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特許7327929合成ガスの製造装置および合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】合成ガスの製造装置および合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/072 20060101AFI20230808BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230808BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20230808BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20230808BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20230808BHJP
【FI】
B01J29/072 M
B01J35/04 301A
B01J35/04 301C
C01B3/38
C01B3/36
C01B32/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018226935
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020089815
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 可織
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐賀子
(72)【発明者】
【氏名】西井 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎宏
(72)【発明者】
【氏名】下山田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】森 智比古
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012817(JP,A)
【文献】特開2005-014402(JP,A)
【文献】特開平07-089701(JP,A)
【文献】特開2016-175888(JP,A)
【文献】特開2011-207741(JP,A)
【文献】特開2010-083754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
C01B 32/00-32/991
C09K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する合成ガスの製造装置であって、
メタンと二酸化炭素とを含む原料ガスを供給する第1供給部と、
酸素を供給する酸素供給部と、
前記第1供給部から前記原料ガスが供給されると共に前記酸素供給部から酸素が供給され、触媒構造体を加熱しながら、前記原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する合成ガス生成部と、
を備え、
前記触媒構造体は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの触媒物質と、を備え、
前記担体が、互いに連通する通路を有し、
前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ、
前記触媒物質が、金属微粒子であり、
前記金属微粒子が、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成される微粒子であり、
前記担体の少なくとも前記拡径部に存在している
合成ガスの製造装置。
【請求項2】
前記酸素供給部は、爆発下限界未満の濃度の酸素を前記合成ガス生成部に供給する、請求項1記載の合成ガスの製造装置。
【請求項3】
前記合成ガス生成部は、前記触媒構造体を600℃以上1000℃以下で加熱する、請求項1または2に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項4】
前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、請求項1~のいずれか1項に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項5】
前記金属微粒子の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、かつ、前記拡径部の内径以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項6】
前記合成ガス生成部から排出される前記合成ガス中のメタンと二酸化炭素とを分離する分離部をさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項7】
前記分離部で分離したメタンと二酸化炭素とを前記合成ガス生成部に供給する第2供給部をさらに備える、請求項に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項8】
前記合成ガス生成部から排出される前記合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出する検出部をさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の合成ガスの製造装置。
【請求項9】
一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、
メタンおよび二酸化炭素を含む原料ガスと酸素とを触媒構造体に供給する工程S1と、
前記触媒構造体を加熱しながら、前記原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する工程S2と、
を有し、
前記触媒構造体は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの触媒物質と、を備え、
前記担体が、互いに連通する通路を有し、
前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ、
前記触媒物質が、金属微粒子であり、
前記金属微粒子が、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成される微粒子であり、
前記担体の少なくとも前記拡径部に存在している
合成ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスの製造装置および合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素(CO)とメタン(CH)とを接触させて、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換する技術であるドライリフォーミングが着目されている。
【0003】
