(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】トロリ線
(51)【国際特許分類】
B60M 1/13 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B60M1/13 A
(21)【出願番号】P 2022166923
(22)【出願日】2022-10-18
【審査請求日】2023-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 浩義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 和彦
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039462(JP,A)
【文献】特開2021-059248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の小弧面、下部の大弧面、前記小弧面と前記大弧面の間のイヤー溝を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm
2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、
左右各々の側面の前記大弧面上に、摩耗限度位置の指標である複数本の摩耗検知溝を有し、
径方向の断面積が153.2~155mm
2であり、
前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面の輪郭である第1の円弧の曲率と前記大弧面の輪郭である第2の円弧の曲率がそれぞれ一定であり、
前記第1の円弧の中心と前記第2の円弧の中心の位置が異なり、
前記第1の円弧の曲率が前記第2の円弧の曲率よりも小さい、
トロリ線。
【請求項2】
上部の小弧面、下部の大弧面、前記小弧面と前記大弧面の間のイヤー溝を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm
2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、
左右各々の側面の前記大弧面上に、摩耗限度位置の指標である複数本の摩耗検知溝を有し、
径方向の断面積が158.5~160mm
2であり、
前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面の輪郭である第1の円弧の曲率と、
前記大弧面の前記摩耗検知溝の下側の部分の輪郭である第2の円弧の曲率とがそれぞれ一定であり、
前記第1の円弧の中心と前記第2の円弧の中心の位置が異なり、
前記第2の円弧の曲率が前記第1の円弧の曲率よりも大きい、
トロリ線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路に使用されるトロリ線に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新幹線の高速化により、高い波動伝搬速度を有するトロリ線が求められている。トロリ線の質量を小さくすることにより波動伝搬速度を高めることができるが、トロリ線を小径のものに替えた場合(例えば断面積が170mm2のトロリ線を断面積が110mm2や130mm2のトロリ線に替えた場合)、イヤー金具の変更も必要となるため、イヤー溝の形状は変えずにトロリ線を軽量化することが好ましい。
【0003】
従来、その中心付近に長手方向に連続する中空部を有するトロリ線が知られている(特許文献1参照)。特許文献1のトロリ線は、中空部を設けることにより軽量化され、それによって波動伝搬速度が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のトロリ線は、中空部を設けることにより軽量化を図っているため、摩耗により断面積が低下する度合いが大きく、早い段階で強度や電流容量が許容限界に達してしまうため、摩耗寿命が短い。また、軽量化を図るためにトロリ線の大弧面の形状やサイズをJISE2101に規定される標準形状のトロリ線から変更する場合、摩耗限度位置の指標である摩耗検知溝の視認性が低下するおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的の1つは、摩耗寿命の低下や摩耗検知溝の視認性の低下を抑えつつ軽量化されたトロリ線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、上部の小弧面、下部の大弧面、前記小弧面と前記大弧面の間のイヤー溝を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、左右各々の側面の前記大弧面上に、摩耗限度位置の指標である複数本の摩耗検知溝を有し、径方向の断面積が153.2~155mm2であり、