(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物、塗料及び塗装物
(51)【国際特許分類】
C08L 51/00 20060101AFI20230808BHJP
C08F 291/06 20060101ALI20230808BHJP
C08F 291/04 20060101ALI20230808BHJP
C09D 151/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08L51/00
C08F291/06
C08F291/04
C09D151/00
(21)【出願番号】P 2023522838
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016448
(87)【国際公開番号】W WO2022259739
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021095817
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 敦志
(72)【発明者】
【氏名】グラン マルティネス アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】バシック ゴーラン
(72)【発明者】
【氏名】ティティナン チョンタム
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-120028(JP,A)
【文献】特開平5-9428(JP,A)
【文献】特開平5-59327(JP,A)
【文献】特開平8-231815(JP,A)
【文献】特開昭58-194959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリオレフィン樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、アルキド樹脂(C)とを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物固形分中の前記塩素化ポリオレフィン(A)が1~30質量%であり、前記アクリル樹脂(B)が40~95質量%であり、前記アルキド樹脂(C)が2~20質量%であり、前記アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレート
及び/又は脂環族(メタ)アクリレートが90~100質量%であり、前記ポリオレフィン樹脂(A)及び前記アルキド樹脂(C)の存在下、前記アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料をラジカル重合して得られるものであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(B)の固形分水酸基価が、0~30mgKOH/gである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)が塩素化ポリプロピレン-α-オレフィン共重合体である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項5】
請求項4記載の塗料が基材に塗装されたことを特徴とする塗装物。
【請求項6】
前記基材の表面自由エネルギーが30mN/m以下である請求項5記載の塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料及び塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンの存在下、不飽和単量体を反応させることで得られるポリオレフィン変性アクリル樹脂が提案されており、その硬化塗膜は基材への付着性、耐候性等に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このポリオレフィン変性アクリル樹脂から得られる塗膜は、未処理オレフィン基材への付着性、複層塗膜として使用した際の付着性、スチームジェット耐性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、未処理オレフィン基材との高い付着性、複層塗膜として使用した際の付着性、及びスチームジェット耐性に優れる塗膜を得ることができる樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装された塗装物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意研究した結果、塩素化ポリオレフィンと、特定のアクリル樹脂と、アルキド樹脂とを特定の組成比で含有する樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、アルキド樹脂(C)とを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物固形分中の前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)が1~30質量%であり、前記アクリル樹脂(B)が40~95質量%であり、前記アルキド樹脂(C)が2~20質量%であり、前記アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが70~100質量%であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、未処理オレフィン基材との高い付着性、複層塗膜として使用した際の付着性、及びスチームジェット耐性に優れる塗膜を得ることができることから、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内外装材などの各種物品を塗装する塗料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、塩素化ポリオレフィン樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、アルキド樹脂(C)とを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物固形分中の前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)が1~30質量%であり、前記アクリル樹脂(B)が40~95質量%であり、前記アルキド樹脂(C)が2~20質量%であり、前記アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが70~100質量%であるものである。