このような合成ガスを製造する際に用いる触媒として、例えば、特許文献1には、担体としてMnや所定のアルカリ土類金属等を含む酸素欠損ペロブスカイト型の複合酸化物を用い、かつ、担持金属としてニッケルを用いた触媒が開示されている。
【0004】
しかし、二酸化炭素とメタンとを接触させて、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスに変換する反応は、800℃以上の高温で行う必要がある。特許文献1に開示されている触媒では、担体の表面に金属が担持されているため、高温下で触媒粒子同士が凝集し、触媒活性が低下しやすく、触媒活性も十分とは言えない。
【0005】
触媒粒子同士の接着を抑制し、触媒粒子の比表面積を増加させる方法として、例えば、特許文献2には、基材表面に触媒粒子を固定した後、酸化処理及び還元処理を所定の条件で行う方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献2に開示されている基材表面に触媒粒子が固定された触媒構造体においても、触媒構造体が高温の反応場に配されることによって、触媒活性が低下する。そのため、触媒機能を再生するために、酸化処理及び還元処理を再度施す必要があり、作業が煩雑となる。また、上記特許文献の技術であっても、反応時間の経過とともに、コーキングによる触媒の活性が低下し、合成ガスの製造量が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-255911号公報
【文献】特開2016-2527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、触媒活性の低下を抑制し、メタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを効率良く製造することができる製造装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、酸素を供給しながら触媒構造体を用いることによって、触媒活性の低下が抑制され、合成ガスが効率良く製造することを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
1. 一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する合成ガスの製造装置であって、メタンと二酸化炭素とを含む原料ガスを供給する第1供給部と、酸素を供給する酸素供給部と、前記第1供給部から前記原料ガスが供給されると共に前記酸素供給部から酸素が供給され、触媒構造体を加熱しながら、前記原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する合成ガス生成部と、を備え、前記触媒構造体は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの触媒物質と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記触媒物質が、金属微粒子であり、前記担体の少なくとも前記通路に存在している合成ガスの製造装置。
2. 前記酸素供給部は、爆発下限界未満の濃度の酸素を前記合成ガス生成部に供給する、前記1に記載の合成ガスの製造装置。
3. 前記合成ガス生成部は、前記触媒構造体を600℃以上1000℃以下で加熱する、前記1または2に記載の合成ガスの製造装置。
4. 前記金属微粒子が、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成される微粒子である、前記1~3のいずれかに記載の合成ガスの製造装置。
5. 前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ、前記触媒物質が、少なくとも前記拡径部に存在している、前記1~4のいずれかに記載の合成ガスの製造装置。
6. 前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、前記5に記載の合成ガスの製造装置。
7. 前記金属微粒子の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、かつ、前記拡径部の内径以下である、前記5または6に記載の合成ガスの製造装置。
8. 前記合成ガス生成部から排出される前記合成ガス中のメタンと二酸化炭素とを分離する分離部をさらに備える、前記1~7のいずれかに記載の合成ガスの製造装置。
9. 前記分離部で分離したメタンと二酸化炭素とを前記合成ガス生成部に供給する第2供給部をさらに備える、前記8に記載の合成ガスの製造装置。
10. 前記合成ガス生成部から排出される前記合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出する検出部をさらに備える、前記1~9のいずれかに記載の合成ガスの製造装置。
11. 一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、 メタンおよび二酸化炭素を含む原料ガスと酸素とを触媒構造体に供給する工程S1と、前記触媒構造体を加熱しながら、前記原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する工程S2と、を有し、前記触媒構造体は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの触媒物質と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記触媒物質が、金属微粒子であり、前記担体の少なくとも前記通路に存在している合成ガスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、触媒活性の低下を抑制し、メタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを効率良く製造することができる製造装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に従う一の実施形態の合成ガスの製造装置を示す図である。
図2図2は、合成ガスの製造装置に用いられる触媒構造体の内部構造が分かるように概略的に示したものであって、図2(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、図2(b)は部分拡大断面図である。
図3図3は、図2の触媒構造体の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[合成ガスの製造装置の構成]
図1は、本発明に従う一の実施形態の合成ガスの製造装置を示したものである。
【0015】
図1に示す合成ガスの製造装置X(以下、単に製造装置ともいう)は、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するための装置であって、第1供給部100、酸素供給部114、および合成ガス生成部103で主に構成されている。
【0016】
第1供給部100は、メタン供給部101と二酸化炭素供給部102とを備え、メタンと二酸化炭素とを含む原料ガスを合成ガス生成部103に供給する。メタン供給部101は、例えばメタンガスのボンベやメタンガス発生機などから構成され、合成ガス生成部103に供給するメタンガスの供給量を制御することができる。二酸化炭素供給部102は、例えば二酸化炭素ガスのボンベや二酸化炭素ガス発生機などから構成され、合成ガス生成部103に供給する二酸化炭素の供給量を制御することができる。