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面の輪郭である第1の円弧の曲率と前記大弧面の輪郭である第2の円弧の曲率がそれぞれ一定であり、前記第1の円弧の中心と前記第2の円弧の中心の位置が異なり、前記第1の円弧の曲率が前記第2の円弧の曲率よりも小さい、トロリ線を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上部の小弧面、下部の大弧面、前記小弧面と前記大弧面の間のイヤー溝を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、左右各々の側面の前記大弧面上に、摩耗限度位置の指標である複数本の摩耗検知溝を有し、径方向の断面積が158.5~160mm2であり、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面の輪郭である第1の円弧の曲率と、前記大弧面の前記摩耗検知溝の下側の部分の輪郭である第2の円弧の曲率とがそれぞれ一定であり、前記第1の円弧の中心と前記第2の円弧の中心の位置が異なり、前記第2の円弧の曲率が前記第1の円弧の曲率よりも大きい、トロリ線を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上部の小弧面、下部の大弧面、前記小弧面と前記大弧面の間のイヤー溝を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、径方向の断面積が163~165mm2であり、前記トロリ線の長さ方向に沿って延びる、前記トロリ線の質量軽減のための凹部を前記大弧面の下部に有し、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面の輪郭である第1の円弧の曲率と、前記大弧面の前記凹部が設けられていない部分の輪郭である第2の円弧の曲率と、前記大弧面の前記凹部内の下方に湾曲している部分の輪郭である第3の円弧の曲率とがそれぞれ一定であり、前記第1の円弧及び前記第2の円弧の中心と前記第3の円弧の中心の位置が異なり、前記第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率が等しく、前記第3の円弧の曲率が、前記第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率よりも大きい、トロリ線を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摩耗寿命の低下や摩耗検知溝の視認性の低下を抑えつつ軽量化されたトロリ線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るトロリ線の径方向の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るトロリ線の径方向の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るトロリ線の径方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
(トロリ線の構造)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るトロリ線1の径方向の断面図である。トロリ線1は、JISE2101に規定されたみぞ付硬銅トロリ線に該当する異形のトロリ線の断面の輪郭を変形したものであり、上部の小弧面11、下部の大弧面12、両側部の小弧面11と大弧面12の間のV字状のイヤー溝13とを有する。
【0013】
トロリ線1のイヤー溝13の形状は、JISE2101に規定される断面積が170mm2(sq)の標準寸法のトロリ線(以下、標準形状のトロリ線と呼ぶ)のイヤー溝の形状と同じである。このため、径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具をトロリ線1のイヤー溝13に用いることができる。また、トロリ線1は、銅合金、例えば、Cu-Sn-In系合金を主成分とする。
【0014】
トロリ線1を介して鉄道車両に給電が行われる際には、大弧面12の底部が、パンタグラフなどの鉄道車両の集電装置に接触する。このため、集電装置の摺動により、トロリ線1は大弧面12の底部から摩耗する。一般に、摩耗したトロリ線が安全に使用できる強度を保つことのできる限界を摩耗限度と呼ぶ。摩耗が摩耗限度位置14を超えて進むと、安全に使用できる強度を保つことのできる断面積を下回り、断線するおそれが高まる。
【0015】
トロリ線1は、摩耗限度位置14の指標である摩耗検知溝15a、15bを大弧面12上に有してもよい。摩耗検知溝15a、15bは、トロリ線1の長さ方向に沿って連続する溝である。通常、摩耗検知溝15a、15bは、
