(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物、及びそれを用いたポリウレア樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/18 20060101AFI20230808BHJP
C08G 18/20 20060101ALI20230808BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20230808BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20230808BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230808BHJP
C09J 175/02 20060101ALI20230808BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/20
C08G18/28 075
C08G18/30 020
C08G18/32 003
C09J175/02
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2019128419
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018135539
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬底 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮平
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-098718(JP,A)
【文献】特表2010-516877(JP,A)
【文献】米国特許第04876302(US,A)
【文献】特開2017-149916(JP,A)
【文献】特表2009-531472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0152846(US,A1)
【文献】特開昭48-051949(JP,A)
【文献】特開2015-212358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 ~ 18/87
C09J 175/00 ~ 175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で示される第3級アミン化合
物(A)
、及び下記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)を含有するポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物
。
【化2】
[上記一般式(2)中、R
4、R
5、R
6及びR
7は、各々独立してメチル基又はエチル基を表す。mは2又は3である。]
【化3】
[上記一般式(3)中、R
8
、R
9
、R
10
、R
11
及びR
12
は、各々独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。nは1又は2である。環状アミン化合物(B)に光学異性体が存在する場合は、単一異性体であっても異性体混合物であってもよい。]
【請求項2】
一般式(2)において
、R
4、R
5、R
6及びR
7が、メチル基であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項3】
一般式(2)において、mが2であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項4】
一般式(3)において、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12が水素原子であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項5】
一般式(3)において、nが1であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項6】
一般式(2)で示される第3級アミン化合
物(A)と、一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)との混合比率が、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=60.0/40.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項7】
さらにポリオール化合物を含むことを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項8】
第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量と、ポリオール化合物含有量の比率が、[第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量]/[ポリオール化合物の含有量]=60/40~99.9/0.1(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項
7に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項9】
さらに水を含むことを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項10】
第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計の濃度が0.1~20重量%の範囲であることを特徴とする請求項
1に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物とを含有する接着剤組成物。
【請求項12】
ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物との混合比率が、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=5/95~90/10(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項
11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1乃至請求項
10のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水とを反応させることを特徴とするポリウレア樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項
10のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水とを混合し、加熱することを特徴とするポリウレア樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物、及びそれを用いたポリウレア樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のデッキ、テラス、フェンス、手摺り、柱、ベンチ等に使用される建築資材や、車両の内装品であるドアの内張りの芯材、トランクルームの床に敷かれるパネルの芯材等に、合成ボード(合成板)が用いられている。この合成ボードは、木材等の小片を接着剤と混合し、熱圧縮成型して得られる合成素材であり、例えば、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質の合成ボード、フォーム屑、ゴム粉砕物、紙、布、もみ等から成型される合成ボード、更には各種植物繊維から成型されるボードや、無機系軽量骨材を成型して得られる合成ボードが知られている。また、発泡ポリウレタンシート、ガラスチョップドストランドマット、及び表皮等を積層し、熱圧着して得られる自動車用天井材が知られている。
【0003】
従来、これらの合成ボードや自動車用天井材の製造時に用いられる汎用接着剤としては、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂、フェノール樹脂が主に挙げられるが、これらはホルムアルデヒドを主原料としており、これらの汎用接着剤を用いた合成ボードや自動車用天井材からは、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドが多く放散するという問題があった。
【0004】
一方、このような接着剤として、ポリウレア樹脂を使用することが試みられている。
【0005】
ポリウレア樹脂は、アミノ基(-NH2)とイソシアネート基(-NCO)との付加反応により生成するウレア結合(-NH-CO-NH-)を骨格内に有する高分子化合物であり、ホルムアルデヒドの放散は、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂、フェノール樹脂と比べると小さい。
【0006】
ポリウレア樹脂の硬化剤としては第3級アミン化合物が用いられる。硬化剤として用いられる第3級アミン化合物は、ポリウレア樹脂から揮発性のアミンとして徐々に排出され、例えば、自動車用天井材等では揮発性アミンによる臭気問題や他の材料(例えば、表皮塩ビやポリカーボネート)の変色や白化問題を引き起こす。この問題を解決する方法として分子内にポリイソシアネートと反応しうるヒドロキシ基、第1級及び第2級のアミノ基等を有するアミン化合物(一般に、「反応型アミン」と称される)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。反応型アミンはイソシアネートと反応しポリウレア樹脂骨格に固定されることで揮発が抑制されると考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-40587公報
【文献】特開2012-149225公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
背景技術に示した反応型アミンからなるポリウレア樹脂硬化剤については、ポリウレア樹脂の硬化性が不足する傾向があり、塩ビとポリカーボネートの汚染性を共に低減することができないという点で課題がある。
【0009】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成ボード製造時、又は自動車用天井材製造時などにおける熱圧縮成型が可能で、ポリウレア樹脂製造時の充分な硬化性、製造されたポリウレア樹脂の低塩ビ変色性及び低ポリカーボネート変色性を達成するポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物、及びそれを用いたポリウレア樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明のポリウレア樹脂用硬化剤組成物、及びそれを用いたポリウレア樹脂の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物、及びポリウレア樹脂の製造方法に関する。
【0012】
[1] 下記一般式(1)で示される第3級アミン化合物及び下記一般式(2)で示される第3級アミン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の第3級アミン化合物(A)を含有するポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0013】
【0014】
[上記一般式(1)中、R1、R2、及びR3は、各々独立してメチル基又はエチル基を表す。]
【0015】
【0016】
[上記一般式(2)中、R4、R5、R6及びR7は、各々独立してメチル基又はエチル基を表す。mは2又は3である。]
[2] さらに下記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)を含有することを特徴とする[1]に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0017】
【0018】
[上記一般式(3)中、R8、R9、R10、R11及びR12は、各々独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。nは1又は2である。環状アミン化合物(B)に光学異性体が存在する場合は、単一異性体であっても異性体混合物であってもよい。]
[3] 一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が、メチル基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0019】
[4] 一般式(2)において、mが2であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0020】
[5] 一般式(3)において、R8、R9、R10、R11及びR12が水素原子であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0021】
[6] 一般式(3)において、nが1であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0022】
