(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20230808BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20230808BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G03F7/039 501
G03F7/32 501
G03F7/32
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020516266
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2019016445
(87)【国際公開番号】W WO2019208354
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018086161
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531615(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130870(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/32
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
〔一般式(I)中、R
1は、フッ素原子の数が5以上の有機基である。〕
で表される単量体単位(A)と、
下記一般式(II):
【化2】
〔一般式(II)中、R
2は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。〕
で表される単量体単位(B)とを有する共重合体と、
溶剤と、
を含む、EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記R
1がフルオロアルキル基である、請求項1に記載のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記単量体単位(A)に含まれているフッ素原子の数と、前記単量体単位(B)に含まれているフッ素原子の数との合計が5または6である、請求項1または2に記載のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を極端紫外線で露光する工程と、
露光された前記レジスト膜を現像する工程と、
現像された前記レジスト膜をリンスする工程と、を含み、
前記リンスを、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液を用いて行う、
レジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記リンス液の溶解パラメータ値が、6.8(cal/cm
3)
1/2未満である、請求項4に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像を、表面張力が17.0mN/m以下の現像液を用いて行う、請求項4または5に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記現像液および前記リンス液が、相異なるフッ素系溶剤よりなる、請求項
6に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV(極端紫外線)リソグラフィ用ポジ型レジスト組成物およびEUVを用いたレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
具体的には、主鎖切断型のポジ型レジストとして、例えば特許文献1には、α-メチルスチレン・α-クロロアクリル酸メチル共重合体よりなるポジ型レジストが開示されており、特許文献2には、α-メチルスチレン・α-クロロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル共重合体よりなるポジ型レジストが開示されている。そして、特許文献1および2では、これらのポジ型レジストからなるレジスト膜に対して電子線を照射し、レジストパターンを形成している。
【0004】
また、近年では、電子線等と比較して露光の際の近接効果が少なく、また、微細なパターン形成を可能にする技術として、極端紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を用いたEUVリソグラフィ技術が注目されている。そして、例えば非特許文献1では、α-メチルスチレン・α-クロロアクリル酸メチル共重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜について、極端紫外線を用いて露光を行った際のパターニング性能を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平8-3636号公報
【文献】国際公開第2017/130872号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Roberto Fallica,他6名、“Lithographic performance of ZEP520A and mr-PosEBR resists exposed by electron beam and extreme ultraviolet lithography”、Journal of Vacuum Science & Technology B、2017年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のポジ型レジストを用いて形成したレジスト膜は、極端紫外線に対する感度が低く、レジストパターンを効率的に形成し得るようにするという点において改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、極端紫外線に対する感度が高いレジスト膜を形成可能なEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物、および、極端紫外線を用いてレジストパターンを効率的に形成し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、フッ素原子を5つ以上含有する所定の共重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜が、極端紫外線に対する感度が高く、当該レジスト膜を極端紫外線で露光すればレジストパターンを効率的に形成し得ることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、下記一般式(I):
【化1】
〔一般式(I)中、R
1は、フッ素原子の数が5以上の有機基である。〕
で表される単量体単位(A)と、
下記一般式(II):
【化2】
〔一般式(II)中、R
2は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。〕
で表される単量体単位(B)とを有する共重合体と、
溶剤と、
を含むことを特徴とする。
このように、上記所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含む共重合体をポジ型レジストとして含有させれば、極端紫外線に対する感度が高いレジスト膜を形成することができる。
なお、本発明において、一般式(II)中のpが2以上の場合には、複数あるR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、また、一般式(II)中のqが2以上の場合には、複数あるR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0011】
