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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】パターン検査装置及びパターン検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20230807BHJP
【FI】
G01N23/2251
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021569801
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047233
(87)【国際公開番号】W WO2021140866
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2020003015
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 広
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-064842(JP,A)
【文献】特公平05-013443(JP,B2)
【文献】特開2010-268009(JP,A)
【文献】特開2008-071928(JP,A)
【文献】国際公開第2018/224349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得する2次電子画像取得機構と、
前記図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズする一律サイジング処理部と、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、前記2次電子画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
前記2次電子画像内の図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量を用いて補正する線幅依存補正部と、
前記参照画像内の図形パターンの線幅と、前記2次電子画像内の前記補正量を用いて補正された対応する図形パターンの線幅と、を比較する比較部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得する2次電子画像取得機構と、
前記図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズする一律サイジング処理部と、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、前記2次電子画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
前記参照画像内の図形パターンのエッジ位置と前記2次電子画像内の対応する図形パターンのエッジ位置とのずれ量を算出するずれ量算出部と、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に、前記ずれ量を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量の1/2の値を用いて補正する線幅依存補正部と、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に前記補正量の1/2の値を用いて補正された補正ずれ量が第1の判定閾値を超えるかどうかを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項3】
前記一律サイジング量として、基準線幅サイズの図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅と、当該2次電子画像に対応する参照画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅との差を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記一律サイジング量として、基準線幅サイズの図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅と、当該2次電子画像に対応する領域内の前記基準線幅サイズの設計パターンの線幅との差を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項5】
前記線幅のサイズに依存する補正量として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、前記複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが前記一律サイジング量を用いてリサイズされた複数の設計パターンのデータを画像展開して得られる1つ以上の参照画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅との差、或いは2以上の線幅サイズの前記差を用いて線形補間した値を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記線幅のサイズに依存する補正量として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、前記複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが前記一律サイジング量を用いてリサイズされた複数の設計パターンの線幅との差、或いは2以上の線幅サイズの前記差を用いて線形補間した値を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項7】
前記一律サイジング量を用いて前記2次電子画像内の図形パターンの線幅を補正する第1の一律補正部と、
前記一律サイジング量を用いて前記参照画像内の図形パターンの線幅を補正する第2の一律補正部と、
をさらに備え、
前記補正部は、前記2次電子画像内の前記一律サイジング量を用いて補正された図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された前記補正量を用いて補正し、
前記比較部は、前記2次電子画像内の前記一律サイジング量を用いて補正されると共に前記補正量を用いて補正された図形パターンの線幅と、前記参照画像内の前記一律サイジング量を用いて補正された図形パターンの線幅とを比較することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項8】
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得し、
前記図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズし、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、前記2次電子画像に対応する参照画像を作成し、
前記2次電子画像内の図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量を用いて補正し、
前記参照画像内の図形パターンの線幅と、前記2次電子画像内の前記補正量を用いて補正された対応する図形パターンの線幅と、を比較し、比較された結果を出力する、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。
【請求項9】
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得し、
前記図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズし、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、前記2次電子画像に対応する参照画像を作成し、