【0010】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂が塩素化されたものである。なお、前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0011】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレンとα-オレフィンとからなる共重合体、プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びその水素添加物等が挙げられるが、未処理オレフィン基材への付着性、複層塗膜として使用した際の付着性、スチームジェット耐性がより向上することから、プロピレンとα-オレフィンとからなる共重合体が好ましい。
【0012】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の塩素含有率は、相溶性と付着性がより向上することから、15~40質量%が好ましい。
【0013】
また、前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量は、5,000~200,000が好ましい。
【0014】
前記アクリル樹脂(B)は、不飽和単量体原料の重合により得られる。前記不飽和単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートは70~100質量%であるが、未処理オレフィン基材への付着性、複層塗膜として使用した際の付着性、スチームジェット耐性がより向上することから、90~100質量%が好ましく、95~100質量%がより好ましい。
【0015】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0016】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、シクロアルキル(メタ)アクリレートを含み、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いることも2種以上併用することもできるが、塩素化ポリオレフィンとの相溶性、未処理オレフィン基材への付着性がより向上することから、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環族(メタ)アクリレートを、前記不飽和単量体原料中に、40~100質量%含むことが好ましい。
【0017】
前記アルキル(メタ)アクリレート以外のその他の不飽和単量体原料としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステル等の酸基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどが挙げられる。なお、これらのその他の不飽和単量体原料は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
また、前記アクリル樹脂(B)のFOXの式で計算されるガラス転移温度(以下、「設計Tg」と略称する。)は、スチームジェット耐性がより向上することから、50~135℃が好ましく、100~135℃がより好ましい。
【0019】
なお、本発明において、FOXの式で計算されるガラス転移温度とは、
FOXの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:求めるべきガラス転移温度、W1:成分1の重量分率、Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度)
に従い計算により求めたものである。各成分のホモポリマーのガラス転移温度の値は
、Polymer Handbook(4th Edition)J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke著(Wiley Interscience)記載の値を用いる。
【0020】
また、前記アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、10,000~400,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。
【0021】
なお、本発明において、平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0022】
前記アルキド樹脂(C)のトリグリセライド換算油長は、ポリオレフィンとの相溶性、顔料分散性がより向上することから、20~60質量%が好ましい。
【0023】
前記アルキド樹脂(C)の水酸基価は、ポリオレフィンとの相溶性がより向上することから、50~200mgKOH/g以下が好ましい。
【0024】
前記アルキド樹脂(C)の酸価は、貯蔵安定性がより向上することから、20~50mgKOH/gが好ましい。
【0025】
前記アルキド樹脂(C)の数平均分子量は、ポリオレフィンとの相溶性、付着性がより向上することから、1000~5000が好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物の固形分中の前記塩素化ポリオレフィン樹脂(A)は、1~30質量%であるが、顔料分散性、耐候性がより向上することから、1~20質量%が好ましく、3~12質量%がより好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物の固形分中の前記アクリル樹脂(B)は、40~95質量%であるが、耐候性、複層膜間の付着性がより向上することから、50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物の固形分中の前記アルキド樹脂(C)は、2~30質量%であるが、ポリオレフィンとの相溶性、顔料分散性がより向上することから、10~20質量%が好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物を得る方法としては、前記ポリオレフィン樹脂(A)、前記アルキド樹脂(C)及び溶剤の存在下、前記アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料をラジカル重合する方法が簡便であることから好ましい。
【0030】
上記のラジカル重合法は、原料である各単量体を溶剤に溶解し、重合開始剤存在下で重合反応を行う方法である。この際に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化合物;n-ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール化合物;ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられる。
【0031】