[7] 一般式(1)で示される第3級アミン化合物及び一般式(2)で示される第3級アミン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の第3級アミン化合物(A)と、一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)との混合比率が、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=60.0/40.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることを特徴とする[2]乃至[6]に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0023】
[8] さらにポリオール化合物を含むことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0024】
[9] 第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量と、ポリオール化合物含有量の比率が、[第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量]/[ポリオール化合物の含有量]=60/40~99.9/0.1(重量比)の範囲であることを特徴とする[8]に記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0025】
[10] さらに水を含むことを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0026】
[11] 第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計の濃度が0.1~20重量%の範囲であることを特徴とする[1]乃至[10]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物。
【0027】
[12] [1]乃至[11]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物とを含有する接着剤組成物。
【0028】
[13] ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物との混合比率が、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=5/95~90/10(重量比)の範囲であることを特徴とする[12]に記載の接着剤組成物。
【0029】
[14] [1]乃至[11]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水とを反応させることを特徴とするポリウレア樹脂の製造方法。
【0030】
[15] [1]乃至[11]のいずれかに記載のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水とを混合し、加熱することを特徴とするポリウレア樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物を用いると、ポリウレア樹脂製造時の充分な硬化性、製造されたポリウレア樹脂の低塩ビ変色性及び低ポリカーボネート変色性が達成される。驚くべきことに、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物が反応型アミンでないアミン化合物を含有するにも関わらず、揮発性アミンにより促進されると考えられる塩ビ変色及びポリカーボネート変色が小さい。また、予想外なことに、一般式(3)で表される反応型アミン(B)を含有する場合、一般式(1)で示される第3級アミン化合物及び一般式(2)で示される第3級アミン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の第3級アミン化合物(A)と一般式(3)で表される反応型アミン(B)をそれぞれ単独で使用する場合に比べ、塩ビ変色性が大きく低減した。さらに、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物は、低アルミニウム腐食性を示し、近年自動車に搭載されることが多いアルミニウム製品の腐食リスクを低減することが期待される。また、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物は、低い水溶液pHを示し、硬化剤水溶液が万一作業者の体に触れた場合の薬傷リスクを低減することが期待される。ポリウレア樹脂は合成ボード製造時、又は自動車用天井材製造時における熱圧縮成型が可能であり、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を更に詳しく述べる。
【0033】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物は、上記一般式(1)で示される第3級アミン化合物及び上記一般式(2)で示される第3級アミン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の第3級アミン化合物(A)を含有することを特徴とする。
【0034】
上記一般式(1)で示される第3級アミン化合物の具体例としては、特に限定するものではないが、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N-メチルジエチルアミン又はトリエチルアミンが例示される。ポリウレア樹脂硬化性の観点から、これらのうち、トリメチルアミン又はN,N-ジメチルエチルアミンが好ましく、特に好ましくはトリメチルアミンである。
【0035】
上記一般式(2)で示される第3級アミン化合物の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン又はN,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロパンジアミンが例示される。ポリウレア樹脂硬化性の観点から、これらのうち、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン又はN,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンが好ましく、特に好ましくはN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンである。
【0036】
上記一般式(2)において、mは2又は3を表すが、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、nは2であることが好ましい。
【0037】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物については、上記の第3級アミン化合物(A)を含有し、さらに、上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)を含有することが好ましい。
【0038】
本発明において、上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)に光学異性体が存在する場合は、単一異性体であっても異性体混合物であってもよい。