図1に示されるように、トロリ線1の両側に設けられる。なお、トロリ線1の左右各々の側面に3本以上の摩耗検知溝が設けられてもよい。このように、左右各々の側面に複数本の摩耗検知溝を設けることにより、軽量化を図るためにトロリ線の大弧面の形状やサイズが標準形状のトロリ線から変更される場合であっても、摩耗の進行度が視認しやすくなり、また、片側だけ摩耗が早くなるような偏摩耗対応にも有利である。
【0016】
トロリ線1においては、摩耗が進行して引張荷重が54.7kNとなるときの摩耗面(底面)の位置を摩耗限度位置14とする。ここで、54.7kNはヘビーコンパウンド架線に用いられる場合の必要荷重であり、ヘビーコンパウンド架線の架線張力(22.6kN)×安全率(2.2)×張力変動(1.1)で求められる値である。
【0017】
トロリ線1は、トロリ線1の質量を軽減するために、径方向の断面における小弧面11と大弧面12の輪郭が、標準形状のトロリ線の径方向の断面における小弧面と大弧面の輪郭から変形されている。これにより、トロリ線1の径方向の断面積(計算断面積)は、153.2~155mm2となっている。
【0018】
図1の点線で示される輪郭111と輪郭121は、標準形状のトロリ線の径方向の断面における、小弧面と大弧面の輪郭を示す。輪郭111と輪郭121は、中心の位置及び半径の等しい円弧である。標準形状のトロリ線の高さh
0と幅w
0は15.49mmであり、輪郭111と輪郭121は点O
2を中心とする半径r
0が7.745mmの円弧である。
【0019】
ここで、トロリ線1の径方向の断面において、小弧面11の輪郭である円弧(以下、第1の円弧と呼ぶ)の曲率と大弧面12の輪郭である円弧(以下、第2の円弧と呼ぶ)の曲率がそれぞれ一定である。また、第1の円弧の中心O
1と第2の円弧の中心O
2の位置が異なり、第1の円弧の曲率が第2の円弧の曲率よりも小さい(第1の円弧の半径r
1が第2の円弧の半径r
2よりも大きい)。典型的には、
図1に示されるように、第1の円弧の中心O
1と第2の円弧の中心O
2は、ともに一点鎖線で示される鉛直方向の中心線上に位置する。トロリ線1の幅w
1は、標準形状のトロリ線の幅w
0よりも小さく、トロリ線1の高さh
1は、標準形状のトロリ線の高さh
0よりも小さい。
【0020】
第1の円弧と第2の円弧の曲率が一定であることにより、ドラムへの巻き付けや、検測車による摩耗状態の検測が容易になる。また、イヤー溝13に取り付けるイヤー金具の締め付け形状は決められており、その形状にトロリ線の形状を合わせる必要があるため、トロリ線1の形状が標準形状のトロリ線の形状に近いことが好ましく、標準形状のトロリ線に近い形状を保ったまま断面積を低減するためには、第1の円弧の中心O
1が第2の円弧の中心O
2よりも下側(大弧面12側)にあることが好ましい。より具体的には、第1の円弧の中心O
1が第2の円弧の中心O
2よりも下側に位置することにより、イヤー溝13の上部の長さt
1の長さ及び下部の長さt
2を十分に確保しつつ、トロリ線1の断面積を低減することができる。長さt
1、t
2を十分に確保することにより、イヤー金具との嵌合性が良好になる。
図1に示される例では、イヤー金具との嵌合性において特に重要な長さt
1を標準形状のトロリ線と一致させ、長さt
2を10%以下の範囲で標準形状のトロリ線よりも短くしている。また、トロリ線1の高さh
1と幅w
1が等しい場合には、ドラムへの巻き付けがより容易になり、また、トロリ線1の形状が標準形状のトロリ線の形状により近くなる。
【0021】
トロリ線1は、上記の特許文献1に記載されているような、中空部を設けることにより断面積の低下を図っているトロリ線と比較して、摩耗による断面積の低下が緩やかであるため、摩耗寿命の低下を抑えつつ軽量化することができる。
【0022】
例えば、トロリ線1が
図1に示される形状を有し、第1の円弧の半径r
1が9.195mm、第2の円弧の半径r
2が7.25mm、高さh
1が14.50mm、幅w
1が14.50mmであり、第2の円弧の中心O
2の位置が輪郭111と輪郭121の円弧の中心と一致し、第1の円弧の中心O
1が中心O
2から鉛直下側に距離1.945mmの位置にあるとき、トロリ線1の断面積が153.62mm
2となる。
【0023】
(トロリ線の特性)
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るトロリ線1の特性について、
図1に示されるトロリ線1をヘビーコンパウンド架線に用いる場合の例を挙げて説明する。
【0024】
トロリ線1をヘビーコンパウンド架線において架線張力2.3トン(22.6kN)で架線した場合、営業速度360km/hでの新幹線の走行に対応させ、特に高速性能を優先する(営業速度360km/hでの新幹線の走行に対応できる範囲でβ値を高めに、摩耗しろを小さめに設定する)場合には、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.782以下となること、及び4mmの摩耗しろ(トロリ線1の底部から摩耗限度位置14までの高さ)h2を確保することが好ましい。ここで、β値は、トロリ線の波動伝播速度Cに対する新幹線の走行速度Vの比(V/C)である。