ここで、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、前記R1がフルオロアルキル基であることが好ましい。R1がフルオロアルキル基であれば、極端紫外線に対する感度が更に向上したレジスト膜を形成することができる。
【0012】
そして、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、前記単量体単位(A)に含まれているフッ素原子の数と、前記単量体単位(B)に含まれているフッ素原子の数との合計が5または6であることが好ましい。単量体単位(A)および単量体単位(B)に含まれているフッ素原子の合計数が5または6であれば、極端紫外線に対する感度が更に向上したレジスト膜を形成することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、上述したEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物の何れかを用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を極端紫外線で露光する工程と、露光された前記レジスト膜を現像する工程と、現像された前記レジスト膜をリンスする工程とを含み、前記リンスを、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液を用いて行うことを特徴とする。
このように、上記所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含有する共重合体を含むEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜を極端紫外線で露光すれば、レジストパターンを効率的に形成することができる。また、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液を用いてリンスすれば、形成されたレジストパターンにおける、倒れの発生および残渣の残留を効果的に抑制することができる。
なお、本発明において、リンス液の「表面張力」は、例えば、25℃において、輪環法を用いて測定することができる。
【0014】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、前記リンス液の溶解パラメータ値が、6.8(cal/cm3)1/2未満であることが好ましい。溶解パラメータ値が6.8(cal/cm3)1/2未満のリンス液を用いてリンスすることで、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。なお、リンス液の「溶解パラメータ値」(Solubility Parameter、以下「SP値」とも称する。)は、Hoyの原子団寄与法を用いて計算することができる。
【0015】
また、本発明のレジストパターン形成方法は、前記現像を、表面張力が17.0mN/m以下の現像液を用いて行うことが好ましい。表面張力が17.0mN/m以下の現像液を用いて現像を行うことで、露光により現像液に対する溶解性が増大した部分を良好に溶解させることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。
なお、本発明において、現像液の「表面張力」は、例えば、25℃において、輪環法を用いて測定することができる。
【0016】
そして、本発明のレジストパターン形成方法は、前記現像液および前記リンス液が、相異なるフッ素系溶剤よりなることが好ましい。現像液およびリンス液として、それぞれフッ素系溶剤を用いることで、レジストパターンの倒れの発生を効果的に抑制することができると共に、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物によれば、極端紫外線に対する感度が高いレジスト膜を形成することができる。
また、本発明のレジストパターン形成方法によれば、極端紫外線を用いてレジストパターンを効率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、電子線等と比較して露光の際の近接効果が少なく、また、微細なパターン形成を可能にする極端紫外線を用いてレジストパターンを形成する際のレジスト膜の形成に用いられる。そして、本発明のレジストパターン形成方法は、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物および極端紫外線を用いてレジストパターンを形成する方法であり、例えば、ビルドアップ基板などのプリント基板の製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に好適に用いることができる。
なお、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、本発明のレジストパターン形成方法以外の方法でレジストパターンを形成する際に用いてもよい。具体的には、本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、表面張力が20.0mN/m未満のリンス液を用いてリンスを行うレジストパターン形成方法や、現像後にレジスト膜のリンスを行わないレジストパターン形成方法において用いてもよい。
【0019】
(EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物)
EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物は、以下に詳述するフッ素原子を含有する所定の共重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
【0020】
-共重合体-
本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物に含有される共重合体は、下記の一般式(I):
【化3】
〔一般式(I)中、R
1は、フッ素原子の数が5以上の有機基である。〕
で表される単量体単位(A)と、
下記一般式(II):
【化4】
〔一般式(II)中、R
2は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。〕で表される単量体単位(B)とを有する。
なお、共重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、共重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、100mol%(即ち、共重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことが好ましい。また、単量体単位(A)および単量体単位(B)に含まれるフッ素原子の合計数は、5または6であることが好ましい。単量体単位(A)および単量体単位(B)に含まれるフッ素原子の合計数が5または6である場合、レジスト膜の感度が更に高まるため、レジストパターン形成方法における感度を更に高めることができるからである。
【0021】
また、上記共重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する限りにおいて、特に限定されることなく、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体(ABAB・・・)、などのいずれであってもよいが、交互共重合体を90質量%以上(上限は100質量%)含む共重合体であることが好ましい。
