(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】カテコール官能性オルガノポリシロキサン、その製造方法及び粉体処理剤
(51)【国際特許分類】
C08G 77/14 20060101AFI20230808BHJP
A61K 8/892 20060101ALI20230808BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230808BHJP
C08G 77/38 20060101ALI20230808BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G77/14
A61K8/892
A61Q17/04
C08G77/38
C08L83/06
(21)【出願番号】P 2020095227
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍太
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0044685(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103613611(CN,A)
【文献】特開2006-182949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/14
A61K 8/892
A61Q 17/04
C08G 77/38
C08L 83/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるカテコール官能性オルガノポリシロキサン
を含む粉体処理剤。
【化1】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基、又は下記式(2)で表される置換基であり、a、b、c及びdは0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たす。但し、1分子あたり少なくとも1つのR
2は式(2)で表される置換基である。上記式(1)の各繰り返し単位中の酸素原子は、他の繰り返し単位中の酸素原子と共通する。)
【化2】
(式(2)中、Y
1は、非置換または置換の炭素数2~6の2価炭化水素基である。前記式(2)中、波線で区切られた結合手は、前記式(1)において、ケイ素原子と結合するものである。)
【請求項2】
式(1)において、a=2、b=0~1,000、c=0、d=0であることを特徴とする、請求項1に記載のカテコール官能性オルガノポリシロキサン
を含む粉体処理剤。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の粉体処理剤と粉体とが油剤中に分散していることを特徴とする分散体。
【請求項4】
請求項
3に記載の分散体を含有する化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコール官能性オルガノポリシロキサン、その製造方法、該カテコール官能性オルガノポリシロキサンを含む粉体処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉体を液体中に安定かつ高濃度に分散させることは難しく、粉体の持つ電荷や極性、微量の不純物によって凝集が起こり、これが粉体の分散性や安定性を阻害する。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は、経時での高粘度化が顕著であり、その製品は、輸送等が困難になるばかりでなく、ゲル化を起こし、使用困難となる場合もある。
【0003】
粉体の分散安定性を向上させるための手法としては、ホモミキサー、ミル、ニーダー、ローラー等の機械力による混合が挙げられるが、機械力のみによる分散には限界があり、一旦は、粉体が均一に分散しても経時で凝集が起こるケースが多い。
そこで、粉体の分散性や安定性を向上させるために、粉体の表面を種々の重合体材料で処理することが提案されている。前記重合体材料は、粉体に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を併せ持ち、この2つの機能部位のバランスで重合体材料の性能が決まる。
【0004】
化粧料の分野では、粉体の表面を処理する重合体材料として、1分子内に反応性部位を有するオルガノポリシロキサンを使用するケースが多い。その多くは該オルガノポリシロキサンと、粉体の表面とで化学結合を形成させ、各種配合系に使用した後も経時で粉体の表面からオルガノポリシロキサンが脱離しづらいような設計になっている。
【0005】
特許文献1では、粉体類に対してメチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理する方法が開示されている。しかしこの方法では、粉体に表面処理後も未反応のヒドロシリル基が残存するため、その粉体を液性化粧料に配合した場合、その条件によっては水素ガスを発生する等の問題がある。
【0006】
特許文献2では、粉体類に対して直鎖状の片末端アルコキシ変性オルガノポリシロキサンで表面処理する方法が開示されている。この方法では、反応時にアルコール化合物が副生するため、使用方法によっては、アルコール化合物を除く工程が増えてしまうという問題がある。
【0007】
一方、これらの粉体表面と共有結合を形成するものに対し、アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基を変性させたオルガノポリシロキサンは、水素結合による粉体との吸着を狙った処理剤であり、副生成物等が発生しない利点があるものの、粉体表面への吸着性が不十分であったり、経時で粉体の表面からオルガノポリシロキサンが脱離してしまう問題がしばしば生じる。そのため、粉体表面との吸着性を向上する官能基を導入したオルガノポリシロキサンの開発が望まれていた。
【0008】
近年、接着剤等への応用展開を目指し、カテコール構造を有する化合物の研究が盛んに行われている。カテコール構造は、水素結合、金属への配位、π-π相互作用などの多くの相互作用効果を持つことが知られており、これらの相互作用により多種多様な材料への強い接着・吸着が可能となる。
【0009】
特許文献3では、カテコール構造を有するシラン化合物をガラス繊維とエポキシ樹脂の接着剤として使用する方法について開示されている。しかし、これまでにカテコール構造を有するオルガノポリシロキサン、およびこれを用いた応用例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平7-53326号公報
【文献】特開平7-196946号公報
【文献】特開2015-182977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、1分子内にカテコール構造を有するオルガノポリシロキサン、および該オルガノポリシロキサンから構成され、分散性、流動性、及び経時安定性に優れた分散体を与える粉体処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、1分子内にカテコール構造を有するオルガノポリシロキサン(カテコール官能性オルガノポリシロキサン)が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明は下記発明を提供するものである。
