IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許7327567導電膜付基板および反射型マスクブランク
<>
  • 特許-導電膜付基板および反射型マスクブランク 図1
  • 特許-導電膜付基板および反射型マスクブランク 図2
  • 特許-導電膜付基板および反射型マスクブランク 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】導電膜付基板および反射型マスクブランク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20230808BHJP
   G03F 1/40 20120101ALI20230808BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022071912
(22)【出願日】2022-04-25
(65)【公開番号】P2022183024
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021089510
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021139521
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】仲村 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 誠祥
(72)【発明者】
【氏名】富澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】見矢木 崇平
(72)【発明者】
【氏名】森田 隆介
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-210093(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021235(WO,A1)
【文献】特開2005-316448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/92
7/00-7/24
9/00-9/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の主面上に配置された導電膜とを有する導電膜付基板であって、
前記導電膜の周縁に傾斜部を有し、
前記傾斜部における前記導電膜の厚さが前記導電膜の中心部の膜厚の10%となる位置から、前記ガラス基板の縁端部までの距離が3.00mm以下であり、
前記傾斜部の端部から前記ガラス基板の縁端部までの距離が0.00mm超である、導電膜付基板。
【請求項2】
前記ガラス基板の主面の周縁部に面取り面を有し、前記傾斜部の端部の少なくとも一部が前記面取り面内に位置する、請求項1に記載の導電膜付基板。
【請求項3】
前記傾斜部の端部の全てが前記面取り面内に位置する、請求項2に記載の導電膜付基板。
【請求項4】
前記傾斜部における前記導電膜の厚さが前記導電膜の中心部の膜厚の10%となる位置が、前記面取り面内に位置しない、請求項2に記載の導電膜付基板。
【請求項5】
前記導電膜のヤング率が50.0GPa以上である、請求項1または2に記載の導電膜付基板。
【請求項6】
前記導電膜のシート抵抗が150.00Ω/sq以下である、請求項1または2に記載の導電膜付基板。
【請求項7】
前記導電膜が、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の導電膜付基板。
【請求項8】
請求項1または2に記載の導電膜付基板と、
前記導電膜付基板の前記ガラス基板の前記導電膜が配置された主面とは反対側の主面上に配置された、EUV光を反射する反射層と、
前記反射層上に配置された、EUV光を吸収する吸収層とを有する、反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜付基板および反射型マスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスを構成する集積回路の微細化に伴い、可視光や紫外光(波長193~365nm)またはArFエキシマレーザ光(波長193nm)等を用いた従来の露光技術に代わる露光方法として、極端紫外光(Etreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)リソグラフィが検討されている。
【0003】
EUVリソグラフィでは、露光に用いる光源として、ArFエキシマレーザ光よりも短波長のEUV光が用いられる。なお、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光をいい、具体的には、波長が0.2~100nm程度の光である。EUV光としては、例えば、波長が13.5nm程度のEUV光が使用される。