【0017】
酸素供給部114は、酸素を製造装置X合成ガス生成部103に供給する。酸素供給部114は、例えば酸素ガスのボンベや酸素ガス発生機などから構成され、合成ガス生成部103に供給する酸素ガスの供給量を制御することができる。合成ガス生成部103への酸素の供給は、連続的でもよいし、間欠的でもよい。
【0018】
合成ガス生成部103は触媒構造体を収容する触媒構造体収容部104および不図示の加熱炉のような加熱部を備え、触媒構造体収容部104内の触媒構造体が加熱炉によって所定の温度に加熱される。そして、合成ガス生成部103は、第1供給部100からメタンと二酸化炭素とを含む原料ガスが供給されると共に酸素供給部114から酸素が供給され、触媒構造体収容部104内の触媒構造体を加熱しながら、原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する。
【0019】
具体的には、第1供給部100からメタンと二酸化炭素とを含む原料ガスを合成ガス生成部103に供給するとともに、合成ガス生成部103の内部に設けられる触媒構造体を加熱することによって、供給されたメタンと二酸化炭素とが触媒構造体によって反応し、これによって一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成することができる。以下では、合成ガス生成部103で生じる合成ガスの生成反応をドライリフォーミング反応ということもある。
【0020】
加熱している触媒構造体への原料ガスの供給時、すなわちドライリフォーミング反応時に、酸素供給部114から触媒構造体収容部104内の触媒構造体に酸素を供給することによって、ドライリフォーミング反応で生じる触媒構造体のコーキングによる触媒構造体の触媒活性の低下を抑制することができる。そのため、合成ガスの製造量の低下を抑制することができる。
【0021】
酸素供給部114は、好ましくは爆発下限界未満の濃度の酸素を合成ガス生成部103に供給する。上記濃度の酸素が合成ガス生成部103に供給されると、コーキングによる触媒構造体の触媒活性の低下を効率的に抑制することができる。
【0022】
具体的には、合成ガス生成部103に供給される酸素量が多いほど、コーキングによる触媒構造体の失活を抑制できるが、この酸素量の上限値は爆発下限界未満の濃度の酸素量である。酸素供給部114から供給される酸素は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスと混合して、所定の酸素濃度に調整する。
【0023】
合成ガス生成部103は、好ましくは600℃以上1000℃以下で触媒構造体を加熱する。触媒構造体が上記温度範囲内で加熱されると、ドライリフォーミング反応が効率的に進むため、一酸化炭素および水素の生成量が増加する。
【0024】
触媒構造体収容部104の合成ガス生成部103内における設置状態は、触媒構造体収容部104の内部に収容される加熱状態の触媒構造体が原料ガスと酸素とに接触することができればよい。例えば、図1に示すように、原料ガスと酸素とを供給する配管および合成ガス生成部103の接続部分と、合成ガス生成部103および合成ガスを排出する配管の接続部分とを、連結するように、触媒構造体収容部104を設置する。
【0025】
製造装置Xによれば、触媒構造体を用いることによって、メタンと二酸化炭素とを含む原料ガスから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することができる。さらに、原料ガスと共に酸素も加熱中の触媒構造体に供給することによって、コーキングによる触媒構造体の触媒活性の低下を抑制することができる。このように、製造装置Xでは、触媒構造体の触媒活性を抑制することができるため、合成ガスを長期的に安定して効率良く製造することができる。
【0026】
また、製造装置Xは、合成ガス生成部103を排出した合成ガス中のメタンと二酸化炭素とを分離する分離部105をさらに備えてもよい。分離部105は、例えば深冷分離式の分離部であり、合成ガス生成部103におけるドライリフォーミング反応で未反応の原料ガス成分、すなわちメタンと二酸化炭素とを合成ガス中から分離する。合成ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とを分離することによって、合成ガスを生成することができる。
【0027】
また、製造装置Xは、分離部105で分離したメタンと二酸化炭素とを合成ガス生成部103に供給する第2供給部116をさらに備えてもよい。第2供給部116は、合成ガス生成部103に供給するメタンおよび二酸化炭素の供給量を制御することができる。第2供給部116から合成ガス生成部103に供給されたメタンと二酸化炭素とは、ドライリフォーミング反応に再利用することができるため、原料ガスの使用量を低下することができる。
【0028】
また、製造装置Xは、合成ガス生成部103から排出される合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出する検出部115をさらに備えてもよい。検出部115が合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出できる場合には、製造装置Xが正常に稼働していることを判断できる。一方、検出部115が合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出できない場合には、製造装置Xが異常であるため、ドライリフォーミング反応に関連する部分を止めて点検や修理を行う。
【0029】
なお、図1では、第1供給部100および酸素供給部114によって、原料ガスと酸素とを個別に供給している一例を示しているが、原料ガスと酸素とを混合させた混合ガスを合成ガス生成103に供給してもよい。
【0030】
また、メタン供給部101および二酸化炭素供給部102によって、メタンと二酸化炭素とを個別に供給している一例を示しているが、メタンと二酸化炭素とを混合させた混合ガスを合成ガス生成103に供給してもよい。
【0031】
また、メタン供給部101から供給されるメタンの濃度や二酸化炭素供給部102から供給される二酸化炭素の濃度は、特に限定されるものではない。例えば、これらの濃度は、100%でもよいし、窒素やアルゴンなどの不活性ガスと混合して、所定値に調整してもよい。不活性ガスを用いる場合、図示しない不活性ガス供給部から製造装置Xに不活性ガスが供給される。
【0032】
また、触媒構造体の設置状態について、図1では、触媒構造体が触媒構造体収容部104内に収容される一例を示しているが、加熱状態の触媒構造体が原料ガスに接触することができれば特に限定されず、例えば、触媒構造体は合成ガス生成部103内の一部もしくは全部に収容されてもよい。また、触媒構造体によるドライリフォーミング反応は、例えば、固定床、超臨界固定床、スラリー床、流動床等で実施することができる。その中でも、好ましくは、固定床、超臨界固定床、スラリー床である。
【0033】
[合成ガスの製造方法]