【0022】
そして、共重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含んでいるので、極端紫外線が照射されると、主鎖が切断されて低分子量化する。また、共重合体は、少なくとも単量体単位(A)がフッ素原子を5つ以上有しているので、レジストとして使用した際に極端紫外線に対して優れた感度を発揮する。特に、共重合体は、少なくとも単量体単位(A)がフッ素原子を5つ以上有しているので、極端紫外線を使用した場合の感度が、単量体単位(A)中のフッ素原子の数が4以下の場合の感度や電子線等を使用した場合の感度と比較して特に大幅に向上する。
なお、少なくとも単量体単位(A)がフッ素原子を5つ以上有していることで極端紫外線に対して優れた感度を発揮することができる理由は、明らかではないが、極端紫外線の吸収効率がフッ素原子の存在に起因して向上し、主鎖が速やかに切断されるためであると推察される。
【0023】
-単量体単位(A)
ここで、単量体単位(A)は、下記の一般式(III):
【化5】
〔一般式(III)中、R
1は、一般式(I)と同様である。〕で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0024】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0025】
極端紫外線を照射した際の共重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、一般式(I)および一般式(III)中のR1は、フッ素原子を5つ以上含む有機基であることが必要である。
【0026】
ここで、極端紫外線を照射した際の共重合体の主鎖の切断性を向上させ、極端紫外線を使用した場合の感度を更に向上させる観点からは、一般式(I)および一般式(III)中のR1に含まれるフッ素原子の数は、6以上であることが好ましい。また、ポジ型レジストとして用いた際に得られるレジストパターンの明瞭性を向上させる観点からは、一般式(I)および一般式(III)中のR1に含まれるフッ素原子の数は、7以下であることが好ましい。
【0027】
また、R1の炭素数は、2以上10以下であることが好ましく、3以上4以下であることがより好ましく、3であることが更に好ましい。炭素数が上記下限値以上であれば、現像液に対する溶解度を十分に向上させることができる。また、炭素数が上記上限値以下であれば、ガラス転移点の低下を抑制し、得られるレジストパターンの明瞭性を十分に担保することができる。
【0028】
具体的には、一般式(I)および一般式(III)中のR1は、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシアルキル基またはフルオロアルコキシアルケニル基であることが好ましく、フルオロアルキル基であることがより好ましい。R1が上述した基であれば、極端紫外線を照射した際の共重合体の主鎖の切断性を十分に向上させることができる。
ここで、フルオロアルキル基としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基(フッ素原子の数が5、炭素数が3)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基(フッ素原子の数が5、炭素数が4)、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基(フッ素原子の数が6、炭素数が3)、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基(フッ素原子の数が6、炭素数が4)、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル基(フッ素原子の数が7、炭素数が4)、および、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基(フッ素原子の数が7、炭素数が3)などが挙げられ、中でも、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基(フッ素原子の数が5、炭素数が3)が好ましい。
また、フルオロアルコキシアルキル基としては、例えば、ペンタフルオロエトキシメチル基およびペンタフルオロエトキシエチル基などが挙げられる。
また、フルオロアルコキシアルケニル基としては、例えば、ペンタフルオロエトキシビニル基などが挙げられる。
【0029】
そして、上述した一般式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した一般式(III)で表される単量体(a)としては、特に限定されることなく、例えば、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、α-クロロアクリル酸3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、α-クロロアクリル酸1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α-クロロアクリル酸1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル、α-クロロアクリル酸1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル等のα-クロロアクリル酸フルオロアルキルエステル;α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシメチルエステル、α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシエチルエステル等のα-クロロアクリル酸フルオロアルコキシアルキルエステル;α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシビニルエステル等のα-クロロアクリル酸フルオロアルコキシアルケニルエステル;などが挙げられる。
【0030】
なお、極端紫外線を照射した際の共重合体の主鎖の切断性を更に向上させる観点からは、単量体単位(A)は、α-クロロアクリル酸フルオロアルキルエステルに由来する構造単位であることが好ましい。更に言えば、単量体単位(A)は、α-クロロアクリル酸フルオロアルキルエステルに由来する構造単位の中でも、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルに由来する構造単位であることがより好ましい。単量体単位(A)がα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルに由来する構造単位であれば、極端紫外線に対するレジスト膜の感度を特に高めることができる。
【0031】
-単量体単位(B)
また、単量体単位(B)は、下記の一般式(IV):
【化6】
〔一般式(IV)中、R
2およびR
3、並びに、pおよびqは、それぞれ、一般式(II)と同様である。〕で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0032】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0033】
ここで、一般式(II)および一般式(IV)中のR2およびR3を構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
【0034】
また、一般式(II)および一般式(IV)中のR2およびR3を構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基が挙げられる。中でも、R2およびR3を構成し得る非置換のアルキル基は、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