前記参照画像内の図形パターンのエッジ位置と前記2次電子画像内の対応する図形パターンのエッジ位置とのずれ量を算出し、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に、前記ずれ量を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量の1/2の値を用いて補正し、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に前記補正量の1/2の値を用いて補正された補正ずれ量が第1の判定閾値を超えるかどうかを判定し、判定結果を出力する、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。
【請求項10】
前記一律サイジング量として、基準線幅サイズの図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅と、当該2次電子画像に対応する参照画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅との差を用いることを特徴とする請求項8又は9記載のパターン検査方法。
【請求項11】
前記一律サイジング量として、基準線幅サイズの図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の前記基準線幅サイズの図形パターンの線幅と、当該2次電子画像に対応する領域内の前記基準線幅サイズの設計パターンの線幅との差を用いることを特徴とする請求項8又は9記載のパターン検査方法。
【請求項12】
前記線幅のサイズに依存する補正量として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、前記複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが前記一律サイジング量を用いてリサイズされた複数の設計パターンのデータを画像展開して得られる1つ以上の参照画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅との差、或いは2以上の線幅サイズの前記差を用いて線形補間した値を用いることを特徴とする請求項8又は9記載のパターン検査方法。
【請求項13】
前記線幅のサイズに依存する補正量として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、前記複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが前記一律サイジング量を用いてリサイズされた複数の設計パターンの線幅との差、或いは2以上の線幅サイズの前記差を用いて線形補間した値を用いることを特徴とする請求項8又は9記載のパターン検査方法。
【請求項14】
前記一律サイジング量を用いて前記2次電子画像内の図形パターンの線幅を補正し、
前記一律サイジング量を用いて前記参照画像内の図形パターンの線幅を補正し、
前記補正量を用いて補正する場合に、前記2次電子画像内の前記一律サイジング量を用いて補正された図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された前記補正量を用いて補正し、
前記比較する場合に、前記2次電子画像内の前記一律サイジング量を用いて補正されると共に前記補正量を用いて補正された図形パターンの線幅と、前記参照画像内の前記一律サイジング量を用いて補正された図形パターンの線幅とを比較することを特徴とする請求項8記載のパターン検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月10日に日本国に出願されたJP2020-003015(出願番号)を基礎出願とする優先権を主張する出願である。JP2020-003015に記載された内容は、本出願にインコーポレートされる。
【0002】
本発明の一態様は、パターン検査装置及びパターン検査方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームで基板を照射して放出されるパターンの2次電子画像を用いて検査する検査装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、LSIを構成するパターンは、10ナノメータ以下のオーダーを迎えつつあり、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
欠陥検査手法としては、紫外線或いは電子ビームを用いて、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計パターンデータを基にした参照画像、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。
【0005】
特に、測定画像と設計パターンデータを基にした参照画像とを比較するダイ-データベース検査では、高感度に欠陥検出するためには参照画像から抽出される図形パターンのエッジ(輪郭線)と測定画像から抽出される輪郭線との一致度、或いは/及び、図形パターンの線幅の一致度が高いことが求められる。そのため、かかる輪郭線の一致度の検査が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ここで、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板の製造にあたって、例えば、基準となる線幅サイズの図形パターンをアンカーとして、かかるアンカーができるだけ一致するように、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板が製造される。しかしながら、実際に製造された基板を電子ビームでスキャンして得られるSEM(Scanning Electron Microscope)画像(測定画像)から抽出される基準サイズの線幅と参照画像から抽出される基準サイズの線幅とが、欠陥が生じていないにもかかわらず一致しない場合がある。その結果、疑似欠陥が生じてしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-170792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、測定される画像と参照画像との線幅誤差を抑制することが可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得する2次電子画像取得機構と、
図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズする一律サイジング処理部と、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、2次電子画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
2次電子画像内の図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量を用いて補正する線幅依存補正部と、
参照画像内の図形パターンの線幅と、2次電子画像内の補正量を用いて補正された対応する図形パターンの線幅と、を比較する比較部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様のパターン検査装置は、
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得する2次電子画像取得機構と、
図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズする一律サイジング処理部と、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、2次電子画像に対応する参照画像を作成する参照画像作成部と、
参照画像内の図形パターンのエッジ位置と2次電子画像内の対応する図形パターンのエッジ位置とのずれ量を算出するずれ量算出部と、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に、ずれ量を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量の1/2の値を用いて補正する線幅依存補正部と、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に補正量の1/2の値を用いて補正された補正ずれ量が第1の判定閾値を超えるかどうかを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様のパターン検査方法は、
