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特許7326987自熔製錬炉の補助バーナーおよび補助バーナーの製造方法
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  • 特許-自熔製錬炉の補助バーナーおよび補助バーナーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】自熔製錬炉の補助バーナーおよび補助バーナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/48 20060101AFI20230808BHJP
   C22B 15/00 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
F23D14/48 C
F23D14/48 Z
C22B15/00 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019150086
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021032431
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武内 秀明
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-097411(JP,A)
【文献】特開平10-288311(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
C22B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自熔製錬炉の精鉱バーナーに設けられる補助バーナーであって、
内部にガスが供給される吹込管と、
前記吹込管の下端に設けられた分散コーンと、を備え、
前記吹込管は、本体部と、内部から外部に向かって前記ガスを噴出する複数の噴出孔が形成された下端部とからなり、
前記下端部の外面は硬化層により被覆されており、
前記硬化層は、硬さ1,100HV以上かつ厚さ0.2mm以上、または、硬さ1,200HV以上かつ厚さ0.02mm以上である
ことを特徴とする自熔製錬炉の補助バーナー。
【請求項2】
前記硬化層は、自溶合金溶射、高速フレーム溶射または窒化処理により形成されたものである
ことを特徴とする請求項記載の自熔製錬炉の補助バーナー。
【請求項3】
前記下端部は前記本体部に接合されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の自熔製錬炉の補助バーナー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の補助バーナーの製造方法であって、
前記吹込管の前記下端部に複数の前記噴出孔を形成する噴出孔形成工程と、
前記下端部の外面を前記硬化層で被覆する硬化工程と、を備える
ことを特徴とする補助バーナーの製造方法。
【請求項5】
前記硬化工程は、前記下端部を前記吹込管の前記本体部から分離した状態で行なわれ、
前記硬化工程の後に、前記下端部を前記本体部に接合する接合工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項記載の補助バーナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自熔製錬炉の補助バーナーおよび補助バーナーの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐摩耗性を有する補助バーナー、およびその補助バーナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅硫化物、ニッケル硫化物などの非鉄金属硫化物を原料とする熔融製錬には自熔製錬炉が用いられる。自熔製錬炉には製錬原料と反応用ガスとを炉内に供給する精鉱バーナーが備えられている。
【0003】
自熔製錬炉の操業においては、炉内の熔融製錬反応を制御し、安定した操業を行なうことが求められる。熔融製錬反応は製錬原料に含まれる金属硫化物の酸化反応である。この酸化反応は製錬原料と反応用ガスとの接触によって生じる。そのため、製錬原料と反応用ガスとがしっかりと混合しているほど、酸化反応が進行しやすい。このことから、精鉱バーナー内では製錬原料と反応用ガスとを混合しておく予混合が行なわれる。
【0004】
