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特許7326702防汚膜付き透明基板および静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置
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  • 特許-防汚膜付き透明基板および静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】防汚膜付き透明基板および静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230808BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230808BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230808BHJP
【FI】
G06F3/041 460
G06F3/041 412
G06F3/044 120
B32B7/023
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018074432
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2018198050
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017100632
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】池田 徹
(72)【発明者】
【氏名】下坂 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴章
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-035261(JP,A)
【文献】特開2008-268939(JP,A)
【文献】特開2017-054141(JP,A)
【文献】特開2004-034399(JP,A)
【文献】特開2007-219485(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054805(WO,A1)
【文献】特開2013-242725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板の一方の主面上に、最表層として設けられた防汚膜とを有し、
前記防汚膜の表面形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上0.14μm以下の凹凸形状であり、前記防汚膜の表面の粗さ曲線のスキューネスRskが0.31~1.5であり、かつ
前記防汚膜の表面で測定される表面抵抗率は2.6×10 10 ~1.0×1013Ω/□である、防汚膜付き透明基板。
【請求項2】
前記透明基板と前記防汚膜の間に、導電性を有する導電性防眩層を有し、前記導電性防眩層の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である請求項1記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項3】
前記透明基板と前記防汚膜の間に、導電層および防眩層を有し、前記防眩層の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である請求項1記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項4】
前記透明基板側から、前記防眩層および前記導電層の順に設けられ、前記導電層と前記防汚膜の間に密着層を有する請求項3記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項5】
前記透明基板と前記防汚膜の間に導電層を有するとともに、前記透明基板の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である、請求項1記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項6】
前記導電層と前記防汚膜の間に密着層を有する請求項5記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項7】
前記透明基板がガラス基板である請求項1~6のいずれか1項記載の防汚膜付き透明基板。
【請求項8】
静電容量型インセルタッチパネル式の液晶表示素子と、防汚膜付き透明基板とを有し、
前記防汚膜付き透明基板は、透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に、最表層として設けられた防汚膜とを有し、前記防汚膜の表面形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上0.14μm以下の凹凸形状であり、前記防汚膜の表面の粗さ曲線のスキューネスRskが0.31~1.5であり、前記防汚膜の表面で測定される表面抵抗率は2.6×10 10 ~1.0×1013Ω/□であって、かつ、前記液晶表示素子の視認側に、前記透明基板が前記液晶表示素子側に位置するように設けられる、
静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚膜付き透明基板および静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル機能が搭載された液晶表示装置、例えば、スマートフォンを代表とする携帯液晶端末、車両等に備えられた液晶表示装置、パーソナルコンピュータの液晶表示装置等が広く使用されている。タッチパネル機能を搭載した液晶表示装置としては、従来から液晶表示装置上にタッチパネルを取り付けた外付け型が用いられていたが、最近では、薄型、軽量化を目的として、タッチ機能を液晶素子の中に組み込んだ、いわゆるインセル型のタッチパネル式液晶表示装置が実用化されている。
【0003】
しかしながら、インセル型のタッチパネル式液晶表示装置のうちでも静電容量型のものについては、指でタッチした際に、液晶画面が部分的に白化するという問題があった。液晶画面の白化の原因は、インセル型タッチパネル式液晶表示装置においては、液晶素子より操作者側に導電性部材が存在しないことから、外部からの静電気を放電しにくいためとされている。そこで、インセル型タッチパネル式液晶表示装置において、液晶素子より操作者側に導電層を設けることで静電気放電(ESD)機能を付与して、液晶画面の白化を抑制する試みがなされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
一方、タッチパネル式液晶表示装置では、通常、最も視認側にカバーガラスが設けられる。そして、このようなカバーガラスは、視認側の表面を、指紋等の汚れを除去しやすくするための防汚膜で構成することが多い。しかしながら、このような防汚膜付きカバーガラスをインセル型の静電容量型タッチパネル式液晶表示装置に用いた場合には、特許文献1に記載された方法では、必ずしも十分に液晶画面の白化を抑制できないことがあった。また、ESD機能により液晶画面の白化を抑制できても、タッチ感度が十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2005/121265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたものであり、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置に防汚膜付きカバー部材として用いた際に、防汚性とタッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化を抑制できる、防汚膜付き透明基板を提供することを目的とする。本発明は、防汚性を有するとともに、タッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化が抑制された、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に、最表層として設けられた防汚膜とを有し、前記防汚膜の表面形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状であり、かつ前記防汚膜の表面で測定される表面抵抗率は1.0×10~1.0×1013Ω/□である、防汚膜付き透明基板。
【0008】
[2]静電容量型インセルタッチパネル式の液晶表示素子と、防汚膜付き透明基板とを有し、前記防汚膜付き透明基板は、透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に、最表層として設けられた防汚膜とを有し、前記防汚膜の表面形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状であり、前記防汚膜の表面で測定される表面抵抗率は1.0×10~1.0×1013Ω/□であって、かつ、前記液晶表示素子の視認側に、前記透明基板が前記液晶表示素子側に位置するように設けられる、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防汚膜付き透明基板は、防汚性を有し、タッチパネルのカバー部材とした場合に、タッチパネル使用時の帯電量を抑制できるとともに、防眩性も有する。本発明の防汚膜付き透明基板は、特に、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置に防汚膜付きカバー部材として用いた場合に、防汚性とタッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化を抑制でき、さらに防眩性の効果も有する。
【0010】
本発明は、防汚性を有するとともに、タッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化が抑制された静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置を提供できる。さらに、本発明の静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置は防眩性も有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る防汚膜付き透明基板の一例の断面模式図である。
図2図1に示す防汚膜付き透明基板の拡大断面図である。
図3】実施形態に係る防汚膜付き透明基板の別の一例の拡大断面図である。
図4】実施形態に係る防汚膜付き透明基板のさらに別の一例の拡大断面図である。