【0025】
なお、摩耗しろh2は、トロリ線1の摩耗が進行したときに、強度を保つために必要な必要断面積を確保することのできる摩耗高さの限界値として、0.5mm刻みで設定される。ここで、トロリ線1の単位面積当たりの引張強度を470MPaとして、この単位面積当たりの引張強度で54.7kNである必要荷重を除して、必要断面積を116mm2と算出した。そして、トロリ線1の116mm2の必要断面積を確保するための摩耗しろh2を4mmと算出した。なお、トロリ線1の単位面積当たりの引張強度を470MPaとするのは、トロリ線は断面積が小さくなると加工硬化により強度が高くなるため、単位面積当たりの引張強度を470MPa以上と設定できるようになることによる。
【0026】
下記の表1に、トロリ線1をヘビーコンパウンド架線において架線張力2.3トン(22.6kN)で架線した場合の、トロリ線の質量、断面積、波動伝搬速度、及び新幹線を360km/hで走行させたときのβ値の関係を示す。ここで、トロリ線1の密度を8.92g/cm3とした。
【0027】
【0028】
表1によれば、トロリ線1の断面積が155mm2以下であるときに、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.782以下となる。
【0029】
下記の表2に、断面積が151~156mm2のトロリ線1が、その底部から高さ方向に4mm摩耗したときの特性を示す。ここで、表2の残存断面積は、トロリ線1の摩耗後に残存した部分の断面積である。また、引張荷重、質量、波動伝搬速度、β値の値は、それぞれトロリ線1の摩耗後の値である。
【0030】
【0031】
表2によれば、トロリ線1の断面積が153.2mm2以上である場合に、4mm摩耗したときに必要荷重である54.7kN以上の引張荷重を確保することができる。すなわち、トロリ線1の断面積が153.2mm2以上のときに、4mmの摩耗しろh2を確保することができる。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
(トロリ線の構造)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るトロリ線2の径方向の断面図である。トロリ線2は、JISE2101に規定されたみぞ付硬銅トロリ線に該当する異形のトロリ線の断面の輪郭を変形したものであり、上部の小弧面21、下部の大弧面22、両側部の小弧面21と大弧面22の間のV字状のイヤー溝23とを有する。
【0033】
トロリ線2のイヤー溝23の形状は、標準形状のトロリ線(JISE2101に規定される断面積が170mm2(sq)の標準寸法のトロリ線)のイヤー溝の形状と同じである。このため、径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具をトロリ線2のイヤー溝23に用いることができる。また、トロリ線2は、銅合金、例えば、Cu-Sn-In系合金を主成分とする。
【0034】
トロリ線2は、摩耗限度位置24の指標である摩耗検知溝25a、25bを大弧面22上に有する。通常、摩耗検知溝25a、25bは、
図2に示されるように、トロリ線2の両側に設けられる。なお、トロリ線2の左右各々の側面に3本以上の摩耗検知溝が設けられてもよい。このように、左右各々の側面に複数本の摩耗検知溝を設けることにより、軽量化を図るためにトロリ線の大弧面の形状やサイズが標準形状のトロリ線から変更される場合であっても、摩耗の進行度が視認しやすくなり、また、片側だけ摩耗が早くなるような偏摩耗対応にも有利である。
【0035】
トロリ線2においては、摩耗が進行して引張荷重が54.7kNとなるときの摩耗面(底面)の位置を摩耗限度位置24とする。ここで、54.7kNはヘビーコンパウンド架線に用いられる場合の必要荷重であり、ヘビーコンパウンド架線の架線張力(22.6kN)×安全率(2.2)×張力変動(1.1)で求められる値である。
【0036】
トロリ線2は、トロリ線2の質量を軽減するために、径方向の断面における小弧面21と大弧面22の輪郭が、JISE2101に規定される断面積が170mm2の標準寸法のトロリ線(標準形状のトロリ線)の径方向の断面における小弧面と大弧面の輪郭から変形されている。これにより、トロリ線2の径方向の断面積(計算断面積)は、158.5~160mm2となっている。
【0037】
図2の点線で示される輪郭221は、標準形状のトロリ線の径方向の断面における、大弧面の輪郭を示す。標準形状のトロリ線の径方向の断面における、小弧面の輪郭211は、小弧面21の輪郭と一致している。輪郭211と輪郭221は、中心の位置及び半径の等しい円弧である。標準形状のトロリ線の高さh
0と幅w
0は15.49mmであり、輪郭211と輪郭221は、点O