【0035】
また、共重合体の調製の容易性を向上させる観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中に複数存在するR2および/またはR3は、全て、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0036】
なお、共重合体の調製の容易性を向上させる観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中のpが5であり、qが0であり、5つあるR2の全てが水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、5つあるR2の全てが水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、5つあるR2の全てが水素原子であることが更に好ましい。
【0037】
他方、極端紫外線に対するレジスト膜の感度を更に高める観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中に複数存在するR2および/またはR3は、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基を含むことが好ましく、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基を含むことがより好ましい。
【0038】
中でも、共重合体の調製の容易性を確保しつつ極端紫外線に対するレジスト膜の感度を更に高める観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中のpが5であり、qが0であり、5つあるR2がフッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基を含むことが好ましく、5つあるR2のうちの一つがフッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、残りの4つのR2が水素原子であることがより好ましく、5つあるR2のうちの一つがフッ素原子であり、残りの4つのR2が水素原子であることが更に好ましい。
【0039】
そして、上述した一般式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した一般式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b-1)~(b-11)等のα-メチルスチレン(AMS)およびその誘導体が挙げられる。中でも、単量体(b)としては、α-メチルスチレンおよび一般式(b-2)に従う4-フルオロ-α-メチルスチレンが好ましい。
【化7】
【0040】
-重量平均分子量
ここで、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20000以上150000以下とすることができる。さらに、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、100000以下であることが好ましく、60000以下であることがより好ましく、30000以上であることが好ましい。共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であれば、かかる共重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を抑制することが可能である。また、共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であれば、かかる共重合体を含有するEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、感度を向上させることができる。
なお、本発明において「重量平均分子量(Mw)」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0041】
-数平均分子量
また、共重合体の数平均分子量(Mn)は、例えば10000以上100000以下とすることができる。さらに、共重合体の数平均分子量(Mn)は、80000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましい。共重合体の数平均分子量(Mn)が上記上限値以下であれば、かかる共重合体を含有するEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、感度を適度に向上させることができる。
なお、本発明において、「数平均分子量(Mn)」は、上述した「重量平均分子量(Mw)」と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0042】
-分子量分布
共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1.20以上2.50以下とすることができる。更に、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.25以上であることが好ましく、2.00以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましい。共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記下限値以上であれば、共重合体の製造容易性を高めることができる。また、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記上限値以下であれば、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。
なお、本発明において、「分子量分布(Mw/Mn)」とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を指す。
【0043】
-共重合体の調製方法
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、任意に得られた重合物を精製することにより調製することができる。
なお、共重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、共重合体の組成は、重合に使用する単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。更に、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。
【0044】
ここで、共重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意で使用可能な溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒を使用する場合には、溶媒としてシクロペンタノンなどを用いることが好ましい。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0045】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま共重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収し、以下のようにして精製することもできる。
【0046】