【0004】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収され易いため、従来の露光技術で用いられていた屈折光学系を使用できない。そのため、EUVリソグラフィでは、反射型マスクやミラー等の反射光学系が用いられる。EUVリソグラフィにおいては、反射型マスクが転写用マスクとして用いられる。
【0005】
マスクブランクは、フォトマスク製造に用いられるパターニング前の積層体である。反射型マスクブランクの場合、ガラス製等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とがこの順で形成された構造を有している。反射層としては、EUV光に対して低屈折率となる低屈折率層と、EUV光に対して高屈折率となる高屈折率層とを交互に積層することで、EUV光を層表面に照射した際の光線反射率が高められた反射多層膜が通常用いられる。反射多層膜の低屈折率層としては、モリブデン(Mo)層が、高屈折率層としては、ケイ素(Si)層が通常用いられる。
吸収層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的にはたとえば、クロム(Cr)やタンタル(Ta)を主成分とする材料が用いられる。
【0006】
多層反射膜および吸収層は、イオンビームスパッタリング法やマグネトロンスパッタリング法を用いて基板の主面上に成膜される。多層反射膜および吸収層を成膜する際、ガラス基板は保持手段によって保持される。基板の保持手段として、機械的チャックおよび静電チャックがあるが、発塵性の問題から、多層反射膜および吸収層を成膜する際の基板の保持手段、特に多層反射膜を成膜する際の基板の保持手段としては、静電チャックによる吸着保持が好ましく用いられる。
【0007】
静電チャックは、半導体装置の製造プロセスにおいて、シリコンウェハの吸着保持に従来用いられている技術である。このため、ガラス製の基板のように、誘電率および導電率の低い基板の場合、シリコンウェハの場合と同程度のチャック力を得るには、高電圧を印加する必要があるため、絶縁破壊を生じる危険性がある。
このような問題を解消するため、基板の裏面(反射多層膜や吸収層が形成される基板の成膜面に対する裏面。静電チャックで吸着保持される側の面)に高誘電率の導電膜を形成することが行われている。
【0008】
静電チャック時の振動や静電チャックのクランプ構造物との接触により、導電膜の膜剥れが発生する場合がある。静電チャック時に導電膜の膜剥れ等によってパーティクルが発生すると、例えば、反射型マスクブランクから電子線照射等によるマスクパターンを形成して反射型マスクを作製する工程における高品質な反射型マスクの実現や、反射型マスクによる露光工程における高精度な転写の実現を阻害するおそれがある。従来の露光用透過型マスクを用いたパターン転写の場合には、露光光の波長が紫外域で比較的長い(157~248nm程度)ため、マスク面に凹凸欠陥が生じても、これが重大な欠陥とまではなりにくく、そのため従来では成膜時のパーティクルの発生は課題としては格別認識されていなかった。しかしながら、EUV光のような短波長の光を露光光として用いる場合には、マスク面上の微細な凹凸欠陥があっても、転写像への影響が大きくなるため、パーティクルの発生は無視できない。
【0009】
特許文献1に記載の多層反射膜付基板では、基板を挟んで多層反射膜と反対側に、基板の少なくとも周縁部を除く領域に導電膜を形成し、基板の少なくとも面取面と側面には導電膜が形成されていないため、基板の周縁部にも導電膜を形成した場合の周縁部の膜剥れによるパーティクルの発生を防止することができ、静電チャック時に基板の反りが生じても、基板周縁部からのパーティクルの発生を防止することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-210093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、特許文献1に記載の多層反射膜付基板のように、基板の少なくとも周縁部を除く領域に導電膜を形成した場合、静電チャック時のパーティクルの発生を抑制できないことを見出した。
【0012】
本発明は、静電チャック時のパーティクルの発生が抑制された反射型マスクブランクおよび該マスクブランク用の導電膜付基板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1] ガラス基板と、
上記ガラス基板の一方の主面上に配置された導電膜とを有する導電膜付基板であって、
上記導電膜の周縁に傾斜部を有し、
上記傾斜部における上記導電膜の厚さが上記導電膜の中心部の膜厚の10%となる位置から、上記ガラス基板の縁端部までの距離が3.00mm以下であり、
上記傾斜部の端部から上記ガラス基板の縁端部までの距離が0.00mm超である、導電膜付基板。
[2] 上記ガラス基板の主面の周縁部に面取り面を有し、上記傾斜部の端部の少なくとも一部が上記面取り面内に位置する、[1]に記載の導電膜付基板。
[3] 上記傾斜部の端部の全てが上記面取り面内に位置する、[2]に記載の導電膜付基板。
