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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20230807BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20230807BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230807BHJP
   A61F 13/551 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61F13/49 312Z
A61F13/49 315A
A61F13/496
A61F13/51
A61F13/551 100
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022099149
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2022-12-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島津 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 傑
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄大
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-67379(JP,A)
【文献】特開2018-94217(JP,A)
【文献】特開2010-200831(JP,A)
【文献】特開2020-199247(JP,A)
【文献】特開2020-108741(JP,A)
【文献】特開2004-261211(JP,A)
【文献】特開2016-67433(JP,A)
【文献】特開2020-54739(JP,A)
【文献】特表2021-511165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複する位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材と、
を有し、
前記左右方向において、伸長状態の前記胴回り部材と前記吸収性コアとが重なる領域で、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短く、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第2弾性部材は、一部が前記左右方向と交差した方向に配置されている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第2弾性部材は、前記吸収性コアよりも前記左右方向の外側の領域において、前記接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項3に記載のパンツ型吸収性物品であって、
一対の脚回り開口を有し、
前記第2弾性部材は、前記脚回り開口の輪郭に沿った領域において、前記接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材は、前記上下方向に間隔を空けて複数の前記第1弾性部材を有し、
前記上下方向に隣り合う2つの前記第1弾性部材の間に、前記第1弾性部材とは接触していない前記溶着部を有している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複する位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材と、
を有し、
前記左右方向において、伸長状態の前記胴回り部材と前記吸収性コアとが重なる領域で、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短く、
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられており、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、点在する複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられており、
前記第2弾性部材は、前記第1シートと前記第1シートよりも非肌側に積層された第3シートとの間に挟まれており、
前記上下方向において、前記第2シートと前記第3シートとが重複する部分を有する、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
請求項7に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記上下方向において、前記第1シートと前記第2シートとを接合している部分と、前記第2シートと前記第3シートとを接合している部分とが、少なくとも一部で重複している、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複する位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材と、
を有し、
前記左右方向において、伸長状態の前記胴回り部材と前記吸収性コアとが重なる領域で、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短く、
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられており、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、点在する複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられており、
複数の前記溶着部が前記上下方向に間隔を空けて並ぶ溶着部列を有し、
前記溶着部列の少なくとも一部が、前記左右方向において前記吸収性本体の外側端を跨いで配置されている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の上端部において、積層された前記第1シート及び前記第2シートが、共に前記上下方向の上側から下側に折り返された折り返し部を有する、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記折り返し部において、前記第1シートと前記第2シートとの少なくとも一部が、前記溶着部によって互いに接合されている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の非肌側面に配置されたテープ部材を有し、
前記上下方向及び前記左右方向において、前記第1シートと前記第2シートとを接合する前記溶着部の少なくとも一部と、前記テープ部材とが重複する部分を有する、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、
前記上下方向において前記第1弾性部材よりも下側に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材であって、前記左右方向の外側から内側且つ前記上下方向の上側から下側に湾曲した湾曲部を有する第2弾性部材と、
を有し、
前記左右方向において、前記胴回り部材の一方側の端と他方側の端との間の領域で、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短く、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第2弾性部材は、前記左右方向において少なくとも前記吸収性コアと重なる領域の一部に、他の領域よりも伸縮性が低い低伸縮領域を有しており、
前記低伸縮領域よりも前記左右方向の外側の領域において、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短い、
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
請求項13または14に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
請求項15に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、点在する複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴回り部材に、左右方向に伸縮性を有する弾性部材が複数設けられたパンツ型吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、外装シート12(胴回り部材に相当)を構成する外側層12Sと内側層12Hとの間に挟まれる弾性伸縮部材12Cの外面にホットメルト接着剤を塗布し、この接着剤及び弾性伸縮部材12Cを介して両層12S、12Hを接着するように構成したパンツ型おむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-61348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパンツ型おむつでは、複数の弾性伸縮部材12Cの各々が、均等に塗布されたホットメルト接着剤を用いて胴回り部材に取り付けられていた。すなわち、弾性部材が一様な取り付け手段によって胴回り部材に取り付けられていた。しかし、吸収性コアと厚さ方向に重複する部分において、取り付け手段の左右方向の長さが短いと、弾性部材が固定されている部分が短いため伸長しやすくなり、胴回り部材を引っ張ったときに吸収性コアを引き上げ難くなったり、吸収性コアを身体に密着させ難くなったりして、装着性が悪化しやすくなるおそれがある。一方、吸収性コアと厚さ方向に重複しない部分において、取り付け手段の左右方向の長さが長いと、固定されている部分が長いため胴回り部材自体が硬くなってしまい、肌触りが悪化しやすくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、吸収性コアの装着性を高めつつ、肌触りが良好なパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、