精鉱バーナーの中心には補助バーナーが設けられている。補助バーナーの下端には分散コーンが設けられている。また、分散コーンの上方には酸素を噴出する噴出孔が設けられている(特許文献1参照)。分散コーンの傾斜面と噴出孔から噴出した酸素とにより、製錬原料が適度に分散し、反応用ガスと混合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-97411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補助バーナーは高温、高酸化雰囲気という過酷な環境下で製錬原料と接触するため摩耗、損傷しやすい。噴出孔周囲の部材が摩耗すると、噴出孔が徐々に拡大、変形し、酸素の噴出方向および流速が変化する。そうすると、製錬原料の分散が不均一になり、自熔製錬炉の効率が低下する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、噴出孔の拡大、変形を抑制できる補助バーナー、およびその補助バーナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の自熔製錬炉の補助バーナーは、自熔製錬炉の精鉱バーナーに設けられる補助バーナーであって、内部にガスが供給される吹込管と、前記吹込管の下端に設けられた分散コーンと、を備え、前記吹込管は、本体部と、内部から外部に向かって前記ガスを噴出する複数の噴出孔が形成された下端部とからなり、前記下端部の外面は硬化層により被覆されており、前記硬化層は、硬さ1,100HV以上かつ厚さ0.2mm以上、または、硬さ1,200HV以上かつ厚さ0.02mm以上であることを特徴とする。
第2発明の自熔製錬炉の補助バーナーは、第1発明において、前記硬化層は、自溶合金溶射、高速フレーム溶射または窒化処理により形成されたものであることを特徴とする。
第3発明の自熔製錬炉の補助バーナーは、第1または第2発明において、前記下端部は前記本体部に接合されていることを特徴とする。
第4発明の補助バーナーの製造方法は、第1~第3発明のいずれかの補助バーナーの製造方法であって、前記吹込管の前記下端部に複数の前記噴出孔を形成する噴出孔形成工程と、前記下端部の外面を前記硬化層で被覆する硬化工程と、を備えることを特徴とする。
第5発明の補助バーナーの製造方法は、第4発明において、前記硬化工程は、前記下端部を前記吹込管の前記本体部から分離した状態で行なわれ、前記硬化工程の後に、前記下端部を前記本体部に接合する接合工程をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吹込管の下端部が硬化層により被覆されているので、噴出孔の周囲が摩耗しにくく、噴出孔の拡大、変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自熔製錬炉の縦断面図である。
図2】精鉱バーナーの縦断面図である。
図3】補助バーナーの正面図である。
図4】補助バーナーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(自熔製錬炉)
まず、自熔製錬炉FFの全体構成を説明する。
図1に示すように、自熔製錬炉FFはセトラー11を備えている。セトラー11の一端の上面には反応塔12が立設している。セトラー11の他端の上面には排煙道13が立設している。反応塔12の上端には精鉱バーナー20が設けられている。セトラー11の側壁には、カラミの高さにカラミ抜き口14が、カワの高さにカワ抜き口15が、離れて設けられている。
【0012】
自熔製錬炉FFを用いた銅製錬操業は以下のように行なわれる。
精鉱バーナー20から粉状の製錬原料と、反応用ガス(例えば酸素富化空気)とが反応塔12内に吹き込まれる。製錬原料には少なくとも硫化銅精鉱(以下、単に「銅精鉱」と称する。)とフラックスとが含まれている。フラックスは良質のカラミを製造するために添加されるものであり、例えば珪砂である。また、製錬原料には必要に応じて冷材などが含まれている。
【0013】
反応塔12内に吹きこまれた製錬原料は、補助バーナーの熱、反応塔12の炉壁内の輻射熱などにより昇温され、銅精鉱中の硫黄分および鉄分が燃焼することで熔融する。製錬原料が熔融した熔体はセトラー11内に溜められる。セトラー11内において熔体はカラミとカワとに比重分離する。
【0014】
熔体上部のカラミはカラミ抜き口14から排出され、電気錬かん炉で処理される。熔体下部のカワは、次工程の転炉の要求に応じて適量がカワ抜き口15から抜き出される。反応塔12およびセトラー11内で発生した製錬ガスは、排煙道13を通って自熔製錬炉FFから排出され、排熱ボイラーで熱が回収される。
【0015】
(精鉱バーナー)
つぎに、精鉱バーナー20の構成を説明する。
図2に示すように、精鉱バーナー20は反応用ガスが導入されるウインドボックス21を備えている。ウインドボックス21の下部は下方に絞られたコーン状に形成されており、その下端に円筒状のバーナーコーン22が接続されている。バーナーコーン22は反応塔12の上端に立設している。また、バーナーコーン22には点検口23が設けられている。
【0016】
精鉱バーナー20は補助バーナー30を備えている。補助バーナー30はウインドボックス21およびバーナーコーン22の内部を貫き、鉛直に配置されている。補助バーナー30はバーナーコーン22の中心に配置されている。補助バーナー30の炎が噴射される下端はバーナーコーン22の下端付近に位置している。
【0017】
補助バーナー30の外周を囲むように精鉱シュート24が設けられている。精鉱シュート24は補助バーナー30と同軸の筒部材である。精鉱シュート24はウインドボックス21内に配置されており、ウインドボックス21内で昇降可能となっている。製錬原料は精鉱シュート24を通して自熔製錬炉FF内に供給される。
【0018】