[4] 上記傾斜部における上記導電膜の厚さが上記導電膜の中心部の膜厚の10%となる位置が、上記面取り面内に位置しない、[1]~[3]のいずれか1つに記載の導電膜付基板。
[5] 上記導電膜のヤング率が50.0GPa以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の導電膜付基板。
[6] 上記導電膜のシート抵抗が150.00Ω/sq以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の導電膜付基板。
[7] 上記導電膜が、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の導電膜付基板。
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の導電膜付基板と、
上記導電膜付基板の上記ガラス基板の上記導電膜が配置された主面とは反対側の主面上に配置された、EUV光を反射する反射層と、
上記反射層上に配置された、EUV光を吸収する吸収層とを有する、反射型マスクブランク。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反射型マスクブランクおよび該マスクブランク用の導電膜付基板は、静電チャック時のパーティクルの発生が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の導電膜付基板の1実施形態を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す導電膜付基板の概略断面図である。
図3図3は、本発明の導電膜付基板の1実施形態のガラス基板の周縁部を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の導電膜付基板を説明する。
図1は、本発明の導電膜付基板の1実施形態を示す平面図である。図1に示す導電膜付基板は、ガラス基板10と、ガラス基板10の一方の主面上に配置された導電膜とを有する。但し、記載の都合上、図1では、導電膜が省略されている。
図2は、図1に示す導電膜付基板のX-X´線における概略断面図である。
【0017】
図2に示す導電膜付基板の導電膜20は周縁に傾斜部23を有している。
本明細書において、導電膜20の傾斜部23とは、膜厚が略一定、具体的には、導電膜20の膜厚の変化が中心部21の膜厚に対して±2%以内の平坦部22との境界E、E´から、導電膜20の端部(縁端部)C、C´に向けて導電膜20の膜厚が減少する部位を指す。
導電膜20の中心部21とは、ガラス基板10の主面の中心と略同一であればよく、例えばガラス基板10の主面の中心から1mmの範囲内の任意の1点としてよい。
傾斜部23は、図2に示すように、その導電膜20の端部C、C´に向けて漸次膜厚が減少することが好ましい。傾斜部23の端部とは、導電膜の膜厚が略一定である平坦部22とは反対側に位置する傾斜部23の端部である。
【0018】
本発明の導電膜付基板における導電膜20の大きさは、ガラス基板10の寸法により異なるが、ガラス基板10が152mm角のガラス基板の場合、導電膜20は148mm角以上152mm角未満が好ましく、150mm角以上152mm角未満がより好ましい。
【0019】
図2中、平坦部22との境界E、E´と、導電膜20の端部C、C´との距離で表される傾斜部23の長さの平均値は、0.10~2.50mmが好ましく、0.10~1.60mmがより好ましい。なお、平坦部22との境界E、E´と、導電膜20の端部C、C´との距離で表される傾斜部23の長さの平均値は、例えば、ガラス基板10の角部から辺方向に15mmの位置計8点において傾斜部23の長さを測定して、それらを算術平均した値である。
【0020】
本発明の導電膜付基板において、導電膜20の端部C-C´間の距離で表される導電膜20の最大長に対する、傾斜部23の長さの比率は、1.70%以下が好ましく、1.10%以下がより好ましい。上記比率の下限は、0.07%以上の場合が多い。
【0021】
本発明の導電膜付基板は、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)、および、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D´からガラス基板10の縁端部A´までの距離(d´)が、それぞれ3.00mm以下である。なお、上記距離は、傾斜部23における導電膜20の膜厚が導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置から最も近いガラス基板10の縁端部Aまたは縁端部A´までの距離に該当する。以下では、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)、および、傾斜部23における導電膜20の膜厚が導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D´からガラス基板10の縁端部A´までの距離(d´)を、まとめて傾斜部23の位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)、とも記載する。