【0014】
[1]
下記式(1)で表されるカテコール官能性オルガノポリシロキサン。
【化1】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基、又は下記式(2)で表される置換基であり、a、b、c及びdは0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たす。但し、1分子あたり少なくとも1つのR
2は式(2)で表される置換基である。上記式(1)の各繰り返し単位中の酸素原子は、他の繰り返し単位中の酸素原子と共通する。)
【化2】
(式(2)中、Y
1は、非置換または置換の炭素数2~6の2価炭化水素基である。前記式(2)中、波線で区切られた結合手は、前記式(1)において、ケイ素原子と結合するものである。)
[2]
式(1)において、a=2、b=0~1,000、c=0、d=0であることを特徴とする、[1]に記載のカテコール官能性オルガノポリシロキサン。
[3]
下記式(3)
【化3】
(式(3)中、R
1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、又は非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、a、b、c及びdは0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たす。但し、1分子あたり少なくとも1つのR
3は水素原子である。上記式(3)の各繰り返し単位中の酸素原子は、他の繰り返し単位中の酸素原子と共通する。
)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
下記式(4)
【化4】
(式(4)において、Y
2は、単結合、または非置換若しくは置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。)
で表される不飽和化合物とを
ヒドロシリル化反応させる工程を有する、[1]又は[2]に記載のカテコール官能性オルガノポリシロキサンの製造方法。
[4]
[1]又は[2]に記載のカテコール官能性オルガノポリシロキサンを含む粉体処理剤。
[5]
[4]に記載の粉体処理剤と粉体とが油剤中に分散していることを特徴とする分散体。
[6]
[5]に記載の分散体を含有する化粧料組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、1分子内にカテコール構造を有するオルガノポリシロキサン(カテコール官能性オルガノポリシロキサン)である。該オルガノポリシロキサンを含む粉体処理剤は、オルガノポリシロキサンのカテコール基中の2つの水酸基及び芳香環が粉体表面と強く相互作用し、オルガノポリシロキサンが分散媒である油剤に対する相溶性を向上し、粉体の凝集を防止できるため、分散性、流動性、及び経時安定性に優れた分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0017】
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンは、下記式(1)で表されるカテコール官能性オルガノポリシロキサンである。
【化5】
(式(1)において、R
1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基、又は下記式(2)で表される置換基であり、a、b、c及びdは0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たす。但し、1分子あたり少なくとも1つのR
2は式(2)で表される置換基である。上記式(1)の各繰り返し単位中の酸素原子は、他の繰り返し単位中の酸素原子と共通する。)
【化6】
(式(2)において、Y
1は、非置換または置換の炭素数2~6の2価炭化水素基である。前記式(2)中、波線で区切られた結合手は、前記式(1)において、ケイ素原子と結合するものである。)
【0018】
式(1)中、R1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。このようなR1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基等の非置換1価炭化水素基、及びこれらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をヒドロキシ基、ハロゲン原子などで置換した1価炭化水素基(例えば、ヒドロキシプロピル基、1-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基など)等が挙げられる。
【0019】
式(1)中、R2は、上記R1と同様の非置換または置換の1価炭化水素基、または式(2)で表されるカテコール官能性置換基であり、1分子あたり少なくとも1つのR2は式(2)で表される置換基である。
【0020】
式(1)中、a、b、c及びdは、0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たすように、a、b、c及びdを選べばよいが、好ましくは、a=2、b=0~1,000、c=0、d=0、更に好ましくは、a=2、b=0~100、c=0、d=0である。
【0021】
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンは、性状が液体で低粘度であると取り扱いやすいため好ましい。
【0022】
式(2)中、Y1は、非置換または置換の炭素数2~6の2価炭化水素基である。このようなY1としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などのアルキレン基等の非置換2価炭化水素基及び、エーテル結合又はカルボニル結合が介在した置換2価炭化水素基が挙げられる。
【0023】
式(2)で表されるカテコール基は1分子内に1つ以上含まれていれば、官能基量に制限はないが、粉体への付着性を維持するために、200~10,000g/molが好ましく、200~5,000g/molがより好ましい。
【0024】
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は特に限定されないが、該オルガノポリシロキサンの性状が液体で低粘度であると取り扱いやすいため、200~100,000が好ましく、500~10,000がより好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3重量%のTHF溶液)
【0025】
製造方法
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサン(式(1))は、以下の方法で製造される。
即ち、本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサン(式(1))は、下記式(3)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサンと、下記式(4)で表される不飽和化合物とをヒドロシリル化反応させることによって製造することができる。
【化7】
(式(3)において、R