前記重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジtert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物などの有機過酸化物と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ化合物とが挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、塗料に好適に用いることができるが、得られる塗膜がプラスチック基材及び上塗り塗膜との高い密着性を有し、耐スチームジェット性に優れる塗膜が得られることから、プライマー塗料により好適に用いることができる。
【0033】
本発明の塗料は、本発明の樹脂組成物を含有するものであるが、その他の配合物として、溶剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、銅粉末、雲母粉末、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、トルイジンレッド、ペリレン、キナクリドン、ベンジジンイエロー等の顔料を使用することもできる。
【0034】
本発明の塗料は、一液型塗料(以下、「1K」と略記する場合がある。)としても、硬化剤を配合した二液型塗料(以下、「2K」と略記する場合がある。)としても使用することができる。
【0035】
前記硬化剤としては、ポリイソシアネートやアミノ樹脂等の水酸基と反応し得る硬化剤が好適に用いられる。
【0036】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナートエチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート;1,3-ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,4-ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3-ジイソシアナートシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル(3-イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナートメチルノルボルナン、2,6-ジイソシアナートメチルノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート;2,5-ジイソシアナートメチル-2-イソシネートプロピルノルボルナン、2,6-ジイソシアナートメチル-2-イソシネートプロピルノルボルナン等の脂環族トリイソシアネート;m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート等のアラルキレンジイソシアネート;m-またはp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートを二酸化炭素と反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;アロファネート構造を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、緻密な架橋塗膜を形成し、硬化塗膜の耐溶剤性をより向上することができることから、ヘキサメチレンジイソシアネート等を環化三量化したイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートが好ましい。なお、これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
前記アミノ樹脂としては、例えば、アルキルエーテル化メラミン樹脂、アルキルエーテル化アセトグアナミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化尿素樹脂、アルキルエーテル化スピログアナミン樹脂等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、アルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、アルキル部分の炭素原子数が1~4のものがより好ましく、具体的には、n-ブチルエーテル化メラミン樹脂、i-ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。なお、これらのアミノ樹脂(B)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0039】
前記硬化剤の配合量は、樹脂中の水酸基に対する、硬化剤中の水酸基と反応し得る基の当量比が、0.5~2の範囲が好ましく、0.8~1.5の範囲となる量とすることが好ましい。
【0040】
本発明の塗料を塗装する基材としては、特に限定されないが、プラスチック基材が好ましく、難付着性基材に対しても優れた付着性を有することから、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2~10のオレフィン類の1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなるポリオレフィンを材質とするポリオレフィン基材等の表面自由エネルギーが30mN/m以下の基材での使用が特に有用である。
【0041】
本発明の樹脂組成物を含有する塗料はプラスチック用モノコートとして、クリヤー塗料、顔料を配合したエナメル塗料として塗装された塗装物としてプラスチック基材に意匠や機能を付与できる。また、本発明の樹脂組成物を含有する塗料をプライマーとし、トップコートを塗装した2層塗装物、本発明の樹脂組成物を含有するプライマー塗膜の上にベースコートとトップコートを塗装し、3層塗装物として更なる美粧と機能を有した塗装物とすることもできる。
【0042】
本発明の樹脂組成物を含有する塗料は汎用顔料と共に、導電性顔料の分散性に優れる。導電性顔料としては形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状などのいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫やアンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモンなどの導電性金属酸化物を被覆した顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電性カーボンを好適に使用することができる。上記導電性顔料以外の顔料、例えば、チタン白、ベンガラ、アルミペースト、アゾ系、フタロシアニン系などの着色顔料;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などの体質顔料を含有することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0043】
上塗りされる塗料としては硬化剤を用いないラッカー塗料やイソシアネート等を硬化剤として用いる2液型のポリオール/イソシアネート硬化剤塗料を用いることもできる。
【0044】
