(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】硬化性組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230808BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230808BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230808BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20230808BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230808BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G59/40
C08J5/24 CFC
C08J5/24 CFD
C08L63/00 A
H01L23/14 R
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2023511632
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2022038147
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021187744
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009129(JP,A)
【文献】特開平07-070293(JP,A)
【文献】特開2010-077344(JP,A)
【文献】特開2009-242560(JP,A)
【文献】特開2015-174986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
C08J 5/24
C08L 63/00
H01L 23/14
H01L 23/29
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エステル樹脂、炭化水素樹脂及び硬化剤を含有する硬化性組成物であって、前記活性エステル樹脂が、炭素原子数5以上のアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物(a1)及びジビニル化合物(a2)の反応物であるフェノール性水酸基を有する樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)との反応物であ
り、
前記ジビニル化合物(a2)が下記一般式(1-1)~(1-4)のいずれかで表されるものであり、
前記硬化剤が、エポキシ樹脂である硬化性組成物。
【化1】
[一般式(1-1)~(1-4)中、R
1
はそれぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基であり、Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基であり、iは0又は1~4の整数であり、jは1~4の整数である。]
【請求項2】
前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)が、下記一般式(2)で表される構造を有するものである請求項1記載の硬化性組成物。
【化1】
[一般式(2)中、Xは下記一般式(X-1)~(X-4)のいずれかで表されるものである。]
【化2】
[一般式(X-1)~(X-4)中、R
1はそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基であり、Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基であり、iは0又は1~4の整数であり、jは1~4の整数である。]
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項4】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項1又は2記載の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項5】
請求項4記載のプリプレグ及び銅箔を含む積層体である回路基板。
【請求項6】
請求項1又は2記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項7】
請求項1又は2記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項8】
請求項7記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部材用途において広く用いられている。この電子部材用途の中でもビルドアップフィルムをはじめとする絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。この信号の高速化、高周波数化にともなって、より低い誘電率を有し、かつより低い誘電正接を有する材料が求められている。しかしながら、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を有する材料を得ることは困難であった。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対し、十分に低い誘電率、誘電正接を維持し、寸法安定性等の信頼性を高めるために、炭化水素系可塑剤を用いることが報告されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、炭化水素系可塑剤は、極性が極めて低いため、他の樹脂との相溶性が極めて低く、均一なワニスを調製することが困難であった。また、相溶性が低いまま調整したワニスを用いた積層板、プリプレグ、ビルドアップフィルムは信頼性が欠けるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-90954号公報