得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0047】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる共重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する共重合体の分子量を大きくすることができる。
【0048】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、本発明の共重合体としては、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0049】
-溶剤-
なお、溶剤としては、上述した共重合体を溶解可能な溶剤であれば既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としては、有機酸のペンチルエステル、有機酸のヘキシルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシルまたはそれらの混合物がより好ましく、酢酸イソアミル(酢酸イソペンチル)が更に好ましい。
【0050】
(レジストパターン形成方法)
本発明のレジストパターン形成方法では、上述した本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物および極端紫外線を用いる。具体的には、本発明のレジストパターン形成方法は、フッ素原子を含有する所定の共重合体を含む上記EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)と、レジスト膜を極端紫外線で露光する工程(露光工程)と、露光されたレジスト膜を現像する工程(現像工程)と、現像されたレジスト膜をリンスする工程(リンス工程)とを含む。更に、本発明のレジストパターン形成方法は、リンス工程を、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液を用いて行うことを特徴とする。
そして、本発明のレジストパターン形成方法では、フッ素原子を含有する所定の共重合体を含んでなるレジスト膜を、現像した後、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液を用いてリンスするので、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制しつつ、レジストパターンに残渣が残留することを良好に抑制することができる。また、本発明のレジストパターン形成方法では、上述した本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜を極端紫外線で露光しているので、レジストパターンを効率的に形成することができる。
【0051】
<レジスト膜形成工程>
レジスト膜形成工程では、レジストパターンを利用して加工される基板などの被加工物の上に、上述したEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。ここで、基板としては、特に限定されることなく、プリント基板の製造等に用いられる、絶縁層と、絶縁層上に設けられた銅箔とを有する基板;および、基板上に遮光層が形成されてなるマスクブランクスなどを用いることができる。
また、EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物の塗布方法および乾燥方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。
なお、極端紫外線に対する感度を更に向上させる観点からは、レジスト膜形成工程で形成されるレジスト膜の密度は、1.35g/cm3以上であることが好ましく、1.40g/cm3以上であることがより好ましい。ここで、レジスト膜の密度は、共重合体の組成やレジスト膜の形成条件を変更することにより調整することができる。
【0052】
<露光工程>
露光工程では、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、極端紫外線を照射して、所望のパターンを描画する。
なお、照射する極端紫外線の波長は、特に限定されることなく、例えば、1nm以上30nm以下とすることができ、好ましくは13.5nmとすることができる。
また。極端紫外線の照射には、EQ-10M(ENERGETIQ社製)、NXE(ASML社製)などの既知の露光装置を用いることができる。
【0053】
<現像工程>
現像工程では、露光工程で露光されたレジスト膜と、現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、被加工物上にレジストパターンを形成する。
ここで、レジスト膜と現像液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0054】
本発明のレジストパターン形成方法で使用する現像液としては、特に限定されることなく、レジスト膜に含まれる主鎖切断部分を溶解可能であるあらゆる溶剤を用いることができる。中でも、現像液としては、表面張力が17.0mN/m以下である溶剤を用いることが好ましい。さらに、現像液の表面張力は、好ましくは16.5mN/m以下であり、より好ましくは15.0mN/m以下である。表面張力が17.0mN/m以下であれば、現像対象とするレジストパターンが微細な場合であっても、微細な間隙に現像液が進入し易い。なお、現像液の表面張力は、例えば、10.0mN/m以上でありうる。
【0055】
更に、現像液としては、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。フッ素系溶剤としては、例えば、CF3CFHCFHCF2CF3(表面張力:14.1mN/m、SP値:6.8(cal/cm3)1/2)、CF3CF2CHCl2(表面張力16.2mN/m、SP値:6.9(cal/cm3)1/2)、および、C8F18(表面張力13.6mN/m)等が挙げられる。これらは一種を単独で、或いは、複数種を混合して用いることができるが、回収および再利用等の容易性の観点から、一種を単独で現像液として用いることが好ましい。なお、フッ素系溶剤を他の溶剤と混合して得た液を現像液として用いても良いが、レジスト膜の溶解性を高めて、レジストパターン形成方法における感度を一層向上させる観点から、現像液は、フッ素系溶剤を95体積%以上含むことが好ましく、99体積%以上含むことがより好ましく、実質的にフッ素系溶剤のみからなることが好ましい。「実質的にフッ素系溶剤のみからなる」とは、現像液中に占めるフッ素系溶剤の割合が100体積%である場合、および、例えば、0.1体積%未満等の微量の添加剤等を含むものの、主としてフッ素系溶剤よりなる場合の双方を含みうる概念である。なお、フッ素系溶剤は、概して揮発性が高いため、従来、フッ素系溶剤を用いた場合には、現像液により現像したレジスト膜をリンスすることなく、ブロー等により乾燥することで除去して、レジストパターンを得ることが一般的であった。
【0056】
また、現像液は、レジスト膜における主鎖切断部分の溶解性を高める観点から、溶解パラメータ(SP値)が6.5(cal/cm3)1/2超10.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましい。
【0057】
更に、現像液の温度は特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。更に、現像時間は、例えば、30秒以上4分以下とすることができる。
【0058】
<リンス工程>