図5】実施形態に係る防汚膜付き透明基板のさらに別の一例の拡大断面図である。
図6A】実施形態に係る防汚膜付き透明基板のさらに別の一例の底面模式図である。
図6B図6Aに示す防汚膜付き透明基板の断面模式図である。
図7】実施形態に係る静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[防汚膜付き透明基板]
実施形態の防汚膜付き透明基板は、透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に、最表層として設けられた防汚膜とを有し、以下の(1)および(2)の特性を有する。
(1)防汚膜の表面形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状である。
(2)防汚膜の表面で測定される表面抵抗率が、1.0×10~1.0×1013Ω/□である。
【0013】
実施形態の防汚膜付き透明基板において、防汚膜とは、表面に撥水撥油性を有する膜をいう。実施形態の防汚膜付き透明基板において、防汚膜の表面とは、防汚膜の透明基板側と反対側の主面をいい、防汚膜の表面は、防汚膜付き透明基板の防汚膜側の主面と同じである。
【0014】
「算術平均粗さRa」は、基準面上にとった基準長さに含まれる粗さ曲線において、基準面からの絶対値偏差を平均した値である。算術平均粗さRaは、東京精密社製SURFCOM1500SD3-12を用いてJIS B0601-2001、JIS B0632-2001、JIS B0633-2001、およびJIS B0651-2001、に規定されている方法に従って測定することができる。測定では先端半径が2μm、円すいのテーパ角度が60度の触針を用いた。
【0015】
「表面抵抗率」は、JIS K6911に準じて、例えば、超絶縁計(日置電機株式会社製、SM-8220)を用い、電極は平板試料用電極(日置電機株式会社製、SME-8311)を使用して、温度22±2℃、湿度45±10%の環境下で1000Vの印加電圧において測定される表面抵抗率(Ω/□)である。
【0016】
実施形態の防汚膜付き透明基板は、上記構成を有し、(1)および(2)の特性を有することで、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置に防汚膜付きカバー部材として用いた場合に、指でタッチした際の指の接触面積が好適化され、さらに帯電量およびESD機能のバランスが取れることで、タッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化を抑制できる。防汚膜は、以下に説明する防汚性を有する膜であり、(1)および(2)の特性を有する場合においても防汚性は確保される。さらに、実施形態の防汚膜付き透明基板は、防汚膜の表面が(1)の凹凸形状を有することで、指でタッチした際の指の接触面積(以下、単に「接触面積」という。)を好適化できることに加えて、防眩性を兼ね備える。
【0017】
実施形態の防汚膜付き透明基板は、透明基板と、透明基板の一方の主面上に最表層として防汚膜を有し、(1)および(2)の特性を有する限り、構成は特に制限されない。実施形態の防汚膜付き透明基板は、透明基板と、防汚膜以外に、(1)および(2)の特性を達成するために、あるいは追加の特性を持たせるために各種機能層を有してもよい。
【0018】
ここで、(1)において、防汚膜の表面形状は防汚膜自体により形作られるものではなく、防汚膜より透明基板側に位置する部材の防汚膜側の表面形状を反映して得られる。具体的には、防汚膜付き透明基板における(1)の特性は、(1)で規定する防汚膜の表面形状と同様の表面形状を有する防眩層を防汚膜の透明基板側に配置することにより得られる。または、透明基板が防汚膜側に(1)で規定する防汚膜の表面形状と同様の表面形状を有することで得られる。また、防眩性の観点から、実施形態の防汚膜付き透明基板は、防汚膜を有するのと反対側の表面が(1)と同様の表面形状を有していてもよい。
【0019】
なお、(1)の算術平均粗さRaについては、得られる防汚膜付き透明基板のヘイズを高めない観点から、0.1μm以下であることが好ましい。
【0020】
また、(2)の表面抵抗率については、防汚膜と透明基板の間に導電性を有する層を配置することにより得られる。防汚膜の表面で測定される表面抵抗率は、1×1010~1×1013Ω/□がより好ましく、1×1010~1×1012Ω/□がさらに好ましい。
【0021】
実施形態の防汚膜付き透明基板は、上記(1)および(2)の特性に加えて、以下の特性を有することが好ましい。
【0022】
(撥水撥油性)
防汚膜付き透明基板は、防汚膜の表面において、水の接触角が90度以上、かつ、オレイン酸の接触角が70度以上であることが好ましい。接触角は、接触角計(例えば、協和界面科学社製、DM-701)を用い、20±10℃の範囲内の条件下、1μLの液滴で測定する。防汚膜の表面における異なる5ヶ所で測定を行い、その平均値を算出し、その値を防汚膜の表面の接触角とする。
【0023】
(粗さ曲線のスキューネスRskおよび粗さ曲線の要素の平均長さRsm)
防汚膜付き透明基板は、防汚膜の表面において測定される粗さ曲線のスキューネスRskが-1.5~1.5であることが好ましく、-1.0~1.0がより好ましい。ここで、粗さ曲線のスキューネスRskは、二乗平均平方根高さ(Zq)の三乗によって無次元化した基準長さにおける高さZ(x)の三乗平均を表し、凹凸形状の平均線に対する偏りを表わす指標である。粗さ曲線のスキューネスRskの値がプラス(Rsk>0)であれば、凹凸形状が凹側に偏って突形状が鋭くなり、マイナス(Rsk<0)であれば、凹凸形状が凸側に偏って突形状が鈍くなる傾向である。なお、粗さ曲線の突形状が鈍い方が、鋭いものよりもヘイズは低くなる。
【0024】
粗さ曲線のスキューネスRskが上記範囲にあることで、防汚膜付き透明基板は、防汚膜の表面において、接触面積をより好適化しやすい。また、防汚膜付き透明基板の防汚膜の表面における高い防眩性と、防汚膜付き透明基板の低いヘイズの両立を可能としやすい。
【0025】
防汚膜付き透明基板は、防汚膜の表面において測定される粗さ曲線の要素の平均長さRsmが10μm以上18μm以下であることが好ましい。防汚膜の表面の粗さ曲線の要素の平均長さRsmは、大きすぎると、防汚膜付き透明基板のヘイズおよび防汚膜付き透明基板の防汚膜の表面におけるぎらつき指標値(Sparkle)が大きくなりやすく、小さすぎると、防汚膜の表面における防眩性が低下しやすいためである。
【0026】
「粗さ曲線のスキューネスRsk」、および「粗さ曲線の要素の平均長さRsm」は、東京精密社製SURFCOM1500SD3-12を用いてJIS B0601-2001、JIS B0632-2001、JIS B0633-2001、およびJIS B0651-2001、に規定されている方法に従って測定することができる。測定では先端半径が2μm、円すいのテーパ角度が60度の触針を用いた。
【0027】
(ヘイズ)
防汚膜付き透明基板のヘイズは、0.1~15.0%が好ましく、0.2~10.0%がより好ましく、0.5~5.0%が特に好ましい。ヘイズが上記範囲の下限値以上であれば、防眩性がより優れる。ヘイズが上記範囲の上限値以下であれば、画像表示装置の表示面に配置されたときに画像の視認性を損ないにくい。
【0028】
「ヘイズ」は、JIS K7136:2000(ISO14782:1999)に記載された方法によって測定される。
【0029】
(光沢度)
防汚膜付き透明基板において防汚膜の表面で測定される光沢は、60゜鏡面光沢度(%)(Gloss)が、140%以下であることが好ましく、135%以下がより好ましく、130%以下がさらに好ましい。凹凸形状を有する表面における60゜鏡面光沢度は、防眩効果の指標である。60゜鏡面光沢度が上記の上限値以下であれば、十分な防眩効果が発揮される。
【0030】
防汚膜付き透明基板の防汚膜表面における60゜鏡面光沢度は、例えば、JIS Z8741:1997の60゜鏡面光沢度に規定されている方法で、オールインワン光沢度計(ローポイントインスツルメンツ社製、Rhоpоint IQ)を用い、裏面側に黒色フェルトを敷いて、防汚膜付き透明基板の裏面反射を消し、防汚膜の平面略中央部で測定した値である。なお、上記において防汚膜付き透明基板の裏面とは、防汚膜付き透明基板の防汚膜を有しない側の表面をいう。
【0031】
(防眩性指標値(Diffusion))
防汚膜付き透明基板の防汚膜表面における防眩性指標値(Diffusion)は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。防汚膜表面の防眩性指標値は、0.1以上であることで、画像表示装置に用いた場合に、優れた防眩性を発揮する。
【0032】
防汚膜付き透明基板の防汚膜表面における防眩性指標値の測定は、日本電色工業株式会社製変角光度計、GC5000Lを用いて、以下の手順で行うことができる。先ず、防汚膜付き透明基板の防汚膜表面側から、防汚膜付き透明基板の厚さ方向と平行な方向を角度0゜としたときに、角度θ=-45゜±0.5゜の方向(以下「角度-45°の方向」ともいう。)に、第1の光を照射する。第1の光は、防汚膜付き透明基板の防汚膜表面で反射される。防汚膜付き透明基板の防汚膜表面から角度θ’=45°の方向に反射された45゜反射光を受光し、その輝度を測定して、「45゜反射光の輝度」とする。
【0033】
次に、防汚膜付き透明基板の防汚膜表面から反射された光を受光する角度θ’を、5゜~85゜の範囲で変化させ、同様の操作を実施する。これにより、防汚膜付き透明基板の防汚膜表面で反射され5゜~85゜の範囲で受光される反射光の輝度分布を測定して合計し、「全反射光の輝度」とする。
【0034】
次に、以下の式(I)から、防眩性指標値(Diffusion)を算定する。
防眩性指標値={(全反射光の輝度-45゜反射光の輝度)/(全反射光の輝度)} …式(I)
【0035】
防眩性指標値は、観察者の目視による防眩性の判断結果と相関し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。防眩性指標値が小さい(0に近い)ほど防眩性が劣り、逆に防眩性指標値が大きいほど良好な防眩性を有すると評価できる。
【0036】
(ぎらつき指標値(Sparkle))
防汚膜付き透明基板の防汚膜表面におけるぎらつき指標値(Sparkle)は、90以下であることが好ましい。ぎらつき指標値は、液晶ディスプレイの表示面の上に防汚膜付き透明基板を防汚膜表面が上になるように置き、アイシステム社製、アイスケールISC-Aを用いて測定することができる。ぎらつき指標値は、値の大きいほどぎらつきの大きいことを表わす。
【0037】