【0039】
上記一般式(3)において、置換基R8、R9、R10、R11及びR12は上記の定義に該当すれば良く、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1~4のアルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)又は炭素数1~4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基又はtert-ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又はメトキシ基である。
【0040】
本発明において好ましい環状アミン化合物(B)としては、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(3)において、置換基R8、R9、R10、R11及びR12が各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基若しくはヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、R8、R9、R10、R11及びR12の全てが同じ置換基を表すことはない)、又は上記一般式(3)において、置換基R8、R9、R10、R11及びR12の全てが水素原子である化合物等が挙げられる。上記一般式(3)において、置換基R8、R9、R10、R11及びR12の全てが水素原子である化合物は、ポリウレア樹脂製造における硬化性上も好ましい。
【0041】
上記一般式(3)において、nは1又は2を表すが、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、nは1であることが好ましい。
【0042】
上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【0044】
上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325公報参照)。
【0045】
一般式(1)で示される第3級アミン化合物及び一般式(2)で示される第3級アミン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の第3級アミン化合物(A)と、一般式(3)で示される環状アミン化合物(B)との混合比率としては、特に限定するものではないが、硬化性を高め塩ビ変色性及びポリカーボネート変色性を低減する観点から、好ましくは[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=60.0/40.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることが好ましく、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=70.0/30.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることがより好ましく、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=80.0/20.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることがより好ましく、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=90.0/10.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることがより好ましく、[第3級アミン化合物(A)の含有量]/[環状アミン化合物(B)の含有量]=93.0/7.0~99.5/0.5(重量比)の範囲であることがより好ましい。
【0046】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物は、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、さらに水を含有していることが好ましい。
【0047】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物は、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、さらにポリオール化合物を含有することが好ましい。当該ポリオール化合物は、溶剤、凍結防止剤、粘度調整剤等として機能しうる。当該ポリオール化合物の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、3-(1’-ピペラジニル)-1,2-プロパンジオール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、ポリビニルアルコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミン等が挙げられ、これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、N-メチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、N-メチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンがより好ましい。
【0048】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物については、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計の濃度が0.1~20重量%の範囲であることが好ましく、0.2~15重量%の範囲であることがより好ましく、0.3~10重量%の範囲であることが更に好ましい。ここで、硬化剤組成物の濃度が10重量%以下の場合は、硬化剤組成物の水溶液を被着体に均一に塗布しやすくなり、硬化剤組成物の濃度が0.3重量%以上の場合は、硬化性が向上する。
【0049】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物が水を含有する場合、当該水の含有量としては、20~99重量%の範囲であることが好ましく、40~99重量%の範囲であることがより好ましく、60~99重量%の範囲であることがより好ましい。
【0050】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物が上記のポリオール化合物を含む場合、第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量と、当該ポリオール化合物との混合比率は、特に限定するものではないが、例えば、[第3級アミン化合物(A)と環状アミン化合物(B)の合計含有量]/[ポリオール化合物の含有量]=60/40~99.9/0.1(重量比)の範囲であることが好ましく、70/30~99/1(重量比)の範囲であることがより好ましい。