リンス工程では、現像工程で現像されたレジスト膜と、表面張力が20.0mN/m以下のリンス液とを接触させて、現像されたレジスト膜をリンスする。本発明では、現像工程の後に上記所定性状のリンス液を用いたリンス工程を行うため、現像されたレジスト膜に付着しているレジストの残渣を効果的に除去することができる。したがって、本発明のレジストパターン形成方法によれば、得られるレジストパターン中に残渣が残留することを効果的に抑制して、明瞭なレジストパターンを形成することができる。
ここで、現像されたレジスト膜とリンス液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、リンス液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜へのリンス液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0059】
[リンス液]
本発明のレジストパターン形成方法で使用するリンス液は、表面張力が20.0mN/m以下である必要がある。更に、得られるレジストパターンにおける残渣の残留を一層効果的に抑制する観点から、リンス液は、表面張力が18.0mN/m以下であることが好ましく、14.5mN/m以下であることがより好ましく、10.0mN/m以上であることが好ましく、12.5mN/m以上であることがより好ましい。また、レジストパターンの倒れの発生を一層効果的に抑制することができると共に、得られるレジストパターンの明瞭性を一層向上させる観点から、リンス液は、上述した現像液とは異なるフッ素系溶剤よりなることが好ましい。
【0060】
ここで、リンス液は、下記の一般式(α):
【化8】
〔一般式(α)中、R
aは、非置換のアルキル基であり、R
b~R
dは、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
a~R
dのうちの少なくとも一つがフッ素原子を含有する。〕で表される化合物を含むことが好ましい。なお、上記一般式(α)で表される化合物はフッ素系化合物であり、かかるフッ素系化合物よりなる溶剤は、フッ素系溶剤である。
なお、一般式(α)中、R
aを構成し得る非置換のアルキル基としては、非置換の炭素数が1以上5以下のアルキル基が挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
また、一般式(α)中、R
b~R
dを構成し得るフッ素原子で置換されたアルキル基としては、フッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましく、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基および1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基がより好ましい。
リンス液は、一般式(α)で表される化合物を一種または複数種含みうるが、リンス液の回収および再利用を容易とする観点から、リンス液は、一般式(α)で表される化合物を一種のみ含むことが好ましい。なお、リンス液は、一般式(α)で表される化合物以外に、「現像液」として上述した化合物や、その他の主鎖切断型ポジ型レジスト組成物を用いたパターン形成方法にて一般的に用いられうる溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、リンス液全体に対する比率が、非常に低く、例えば、0.1体積%未満であることを意味する。
【0061】
特に、リンス液に含まれうる上記一般式(α)で表されうる化合物としては、下記一般式(α-1)で表されるメチルノナフルオロブチルエーテル(表面張力:13.6mN/m、SP値:6.5(cal/cm
3)
1/2、凝固点:-135℃、沸点:61℃)、下記一般式(α-2)で表されるエチルノナフルオロブチルエーテル(表面張力:13.6mN/m、SP値:6.3(cal/cm
3)
1/2、凝固点:-138℃、沸点:76℃)、または、下記一般式(α-3)で表される1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン(表面張力:15.0mN/m、SP値:6.2(cal/cm
3)
1/2、凝固点(流動点):-38℃、沸点:98℃)が好ましく、得られるレジストパターンにおける残渣の残留を一層効果的に抑制する観点から、下記一般式(α-1)で表されるメチルノナフルオロブチルエーテル、または、下記一般式(α-2)で表されるエチルノナフルオロブチルエーテルがより好ましい。
【化9】
【0062】
更に、リンス液は、得られるレジストパターンにおける残渣の残留を一層効果的に抑制する観点から、溶解パラメータ(SP値)が11.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましく、6.8(cal/cm3)1/2未満であることがより好ましく、6.5(cal/cm3)1/2以下であることがさらに好ましい。なお、リンス液のSP値は、例えば、2.0(cal/cm3)1/2以上でありうる。また、リンス液の凝固点は、-30℃以下であることが好ましく、-100℃以下であっても良い。そして、リンス液の沸点は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。なお、リンス液の「凝固点」および「沸点」は、それぞれ、1atm(絶対圧)における値である。
【0063】
なお、リンス液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。更に、リンス時間は、例えば、5秒以上3分以下とすることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、並びに、レジスト膜の密度および極端紫外線に対する感度は、下記の方法で測定および評価した。また、現像液およびリンス液のSP値は、Hoyの原子団寄与法を用いて計算した。更に、現像液およびリンス液の表面張力は、25℃において輪環法を用いて測定した。
【0065】
<重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布>
実施例、比較例で得られた共重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー社製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<密度>
密度測定用のレジスト膜について、全自動多目的X線回折装置(Rigaku社製、SmartLab)を用い、X線反射率法(X-ray Reflectivity)で密度を算出した。
<感度>
得られた感度曲線(横軸:極端紫外線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成した。その後、作成した直線(感度曲線の傾きの近似線)において残膜率が0となる際の、極端紫外線の総照射量Eth(mJ/cm2)を求めた。なお、Ethの値が小さいほど、レジスト膜の極端紫外線に対する感度が高く、レジストパターンの形成効率が高いことを意味する。
【0066】
(実施例1)