【文献】特開2013-135032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、極性が極めて低い炭化水素樹脂(炭化水素系可塑剤)を配合した硬化性組成物であっても、高い相溶性を有し、当該硬化性組成物の硬化物が低い誘電正接を有する硬化性組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の活性エステルに炭化水素樹脂及び硬化剤を配合した硬化性組成物は、高い相溶性を有し、その硬化物は、低い誘電正接を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、活性エステル樹脂、炭化水素樹脂及び硬化剤を含有する硬化性組成物であって、前記活性エステル樹脂が、炭素原子数5以上のアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物(a1)及びジビニル化合物(a2)の反応物であるフェノール性水酸基を有する樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)との反応物である硬化性組成物に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記硬化性組成物の硬化物、前記硬化性組成物を用いたプリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、極性が極めて低い炭化水素樹脂を配合していても、高い相溶性を有し、その硬化物は、低い誘電正接を有することから、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材等の電子部材用途に用いることができ、これらの電子部材を用いた半導体装置にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、製造例1で得られた活性エステル樹脂(1)のGPCチャート図である。
【
図2】
図2は、製造例2で得られた活性エステル樹脂(2)のGPCチャート図である。
【
図3】
図3は、比較製造例1で得られた活性エステル樹脂(1’)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル樹脂は、炭素原子数5以上のアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物(a1)及びジビニル化合物(a2)の反応物であるフェノール性水酸基を有する樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)との反応物である。
【0012】
前記化合物(a1)は、炭素原子数5以上のアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。前記化合物(a1)が有するアルキル基は、炭素原子数が5以上のものであればよく、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。前記アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよく、脂環構造であってもよい。また、前記アルキル基は、炭素原子数5以上であるが、炭素原子数12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
【0013】
前記化合物(a1)として、フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール、ナフトール等が挙げられる。また、前記化合物(a1)の具体例としては、例えば、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、ペンチルナフトール、ヘキシルナフトール、ヘプチルナフトール、オクチルナフトール、ノニルナフトール、デシルナフトール、ウンデシルナフトール、ドデシルナフトール等が挙げられる。さらに、これらの前記化合物(a1)が有するアルキル基及びフェノール性水酸基の芳香環上の置換位置に特に限定はないが、前記化合物(a1)がフェノールの場合は、アルキル基及びフェノール性水酸基がパラ位に置換していることが好ましい。また、前記化合物(a1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0014】
前記ジビニル化合物(a2)は、前記化合物(a1)と反応し、前記化合物(a1)同士を重合できる化合物であれば特に限定されるものではない。また、前記ジビニル化合物(a2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。中でも、相溶性がよく、かつ、硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることから分子構造中に芳香環あるいは脂環を有する化合物であることが好ましい。前記ジビニル化合物(a2)のより好ましい具体例としては、例えば、下記一般式(1-1)~(1-4)で表される化合物等が挙げられる。
【0015】
【化1】
[一般式(1-1)~(1-4)中、R
1はそれぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基であり、Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基であり、iは0又は1~4の整数であり、jは1~4の整数である。]
【0016】
前記一般式(1-1)~(1-4)中のR1はそれぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香環上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香環上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。
【0017】
前記一般式(1-1)~(1-4)で表される化合物の中でも、相溶性がよく、かつ、硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることから前記一般式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
前記ジビニル化合物(a2)として、前記一般式(1-1)~(1-4)で表される化合物を用いた場合、前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)は、前記化合物(a1)が下記一般式(2)で表される構造部位で結合されたものとなる。
【0019】
【化2】
[一般式(2)中、Xは下記一般式(X-1)~(X-4)のいずれかで表されるものである。]
【0020】
【化3】
[一般式(X-1)~(X-4)中、R
1はそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基であり、Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基であり、iは0又は1~4の整数であり、jは1~4の整数である。]
【0021】
前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)は、前記化合物(a1)及び前記ジビニル化合物(a2)以外のその他の化合物を反応原料としてもよい。その他の化合物としては、例えば、各種のアルデヒド化合物等、ジビニル化合物(a2)以外の化合物であって前記化合物(a1)を重合できる化合物(a2’)や、フェノール性水酸基を有する樹脂(A)中の芳香環上の置換基として脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基を導入するための置換基導入剤(a3)等が挙げられる。