1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、又は非置換若しくは置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、a、b、c及びdは0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たす。但し、1分子あたり少なくとも1つのR
3は水素原子である。上記式(3)の各繰り返し単位中の酸素原子は、他の繰り返し単位中の酸素原子と共通する。)
【化8】
(式(4)において、Y
2は、単結合、または非置換若しくは置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。)
【0026】
式(3)中、R1はそれぞれ独立に、非置換または置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。このようなR1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基等の非置換1価炭化水素基、及びこれらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をヒドロキシ基、ハロゲン原子などで置換した1価炭化水素基(例えば、ヒドロキシプロピル基、1-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基など)等が挙げられる。
【0027】
式(3)中、R3はそれぞれ独立に、水素原子、又は非置換若しくは置換の炭素数1~6の1価炭化水素基であり、1分子あたり少なくとも1つのR3は水素原子である。このようなR3としては、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基等の非置換1価炭化水素基、及びこれらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をヒドロキシ基、ハロゲン原子などで置換した1価炭化水素基(例えば、ヒドロキシプロピル基、1-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基など)等が挙げられる。
【0028】
式(3)中、a、b、c及びdは、0または正数であり、a+b+c+d=2~1,000を満たすように、a、b、c及びdを選べばよいが、好ましくは、a=2、b=0~1,000、c=0、d=0、更に好ましくは、a=2、b=0~100、c=0、d=0である。
【0029】
式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、性状が液体で低粘度の方が取り扱いやすいため好ましい。
【0030】
式(4)中、Y2は、単結合、または非置換若しくは置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。このようなY2としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基などのアルキレン基等の非置換2価炭化水素基及び、エーテル結合又はカルボニル結合が介在した置換2価炭化水素基が挙げられる。
【0031】
上記式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、上記式(4)で表される不飽和化合物とのヒドロシリル化反応では、白金族金属系触媒を使用してもよい。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。これらの白金族金属系触媒の添加量は触媒量であり、組成物全体の質量に対して白金族金属原子換算で1~50ppmの範囲とすればよく、2~20ppmの範囲とすることがより好ましい。
【0032】
ここで、式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、式(4)で表される不飽和化合物の配合比は、式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基1モルに対して、式(4)で表される不飽和化合物中の不飽和基が、0.8~2モルの範囲となる量であることが好ましく、0.9~1.3モルの範囲となる量であることがより好ましい。
【0033】
上記ヒドロシリル化反応を行う温度及び時間は特に限定されないが、式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、式(4)で表される不飽和化合物が十分に反応すればよく、反応温度は60~140℃が好ましく、80~120℃がより好ましく、反応時間は0.5~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0034】
上記ヒドロシリル化反応は、必要に応じて、溶媒中で行ってもよい。溶媒の種類は特に限定されないが、具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤、へキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤などが挙げられる。これらのなかでも、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、へキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤が特に好ましい。
【0035】
分散体
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンは、粉体を油剤中に分散させる際に好適に用いられ、該オルガノポリシロキサンで該粉体を処理することで、油剤中に均一かつ安定的に分散可能な分散体を得ることができる。
前記分散体で用いる粉体は特に限定されず、該粉体としては、一般に使用される無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、タール色素などが挙げられる。
【0036】
無機粉体の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ、シリル化シリカ、疎水化シリカ等が挙げられる。これらの無機粉体は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
有機粉体の具体例としては、ポリアミドパウダー、ポリアクリル酸・アクリル酸エステルパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタン、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロン12、ナイロン6、ジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つ架橋型球状ジメチルポリシロキサン微粉末、架橋型球状ポリメチルシルセスキオキサン微粉末、架橋型球状オルガノポリシロキサンゴムの表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆してなる微粉末、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、脂肪酸デンプン誘導体末、ラウロイルリジン等が挙げられる。これらの有機粉体は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)の具体例としては、ウンデシレン酸亜鉛、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの界面活性剤金属塩粉体は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