本発明に従う一の実施形態の合成ガスの製造方法は、合成ガスを製造するための方法であり、例えば図1に示す製造装置Xによって行われる。
【0034】
実施形態の合成ガスの製造方法は、第1供給工程S1および生成工程S2で主に構成されている。
【0035】
第1供給工程S1は、メタンおよび二酸化炭素を含む原料ガスと酸素とを触媒構造体に供給する。図1に示す製造装置Xでは、第1供給部100から供給される原料ガスと酸素供給部114から供給される酸素とは、合成ガス生成部103の内部に設けられる触媒構造体収容部104内の触媒構造体に供給される。そのため、生成工程S2における触媒構造体のコーキングによる触媒活性の低下を抑制することができる。
【0036】
生成工程S2は、触媒構造体を加熱しながら、第1供給工程S1で供給された原料ガスに含まれるメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを生成する。製造装置Xでは、合成ガス生成部103で所定の温度に加熱されている触媒構造体によって、原料ガス中のメタンと二酸化炭素とから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスが生成される。
【0037】
また、実施形態の合成ガスの製造方法は、生成工程S2で生成される合成ガス中のメタンと二酸化炭素とを分離する分離工程S3をさらに有してもよい。分離部105が生成工程S2で生成される合成ガス中のメタンと二酸化炭素とを分離するため、合成ガスを生成することができる。
【0038】
また、実施形態の合成ガスの製造方法は、分離工程S3で分離したメタンと二酸化炭素とを生成工程S2に供給する第2供給工程S4をさらに有してもよい。第2供給部116がメタンと二酸化炭素とを生成工程S2に供給するため、メタンと二酸化炭素は、生成工程S2で行われるドライリフォーミング反応に再利用される。
【0039】
また、実施形態の合成ガスの製造方法は、生成工程S2で生成した合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出する検出工程S5をさらに有してもよい。検出部115は、生成工程S2で生成される合成ガス中の一酸化炭素と水素とを検出する。
【0040】
[触媒構造体の構成]
図2は、上記の合成ガスの製造装置Xの触媒構造体収容部104に収容される触媒構造体1の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、(b)は部分拡大断面図である。なお、図2における触媒構造体は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図2のものに限られないものとする。触媒構造体1は、ドライリフォーミング反応に好適な触媒である。
【0041】
図2(a)に示すように、触媒構造体1は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体10と、該担体10に内在する、少なくとも1つの触媒物質20とを備える。
【0042】
触媒構造体1において、複数の触媒物質20,20,・・・は、担体10の多孔質構造の内部に包接されている。触媒物質20は、触媒能(触媒活性)を有する物質であればよく、具体的に金属微粒子である。金属微粒子については、詳しくは後述する。
【0043】
担体10は、多孔質構造であり、図2(b)に示すように、好適には複数の孔11a,11a,・・・が形成されることにより、互いに連通する通路11を有する。ここで触媒物質20は、担体10の少なくとも通路11に存在しており、好ましくは担体10の少なくとも通路11に保持されている。
【0044】
このような構成により、担体10内での触媒物質20の移動が規制され、触媒物質20、20同士の凝集が有効に防止されている。その結果、触媒物質20としての有効表面積の減少を効果的に抑制することができ、触媒物質20の触媒活性は長期にわたって持続する。すなわち、触媒構造体1によれば、触媒物質20の凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒構造体1としての長寿命化を図ることができる。また、触媒構造体1の長寿命化により、触媒構造体1の交換頻度を低減でき、使用済みの触媒構造体1の廃棄量を大幅に低減することができ、省資源化を図ることができる。
【0045】
通常、触媒構造体を、流体の中で用いる場合、流体から外力を受ける可能性がある。この場合、触媒物質が、担体10の外表面に付着されているのみであると、流体からの外力の影響で担体10の外表面から離脱しやすいという問題がある。これに対し、触媒構造体1では、触媒物質20は担体10の少なくとも通路11に保持されているため、流体から外力を受けたとしても、担体10から触媒物質20が離脱しにくい。すなわち、触媒構造体1が流体内にある場合、流体は担体10の孔11aから、通路11内に流入するため、通路11内を流れる流体の速さは、流路抵抗(摩擦力)により、担体10の外表面を流れる流体の速さに比べて、遅くなると考えられる。このような流路抵抗の影響により、通路11内に保持された触媒物質20が流体から受ける圧力は、担体10の外部において触媒物質が流体から受ける圧力に比べて低くなる。そのため、担体11に内在する触媒物質20が離脱することを効果的に抑制でき、触媒物質20の触媒活性を長期的に安定して維持することが可能となる。なお、上記のような流路抵抗は、担体10の通路11が、曲がりや分岐を複数有し、担体10の内部がより複雑で三次元的な立体構造となっているほど、大きくなると考えられる。
【0046】
また、通路11は、ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部12とを有していることが好ましく、このとき、触媒物質20は、少なくとも拡径部12に存在していることが好ましく、少なくとも拡径部12に包接されていることがより好ましい。これにより、触媒物質20の担体10内での移動がさらに規制され、触媒物質20の離脱や、触媒物質20、20同士の凝集をさらに有効に防止することができる。包接とは、触媒物質20が担体10に内包されている状態を指す。このとき触媒物質20と担体10とは、必ずしも直接的に互いが接触している必要はなく、触媒物質20と担体10との間に他の物質(例えば、界面活性剤等)が介在した状態で、触媒物質20が担体10に間接的に保持されていてもよい。ここでいう一次元孔とは、一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の孔、もしくは複数の一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の複数の孔(複数の一次元チャンネル)を指す。また、二次元孔とは、複数の一次元チャンネルが二次元的に連結された二次元チャンネルを指し、三次元孔とは、複数の一次元チャンネルが三次元的に連結された三次元チャンネルを指す。
【0047】
図2(b)では触媒物質20が拡径部12に包接されている場合を示しているが、この構成だけには限定されず、触媒物質20は、その一部が拡径部12の外側にはみ出した状態で通路11に存在していてもよい。また、触媒物質20は、拡径部12以外の通路11の部分(例えば通路11の内壁部分)に部分的に埋設され、又は固着等によって保持されていてもよい。