前記上下方向において前記吸収性コアと重複する位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材と、
を有し、
前記左右方向において、伸長状態の前記胴回り部材と前記吸収性コアとが重なる領域で、
前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、
前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短く、
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、
前記第1シートと前記第2シートとは、複数の溶着部によって互いに接合されており、
前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性コアの装着性を高めつつ、肌触りが良好なパンツ型吸収性物品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】おむつ1の一構成例を示す概略斜視図である。
図2】展開かつ伸長状態のおむつ1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。
図3】、図2のA-A断面模式図である。
図4】吸収性本体10の平面図及び断面図である。
図5】胴回り部材20において、複数の溶着部50が形成される範囲について説明する図である。
図6】溶着部50の配置の一例について説明する図である。
図7図7A及び図7Bは、溶着部50によって胴回り弾性部材25が胴回り部材20に取り付けられる原理について説明する図である。
図8】回り部材20において、脚回り弾性部材27を取り付けるための接着部70が形成される範囲について説明する図である。
図9】伸長状態のおむつ1の後側の状態について説明する平面図である。
図10】変形例のおむつ2の展開かつ伸長状態における概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(態様1)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、前記上下方向において前記吸収性コアと重複する位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材と、を有し、前記左右方向において、伸長状態の前記胴回り部材と前記吸収性コアとが重なる領域で、前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短い、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0011】
態様1のパンツ型吸収性物品によれば、第2弾性部材の取り付け手段の長さが相対的に長くなり、過度に伸長し難くなるため、着用動作時に胴回り部材を上方へ引っ張り上げる力が吸収性コアに作用しやすくなる。したがって、吸収性コアを着用者の股間部にフィットさせやすくすることができる。また、第1弾性部材の取り付け手段の長さが相対的に短くなるため、胴回り部材の剛性が過度に高くなることが抑制される。これらにより、吸収性コアの装着性を高めつつ、良好な肌触りを実現しやすくすることができる
【0012】
(態様2)
前記第2弾性部材は、一部が前記左右方向と交差した方向に配置されている、態様1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0013】
態様2のパンツ型吸収性物品によれば、第2弾性部材によって作用する応力が、上下方向に沿った成分を含むことにより、着用動作時に、胴回り部材が上側に引っ張られると、第2弾性部材の収縮力によって吸収性コアが上方に引っ張られやすくなる。これにより、吸収性コアが引き上げられやすくなり、装着性をより向上させることができる。
【0014】
(態様3)
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、態様1または態様2に記載のパンツ型吸収性物品。
【0015】
態様3のパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材と第2弾性部材との一体性が高くなるため、着用動作時に、第2弾性部材と胴回り部材とが連動して、吸収性コアをより引き上げやすくすることができる。また、接着剤を用いた取り付け手段によって、第2弾性部材を所望の経路に沿って固定することが可能となるため、設計の自由度が高まり、左右方向と交差する部分を含む場合であっても、胴回り部材に対して自在に伸縮性を付与することができる。
【0016】
(態様4)
前記第2弾性部材は、前記吸収性コアよりも前記左右方向の外側の領域において、前記接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、態様1~3の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0017】
態様4のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアよりも左右方向の外側において、第2弾性部材と胴回り部材との一体性が高められていることにより、胴回り部材を左右方向に引っ張りながら引き上げる際の力を、吸収性コアに作用させやすくなる。したがって第2弾性部材を介して吸収性コアに力を効率的に作用させやすく、吸収性コアをより引きあげやすくすることができる。
【0018】
(態様5)
一対の脚回り開口を有し、前記第2弾性部材は、前記脚回り開口の輪郭に沿った領域において、前記接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、態様1~4の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0019】
態様5のパンツ型吸収性物品によれば、脚回り開口の輪郭に沿って第2弾性部材が胴回り部材と一体的に設けられているため、着用動作時に、胴回り部材を引っ張り上げる力を脚回り開口にも作用させやすくなり、脚回り開口が着用者の脚に引っかかってしまうことを抑制することができる。これにより、胴回り部材及び吸収性コアをより引き上げやすくすることができる。
【0020】
(態様6)
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、前記第1シートと前記第2シートとは、点在する複数の溶着部によって互いに接合されており、前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、態様1~5の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0021】
態様6のパンツ型吸収性物品によれば、第1シートと第2シートとを接合する溶着部が分散して形成され、当該溶着部によって第1弾性部材を取り付けることができるため、胴回り部材の柔軟性や伸縮性が維持されやすい。また、第1シート及び第2シートが溶着部によって接合されるため、胴回り部材の接合強度が確保されやすく、着用動作時に胴回り部材が引っ張り上げられたとしても、胴回り部材が破れたり、シート同士が剥がれたりし難くなる。
【0022】
(態様7)
前記胴回り部材は、前記上下方向に間隔を空けて複数の前記第1弾性部材を有し、前記上下方向に隣り合う2つの前記第1弾性部材の間に、前記第1弾性部材とは接触していない前記溶着部を有している、態様6に記載のパンツ型吸収性物品。
【0023】
態様7のパンツ型吸収性物品によれば、第1弾性部材の取り付けに寄与していない部分にも溶着部が設けられることにより、胴回り部材を構成している第1シートと第2シートとの接合強度がより高まる。したがって、着用動作時に胴回り部材が引っ張られたとしても、胴回り部材が破れてしまうこと等をより抑制しやすくすることができる。
【0024】
(態様8)
前記第2弾性部材は、前記第1シートと前記第1シートよりも非肌側に積層された第3シートとの間に挟まれており、前記上下方向において、前記第2シートと前記第3シートとが重複する部分を有する、態様6または態様7に記載のパンツ型吸収性物品。
【0025】