1を中心とする半径r
0が7.745mmの円弧である。
【0038】
ここで、トロリ線2の径方向の断面において、小弧面21の輪郭である円弧(以下、第1の円弧と呼ぶ)の曲率と、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの下側(底側)の部分の輪郭である円弧(以下、第2の円弧と呼ぶ)の曲率とがそれぞれ一定である。また、第1の円弧の中心O
1と第2の円弧の中心O
2の位置が異なり、第2の円弧の曲率が第1の円弧の曲率よりも大きい(第2の円弧の半径r
2が第1の円弧の半径r
1よりも小さい)。典型的には、
図2に示されるように、第1の円弧の中心O
1と第2の円弧の中心O
2は、ともに一点鎖線で示される鉛直方向の中心線上に位置する。トロリ線2の幅w
1は、標準形状のトロリ線の幅w
0よりも小さく、トロリ線2の高さh
1は、典型的には、標準形状のトロリ線の高さh
0と等しい。
【0039】
なお、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの上側の部分の輪郭は、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの下側の部分の輪郭と同様に輪郭221の内側にあり、また、好ましくは、
図2に示されるように、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの下側の部分の輪郭と摩耗検知溝25a、25bを挟んでほぼ段差なくつながる。
図2に示される例では、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの上側の部分の輪郭の一部が、点O
1、O
2と位置の異なる点O
3を中心とする半径r
3の円弧(以下、第3の円弧と呼ぶ)からなる。
【0040】
第1の円弧と第2の円弧の曲率が一定であることにより、ドラムへの巻き付けや、検測車による摩耗状態の検測が容易になる。また、第1の円弧と第2の円弧の中心の位置が異なることによって、第1の円弧と第2の円弧の曲率を一定に保ったまま断面積を低減することができる。
【0041】
トロリ線2は高さh1が幅w1よりも大きく、幅w1に対する高さh1の比の値h1/w1は、1.05~1.15(例えば1.1)程度であり、これによって4.5mm以上の摩耗しろ(トロリ線2の底部から摩耗限度位置24までの高さ)h2を確保することができる。また、半径r2が、半径r0、r1に対して10~20%(例えば15%)程度小さく、これによって摩耗した際のトロリ線2の下側部分の断面積の縮小度合いを抑え、トロリ線2の摩耗に伴う機械的強度の低下を抑えることができる。
【0042】
トロリ線2は、上記の特許文献1に記載されているような、中空部を設けることにより断面積の低下を図っているトロリ線と比較して、摩耗による断面積の低下が緩やかであるため、摩耗寿命の低下を抑えつつ軽量化することができる。
【0043】
例えば、トロリ線2が
図2に示される形状を有し、第1の円弧の半径r
1が7.745mm、第2の円弧の半径r
2が6.61mm、大弧面22の摩耗検知溝25a、25bの上側の部分の輪郭の一部を構成する第3の円弧の半径r
3が7.745mm、高さh
1が15.49mm、幅w
1が13.89mmであり、第1の円弧の中心O
1の位置が輪郭211と輪郭221の円弧の中心と一致し、第2の円弧の中心O
2が中心O
1から鉛直下側に距離1.135mmの位置にあり、第3の円弧の中心O
3が中心O
1から水平方向の第3の円弧の反対側に距離0.8mm、鉛直上側に距離0.3mmの位置にあるとき、トロリ線2の断面積が159.2mm
2となる。
【0044】
(トロリ線の特性)
以下に、本発明の第2の実施の形態に係るトロリ線2の特性について、
図2に示されるトロリ線2をヘビーコンパウンド架線に用いる場合の例を挙げて説明する。
【0045】
トロリ線2をヘビーコンパウンド架線において架線張力2.3トン(22.6kN)で架線した場合、営業速度360km/hでの新幹線の走行に対応させ、特にメンテナンスフリーを優先する(営業速度360km/hでの新幹線の走行に対応できる範囲でβ値を小さめに、摩耗しろを大きめに設定する)場合には、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.795以下となること、及び4.5mmの摩耗しろ(トロリ線2の底部から摩耗限度位置24までの高さ)h2を確保することが好ましい。
【0046】
なお、摩耗しろh2は、トロリ線2の摩耗が進行したときに、強度を保つために必要な必要断面積を確保することのできる摩耗高さの限界値として、0.5mm刻みで設定される。ここで、トロリ線2の単位面積当たりの引張強度を470MPaとして、この単位面積当たりの引張強度で54.7kNである必要荷重を除して、必要断面積を116.4mm2と算出した。そして、トロリ線2の116.4mm2の必要断面積を確保するための摩耗しろh2を4.5mmと算出した。なお、トロリ線2の単位面積当たりの引張強度を470MPaとするのは、トロリ線は断面積が小さくなると加工硬化により強度が高くなるため、単位面積当たりの引張強度を470MPa以上と設定できるようになることによる。