3層塗装の場合、本発明樹脂組成物を含むプライマー塗料に、通常、樹脂、着色顔料/光輝性顔料、体質顔料、架橋剤、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤および有機溶剤を適宜含有させた有機溶剤或いは水性ベースコート塗料が使用される。上記樹脂はポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられ、物理的耐性、薬品耐性を重視する場合は水酸基を含有する樹脂を選択しイソシアネート等で硬化する2液型、付着性を重視する場合は硬化剤を配合しない1液型を使用できる。
【0045】
上記ベースコートは、通常、溶剤型クリヤーコートが塗装される。クリヤーコート塗料としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂等の架橋剤とを樹脂成分として含有するものを使用することができる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を樹脂成分として含むものを使用することが特に好ましい。
【0046】
本発明の塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー、アプリケーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。また、塗装後、塗膜とする方法としては、常温~120℃の範囲で乾燥させる方法が挙げられる。
【0047】
本発明の塗料は、プラスチック基材との高い付着性を有することから、各種プラスチック成形品を塗装する塗料として好適に用いることができるが、本発明の塗料を塗装することのできるプラスチック成形品としては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内装材などが挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0049】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0050】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0051】
(合成例1:アルキド樹脂の製造)
攪拌機、温度計及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、大豆油52質量部、ペンタエリスリトール6質量部及びナフテン酸リチウム0.01質量部仕込み、230℃で2時間エステル交換反応を行いエステル交換物を得た。次いでグリセリン18質量部、無水フタル酸21質量部、安息香酸21質量部を仕込み220℃で固形分酸価7.0mgKOH/gまでエステル化を行い、120℃まで冷却後不揮発分70質量%にn-ブチルアセテートで希釈し、固形分水酸基価150mgKOH/g、数平均分子量2,000のアルキド樹脂組成物を得た。
【0052】
(合成例2:ポリエステル樹脂の製造)
攪拌機、温度計及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、イソフタル酸17質量部、ヘキサヒドロヒドロフタル酸14質量部、アジピン酸5.7質量部、ネオペンチルグリコール8質量部、1,6-ヘキサンジオール18質量部を仕込み220℃で固形分酸価15mgKOH/gまでエステル化を行い、140℃冷却後不揮発分60質量%になるようキシレンで希釈し、固形分水酸基価70mgKOH/g、数平均分子量3,800のポリエステル樹脂組成物を得た。
【0053】
(実施例1:樹脂組成物(1)の製造及び評価)
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、酢酸n-ブチル100質量部、塩素化ポリオレフィン樹脂10質量部、上記で得たアルキド樹脂組成物25.7質量部(アルキド樹脂固形分として18質量部)を仕込み、窒素置換しながら90℃に加熱昇温した。次いでこの中に、表1記載の不飽和基単量体混合物72質量部及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.5質量部を4時間かけてフィードし、このフィード終了より1時間経過後にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.4質量部添加し、更に 5時間反応させた。この後、不揮発分50質量%となるように酢酸n-ブチルで希釈して樹脂組成物(1)を製造した。
【0054】
[1K プライマー塗料の調製]
上記で得られた樹脂組成物100質量部、及び導電性カーボンブラック(ケッチェンブラック EC-300J)5質量部を配合後、シンナー(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ブチルアセテート(質量比)=1/1)でスプレー粘度12秒(IWATAカップ/25℃)に調整されたプライマー塗料を得た。
【0055】
[2K プライマー塗料の調製]
上記で得られた樹脂組成物、導電性カーボンブラック(ケッチェンブラック EC-300J)、及びポリイソシアネート(デスモジュール N-3300)を表5の通り配合後、シンナー(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ブチルアセテート(質量比)=1/1)でスプレー粘度12秒(IWATAカップ/25℃)に調整されたプライマー塗料を得た。
【0056】
[1K メタリックベースコートの調製]
アクリディックA-134-IM(サイアムケミカルインダストリー製、溶剤系アクリル樹脂)を35質量部、ベッコライトAL-4298-60(サイアムケミカルインダストリー製、溶剤系ポリエステル樹脂)を29.2質量部、7160N(東洋アルミ製、アルミペースト)、CAB381-0.5(Eastman製、セルロースアセテートブチレート)の酢酸ブチル20%溶液を75質量部、BYK-337(BYK製、レベリング剤)0.5質量部をよく混合し、シンナー(キシレン/酢酸ブチル/ソルベッソ100/プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(質量比)=50/20/15/15)で岩田カップ12秒(25℃)のスプレー粘度に希釈しベースコートを得た。
【0057】
[2K メタリックベースコートの調製]
アクリディックAC-333(サイアムケミカルインダストリー製、溶剤系アクリルポリオール樹脂)を17.04質量部、CAB581-0.5(Eastman製、セルロースアセテートブチレート)の酢酸ブチル20%溶液を18.26質量部、7160N(東洋アルミ製、アルミペースト)4.70質量部、BYK-337(BYK製、レベリング剤)を0.7質量部、CERAFAK106(BYK製、分散剤)0.4質量部、酢酸ブチルで1%に希釈したジブチルチンジラウレートを0.1質量部、デスモジュールN-3300(コベストロ社製、ポリイソシアネート、イソシアネート21.8%)2.1質量部をよく混合し、シンナー(キシレン/酢酸ブチル/ソルベッソ100/プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(質量比)=50/20/15/15)で岩田カップ12秒(25℃)のスプレー粘度に希釈しベースコートを得た。