態様8のパンツ型吸収性物品によれば、第2シートと第3シートとが重複する部分では、厚さ方向に少なくとも3層のシート部材(第1~第3シート)が積層されることとなり、胴回り部材の他の部分と比較して強度が高くなる。これにより、着用動作時に胴回り部材が引っ張り上げられた際に、胴回り部材が破れること等を抑制しやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記上下方向において、前記上下方向において、前記第1シートと前記第2シートとを接合している部分と、前記第2シートと前記第3シートとを接合している部分とが、少なくとも一部で重複している、態様6~8の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0027】
態様9のパンツ型吸収性物品によれば、第1~第3シートが一体化しやすく、それらが重複している部分の強度をより高くすることができる。したがって、胴回り部材をより破れ難くすることができる。
【0028】
(態様10)
複数の前記溶着部が前記上下方向に間隔を空けて並ぶ溶着部列を有し、前記溶着部列の少なくとも一部が、前記左右方向において前記吸収性本体の外側端を跨いで配置されている、態様6~9の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0029】
態様10のパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材のうち、吸収性本体との境界部分(吸収性本体の両側端と重複する部分)の強度が高められる。したがって、応力が集中しやすい境界部において胴回り部材の強度が補強され、胴回り部材の耐久性を高めることができる。
【0030】
(態様11)
前記胴回り部材の上端部において、積層された前記第1シート及び前記第2シートが、共に前記上下方向の上側から下側に折り返された折り返し部を有する、態様6~10の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0031】
態様11のパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材を厚さ方向に見たときに、上端部に4層のシート部材が積層されている部分が形成される。そのため、胴回り部材の上端部における強度が局所的に高まり、当該上端部を掴んで引っ張り上げる際に、胴回り部材が破れたり過度に伸長したりすることを抑制しやすくなる。
【0032】
(態様12)
前記折り返し部において、前記第1シートと前記第2シートとの少なくとも一部が、前記溶着部によって互いに接合されている、態様11に記載のパンツ型吸収性物品。
【0033】
態様12のパンツ型吸収性物品によれば、折り返し部において、第1シートと第2シートとが一体化されやすくなり、強度がより高まる。これにより、胴回り部材が引っ張られた際に、2枚のシート部材が剥がれたり、1枚だけ破れてしまったりすることが抑制され、装着性をより高めることができる。
【0034】
(態様13)
前記胴回り部材の非肌側面に配置されたテープ部材を有し、前記上下方向及び前記左右方向において、前記第1シートと前記第2シートとを接合する前記溶着部の少なくとも一部と、前記テープ部材とが重複する部分を有する、態様6~12の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0035】
態様13のパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材を厚さ方向に見たときに、テープ部材と溶着部とが重複している部分では、重複していない部分と比較して、胴回り部材の剛性が高くなる。これにより、着用動作時に、胴回り部材が引っ張られた際に胴回り部材が過度に伸長したり破れたりすることが抑制され、装着性を高めることができる。
【0036】
(態様14)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材の前記前後方向の少なくとも一方側に、前記上下方向において前記吸収性コアと重複しない位置に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第1弾性部材と、前記上下方向において前記第1弾性部材よりも下側に配置され、前記左右方向に伸縮可能な第2弾性部材であって、前記左右方向の外側から内側且つ前記上下方向の上側から下側湾曲した湾曲部を有する第2弾性部材と、を有し、前記左右方向において、前記胴回り部材の一方側の端と他方側の端との間の領域で、前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短い、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0037】
態様14のパンツ型吸収性物品によれば、第2弾性部材の取り付け手段の長さが相対的に長くなり、過度に伸長し難くなるため、着用動作時に胴回り部材を上方へ引っ張り上げる力が吸収性コアに作用しやすくなる。したがって、吸収性コアを着用者の股間部にフィットさせやすくすることができる。また、第1弾性部材の取り付け手段の長さが相対的に短くなるため、胴回り部材の剛性が過度に高くなることが抑制される。これらにより、吸収性コアの装着性を高めつつ、良好な肌触りを実現しやすくすることができる
【0038】
(態様15)
前記第2弾性部材は、前記左右方向において少なくとも前記吸収性コアと重なる領域の一部に、他の領域よりも伸縮性が低い低伸縮領域を有しており、前記低伸縮領域よりも前記左右方向の外側の領域において、前記第1弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さは、前記第2弾性部材を前記胴回り部材に取り付けるための取り付け手段の合計の長さよりも短い、態様14に記載のパンツ型吸収性物品。
【0039】
態様15のパンツ型吸収性物品によれば、吸収性コアの左右方向両側において、湾曲部がしっかりと胴回り部材に固定されやすくなり、上下方向(左右方向と交差する方向)へ力が伝達しやすくなる。したがって、胴回り部材を上方へ引っ張り上げる際に、胴回り部材を引っ張る力がより吸収性コアに作用しやすくなり、吸収性コア11の装着性をより高めることができる。
【0040】
(態様16)
前記第2弾性部材は、接着剤を用いた前記取り付け手段によって前記胴回り部材に取り付けられている、態様14または15に記載のパンツ型吸収性物品。
【0041】
態様16のパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材と第2弾性部材との一体性が高くなるため、着用動作時に、第2弾性部材と胴回り部材とが連動して、吸収性コアをより引き上げやすくすることができる。また、接着剤を用いた取り付け手段によって、第2弾性部材を所望の経路に沿って固定することが可能となるため、設計の自由度が高まり、左右方向と交差する湾曲部を有する場合であっても、胴回り部材に対して自在に伸縮性を付与することができる。
【0042】
(態様17)
前記胴回り部材は、第1シートと、前記第1シートよりも非肌側に積層された第2シートとを有し、前記第1シートと前記第2シートとは、点在する複数の溶着部によって互いに接合されており、前記第1弾性部材は、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記胴回り部材に取り付けられている、態様14~16の何れかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0043】
態様17のパンツ型吸収性物品によれば、第1シートと第2シートとを接合する溶着部が分散して形成され、当該溶着部によって第1弾性部材を取り付けることができるため、胴回り部材の柔軟性や伸縮性が維持されやすい。また、第1シート及び第2シートが溶着部によって接合されるため、胴回り部材の接合強度が確保されやすく、着用動作時に胴回り部材が引っ張り上げられたとしても、胴回り部材が破れたり、シート同士が剥がれたりし難くなる。
【0044】
===実施形態===
本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品の一例として、パンツ型おむつ1(以下では、単に「おむつ1」とも呼ぶ)について説明する。なお、パンツ型吸収性物品には、ショーツ型ナプキンやパンツ型吸収パッド等も含まれる。
【0045】
<おむつ1の基本的構造>
図1は、本実施形態に係るおむつ1の一構成例を示す概略斜視図である。図2は、展開かつ伸長状態のおむつ1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。図3は、図2のA-A断面模式図である。
【0046】
なお、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1が備える各弾性部材(例えば、後述する胴回り弾性部材25や、脚回り弾性部材27等)を伸長させることにより、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や胴回り部材20等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。一方、伸長状態に対して図1の様な状態を自然状態とする。「自然状態」とは、おむつ1を所定時間放置したときの状態である。例えば、おむつ1の胴回り部材20を左右方向の両外側に引っ張って「伸長状態」として、この伸長状態を15秒間継続させた後、おむつ1の引っ張りを解除して机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態とする。