【0047】
下記の表3に、トロリ線2をヘビーコンパウンド架線において架線張力2.3トン(22.6kN)で架線した場合の、トロリ線の質量、断面積、波動伝搬速度、及び新幹線を360km/hで走行させたときのβ値の関係を示す。ここで、トロリ線2の密度を8.92g/cm3とした。
【0048】
【0049】
表3によれば、トロリ線2の断面積が160mm2以下であるときに、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.795以下となる。
【0050】
下記の表4に、断面積が156~161mm2のトロリ線2が、その底部から高さ方向に4.5mm摩耗したときの特性を示す。ここで、表4の残存断面積は、トロリ線2の摩耗後に残存した部分の断面積である。また、引張荷重、質量、波動伝搬速度、β値の値は、それぞれトロリ線2の摩耗後の値である。
【0051】
【0052】
表4によれば、トロリ線2の断面積が158.5mm2以上である場合に、4.5mm摩耗したときに必要荷重である54.7kN以上の引張荷重を確保することができる。すなわち、トロリ線2の断面積が158.5mm2以上のときに、4.5mmの摩耗しろh2を確保することができる。
【0053】
〔第3の実施の形態〕
(トロリ線の構造)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るトロリ線3の径方向の断面図である。トロリ線3は、JISE2101に規定されたみぞ付硬銅トロリ線に該当する異形丸形のトロリ線に後述する凹部35を設けたものであり、上部の小弧面31、下部の大弧面32、両側部の小弧面31と大弧面32の間のV字状のイヤー溝33とを有する。
【0054】
トロリ線3のイヤー溝33の形状は、標準形状のトロリ線(JISE2101に規定される断面積が170mm2の標準寸法のトロリ線)のイヤー溝の形状と同じである。このため、径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具をトロリ線3のイヤー溝33に用いることができる。また、トロリ線3は、銅合金、例えば、Cu-Sn-In系合金を主成分とする。
【0055】
トロリ線3においては、摩耗が進行して引張荷重が65.3kNとなるときの摩耗面(底面)の位置を摩耗限度位置34とする。ここで、65.3kNはヘビーシンプル架線に用いられる場合の必要荷重であり、ヘビーシンプル架線の架線張力(27.0kN)×安全率(2.2)×張力変動(1.1)で求められる値である。
【0056】
トロリ線3は、トロリ線1の質量を軽減するための凹部35を大弧面32の下部(トロリ線1の底部側の底部を含む部分)に有する。凹部35は、標準形状のトロリ線の大弧面から凹んだ部分である。これにより、トロリ線3の径方向の断面積(計算断面積)は、163~165mm2となっている。また、凹部35を摩耗限度位置34の指標となる摩耗検知溝として用いることができる。トロリ線3においては、大弧面32の凹部35が設けられていない部分の形状及びサイズが、標準形状のトロリ線の大弧面と同じであるため、凹部35の摩耗検知溝としての視認性は良好である。
【0057】
図3の点線で示される輪郭321は、標準形状のトロリ線の径方向の断面における、大弧面の輪郭を示す。標準形状のトロリ線の径方向の断面における、小弧面の輪郭311は、小弧面31の輪郭と一致している。輪郭311と輪郭321は、中心の位置及び半径の等しい円弧である。標準形状のトロリ線の高さh
0と幅w
0は15.49mmであり、輪郭311と輪郭321は、点O
1を中心とする半径r
0が7.745mmの円弧である。トロリ線3の幅w
1は、標準形状のトロリ線の幅w
0と等しく、トロリ線3の高さh
1は、典型的には、標準形状のトロリ線の高さh
0と等しい。また、典型的には、トロリ線3の高さh
1と幅w
1は等しい。
【0058】
ここで、トロリ線3の径方向の断面において、小弧面31の輪郭である円弧(以下、第1の円弧と呼ぶ)の曲率と、大弧面32の凹部35が設けられていない部分の輪郭である円弧(以下、第2の円弧と呼ぶ)の曲率と、大弧面32の凹部35内の下方に湾曲している部分351の輪郭である円弧(以下、第3の円弧と呼ぶ)の曲率とがそれぞれ一定である。また、第1の円弧及び第2の円弧の中心O
1と第3の円弧の中心O
3の位置が異なり、第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率が等しく(第1の円弧の半径r
1と第2の円弧の半径r