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得し、
図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズし、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、2次電子画像に対応する参照画像を作成し、
2次電子画像内の図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量を用いて補正し、
参照画像内の図形パターンの線幅と、2次電子画像内の補正量を用いて補正された対応する図形パターンの線幅と、を比較し、比較された結果を出力する、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様のパターン検査方法は、
電子ビームを用いて、基板上に形成される図形パターンの2次電子画像を取得し、
図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズし、
線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、2次電子画像に対応する参照画像を作成し、
参照画像内の図形パターンのエッジ位置と2次電子画像内の対応する図形パターンのエッジ位置とのずれ量を算出し、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に、ずれ量を線幅のサイズに依存して予め設定された補正量の1/2の値を用いて補正し、
当該図形パターンの線幅が特定できる場合に補正量の1/2の値を用いて補正された補正ずれ量が第1の判定閾値を超えるかどうかを判定し、判定結果を出力する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、測定される画像と参照画像との線幅誤差を抑制できる。よって、疑似欠陥を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1における検査装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4】実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。
図5】実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施の形態1における補正量算出回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
図7】実施の形態1における基準線幅の測定画像のプロファイルと基準線幅の設計パターンデータと一律サイジング後の設計パターンデータとの一例を示す図である。
図8】実施の形態1における基準線幅以外の線幅の測定画像のプロファイルと基準線幅以外の線幅の設計パターンデータと一律サイジング後の設計パターンデータとの一例を示す図である。
図9】実施の形態1における線幅サイズ毎の一律サイジング量と線幅依存補正量との一例を示す表である。
図10】実施の形態1における線幅測定時の補正量の一例を示す図である。
図11】実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図12】実施の形態1における基準線幅の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との一例を示す図である。
図13】実施の形態1における基準線幅以外の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との一例を示す図である。
図14】実施の形態1における基準線幅以外の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との他の一例を示す図である。
図15】実施の形態1における実パターンの線幅と設計パターンの線幅との一例を示す図である。
図16】実施の形態1における実パターンのエッジと設計パターンのエッジとの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、検査装置の一例として、電子ビーム検査装置について説明する。また、実施の形態では、複数の電子ビームによるマルチビームを用いて画像を取得する検査装置について説明するが、これに限るものではない。1本の電子ビームによるシングルビームを用いて画像を取得する検査装置であっても構わない。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1における検査装置の構成の一例を示す構成図である。図1において、基板101に形成された複数の図形パターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150(2次電子画像取得機構)、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びマルチ検出器222が配置されている。図1の例において、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する1次電子光学系を構成する。ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、及び電磁レンズ226は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222に照射する2次電子光学系を構成する。
【0017】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。
【0018】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、補正量算出回路130、サイジング処理回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、及びメモリ118に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0019】
また、検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。チップパターンメモリ123は、比較回路108及び補正量算出回路130に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、ステージ105が移動可能となっている。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビームの光軸(電子軌道中心軸)に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0020】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びビームセパレーター214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。
【0021】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0022】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0023】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは、一方が2以上の整数、他方が1以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、理想的には共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、理想的には同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、m×n本(=N本)のマルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。
【0024】