【0047】
おむつ1は、図1に示すパンツ型状態において、互いに直交する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有している。また、図3に示すように、各部材が積層された方向である「厚さ方向」を有している。上下方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態で着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下側となる方を「下側」とする。また、前後方向のうち、着用状態で着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。また、厚さ方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態で着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0048】
また、おむつ1は、図2に示される展開状態において、互いに直交する「縦方向」と「横方向」とを有している。「縦方向」は、パンツ型における上下方向に沿った方向であり、「横方向」は、パンツ型における左右方向に沿った方向である。
【0049】
本実施形態のおむつ1は、尿等の液体を吸収する液吸収性の吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に接合され、おむつ1の着用時には着用者の胴回りに配置される胴回り部材20と、を備えている。
【0050】
(吸収性本体10)
図4は、吸収性本体10の平面図及び断面図である。本実施形態の吸収性本体10は、図2に示すように、縦方向(すなわち吸収性本体10の長辺方向)がおむつ1の上下方向に沿った平面視略長方形状である。そして、図3及び図4に示すように、吸収性本体10は、縦方向(上下方向)に沿った吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に配置されたバックシート13と、吸収性コア11の横方向(左右方向)の両側部に配置された一対のサイドシート15,15とを有している。
【0051】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば、高吸収性ポリマー(SAP)を含むパルプ等の液体吸収性繊維が所定の形状に成形されたものを例示できる。本実施形態の吸収性コア11は、図4に示されるように、縦方向の中央部分が左右方向の内側に括れた略砂時計状となるように成形されているが、吸収性コア11の形状はこの限りではない。また、吸収性コア11の外周面が、ティッシュペーパー等の液透過性のシート部材(コアラップシート11b)によって、覆われていても良い。
【0052】
トップシート12は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。図4の断面図では、トップシート12の左右方向両端部が吸収性コア11よりも非肌側に折り込まれるように配置され、トップシート12が吸収性コア11を肌側から包み込むような構成となっている。また、トップシート12と吸収性コア11との間に、不図示のセカンドシート等が設けられていても良い。
【0053】
バックシート13は、吸収性コア11に吸収された尿等の液体が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性且つ通気性のシート部材(通気性シート部材)であり、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等の液不透過性フィルムにより形成される。
【0054】
サイドシート15は、吸収性コア11の横方向の両側に配置されたシート部材であり、例えば、SMS(スパンボンド‐メルトブローン‐スパンボンド)不織布等の疎水性の不織布が用いられる。サイドシート15の上下方向(左右方向)の一端側は、吸収性コア11及びバックシート13よりも非肌側に位置するように折り曲げられている。一方、サイドシート15の上下方向(左右方向)の他端側は、吸収性コア11及びトップシート12よりも肌側に位置するように折り曲げられ、吸収性本体10の両側部において一対の防漏壁部30,30を形成する。
【0055】
防漏壁部30は、吸収性本体10の横方向(左右方向)の両側に一対設けられ、所謂立体ギャザーに相当する部位である。おむつ1の着用時には、該防漏壁部30が、吸収性本体10の左右方向の両側部において着用者の肌側に起立することによって、尿等の排泄液が着用者の肌を伝って吸収性本体10の左右方向の外側に漏出することを抑制する。なお、防漏壁部30がそれぞれ2枚以上のシート部材(サイドシート15)によって構成されていても良い。
【0056】
図4の断面図に示されるように、サイドシート15のうち、厚さ方向の肌側に折り曲げられた部分の端部15tでは、サイドシート15が複数回折り返されることによって厚さ方向に積層された状態となっており、積層されたサイドシート15の間には防漏壁弾性部材35が縦方向に沿って伸長した状態で設けられている。おむつ1の着用時には、該防漏壁弾性部材35が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部30の端部15tが縦方向(上下方向)に収縮することで、吸収性本体10が着用者の脚繰りに沿ってフィットしやすくなる。
【0057】
(胴回り部材20)
胴回り部材20は、吸収性本体10の非肌側に配置されたシート部材であり、肌側シート21と、非肌側シート22,23と、カバーシート24と、を有する。また、図2に示すように、胴回り部材20のうち、縦方向において、中央位置CLよりも前側(図1における前後方向の前側)に形成されるサイド接合部40(後述)と重複する部分を「前側胴回り部FA」とする。同様に、胴回り部材20のうち、縦方向において、中央位置CLよりも後側(図1における前後方向の後側)に形成されるサイド接合部40と重複する部分を「後側胴回り部BA」とする。そして、縦方向において、前側胴回り部FAの後側端と後側胴回り部BAの前側端との間の部分を「股下部CA」とする。
【0058】
肌側シート21は、胴回り部材20の肌側に配置されるシート部材であり、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等により形成される。図2に示すように、肌側シート21は、縦方向の前側(腹側)から後側(背側)に亘って連続的しており、股下部CAにおいて左右方向の内側に向かって括れた形状を有している。この括れ部分が、パンツ型形状のおむつ1における脚回り開口1b(後述)となる。
【0059】
非肌側シート22は、縦方向の前側(腹側)において肌側シート21の非肌側に積層されたシート部材であり、肌側シート21と同様にスパンボンド不織布やSMS不織布等により形成される。肌側シート21と非肌側シート22とは、厚さ方向に積層された状態で、後述する複数の溶着部50,50…によって互いに接合されている。また、肌側シート21と非肌側シート22との間には、複数の胴回り弾性部材25,25…が設けられている。複数の胴回り弾性部材25,25…は、縦方向(上下方向)に間隔を空けて並んで配置されるとともに、それぞれ横方向(左右方向)に伸長した状態で肌側シート21と非肌側シート22と間に取り付けられている。これにより、胴回り弾性部材25は横方向(左右方向)に沿った伸縮性を発現し、当該伸縮性によって、胴回り部材20の前側胴回り部FAに伸縮性が付与される。
【0060】
胴回り弾性部材25は、一例として、糸ゴム状に成型した熱可塑性弾性樹脂を主成分とする弾性樹脂材料によって構成することができる。上記熱可塑性弾性樹脂としては、例えば、室温でゴム弾性を示す熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、JIS K 6418:2007に記載される熱可塑性エラストマーが挙げられる。上記熱可塑性弾性樹脂は、弾性変形する温度領域が、約100℃以下のものが好ましい。上記熱可塑性弾性樹脂としては、例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社のVERSIFY(商標))、プロピレン系エラストマー(例えば、エクソンモービル社のVistamaxx(商標))、スチレン系エラストマー(例えば、日本ゼオン株式会社のQuintac(商標))等が挙げられる。
【0061】
非肌側シート23は、縦方向の後側(背側)において、肌側シート21の非肌側に積層されたシート部材であり、非肌側シート22と同様の構成を有している。すなわち、非肌側シート23は、複数の溶着部50,50…によって肌側シート21と接合され、肌側シート21と非肌側シート23との間には、複数の胴回り弾性部材25,25…が横方向(左右方向)に沿って伸縮可能に設けられている。
【0062】
カバーシート24は、縦方向の後側(背側)において、非肌側シート23と同様に、肌側シート21の非肌側に積層されたシート部材である。おむつ1では、図3に示されるように、非肌側シート23よりも上下方向の下側(縦方向の前側)に位置し、一部が非肌側シート23と重複して配置されている。以下では、上下方向(縦方向)において、カバーシート24と非肌側シート23とが重複している部分を「背側重複部LB」とも呼ぶ。
