素(H)などの洗浄液、選択的堆積除去試薬(SDR)、界面活性剤、酸、塩基、またはワークピースから汚染物質および/もしくは微粒子を除去するのに役立つその他の化学物質を含む。タンク104Aは、他の液体で満たすこともできる。いくつかの実施形態では、液体440の液面は、インサート130Aの第1の端部332Aよりも高い。いくつかの実施形態では、液体440の液面は、インサート130Aの第1の端部332Aよりも低く、これにより、インサート130A内の波が維持され、ワークピース218の洗浄が改善される。例えば、液体440の液面は、インサート130Aの第1の端部332Aより約2.54cmから約15.24cmの間(約1.0インチから約6.0インチの間)だけ下である。他の実施形態では、液体440の液面および第1の端部332Aは、同じ高さである。
【0025】
[0029]図2および図4に示されるように、ワークピース218は、液体440に完全に沈められ、囲まれるように、インサート130A内に配置される。図4に示されるように、ワークピース218は、インサート130A内に吊るされている。例えば、コード444または同様のデバイスが、ワークピース218をインサート130A内に吊り下げる。コード444は、一般的な意味で使用され、ストラップ、ロープ、チェーン、ライン、および他の可撓性のリンク機構の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、音波洗浄システム100は、コード444が取り付けられている高架ビームまたは同様の支持体などの支持体445を含む。支持体445は、例えば、音波トランスデューサ214および液体440より上のタンク104Aの上部に配置された金属棒である。その結果、支持体445およびコード444は、インサート130A内にワークピースを吊り下げるように構成される。他の実施形態では、他のデバイスを使用して、ワークピース218をインサート130A内に吊り下げる。他の実施形態では、ワークピース218は、インサート130A内に吊るされていない。
【0026】
[0030]ワークピース218は、インサート130Aの第1の端部332Aと第2の端部332Bとの間に配置されるように吊るされることができる。したがって、ワークピース218は、液体440およびコード444とのみ直接接触しており、音波トランスデューサ214またはインサート130Aなどの他の構成要素と直接接触していない。従来の音波洗浄システムは、ワークピースを支持するラックなどを含む。これらのラックなどは、超音波および/またはメガソニック波によって伝達されるエネルギーを減衰または吸収する。ワークピース218をインサート130A内に吊るすことにより、従来の音波洗浄システムよりも多くのエネルギーが、ワークピース218の近くに伝達されて、ワークピース218を洗浄する。例えば、超音波および/またはメガソニック波の形態のより多くのエネルギーが、ワークピース218の近くの液体にキャビテーションを生じさせるために利用可能である。
【0027】
[0031]いくつかの実施形態では、音波トランスデューサ214は、インサート130A内に少なくとも部分的に配置されている。例えば、音波トランスデューサ214は、第2の開口部336Bの近くに、少なくとも部分的に第2の開口部336B内に、少なくとも部分的にインサート130A内に、またはインサート130A内に配置することができる。音波トランスデューサ214を、少なくとも部分的に第2の開口部336B内に、および/または少なくとも部分的にインサート130A内に、またはインサート130A内に配置することによって、音波トランスデューサ214によって放出された超音波および/またはメガソニック波は、インサート130A内を伝播し、ワークピース218の近くでエネルギーを放出する。例えば、音波トランスデューサ214によって放出された超音波および/またはメガソニック波は、インサート130Aの内面334Aでワークピース218に向かって反射する。したがって、音波トランスデューサ214によって生成された超音波および/またはメガソニック波は、タンク104Aのコーナー210A~210Dによって減衰されない。さらに、超音波および/またはメガソニック波は、インサート130Aの外側に配置されたタンク104Aの容積全体に分散されない。
【0028】
[0032]いくつかの実施形態では、トランスデューサ支持体446が、タンク104Aの床408と音波トランスデューサ214との間に配置されている。トランスデューサ支持体446は、音波トランスデューサ214を床408から所定の距離だけ持ち上げて、音波トランスデューサ214と床408との間にスペースを形成する。例えば、トランスデューサ支持体446は、音波トランスデューサ214が少なくとも部分的にインサート130A内に、および/または少なくとも部分的に第2の開口部336B内にあるように、音波トランスデューサ214を持ち上げる。音波トランスデューサ214と床408との間のスペースは、音波トランスデューサ214を、タンク104Aの壁208A~208Dおよび床408から機械的に隔離することができる。いくつかの実施形態では、床408と音波トランスデューサ214との間のスペースは、約15.24cm(約6インチ)未満である。より大きなまたはより小さな間隔が、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、超音波および/またはメガソニック波を放出する音波トランスデューサの部分は、インサート130Aの第2の端部332Bよりも高く、これにより、インサート130A内に波が維持される。