上記(1)の特性で説明したとおり、防汚膜の表面形状は防汚膜自体により形作られるものではなく、防汚膜より透明基板側に位置する部材の防汚膜側の表面形状を反映して得られる。すなわち、防汚膜の表面の算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRskおよび粗さ曲線の要素の平均長さRsmは、例えば、防眩層を防汚膜の透明基板側に配置し該防眩層の防汚膜側の主面の形状を調整する、または、透明基板の防汚膜側の主面の形状を調整することで調整できる。
【0038】
防汚膜付き透明基板のヘイズ、60゜鏡面光沢度、防眩性指標値、ぎらつき指標値は、上記したように、防汚膜の表面の粗さ曲線のスキューネスRsk、算術平均粗さRa、粗さ曲線の要素の平均長さRsm等によって調整できる。
【0039】
実施形態の防汚膜付き透明基板は、透明基板の一方の主面上の最表層として防汚膜を有し、例えば、以下の(A)、(B)または(C)の構成を有することで、(1)および(2)の特性を確保できる。
【0040】
(A)前記透明基板と前記防汚膜の間に、導電性を有する導電性防眩層を有し、前記導電性防眩層の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である。以下、(A)の構成を有する防汚膜付き透明基板を防汚膜付き透明基板(A)ともいう。
【0041】
(B)前記透明基板と前記防汚膜の間に、導電層および防眩層を有し、前記防眩層の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である。以下、(B)の構成を有する防汚膜付き透明基板を防汚膜付き透明基板(B)ともいう。防汚膜付き透明基板(B)において、前記透明基板と前記防汚膜の間に設けられる、導電層および防眩層の前記透明基板側からの順番は導電層、防眩層の順であってもよく、防眩層、導電層の順であってもよい。
【0042】
(C)前記透明基板と前記防汚膜の間に導電層を有するとともに、前記透明基板の前記防汚膜側の主面は入射光を乱反射させる構成である。以下、(C)の構成を有する防汚膜付き透明基板を防汚膜付き透明基板(C)ともいう。
【0043】
以下、図面を参照しながら、防汚膜付き透明基板(A)、防汚膜付き透明基板(B)および防汚膜付き透明基板(C)について説明する。
【0044】
(防汚膜付き透明基板(A))
図1は、実施形態に係る防汚膜付き透明基板(A)の一例の断面を模式的に示す図である。図2は、図1に示す防汚膜付き透明基板の拡大した断面図を示す。図1に示す防汚膜付き透明基板10Aは、透明基板1と、透明基板1上に設けられた、導電性を有する導電性防眩層3Aと、導電性防眩層3A上に設けられた防汚膜2を有する。防汚膜2は、透明基板1の一方の主面Sa上の最表層を構成する。
【0045】
ここで、防汚膜2の表面2sは防汚膜付き透明基板10Aの一方の表面であり、以下の説明において、防汚膜付き透明基板10Aの防汚膜2側の表面を、防汚膜付き透明基板10Aの表面2sともいう。防汚膜付き透明基板10Aの各構成要素について以下に説明する。
【0046】
<透明基板>
透明基板1は、少なくとも可視光を透過する透明な材料からなり、互いに対向する2つの主面Sa、Sbを有する板状体であれば、特に限定されない。透明基板1を構成する材料としては、例えば、ガラス、樹脂、またはそれらの組み合わせ(複合材料、積層材料等)が挙げられる。ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リン酸系ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0047】
透明基板1において、導電性防眩層3Aが形成される主面Saは、平滑であってもよく、凹凸を有してもよい。導電性防眩層3Aを設けることの有用性の点では、平滑であることが好ましい。なお、透明基板1上に設けられる導電性防眩層3Aは透明基板1の主面Saの全面にわたって形成されていなくても構わない。導電性防眩層3Aは、防汚膜2が形成される領域、すなわち、少なくとも、タッチパネルとしての使用に際して、指によるタッチ操作が及ぶ領域に形成されることが好ましい。
【0048】
透明基板1の主面Sa、Sbの形状は、図示するような平坦な形状のみでなく、曲面を有する形状であってもよい。この場合、全体が曲面で構成されてもよく、曲面である部分と平坦である部分とから構成されてもよい。最近では、画像表示装置を備える各種機器(テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、カーナビゲーション等)において、画像表示装置の表示面が曲面とされたものが登場している。透明基板1の主面Sa、Sbが曲面を有する形状である防汚膜付き透明基板10Aは、このような画像表示装置の用途に有用である。
【0049】
透明基板1としては、透明性、機械的強度等の観点からガラス基板が好ましい。ガラス基板の製造方法は特に限定されない。ガラス基板は、所望のガラス原料を溶融炉に投入し、加熱溶融し清澄した後、成形装置に供給して溶融ガラスを成形し、徐冷することにより製造できる。なお、ガラス基板の成形方法は特に限定されず、例えば、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法等により成形されたガラス基板を使用することができる。
【0050】
透明基板1の厚さは、用途に応じて適宜選択できる。例えば、透明基板1としてガラス基板を用いる場合、その厚さは0.1~5mmが好ましく、0.2~2.5mmがより好ましい。
【0051】
透明基板1としてガラス基板を用いる場合には、ガラス基板の主面に強化処理がなされたガラス基板であることが好ましい。強化処理により、ガラスの強度が向上し、例えば強度を維持しながら厚みを削減することが可能となる。
【0052】
防汚膜付き透明基板10Aは、透明基板1と導電性防眩層3Aの間に、アンダーコート層、密着層、保護層等の機能層を有していてもよい。アンダーコート層は、アルカリバリア層やワイドバンドの低屈折率層としての機能を有する。アンダーコート層としては、アルコキシシランの加水分解物(ゾルゲルシリカ)を含むアンダーコート層形成用組成物を透明基板1に塗布することによって形成される層が好ましい。
【0053】
<導電性防眩層>
導電性防眩層3Aは、導電性を有するとともに、導電性防眩層3Aの防汚膜2側の主面3Asは入射光を乱反射させる構成である。
【0054】
防汚膜2の構成材料や厚さによるが、導電性防眩層3Aの防汚膜2側の主面3Asで測定される表面抵抗率は、1.0×1010~1.0×1013Ω/□であることが好ましく、1.0×1010~1.0×1012Ω/□がより好ましい。導電性防眩層3Aが上記導電性を有することで、防汚膜付き透明基板10Aにおいて、防汚膜2の表面2sで測定される表面抵抗率を上記所定の範囲とすることができる。
【0055】
導電性防眩層3Aの防汚膜2側の主面3Asの形状は、例えば、算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状である。主面3Asの算術平均粗さRaは、好ましくは、防汚膜の表面における算術平均粗さRaの好ましい範囲として説明した上記範囲である。導電性防眩層3Aの防汚膜2側の主面3Asにおける、粗さ曲線のスキューネスRsk、粗さ曲線の要素の平均長さRsm、60゜鏡面光沢度、防眩性指標値、ぎらつき指標値は、防汚膜2の表面2sにおけるこれらの物性の好ましい範囲として説明した上記範囲となることが好ましい。
【0056】
導電性防眩層3Aは、平均膜厚が15~1500nmであることが好ましい。導電性防眩層3Aの平均膜厚が15~50nmの場合はヘイズを低くしたりぎらつき指標値を下げたりしやすい。導電性防眩層3Aの平均膜厚が50nm以上であることで、防汚膜付き透明基板10Aに十分な防眩性を付与できるためより好ましい。導電性防眩層3Aの平均膜厚が1500nm以下であれば、防眩性指標値やヘイズ等の光学特性を良好な範囲で両立させやすく好ましい。
【0057】
ここで、導電性防眩層3Aの平均膜厚は、導電性防眩層3Aの断面を、集束イオンビーム加工により処理した後、走査型顕微鏡(SEM)によって、例えば、1万倍の倍率で観察し、撮影範囲全体にわたり透明基板1と導電性防眩層3Aの界面から導電性防眩層3Aの表面までの厚みを測定することで計測できる。膜厚は、SEMによる撮影のデジタルデータや画像処理ソフトを用いて算出できる。
【0058】
導電性防眩層3Aは、透明基板1の主面Saの全体を隙間なく覆って形成されていてもよい。または、透明基板1の主面Saの一部が、導電性防眩層3Aが形成されず露出した態様であってもよい。具体的には、導電性防眩層3Aが島状に形成されていてもよい。導電性防眩層3Aの厚さが、例えば、300nm以下になると、透明基板1の主面上に、導電性防眩層3Aが不連続に形成され、透明基板1の主面の一部が露出することがある。
【0059】
導電性防眩層3Aの主面3Asにおける凹凸形状は、例えば、基部の直径が1μm以上の第一の凸部と基部の直径が1μm未満の第二の凸部を有する形状であってもよい。また、上記第一の凸部どうし、または第二の凸部どうし、または第一の凸部と第二の凸部が重複した構造をしていてもよい。このような表面構造はレーザ顕微鏡測定データを画像処理ソフトにより解析することで観測できる。
【0060】
導電性防眩層3Aは、例えば、導電性防眩層形成用の液状組成物(以下、液状組成物(X1))を、透明基板1の主面Sa上に塗布し、これを硬化させることで形成できる。導電性防眩層3Aの膜厚、および防汚膜2側の主面3Asにおける、表面抵抗率、算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRskおよび粗さ曲線の要素の平均長さRsmは、導電性防眩層3Aの形成に用いる、液状組成物(X1)の組成、透明基板1への液状組成物(X1)の塗布条件等によって調整できる。
【0061】
導電性防眩層3Aを構成する材料としては、例えば、シリカを主成分とするバインダと、導電性微粒子等の導電剤を含有する材料が好ましい。なお、「シリカを主成分とする」とは、SiOを50質量%以上含むことを意味する。シリカを主成分とするバインダを用いた導電性防眩層3Aは、化学的安定性、透明基板がガラス基板である場合の基板との密着性、耐擦傷性に優れる。
【0062】
導電性防眩層3Aにおけるバインダと導電剤との割合は、バインダ:導電剤の質量比で90:10~10:90で適宜調整して実施することができる。
【0063】
シリカを主成分とするバインダと、導電剤を含有する材料からなる導電性防眩層3Aを形成するための液状組成物(X1)としては、例えば、シリカ前駆体(a)、導電剤(b)、および液状媒体(c)を含み、任意に導電剤(b)における導電性微粒子(b1)(後述する)以外の粒子(d)(以下、その他の粒子(d))を含有する組成物が挙げられる。
【0064】
(シリカ前駆体(a))
「シリカ前駆体」とは、シロキサン結合等によりシリカを主成分とするマトリックスを形成し得る物質を意味する。シリカ前駆体(a)としては、適宜公知のアルコキシシラン等のシラン化合物やその加水分解縮合物等を使用可能である。シリカ前駆体(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