導電膜20の厚さが、導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる部位は、傾斜部23であってもガラス基板10に対する密着性が十分高い。導電膜20の傾斜部23の位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)が3.00mm以下であれば、導電膜20の傾斜部23の位置のDがガラス基板10の十分外側に位置しているため、静電チャック時に、導電膜20の傾斜部23のうち、膜厚が小さく、ガラス基板10に対する密着性が低い部位が、静電チャックのクランプ構造物と接触する可能性が低い。そのため、導電膜20の傾斜部23の位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)が3.00mm以下であれば、静電チャック時の振動や静電チャックのクランプ構造物との接触による導電膜の膜剥れが生じにくい。
なお、本発明の導電膜付基板における傾斜部23の位置D、D´の場所によって、導電膜20の傾斜部23の位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離が異なる場合、導電膜20の傾斜部23の位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が3.00mm以下である。
導電膜20の傾斜部23の位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離(距離の最大値)は2.50mm以下が好ましく、1.50mm以下がより好ましく、1.00mm以下がさらに好ましい。上記距離の下限は、0.10mm以上の場合が多い。
また、本発明の導電膜付基板は、傾斜部を有することで、傾斜部を有さない場合(導電膜の膜厚が一定である場合)と比較して、導電膜端部での膜応力を小さくすることができ、膜応力による膜剥離を抑制できる。また、導電膜付基板が傾斜部を有することで、導電膜の端部とガラス基板とがなす角を大きくでき、導電膜の端部とガラス基板が接触する部分に、洗浄時の薬液、およびパーティクル等の異物が留まることを抑制できる。
【0022】
本発明の導電膜付基板は、導電膜20の傾斜部23の端部Cからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)、および、導電膜20の傾斜部23の端部C´からガラス基板10の縁端部A´までの距離(d´)は、それぞれ0.00mm超である。なお、上記距離は、導電膜20の傾斜部23の端部から最も近いガラス基板10の縁端部までの距離に該当する。以下では、導電膜20の傾斜部23の端部Cからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)、および、導電膜20の傾斜部23の端部C´からガラス基板10の縁端部A´までの距離(d´)を、まとめて導電膜20の傾斜部23の端部Cからガラス基板10の縁端部Aまでの距離(d)とも記載する。
本発明の導電膜付基板を用いて反射型マスクブランクを作製する場合、ガラス基板の両方の主面に膜が形成される。すなわち、導電膜が形成された主面に対し裏面側の主面に反射多層膜および吸収層が形成される。そのため、ガラス基板の側面に着膜が生じると、ガラス基板の両方の主面に形成された膜間で導通が生じる可能性がある。ガラス基板の両方の面に形成された膜間で導通が生じると、反射型マスクブランクをパターニングして反射型フォトマスクを作製する際に実施する電子線描画において、既存技術である透過型のマスクブランクと等価回路が変化してしまうために、既存の電子線描画装置で設計通りのパターンを描画できなくなることがある。導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離が0.00mm超であれば、ガラス基板10の側面に導電膜20が存在しない。そのため、本発明の導電膜付基板を用いて反射型マスクブランクを作製した際に、ガラス基板の両方の主面に形成された膜間で導通が生じるおそれがない。
なお、本発明の導電膜付基板における傾斜部23の端部C、C´の場所によって、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離が異なる場合、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最小値が0.00mm超である。
導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の平均値は2.90mm以下が好ましく、2.40mm以下がより好ましく、1.40mm以下がさらに好ましく、0.90mm以下が特に好ましい。なお、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の平均値は、例えば、ガラス基板10の角部から辺方向に15mmの位置計8点において導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離を測定して、それらを算術平均した値である。