次に、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0025】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0026】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームのクロスオーバー位置(各ビームの中間像位置)に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。そして、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカス(合焦)する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされた(合焦された)マルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、検査用(画像取得用)のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0027】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0028】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
【0029】
ここで、ビームセパレーター214として、例えばE×B分離器を用いると好適である。ビームセパレーター(E×B分離器)214は、電界を発生させる、2極以上の複数の電極と、磁界を発生させる、それぞれコイルを有する2極以上の複数の磁極とを有している。複数の電極は、対向する2極の電極を含む。複数の磁極は、対向する2極の磁極を含む。ビームセパレーター214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(電子軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離する。
【0030】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、マルチ1次電子ビーム20の照射によって基板101から放出される2次電子を検出する。具体的には、マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。マルチ検出器222は、2次元センサを有する。そして、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子が2次元センサのそれぞれ対応する領域に衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。言い換えれば、マルチ検出器222には、マルチ1次電子ビーム20の1次電子ビーム毎に、検出センサが配置される。そして、各1次電子ビームの照射によって放出された対応する2次電子ビームを検出する。よって、マルチ検出器222の複数の検出センサの各検出センサは、それぞれ担当する1次電子ビームの照射に起因する画像用の2次電子ビームの強度信号を検出することになる。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0031】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ、スキャナ等)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0032】
図4は、実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。図4の例では、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図4の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎の2次電子画像が取得される。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。
【0033】
なお、図4に示すように、各サブ照射領域29が矩形の複数のフレーム領域30に分割され、フレーム領域30単位の2次電子画像(被検査画像)が検査に使用される。図4の例では、1つのサブ照射領域29が、例えば4つのフレーム領域30に分割される場合を示している。但し、分割される数は4つに限るものではない。その他の数に分割されても構わない。
【0034】
なお、例えばx方向に並ぶ複数のチップ332を同じグループとして、グループ毎に例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割されるようにしても好適である。そして、ストライプ領域32間の移動は、チップ332毎に限るものではなく、グループ毎に行っても好適である。
【0035】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように主偏向器208によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、例えば偏向器218は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
【0036】
実施の形態1では、検査処理に先立って、設計パターンの線幅を線幅サイズに関わらず一律にリサイズするための一律サイジング量と、一律サイジング後の設計パターンを画像展開した図形パターンの線幅と測定画像(2次電子画像)の図形パターンの線幅との線幅サイズに応じた誤差を補正するための線幅依存補正量とを求めておく。一律サイジング量と線幅依存補正量との取得は、評価基板を用いる。評価基板上には、線幅サイズの異なる複数の評価用図形パターンが形成される。例えば、100nm、80nm、60nm、30nm、及び20nmの線幅を持った複数の評価用図形パターンが形成される。また、評価基板に形成された複数の評価用図形パターンの元となる評価用設計パターンデータが磁気ディスク装置109に格納される。
【0037】
そして、画像取得機構150は、評価基板をステージ105上に載置し、評価基板に形成された複数の評価用図形パターンの2次電子画像(評価用測定画像)を取得する。
【0038】
まず、評価基板の複数の評価用図形パターンの少なくとも1つが形成された領域を含むストライプ領域32をスキャン可能な位置にステージ105を移動させる。画像取得機構150は、かかるストライプ領域32の画像を取得する。ここでは、例えば、評価基板のかかるストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出することにより、複数の評価用図形パターンの少なくとも1つが形成された領域を含むストライプ領域32の2次電子画像(評価用測定画像)を取得する。複数の評価用図形パターンが複数のストライプ領域に分かれて形成される場合には、複数の評価用図形パターンのいずれかが形成される各ストライプ領域の2次電子画像(評価用測定画像)を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子(マルチ2次電子ビーム300)が投影されても良い。
【0039】
上述したように、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた評価用測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0040】
また、参照画像作成回路112は、評価基板の複数の評価用図形パターンの形成の基となる評価用設計パターンデータを画像展開して、複数の評価用図形パターンの評価用測定画像に対応する評価用参照画像を作成する。具体的には、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して評価用設計パターンデータを読み出し、読み出された評価用設計パターンデータに定義された対応するフレーム領域の各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換(画像展開)して評価用設計画像を作成する。
【0041】
ここで、評価用設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、及び辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データ(ベクトルデータ)が格納されている。
【0042】
参照画像作成回路112は、図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、画素毎に8ビットの占有率データの評価用設計画像を作成する。
【0043】