【0048】
また、拡径部12は、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔11a,11a同士を連通しているのが好ましい。これにより、担体10の内部に、一次元孔、二次元孔又は三次元孔とは異なる別途の通路が設けられるので、触媒物質20の機能をより発揮させることができる。
【0049】
また、通路11は、担体10の内部に、分岐部又は合流部を含んで三次元的に形成されており、拡径部12は、通路11の上記分岐部又は合流部に設けられることが好ましい。
【0050】
担体10に形成された通路11の平均内径Dは、上記一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかを構成する孔11aの短径及び長径の平均値から算出され、例えば0.1nm~1.5nmであり、好ましくは0.5nm~0.8nmである。また、拡径部12の内径Dは、例えば0.5nm~50nmであり、好ましくは1.1nm~40nm、より好ましくは1.1nm~3.3nmである。拡径部12の内径Dは、例えば後述する前駆体材料(A)の細孔径、及び包接される触媒物質20の平均粒径Dに依存する。拡径部12の内径Dは、触媒物質20を包接し得る大きさである。
【0051】
担体10は、ゼオライト型化合物で構成される。ゼオライト型化合物としては、例えば、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、陽イオン交換ゼオライト、シリカライト等のケイ酸塩化合物、アルミノホウ酸塩、アルミノヒ酸塩、ゲルマニウム酸塩等のゼオライト類縁化合物、リン酸モリブデン等のリン酸塩系ゼオライト類似物質などが挙げられる。中でも、ゼオライト型化合物はケイ酸塩化合物であることが好ましい。
【0052】
ゼオライト型化合物の骨格構造は、FAU型(Y型又はX型)、MTW型、MFI型(ZSM-5)、FER型(フェリエライト)、LTA型(A型)、MWW型(MCM-22)、MOR型(モルデナイト)、LTL型(L型)、BEA型(ベータ型)などの中から選択され、好ましくはMFI型であり、より好ましくはZSM-5である。ゼオライト型化合物には、各骨格構造に応じた孔径を有する孔が複数形成されており、例えばMFI型の最大孔径は0.636nm(6.36Å)、平均孔径0.560nm(5.60Å)である。
【0053】
以下、触媒物質20について詳しく説明する。 触媒物質20は金属微粒子である。金属微粒子は一次粒子の状態で通路11に保持されている場合と、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の状態で通路11に保持されている場合とがある。いずれの場合にも、金属微粒子の平均粒径Dは、好ましくは通路11の平均内径Dよりも大きく、且つ拡径部12の内径D以下である(D<D≦D)。このような触媒物質20は、通路11内では、好適には拡径部12に包接されており、担体10内での触媒物質20の移動が規制される。よって、触媒物質20が流体から外力を受けた場合であっても、担体10内での触媒物質20の移動が抑制され、担体10の通路11に分散配置された拡径部12、12、・・のそれぞれに包接された触媒物質20、20、・・同士が接触するのを有効に防止することができる。
【0054】
金属微粒子の平均粒径Dは、1nm以上13.0nm以下であることが好ましい。金属微粒子の平均粒径Dが当該範囲内であると、触媒活性は十分に増加し、平均粒径Dが小さくなるにつれて、触媒活性は向上する。また、高い触媒活性と耐コーキング性の両立の観点から、金属微粒子の平均粒径Dは、好ましくは9.0nm以下であり、より好ましくは4.5nm以下である。また、金属微粒子が後述のように鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成される微粒子である場合、金属微粒子の平均粒径Dが当該範囲内であると、触媒活性と共に耐コーキング性の両方が十分に向上する。
【0055】
また、触媒物質20が金属微粒子である場合、金属微粒子の金属元素(M)は、触媒構造体1に対して0.5~2.5質量%で含有されているのが好ましく、触媒構造体1に対して0.5~1.5質量%で含有されているのがより好ましい。例えば、金属元素(M)がNiである場合、Ni元素の含有量(質量%)は、{(Ni元素の質量)/(触媒構造体1の全元素の質量)}×100で表される。
【0056】
金属微粒子は、酸化されていない金属で構成されていればよく、例えば、単一の金属で構成されていてもよく、又は2種以上の金属の混合物で構成されていてもよい。なお、本明細書において、金属微粒子を構成する(材質としての)「金属」は、1種の金属元素(M)を含む単体金属と、2種以上の金属元素(M)を含む金属合金とを含む意味であり、1種以上の金属元素を含む金属の総称である。また、金属微粒子と金属元素が同じ金属酸化物が使用環境で還元され結果的に金属微粒子が組成になる場合、前記金属酸化物は実質的に金属微粒子とみなすことができる。
【0057】
このような金属としては、例えばロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、等が挙げられ、上記のいずれか1種以上を主成分とすることが好ましい。特に、金属微粒子は、触媒活性の観点で、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属から構成される微粒子であることが好ましく、触媒活性の観点から、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属がより好ましく、中でも価格と性能の両立の観点から、ニッケル(Ni)が特に好ましい。
【0058】
また、金属微粒子を構成する金属元素(M)に対する、担体10を構成するケイ素(Si)の割合(原子数比Si/M)は、10~1000であることが好ましく、50~200であるのがより好ましい。上記割合が1000より大きいと、活性が低く、触媒物質としての作用が十分に得られない可能性がある。一方、上記割合が10よりも小さいと、金属微粒子の割合が大きくなりすぎて、担体10の強度が低下する傾向がある。なお、ここでいう金属微粒子20は、担体10の内部に存在し、又は担持された微粒子をいい、担体10の外表面に付着した金属微粒子を含まない。
【0059】
[触媒構造体の機能] 触媒構造体1は、上記のとおり、多孔質構造の担体10と、担体に内在する少なくとも1つの触媒物質20とを備える。触媒構造体1は、担体10に内在する触媒物質20が流体と接触することにより、触媒物質20の機能に応じた触媒能を発揮する。具体的に、触媒構造体1の外表面10aに接触した流体は、外表面10aに形成された孔11aから担体10内部に流入して通路11内に誘導され、通路11内を通って移動し、他の孔11aを通じて触媒構造体1の外部へ出る。流体が通路11内を通って移動する経路において、通路11に保持された触媒物質20と接触することによって、触媒物質20に応じた触媒反応が生じる。また、触媒構造体1は、担体が多孔質構造であることにより、分子篩能を有する。
【0060】
まず、触媒構造体1の分子篩能について、流体がメタン含有ガスと二酸化炭素である場合を例として説明する。なお、メタン含有ガスとは、メタンと、メタン以外のガスとを含む混合ガスのことをいう。また、触媒構造体1に対して、メタン含有ガスと二酸化炭素を順に接触させてもよく、同時に接触させてもよい。