【0051】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物については、ポリイソシアネート化合物と混合させることによって接着剤組成物として用いることができる。すなわち、本発明の接着剤組成物は、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物を含有する。
【0052】
当該接着剤組成物については、ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物とポリイソシアネート化合物との混合比率が、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=5/95~90/10(重量比)の範囲であることが好ましく、ポリウレア樹脂製造における硬化性上、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=10/90~80/20(重量比)の範囲であることがより好ましく、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=20/80~70/30(重量比)の範囲であることがより好ましい。
【0053】
本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下に、ポリイソシアネート化合物と水とを反応させることにより、ポリウレア樹脂を製造することができる。ポリイソシアネート化合物と水とを反応させる際、当該水としては、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物に含まれる水をそのまま反応させることが可能である。また、別途本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物と水との混合物を調製して、当該調整物とポリイソシアネート化合物と混合し、反応させることも可能であるし、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物と水とポリイソシアネート化合物を混合し、反応させることも可能である。ポリウレア樹脂の製造の際は、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水とを混合し、加熱することが好ましい。より、具体的には、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の存在下、ポリイソシアネート化合物と水を一方の被着体の表面に塗布して接着剤層(接着性シート)を形成し、当該接着剤層に他方の被着体を重ねあわせてから、加熱し硬化させることで、所望のポリウレア樹脂を製造することができ、両被着体を接着することができる。
【0054】
上記のポリイソシアネート化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、それらのポリイソシアネートとポリオールとの反応による遊離イソシアネート含有プレポリマー類、カルボジイミド変性イソシアネート等の変性ポリイソシアネート類、又はこれらの混合体が挙げられる。
【0055】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4-TDIと2,6-TDIとの混合物、又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。
【0056】
MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートとの混合体、及び末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体の両方、又はいずれか一方を挙げることができる。
【0057】
本発明の接着剤組成物において、ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物を水溶液として用いる場合、当該ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の水溶液とポリイソシアネート化合物との混合比率は、特に限定するものではないが、例えば、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の水溶液の含有量]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=5/95~90/10(重量比)の範囲であることが好ましく、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の水溶液の含有量]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=7/93~85/15(重量比)の範囲であることがより好ましく、[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の水溶液の含有量]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]=9/91~80/20(重量比)の範囲であることが更に好ましい。[ポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物の水溶液の含有量]/[ポリイソシアネート化合物の含有量]が5/95以上であればポリイソシアネートの被着体からの染み出しが減少し、90/10以下であれば作業環境におけるアミン臭が減少する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例、参考例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0059】
実施例及び参考例において、硬化性の評価方法は以下のとおりである。
【0060】
[ポリウレア樹脂の硬化性の評価方法]
接着試験用サンプルの調製及び接着強度測定
被着体として9号帆布を使用し、10.0cm×2.5cmサイズのシートを切り出した。一方の帆布の半分の5.0cm×2.5cmの部分にポリイソシアネート(東ソー社製ポリメリックMDI、商品名:MR-200,NCO含有量=30.9%)を、塗布量が0.23~0.26gになる様、刷毛で塗布した。次いで、表1又は表2に示した硬化剤組成物の2重量%水溶液を調製し、もう一枚の帆布の半分の5.0cm×2.5cmの部分に刷毛を用いて塗布した。塗布量は0.048~0.052gの範囲であった。次に、ポリイソシアネートを塗布した帆布と硬化剤組成物水溶液を塗布した帆布を重ね、速やかに130℃に温調されたホットプレートで90kPaで30秒間熱圧着した。引張試験機(オリエンテック社製、型番:RTM-500)を用いてこのサンプルのT型剥離試験を行い、接着強度を測定した。測定結果を表1又は表2に示した。このように測定した接着強度を硬化性の指標とした。