【0063】
カバーシート24は、ホットメルト接着剤等の接着剤からなる接着面75を介して肌側シート21及び非肌側シート23の一部と接合されている。そして、カバーシート24と肌側シート21との厚さ方向の間には、糸ゴム等からなる脚回り弾性部材27が設けられている(図3参照)。脚回り弾性部材27は、横方向(左右方向)の中央部において、吸収性本体10(吸収性コア11)と重複する部分が横方向に沿って直線的に配置された直線部27aと、横方向の両側部において、脚回り開口1bの輪郭に沿って湾曲して配置された湾曲部27bとを有している。脚回り弾性部材27が発現する伸縮性によって、おむつ1の着用時の背側において、脚回り開口1bが着用者の脚繰りに沿ってフィットしやすくなると共に、胴回り部材20のうち着用者の臀部を覆う部分が捲れにくくなる。
【0064】
また、胴回り部材20は、上下方向の上端部において肌側シート21及び非肌側シート22,23の一部が下側に折り返されている。図3において、肌側シート21及び非肌側シート22は、胴回り部材20の前側上端部に位置する前側折り曲げ位置FL20fにて上下方向の下側且つ厚さ方向の肌側に折り返された部分である前側折り返し部20Ffを形成している。前側折り返し部20Ffは、ホットメルト接着剤等の接着剤によって厚さ方向に隣接するシート部材(図3では肌側シート21及び吸収性本体10のトップシート12)の少なくとも一部と互いに接合されている。
【0065】
同様に、図3において、肌側シート21及び非肌側シート23は、胴回り部材20の後側上端部に位置する後側折り曲げ位置FL20bにて上下方向の下側(縦方向の前側)且つ厚さ方向の肌側に折り返された部分である後側折り返し部20Fbを形成している。後側折り返し部20Fbは、ホットメルト接着剤等の接着剤によって厚さ方向に隣接するシート部材(図3では肌側シート21及び吸収性本体10のトップシート12)と少なくとも一部が互いに接合されている。
【0066】
なお、おむつ1において、肌側シート21及び非肌側シート22の何れか一方のシート部材のみが前側折り曲げ位置FL20fにて折り返されることによって前側折り返し部20Ffが形成されるのであっても良い。同様に、肌側シート21及び非肌側シート23の何れか一方のシート部材のみが後側折り曲げ位置FL20bにて折り返されることによって後側折り返し部20Fbが形成されるのであっても良い。すなわち、折り返し部20Ff,20Fbがそれぞれ一枚のシート部材によって形成されるのであっても良い。
【0067】
また、折り返し部20Ff,20Fbよりも肌側に、別体のシート部材が設けられていても良い。例えば、折り返し部20Ff,20Fbの上下方向の下端エッジの肌側から上下方向に跨ぐようにシート部材を配置することで(図3では不図示)、おむつ1の着用時に折り返し部20Ff,20Fbの下端エッジが着用者の肌に食い込むことを抑制するようにしても良い。
【0068】
おむつ1は、図2に示す展開状態から、縦方向における中央位置CL(図2において一点鎖線で示す)を折り位置として、吸収性本体10及び胴回り部材20が縦方向に二つ折りされる。当該二つ折りの状態において、胴回り部材20のうち前後方向に重なり合った前側胴回り部FAの横方向両側部20fe,20feと、後側胴回り部BAの横方向両側部20be,20beとがシール溶接等の公知の接合手段を用いて接合され、一対のサイド接合部40,40が形成される。これにより、二つ折りされた胴回り部材20が前側(腹側)と後側(背側)とで環状につながって、図1に示すような胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成され、パンツ型のおむつ1となる。
【0069】
<胴回り弾性部材25及び脚回り弾性部材27の取り付けについて>
胴回り弾性部材25及び脚回り弾性部材27を胴回り部材20に取り付ける際の、具体的方法について説明する。先ず、胴回り弾性部材25の取り付け方法について説明する。図5は、胴回り部材20において、複数の溶着部50が形成される範囲について説明する図である。図6は、溶着部50の配置の一例について説明する図である。図7A及び図7Bは、溶着部50によって胴回り弾性部材25が胴回り部材20に取り付けられる原理について説明する図である。
【0070】
おむつ1の胴回り部材20において、肌側シート21と非肌側シート22,23とは、例えば、公知の超音波溶着等の溶着手段を用いて形成される複数の溶着部50,50…によって接合される。図5では、おむつ1の製造過程において、肌側シート21(第1シートに相当)の非肌側に非肌側シート22,23(第2シートに相当)を接合する際に、溶着部50が形成される領域を斜線部で示している。なお、肌側シート21と非肌側シート22,23とを接合する段階では、まだ脚回り開口1bは形成されていない(シート部材がカッティングされていない)。また、図5では、吸収性本体10(吸収性コア11)の位置が点線で示されているが、溶着部50を形成する段階では、まだ胴回り部材20に対して吸収性本体10は接合されていない。
【0071】
図5に示されるように、肌側シート21と非肌側に非肌側シート22,23とは、それぞれ前側折り曲げ位置FL20f及び後側折り曲げ位置FL20bにて折り曲げられる前の伸長状態において、厚さ方向に重複している部分が接合される。すなわち、折り曲げ位置FL20f,FL20bを前後に跨ぐ範囲に溶着部50が形成される。そして、図5の斜線部で示される範囲において、厚さ方向に対向する肌側シート21(第1シート)と非肌側シート22,23(第2シート)との間に、左右方向に沿って伸縮可能な胴回り弾性部材25,25…が上下方向(縦方向)に間隔を空けて複数並んで介挿されつつ、溶着部50,50…に基づいて取り付けられる。
【0072】
本実施形態の胴回り部材20では、図6に示されるように、複数の溶着部50,50…が上下方向(縦方向)に間隔を空けて並ぶことにより、上下方向に沿った溶着部列60が形成され、左右方向(横方向)に間隔を空けて複数の溶着部列60が設けられている。なお、図6では、説明の簡略化のため、胴回り弾性部材25及び溶着部50の配置や数量を模式的に表している。各々の溶着部列60は、左右方向の一方側若しくは他方側に凸となった凸部60Pを有するように配置されている。すなわち、溶着部列60に含まれる複数の溶着部50の左右方向における位置がそれぞれ異なることにより、溶着部列60は、全体として凹凸を有するように形成される。図6の例では、溶着部列60は上下方向に上側から下側に向かって左右に蛇行するように形成されている。但し、各々の溶着部50の配置は図6の例に限られるものではなく、溶着部列60が左右方向の一方側にのみ凸部60Pを有しているような構成であっても良い。また、溶着部列60が左右方向に凹凸を有さず、上下方向に沿って真っすぐに配置されるのであっても良い。
【0073】
この溶着部列60に含まれる複数の溶着部50,50…のうち、上下方向に隣り合う2つの溶着部50,50によって胴回り弾性部材25が上下に挟み込まれることにより、胴回り弾性部材25が胴回り部材20に取り付けられる。すなわち、胴回り弾性部材25の上下方向の両側に並ぶ一対の溶着部50,50同士が、溶着部対50sをなし、該溶着部対50sによって胴回り弾性部材25が取り付けられている。
【0074】
図7Aに示すように、溶着部対50sをなす一対の溶着部50,50は、上下方向に間隔GH50を空けて並んでいる。そして、間隔GH50大きさは、目標の伸長倍率まで左右方向に伸長した状態での糸ゴム等の胴回り弾性部材25の外径D25tと同寸又はそれよりも若干大きい寸法に設定されている(GH50≧D25t)。つまり、伸長状態の胴回り弾性部材25は、溶着部対50sの上下方向の間に配置される。このような構成であれば、おむつ1の製造工程において、肌側シート21及び非肌側シート22(23)の間に伸長した状態の胴回り弾性部材25を配置した後、肌側シート21と非肌側シート22(23)とを接合する際に、胴回り弾性部材25と重複させること無く溶着部50を形成することができる。ここで、「伸長倍率」とは、胴回り弾性部材25の全長L1を、自然長たる無負荷状態の全長L0の何倍まで伸ばしているかを示す値R(=L1/L0)のことである。
【0075】
そして、胴回り弾性部材25が伸長状態から緩和されると、図7Bに示すように、胴回り弾性部材25は左右方向に収縮しつつ上下方向に拡大し、拡大した後の外径D25t´は溶着部対50sの上下方向の間隔GH50よりも大きくなる(D25t´>GH50)。したがって、溶着部対50sの間では胴回り弾性部材25の上下方向の拡大が規制され、これにより、溶着部50,50同士で、胴回り弾性部材25は実質的に上下方向に挟圧された状態となる。その結果、溶着部対50sによって、胴回り弾性部材25の上下方向及び左右方向の位置が規制され、胴回り弾性部材25が胴回り部材20に伸縮可能に取り付けられ、胴回り部材20に左右方向の伸縮性が付与される。
【0076】
なお、パンツ型状態のおむつ1では、胴回り部材20の左右方向の両端部においてサイド接合部40によって胴回り弾性部材25が接合されているため、おむつ1の着用時において胴回り部材20が左右方向に伸長されたとしても、胴回り弾性部材25が胴回り部材20から外れてしまうことは無い。
【0077】