【0022】
前記化合物(a2’)を用いる場合、相溶性がよく、かつ、硬化物における誘電正接が低いという本発明の効果が十分に発揮されることから、前記ジビニル化合物(a2)と前記化合物(a2’)との合計に対し、前記ジビニル化合物(a2)が50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。
【0023】
前記置換基導入剤(a3)は、例えば、フェニルメタノール化合物、フェニルメチルハライド化合物、ナフチルメタノール化合物、ナフチルメチルハライド化合物、及びスチレン化合物等のアラルキル基導入剤等が挙げられる。
【0024】
前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)を製造する方法は特に限定されないが、一分子あたりのフェノール性水酸基数が2以上となるように反応原料の割合を調整することが好ましい。例えば、前記ジビニル化合物(a2)1モルに対して前記化合物(a1)を2~10モルの範囲で用い、酸触媒条件下、80~180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。反応終了後は所望に応じて、過剰量の前記化合物(a1)を留去してもよい。
【0025】
前記酸触媒は、例えば、p-トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、シュウ酸等が挙げられ、これらの水和物も用いることができる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの酸触媒は、水溶液として用いてもよい。酸触媒の添加量は、前記化合物(a1)に対し、0.01~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0026】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0027】
前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)の具体例としては、例えば、前記化合物(a1)としてフェノールを用い、前記ジビニル化合物(a2)としてジビニルベンゼンを用いた場合の構造例を下記一般式(A-1)に示す。なお、下記一般式(A-1)はフェノール性水酸基を有する樹脂(A)の一例に過ぎず、その他の樹脂を排除するものではない。
【0028】
【化4】
[一般式(A-1)中、R
1はそれぞれ独立に、炭素原子数5以上のアルキル基であり、R
2はそれぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(R-1)で表される構造部位であり、nは1~10の整数である。]
【0029】
【化5】
[一般式(R-1)中、R
1は炭素原子数5以上のアルキル基であり、nは1~10の整数である。]
【0030】
また、一般に市販されているジビニルベンゼンはエチルスチレンを一部含むことがある。この場合、前記一般式(B-1)中のR2として、下記式(R-2)で表される構造が一部導入されることがある。
【0031】
【0032】
前記芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)は、前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)が有するフェノール性水酸基と反応してエステル結合を形成できる芳香族化合物であれば特に限定されるものではない。具体例としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸;ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香環上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。前記酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。中でも、反応活性が高く硬化性に優れる活性エステル樹脂となることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0033】
本発明の活性エステル樹脂は、例えば、前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)及び前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)を、アルカリ触媒の存在下、40~65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。また、反応終了後は所望に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製してもよい。
【0034】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記アルカリ触媒は、3~30質量%程度の水溶液として用いてもよい。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0035】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
また、本発明の硬化性組成物には、前記フェノール性水酸基を有する樹脂(A)中に残存している前記化合物(a1)と、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)とが反応したエステル化合物を含有していてもよい。
【0037】
前記活性エステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の硬化性組成物の硬化収縮率がより低くなることから、600~50,000の範囲が好ましく、800~30,000の範囲がより好ましい。なお、前記活性エステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて測定される値である。
【0038】
また、本発明の活性エステル樹脂の軟化点は、JIS K7234に基づいて測定される値で、80~180℃の範囲が好ましく、85~160℃の範囲がより好ましい。
【0039】