シリカ前駆体(a)は、導電性防眩層3Aのクラックや膜剥がれを防止する観点から、ケイ素原子に直接結合している炭素原子を有するアルコキシシランおよびその加水分解縮合物のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。また、シリカ前駆体(a)は、導電性防眩層3Aの耐摩耗強度の観点から、テトラアルコキシシランおよびその加水分解縮合物のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。
【0066】
液状組成物(X1)におけるシリカ前駆体(a)の含有量は、固形分全量に対してSiO換算で30~90質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。液状組成物(X1)の固形分は、液状組成物(X1)において、液状媒体(c)等の導電性防眩層3Aの成形過程で消失する成分を除く全成分の含有量の合計であり、シリカ前駆体(a)の含有量は、上記のとおりSiO換算である。
【0067】
(導電剤(b))
導電剤(b)としては、第4級アンモニウム塩、リチウム塩等のイオン伝導型導電剤、金属微粒子、金属酸化物微粒子、カーボンナノチューブ、コーティング微粒子、ポリエチレンジオキシチオフェン系粒子等の電子伝導型導電剤が挙げられ、湿度による影響を受けにくい電子伝導型の導電剤が好適に使用される。また、電子伝導型導電剤の中でも、長期保管、耐熱性、耐湿熱性、耐光性が良好である、という観点から金属酸化物微粒子が好ましい。電子伝導型導電剤を、以下、「導電性微粒子(b1)」という。
【0068】
なお、図2に示す、導電性防眩層3Aにおいては、導電剤(b)として導電性微粒子(b1)を用いた場合を模式的に示したものである。
【0069】
金属微粒子を構成する金属としては特に限定されず、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Fe、Ni、Pd、Pt、Ruやこれらの合金等が挙げられる。
【0070】
金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物としては特に限定されず、例えば、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモンドープ酸化チタン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素化酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化亜鉛、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
【0071】
コーティング微粒子としては特に限定されず、例えば、コア微粒子の表面に導電性被覆層が形成された構成の従来公知の微粒子が挙げられる。コア微粒子としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ微粒子等の無機微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子等のポリマー微粒子、有機質無機質複合体粒子等の微粒子が挙げられる。また、導電性被覆層を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上記の金属、金属酸化物等が挙げられる。
【0072】
導電性微粒子(b1)の形状は特に制限されず、球状、鱗片状、棒状、鎖状、針状等の形状が挙げられる。これらの形状は1次粒子それ自体により形成されてもよく、1次粒子が凝集、積層、連結等した2次粒子から形成されてもよい。なお、「鱗片状」とは、扁平な形状を意味する。導電性微粒子(b1)の形状は、透過型電子顕微鏡(以下、TEMとも記す。)を用いて確認できる。
【0073】
導電性微粒子(b1)の1次粒子の平均粒子径は、透明性確保および、導電性確保の観点から2~150nmであることが好ましく、3~100nmがより好ましい。
【0074】
なお、本明細書において、粒子の平均粒子径は、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径(D50)を意味する。粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した頻度分布および累積体積分布曲線で求められる。
【0075】
導電性防眩層3Aにおける導電剤(b)の含有量は、すなわち、液状組成物(X1)の固形分中における導電剤(b)の含有量である。導電剤(b)として、導電性微粒子(b1)を用いる場合、用いる導電性微粒子(b1)の種類、形状、大きさ等に応じて適宜調整されるが、例えば、導電性防眩層3Aの全量に対して、10~80質量%の含有量が挙げられ、30~80質量%がより好ましい。
【0076】
導電性微粒子(b1)は、液状組成物(X1)中での十分な分散性を確保する観点から、予め導電性微粒子(b1)を、ビーズミル等を用いて分散媒に分散させた分散液を準備しその分散液の状態で液状組成物(X1)に配合されることが好ましい。その場合、分散媒は以下の液状媒体(c)の一部を構成することになるため、液状媒体(c)と同様のまたは相溶性を有する化合物を分散媒として用いることが好ましい。なお、導電性微粒子(b1)の分散液を調製する際には、分散剤を用いてもよい。また、導電性微粒子(b1)は分散液として市販されているので、液状組成物(X1)にはこのような市販品を配合してもよい。
【0077】
(液状媒体(c))
液状媒体(c)は、シリカ前駆体(a)を溶解または分散するものであり、導電性微粒子(b1)やその他の粒子(d)を分散するものが好ましく用いられる。液状媒体(c)は、シリカ前駆体(a)を溶解または分散する溶媒または分散媒としての機能と、導電性微粒子(b1)やその他の粒子(d)を分散する分散媒としての機能の両方を有するものであってもよい。
【0078】
液状媒体(c)は、少なくとも、沸点150℃以下の液状媒体(c1)を含むことが好ましい。液状媒体(c1)の沸点は、50~145℃が好ましく、55~140℃がより好ましい。液状媒体(c1)の沸点を上記の好ましい範囲とすることで、液状組成物(X1)を、回転霧化頭を備える静電塗装ガンを備える静電塗装装置を用いて、透明基板1の主面Sa上に塗布し焼成して導電性防眩層3Aを形成する場合に、得られる導電性防眩層3Aの表面形状を、上記特徴を有する凹凸形状としやすい。
【0079】
シリカ前駆体(a)におけるアルコキシシラン等の加水分解に水が必要となるため、加水分解後に液状媒体の置換を行わない限り、液状媒体(c)は液状媒体(c1)として少なくとも水を含む。液状媒体(c)は、必要に応じて、液状媒体(c1)以外の他の液状媒体、すなわち沸点が150℃超の液状媒体(c2)をさらに含んでいてもよい。
【0080】
液状組成物(X1)中の液状媒体(c)の含有量は、液状組成物(X1)の固形分濃度に応じた量とされる。液状組成物(X1)の固形分濃度は、液状組成物(X1)の全量(100質量%)に対し、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。固形分濃度が上記範囲の下限値以上であれば、液状組成物(X1)の液量を少なくできる。固形分濃度が上記範囲の上限値以下であれば、第二の凸部を有する凹凸構造を形成しやすい。また、導電性防眩層3Aの膜厚の均一性が向上する。
【0081】
液状媒体(c1)の含有量は、液状媒体(c)の全量に対して86質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。液状媒体(c1)の含有量は、液状媒体(c)の全量に対して100質量%であっても構わない。
【0082】
液状媒体(c2)を含有することで、得られる導電性防眩層3Aの粗さ曲線のスキューネスRskを下げることができ、優れた防眩性と低いヘイズを両立し易い。液状媒体(c)が液状媒体(c2)を含有する場合、液状媒体(c)の全量に対する液状媒体(c2)の含有割合は、0.01~14質量%であることが好ましい。
【0083】
(その他の粒子(d))
導電性防眩層3Aを形成するための液状組成物(X1)は、必要に応じて、その他の粒子(d)を含有してもよい。液状組成物(X1)がその他の粒子(d)を含有することで、得られる導電性防眩層3Aの表面形状を、上記特徴を有する凹凸形状としやすい。
【0084】
導電性防眩層3Aの構成材料がシリカを主成分とする場合、その他の粒子(d)としては、膜の屈折率上昇を抑え、反射率を下げることができる点から、球状シリカ粒子、鱗片状シリカ粒子、棒状シリカ粒子、針状シリカ粒子等のシリカ粒子が好ましい。より低いヘイズ率を得やすい点では、球状シリカ粒子が好ましい。少量で防眩効果が得られる点、導電性防眩層3Aのクラックや膜剥がれを抑制できる点では、鱗片状シリカ粒子が好ましい。
【0085】
鱗片状シリカ粒子は、市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。鱗片状シリカ粒子は、粉体を用いてもよく、分散媒に分散させた分散液を用いてもよい。鱗片状シリカ粒子の市販品としては、例えば、AGCエスアイテック社製のサンラブリー(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0086】
液状組成物(X1)中のその他の粒子(d)の含有量は、シリカ前駆体(a)とその他の粒子(d)との合計質量(100質量%)(ただし、シリカ前駆体(a)はSiO換算とする。)に対するその他の粒子(d)の割合として、0~40質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましい。その他の粒子(d)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、透明基板1との密着性に優れる。
【0087】
その他の粒子(d)が球状シリカ粒子である場合、シリカ前駆体(a)とその他の粒子(d)との合計質量(100質量%)に対するその他の粒子(d)の比率は、1~40質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。
【0088】
その他の粒子(d)が鱗片状シリカ粒子である場合、シリカ前駆体(a)とその他の粒子(d)との合計質量(100質量%)に対するその他の粒子(d)の比率は、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
【0089】
その他の粒子(d)の比率が上記範囲の下限値以上であれば、低ぎらつき性がより優れる。その他の粒子(d)の比率が上記範囲の上限値以下であれば、より低いヘイズ率が得られやすい。また、シリカ前駆体(a)を一定以上の比率で含むことで、導電性防眩層3Aと透明基板1との密着強度がより優れる。