次に、参照画像作成回路112は、対象の評価用測定画像に対応する評価用設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、対象の評価用測定画像に対応する評価用参照画像を作成する。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである評価用設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された評価用参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0044】
図5は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示すブロック図である。図5において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52、エッジ抽出部54、エッジ抽出部56、位置合わせ部58、線幅算出部60、線幅算出部62、一律補正部64、一律補正部66、線幅依存補正部68、比較部70、エッジずれ量算出部72、線幅依存補正部74、及び位置ずれ判定部76が配置される。エッジ抽出部54、エッジ抽出部56、位置合わせ部58、線幅算出部60、線幅算出部62、一律補正部64、一律補正部66、線幅依存補正部68、比較部70、エッジずれ量算出部72、線幅依存補正部74、及び位置ずれ判定部76といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良いエッジ抽出部54、エッジ抽出部56、位置合わせ部58、線幅算出部60、線幅算出部62、一律補正部64、一律補正部66、線幅依存補正部68、比較部70、エッジずれ量算出部72、線幅依存補正部74、及び位置ずれ判定部76内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0045】
比較回路108内に入力された評価用測定画像のデータは記憶装置50に格納される。また、比較回路108内に入力された評価用参照画像のデータは記憶装置52に格納される。実施の形態1では、例えばフレーム領域30毎の2次電子画像を用いる。例えば、サブ照射領域29を4つのフレーム領域30に分割する。フレーム領域30として、例えば、512×512画素の領域を用いる。
【0046】
エッジ抽出部54は、フレーム領域30毎の評価用測定画像(評価用フレーム画像)内の複数の評価用図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出する。また、エッジ抽出部56は、フレーム領域30毎の評価用参照画像内の複数の評価用図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出する。エッジの抽出手法は、従来と同様で構わない。例えば、画像の信号強度(階調値)のプロファイルの最大勾配位置をエッジ位置として抽出すると好適である。言い換えれば、画像を微分フィルタでフィルタ処理して微分強度が最大となる位置をサブ画素単位で抽出すると好適である。
【0047】
なお、上述した例では、設計パターンデータを画像展開した参照画像から各エッジを抽出しているが、これに限るものではない。画像展開前の各フレーム領域30内に配置される評価用設計パターンデータから評価用の複数の評価用図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出しても構わない。
【0048】
位置合わせ部58は、評価用フレーム画像内で抽出された各エッジ位置と評価用参照画像内で抽出された各エッジ位置との位置合わせを行う。例えば、微分強度が最大となる位置同士の位置を合わせると好適である。
【0049】
線幅算出部60は、評価用フレーム画像内で抽出された対となるエッジペア間の幅を評価用図形パターンの測定線幅として算出する。同様に、線幅算出部62は、評価用参照画像内で抽出された対となるエッジペア間の幅を評価用図形パターンの設計線幅として算出する。線幅サイズの異なる複数の評価用図形パターンの算出された測定線幅と設計線幅の線幅データは、補正量算出回路130に出力される。なお、比較回路108内において、一律サイジング量と線幅依存補正量とを共にゼロとして、一律補正部64、一律補正部66、及び線幅依存補正部68での後述する各処理を実施した後の線幅データを補正量算出回路130に出力しても構わない。
【0050】
図6は、実施の形態1における補正量算出回路の内部構成の一例を示すブロック図である。図6において、補正量算出回路130内には、磁気ディスク装置等の記憶装置40,42,45,48、一律サイジング量算出部44、及び線幅依存補正量算出部46が配置される。一律サイジング量算出部44、及び線幅依存補正量算出部46といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。一律サイジング量算出部44、及び線幅依存補正量算出部46内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0051】
補正量算出回路130内に入力された測定線幅データは記憶装置40に格納される。同様に参照線幅データは記憶装置42に格納される。
【0052】
一律サイジング量算出部44は、被検査基板に形成される図形パターンの基となる設計パターンの線幅を線幅サイズに関わらず一律にリサイズするための一律サイジング量ΔWを算出する。
【0053】
図7は、実施の形態1における基準線幅の測定画像のプロファイルと基準線幅の設計パターンデータと一律サイジング後の設計パターンデータとの一例を示す図である。図7(a)では、測定画像の基準線幅の図形パターン11の階調値プロファイルと基準線幅の設計パターンの形状データとを示している。図7(a)では、評価用参照画像内の評価用設計パターンの画像データが示される代わりに、画像展開前の評価用設計パターン12の形状データが示されている。評価用参照画像内の評価用設計パターンの線幅は、画像展開前の評価用設計パターンデータの線幅と実質的に同一になる。実施の形態1では、基準線幅を予め設定しておく。例えば、アンカーパターンの線幅を基準線幅と設定する。或いは、例えば、被検査基板に形成される複数の図形パターンのうち、多く形成される図形パターンの線幅を基準線幅に設定すると好適である。評価基板には、設定される基準線幅を含む線幅サイズの異なる複数の評価用図形パターンを形成しておくと好適である。評価基板に形成された、例えば、100nm、80nm、60nm、30nm、及び20nmの線幅を持った複数の評価用図形パターンのうち、例えば100nmを基準線幅として設定する。
【0054】
一律サイジング量算出部44は、一律サイジング量ΔWとして、基準線幅サイズの図形パターン11が配置された評価基板から取得される評価用フレーム画像(2次電子画像)内の基準線幅サイズの図形パターン11の線幅と、当該評価用フレーム画像(2次電子画像)に対応する評価用参照画像内の基準サイズの図形パターンの線幅との差を算出する。或いは、一律サイジング量算出部44は、一律サイジング量ΔWとして、基準線幅サイズの図形パターンが配置された評価基板から取得される評価用フレーム画像(2次電子画像)内の基準線幅サイズの図形パターン11の線幅と、当該評価用フレーム画像(2次電子画像)に対応するフレーム領域内の基準サイズの設計パターン12の線幅との差を算出しても良い。一律サイジング量を基準線幅の設計パターンの線幅に加算すれば、加算後の設計パター14の線幅(設計線幅2)は、図7(b)に示すように、基準線幅の測定線幅に合わせることができる。
【0055】
算出された一律サイジング量ΔWは、記憶装置45に格納される。
【0056】
また、一律サイジング量を算出する場合に、基準線幅サイズの1つの図形パターン11で算出された結果で判断するのではなく、基準線幅サイズの複数の図形パターン11で算出された複数の結果の統計値、例えば、平均値、最大値、最小値、或いは中央値を一律サイジング量として求めても好適である。
【0057】
また、上述した例では、1つの線幅サイズ(ここでは100nm)を基準線幅に設定する場合を示したがこれに限るものではない。例えば、100nm及び80nmといった複数の線幅サイズを基準線幅に設定しても良い。かかる場合には、100nmにおける一律サイジング量と80nmにおける一律サイジング量との統計値、例えば、平均値を一律サイジング量としても構わない。
【0058】