前記活性エステル樹脂の官能基当量は、本発明の硬化性組成物の相溶性がよく、かつ、硬化性にも優れるものとなることから、200~350g/当量の範囲が好ましく、200~300g/当量の範囲がより好ましい。なお、本発明において活性エステル樹脂中の官能基とは、活性エステル樹脂中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことをいう。また、活性エステル樹脂の官能基当量は、原料の仕込み量から算出される値である。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、前記活性エステル樹脂に加え、炭化水素樹脂及び硬化剤を含有する。前記炭化水素樹脂は、炭素原子及び水素原子から構成される樹脂であれば、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。前記炭化水素樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0041】
前記熱可塑性エラストマーの中でも、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、さらにその中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。前記SEBSの市販品としては、旭化成ケミカルズ株式会社製「タフテック」、三菱ケミカル株式会社製「ラバロン」、リケンテクノス株式会社製「アクティマー」、アロン化成株式会社製「エラストマーAR」、クレイトンポリマージャパン株式会社製「クレイトンG」、日本曹達株式会社製「Bシリーズ」、「BIシリーズ」等が挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性組成物中(有機溶剤を除く)の前記炭化水素樹脂の割合は、相溶性がよく、かつ硬化物における誘電正接がより低くできることから、5~40質量%の範囲が好ましく、10~35質量%の範囲がより好ましい。
【0043】
前記硬化剤は、前記活性エステル樹脂と反応し得る化合物であれば、特に限定されるものではないが、硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0044】
前記エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、前記活性エステル樹脂以外に、その他のエポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。その他のエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0046】
本発明の硬化性組成物に、硬化剤としてエポキシ樹脂を用い、その他のエポキシ樹脂用硬化剤も併用する場合、これらの配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル樹脂及びその他のエポキシ樹脂用硬化剤中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合が好ましい。
【0047】
本発明の硬化性組成物は、その他の樹脂として、シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;スチレン-無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノール、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂;ポリリン酸エステル;リン酸エステル-カーボネート共重合体などを含有してもよい。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0048】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0049】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0050】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物中0.1~20質量%の範囲が好ましい。
【0051】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物中に、0.5~95質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0052】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0053】
以上詳述した通り、本発明の硬化性組成物は、硬化収縮率が低く、かつ硬化物における誘電正接が低いという優れた性能を有する。また、極性が極めて低い炭化水素樹脂が配合されていても優れた相溶性を有するため、均一な硬化性組成物となり、均一な硬化物が得られることから、電子部材用途に用いても電気特性への悪影響が低減できる。これらのことから、本発明の硬化性組成物は、電子部材に用いられるプリプレグ、回路基板、半導体封止材、及び半導体封止材の硬化物を含む半導体装置等に好適に用いることができる。さらに、電子部材用途以外の、塗料、接着剤、成形品等の用途にも広く用いることができる。
【0054】
本発明の硬化性組成物を、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム等の用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は、硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリプレグ(回路基板)用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40~80質量%となる割合で用いることが好ましい。ビルドアップフィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどを用いることが好ましく、不揮発分が30~60質量%となる割合で用いることが好ましい。
【0055】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。硬化方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の形態とすることができる。
【0056】
本発明のプリプレグは、補強基材及びこの補強基材に含浸した本発明の硬化性組成物の半硬化物を有することができる。本発明の硬化性組成物を用いてプリプレグを得る方法は、特に限定されず、前記有機溶媒を配合してワニス化した硬化性組成物を、補強基材(例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布等)に含浸したのち、用いた溶媒種に応じた加熱温度(好ましくは50~170℃)で加熱して、硬化性組成物を半硬化(あるいは未硬化)する方法が挙げられる。
用いられる硬化性組成物と補強基材の質量割合は、特に限定されないが、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0057】