2が等しく)、第3の円弧の曲率が、前記第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率よりも大きい(第3の円弧の半径r
3が、第1の円弧の半径r
1と第2の円弧の半径r
2よりも小さい)。典型的には、
図3に示されるように、第1の円弧及び第2の円弧の中心O
1と第3の円弧の中心O
3は、ともに一点鎖線で示される鉛直方向の中心線上に位置する。
【0059】
第1の円弧、第2の円弧、及び第3の円弧の曲率が一定であることにより、ドラムへの巻き付けや、検測車による摩耗状態の検測が容易になる。また、凹部35を設けることによって、第1の円弧、第2の円弧、及び第3の円弧の曲率を一定に保ったまま断面積を低減することができる。
【0060】
トロリ線3は、半径r3が、半径r0、r1、r2に対して15~25%(例えば20%)程度小さく、これによって摩耗した際のトロリ線3の下側部分の断面積の縮小度合いを抑え、トロリ線2の摩耗に伴う機械的強度の低下を抑えることができる。
【0061】
トロリ線3は、上記の特許文献1に記載されているような、中空部を設けることにより断面積の低下を図っているトロリ線と比較して、摩耗による断面積の低下が緩やかであるため、摩耗寿命の低下を抑えつつ軽量化することができる。
【0062】
凹部35が摩耗限度位置34の下側に設けられている場合には、トロリ線3の摩耗が進むと、摩耗が摩耗限度位置34に達する前に凹部35が消失する。このため、摩耗が進行したときのトロリ線3の残存断面積の急激な低下を抑えることができる。
【0063】
例えば、トロリ線3が
図3に示される形状を有し、第1の円弧の半径r
1及び第2の円弧の半径r
2が7.745mm、第3の円弧の半径r
3が6.17mm、高さh
1及び幅w
1が15.49mmであり、第1の円弧及び第2の円弧の中心O
1の位置が輪郭321の円弧の中心と一致し、第3の円弧の中心O
2が中心O
1から鉛直下側に距離1.575mmの位置にあるとき、トロリ線3の断面積が165mm
2となる。
【0064】
(トロリ線の特性)
以下に、本発明の第3の実施の形態に係るトロリ線3の特性について、
図3に示されるトロリ線3をヘビーシンプル架線に用いる場合の例を挙げて説明する。
【0065】
トロリ線3をヘビーシンプル架線において架線張力2.75トン(27kN)で架線した場合、営業速度360km/hでの新幹線の走行に対応させるため、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.737以下となること、及び3mmの摩耗しろ(トロリ線3の底部から摩耗限度位置34までの高さ)h2を確保することが求められる。
【0066】
なお、摩耗しろh2は、トロリ線3の摩耗が進行したときに、強度を保つために必要な必要断面積を確保することのできる摩耗高さの限界値として、0.5mm刻みで設定される。ここで、トロリ線3の単位面積当たりの引張強度を460MPaとして、この単位面積当たりの引張強度で65.3kNである必要荷重を除して、必要断面積を142mm2と算出した。そして、トロリ線3の142mm2の必要断面積を確保するための摩耗しろh2を3mmと算出した。なお、トロリ線3の単位面積当たりの引張強度を460MPaとするのは、断面積が163mm2以上のトロリ線の単位面積当たりの引張強度が460MPa以上に設定されるためである。
【0067】
下記の表5に、トロリ線3をヘビーシンプル架線において架線張力2.75トン(27kN)で架線した場合の、トロリ線の質量、断面積、波動伝搬速度、及び新幹線を360km/hで走行させたときのβ値の関係を示す。ここで、トロリ線3の密度を8.92g/cm3とした。
【0068】
【0069】
表5によれば、トロリ線の断面積が165mm2以下であるときに、新幹線を360km/hで走行させたときのβ値が0.737以下となる。
【0070】
下記の表6に、断面積が160~165mm2のトロリ線3が、その底部から高さ方向に3mm摩耗したときの特性を示す。ここで、表6の残存断面積は、トロリ線1の摩耗後に残存した部分の断面積である。また、引張荷重、質量、波動伝搬速度、β値の値は、それぞれトロリ線1の摩耗後の値である。
【0071】
【0072】
表6によれば、トロリ線3の断面積が163mm2以上である場合に、3mm摩耗したときに必要荷重である65.3kN以上の引張荷重を確保することができる。すなわち、トロリ線3の断面積が163mm2以上のときに、3mmの摩耗しろh2を確保することができる。
【0073】
(実施の形態の効果)
上記第1~3の実施の形態によれば、トロリ線の断面の輪郭を変形することにより断面積を低減しているため、摩耗が進行したときのトロリ線の残存断面積の急激な低下を抑えることができる。また、第1、2の実施の形態ではトロリ線の左右各々の側面に複数本の摩耗検知溝を設けることにより、第3の実施の形態ではトロリ線の大弧面の形状及びサイズを標準形状のトロリ線と同じとすることにより、摩耗検知溝の視認性を向上させている。これにより、摩耗寿命の低下や摩耗検知溝の視認性の低下を抑えつつトロリ線の軽量化を図り、波動伝搬速度を向上させることができる。また、上記第1~3の実施の形態によれば、イヤー溝の形状は変えずにトロリ線を軽量化しているため、トロリ線を交換する際にイヤー金具を変更する必要がない。