【0061】
孔11aの孔径以下、言い換えれば、通路11の内径以下の大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、メタン、二酸化炭素)は、担体10内に流入することができる。一方、孔11aの孔径を超える大きさを有する分子で構成されるガス成分は、担体10内へ流入することができない。このように、流体が複数種類の化合物を含んでいる場合に、担体10内に流入することができない化合物の反応は規制され、担体10内に流入することができる化合物を反応させることができる。本実施形態では、メタンと二酸化炭素との反応が進行する。
【0062】
反応によって担体10内で生成した化合物のうち、孔11aの孔径以下の大きさを有する分子で構成される化合物のみが孔11aを通じて担体10の外部へ出ることができ、反応生成物として得られる。一方、孔11aから担体10の外部へ出ることができない化合物は、担体10の外部へ出ることができる大きさの分子で構成される化合物に変換させれば、担体10の外部へ出すことができる。このように、触媒構造体1を用いることにより、特定の反応生成物を選択的に得ることができる。本実施形態では、具体的に、メタンと二酸化炭素が反応して、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスが反応生成物として得られる。
【0063】
触媒構造体1では、通路11の拡径部12に触媒物質20が包接されている。触媒物質20(金属微粒子)の平均粒径Dが、通路11の平均内径Dよりも大きく、拡径部12の内径Dよりも小さい場合には(D<D<D)、触媒物質20と拡径部12との間に小通路が形成される。そこで、小通路に流入した流体が触媒物質20と接触する。各触媒物質20は、拡径部12に包接されているため、担体10内での移動が制限されている。これにより、担体10内における触媒物質20同士の凝集が防止される。その結果、触媒物質20と流体との大きな接触面積を安定して維持することができる。
【0064】
本実施形態では、触媒構造体1を用いることにより、メタン含有ガスと二酸化炭素とを原料として、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することができる。この触媒反応は、好ましくは600℃以上1000℃以下、例えば800℃以上の高温下で行われるが、触媒物質20は担体10に内在しているため、加熱による影響を受けにくい。その結果、触媒活性の低下が抑制され、触媒構造体1の長寿命化を実現することができる。
【0065】
[触媒構造体の製造方法] 以下、担体に内在する触媒物質20が金属微粒子である場合を例に、触媒構造体の製造方法の一例を説明する。
【0066】
(ステップS1-1:準備工程) まず、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)を準備する。前駆体材料(A)は、好ましくは規則性メソ細孔物質であり、触媒構造体の担体を構成するゼオライト型化合物の種類(組成)に応じて適宜選択できる。
【0067】
ここで、触媒構造体の担体を構成するゼオライト型化合物がケイ酸塩化合物である場合には、規則性メソ細孔物質は、細孔径1nm~50nmの細孔が1次元、2次元又は3次元に均一な大きさかつ規則的に発達したSi-O骨格からなる化合物であることが好ましい。このような規則性メソ細孔物質は、合成条件によって様々な合成物として得られるが、合成物の具体例としては、例えばSBA-1、SBA-15、SBA-16、KIT-6、FSM-16、MCM-41等が挙げられ、中でもMCM-41が好ましい。なお、SBA-1の細孔径は10nm~30nm、SBA-15の細孔径は6nm~10nm、SBA-16の細孔径は6nm、KIT-6の細孔径は9nm、FSM-16の細孔径は3nm~5nm、MCM-41の細孔径は1nm~10nmである。また、このような規則性メソ細孔物質としては、例えばメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミノシリケート、メソポーラスメタロシリケート等が挙げられる。
【0068】
前駆体材料(A)は、市販品及び合成品のいずれであってもよい。前駆体材料(A)を合成する場合には、公知の規則性メソ細孔物質の合成方法を採用することができる。例えば、前駆体材料(A)の構成元素を含有する原料と、前駆体材料(A)の構造を規定するための鋳型剤とを含む混合溶液を調製し、必要に応じてpHを調整して、水熱処理(水熱合成)を行う。その後、水熱処理により得られた沈殿物(生成物)を回収(例えば、ろ別)し、必要に応じて洗浄及び乾燥し、さらに焼成することで、粉末状の規則性メソ細孔物質である前駆体材料(A)が得られる。ここで、混合溶液の溶媒としては、例えば水、アルコール等の有機溶媒、これらの混合溶媒などを用いることができる。また、原料は、担体の種類に応じて選択されるが、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のシリカ剤、フュームドシリカ、石英砂等が挙げられる。また、鋳型剤としては、各種界面活性剤、ブロックコポリマー等を用いることができ、規則性メソ細孔物質の合成物の種類に応じて選択することが好ましく、例えばMCM-41を作製する場合にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等の界面活性剤が好適である。水熱処理は、例えば、密閉容器内で、80~800℃、5時間~240時間、0~2000kPaの処理条件で行うことができる。焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2時間~30時間の処理条件で行うことができる。
【0069】
(ステップS1-2:含浸工程) 次に、準備した前駆体材料(A)に、金属含有溶液を含浸させ、前駆体材料(B)を得る。
【0070】
金属含有溶液は、金属微粒子を構成する金属元素(M)に対応する金属成分(例えば、金属イオン)を含有する溶液であればよく、例えば、溶媒に、金属元素(M)を含有する金属塩を溶解させることにより調製できる。このような金属塩としては、例えば、塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられ、中でも硝酸塩が好ましい。溶媒としては、例えば水、アルコール等の有機溶媒、これらの混合溶媒などを用いることができる。
【0071】
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、後述する焼成工程S1-3の前に、粉末状の前駆体材料(A)を撹拌しながら、金属含有溶液を複数回に分けて少量ずつ添加することが好ましい。また、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液
がより浸入し易くなる観点から、前駆体材料(A)に、金属含有溶液を添加する前に予め、添加剤として界面活性剤を添加しておくことが好ましい。このような添加剤は、前駆体材料(A)の外表面を被覆する働きがあり、その後に添加される金属含有溶液が前駆体材料(A)の外表面に付着することを抑制し、金属含有溶液が前駆体材料(A)の細孔内部により浸入し易くなると考えられる。