精鉱シュート24の外周を囲むように風速調整器25が設けられている。風速調整器25はウインドボックス21内に配置されており、精鉱シュート24とは独立してウインドボックス21内で昇降可能となっている。風速調整器25を昇降させることで、ウインドボックス21からバーナーコーン22に供給される反応用ガスの流路幅を調整できる。これにより、反応用ガスの流速を調整できる。
【0019】
(補助バーナー)
つぎに、本発明の一実施形態に係る補助バーナー30の構成を説明する。
図3に示すように、補助バーナー30は吹込管31を有する。吹込管31は鉛直に配置された中空の管である。以下、吹込管31のうち、鉛直方向に沿って下端から所定幅の領域を下端部31aと称し、残部を本体部31bと称する。下端部31aには、吹込管31の内部と外部とを連通する噴出孔32が周方向に沿って複数形成されている。
【0020】
吹込管31(下端部31a)の下端には分散コーン33が設けられている。分散コーン33は下方に広がる円錐状の部材である。
【0021】
図4に示すように、吹込管31の内部には内管34が設けられている。内管34は吹込管31よりも小径の中空の管である。吹込管31と内管34とは、吹込管31を外側として、同軸に配置されている。分散コーン33は吹込管31の下端と、内管34の下端部とに固定されている。
【0022】
内管34の内部には、重油バーナー35が配置されている。重油バーナー35のノズル35aは、内管34の下端付近に配置されている。
【0023】
吹込管31と内管34との間には隙間があり、ガスの流路となっている。吹込管31にはこの流路に通ずる第1供給口36が設けられている。第1供給口36を通して、吹込管31の内部にガスが供給される。吹込管31の内部に供給されたガスは、吹込管31と内管34との間の流路を通り、噴出孔32から噴出する。この際、ガスは噴出孔32を通って、吹込管31の内部から外部に向かって噴出する。なお、吹込管31に供給されるガスは特に限定されないが、高圧の酸素または酸素富化空気が好ましい。
【0024】
内管34には、その内部に通ずる第2供給口37が設けられている。第2供給口37を通して、内管34の内部に酸素または酸素富化空気が供給される。内管34の内部に供給された酸素または酸素富化空気は、内管34の内部を通って、下端から排出される。この際、酸素または酸素富化空気は、重油バーナー35のノズル35aから噴出した重油の着火および燃焼に供される。
【0025】
製錬原料は精鉱シュート24を経て落下する(図2参照)。落下した製錬原料は分散コーン33の傾斜面により分散する。また、製錬原料は噴出孔32から噴出するガスによっても分散する。これにより、製錬原料と反応用ガスとが混合される。なお、噴出孔32から噴出したガスが分散コーン33の傾斜面を覆うことから、製錬原料の衝突による分散コーン33の摩耗を軽減できる。
【0026】
ところで、本願発明者は、補助バーナー30を所定期間使用すると、噴出孔32より下側の部材が局所的に摩耗するという知見を得ている。これは以下の理由によるものと考えられる。吹込管31の外部における反応用ガスの流れと、噴出孔32から噴出したガスの流れとにより、噴出孔32より下側には強い渦が形成される。この渦に巻き込まれた製錬原料が衝突することにより、噴出孔32より下側の部材が局所的に摩耗する。
【0027】
噴出孔32の周囲の部材が摩耗すると、噴出孔32が拡大、変形することがある。そうすると、噴出孔32から噴出されるガスの噴出方向および流速が変化し、製錬原料の分散が不均一になる。そのため、このような噴出孔32が拡大、変形を抑制する必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態の補助バーナー30は、図3に示すように、吹込管31の下端部31aの外面が硬化層により被覆されている。すなわち、噴出孔32の周囲の部材が硬化層により被覆されている。そのため、噴出孔32の周囲が摩耗しにくく、噴出孔32の拡大、変形を抑制できる。
【0029】
補助バーナー30を予め定められた期間使用しても、吹込管31の母材が摩耗しないように、硬化層の硬さ、および厚さを設定することが好ましい。具体的には、硬化層の硬さを800HV以上とし、厚さを0.5mm以上とすることが好ましい。硬化層の硬さを1,100HV以上とし、厚さを0.2mm以上としてもよい。また、硬化層の硬さを1,200HV以上とし、厚さを0.02mm以上としてもよい。
【0030】
(製造方法)
つぎに、補助バーナー30の製造方法を説明する。
吹込管31は、下端部31aに複数の噴出孔32を形成し(噴出孔形成工程)、下端部31aの外面を硬化層で被覆する(硬化工程)ことで形成できる。なお、噴出孔形成工程の後に硬化工程を行なってもよいし、硬化工程の後に噴出孔形成工程を行なってもよい。その後、吹込管31と他の部材、すなわち、分散コーン33、内管34、重油バーナー35などを組み合わせれば補助バーナー30が完成する。
【0031】
硬化工程において、硬化層を形成する手段は、特に限定されないが、例えば、自溶合金溶射、高速フレーム溶射、窒化処理が挙げられる。以下、それぞれの処理の詳細を説明する。
【0032】
(1)自溶合金溶射