【0058】
[2K トップクリヤーコートの調製]
アクリディックA-3601(サイアムケミカルインダストリー社製、アクリル樹脂、固形分水酸基価160mgKOH/g、不揮発分70%)100質量部をシンナー(キシレン/酢酸ブチル/ソルベッソ100/プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(質量比)=50/20/15/15)で希釈し、硬化剤であるデスモジュールN-3300(コベストロ社製、ポリイソシアネート、イソシアネート21.8%)を38質量部混合し、岩田カップ12秒(25℃)のスプレー粘度になるよう同シンナーで希釈しトップクリヤーコートを得た。
【0059】
[未処理PP板(ポリプロピレン基材)]
表面エネルギー25-30mN/m
【0060】
[フレーム処理PP板(フレーム処理ポリプロピレン基材)]
ポリプロピレン基材の表面をバーナーで炙り、表面エネルギーを40-52mN/mに調整した。
【0061】
[評価用硬化塗膜の作製]
プライマー塗料を基材上に乾燥膜厚10μmになるようスプレー塗装し、常温で10分間静置後、メタリックベースコートを乾燥膜厚12μmになるようスプレー塗装した。常温で10分間静置後、トップクリヤーコートを乾燥膜厚35μmになるようスプレー塗装した。常温で10分間静置後、80℃に設定された乾燥機で30分間乾燥し、評価用塗膜(試験板)を得た。
【0062】
[付着性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とした。次いで、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がす操作を4回行い、塗膜の剥離状態から、下記の基準により付着性を評価した。
10:どの格子の目もはがれがない。
9:はがれ部分が、全体の2.5%未満である。
8:はがれ部分が、全体の2.5%以上5%未満である。
7:はがれ部分が、全体の5%以上10%未満である。
6:はがれ部分が、全体の10%以上15%未満である。
5:はがれ部分が、全体の15%以上25%未満である。
4:はがれ部分が、全体の25%以上35%未満である。
3:はがれ部分が、全体の35%以上45%未満である。
2:はがれ部分が、全体の45%以上65%未満である。
1:はがれ部分が、全体の65%以上85%未満である。
0:はがれ部分が、全体の85%以上である。
【0063】
[耐スチームジェット性の評価]
水温60℃、圧力65Bar、距離10cmで試験板に対し90°の角度で60秒間噴射した。評価用塗膜は交差角度が60°になるようクロスの切れ込みを行い、試験後の剥離状態から、下記の基準により耐スチームジェット性を評価した。
10:どの格子の目もはがれがない。
9:はがれ部分が、全体の2.5%未満である。
8:はがれ部分が、全体の2.5%以上5%未満である。
7:はがれ部分が、全体の5%以上10%未満である。
6:はがれ部分が、全体の10%以上15%未満である。
5:はがれ部分が、全体の15%以上25%未満である。
4:はがれ部分が、全体の25%以上35%未満である。
3:はがれ部分が、全体の35%以上45%未満である。
2:はがれ部分が、全体の45%以上65%未満である。
1:はがれ部分が、全体の65%以上85%未満である。
0:はがれ部分が、全体の85%以上である。
【0064】
(実施例2~10:樹脂組成物(2)~(10)の製造及び評価)
塩素化ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂、及びアクリル樹脂(不飽和単量体混合物)の組成を表1及び2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、不揮発分50質量%の樹脂組成物(2)~(10)を得た後、塗料を調製し、各種評価を行った。
【0065】
(比較例1~8:樹脂組成物(R1)~(R8)の製造及び評価)
塩素化ポリオレフィン、アルキド樹脂、及びアクリル樹脂(不飽和単量体混合物)の組成を表1及び2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、不揮発分50質量%の樹脂組成物(2)~(10)を得た後、塗料を調製し、各種評価を行った。
【0066】
上記で得られた樹脂組成物の組成を表1~4に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表中の略号は、それぞれ下記のものである。
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
n-BA:n-ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBOMA:イソボルニルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
Man:無水マレイン酸
DX-530P:東洋紡製塩素化ポリオレフィン
DX-523P:東洋紡製塩素化ポリオレフィン
14-LLB-P:東洋紡製塩素化ポリオレフィン
F-7P:東洋紡製塩素化ポリオレフィン
【0072】
【0073】
上記で得られたプライマー塗料の評価結果を表6~9に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
本発明の樹脂組成物である実施例1~12から得られる硬化塗膜は、付着性、耐スチームジェット性に優れることが確認された。
【0079】
一方、比較例1~4は、アルキド樹脂(C)を含有しない例であるが、付着性、耐スチームジェット性において劣った性能が確認された。特に未処理PP板、プライマー、メタリックベースコートが2Kの場合の付着性が不十分であることが確認された。
【0080】
比較例5は、塩素化ポリオレフィン樹脂(A)を含有しない例であるが、付着性、耐スチームジェット性において劣った性能が確認された。特に未処理PP板、プライマー、メタリックベースコートが2Kの場合の付着性が不十分であることが確認された。
【0081】
比較例6は、塩素化ポリオレフィンを30質量%より多く含有する例であるが、付着性、耐スチームジェット性において劣った性能が確認された。特に未処理PP板、プライマー、メタリックベースコートが2Kの場合の付着性が不十分であることが確認された。
【0082】
比較例7は、アクリル樹脂(B)の不飽和単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが70質量%未満の例であるが、付着性、耐スチームジェット性において劣った性能が確認された。特に未処理PP板、プライマー、メタリックベースコートが2Kの場合の付着性が不十分であることが確認された。