【0023】
図1、2に示す導電膜付基板のように、ガラス基板10の主面の周縁部に面取り面12を有する場合、傾斜部の端部C、C´の少なくとも一部が面取り面12内に位置するのが好ましく、傾斜部の端部C、C´の全てが面取り面12内に位置するのがより好ましい。
上記態様について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の導電膜付基板の1実施形態のガラス基板の周縁部を拡大した概略断面図である。図3は、ガラス基板の周縁部のうち、一方のみを拡大した概略断面図である。図3に示す導電膜付基板において、ガラス基板10は、周縁部に面取り面12を有しており、ガラス基板10の一方の主面上に導電膜20を有する。導電膜20は、図2で説明した態様と同様の傾斜部23を有している。図3に示す導電膜付基板では、傾斜部23の端部Cは、面取り面12内に位置している。なお、上記と同様に、傾斜部23は、導電膜20の中心部(図3では図示せず)の膜厚に対する膜厚の変化が±2%以内の平坦部22との境界Eから、導電膜20の端部Cに向けて導電膜20の膜厚が減少する部位を指す。
なお、図3に示す導電膜付基板においても、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部(図3では図示せず)の膜厚の10%となる位置Dからガラス基板10の縁端部Aまでの距離は3.00mm以下であり、導電膜20の傾斜部23の端部Cからガラス基板10の縁端部Aまでの距離は0.00mm超である。上記それぞれの距離の好ましい範囲は、上述した態様と同様である。
図3は、ガラス基板10の周縁部のうち、一方のみについて傾斜部23の端部Cが面取り面12内に位置する拡大図であったが、もう一方の傾斜部23の端部C´についても同様に面取り面12内に位置することが好ましい。
傾斜部の端部C、C´が面取り面12内に位置すると、ガラス基板10に対する導電膜20の密着性が高くなるため、導電膜20の膜剥がれが生じにくい。
但し、導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´が、ガラス基板10の面取り面12内に位置しない場合、導電膜20の膜剥がれが生じにくい。そのため、位置D、D´が、ガラス基板10の面取り面12内に位置しないことが好ましい。
【0024】
本発明の導電膜付基板の導電膜20は、ヤング率が50.0GPa以上であることが好ましく、100.0GPa以上であることがより好ましい。ヤング率の上限は、400.0GPa以下の場合が多い。導電膜20のヤング率が50.0GPa以上であると、導電膜20が表面硬度に優れており、静電チャック時に膜剥がれが生じにくい。
【0025】
本発明の導電膜付基板の導電膜20は、シート抵抗が150.00Ω/sq以下であることが好ましく、100.00Ω/sq以下であることがより好ましく、30.00Ω/sq以下であることがさらに好ましい。シート抵抗の下限は、0.10Ω/sq以上の場合が多い。シート抵抗が100.00Ω/sq以下であると、導電膜付基板を確実に静電チャックすることができる。
【0026】
本発明の導電膜付基板の導電膜20は、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。導電膜20がこれらの元素を含むと、導電膜20のシート抵抗が低くなるため、静電チャック時のチャック力が向上する。
上記の元素を含む導電膜20の構成材料の具体例としては、CrN、TaB、SiN、TiN、ZrN、HfN、Ge単体、Si単体が挙げられる。
【0027】
導電膜20は、中心部21の膜厚が5nm以上であることが好ましい。導電膜20の中心部21の膜厚が5nm以上だと、静電チャック時にチャック力が十分であり、静電チャック時に高電圧を引加してもガラス基板10が絶縁破壊するおそれがない。中心部21の膜厚は10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。
導電膜20は、中心部21の膜厚が500nm以下であることが好ましい。導電膜20の中心部21の膜厚が500nm以下だと、導電膜20の形成に要する時間が増加することがなく、導電膜20の形成に要するコストが増加することがない。また、導電膜20の膜厚が必要以上に大きくないため、膜剥れが発生するおそれが増加することがない。導電膜20の中心部21の膜厚は450nm以下がより好ましく、400nm以下がさらに好ましい。
なお、導電膜20の中心部21の膜厚は、X線反射法(XXR)、X線蛍光分析法(XRF)、断面SEM、断面TEM、エリプソメトリー等、公知の手段で測定できる。これらの中でも、精度の観点から、断面SEMおよび断面TEMが好ましい。
【0028】