【0074】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0075】
[1]上部の小弧面(11)、下部の大弧面(12)、前記小弧面(11)と前記大弧面(12)の間のイヤー溝(13)を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、左右各々の側面の前記大弧面(12)上に、摩耗限度位置(14)の指標である複数本の摩耗検知溝(15a、15b)を有し、径方向の断面積が153.2~155mm2であり、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面(11)の輪郭である第1の円弧の曲率と前記大弧面(12)の輪郭である第2の円弧の曲率がそれぞれ一定であり、前記第1の円弧の中心(O1)と前記第2の円弧の中心(O2)の位置が異なり、前記第1の円弧の曲率が前記第2の円弧の曲率よりも小さい、トロリ線(1)。
【0076】
[2]上部の小弧面(21)、下部の大弧面(22)、前記小弧面(21)と前記大弧面(22)の間のイヤー溝(23)を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、左右各々の側面の前記大弧面(22)上に、摩耗限度位置(24)の指標である複数本の摩耗検知溝(25a、25b)を前記大弧面(22)上に有し、径方向の断面積が158.5~160mm2であり、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面(21)の輪郭である第1の円弧の曲率と、前記大弧面(22)の前記摩耗検知溝(25a、25b)の下側の部分の輪郭である第2の円弧の曲率とがそれぞれ一定であり、前記第1の円弧の中心(O1)と前記第2の円弧の中心(O2)の位置が異なり、前記第2の円弧の曲率が前記第1の円弧の曲率よりも大きい、トロリ線(2)。
【0077】
[3]上部の小弧面(31)、下部の大弧面(32)、前記小弧面(31)と前記大弧面(32)の間のイヤー溝(33)を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、径方向の断面積が163~165mm2であり、前記トロリ線の長さ方向に沿って延びる、前記トロリ線の質量軽減のための凹部(35)を前記大弧面(32)の下部に有し、前記トロリ線の径方向の断面において、前記小弧面(31)の輪郭である第1の円弧の曲率と、前記大弧面(32)の前記凹部(35)が設けられていない部分の輪郭である第2の円弧の曲率と、前記大弧面(32)の前記凹部(35)内の下方に湾曲している部分(351)の輪郭である第3の円弧の曲率とがそれぞれ一定であり、前記第1の円弧及び前記第2の円弧の中心(O1)と前記第3の円弧の中心(O3)の位置が異なり、前記第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率が等しく、前記第3の円弧の曲率が、前記第1の円弧の曲率と前記第2の円弧の曲率よりも大きい、トロリ線(3)。
【0078】
[4]前記凹部(35)を摩耗限度位置(34)の下側に有する、上記[3]に記載のトロリ線。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0080】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0081】
1、2、3 トロリ線
11、21、31 小弧面
12,22、32 大弧面
13、23、33 イヤー溝
14、24、34 摩耗限度位置
15a、15b、25a、25b 摩耗検知溝
35 凹部
351 下方に湾曲している部分
【要約】
【課題】摩耗寿命の低下や摩耗検知溝の視認性の低下を抑えつつ軽量化されたトロリ線を提供する。
【解決手段】本発明の一態様において、上部の小弧面11、下部の大弧面12、小弧面11と大弧面12の間のイヤー溝13を有し、前記イヤー溝に径方向の断面積が170mm
2のトロリ線用のイヤー金具を用いることができるトロリ線であって、左右各々の側面の前記大弧面12上に、摩耗限度位置14の指標である複数本の摩耗検知溝15a、15bを有し、径方向の断面積が153.2~155mm
2であり、前記トロリ線の径方向の断面において、小弧面11の輪郭である第1の円弧の曲率と大弧面12の輪郭である第2の円弧の曲率がそれぞれ一定であり、前記第1の円弧の中心O
1と前記第2の円弧の中心O
2の位置が異なり、前記第1の円弧の曲率が前記第2の円弧の曲率よりも小さい、トロリ線1を提供する。
【選択図】
図1