図8は、実施の形態1における基準線幅以外の線幅の測定画像のプロファイルと基準線幅以外の線幅の設計パターンデータと一律サイジング後の設計パターンデータとの一例を示す図である。図8(a)では、測定画像の基準線幅以外の線幅の図形パターンの階調値プロファイルと基準線幅以外の線幅の設計パターンの形状データとを示している。図8(a)の例では、基準線幅を100nmとした場合の60nmの線幅の評価用図形パターンについて示している。図8(a)の例では、測定画像の60nmの図形パターンの線幅(測定線幅)は60nmとなり、設計パターンの線幅に一致する場合を示している。しかし、線幅に関係なく一律に、一律サイジング量を設計パターンの線幅に加算すると、加算後の設計パターの線幅(設計線幅2)は、例えば61nmとなり、図8(b)に示すように、測定線幅からずれてしまう。図8(a)の例では、基準線幅を100nmとした場合における60nmの線幅について示したが、他の線幅サイズでもそれぞれの線幅サイズに応じた誤差が生じ得る。
【0059】
そこで、線幅依存補正量算出部46は、一律サイジング後の設計パターンを画像展開した図形パターンの線幅と測定画像(2次電子画像)の図形パターンの線幅との線幅サイズに応じた誤差を補正するための線幅依存補正量p(w)を算出する。
【0060】
線幅依存補正量算出部46は、線幅のサイズに依存する補正量(線幅依存補正量p(w))として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが一律サイジング量を用いてリサイズされた複数の設計パターンのデータを画像展開して得られる1つ以上の参照画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅との差を演算する。評価基板にない線幅サイズについては、2以上の線幅サイズの差を用いて線形補間した値を演算する。図8(a)の例では、一律サイジング量が1nmである場合、加算後の設計パターンの線幅は61nmになる。よって、測定線幅の60nmに合わせるために加算後の設計パターンの線幅から減算するための線幅依存補正量は1nmとなる。
【0061】
或いは、線幅依存補正量算出部46は、線幅のサイズに依存する補正量(線幅依存補正量p(w))として、線幅サイズの異なる複数の図形パターンが配置された評価基板から取得される2次電子画像内の各線幅サイズに対応する複数の図形パターンの線幅と、複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンが一律サイジング量を用いてリサイズされた画像展開前の複数の設計パターンの線幅との差を算出しても良い。かかる場合も、評価基板にない線幅サイズについては、2以上の線幅サイズの差を用いて線形補間した値を演算する。
【0062】
算出された線幅依存補正量p(w)は、記憶装置48に格納される。
【0063】
図9は、実施の形態1における線幅サイズ毎の一律サイジング量と線幅依存補正量との一例を示す表である。図9の例では、基準線幅となる100nmについて、測定線幅が101nmとなるので設計線幅の100nmとの差となる一律サイジング量が1nmとなり、線幅依存補正量はゼロとなる。線幅80nmについては、測定線幅が81nmとなり、一律サイジング量が1nmなので、加算後の設計線幅2は測定線幅と同一になるため線幅依存補正量はゼロとなる。線幅60nmについては、測定線幅が60nmとなり、一律サイジング量が1nmなので、加算後の設計線幅2は61nmとなり、測定線幅と同一にするためには設計線幅2から減算する線幅依存補正量は1nmとなる。線幅30nmについては、測定線幅が29nmとなり、一律サイジング量が1nmなので、加算後の設計線幅2は31nmとなり、測定線幅と同一にするためには設計線幅2から減算する線幅依存補正量は2nmとなる。線幅20nmについては、測定線幅が18nmとなり、一律サイジング量が1nmなので、加算後の設計線幅2は21nmとなり、測定線幅と同一にするためには設計線幅2から減算する線幅依存補正量は3nmとなる。
【0064】
図10は、実施の形態1における線幅測定時の補正量の一例を示す図である。図10の例では、線幅サイズ毎に、一律サイジング量と線幅依存補正量とを示している。図10に示すように、線幅サイズが基準線幅から離れるのに伴い、線幅依存補正量が大きくなる。図10の例では、基準線幅に対して線幅サイズが小さくなるのに応じて線幅依存補正量が大きくなる。上述したように、評価基板にない線幅サイズの線幅依存補正量については、2以上の線幅サイズの線幅依存補正量を用いて線形補間した値を用いれば良い。
【0065】
以上のように、一律サイジング量と複数の線幅サイズに対する線幅依存補正量とを予め求めて置き、記憶装置に格納しておく。その後で、検査対象の基板101に対する実際の検査処理を開始する。
【0066】
図11は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図11において、実施の形態1における検査方法は、2次電子画像取得工程(スキャン工程)(S102)と、一律サイジング処理工程(S104)と、参照画像作成工程(S106)と、エッジ抽出工程(S110)と、エッジ抽出工程(S112)と、位置合わせ工程(S120)と、線幅算出工程(S130)と、線幅算出工程(S132)と、一律補正工程(S134)と、一律補正工程(S136)と、線幅依存補正工程(S138)と、比較工程(S140)と、エッジずれ量算出工程(S150)と、線幅依存補正工程(S152)と、位置ずれ判定工程(S160)と、いう一連の工程を実施する。
【0067】
なお、線幅検査を実施するがエッジ位置ずれ検査を実施しない場合には、エッジずれ量算出工程(S150)と、線幅依存補正工程(S152)と、位置ずれ判定工程(S160)とを省略しても構わない。逆に、エッジ位置ずれ検査を実施するが線幅検査を実施しない場合には、線幅算出工程(S130)と、線幅算出工程(S132)と、一律補正工程(S134)と、一律補正工程(S136)と、線幅依存補正工程(S138)と、比較工程(S140)と、を省略しても構わない。
【0068】
2次電子画像取得工程(スキャン工程)(S102)として、2次電子画像取得機構150は、電子ビームを用いて、基板101上に形成される図形パターンの測定画像(2次電子画像)を取得する。具体的には、画像取得機構150は、複数の図形パターンが形成された基板101上を電子ビームで走査することにより電子光学画像(2次電子画像)を取得する。ここでは、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出することにより、基板101の2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子(マルチ2次電子ビーム300)が投影されても良い。
【0069】
上述したように、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ:電子光学画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0070】
一律サイジング処理工程(S104)として、サイジング処理回路132(一律サイジング処理部)は、図形パターンの元になる設計パターンの線幅を予め設定された一律サイジング量を用いてリサイズする(一律サイジング処理を行う)。記憶装置109には、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる複数の設計パターンのデータが格納されている。サイジング処理回路132は、記憶装置109から対象の設計パターンデータを読み出し、図7(a)に示したように、画像展開前の設計パターンの線幅に一律サイジング量ΔWを加算するリサイズを行う。具体的には、サイジング処理回路132は、線幅サイズに関わらず一律に、画像展開前の設計パターンの両端に一律サイジング量の1/2ずつを加算するリサイズを行う。リサイズ後の設計パターンの設計線幅2は、基準線幅について図7(b)に示すように測定線幅と一致することになる。しかしながら、基準線幅とは異なる線幅サイズの図形パターンについては、図8(b)に示すように、リサイズ後の設計パターンの設計線幅2は、測定線幅からずれてしまう。例えば60nmの線幅の図形パターンでは、リサイズ後の設計パターンの設計線幅2は、測定線幅よりも1nm大きくなる。基準線幅とは異なる他の線幅サイズの図形パターンについても、リサイズ後の設計パターンの設計線幅2は、測定線幅からずれてしまう場合がある。
【0071】