本発明の導電膜付基板において、導電膜20は、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などのスパッタリング法;CVD法;真空蒸着法といった乾式成膜法を用いて形成できる。例えば、導電膜20として、CrN膜を形成する場合、ターゲットをCrターゲットとし、スパッタガスをArとNの混合ガスとして、マグネトロンスパッタリング法を用いて導電膜を形成すればよい。また、例えば、導電膜20として、TaB膜を形成する場合、TaBの化合物ターゲットを使用し、スパッタガスをArガスとして、マグネトロンスパッタリング法を用いて導電膜を形成すればよい。
【0029】
また、面取り部に精度良く導電膜を成膜する際、成膜装置の精密な制御が求められる場合がある。面取り部に対して製膜を行う場合、例えば、特願2021-139521に記載の基板保持装置を用いてガラス基板を保持すると、精度よく位置調整ができ、精度良く導電膜を成膜可能である。
【0030】
本発明の導電膜付基板のガラス基板10を構成するガラスは、熱膨張係数が小さくかつそのばらつきの小さいことが好ましい。具体的には20℃における熱膨張係数の絶対値が600ppb/℃以下の低熱膨張ガラスが好ましく、20℃における熱膨張係数が400ppb/℃以下の超低熱膨張ガラスがより好ましく、20℃における熱膨張係数が100ppb/℃以下の超低熱膨張ガラスがさらに好ましく、20℃における熱膨張係数が30ppb/℃以下の超低熱膨張ガラスが特に好ましい。
上記低熱膨張ガラスおよび超低熱膨張ガラスとしては、SiOを主成分とするガラス、典型的には合成石英ガラスが使用できる。具体的には、例えば合成石英ガラスや、SiOを主成分とし1~12質量%のTiOを含む合成石英ガラスが挙げられる。
【0031】
ガラス基板10の大きさや厚さ等は、本発明の導電膜付基板を用いて作製される反射型マスクブランクの設計値等により適宜決定される。一例を挙げると、外形152mm角で、厚さ6.3mmである。ガラス基板10が面取り面12を有する場合、ガラス基板10の縁端部A、A´からガラス基板10の主面の端部B、B´までの距離で表される面取り面12の幅はガラス基板の仕様によって異なるが、152mm角のガラス基板の場合、0.2~0.6mmである。
【0032】
本発明の反射型マスクブランクは、本発明の導電膜付基板と、導電膜付基板のガラス基板の導電膜が配置された主面とは反対側の主面上に配置された、EUV光を反射する反射層と、反射層上に配置された、EUV光を吸収する吸収層とを有する。
【0033】
反射層は、反射型マスクブランクの反射層として、特に、EUV光の反射率が高い特性が要求される。具体的には、EUV光を入射角6度で反射層表面に照射した際に、波長13.5nm付近の光線反射率の最大値は、60%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。
【0034】
反射層は、高いEUV光の反射率を達成できることから、通常はEUV光に対して高い屈折率を示す高屈折率層と、EUV光に対して低い屈折率を示す低屈折率層を交互に複数回積層させた多層反射膜が用いられる。反射層が多層反射膜の場合、高屈折率層には、Siが広く使用され、低屈折率層にはMoが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
【0035】
反射層をなす多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光の反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光の反射率の最大値が60%以上の反射層40とするには、多層反射膜は膜厚2.3±0.1nmのMo膜と、膜厚4.5±0.1nmのSi膜とを繰り返し単位数が30~60になるように積層させればよい。
【0036】
なお、反射層が多層反射膜の場合、本発明の導電膜付基板を静電チャックで保持して、多層反射膜を構成する各層を、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法を用いて所望の厚さになるように、ガラス基板の導電膜が形成された主面に対し裏面側の主面に成膜する。
【0037】
吸収層に特に要求される特性は、EUV光線反射率が極めて低いことである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を吸収層表面に照射した際の、波長13.5nm付近の最大光線反射率は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0038】
上記の特性を達成するため、吸収層は、EUV光の吸収係数が高い材料で構成される。EUV光の吸収係数が高い材料としては、タンタル(Ta)を主成分とする材料を用いることが好ましい。本明細書において、タンタル(Ta)を主成分とする材料と言った場合、当該材料中Taを20at%以上含む材料を意味する。
【0039】