【0061】
実施例及び参考例において、塩ビ変色性の評価方法は以下のとおりである。
【0062】
[塩ビ変色性の評価方法]
(1)塩ビシートの作成方法
白色の塩ビコンパウンド(プラス・テク社製、商品名:ポリビンコンパウンド)36gを型枠(12cm×12cm×1.5mm)に入れ、170℃に設定した手動プレス機で予熱5分後、4回のエアー抜き操作を実施し加圧(20MPa)5分でプレスした。更に10℃に設定した冷却プレス機で加圧(15MPa)しながら10分冷却し、塩ビシートの完成とした。変色試験用には、この白色シートから35mm×35mm×1.5mmをサンプリングした。
【0063】
(2)変色試験用接着シートの作製方法
被着体として9号帆布を使用し、6.0cm×6.0cmサイズのシートを切り出した。一方の帆布の全面にポリイソシアネート(東ソー社製ポリメリックMDI、商品名:MR-200,NCO含有量=30.9%)を、塗布量が0.71~0.73gになる様、刷毛で塗布した。次いで、表1又は表2に示した硬化剤組成物の2重量%水溶液を調製し、もう一枚の帆布の全面に刷毛を用いて塗布した。塗布量は0.138~0.142gの範囲であった。次に、ポリイソシアネートを塗布した帆布と硬化剤組成物水溶液を塗布した帆布を重ね、速やかに130℃に温調されたホットプレートで31kPaで30秒間熱圧着した。
【0064】
(3)塩ビシート変色の試験方法
上記方法で圧着作製した帆布シートの上に上記方法で作成した塩ビシート(35mm×35mm×1.5mm)を載せて、蓋付きのガラス製シャーレの中に入れ、90℃×168時間の熱履歴を与えた。熱履歴前後の塩ビシートの色度を色差計(日本電色工業社製、Color meter ZE6000)で測定した。熱履歴前後の塩ビシートの色度変化の値を塩ビ変色性の指標とした。結果を表1又は表2に示した。
【0065】
実施例及び参考例において、ポリカーボネート変色性の評価方法は以下のとおりである。
【0066】
[ポリカーボネート変色性の評価方法]
(1)変色試験用ポリカーボネート板
サイズが10cm×2.5cm×0.3cmの透明な市販テストピース(ポリテック社製ポリポリカーボネート、商品名:PC1600)にサンプルを吊るせる様に穴を開けた。
【0067】
(2)変色試験用接着シートの作製法
被着体として9号帆布を使用し、9.0cm×9.0cmサイズのシートを切り出した。一方の帆布の全面にポリイソシアネート(東ソー社製ポリメリックMDI、商品名:MR-200,NCO含有量=30.9%)を、塗布量が1.61~1.63gになる様、刷毛で塗布した。次いで、表1又は表2に示した硬化剤組成物の2重量%水溶液を調製し、もう一枚の帆布の全面に刷毛を用いて塗布した。塗布量は0.318~0.322gの範囲であった。次に、ポリイソシアネートを塗布した帆布と硬化剤組成物水溶液を塗布した帆布を重ね、速やかに130℃に温調されたホットプレートで14kPaで30秒間熱圧着した。
【0068】
(3)PC板変色性の試験方法
4Lの耐圧容器に、耐圧容器の蓋部分から針金で吊り下げて設置したポリカーボネート板と、上記方法で作成した接着シートを剥がして2枚にしたものを入れた。更に水5gが入った20ccのオープンサンプル瓶を耐圧容器に入れ、耐圧容器を密閉した。その耐圧容器を120℃に温調したオーブンに入れ、22時間の熱履歴を与えた。熱履歴後のポリカーボネート板の変色度合いを目視で確認した。変色度合いは以下のように数値で表され、小さい数値ほど変色が小さい。結果を表1又は表2に示した。
【0069】
1:変化なし、2:わずかに白化、3やや白化、4:光があまり透過しないほどに白化、5:光がほぼ透過しないほどに白化
実施例及び参考例において、アルミニウム腐食性の評価方法は以下のとおりである。
【0070】
[アルミニウム腐食性の評価方法]
1.5cm×1.5cmに切り取ったアルミホイルと表1又は表2に示した硬化剤組成物の2重量%水溶液5ccを20ccのサンプル瓶に入れて密閉した。室温で24時間放置した後、アルミホイル片の腐食度合いを目視で確認した。腐食度合いは以下のように数値で表され、小さい数値ほど腐食が小さい。結果を表1又は表2に示した。
【0071】
1:溶解しない、2:やや溶解、3:ほぼ溶解、4:完全に溶解
実施例及び参考例において、硬化剤水溶液のpHの評価方法は以下のとおりである。
【0072】
[硬化剤水溶液のpH]
硬化剤の5重量%水溶液100ccをビーカーに入れ、そのpHを卓上型pHメーター(堀場製作所社製、LAQUAact D-71AC)で測定した。
【0073】
実施例1~9、参考例1~9
【0074】
【0075】
【0076】
表1の実施例1~9より明らかなように、本発明のポリウレア樹脂製造用硬化剤組成物を用い、熱圧縮成形により得られたポリウレア樹脂は、0.4×100g/25mm以上の充分な接着強度を示しており、色度変化0.7以下の小さい塩ビ変色性、2以下の小さいポリカーボネート変色性、1の小さいアルミニウム腐食性、11.5~11.7の小さいpHを示した。
【0077】
一方、本発明に該当しない硬化剤組成物を用いた参考例1~9は、塩ビ変色性が色度変化0.7超又はポリカーボネート変色性が3以上の少なくともいずれか一方を示し、塩ビ変色性とポリカーボネート変色性の少なくともいずれか一方が悪い結果を与えた。1種のみの非反応型アミンを用いた参考例1は、3の大きなポリカーボネート変色性を示した。同様に1種のみの非反応型アミンをそれぞれ用いた参考例2~3は、いずれも色度変化0.7以上の大きな塩ビ変色性を示した。1種又は2種以上の反応型アミンを用いた参考例4~7は、いずれも3以上の大きなポリカーボネート変色性を示した。一般式(2)で示される第3級アミン化合物(A)と一般式(1)又は(2)で表されない非反応型アミンを含有する硬化剤組成物を用いた一般式(3)で表される反応型アミン(B)と一般式(3)で表されない反応型アミンを含有する硬化剤組成物を用いた参考例8及び9は、いずれも4以上の大きなポリカーボネート変色性を示した。
【0078】
これらの結果から、本発明の硬化剤組成物を用いた場合のみ、充分な硬化性、低塩ビ変色性及び低ポリカーボネート変色性の全てを達成することがわかる。
【0079】
また、参考例2、5及び7は2以上の大きなアルミニウム腐食性を示し、参考例5及び7は12以上の大きなpHを示した。
【0080】
なお、実施例1と2を比較すると、第3級アミン化合物(A)に加えて一般式(3)で表される反応型アミン(B)を少量含有すると塩ビ変色性が改善することがわかり、実施例2~4を比較すると、第3級アミン化合物(A)の割合が充分高い場合、硬化性、塩ビ変色性及びポリカーボネート変色性が改善することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の硬化剤組成物を用いて得られたポリウレア樹脂は、合成ボードや自動車用天井材の製造において接着剤として利用できる。