参照画像作成工程(S106)として、参照画像作成回路112(参照画像作成部)は、線幅がリサイズされた設計パターンのデータを画像展開して、2次電子画像に対応する参照画像を作成する。上述したように、参照画像作成回路112は、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0072】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0073】
参照画像作成回路112は、例えばフレーム領域30毎に、図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして作成する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0074】
次に、参照画像作成回路112は、測定画像毎に対象の測定画像に対応する設計画像に所定の画像処理フィルタを用いてフィルタ処理を行うことで、対象の測定画像に対応する参照画像を作成する。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0075】
比較回路108内に入力された測定画像のデータは記憶装置50に格納される。また、比較回路108内に入力された、参照画像のデータは記憶装置52に格納される。比較回路108では、例えばフレーム領域30毎の被検査画像と参照画像とを比較する。フレーム領域30は、例えば、サブ照射領域29が2×2の4つの領域に分割された各領域に相当する。フレーム領域30として、例えば、512×512画素の領域を用いる。
【0076】
エッジ抽出工程(S110)として、エッジ抽出部54は、フレーム領域30毎に、対象となるフレーム領域の測定画像(フレーム画像31)内に配置される複数の図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出する。エッジの抽出手法は、従来と同様で構わない。具体的には、フレーム画像31内の画素値(階調値)が特定の値にある位置をエッジ位置としてサブ画素単位で抽出する。例えば、画像の信号強度(階調値)のプロファイルの最大勾配位置をエッジ位置として抽出すると好適である。言い換えれば、画像を微分フィルタでフィルタ処理して微分強度が最大となる位置をサブ画素単位で抽出すると好適である。
【0077】
エッジ抽出工程(S112)として、エッジ抽出部56は、フレーム領域30毎の参照画像内の複数の図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出する。エッジの抽出手法は、エッジ抽出工程(S110)と同様で良い。
【0078】
或いは、エッジ抽出部56は、画像展開前の各フレーム領域30内に配置される設計パターンデータから複数の図形パターンのエッジ(輪郭線)を抽出しても構わない。
【0079】
位置合わせ工程(S120)として、位置合わせ部58は、フレーム画像31内で抽出された各エッジ位置と参照画像内で抽出された各エッジ位置との位置合わせを行う。例えば、微分強度が最大となる位置同士ができるだけ合うように画像同士を相対的に移動させる。フレーム画像と参照画像の一方だけを移動させても良いし、両方を移動させても良い。例えば、フレーム画像を移動させることで位置合わせを行う。例えば、エッジ位置の階調差の合計若しくはエッジ位置の階調差の2乗和が最小になるようにフレーム画像と参照画像とを位置合わせする。実施の形態1では、事前に一律サイジング処理工程(S104)を行っているので、少なくとも基準線幅の図形パターンについては、設計線幅と測定線幅が一致する。基準線幅は、アンカーパターン若しくは画像内により多く配置される図形パターンの線幅が用いられる。よって、両画像内に一致する多くのエッジを存在させることができる。このように、一律サイジング処理工程(S104)を行うことで、位置合わせをやり易くできる。
【0080】
線幅算出工程(S130)として、線幅算出部60は、フレーム画像31内で抽出された対となるエッジペア間の幅を図形パターンの測定線幅として算出する。
【0081】
線幅算出工程(S132)として、線幅算出部62は、参照画像内で抽出された対となるエッジペア間の幅を図形パターンの設計線幅として算出する。
【0082】
以上により得られる設計線幅には、一律サイジング量がリサイズによって加算されている。よって、本来の線幅ではない。また、測定線幅には、電子光学系の影響等による誤差が含まれているかもしれない。そこで、実施の形態1では、以下のように補正する。
【0083】
一律補正工程(S134)として、一律補正部64(第1の一律補正部)は、一律サイジング量ΔWを用いて測定画像(2次電子画像)内の図形パターンの線幅を補正する。具体的には、フレーム画像31(2次電子画像)内の各図形パターンの線幅から一律に、一律サイジング量ΔWを減算する。
【0084】
一律補正工程(S136)として、一律補正部66(第2の一律補正部)は、一律サイジング量ΔWを用いて参照画像内の図形パターンの線幅を補正する。具体的には、参照画像内の各図形パターンの線幅から一律に、一律サイジング量ΔWを減算する。
【0085】
図12は、実施の形態1における基準線幅の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との一例を示す図である。図12に示すように、例えば100nmを基準線幅とする図形パターンでは、測定線幅が101nmであったため、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、測定線幅が100nmになる。一方、100nmの設計線幅が一律サイジング処理によって101nmにリサイズされたため、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、設計線幅が100nmになる。よって、本来の設計線幅に戻すことができる。
【0086】
図13は、実施の形態1における基準線幅以外の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との一例を示す図である。図13に示すように、例えば60nmの線幅の図形パターンでは、60nmの設計線幅が一律サイジング処理によって61nmにリサイズされたため、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、設計線幅が60nmになる。よって、本来の設計線幅に戻すことができる。これに対して、測定線幅が60nmであったのに対し、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、測定線幅が59nmになってしまう。よって、誤差が生じてしまう。
【0087】
図14は、実施の形態1における基準線幅以外の図形パターンの線幅と設計パターンの線幅と一律サイジングされた設計パターンの線幅と一律補正後の設計パターンの線幅と一律補正及び線幅依存補正後の実パターンの線幅との他の一例を示す図である。図14に示すように、例えば30nmの線幅の図形パターンでは、30nmの設計線幅が一律サイジング処理によって31nmにリサイズされたため、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、設計線幅が30nmになる。よって、本来の設計線幅に戻すことができる。これに対して、測定線幅が29nmであったのに対し、1nmの一律サイジング量を減算する一律補正によって、測定線幅が28nmになってしまう。よって、誤差が生じてしまう。そこで、実施の形態1では、以下のように補正する。
【0088】
線幅依存補正工程(S138)として、線幅依存補正部68(補正部)は、フレーム画像31(2次電子画像)内の図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された線幅依存補正量p(w)を用いて補正する。ここでは、線幅依存補正部68は、フレーム画像31(2次電子画像)内の一律サイジング量を用いて補正された図形パターンの線幅を線幅のサイズに依存して予め設定された線幅依存補正量p(w)を用いて補正する。具体的には、各測定線幅に線幅サイズに応じた線幅依存補正量を加算する。予め設定された線幅サイズ以外の線幅サイズの線幅依存補正量は、2つ以上の線幅サイズの線幅依存補正量を用いて補間した値を用いれば良い。
【0089】
図12の例では、基準線幅の図形パターンなので、線幅依存補正量p(w)はゼロである。よって、線幅依存補正後の測定線幅は、100nmとなる。