吸収層に用いるTaを主成分とする材料は、Ta以外にハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、パラジウム(Pd)、錫(Sn)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、炭素(C)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)および窒素(N)のうち少なくとも1成分を含むことが好ましい。Ta以外の上記の元素を含む材料の具体例としては、例えば、TaN、TaNH、TaHf、TaHfN、TaBSi、TaBSiN、TaB、TaBN、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、TaZr、TaZrN、TaPd、TaSn、TaPdN、TaSn、TaCr、TaMn、TaFe、TaCo、TaAg、TaCd、TaIn、TaSb、TaWが挙げられる。
【0040】
上記した構成の吸収層は、本発明の多層反射膜付基板の導電膜を静電チャックで保持して、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法を用いて、反射層上に成膜する。
【0041】
吸収層の膜厚は、20nm~90nmが好ましい。
【0042】
本発明の反射型マスクブランクでは、反射層と吸収層との間に保護層が形成されてもよい。保護層は、吸収層をエッチングして、吸収層にマスクパターンを形成する際に、反射層がエッチングによるダメージを受けないよう、反射層を保護することを目的として設けられる。したがって保護層の材質としては、吸収層のエッチングによる影響を受けにくい、つまりこのエッチング速度が吸収層よりも遅く、しかもこのエッチングによるダメージを受けにくい物質が選択される。この条件を満たす物質としては、例えばCr、Al、Taおよびこれらの窒化物、RuおよびRu化合物(RuB、RuSi等)、ならびにSiO、Si、Alやこれらの混合物が例示される。
また、保護層を形成する場合、その厚さは1nm~60nmが好ましく、1nm~40nmがより好ましい。
【実施例
【0043】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例1~例5のうち、例1~例4が実施例であり、例5が比較例である。
【0044】
例1
例1では、図1、2に示す導電膜付基板を作製した。
成膜用のガラス基板10として、SiO-TiO系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm、面取り面12の幅が0.4mm)を使用した。
【0045】
次に、ターゲットとして、ガラス基板10の一方の主面に、マグネトロンスパッタリング法を用いて、導電膜20としてCrN膜を形成して、図1、2に示す導電膜付基板を作製した。CrN膜の形成時、Crターゲットを使用し、スパッタガスとして、ArとNの混合ガスを使用した。
CrN膜が形成される領域を制限するため、特願2021-139521に記載されている基板保持装置を用いてガラス基板10を保持し、ガラス基板10上に、所定の開口サイズの遮蔽部材をガラス基板との間隔が所定となるよう配置した。
作製した導電膜付基板は、導電膜20の端部に傾斜部23を有しており、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値は2.85mmであり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離は0mm超であった。また、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´は、ガラス基板10の面取り面内に位置していなかった。なお、傾斜部23は、その端部C、C´に向けて漸次膜厚が減少していた。
また、導電膜20の長さを表す傾斜部23の端部C-C´間の距離の平均値は149.90mmであり、傾斜部23の端部C、C´と、ガラス基板の縁端部A、A´との距離の平均値は1.05mmであり、傾斜部23の長さを表す平坦部22との境界E、E´と、傾斜部23の端部C、C´との距離の平均値は2.50mmであった。これらの平均値は、ガラス基板10の角部から辺方向に15mmの位置計8点において測定して、それらを算術平均した値である。
導電膜23のヤング率をiMicro(KLA社)を用いて測定したところ、導電膜23のヤング率は、242.3GPaであった。
導電膜23のシート抵抗をロレスタ-GX(日東精工アナリテック社)を用いて測定したところ、導電膜23のシート抵抗値は、2.61Ω/□であった。
作製した導電膜付基板の導電膜20を静電チャックのチャック面に吸着させ、真空中で静電チャックを30rpmで回転させながら2時間保持した。静電チャックは、チャック面は円形であり、最も外側に位置する電極間距離は141.5mmであった。静電チャックの電極間電圧は1200Vとした。
上記の手順で導電膜付基板を6枚作製した。作製した導電膜付基板について、静電チャックによる保持前後の欠陥数を、欠陥検査装置を用いて測定した。具体的には、導電膜付基板の導電膜が形成されている側の面における、大きさ100~150nmの欠陥の数(欠陥数)を、検査エリアを146mm角として測定した。静電チャックによる保持前後の欠陥数の差を求め、6枚の導電膜付き基板の平均値を146mm角検査エリア領域の欠陥数として示した。146mm角検査エリア領域の欠陥数が15以下の場合、静電チャック時のパーティクルの発生が少ない。