【0072】
このような添加剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、分子サイズが大きく前駆体材料(A)の細孔内部には浸入できないため、細孔の内部に付着することは無く、金属含有溶液が細孔内部に浸入することを妨げないと考えられる。非イオン性界面活性剤の添加方法としては、例えば、後述する焼成工程S1-3の前に、非イオン性界面活性剤を、前駆体材料(A)に対して50~500質量%添加するのが好ましい。非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量が50質量%未満であると上記の抑制作用が発現し難く、非イオン性界面活性剤を前駆体材料(A)に対して500質量%よりも多く添加すると粘度が上がりすぎるので好ましくない。よって、非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量を上記範囲内の値とする。
【0073】
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)の量(すなわち、前駆体材料(B)に内在させる金属元素(M)の量)を考慮して、適宜調整することが好ましい。例えば、後述する焼成工程S1-3の前に、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10~1000となるように調整することが好ましく、50~200となるように調整することがより好ましい。例えば、前駆体材料(A)に金属含有溶液を添加する前に、添加剤として界面活性剤を前駆体材料(A)に添加した場合、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、原子数比Si/Mに換算して50~200とすることで、金属微粒子の金属元素(M)を、触媒構造体1に対して0.5~2.5質量%で含有させることができる。前駆体材料(B)の状態で、その細孔内部に存在する金属元素(M)の量は、金属含有溶液の金属濃度や、上記添加剤の有無、その他温度や圧力等の諸条件が同じであれば、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量に概ね比例する。また、前駆体材料(B)に内在する金属元素(M)の量は、触媒構造体の担体に内在する金属微粒子を構成する金属元素の量と比例関係にある。したがって、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を上記範囲に制御することにより、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液を十分に含浸させることができ、ひいては、触媒構造体の担体に内在させる金属微粒子の量を調整することができる。
【0074】
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させた後は、必要に応じて、洗浄処理を行ってもよい。洗浄溶液として、水、アルコール等の有機溶媒、これらの混合溶媒等を用いることができる。また、前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させ、必要に応じて洗浄処理を行った後、さらに乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥、150℃以下の高温乾燥等が挙げられる。なお、前駆体材料(A)に、金属含有溶液に含まれる水分及び洗浄溶液の水分が多く残った状態で後述の焼成処理S1-3を行うと、前駆体材料(A)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥させることが好ましい。
【0075】
(ステップSS1-3:焼成工程) 次に、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成して、前駆体材料(C)を得る。
【0076】
焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2時間~30時間の処理条件で行うことが好ましい。このような焼成処理により、規則性メソ細孔物質の孔内に含浸された金属成分が結晶成長して、孔内で金属微粒子が形成される。
【0077】
(ステップS1-4:水熱処理工程) 次いで、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製し、前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理して、触媒構造体を得る。
【0078】
構造規定剤は、触媒構造体の担体の骨格構造を規定するための鋳型剤であり、例えば界面活性剤を用いることができる。構造規定剤は、触媒構造体の担体の骨格構造に応じて選択することが好ましく、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド(TMABr)、テトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)等の界面活性剤が好適である。
【0079】
前駆体材料(C)と構造規定剤との混合は、本水熱処理工程時に行ってもよいし、水熱処理工程の前に行ってもよい。また、上記混合溶液の調製方法は、特に限定されず、前駆体材料(C)と、構造規定剤と、溶媒とを同時に混合してもよいし、溶媒に前駆体材料(C)と構造規定剤とをそれぞれ個々の溶液に分散させた状態にした後に、それぞれの分散溶液を混合してもよい。溶媒としては、例えば水、アルコール等の有機溶媒、これらの混合溶媒などを用いることができる。また、混合溶液は、水熱処理を行う前に、酸又は塩基を用いてpHを調整しておくことが好ましい。
【0080】
水熱処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、密閉容器内で、80~800℃、5時間~240時間、0~2000kPaの処理条件で行うことが好ましい。また、水熱処理は、塩基性雰囲気下で行われることが好ましい。 ここでの反応メカニズムは必ずしも明らかではないが、前駆体材料(C)を原料として水熱処理を行うことにより、前駆体材料(C)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造は次第に崩れるが、前駆体材料(C)の細孔内部での金属微粒子の位置は概ね維持されたまま、構造規定剤の作用により、触媒構造体の担体としての新たな骨格構造(多孔質構造)が形成される。このようにして得られた触媒構造体は、多孔質構造の担体と、担体に内在する金属微粒子を備え、さらに担体はその多孔質構造により複数の孔が互いに連通した通路を有し、金属微粒子はその少なくとも一部分が担体の通路に存在している。 また、本実施形態では、上記水熱処理工程において、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製して、前駆体材料(C)を水熱処理しているが、これに限らず、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合すること無く、前駆体材料(C)を水熱処理してもよい。