<共重合体の調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としての4-フルオロ-α-メチルスチレン(4FAMS)3.235gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.00521gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は38837であり、数平均分子量(Mn)は22658であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.714であった。また、得られた重合物は、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位を50mol%、4-フルオロ-α-メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF50gとメタノール(MeOH)950gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(4-フルオロ-α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としての酢酸イソアミルに溶解させ、共重合体の濃度が2質量%であるレジスト溶液(EUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物)を調製した。
<レジスト膜の形成>
スピンコーター(ミカサ社製、MS-A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ70nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜(感度曲線作成用)を形成した。
また、ポジ型レジスト組成物を厚さが50nmになるように塗布した以外は上述したのと同様にして、密度測定用のレジスト膜を形成した。そして、共重合体よりなるポジ型レジスト膜の密度を測定した。結果を表1に示す。
<露光、現像およびリンス>
そして、EUV露光装置(ENERGETIQ社製、EQ-10M)を用いて、極端紫外線の照射量が互いに異なるパターン(寸法10mm×10mm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として表面張力が14.1mN/mであるフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル社製、バートレルXF(登録商標)、CF3CFHCFHCF2CF3)を用いて、温度23℃で1分間の現像処理を行った後、リンス液として表面張力が13.6mN/mであるフッ素系溶剤(3M社製、Novec(登録商標)7100、メチルノナフルオロブチルエーテル、凝固点:-135℃、沸点:61℃)を用いて10秒間リンスした。
なお、極端紫外線の照射量は、0mJ/cm2から20mJ/cm2の範囲内で2mJ/cm2ずつ異ならせた。
次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクターソリューション社製、ラムダエースVM-1200)で測定し、極端紫外線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
【0067】
(実施例2)
以下のようにして調製した共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、ポジ型レジスト組成物を調製し、各種評価等を行った。結果を表1に示す。
<共重合体の調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)3.476gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.00551gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.620gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は46772であり、数平均分子量(Mn)は29853であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.567であった。また、得られた重合物は、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位を50mol%、α-メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF150gとメタノール(MeOH)850gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
共重合体として市販のα-メチルスチレン(AMS)・α-クロロアクリル酸メチル(ACAM)共重合体(日本ゼオン社製、ZEP520A(登録商標))を使用すると共に、現像およびリンス時に、現像液として酢酸アミル(日本ゼオン社製、ZED-N50)を使用し、リンス液としてイソプロピルアルコールを使用した以外は実施例1と同様にして、ポジ型レジスト組成物を調製し、各種評価等を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例2)
以下のようにして調製した共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、ポジ型レジスト組成物を調製し、各種評価等を行った。結果を表1に示す。
<共重合体の調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(ACATFE)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)4.398gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.00698gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.851gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は50883であり、数平均分子量(Mn)は31303あり、分子量分布(Mw/Mn)は1.625であった。また、得られた重合物は、α-クロロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル単位を50mol%、α-メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF150gとメタノール(MeOH)850gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1より、実施例1および2では、比較例1および2と比較し、極端紫外線を用いてレジストパターンを効率的に形成し得ることが分かる。
【0072】
(参考例)
なお、実施例1および2、並びに、比較例1および2のレジスト膜について、EUV露光装置(ENERGETIQ社製、EQ-10M)に替えて電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を使用し、電子線の照射量を4μC/cm2から200μC/cm2の範囲内で4μC/cm2ずつ異ならせた以外は上述したのと同様にして、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成し、感度曲線の傾きの近似線において残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth’(μC/cm2)を求めた。各レジスト膜について、EthおよびEth’の値を表2に示す。
【0073】
【0074】
表2より、実施例1および2のレジスト膜は、露光に使用する光源を電子線から極端紫外線に変更した際の感度の向上割合が比較例1および2のレジスト膜に比べて著しく大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のEUVリソグラフィ用ポジ型レジスト組成物によれば、極端紫外線に対する感度が高いレジスト膜を形成することができる。
また、本発明のレジストパターン形成方法によれば、極端紫外線を用いてレジストパターンを効率的に形成することができる。