【0046】
(例2、3)
遮蔽部材の開口サイズとガラス基板との間隔を変更した以外は、例1と同様の手順で導電膜付基板を作製した。作製した導電膜付基板は、導電膜20の端部に傾斜部23を有しており、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が下記表に示す値であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離は0mm超であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´は、ガラス基板10の面取り面内に位置していた。
また、端部C-C´間の距離の平均値、端部C、C´と、縁端部A、A´との距離の平均値、境界E、E´と、端部C、C´との距離の平均値、導電膜23のヤング率およびシート抵抗値は下記表に示す値であった。
導電膜付基板は、各々6枚作製し、静電チャックによる吸着保持前後の欠陥数を測定した。6枚の導電膜付き基板の平均値を146mm角検査エリア領域の欠陥数として示した。結果を下記表に示す。
【0047】
(例4)
TaB化合物ターゲットを使用し、スパッタガスとして、Arガスを使用して、ガラス基板10の一方の主面に形成する導電膜20としてTaB膜を形成した点、および遮蔽部材の開口サイズとガラス基板との間隔を変更した点以外は、例1と同様の手順で導電膜付基板を作製した。導電膜付基板は、導電膜20の端部に傾斜部23を有しており、傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が下記表に示す値であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離は0mm超であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´は、ガラス基板10の面取り面内に位置していた。
また、端部C-C´間の距離の平均値、端部C、C´と、縁端部A、A´との距離の平均値、境界E、E´と、端部C、C´との距離の平均値、導電膜23のヤング率およびシート抵抗値は下記表に示す値であった。
導電膜付基板は6枚作製し、静電チャックによる吸着保持前後の欠陥数を測定した。6枚の導電膜付き基板の平均値を146mm角検査エリア領域の欠陥数として示した。結果を下記表に示す。
【0048】
(例5)
遮蔽部材の開口サイズとガラス基板との間隔を変更した以外は、例1と同様の手順で導電膜付基板を作製した。作製した導電膜付基板は、導電膜20の端部に傾斜部23を有しており、傾斜部23の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が下記表に示す値であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離は0mm超であり、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´は、ガラス基板10の面取り面内に位置していなかった。
また、端部C-C´間の距離の平均値、端部C、C´と、縁端部A、A´との距離の平均値、境界E、E´と、端部C、C´との距離の平均値、導電膜23のヤング率およびシート抵抗値は下記表に示す値であった。
導電膜付基板は6枚作製し、静電チャックによる吸着保持前後の欠陥数を測定した。6枚の導電膜付き基板の平均値を146mm角検査エリア領域の欠陥数として示した。結果を下記表に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
傾斜部23における導電膜20の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が3.00mm以下、導電膜20の傾斜部23の端部C、C´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離は0.00mm超の例1~例4は、146mm角検査エリア領域の欠陥数が15.0以下であり、静電チャック時のパーティクルの発生が抑制されたことで、パーティクルに起因して発生する欠陥を抑制できたと考えられる。導電膜20の傾斜部23の端部C、C´が、ガラス基板10の面取り面内に位置している例2~4は、146mm角検査エリア領域の欠陥数が10.0以下であり、静電チャック時のパーティクルの発生がより抑制され、パーティクルに起因して発生する欠陥を抑制できたと考えられる。傾斜部23の厚さが導電膜20の中心部21の膜厚の10%となる位置D、D´からガラス基板10の縁端部A、A´までの距離の最大値が3.00mm超の例5は、146mm角検査エリア領域の欠陥数が15.0超であり、静電チャック時に多くパーティクルが発生したと考えられる。
【符号の説明】
【0051】
10:ガラス基板
12:面取り面
20:導電膜
21:中心部
22:平坦部
23:傾斜部
図1
図2
図3