有色顔料の具体例としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色系顔料、γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。該天然色素の具体例としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等が挙げられる。これらの有色顔料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
パール顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等が挙げられる。これらのパール顔料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
タール色素の具体例としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等が挙げられる。これらのタール色素は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらの粉体のうち、ジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つ架橋型球状ジメチルポリシロキサン微粉末、架橋型球状ポリメチルシルセスキオキサン微粉末、架橋型球状オルガノポリシロキサンゴムの表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆してなる微粉末、疎水化シリカが特に好ましい。
これらの粉体の市販品としては、KMP-590、KSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-105、KSP-300(何れも信越化学工業(株)製)等がある。
【0043】
これらの粉体は本発明の効果を妨げない範囲で、粉体の複合化や、事前に表面処理したものも使用することができる。粉体は、例えば、シリコーン化合物処理、フッ素化合物処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、アミノ酸処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などによって事前に表面処理されていてもいなくてもかまわない。必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0044】
分散体を分散する油剤も特に限定されず、いずれの油剤を使用することができる。該油剤としては、例えば、炭化水素油等の非極性油、高級脂肪酸、エステル油、天然動植物油等の極性油、半合成油、シリコーン油、及びフッ素系油等を挙げることができる。これらのなかでも、極性油、シリコーン油が好ましい。さらに、油剤は1種または2種以上のエステル油、天然動植物油と1種または2種以上のシリコーン油とからなるものとすることもできる。このように、油剤が比較的高極性のエステル油や天然動植物油と、比較的低極性のシリコーン油とからなるものであったとしても、本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンであれば、いずれとも相溶性を有するので、本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンで粉体を処理することで、分散性、流動性、及び経時安定性に優れた分散体を提供することができる。
【0045】
シリコーン油の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、カプリリルメチコン、フェニルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等の変性オルガノポリシロキサン、上記オルガノポリシロキサン、変性オルガノポリシロキサンを高重合度化してガム状にしたもの、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、シリコーン樹脂又はシリコーンレジンを、上記オルガノポリシロキサンや環状オルガノポリシロキサンで溶解した溶解物等が挙げられる。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、これらのシリコーン油は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
炭化水素油の具体例としては、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリピロピレンワックス、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、流動パラフィン、流動イソパラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、水添ポリイソブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、これらの炭化水素油は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、る。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、これらの高級脂肪酸は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
エステル油の具体例としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、ラウロイルサルコシンイソプロピルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。これらのエステル油は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
天然動植物油及び半合成油の具体例として、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、精製キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、スクワラン、スクワレン、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、水添ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、メドウフォーム油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、酢酸ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。なお、POEはポリオキシエチレンを意味する。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。これらの天然動植物油及び半合成油は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