【0090】
(その他の任意成分)
液状組成物(X1)は、上記各成分以外に、シリカ前駆体(a)を除くその他のバインダ(f)(以下、「その他のバインダ(f)」。)、添加剤(g)等を含有してもよい。その他のバインダ(f)としては、液体媒体(c)に溶解または分散する無機物や樹脂等が挙げられる。無機物としては、例えば、シリカ以外の金属酸化物、例えば、チタニア、ジルコニア等の前駆体が挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0091】
添加剤(g)としては、例えば、導電性微粒子(b1)やその他の粒子(d)の液状組成物(X1)中で凝集を抑制するための分散剤、紫外線吸収剤、赤外線反射剤、赤外線吸収剤、反射防止剤、レベリング性向上のための界面活性剤、耐久性向上のための金属化合物等が挙げられる。
【0092】
分散剤としては、不飽和カルボン酸重合体、セルロース誘導体、有機酸(ただし、不飽和カルボン酸重合体を除く。)、テルペン化合物等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
(導電性防眩層の形成)
(1)液状組成物(X1)の調製および塗布
液状組成物(X1)は、上記各成分を混合することによって調製できる。液状組成物(X1)の塗布温度における粘度(以下、「液粘度」ともいう。)は、0.003Pa・s以下であることが好ましく、0.001~0.003Pa・sが特に好ましい。液粘度が上記の上限値以下であれば、液状組成物(X1)を噴霧したときに形成される液滴がより微細になり、所望の表面形状の導電性防眩層3Aが形成されやすい。液粘度が上記の下限値以上であれば、導電性防眩層3Aの表面凹凸形状が均一となる。液状組成物(X1)の粘度は、B型粘度計により測定される値である。
【0094】
このように調製された液状組成物(X1)を、スプレーコート法により透明基板1の主面Sa上に塗布する。透明基板1上への液状組成物(X1)の塗布は、例えば、回転霧化頭を備える静電塗装ガンを備える静電塗装装置を用いて、液状組成物(X1)を帯電させ噴霧することにより行うことができる。これにより、透明基板1の主面Sa上に、液状組成物(X1)の塗膜が形成される。静電塗装装置は、ガン本体と、回転霧化頭とを備え、回転霧化頭を回転駆動することにより、回転霧化頭に供給された液状組成物(X1)を遠心力により霧化して放出することで、液状組成物(X1)を透明基板1の主面Saに向けて噴霧する。
【0095】
静電塗装装置は、回転霧化頭を備える静電塗装ガンを備えるものであれば、公知の静電塗装装置を採用できる。静電塗装ガンは、回転霧化頭を備えるものであれば、公知の静電塗装ガンを採用できる。ただし、液状組成物(X1)の塗布手段は上記の静電塗装装置に限らず、公知の塗布手段を使用することができる。
【0096】
(2)焼成
次いで、透明基板1の主面Sa上に形成された、液状組成物(X1)の塗膜を焼成する。これにより、塗膜中の液状媒体(c)等の揮発成分が揮発して除去され、また、塗膜中のシリカ前駆体(a)のシリカへの転化が進行する(例えば、シリカ前駆体(a)が、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するシラン化合物である場合に、加水分解性基がほぼ分解し、加水分解物の縮合が進行する)とともに膜が緻密化して、導電性防眩層3Aが形成される。
【0097】
焼成は、液状組成物(X1)を透明基板1に塗布する際に透明基板1を加熱することによって塗布と同時に行ってもよく、液状組成物(X1)を透明基板1に塗布した後、塗膜を加熱することによって行ってもよい。焼成温度は、30℃以上が好ましく、たとえば透明基板1がガラスである場合は100~750℃がより好ましく、150~550℃がさらに好ましい。
【0098】
以上で説明した実施形態の製造方法によれば、液状組成物(X1)を、好ましくは、回転霧化頭を備える静電塗装装置を用いて噴霧することによって、導電性防眩層3A側の主面3Asにおいて所期の表面形状を有する導電性防眩層3Aを形成することができる。これは、液状組成物(X1)の液滴が、静電塗装装置以外の従来汎用されているスプレー法(例えば、特に二流体ノズルを用いる方法)を適用した場合に比べて、緩やかな速度で透明基板1上に付着し、また、付着した液滴中の液状媒体(c)が迅速に揮発することで、液滴が透明基板1上で広がりにくく、付着した時点の形状を十分に保った状態で成膜されるためと考えられる。
【0099】
また、上記で説明した実施形態の製造方法にあっては、液状組成物(X1)の粘度、塗布条件、焼成温度等によって、形成される導電性防眩層3Aの主面3Asにおける表面形状を制御できる。
【0100】
<防汚膜>
防汚膜2は、防汚膜付き透明基板10Aの一方の最表層に位置する撥水撥油性を有する層である。防汚膜2は、導電性防眩層3Aの主面3As上に形成され、主面3Asの形状に追従した表面2sを有する。防汚膜2の表面2sで測定される、算術平均粗さRaは、0.01μm以上であり、表面抵抗率は1.0×10~1.0×1013Ω/□である。防汚膜2の表面2sにおける、算術平均粗さRa、表面抵抗率、および表面形状を示す各種指標の好ましい値は上記のとおりである。
【0101】
防汚膜2の撥水撥油性としては、上記に示すとおり、水の接触角が90度以上であり、かつ、オレイン酸の接触角が70度以上であるのが好ましい。防汚膜2は撥水撥油性を有することで、防汚性を有するとともに、良好な指滑り性を有する。防汚膜2としては、AFP(Anti Finger Print)層等が挙げられる。
【0102】
防汚膜2は、例えば、含フッ素有機ケイ素化合物を加水分解縮合反応させることで硬化させて得られる、含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。
【0103】
防汚膜2の厚さは、例えば、防汚膜2が含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなる場合、2~30nmであることが好ましく、5~20nmであることがより好ましい。防汚膜2の膜厚が2nm以上であれば、防汚性の他、防汚膜の耐擦り性に優れるものとなる。さらに、十分な撥水撥油性が発揮され、防汚膜2の表面での指すべり性が良好である。防汚膜2の膜厚が30nm以下であれば、導電性防眩層3Aの主面3Asの形状に十分に追従した表面2sとすることができ好ましい。
【0104】
なお、防汚膜2の表面2sにおける表面形状が、少なくとも、算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状を有し、好ましくは上記表面形状の特性を有する限り、導電性防眩層3Aの主面3Asの形状と、防汚膜2の表面2sにおける表面形状は、厳密に一致しなくてもよい。
【0105】
防汚膜2の厚さは、例えば、薄膜解析用X線回折計ATX-G(RIGAKU社製)を用いて、X線反射率法により反射X線の干渉パターンを得て、該干渉パターンの振動周期から算出することができる。あるいは、予め反射分光スペクトルを測定した反射防止膜を用意し、その上に防汚膜2の厚さを測定するサンプルと同条件下で防汚膜2を形成した後の反射分光スペクトルと防汚膜2の屈折率から算出することにより求められる。
【0106】
防汚膜2として含フッ素有機ケイ素化合物被膜を用いる場合を例に防汚膜2を形成する方法を説明する。
【0107】
含フッ素有機ケイ素化合物被膜を形成する方法としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等のフルオロアルキル基を有する含フッ素有機ケイ素化合物を含む組成物を、導電性防眩層3Aの主面3Asに、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後、必要に応じて加熱処理する方法が挙げられる。
【0108】
または、含フッ素有機ケイ素化合物を、導電性防眩層3Aの主面3Asに気相蒸着させた後、必要に応じて加熱処理する真空蒸着法等が挙げられる。密着性の高い含フッ素有機ケイ素化合物被膜を得るには、真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法による含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する被膜形成用組成物を用いて行うことが好ましい。
【0109】
被膜形成用組成物は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する組成物であって、真空蒸着法による被膜形成が可能な組成物であれば、特に制限されない。含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、化合物自体に加えて部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含んでいてもよい。
【0110】
このような含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含む被膜形成用組成物を、導電性防眩層3Aの主面3Asに付着させ反応させて成膜することで、含フッ素有機ケイ素化合物被膜が得られる。なお、具体的な真空蒸着方法、反応条件については従来公知の方法、条件等が適用可能である。
【0111】
(防汚膜付き透明基板(B))
防汚膜付き透明基板(B)について、透明基板、導電層、防眩層、防汚膜の順に積層された例を、図3を参照して、透明基板、防眩層、導電層、防汚膜の順に積層された例を、図4を参照して以下に説明する。
【0112】
図3は、実施形態に係る防汚膜付き透明基板(B)の一例の拡大した断面を模式的に示す図である。図3に示す防汚膜付き透明基板10Baは、透明基板1と、透明基板1上に設けられた、導電層4Aと、導電層4A上に設けられた防眩層3Bと、防眩層3B上に設けられた防汚膜2を有する。防汚膜2は、透明基板1の一方の主面Sa上の最表層を構成する。防汚膜付き透明基板10Baにおいて、防眩層3Bの防汚膜2側の主面3Bsは入射光を乱反射させる構成である。防汚膜付き透明基板10Baの各構成要素について以下に説明する。
【0113】
防汚膜付き透明基板10Baにおける、透明基板1および防汚膜2は、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおける、透明基板1および防汚膜2と同様である。
【0114】
防汚膜付き透明基板10Baにおける防眩層3Bは、防汚膜付き透明基板10Aにおける導電性防眩層3Aと導電性の違いを除いて同様である。例えば、防眩層3Bの主面3Bsの形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状である。防汚膜付き透明基板10Baにおいて、防眩層3B上に設けられた防汚膜2の表面2sの形状は、防眩層3Bの防汚膜2側の主面3Bsの形状に追従する。