自溶合金溶射は、自溶合金粉末を溶射後、再溶融処理を行なう処理である。自溶合金粉末はニッケル基合金、コバルト基合金などの合金にフラックスを含有させたものである。また、自溶合金粉末は、タングステンカーバイドなどの高強度材料を含むことが好ましい。自溶合金溶射は、専用のトーチがあれば、場所を問わず処理を行なえる。施工性に優れ、スポット溶射も可能である。自溶合金溶射により、硬さ800HV程度の硬化層を形成できる。
【0033】
(2)高速フレーム溶射
高速フレーム溶射は、溶射ガン燃焼室の圧力を高めることによって爆発燃焼炎に匹敵する高速火炎を発生させ、燃焼炎ジェット流の中心に粉末溶射材を供給して溶融または半溶融状態にし、高速度で連続噴射する処理である。粉末溶射材が超音速度で基材に衝突するため、繊密で高密着力を有する皮膜を形成できる。粉末溶射材として、各種金属、炭化物系サーメット、酸化物系サーメット、セラミックスなどを採用できる。また、粉末溶射材は、タングステンカーバイドなどの高強度材料を含むことが好ましい。高速フレーム溶射により、硬さ1,100HV程度の硬化層を形成できる。
【0034】
(3)窒化処理
窒化処理は金属表面から窒素原子を進入させ、硬化層を得る金属表面処理である。窒化処理として、ガス窒化法、塩浴窒化法、イオン窒化法などが挙げられる。窒化処理により、硬さ1,200HV程度の硬化層を形成できる。
【0035】
通常、窒化処理は専用の処理装置内で行なわれる。そのため、窒化処理できる部材のサイズが制限される。そこで、吹込管31の外面に硬化層を形成するために、以下の手順で処理を行なってもよい。
【0036】
まず、吹込管31として下端部31aと本体部31bとを分離したものを用意する。そして、下端部31aのみを処理装置の内部に配置し、硬化層を形成する処理を行なう。すなわち、下端部31aを本体部31bから分離した状態で硬化工程を行なう。その後、溶接などの方法により、下端部31aを本体部31bに接合する(接合工程)。
【実施例
【0037】
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
補助バーナーとして吹込管の下端部の外面を硬化層で被覆したものを作製した。硬化層は、自溶合金溶射により形成した。溶射材として、ニッケル基合金にタングステンカーバイドを混合したものを用いた。形成された硬化層の硬さは800HV、厚さは0.5mmであった。
【0038】
補助バーナーを精鉱バーナーに組み込み、自熔製錬炉の操業を24日間行なった。その後、補助バーナーを取り出し、吹込管の下端部の磨耗状況を観察した。その結果、吹込管の噴出孔の周囲に摩耗は確認されなかった。
【0039】
(実施例2)
補助バーナーとして吹込管の下端部の外面を硬化層で被覆したものを作製した。硬化層は、高速フレーム溶射により形成した。溶射材として、コバルト、クロムにタングステンカーバイドを混合したものを用いた。形成された硬化層の硬さは1,100HV、厚さは0.2mmであった。
【0040】
補助バーナーを精鉱バーナーに組み込み、自熔製錬炉の操業を24日間行なった。その後、補助バーナーを取り出し、吹込管の下端部の磨耗状況を観察した。その結果、吹込管の噴出孔の周囲に摩耗は確認されなかった。
【0041】
(実施例3)
補助バーナーとして吹込管の下端部の外面を硬化層で被覆したものを作製した。硬化層は、イオン窒化により形成した。具体的には、吹込管の下端部を本体部より分離し、下端部のみを処理装置内に載置してイオン窒化により硬化層を形成した。その後、硬化層が形成された下端部を本体部に溶接した。形成された硬化層の硬さは1,200HV、厚さは0.02mmであった。
【0042】
補助バーナーを精鉱バーナーに組み込み、自熔製錬炉の操業を24日間行なった。その後、補助バーナーを取り出し、吹込管の下端部の磨耗状況を観察した。その結果、吹込管の噴出孔の周囲に若干の摩耗が確認された。しかし、噴出孔の拡大、変形は見られなかった。
【0043】
(比較例1)
補助バーナーの吹込管に硬化層を形成しなかった。なお、吹込管の材質はSUS304であり、表面の硬さは180HVである。補助バーナーを精鉱バーナーに組み込み、自熔製錬炉の操業を24日間行なった。その後、補助バーナーを取り出し、吹込管の下端部の磨耗状況を観察した。その結果、吹込管の噴出孔の周囲に摩耗が確認された。また、噴出孔の拡大、変形が確認された。
【0044】
以上の結果を表1にまとめる。
【表1】
なお、評価は、摩耗量が硬化層の厚さ以下の場合を◎、摩耗量が硬化層の厚さを超えているが、噴出孔が拡大、変形していない場合を○、摩耗により噴出孔が拡大、変形した場合を×とした。
【0045】
以上より、吹込管の下端部を硬化層で被覆することで、噴出孔の拡大、変形を抑制できることが確認された。また、硬化層を形成する処理として、自溶合金溶射、高速フレーム溶射、窒化処理を採用でき、これらのなかでも自溶合金溶射、高速フレーム溶射が好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0046】
FF 自熔製錬炉
20 精鉱バーナー
30 補助バーナー
31 吹込管
31a 下端部
31b 本体部
32 噴出孔
33 分散コーン
34 内管
35 重油バーナー
図1
図2
図3
図4