【0029】
[0033]いくつかの実施形態では、インサート支持体448が、インサート130Aの第2の端部332Bを床408から持ち上げる。第2の端部332Bを床408から持ち上げると、第2の端部332Bと床408との間にスペース450が作られる。スペース450は、インサート130Aの内部と外部との間の液体440の流れを提供する。スペース450はまた、タンク104Aの壁208A~208Dおよび床408からインサート130Aを隔離する(例えば、機械的に隔離する)。いくつかの実施形態では、スペース450は、約10.16cm(約4インチ)未満である。いくつかの実施形態では、スペース450は、約2.54cm(約1インチ)未満である。いくつかの実施形態では、スペース450は、約1.27cm(0.5インチ)未満である。いくつかの実施形態では、第2の端部332Bは、床408に近接して、および/または床408と接触して配置されている。
【0030】
[0034]音波洗浄システム100の使用中、タンク104のうちの1つ以上が、上記のように、液体440で少なくとも部分的に満たされている。タンク104Aの動作を参照すると、ワークピース218は、コード444またはインサート130A内の他のデバイスによって吊り下げられ得る。音波トランスデューサ214が作動され、液体440内で超音波および/またはメガソニック波を放出する。音波トランスデューサ214は、少なくとも部分的にインサート130A内に配置されているので、音波トランスデューサ214によって放出された波のほとんどは、インサート130A内にとどまる。例えば、波は、タンク104Aのコーナー210A~210Dによって実質的に減衰および/または分散されたりしない。さらに、音波トランスデューサ214によって生成された波は、インサート130Aの湾曲した内面334Aでワークピース218に向かって反射する。したがって、従来の音波洗浄システムよりも多くのエネルギーが、ワークピース218の近くに伝達され、その結果、従来の音波洗浄システムよりも多くのキャビテーションが生じる。
【0031】
[0035]上記に加えて、ワークピース218は、図4に示されるように、インサート130A内に吊るすことができる。したがって、音波トランスデューサ214によって生成された波を減衰および/または分散させる可能性のあるラックおよび他のデバイスは、インサート130A内に配置されていない。その結果、ワークピース218の近くでより多くのキャビテーションが生じ、したがって、ワークピースの洗浄が改善される。
【0032】
[0036]図5は、一実施形態による、ワークピースの音波洗浄のための方法500の工程のフローチャートを示している。方法500の工程が、図1図5と併せて説明されているが、当業者は、方法の工程を任意の順序で実行するように構成された任意のシステムが、本明細書に記載の実施形態の範囲内にあることを理解するであろう。方法500は、システムコントローラのプロセッサによって実行されると、音波洗浄システムに方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体として、音波洗浄システム100のシステムコントローラ(図示せず)に格納されるか、またはシステムコントローラからアクセスすることができる。方法500の個々の工程のいずれも、上記の音波洗浄システム100のタンク104のうちの任意のタンクで実行することができる。
【0033】
[0037]方法500は、工程506で開始し、タンク(例えば、タンク104A)が、液体(例えば、液体440)で満たされる。タンクは、音波トランスデューサ(例えば、音波トランスデューサ214)およびインサート(例えば、インサート130A)を含む。
【0034】
[0038]工程510において、ワークピース(例えば、ワークピース218)が、タンク内に配置される。ワークピースは、手で、またはワークピースを配置するように構成された機械的デバイスなどの、任意の従来の方法によって配置することができる。
【0035】
[0039]工程512で、音波トランスデューサが作動して、ワークピースを洗浄する。洗浄が完了すると、音波トランスデューサを停止させることができる。
【0036】
[0040]上述のように、音波洗浄システムは、液体で満たされた1つ以上のタンクを含み、高周波の波(例えば、音波)が、液体を通って伝播する。洗浄されるべき1つ以上のワークピースが、液体内に配置される。ワークピースを音波洗浄する方法は、タンク内に配置されたインサート内にワークピースを配置することを含む。高周波音波が、超音波トランスデューサなどによって生成され、液体を通ってワークピースに伝播する。音波は、ワークピースの近くにキャビテーションを引き起こし、ワークピースから汚れやグリースなどの微粒子を分離させる。
【0037】
[0041]タンクのコーナーが、音波を減衰または分散させ、音波のエネルギーがワークピースに到達するのを妨げ、その結果、ワークピースの洗浄が非効率になる可能性がある。しかしながら、本明細書に開示される音波洗浄システムは、音波をワークピースに向けて反射する、および/または音波をワークピースに集束させることによって、タンク内のエネルギー損失を低減し、音波洗浄システムの洗浄効率を改善する。
【0038】
[0042]前述の説明は、例示的な実施形態のみを開示している。本開示の範囲内にある、上記で開示された装置および方法の変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5