硬化性組成物の半硬化物は、加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させずに途中で停止させることによって得ることができる。半硬化物の硬化度は、例えば、85%以下5%以上とすることができる。ここで、硬化物は、半硬化物より高い硬化度を有し得る。半硬化物の硬化度は、硬化性組成物を加熱する際の硬化発熱量と、その半硬化物の硬化発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の硬化発熱量/硬化性組成物の硬化発熱量)]×100
【0058】
本発明の回路基板は、本発明のプリプレグ及び銅箔を含む積層体からなる。回路基板を得る方法は、特に限定されず、例えば、本発明のプリプレグを必要に応じて積層し、銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0059】
本発明のビルドアップフィルムは、本発明の硬化性組成物を含有したものである。ビルドアップフィルムを製造する方法は、特に限定されず、例えば、本開示の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し、硬化性組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0060】
前記ビルドアップフィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが求められるため、硬化性組成物は、このような特性を発現するように、上記の無機充填材、有機溶剤等の各成分を配合することが好ましい。
【0061】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0062】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて硬化性組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0063】
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0064】
上記した支持フィルム(Y)及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。前記支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0065】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0066】
本発明の半導体封止材は、本発明の硬化性組成物を含有したものである。本発明の硬化性組成物は、硬化収縮率が低く、かつ硬化物における誘電正接が低いという優れた性能を有する。また、極性が極めて低い炭化水素樹脂が配合されていても優れた相溶性を有するため、均一な硬化性組成物となり、均一な硬化物が得られることから、半導体封止材にも好適に用いることができる。
【0067】
本発明の半導体封止材は、上記の通り、本発明の硬化性組成物に無機充填剤を含有させたものが好ましい。また、本発明の半導体封止材には、種々の添加剤を配合してもよく、添加剤としては、上記の硬化性組成物に関して記載されたものが挙げられる。
【0068】
本発明の半導体封止材料を製造する方法としては、特に限定されず、本発明の硬化性組成物及び必要に応じて種々の添加剤を混合することで得ることができ、例えば、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法等が挙げられる。
【0069】
本開示の半導体装置は、上記した本発明の半導体封止材の硬化物を含んだものである。本発明の半導体装置は、本発明の半導体封止材を加熱硬化することで得ることができ、例えば、注型するか、あるいはトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で加熱硬化させる方法等が挙げられる。
【0070】
本発明の硬化性組成物により得られる硬化物は、高い均一性を有し、低い誘電正接を有することから、電子部材に好適に使用することができる。特に、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、半導体封止材、半導体装置、導電性ペースト等に好適に使用できる。こうして得られる電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0071】
実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。なお、本実施例におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
【0072】
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8320」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0073】
(製造例1:活性エステル樹脂(1)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、p-tert-ペンチルフェノール1135.4質量部、トルエン461.5質量部及びp-トルエンスルホン酸1水和物2.3質量部を仕込んだ。フラスコの内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃でジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-810」ジビニルベンゼン純度81質量%)300.0質量部を発熱に注意しながら滴下し、滴下終了後から1時間同温度で撹拌して反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49質量%水酸化ナトリウム水溶液1.0質量部を添加して中和した後、25℃まで冷却した。
【0074】
次いで、イソフタル酸クロリド699.2質量部、トルエン3302.3質量部及びテトラブチルアンモニウムブロミド2.8質量部を仕込み、反応系内を60℃以下に制御して、20質量%水酸化ナトリウム水溶液1426.2質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、活性エステル樹脂(1)を得た。活性エステル樹脂(1)の官能基当量を仕込みの比から計算すると272g/当量であった。得られた活性エステル樹脂(1)のGPCチャートを
図1に示す。
【0075】
(製造例2:活性エステル樹脂(2)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、p-tert-オクチルフェノール333.3質量部、トルエン107.8質量部及びp-トルエンスルホン酸1水和物0.54質量部を仕込んだ。フラスコの内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃でジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-810」ジビニルベンゼン純度81質量%)70.0質量部を発熱に注意しながら滴下し、滴下終了後から1時間同温度で撹拌して反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49質量%水酸化ナトリウム水溶液0.23質量部を添加して中和した後、25℃まで冷却した。