【0115】
防眩層3Bは、具体的には、導電性防眩層3Aの構成材料において導電剤を含有しない材料で構成され、導電性防眩層3Aと同様の形状に形成することで得られる。防眩層3Bは、導電性防眩層3Aを形成するための液状組成物として上に説明した液状組成物(X1)から、導電剤(b)を除いた組成の液状組成物(以下、液状組成物(X2))を用いて形成できる。
【0116】
防眩層3Bの形成は、液状組成物(X2)を、透明基板1の主面Sa上に塗布するのではなく、透明基板1の主面Sa上に形成された導電層4Aの防汚膜2側の主面4As上に塗布する点が、導電性防眩層3Aの形成方法と異なる以外は、導電性防眩層3Aの形成と同様である。
【0117】
なお、防眩層3Bは、入射光を乱反射させる構成の層であって、導電性防眩層3Aのように単独で用いた場合に、防汚膜2の表面2sで測定される表面抵抗率を1.0×1013Ω/□以下とできない程度の低い導電性を有する層であってもよい。すなわち、防眩層3Bは、上記低い導電性を有する程度に、導電性微粒子(b1)等の導電剤を含有する層であってもよい。その場合、防眩層3Bと組みわせる以下の導電層4Aの導電性を、防汚膜2の表面2sで測定される表面抵抗率が本発明の範囲となるように適宜調整すればよい。
【0118】
導電層4Aは、導電剤および必要に応じて使用されるバインダや希釈溶剤を含む導電層形成用組成物から形成されてなる導電性の層である。
【0119】
防眩層3Bの構成材料や厚さおよび防汚膜2の構成材料や厚さによるが、導電層4Aの防汚膜2側の主面4Asで測定される表面抵抗率は、1×1010~1×1013Ω/□であることが好ましく、1×1010~1×1012Ω/□がより好ましい。導電層4Aが上記導電性を有することで、防汚膜付き透明基板10Baにおいて、防汚膜2の表面2sで測定される表面抵抗率を上記所定の範囲とすることができる。
【0120】
導電層4Aの厚さは、導電層4Aの防汚膜2側の主面4Asで測定される表面抵抗率が上記値となるような厚さが好ましく、導電剤の種類や導電層4A中の導電剤の含有量にもよるが、具体的には、10~300nmであることが好ましく、20~200nmであることがより好ましい。導電層4Aの主面4Asの形状は、平滑であってもよく、凹凸を有してもよい。防眩層3Bを設けることの有用性の点では、平滑であることが好ましい。
【0121】
導電層4Aが含有する導電剤としては、導電性防眩層3Aが含有する導電剤(b)と同様の導電剤が挙げられ、導電性微粒子(b1)が好ましい。
【0122】
導電層4Aは、導電剤(b)、特には導電性微粒子(b1)のみで構成されてもよく、導電剤(b)、特には導電性微粒子(b1)とバインダ等の任意成分とで構成されてもよい。導電層4Aが導電性微粒子(b1)とバインダ等の任意成分とで構成される場合、導電性微粒子(b1)の含有量としては、用いる導電性微粒子(b1)の種類、形状および大きさ等に応じて適宜調整される。具体的には、導電層4Aの主面4Asで測定される表面抵抗率を上記好ましい範囲とするために、導電性微粒子(b1)の含有量は、導電層4Aの全量に対して、10~90質量%とすることが好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0123】
例えば、上記導電層形成用組成物を用いて、導電層4Aを形成する場合、導電層形成用組成物の固形分全量に対する導電性微粒子(b1)の含有量を上記同様の範囲とすることで、得られる導電層4Aの主面4Asで測定される表面抵抗率を上記好ましい範囲としやすい。
【0124】
バインダとしては、シリカ、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂組成物、電離放射線硬化型樹脂組成物が挙げられ、これらを適宜組み合わせて用いることができる。バインダとしてはシリカが好ましい。バインダがシリカの場合、該シリカは、導電層形成用組成物においてはシリカ前駆体として含有される。シリカ前駆体としては、上記シリカ前駆体(a)と同様のものが使用でき、テトラアルコキシシランおよびその加水分解縮合物のいずれか一方または両方が好ましい。導電層形成用組成物におけるバインダの含有量は、他の固形分と併せて、導電性微粒子(b1)の含有量の残部となる量である。
【0125】
導電層形成用組成物に用いる希釈溶剤としては、上記液状組成物(X1)で用いられる液状媒体(c)と同様の液状媒体が挙げられる。導電層形成用組成物に用いる希釈溶剤の含有量は、導電層形成用組成物の固形分濃度に応じた量とされる。導電層形成用組成物の固形分濃度は、導電層形成用組成物の全量(100質量%)に対し、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0126】
導電層形成用組成物は、さらに、上記液状組成物(X1)で任意に含有するのと同様の分散剤を含有してもよい。
【0127】
透明基板1の主面Sa上への導電層4Aの形成方法は、上記構成の導電層4Aが形成できる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法が適用可能である。例えば、上記導電層形成用組成物を透明基板1の主面Saに、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後、必要に応じて加熱処理する方法が挙げられる。また、導電層4Aは、所望の組成の導電層が得られるようなスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法で、透明基板1の主面Saに形成されてもよい。
【0128】
図4は、実施形態に係る防汚膜付き透明基板(B)の別の一例の拡大した断面を模式的に示す図である。図4に示す防汚膜付き透明基板10Bbは、透明基板1と、透明基板1上に設けられた、防眩層3Bと、防眩層3B上に設けられた導電層4Bと、導電層4B上に設けられた防汚膜2を有する。防汚膜2は、透明基板1の一方の主面Sa上の最表層を構成する。防汚膜付き透明基板10Bbにおいて、防眩層3Bの防汚膜2側の主面3Bsは入射光を乱反射させる構成である。防汚膜付き透明基板10Bbの各構成要素について以下に説明する。
【0129】
防汚膜付き透明基板10Bbにおける、透明基板1および防汚膜2は、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおける、透明基板1および防汚膜2と同様である。防汚膜付き透明基板10Bbにおける、防眩層3Bは、図3に示す防汚膜付き透明基板10Baにおける、防眩層3Bと同様である。
【0130】
例えば、防眩層3Bの主面3Bsの形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状である。防汚膜付き透明基板10Bbにおいて、防眩層3B上に設けられた導電層4Bの防汚膜2側の主面4Bsの形状および、導電層4Bの防汚膜2側の主面4Bs上に設けられた防汚膜2の表面2sの形状は、防眩層3Bの防汚膜2側の主面3Bsの形状に追従する。
【0131】
防汚膜付き透明基板10Bbにおける、導電層4Bの防汚膜2側の主面4Bsで測定される表面抵抗率は、1.0×10~1.0×1013Ω/□が好ましく、1×1010~1×1012Ω/□がより好ましい。一般的に、防汚膜の膜厚は大変薄いため、防汚膜の有無による表面抵抗率測定値の差はほとんどない。
【0132】
導電層4Bは、防汚膜2側の主面4Bsを防眩層3Bの防汚膜2側の主面3Bsの形状に追従させるために、厚さは5~200nmが好ましく、10~150nmがより好ましい。
【0133】
防汚膜付き透明基板10Bbにおける導電層4Bは、図3に示す防汚膜付き透明基板10Baにおける導電層4Aにおいて導電性および厚さを上記の範囲に調整する以外は、防汚膜付き透明基板10Baにおける導電層4Aと同様である。
【0134】
防汚膜付き透明基板10Bbは、導電層4Bと防汚膜2の間に密着層を有することが好ましい。密着層としては、アルコキシシランの加水分解物(ゾルゲルシリカ)を含む密着層形成用組成物を導電層4Bに塗布することによって形成される層が好ましい。
【0135】
(防汚膜付き透明基板(C))
図5は、実施形態に係る防汚膜付き透明基板(C)の一例の拡大した断面を模式的に示す図である。図5に示す防汚膜付き透明基板10Cは、透明基板1Cと、透明基板1C上に設けられた、導電層4Cと、導電層4C上に設けられた防汚膜2を有する。防汚膜2は、透明基板1Cの一方の主面Sa上の最表層を構成する。透明基板1Cの防汚膜2側の主面Saは入射光を乱反射させる構成である。防汚膜付き透明基板10Cの各構成要素について以下に説明する。
【0136】
防汚膜付き透明基板10Cにおける防汚膜2は、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおける、防汚膜2と同様である。防汚膜付き透明基板10Cにおける導電層4Cは、防汚膜付き透明基板10Bbにおける導電層4Bと同様である。防汚膜付き透明基板10Cにおいては、導電層4Cと防汚膜2の間に防汚膜付き透明基板10Bbにおけるのと同様の密着層を有することが好ましい。
【0137】
汚膜付き透明基板10Cにおける透明基板1Cは、防汚膜2側の主面Saの構成以外は、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおける、透明基板1と同様とできる。
【0138】
透明基板1Cの防汚膜2側の主面Saの形状は、例えば、算術平均粗さRaが、0.01μm以上の凹凸形状である。該算術平均粗さRaは、好ましくは、防汚膜の表面における算術平均粗さRaの好ましい範囲として説明した上記範囲である。透明基板1Cの防汚膜2側の主面Saにおける、粗さ曲線のスキューネスRsk、粗さ曲線の要素の平均長さRsm、60゜鏡面光沢度、防眩性指標値、ぎらつき指標値は、防汚膜2の表面2sにおけるこれらの物性の好ましい範囲として説明した上記範囲となることが好ましい。
【0139】
透明基板1Cは、例えば、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおける透明基板1の防汚膜2側の主面Saを上記形状に加工することで得られる。透明基板1Cを得るための主面Saの加工方法は特に制限されない。透明基板1Cの材質等に応じて加工方法が適宜選択される。
【0140】
例えば、透明基板1Cがガラス基板である場合、具体的には、処理を施すべき未処理の透明基板(以下、「被処理基板」)についてフロスト処理を施す方法が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素と、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム等との混合溶液に、被処理基板を浸漬し、浸漬面を化学的に表面処理することで行うことができる。フロスト処理に用いる混合溶液におけるフッ化水素の含有量は5~60質量%が好ましい。また、被処理基板について一方の主面のみをフロスト処理する場合には、処理を施さない主面について、例えば、耐酸性の保護フィルムを貼付する等の前処理をした後、被処理基板の浸漬処理を行えばよい。