次に、脚回り弾性部材27の取り付け方法について説明する。図8は、胴回り部材20において、脚回り弾性部材27を取り付けるための接着部70が形成される範囲について説明する図である。同図8は、おむつ1の製造過程において、肌側シート21と非肌側シート22(23)とが溶着部50によって接合された後(図5参照)の状態を示している。
【0078】
接着部70は、肌側シート21の非肌側面の所定の領域に、ホットメルト接着剤等の接着剤を塗布することによって形成される。図8では、脚回り弾性部材27が配置される領域に沿って、斜線部で示される複数の矩形状の領域に接着剤が塗布されることにより、接着部70が形成されている。接着部70が形成された肌側シート21に、図8のように縦方向(上下方向)及び横方向(左右方向)に伸長させた状態の脚回り弾性部材27を配置し、さらにその非肌側からカバーシート24(第3シートに相当)を被せて挟み込むことにより、脚回り弾性部材27が胴回り部材20に取り付けられる。
【0079】
なお、カバーシート24の肌側面には、予め接着剤が塗布されることによって接着面75が形成されており(図3参照)、肌側シート21(及び非肌側シート23の一部)とカバーシート24との対向する面同士が接着面75を介してしっかりと接着される。
【0080】
また、カバーシート24側に接着部70を形成して脚回り弾性部材27を取り付けた後に、脚回り弾性部材27が取り付けられたカバーシート24を肌側シート21の非肌側面に接合するようにしても良い。
【0081】
脚回り弾性部材27のほぼ全域が接着部70によって固定されることにより、脚回り弾性部材27のうち直線部27aや湾曲部27bの形状を維持しつつ、脚回り開口1bの輪郭に沿って伸縮性を発現させやすくすることができる。
【0082】
<胴回り弾性部材25及び脚回り弾性部材27による効果>
従来のパンツ型おむつでは、複数の弾性部材の各々が一様な取り付け手段を用いて胴回り部材に取り付けられていた。例えば、おむつ1と同様に胴回り弾性部材25及び脚回り弾性部材27を有する従来のパンツ型おむつでは、接着剤等を用いた一様な接着パターン(取り付け手段)によって弾性部材25,27が胴回り部材に取り付けられることが一般的であった。この場合、弾性部材25,27が取り付けられている部分の長さによっては、おむつの装着性等に問題が生じるおそれがある。
【0083】
例えば、厚さ方向に見たときに吸収性コアと重複していない領域に配置されている弾性部材の取り付け部分の左右方向長さが長いと、当該弾性部材が取り付けられている領域において胴回り部材が硬くなり、着用時の肌触りを悪化させるおそれがある。一方、厚さ方向に見たときに吸収性コアと重複する領域に配置されている弾性部材の取り付け部分の左右方向長さが短いと、おむつ1の着用時に胴回り部材を着用者のつま先側から股下側へ引っ張り上げた際に、弾性部材が伸長しやすくなることにより、引っ張り力が吸収性コアへ作用し難くなる場合がある。この場合、吸収性コアが引き上げにくくなったり股間部にフィットし難くなったりして、装着性が悪化するおそれがある。
【0084】
これに対して、本実施形態のおむつ1では、図5図8で説明したように、胴回り弾性部材25及び脚回り弾性部材27がそれぞれ異なる取り付け手段(溶着部50、接着部70)を用いて胴回り部材20に取り付けられている。これにより、おむつ1の着用時における装着性や肌触りを良好なものとすることができる。
【0085】
図9は、伸長状態のおむつ1の後側の状態について説明する平面図である。おむつ1の前後方向における後側(図2の縦方向において中央位置CLよりも後側)の領域で、上下方向(縦方向)において吸収性コア11と重複しない領域に配置されている弾性部材のうち、或る1本の弾性部材を第1弾性部材E1と定義する。図9では、吸収性コア11と重複していない胴回り弾性部材25のうち、太破線で示されたものを第1弾性部材E1とする。また、上下方向(縦方向)において吸収性コア11と重複する領域に配置されている弾性部材のうちの或る1本の弾性部材を第2弾性部材E2と定義する。図9では、吸収性コア11と重複する脚回り弾性部材27のうち、太破線で示されたものを第2弾性部材E2とする。
【0086】
本実施形態のおむつ1では、左右方向(横方向)において吸収性コア11と重複するW11の領域で、第1弾性部材E1を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(すなわち溶着部50)の左右方向における合計の長さは、吸収性コア11と重複するW11の領域で、第2弾性部材E2を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(すなわち接着部70)の左右方向における合計の長さよりも短くなっている。なお、「吸収性コア11と重複する領域」とは、左右方向において吸収性コア11の幅が最大となる範囲(図9においてはW11で示される範囲)のことを言う。
【0087】
具体的に、左右方向において吸収性コア11と重複するW11の領域で、第1弾性部材E1(胴回り弾性部材25)が左右方向に並ぶn個の溶着部対50sによって取り付けられており、各々の溶着部対50sの左右方向の長さをW50sとした場合(図7参照)、第1弾性部材E1を取り付けるための取り付け手段の左右方向における合計の長さは、「n×W50s」で表される。また、左右方向において吸収性コア11と重複するW11の領域で第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)が左右方向に連続する接着部70によって取り付けられており、該接着部70の左右方向の長さをW70とした場合(図8参照)、第2弾性部材E2を取り付けるための取り付け手段の左右方向における合計の長さは、「W70」で表される。そして、第1弾性部材E1の取り付け手段の合計の長さ(n×W50s)<第2弾性部材E2の取り付け手段の合計の長さ(W70)となる。
【0088】
第1弾性部材E1の取り付け手段の合計の長さ(n×W50s)<第2弾性部材E2の取り付け手段の合計の長さ(W70)である場合、第2弾性部材E2の取り付け手段(接着部70)の合計長さが相対的に長くなる。したがって、逆の場合と比較して、第2弾性部材E2が胴回り部材20にしっかりと固定されて過度に伸長し難くなり、おむつ1の着用動作時に胴回り部材20を上方へ引っ張り上げる際に、該胴回り部材20を引っ張る力が吸収性コア11に作用しやすくなる。つまり、胴回り部材20を引っ張る力が第2弾性部材E2を伸長させるために使われるよりも、吸収性コア11を引き上げるために使われやすくなる。これにより、吸収性コア11を着用者の股間部にフィットさせやすくすることができる。さらに、おむつ1の着用時には、第2弾性部材E2が発現する伸縮性によって剛性の高い吸収性コア11が着用者の肌側に押し付けられやすくなるため、吸収性コア11の位置ズレ等が生じ難く、身体への密着性を高めることができる。
【0089】
また、第1弾性部材E1の取り付け手段(溶着部50)の合計長さが相対的に短くなるため、逆の場合と比較して、胴回り部材20の剛性が過度に高くなることが抑制される。これにより、胴回り部材20の柔軟性が高まりフィット性が向上すると共に、着用時における肌触りをよりソフトなものとすることができる。特に、吸収性コア11と重複していない領域では、おむつ1の着用時において、胴回り部材20の肌側面が着用者の肌と直接接触するため、当該領域における柔軟性は肌触りに大きく影響する。
【0090】
これらのことにより、おむつ1の着用時において、吸収性コア11の装着性を高めつつ、良好な肌触りを実現しやすくすることができる。なお、図9において、胴回り弾性部材25の一部が、上下方向(縦方向)において吸収性コア11と重複する位置に配置されているような場合には、当該胴回り弾性部材25を第2弾性部材E2と定義しても良い。
【0091】
また、おむつ1の胴回り部材20において、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)は、一部が左右方向と交差する方向に配置されている。すなわち、脚回り弾性部材27は、湾曲部27bにおいて斜め方向に沿って配置されており、該脚回り弾性部材27によって作用する応力は、上下方向に沿った成分を含んでいる。したがって、おむつ1の着用動作時に、胴回り部材20が上下方向の上側に引っ張られると、脚回り弾性部材27の湾曲部27bにおいて発現する上下方向成分を含んだ収縮力によって吸収性コア11が上方に引っ張られやすくなる。これにより、吸収性コア11がより引き上げられやすくなり、装着性を向上させることができる。
【0092】
そして、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)は、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いた取り付け手段(接着部70)によって、第2弾性部材E2の長手方向の全体が胴回り部材20に取り付けられている。したがって、胴回り弾性部材25のように、点在する溶着部対50sを用いて上下方向及び左右方向の移動を規制することによって胴回り部材20に取り付けられる場合と比較して、胴回り部材20と脚回り弾性部材27との一体性がより高くなる。これにより、おむつ1の着用動作時に、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)と胴回り部材20とが連動して、吸収性コア11をより引き上げやすくすることができる。また、接着部70を用いることによって、脚回り弾性部材27を所望の経路に沿って固定することが可能となるため、設計の自由度が高まり、湾曲部27bのように左右方向と交差する部分を含む場合であっても、胴回り部材20に対して自在に伸縮性を付与しやすくすることができる。