【0076】
次いで、イソフタル酸クロリド163.2質量部とトルエン907.2質量部及びテトラブチルアンモニウムブロミド0.8質量部を仕込み、反応系内を60℃以下に制御して、20質量%水酸化ナトリウム水溶液332.8質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、活性エステル樹脂(2)を得た。活性エステル樹脂(2)の官能基当量を仕込みの比から計算すると314g/当量であった。得られた活性エステル樹脂(2)のGPCチャートを
図2に示す。
【0077】
(比較製造例1:活性エステル樹脂(1’)の製造)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、p-tert-ブチルフェノール131.7質量部、トルエン58.5質量部及びp-トルエンスルホン酸1水和物0.3質量部を仕込んだ。フラスコの内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃でジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-810」ジビニルベンゼン純度81質量%)38.0質量部を発熱に注意しながら滴下し、滴下終了後から1時間同温度で撹拌して反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49質量%水酸化ナトリウム水溶液0.1質量部を添加して中和した後、25℃まで冷却した。
【0078】
次いで、イソフタル酸クロリド88.6質量部とトルエン394.1質量部及びテトラブチルアンモニウムブロミド0.3質量部を仕込み、反応系内を60℃以下に制御して、20質量%水酸化ナトリウム水溶液180.7質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、活性エステル樹脂(1’)を得た。活性エステル樹脂(1’)の官能基当量を仕込みの比から計算すると258g/当量であった。得られた活性エステル樹脂(1’)のGPCチャートを
図3に示す。
【0079】
(実施例1:硬化性組成物(1)の調製)
製造例1で得られた活性エステル樹脂(1)44質量部をトルエンに溶解した70質量%トルエン溶液、硬化剤(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂)31質量部、炭化水素樹脂(旭化成株式会社製「タフテック H1221」;SESB)25質量部をトルエンに溶解した20質量%トルエン溶液及びエポキシ樹脂用硬化剤(四国化成工業株式会社製「キュアゾール 1B2MZ」)1.5質量部を均一に混合して、硬化性組成物(1)を得た。
【0080】
(実施例2:硬化性組成物(2)の調製)
製造例2で得られた活性エステル樹脂(2)47質量部をトルエンに溶解した70質量%トルエン溶液、硬化剤(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂)28質量部、炭化水素樹脂(旭化成株式会社製「タフテック H1221」;SESB)25質量部をトルエンに溶解した20質量%トルエン溶液及びエポキシ樹脂用硬化剤(四国化成工業株式会社製「キュアゾール 1B2MZ」)1.5質量部を均一に混合して、硬化性組成物(2)を得た。
【0081】
(比較例1:硬化性組成物(1’)の調製)
比較製造例1で得られた活性エステル樹脂(1’)43質量部をトルエンに溶解した70質量%トルエン溶液、硬化剤(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂)32質量部、炭化水素樹脂(旭化成株式会社製「タフテック H1221」;SESB)25質量部をトルエンに溶解した20質量%トルエン溶液及びエポキシ樹脂用硬化剤(四国化成工業株式会社製「キュアゾール 1B2MZ」)1.5質量部を均一に混合して、硬化性組成物(1’)を得た。
【0082】
上記の実施例1、2及び比較例1で得られた硬化性組成物(1)、(2)及び(1’)を用いて、以下の評価を行った。
【0083】
[ワニスの相溶性評価]
各硬化性組成物について、全体の不揮発分が30質量%になるようにトルエンで希釈してワニスを調製した。調製したワニスの外観を目視で観察し、以下の基準でワニスの相溶性を評価した。
○:均一性及び透明性のいずれも満足している溶液である。
×:均一性及び透明性の少なくとも1つを満足していない溶液である。
【0084】
[誘電正接の測定]
各硬化性組成物について、ロータリーエバポレーターにて100℃、5分間真空蒸留することで、トルエンを留去した。トルエンを留去した硬化性組成物を180℃、30分間プレスし、硬化、成形した後、更に200℃、3時間加熱して試験片を得た。得られた試験片を、JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、試験片の10GHzでの誘電正接を測定した。
【0085】
上記の実施例1、2及び比較例1で得られた硬化性組成物(1)、(2)及び(1’)の組成及び評価結果を表1に示す。なお、表1に記載の組成は、不揮発分100質量%での配合量である。
【0086】
【0087】
実施例1及び2の本発明の硬化性組成物は、相溶性に優れ、誘電正接も低く抑えられていることを確認した。
【0088】
一方、比較例1の硬化性組成物は、その硬化性組成物に用いる活性エステル樹脂の原料であるアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物が有するアルキル基の炭素原子数が5未満のものを用いた例である。この比較例1の硬化性組成物では、相溶性に劣り、誘電正接も本発明の硬化性組成物と比較してやや高いことを確認した。
【要約】
極性が極めて低い炭化水素樹脂(炭化水素系可塑剤)を配合した硬化性組成物であっても、高い相溶性を有し、当該硬化性組成物の硬化物が低い誘電正接を有する硬化性組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することである。活性エステル樹脂、炭化水素樹脂及び硬化剤を含有する硬化性組成物であって、前記活性エステル樹脂が、炭素原子数5以上のアルキル基及びフェノール性水酸基を有する化合物(a1)及びジビニル化合物(a2)の反応物であるフェノール性水酸基を有する樹脂(A)と、芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(B)との反応物である硬化性組成物を用いる。