フッ素系油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。これらは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。これらのフッ素系油は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
粉体処理剤
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンを粉体処理剤として用いる場合、公知の処理方法により粉体表面を粉体処理剤で処理することができる。
前記粉体処理剤の態様としては、前記オルガノポリシロキサン単独で用いてもよいし、他の成分を添加してもよい。
他の成分の具体例としては、前記オルガノポリシロキサンを希釈して取り扱いやすくするための有機溶剤や、前記オルガノポリシロキサンのカテコール基中にある2つの水酸基と粉体表面の官能基との反応を促進するための触媒などが挙げられる。
前記有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサメチルジシロキサンやオクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシロキサン類などが挙げられる。
前記触媒の具体例としては、塩酸、硫酸などの無機酸類、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸類、チタンやスズのアルコキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0052】
公知の処理方法としては、具体的には、目的の粉体を、粉体処理剤の配合された水又は有機溶剤中に分散して粉体を処理する方法、粉体と粉体処理剤を混合した後、ボールミル、ジェットミルなどの粉砕器を用いて粉体を処理する方法等が挙げられる。
また、本発明において、本発明の粉体処理剤で処理された粉体を油剤中に分散したり、油剤中に本発明の粉体処理剤を溶解又は分散し、これに粉体を添加して混合分散処理して、油中粉体分散物を得てもよい。
この油中粉体分散物は、例えば下記の公知の調製方法によって適宜調製することが可能である。
公知の調製方法としては、上記のように表面を処理した粉体を、エステル油やシリコーン油等の油剤中に添加して分散する方法、上記のように油剤中に本発明の粉体処理剤を溶解又は分散し、これに粉体を添加してボールミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機器で混合する方法等が挙げられる。
【0053】
本発明の粉体処理剤で粉体を処理する場合には、該粉体処理剤を粉体100質量部に対して、0.1~30質量部使用することが好ましく、0.5~10質量部使用することがより好ましい。
【0054】
本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンを粉体処理剤として用いて油剤中に粉体を分散させた分散体はあらゆる用途に用いることができる。該用途としては、例えば、化粧料、塗料、インキ等が挙げられる。それらの製造方法としては、分散体と、化粧料、塗料、インキ等において使用される各種成分とを混合することによって、化粧料組成物、塗料組成物、インキ組成物等を得ることができる。
前記化粧料組成物中、本発明の分散体は、0.1~50質量%含有することが好ましく、1~40質量%含有することがより好ましく、5~30質量%含有することがさらに好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
以下に示すヒドロシリル基量は、試料にNaOH水溶液処理を行い発生する水素ガス量から定量した値である。
重量平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3重量%のTHF溶液)
【0057】
[合成例1]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(5)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.045mol)、4-アリルピロカテコール7.4g(0.050mol)、トルエン130gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.10gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が75℃まで発熱したことを確認し、さらに80℃に昇温し、1時間撹拌した。ここで
1H-NMRにより、ヒドロシリル基のピーク(4.6~4.8ppm)が消失し、シルエチレン基の新たなピーク(0.5~0.7ppm)が生成したことで、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去し、目的とするカテコール官能性オルガノポリシロキサンに相当するシリコーンAを106g得た。
【化9】
【化10】
【0058】
[合成例2]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(6)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.018mol)、4-アリルピロカテコール3.0g(0.020mol)、トルエン130gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.10gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が75℃まで発熱したことを確認し、さらに80℃に昇温し、1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に
1H-NMRにより、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去し、目的とするカテコール官能性オルガノポリシロキサンに相当するシリコーンBを101g得た。
【化11】
【化12】
【0059】
[合成例3]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(7)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.083mol)、4-アリルピロカテコール13.6g(0.091mol)、トルエン130gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.10gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が75℃まで発熱したことを確認し、さらに80℃に昇温し、1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に
1H-NMRにより、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去し、目的とするカテコール官能性オルガノポリシロキサンに相当するシリコーンCを111g得た。
【化13】
【化14】
【0060】