【0093】
また、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)は、吸収性コア11よりも左右方向(横方向)の外側の領域において、上述した接着剤を用いた取り付け手段(接着部70)によって胴回り部材20に取り付けられている。おむつ1の着用時に、胴回り部材20を上引っ張り上げる際には、該胴回り部材20を左右方向の両側へ伸長させて脚を通しやすくする必要がある。このとき、吸収性コア11よりも左右方向の外側において、接着部70によって第2弾性部材E2と胴回り部材20との一体性が高められていることにより、胴回り部材20を左右方向に引っ張りながら引き上げる力が、吸収性コア11に作用しやすくなる。仮に、吸収性コア11よりも左右方向の外側で、第2弾性部材E2と胴回り部材20との一体性が低いと、胴回り部材20を左右方向に引っ張った際に、引っ張り力が第2弾性部材E2を伸長させるために作用しやすくなり、引っ張り力が吸収性コア11に作用し難くなるおそれがある。これに対して、本実施形態のおむつ1では、第2弾性部材E2を介して吸収性コア11に力を効率的に作用させやすく、吸収性コア11をより引きあげやすくすることができる。
【0094】
さらに、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)は、吸収性コア11よりも左右方向(横方向)の外側、且つ、一対の脚回り開口1b,1bの輪郭に沿った領域に、接着剤を用いた取り付け手段(接着部70)によって胴回り部材20に取り付けられている。おむつ1の着用動作時には、脚回り開口1bを着用者の脚に通してから胴回り部材20及び吸収性本体10を引っ張り上げる動作が行われるが、このとき、脚回り開口1bと着用者の脚との間に生じる摩擦力によって、胴回り部材20を引っ張り上げる動作を行い難くなる場合がある。これに対して、本実施形態では、脚回り開口1bの輪郭に沿って第2弾性部材E2が胴回り部材20と一体的に設けられているため、胴回り部材20を引っ張り上げる力を脚回り開口1bにも作用させやすくなる。したがって、摩擦力に抗して脚回り開口1bが着用者の脚に引っかかってしまうことを抑制することができる。これにより、胴回り部材20及び吸収性コア11をより引き上げやすくすることができる。
【0095】
また、胴回り部材20の前側胴回り部FA及び後側胴回り部BAでは、点在する複数の溶着部50,50…によって、肌側シート21(第1シート)と、非肌側シート22,23(第2シート)とが接合されている。そして、第1シートと第2シートとの厚さ方向の間には、一対の溶着部対50sによって胴回り弾性部材25(第1弾性部材E1)が上下に挟み込まれることによって取り付けられている。すなわち、第1シートと第2シートとを接合する溶着部50が分散して形成されつつ、胴回り弾性部材25を取り付けることができるため、接着部70によって固定される場合と比較して、胴回り部材20の柔軟性や伸縮性が維持されやすい。また、第1シート及び第2シートが広い範囲に亘って超音波溶着等の溶着手段を用いて接合されているため、胴回り部材20の接合強度が確保されやすく、おむつ1の着用動作時に胴回り部材20が引っ張り上げられたとしても、該胴回り部材20が破れたり、シート同士が剥がれたりすることが抑制される。これにより、胴回り部材20の柔軟性を維持しつつ強度を確保しやすくすることができる。
【0096】
また、胴回り弾性部材25(第1弾性部材E1)は、上下方向に間隔を空けて複数設けられているが、上下方向において隣り合う2つの胴回り弾性部材25,25の間には、該胴回り弾性部材25とは接触していない溶着部50が1以上設けられている(図6参照)。すなわち、第1弾性部材E1を上下に挟み込んで取り付ける機能を有しておらず、肌側シート21(第1シート)と、非肌側シート22,23(第2シート)とを接合するためだけの溶着部50が設けられている。このように、第1弾性部材E1の取り付けに寄与していない部分にも溶着部50が設けられることにより、胴回り部材20を構成している第1シートと第2シートとの接合強度がより高まる。したがって、おむつ1の着用動作時に胴回り部材20が引っ張られたとしても、胴回り部材20が破れてしまうこと等をより抑制しやすくすることができる。
【0097】
また、胴回り部材20の前後方向の後側では、肌側シート21(第1シート)との間に脚回り弾性部材27(第2弾性部材E2)を挟み込むようにして、カバーシート24(第3シート)が設けられている。そして、上下方向において、非肌側シート23(第2シート)とカバーシート24(第3シート)とは、互いに重複する背側重複部LBを有している(図3参照)。したがって、背側重複部LBでは、厚さ方向に少なくとも3層のシート部材(21,23,24)が積層されることとなり、胴回り部材20の他の部分と比較して強度が高くなっている。これにより、おむつ1の着用動作時に胴回り部材20が引っ張り上げられた際に、胴回り部材20が破れること等を抑制し易くすることができる。特に、胴回り部材20の後側は、前側と比較して面積が大きく、引っ張り上げる際に着用者の肌と接触して抵抗が大きくなりやすいため、背側重複部LBによって強度を高めることで、胴回り部材20が破れること等をより抑制しやすくすることができる。
【0098】
そして、胴回り部材20は、背側重複部LBにおいて、肌側シート21(第1シート)と非肌側シート23(第2シート)とカバーシート24(第3シート)とが互いに接合される部分を有している。図3では、肌側シート21(第1シート)と非肌側シート23(第2シート)とが溶着部50を介して接合されており、非肌側シート23(第2シート)とカバーシート24(第3シート)とが接着面75を介して接合されている。そして、上下方向において、溶着部50及び接着面75が少なくとも一部で重複している。これにより、第1~第3シートが一体化しやすく、背側重複部LBの強度をより高くすることができる。したがって、胴回り部材20が破れること等を抑制しやすくすることができる。
【0099】
また、複数の溶着部50,50…が上下方向に間隔を空けて並ぶことによって形成される溶着部列60の少なくとも一部が、左右方向において、吸収性本体10の端を跨ぐように配置されている。図6では、左右方向において、吸収性本体10の両側端10es,10esと重複する位置に、溶着部列60が配置されている。これにより、胴回り部材20のうち、吸収性本体10の両側端10es,10esと重複する部分の強度が高められる。吸収性本体10と胴回り部材20とは、ホットメルト接着剤等によって互いに接合されている。そのため、おむつ1の着用動作時に胴回り部材20を引っ張る際に、吸収性本体10との境界部分(すなわち、収性本体10の両側端10es,10es)に応力が集中して、胴回り部材20が破れやすくなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、当該境界部(両側端10es)を左右方向に跨ぐように溶着部列60が形成されていることにより、境界部における胴回り部材20の強度が補強され、胴回り部材20の耐久性を高めることができる。
【0100】
なお、溶着部列60は上下方向に沿って形成さていることから、吸収性本体10の上端部を上下方向に跨ぐように配置されている(図6参照)。したがって、吸収性本体10の上端と重複する部分においても胴回り部材20の強度が補強され、胴回り部材20の耐久性をより高めることができる。
【0101】
また、胴回り部材20の上端部には、肌側シート21(第1シート)と非肌側シート22,23(第2シート)とが積層された状態で上側から下側に折り返された折り返し部20Ff,20Fbが設けられている(図3等参照)。これにより、胴回り部材20を厚さ方向に見たときに、4層のシート部材が積層されている部分が形成される。おむつ1の着用動作時において、着用者等は、胴回り部材20の上端部を手で掴んで引っ張り上げる動作を行う場合が多い。そのため、胴回り部材20の上端部におけるシート部材の積層枚数を多くして、局所的に強度を高めることによって、当該上端部を掴んで引っ張り上げる際に、胴回り部材20が破れたり過度に伸長したりすることを抑制しやすくなる。
【0102】
そして、折り返し部20Ff,20Fbでは、積層された肌側シート21(第1シート)及び非肌側シート22,23(第2シート)の少なくとも一部が、溶着部50によって互いに接合されている(図3参照)。したがって、折り返し部20Ff,20Fbにおいて、第1シートと第2シートとが一体化されやすくなり、強度がより高まる。これにより、胴回り部材20が引っ張られた際に、2枚のシート部材が剥がれたり、1枚だけ破れてしまったりすることが抑制され、装着性をより高めることができる。
【0103】
<変形例>
本実施形態に係るおむつ1は、以下のように変形しても良い。図10は、変形例のおむつ2の展開かつ伸長状態における概略平面図である。変形例のおむつ2は、脚回り弾性部材27の構成の一部がおむつ1とは異なっている。それ以外の構成は、基本的におむつ1と同様である。
【0104】