【0141】
また、このような化学的処理による方法以外にも、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気で被処理基板の主面に吹きつけるいわゆるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせたもので磨く等の物理的処理による方法も利用できる。
【0142】
特に、フッ化水素等の薬液を用いて化学的に表面処理するフロスト処理を施す方法では、被処理基板表面におけるマイクロクラックが生じ難く、機械的強度の低下が生じ難いため、被処理基板に表面処理を施す方法として好ましく利用できる。
【0143】
上記のようにして被処理基板の表面に凹凸を作製した後に、さらに、表面形状を整えるために、処理面を化学的にエッチングすることが一般的に行われている。こうすることで、エッチング量によりヘイズを所望の値に調整でき、サンドブラスト処理等で生じたクラックを除去でき、またぎらつきを抑えることができる。
【0144】
エッチングとしては、フッ化水素を含有する溶液に、被処理基板を浸漬する方法が好ましく用いられる。フッ化水素以外の成分としては、塩酸、硝酸、クエン酸などを含有してもよい。これらを含有することで、ガラスに入っているアルカリ成分とフッ化水素とが反応して析出反応が局所的におきることを抑えることができ、エッチングを面内均一に進行させることができる。なお、エッチングに用いる溶液におけるフッ化水素の含有量は、5~60質量%が好ましい。
【0145】
以上、本発明の実施形態の防汚膜付き透明基板における、防汚膜付き透明基板(A)、防汚膜付き透明基板(B)および防汚膜付き透明基板(C)について、図1~5を参照しながら説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
【0146】
例えば、本発明の実施形態の防汚膜付き透明基板は、上記各構成に加えて、印刷層、低反射層、紫外線カット層、赤外線カット層等の層をさらに有してもよい。具体例として、印刷層を有する実施形態の防汚膜付き透明基板について説明する。
【0147】
図6Aおよび図6Bに示す防汚膜付き透明基板10Dは、図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aにおいて、透明基板1の防汚膜2を有する主面Saと反対側の主面Sbの周縁部に額縁状の印刷層5を設けた例である。図6Aは、防汚膜付き透明基板10Dの底面模式図であり、図6Bは、防汚膜付き透明基板10Dの断面模式図である。
【0148】
印刷層5は、例えば、表示の視認性と美観を高める目的で、画像表示装置の外周近傍に配置された配線回路や、画像表示装置を筐体に取り付ける際の接着部等を隠ぺいするように必要に応じて備えられる。ここで、周縁部とは、外周から中央部に向かって、所定の幅を有する帯状領域を意味する。防汚膜付き透明基板10Dが有する印刷層5は、透明基板1の防汚膜2を有する主面Saと反対側の主面Sbの周縁全周に備えられていているが、これに限定されず、周縁一部に備えられていてもよい。
【0149】
本発明の実施形態の防汚膜付き透明基板は、例えば、各種タッチパネルのカバー部材として好適であり、特に、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置のカバー部材とした場合に、防汚性とタッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化を抑制でき、さらに防眩性の効果も有するという顕著な効果を発揮できる。
【0150】
[静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置]
実施形態の静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置について、図7に示す一例の断面模式図を参照しながら説明する。
【0151】
静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置100は、静電容量型インセルタッチパネル式の液晶表示素子20と、液晶表示素子20の視認側に設けられる防汚膜付き透明基板10Aとを有する。
【0152】
防汚膜付き透明基板10Aは、上記図1、2に示す防汚膜付き透明基板10Aであって、透明基板1と、透明基板1の一方の主面Sa上に、最表層として設けられた防汚膜2とを有する。防汚膜2の表面2sの形状は算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状であり、防汚膜2の表面2sで測定される表面抵抗率は1.0×10~1.0×1013Ω/□である。
【0153】
防汚膜付き透明基板10Aは、透明基板1が液晶表示素子20側に防汚膜2が視認側に位置するように設けられる。
【0154】
静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置100は、防汚膜付き透明基板として防汚膜付き透明基板10Aを備えるが、本発明の静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置においては、上に説明した本発明の実施形態の防汚膜付き透明基板を、特に制限なく使用可能である。
【0155】
なお、静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置100において、液晶表示素子20と防汚膜付き透明基板10Aは、透明粘着層11を介して接着されている。
【0156】
透明粘着層11としては、粘着剤のみからなるもの、または粘着剤中に紫外線吸収剤や導電剤等の各種機能性添加剤が含有されたものが挙げられる。粘着剤は、可視光線透過率が高く、透明基板との屈折率差が小さいものが好適である。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でもアクリル系粘着剤は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる点で好適である。
【0157】
透明粘着層11の厚さは、防汚膜付き透明基板10Aの機能に影響を与えることなく十分な接着性が確保される限り、特に制限されないが、概ね200~300μmが好ましい。
【0158】
液晶表示素子20は静電容量型インセルタッチパネル式の液晶表示素子であれば特に制限されない。液晶表示素子20は、例えば、図7に示すように、視認側から、偏光板(PL)、透明電極(TE)、カラーフィルタ(CF)、液晶層(LQ)、TFT基板(TFT)の順に構成される。
【0159】
静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置100においては、視認側に有する防汚膜付き透明基板10Aの最表層の防汚膜2の表面2sは、防汚性を有するものであって、表面形状が、算術平均粗さRaが0.01μm以上の凹凸形状を有するとともに表面抵抗率は1.0×10~1.0×1013Ω/□である。
【0160】
防汚膜2の表面2sの凹凸形状を上記のようにすることで、防汚膜2の表面2sを指でタッチした際の指の接触面積が好適化されて帯電量を適度な範囲とすることができる。また、防汚膜2の表面2sの表面抵抗率を上記範囲とすることで、適度なESD機能を有することができる。本発明においてはこのようにして、帯電量とESD機能のバランスを取ることで、タッチ感度を十分に保持しながら、液晶画面の白化を抑制することを可能とした。ここで、防汚膜2の表面2sは防汚性を有することはいうまでもなく、さらに、表面2sの凹凸形状は、防眩性を付与するものでもある。
【0161】
実施形態の静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置の用途としては、上記効果を発揮できる点から、輸送機の車載物品が好ましい。
【実施例
【0162】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によっては限定されない。例1~45のうち、例8~19、21、22および例25~40、43~45は実施例であり、例1~7、20および例23、24、41、42は比較例である。各例で使用した評価方法及び材料を以下に示す。
【0163】
<評価方法>
(表面特性)
防汚膜付き透明基板における防汚膜の表面抵抗値率(Ω/□)、60°鏡面光沢度(Gloss)、防眩性指標値(Diffusion)を上記の方法で測定した。また、防汚膜付き透明基板における防汚膜の粗さ曲線のスキューネスRsk、算術平均粗さRa、粗さ曲線の要素の平均長さRsmを、それぞれ上記の方法で測定した。
【0164】
(ヘイズ(Haze))
防汚膜付き透明基板のヘイズ(%)は、ヘイズメーター(村上色彩研究所社製HR-100型)を用いて、JIS K7136:2000に規定されている方法に従って測定した。
【0165】
(ディスプレイの白濁およびタッチ感度の評価)
防膜付き基板を、静電容量型インセルタッチパネル式の液晶表示素子上に、防汚膜の形成された主面(凹凸を有する表面)が上になるように透明粘着剤を用いて固定した。電源をONにして、防膜付き基板の表面を指でタッチした際の白濁とタッチ感度を以下の評価基準で評価した。さらに、白濁とタッチ感度の評価結果から、総合評価を行った。
【0166】
<白濁評価基準>
◎;ディスプレイが白濁しない。
○;ディスプレイの白濁が僅かにある(実用に影響しない)。
×;ディスプレイの白濁が目立つ。
【0167】
<タッチ感度評価基準>
◎;タッチ操作した際の応答速度が早い。
○;タッチ操作した際の応答速度がやや遅い(実用に影響しない)。
×;タッチ操作した際の応答速度が遅い。
【0168】
<総合評価>
◎;白濁、タッチ感度がいずれも◎である。
○;白濁、タッチ感度の一方が○であり、他方が◎である。
×;白濁、タッチ感度のいずれか一方、または両方の評価が×である。
【0169】
<材料>
(1)防眩層または導電性防眩層形成用
(シリカ前駆体)
シリカ前駆体(a)として、テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という。)およびプロピルトリメトキシシラン(以下、「PTMOS」という。)(いずれも信越シリコーン社製)を用いた。
【0170】
(鱗片状粒子分散液)
鱗片状粒子分散液としてSLV液(AGCエスアイテック社製、サンラブリーLFS HN150を解砕し、水に分散させた鱗片状シリカ粒子の分散液)を用いた。SLV液中の鱗片状シリカ粒子の平均粒子径:175nm、平均アスペクト比(平均粒子径/平均厚み):80、鱗片状シリカ粒子濃度5質量%である。
【0171】