[合成例4]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(8)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.067mol)、4-アリルピロカテコール11.1g(0.074mol)、トルエン130gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.10gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が75℃まで発熱したことを確認し、さらに80℃に昇温し、1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に
1H-NMRにより、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去し、目的とするカテコール官能性オルガノポリシロキサンに相当するシリコーンDを108g得た。
【化15】
【化16】
【0061】
[合成例5]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(9)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサンの50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液200g(ヒドロシリル基量:0.084mol)、4-アリルピロカテコール13.9g(0.092mol)を仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.13gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が75℃まで発熱したことを確認し、さらに80℃に昇温し、1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に
1H-NMRにより、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、目的とするカテコール官能性オルガノポリシロキサンに相当するシリコーンEのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液を210g得た。
【化17】
【化18】
【0062】
[合成比較例1]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(5)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.045mol)、エチレングリコールモノアリルエーテル5.1g(0.050mol)、イソプロピルアルコール52.5gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.06gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が85℃まで発熱したことを確認し、さらに85℃で1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に
1H-NMRにより、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、イソプロピルアルコールを減圧留去し、目的とするオルガノポリシロキサンに相当するシリコーンFを101g得た。
【化19】
【化20】
【0063】
[合成比較例2]
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を取り付けた3つ口フラスコに、下記式(5)で表され
るオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン100g(ヒドロシリル基量:0.045mol)、アリルフェノール6.7g(0.050mol)、トルエン53.3gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、70℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.06gを前記フラスコ中に添加した。該フラスコ中の温度が85℃まで発熱したことを確認し、さらに85℃で1時間撹拌した。ここで合成例1と同様に、反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去し、目的とするオルガノポリシロキサンに相当するシリコーンGを103g得た。
【化21】
【化22】
【0064】
[分散性評価]
上記合成例及び合成比較例で得られたシリコーンを用いて、分散性評価を行った。表1に示す組成比で、ビーズミルを用いてスラリーを調製し、調製直後と、50℃で7日保存後に、25℃での粘度をJIS K 7117-1:1999に記載の方法で、B型回転粘度計を用いて測定した。単位はmPa・sである。
【0065】
【0066】
上記表1の結果から明らかなように、本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンは、アルコール性水酸基含有オルガノポリシロキサンや、フェノール性水酸基含有オルガノポリシロキサンに比べて高い分散性、かつ優れた保存安定性を有する低粘度の分散体を調製できることが分かった。
【0067】
[サンスクリーン剤としての評価]
上記合成例及び合成比較例で得られたシリコーンを用いて、表2に示す組成比でサンスクリーン剤を以下の手順で調製し、その品質を評価した。
サンスクリーン剤の調製方法
(手順1)(a)~(d)成分をディスパーで均一に混合する。
(手順2)手順1とは別に(f)~(h)成分をディスパーで均一に混合する。
(手順3)手順2で調製した混合物を手順1で調製した混合物に添加して、ディスパーで乳化する。
(手順4)手順3で調製した乳化物に(e)成分及び(i)成分を加えてディスパーで均一に混合し、サンスクリーン剤を得る。
【0068】
各サンスクリーン剤の品質評価は以下のようにして行い、結果を表2に示した。
1.分散安定性
上記手順で調製したサンスクリーン剤を室温にて1ヶ月静置した後、粉体の凝集性を観察し、下記基準により判定した。
◎:粉体の凝集が観察されない
○:わずかに粉体の凝集が観察される
△:粉体の凝集傾向が観察される
2.使用感評価
上記手順で調製したサンスクリーン剤について、無作為に選ばれた女性50名が、さらさら感、伸び、日焼け止め効果を、下記3段階の基準により判定し、その平均値を示した。
◎:非常に良い
○:良い
△:やや悪い
【0069】
【表2】
(a)KF-96-6cs:25℃での動粘度が6mm
2/s(6cSt)であるジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製)
(b)KSG-21:ジメチルポリシロキサンとポリエチレングリコールのクロスポリマー(信越化学工業社製)
(d)KF-6017:ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤(HLB:4.5、信越化学工業社製)
【0070】
表2の結果から明らかなように、本発明のカテコール官能性オルガノポリシロキサンを用いた分散物は、粉体の凝集がなく、分散性に優れ、かつ使用感も良好であることが分かった。