おむつ2の脚回り弾性部材27は、左右方向における中央部で吸収性コア11と重複する部分の一部が、他の部分よりも伸縮性が低くなった低伸縮領域を有している。図10で、脚回り弾性部材27のうち、左右方向中央部の破線で表示されている部分が低伸縮領域E1であり、その両側の実線で表される高伸縮領域E2よりも伸縮性が低くなっている。低伸縮領域E1では、脚回り弾性部材27が複数個所で切断され、左右方向に非連続となっていることにより、伸縮性が低くなっている。なお、低伸縮領域E1において、接着部70(図8参照)を設けないようにして、該低伸縮領域E1中の或る1箇所で脚回り弾性部材27を切断し、切断された箇所から左右方向の両側に収縮させることで伸縮性を低くするのであっても良い(所謂、カットバック)。
【0105】
低伸縮領域E1では脚回り弾性部材27の伸縮性が弱められるため、吸収性コア11に作用する左右方向の収縮力が小さくなる。したがって、おむつ2の着用時に吸収性コア11の幅が狭くなってしまうことが抑制され、排泄物を漏れ難くすることができる。
【0106】
また、変形例のおむつ2では、胴回り部材20の左右方向の一端から他端までの間の領域で、第1弾性部材E1(胴回り弾性部材25)を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(溶着部50)の左右方向における合計の長さは、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(接着部70)の左右方向における合計の長さよりも短くなっている。
【0107】
これにより、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)の取り付け手段(接着部70)の合計長さが相対的に長くなり、特に、低伸縮領域EA1の両側の高伸縮領域EA2(湾曲部27bを含む)において、第2弾性部材E2が胴回り部材20にしっかりと固定されやすくなる。したがって、おむつ2の着用動作時に胴回り部材20を上方へ引っ張り上げる際に、胴回り部材20を引っ張る力が吸収性コア11に作用しやすくなる。このような構成により、おむつ2では、吸収性コア11の幅が狭くなることを抑制しつつ、吸収性コア11を着用者の股間部にフィットさせやすくすることができる。
【0108】
一方、第1弾性部材E1の取り付け手段(溶着部50)の合計長さが相対的に短くなるため、逆の場合と比較して、胴回り部材20の剛性が過度に高くなることが抑制される。これにより、胴回り部材20の柔軟性が高まりフィット性が向上すると共に、着用時における肌触りをよりソフトなものとすることができる。
【0109】
さらに、おむつ2では、胴回り部材20の左右方向の一端から他端までの間の領域で、第1弾性部材E1(胴回り弾性部材25)を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(溶着部50)の左右方向における合計の長さが、高伸縮領域E2において第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)を胴回り部材20に取り付けるための取り付け手段(接着部70)の左右方向における合計の長さよりも短くなっている。
【0110】
高伸縮領域EA2における第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)の取り付け手段(接着部70)の合計長さが相対的に長くなるため、湾曲部27bがしっかりと胴回り部材20に固定されやすくなる。そのため、高伸縮領域EA2の湾曲部27bを介して上下方向(左右方向と交差する方向)へ力がより伝達しやすくなる。これにより、おむつ2の着用動作時に胴回り部材20を上方へ引っ張り上げる際に、胴回り部材20を引っ張る力がより吸収性コア11に作用しやすくなる。したがって、吸収性コア11の装着性をより高めることができる。
【0111】
また、おむつ2でも、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)は、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いた取り付け手段(接着部70)によって、第2弾性部材E2の長手方向の全体が胴回り部材20に取り付けられている。したがって、胴回り部材20と脚回り弾性部材27との一体性がより高くなり、おむつ2の着用動作時に、第2弾性部材E2(脚回り弾性部材27)と胴回り部材20とが連動して、吸収性コア11をより引き上げやすくすることができる。
【0112】
また、第1弾性部材E1(胴回り弾性部材25)は、一対の溶着部対50sによって上下に挟み込まれることによって1シートと第2シートとの厚さ方向の間に取り付けられている。したがって接着部70によって固定される場合と比較して、胴回り部材20の柔軟性や伸縮性が維持されやすく、胴回り部材20の接合強度が確保されやすい。
【0113】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0114】
上述の実施形態では、パンツ型吸収性物品の一例として、胴回り部材20のうち、肌側シート21が縦方向の一方側(前側)から他方側(後側)まで連続して一体的に構成されおむつ1について説明されていたが(図3等参照)、肌側シート21が前側と後側とで別体として構成されていてもよい。例えば、前側外装部材(前側胴回り部)、後側外装部材(後側胴回り部)、及び、吸収性本体の3部品からなる所謂3ピースタイプのパンツ型吸収性物品であっても良い。
【0115】
おむつ1の胴回り部材20において、所定の位置に後処理テープ80が設けられていても良い。後処理テープ80は、上下方向(縦方向)に長い略矩形状のテープ状の部材(テープ部材)であり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材で形成される。おむつ1では、図2及び図3に示されるように、胴回り部材20の後側胴回り部BAの非肌側面(非肌側シート23の非肌側面)に設けられている。後処理テープ80の上下方向の一方側は胴回り部材20に固定され、上下方向の他方側に粘着部を有している。粘着部には粘着剤が塗布されており、おむつ1の使用前には、後処理テープ80の一部が、粘着部を内側にして折り畳まれており、粘着部が外部に露出しないようにして粘着面を保護している。
【0116】
使用後のおむつ1を廃棄する際には、吸収性本体10が内側になるように上下方向に丸めたおむつ1に対して、折り畳まれている後処理テープ80を伸ばしながら引っ張って粘着部を露出させ、該粘着部側をおむつ1に巻き回す。これにより、おむつ1を丸めた状態に保持することが可能となり、おむつ1の内部(吸収性本体10)に付着した排泄物等を外部に漏出させることなくおむつ1を廃棄することができる。
【0117】
おむつ1では、上下方向及び左右方向において、肌側シート21(第1シート)と非肌側シート23(第2シート)とを接合している溶着部50の少なくとも一部と、後処理テープ80とが重複する部分を有している(図3等参照)。したがって、胴回り部材20の後側胴回り部BAにおいて、厚さ方向に見たときに、後処理テープ80と溶着部50とが重複している部分では、重複していない部分と比較して、胴回り部材20の剛性が高くなる。これにより、おむつ1の着用動作時に、胴回り部材20が引っ張られた際に胴回り部材20が過度に伸長したり破れたりすることが抑制され、装着性を高めることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 おむつ(パンツ型吸収性物品)、
1a 胴回り開口、1b 脚回り開口、
2 おむつ(パンツ型吸収性物品)(変形例)、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、11b コアラップシート、
12 トップシート、13 バックシート、15 サイドシート、15t 端部、
20 胴回り部材、
20Ff 前側折り返し部、20Fb 後側折り返し部、
21 肌側シート、22 非肌側シート、23 非肌側シート、24 カバーシート、
25 胴回り弾性部材、
27 脚回り弾性部材、27a 直線部、27b 湾曲部、
30 防漏壁部、
35 防漏壁弾性部材、
40 サイド接合部、
50 溶着部、50s 溶着部対、
60 溶着部列、
70 接着部、75 接着面、
80 後処理テープ、
E1 第1弾性部材、E2 第2弾性部材、
CL 中央位置、
FA 前側胴回り部、BA 後側胴回り部、CA 股下部、
FL20f 前側折り曲げ位置、FL20b 後側折り曲げ位置、
LB 背側重複部
【要約】
【課題】吸収性コアの装着性を高めつつ、肌触りが良好なパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性コア(11)を備えた吸収性本体(10)と、胴回り部材(20)と、を有するパンツ型吸収性物品(1)であって、胴回り部材(20)の前後方向の少なくとも一方側に、上下方向において吸収性コア(11)と重複しない位置に配置され、左右方向に伸縮可能な第1弾性部材(E1,25)と、上下方向において吸収性コア(11)と重複する位置に配置され、左右方向に伸縮可能な第2弾性部材(E2,27)と、を有し、左右方向において、伸長状態の胴回り部材(20)と吸収性コア(11)とが重なる領域で、第1弾性部材(E1,25)を胴回り部材(20)に取り付けるための取り付け手段(50)の合計の長さは、第2弾性部材(E2,27)を胴回り部材(20)に取り付けるための取り付け手段(70)の合計の長さよりも短い。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10