(導電性微粒子分散液)
導電性微粒子分散液としてはV-3561(日揮触媒化成製、平均粒子径:数~20nmのアンチモンドープ酸化スズの球状微粒子を約20質量%含むエタノールを主溶剤とする分散液)またはV-4564(日揮触媒化成製、平均粒子径:数~20nmの酸化アンチモンの球状微粒子を約40質量%含む1-メトキシ-2-プロパノールを主溶剤とする分散液)を用いた。
【0172】
(液状媒体)
液状媒体として、ソルミックス(登録商標)AP-11(日本アルコール販売社製;エタノール85質量%、イソプロピルアルコール10質量%、メタノール5質量%の混合溶媒。以下、「AP-11」という。)、ジアセトンアルコール(DAA)およびプロピレングリコール(PG)を用いた。
(2)導電層形成用
上記導電性微粒子分散液および液状媒体を材料として用いた。
(3)防汚膜形成用
(含フッ素有機ケイ素化合物)
含フッ素有機ケイ素化合物としてAflud(登録商標) S-550(旭硝子社製)を用いた。
(液状媒体)
フッ素系溶剤として、アサヒクリンAC-6000(商品名;旭硝子社製、以下「AC-6000」という。)を用いた。
【0173】
(例1~22;防汚膜付き透明基板(A)に相当する例および比較例)
防汚膜付き透明基板(A)に相当する例として、以下の方法で図2の防汚膜付き透明基板10Aと同様の積層構成の例8~19、21、22の防汚膜付き透明基板(I)を作製した。比較例として、同様の方法で、導電性防眩層のかわりに防眩層または本発明の条件に合わない導電性防眩層を有する例1~7、20の防汚膜付き透明基板(Icf)を作製した。
【0174】
(例4~19用の導電性防眩層形成用液状組成物の調製)
AP-11、アルコキシシラン、濃度60質量%の硝酸水溶液、導電性微粒子分散液、SLV液を表1の例4~19に示す量用いて導電性防眩層形成用液状組成物の前駆体液を作製した。このとき、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、AP-11に、アルコキシシラン、導電性微粒子分散液、SLV液を添加し、25℃にて30分間混合した。この混合液に、濃度60質量%の硝酸水溶液を、表1の例4~19に示す量、それぞれ滴下し、さらに、60℃で60分間混合して、導電性防眩層形成用液状組成物の前駆体液を得た。得られた前駆体液100gを、表1の例4~19に示す希釈溶媒で希釈することで導電性防眩層形成用液状組成物を得た。
【0175】
(例20~22用の導電性防眩層形成用液状組成物の調製)
AP-11、アルコキシシラン、濃度10質量%の硝酸水溶液、導電性微粒子分散液、水を表1の例20~22に示す量用いて導電性防眩層形成用液状組成物の前駆体液を作製した。このとき、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、AP-11の一部に、アルコキシシランを添加し、25℃にて30分間混合した。この混合液に、濃度10質量%の硝酸水溶液を、表1に示す量、それぞれ滴下し、25℃で60分間混合した。さらに、この混合液にAP-11の残部、導電性微粒子分散液を添加し、25℃で15分間混合することで、導電性防眩層形成用液状組成物の前駆体液を得た。得られた前駆体液を、表1の例20~22に示す希釈溶媒で希釈することで導電性防眩層形成用液状組成物を得た。
【0176】
(例1~3用の防眩層形成用液状組成物の調製)
AP-11、アルコキシシラン、濃度60質量%の硝酸水溶液、SLV液を表1の例1~3に示す量用いて防眩層形成用液状組成物の前駆体液を作製した。このとき、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、AP-11に、アルコキシシラン、SLV液を添加し、25℃にて30分間混合した。この混合液に、濃度60質量%の硝酸水溶液を、表1の例1~3に示す量、それぞれ滴下し、さらに、60℃で60分間混合して、防眩層形成用液状組成物の前駆体液を得た。得られた前駆体液100gを、表1の例1~3に示す希釈溶媒で希釈することで防眩層形成用液状組成物を得た。
【0177】
(防汚膜形成用組成物の調製)
AC-6000に、Aflud S-550が0.1質量%となるように添加し、よく撹拌混合することで防汚膜形成用組成物を得た。
【0178】
(防汚膜付き透明基板(I)、(Icf)の作製)
上記で得られた導電性防眩層形成用液状組成物または防眩層形成用液状組成物を、静電塗装装置(液体静電コーター、旭サナック社製)によって、洗浄、乾燥後のガラス基板(フロート法で成形したソーダライムガラス、厚さ;1mm)上に塗布して塗膜を形成した。静電塗装装置の静電塗装ガンとしては、回転霧化式静電自動ガン(旭サナック社製、サンベル、ESA120、カップ径70mm)を用いた。
【0179】
静電塗装装置のコーティングブース内の温度を25±1.5℃の範囲内、湿度を50%±10%の範囲内に調節した。静電塗装装置のチェーンコンベア上に、あらかじめ25℃±1℃に加熱しておいた洗浄済みのガラス基板を、ステンレス板を介して置いた。チェーンコンベアで3.0m/分で等速搬送しながら、ガラス基板のトップ面に、静電塗装法によって、25±1℃の範囲内の温度の導電性防眩層形成用液状組成物または防眩層形成用液状組成物を表1に示す所定回数塗布した後、大気中、300℃で60分間焼成して導電性防眩層または防眩層を形成し、導電性防眩層付き基板または防眩層付き基板を得た。得られた導電性防眩層付き基板または防眩層付き基板の、導電性防眩層または防眩層の上に防汚層を以下のようにして形成した。
【0180】
防汚膜はスプレー装置のノズルを導電性防眩層付き基板または防眩層付き基板に対し一方の端部から他方の端部に向けた第1の方向に平行移動させて防汚膜形成用組成物を塗布する。他方の端部に到達したノズルを所定の間隔(以下、ピッチと称する。)だけ第1の方向に対して垂直な第2の方向に平行移動させる。他方の端部から一方の端部に向けて再度ノズルを平行移動させる。これを繰り返し、塗布領域が導電性防眩層付き基板または防眩層付き基板の全面に亘るように塗布する。
【0181】
このようにして得られた、防汚膜付き透明基板(I)、(Icf)について上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
(例23~45;防汚膜付き透明基板(B)に相当する例)
防汚膜付き透明基板(B)に相当する例として、以下の方法で図3の防汚膜付き透明基板10Baと同様の積層構成の例25~40、43~45の防汚膜付き透明基板(II)を作製した。比較例として、同様の方法で、本発明の条件に合わない導電層を有する例23、24、41、42の防汚膜付き透明基板(IIcf)を作製した。
【0185】
(例23~42用の導電層形成用組成物の調製)
導電性微粒子分散液V-4564またはV-3561、TEOS、水、硝酸60%水溶液を、AP-11を用いて、表3の例23~42の導電層形成用組成物の前駆体液の質量になるように混合し、室温25℃で一時間撹拌後、5℃で24時間静置した。次に、希釈溶媒と前駆体液を表3の質量になるように混合し、導電層形成用組成物を得た。
【0186】
(例43~45用の導電層形成用組成物の調製)
導電性微粒子分散液V-4564またはV-3561、TEOS、水、硝酸10%水溶液を、AP-11を用いて、表3の例43~45の導電層形成用組成物の前駆体液の質量になるように混合し、60℃で一時間撹拌後、5℃で24時間静置した。次に、希釈溶媒と前駆体液を表3の質量になるように混合し、導電層形成用組成物を得た。
【0187】
(防眩層形成用液状組成物、導電性防眩層形成用液状組成物の調製)
表1の例1、例2または例20に示すのと同様の各成分を用いて同様の方法で防眩層形成用液状組成物または導電性防眩層形成用液状組成物を作製した。
【0188】
(防汚膜付き透明基板(II)、(IIcf)の作製)
上記導電層形成用組成物を静電塗装装置(液体静電コーター、旭サナック社製)によって、洗浄、乾燥後のガラス基板(フロート法で成形したソーダライムガラス、厚さ;1mm)上に表3に示す所定回数塗布して塗膜を形成した。静電塗装装置の静電塗装ガンとしては、回転霧化式静電自動ガン(旭サナック社製、サンベル、ESA120、カップ径70mm)を用いた。
【0189】
静電塗装装置のコーティングブース内の温度を25±1.5℃の範囲内、湿度を50%±10%の範囲内に調節した。静電塗装装置のチェーンコンベア上に、あらかじめ30℃±3℃に加熱しておいた洗浄済みのガラス基板を、ステンレス板を介して置いた。チェーンコンベアで3.0m/分で等速搬送しながら、ガラス基板のトップ面(フロート法による製造時に溶融スズに接した面の反対側の面)に、静電塗装法によって、25±1.5℃の範囲内の温度の導電層形成用組成物を所定回数塗布した後、大気中、200℃で1分間焼成して導電層付き基板を得た。
【0190】
例23~42においては、上記で得られた例1または例2と同様の防眩層形成用液状組成物を、静電塗装装置(液体静電コーター、旭サナック社製)によって、導電層付き基板の導電層上に塗布して塗膜を形成した。静電塗装装置の静電塗装ガンとしては、回転霧化式静電自動ガン(旭サナック社製、サンベル、ESA120、カップ径70mm)を用いた。
【0191】
静電塗装装置のコーティングブース内の温度を25±1.5℃の範囲内、湿度を50%±10%の範囲内に調節した。静電塗装装置のチェーンコンベア上に、あらかじめ30℃±3℃に加熱しておいた導電層付き基板を、ステンレス板を介して置いた。チェーンコンベアで3.0m/分で等速搬送しながら、導電層付き基板の導電層上に、静電塗装法によって、25±1.5℃の範囲内の温度の防眩層形成用液状組成物を2回塗布した後、大気中、300℃で60分間焼成して防眩層を形成し、導電層・防眩層付き基板を得た。得られた導電層・防眩層付き基板の、防眩層の上に防汚層を上記例1と同様にして形成し、防汚膜付き透明基板(II)、(IIcf)を得た。
【0192】
例43~45においては、上記例23~42において用いた防眩層形成用液状組成物のかわりに、上記で得られた例20と同様の導電性防眩層形成用液状組成物を用いた以外は同様にして、防汚膜付き透明基板(II)を得た。
【0193】
このようにして得られた、防汚膜付き透明基板(II)、(IIcf)について上記の評価を行った。結果を表4に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【符号の説明】
【0196】
10A,10Ba,10Bb,10C,10D…防汚膜付き透明基板、
1…透明基板、2…防汚膜、3A…導電性防眩層、3B…防眩層、4A,4B,4C…導電層、5…印刷層。
100…静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示装置
20…静電容量型インセルタッチパネル式液晶表示素子、11…透明粘着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7