【0090】
図13の例では、基準線幅から外れた60nmの線幅の図形パターンなので、線幅依存補正量は1nmである。1nmの一律サイジング量ΔWを減算する一律補正によって、測定線幅が59nmになった測定線幅に線幅依存補正量p(w)の1nmを加算することによって測定線幅を60nmに補正できる。
【0091】
図14の例では、基準線幅から外れた30nmの線幅の図形パターンなので、線幅依存補正量は2nmである。1nmの一律サイジング量ΔWを減算する一律補正によって、測定線幅が28nmになった測定線幅に線幅依存補正量p(w)の2nmを加算することによって測定線幅を30nmに補正できる。
【0092】
実施の形態1では、線幅依存補正工程(S138)後の測定線幅を実パターンの線幅とする。
【0093】
比較工程(S140)として、比較部70は、参照画像内の図形パターンの線幅と、フレーム画像31(2次電子画像)内の線幅依存補正量を用いて補正された対応する図形パターンの線幅と、を比較する。ここでは、比較部70は、フレーム画像31内の一律サイジング量ΔWを用いて補正されると共に線幅依存補正量p(w)を用いて補正された図形パターンの線幅と、参照画像内の一律サイジング量ΔWを用いて補正された図形パターンの線幅とを比較する。例えば、測定線幅と設計線幅との差の絶対値が判定閾値よりも大きい場合に欠陥と判定する。或いは、例えば、測定線幅から設計線幅を差し引いた差が判定閾値の範囲から外れた場合に欠陥と判定する。比較結果は、磁気ディスク装置109、或いは/及びモニタ117に出力される、或いは/及び図示しない外部I/Fを介して外部に出力される。
【0094】
図15は、実施の形態1における実パターンの線幅と設計パターンの線幅との一例を示す図である。図15(a)に示すように、線幅依存補正を実施しない場合、実パターンの線幅と設計パターンの線幅との間にずれが生じる。そのため、本来の欠陥箇所以外の箇所でも欠陥として検出され得る。そのため、疑似欠陥が発生し得る。これに対して、実施の形態1では、線幅依存補正量p(w)で測定線幅を補正しているので、図15(b)に示すように、実パターンの線幅と設計パターンの線幅との間の誤差が解消或いは低減されている。そのため、本来の欠陥箇所以外の箇所では欠陥が検出されない。そのため、疑似欠陥の発生を抑制或いは低減できる。
【0095】
次にエッジの位置ずれ検査について説明する。
【0096】
エッジずれ量算出工程(S150)として、エッジずれ量算出部72(ずれ量算出部)は、参照画像内の図形パターンのエッジ位置とフレーム画像31(2次電子画像)内の対応する図形パターンのエッジ位置とのずれ量を算出する。例えば、参照画像内の図形パターンのエッジ位置から最も近い測定画像(2次電子画像)内の図形パターンのエッジ位置までの距離をエッジずれ量として算出する。
【0097】
以上により得られる参照画像内の図形パターンのエッジ位置は、一律サイジング量がリサイズによって加算されたことで移動している。よって、本来のエッジ位置ではない。また、測定画像内の図形パターンのエッジ位置は、電子光学系の影響等による誤差が含まれているかもしれない。しかし、参照画像内の図形パターンのエッジ位置とフレーム画像31内の図形パターンのエッジ位置とのずれ量は両エッジ間の相対的な値であるため、線幅と異なり一律補正を行っても結果は変わらない。よって、一律補正を実施する必要がない。一方、一律サイジング量の加算後の線幅依存の誤差は残っている。そこで、実施の形態1では、以下のように補正する。
【0098】
線幅依存補正工程(S152)として、線幅依存補正部74は、図形パターンの線幅が特定できる場合に、エッジずれ量を線幅のサイズに依存して予め設定された線幅依存補正量の1/2の値を用いて補正する。具体的には、線幅依存補正部74は、エッジずれ量が小さくなる方向に線幅依存補正量の1/2の値を加算する。線幅依存補正量が正の値であればエッジずれ量が小さくなる。線幅依存補正量が負の値であれば、エッジずれ量が大きくなる。線幅検査を行わない場合のように、そもそも図形パターンの線幅を特定していない場合、線幅が不明なため線幅依存補正量が決まらない。その場合には、線幅依存補正工程(S152)を省略する。
【0099】
位置ずれ判定工程(S160)として、位置ずれ判定部76(判定部)は、当該図形パターンの線幅が特定できる場合に線幅依存補正量の1/2の値を用いて補正された補正後のエッジずれ量(補正ずれ量)が判定閾値(第1の判定閾値)を超えるかどうかを判定する。補正後のエッジずれ量(補正ずれ量)が判定閾値(第1の判定閾値)を超える場合には欠陥と判定する。
【0100】
位置ずれ判定部76は、当該図形パターンの線幅が特定できない場合にエッジずれ量が判定閾値(第2の判定閾値)を超えるかどうかを判定する。エッジずれ量が判定閾値(第2の判定閾値)を超える場合には欠陥と判定する。図形パターンの線幅が特定できない場合の判定閾値(第2の判定閾値)は、図形パターンの線幅が特定できる場合の判定閾値(第1の判定閾値)よりも緩くすると好適である。判定結果は、磁気ディスク装置109、或いは/及びモニタ117に出力される、或いは/及び図示しない外部I/Fを介して外部に出力される。
【0101】
図16は、実施の形態1における実パターンのエッジと設計パターンのエッジとの一例を示す図である。図16(a)に示すように、線幅依存補正を実施しない場合、実パターンのエッジ位置と設計パターンのエッジ位置との間にずれが生じる。そのため、本来の欠陥箇所以外の箇所でも欠陥として検出され得る。そのため、疑似欠陥が発生し得る。これに対して、実施の形態1では、エッジ毎に、線幅依存補正量p(w)の1/2で実パターンのエッジ位置を補正しているので、図16(b)に示すように、実パターンのエッジ位置と設計パターンのエッジ位置との間の誤差が解消或いは低減されている。そのため、本来の欠陥箇所以外の箇所では欠陥が検出されない。そのため、疑似欠陥の発生を抑制或いは低減できる。
【0102】
以上のように、実施の形態1によれば、測定される画像と参照画像との線幅誤差を抑制できる。よって、疑似欠陥を低減できる。
【0103】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、補正量算出回路130、及びサイジング処理回路132は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0104】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0105】
また、2次電子画像の採取条件や基板101の材料(パターンを形成する膜種および下地膜の材料)が異なる場合、一律サイジング量と線幅依存補正量とを条件毎に求め、パラメータ化して使用すると好適である。
【0106】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0107】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
パターン検査装置及びパターン検査方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームで基板を照射して放出されるパターンの2次電子画像を用いて検査する検査装置、および方法に利用できる。
【符号の説明】
【0109】
10 1次電子ビーム
11 図形パターン
12,14 評価用設計パターン
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
40,42,45,48 記憶装置
44 一律サイジング量算出部
46 線幅依存補正量算出部
50,52 記憶装置
54,56 エッジ抽出部
58 位置合わせ部
60,62 線幅算出部
64,66 一律補正部
68 線幅依存補正部
70 比較部
72 エッジずれ量算出部
74 線幅依存補正部
76 位置ずれ判定部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 補正量算出回路
132 サイジング処理回路
142 駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205,206,207,224,226 電磁レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 ビームセパレーター
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16