【0081】
水熱処理後に得られる沈殿物(触媒構造体)は、回収(例えば、ろ別)後、必要に応じて洗浄処理、乾燥処理及び焼成処理を施すことが好ましい。洗浄溶液としては、水、アルコール等の有機溶媒、これらの混合溶媒等を用いることができる。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、沈殿物に水分が多く残った状態で焼成処理を行うと、触媒構造体の担体としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥させることが好ましい。また、焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2~30時間の処理条件で行うことができる。このような焼成処理により、触媒構造体に付着していた構造規定剤が焼失する。また、触媒構造体は、使用目的に応じて、回収後の沈殿物に対して焼成処理を施すことなくそのまま用いることもできる。例えば、触媒構造体の使用する環境が、酸化性雰囲気の高温環境である場合には、使用環境に一定時間晒すことで、構造規定剤は焼失する。この場合、焼成処理を施した場合と同様の触媒構造体が得られるので、焼成処理を施す必要がない。
【0082】
以上説明した触媒構造体の製造方法は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液に含まれる金属元素(M)が、酸化され難い金属種(例えば、貴金属)である場合の一例である。
【0083】
前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)が、酸化され易い金属種(例えば、Fe、Co、Ni等)である場合には、上記水熱処理工程後に、水熱処理された前駆体材料(C)に還元処理を行うことが好ましい。金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)が、酸化され易い金属種である場合、含浸処理(ステップS1-2)の後の工程(ステップS1-3~S1-4)における熱処理により、金属成分が酸化されてしまう。そのため、水熱処理工程(ステップS1-4)で形成される担体には、金属酸化物微粒子が内在することになる。そのため、担体に金属微粒子が内在する触媒構造体を得るためには、上記水熱処理後に、回収した沈殿物を焼成処理し、さらに水素ガス等の還元ガス雰囲気下で還元処理することが望ましい。還元処理を行うことにより、担体に内在する金属酸化物微粒子が還元され、金属酸化物微粒子を構成する金属元素(M)に対応する金属微粒子が形成される。その結果、担体に金属微粒子が内在する触媒構造体が得られる。なお、このような還元処理は、必要に応じて行えばよく、例えば、触媒構造体の使用する環境が、還元雰囲気である場合には、使用環境に一定時間晒すことで、金属酸化物微粒子は還元される。この場合、還元処理した場合と同様の触媒構造体が得られるので、還元処理を施す必要がない。
【0084】
[触媒構造体1の変形例] 図3は、図2の触媒構造体1の変形例を示す模式図である。 図2の触媒構造体1は、担体10と、担体10に内在する触媒物質20とを備えるが、この構成だけには限定されず、例えば、図3に示すように、触媒構造体2が、担体10の外表面10aに保持された少なくとも1つの他の触媒物質30を更に備えていてもよい。
【0085】
この触媒物質30は、一又は複数の触媒能を発揮する物質である。他の触媒物質30が有する触媒能は、触媒物質20が有する触媒能と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、触媒物質20と触媒物質30の双方が同一の触媒能を有する物質である場合、他の触媒物質30の材料は、触媒物質20の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。本構成によれば、触媒構造体2に保持された触媒物質の含有量を増大することができ、触媒物質の触媒活性を更に促進することができる。
【0086】
この場合、担体10に内在する触媒物質20の含有量は、担体10の外表面10aに保持された他の触媒物質30の含有量よりも多いことが好ましい。これにより、担体10の内部に保持された触媒物質20による触媒能が支配的となり、触媒物質の触媒能が安定的に発揮される。
【0087】
以上、本発明の実施形態に係る合成ガスの製造装置および合成ガスの製造方法について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【実施例
【0088】
(実施例1-1)
まず、触媒構造体として、表1に示す触媒構造体E1-1を用いた。触媒構造体E1-1において、Niは担体に内在および担体の外表面に担持されていた。触媒構造体E1-1を合成ガス生成部の内部に設置した。続いて、触媒構造体E1-1を700℃に加熱しながら、24時間にわたって合成ガス生成部にメタンと二酸化炭素と酸素とを合成ガス生成部に供給した。具体的には、メタンと二酸化炭素と空気(酸素源)を30:30:40(体積比)、GHSV=5600h-1で供給し、合成ガス生成部から排出されたガス中の一酸化炭素および水素の有無を検出器で測定した。その結果、検出器が一酸化炭素および水素を検出したので、合成ガス生成部で合成ガスを生成することができることを確認した。
【0089】
[評価1]
次に、メタン転化率と炭素の析出の有無とを評価した。
【0090】
(1-1)メタン転化率
合成ガス生成部に供給したメタン量(M1)と合成ガス生成部から排出したメタン量(M2)とをそれぞれ測定し、(M1-M2)×100/M1を計算して、メタン転化率を算出した。メタン転化率が大きいほど、一酸化炭素および水素の生成量は多い。そして、メタン転化率が40%以上である場合、活性が良好、メタン転化率が40%未満である場合、活性が不良とした。
【0091】
(1-2)炭素の析出の有無
触媒構造体への炭素の析出の有無について、CHN分析(機器名:CHN analyzer(CE440,Exeter Analytical,Inc))を用いて確認した。
【0092】
(比較例1-1~1-2)
表1に示すように触媒構造体E1-1を触媒構造体C1-1または触媒構造体C1-2に代えた以外は、実施例1-1と同様に行った。その後、実施例1-1と同様に上記評価を行った。触媒構造体C1-1または触媒構造体C1-2は、ゼオライト構造を有しない塊状のアルミナ担体に対して含浸法でNiを担持させた触媒構造体であり、Niは、この担体の外表面にのみ担持されており、担体に内在されていなかった。
【0093】
表1には、触媒構造体の前処理条件、合成ガス生成部での反応条件、および評価結果も示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果から、本発明の製造装置では、メタン転化率が良好であり、しかも、触媒構造体上に炭素の析出が観察されず、長時間の連続稼働が可能であることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0096】
X 合成ガスの製造装置
1 触媒構造体
10 担体
10a 外表面
11 通路
11a 孔
12 拡径部
20 触媒物質
30 触媒物質
100 第1供給部
101 メタン供給部
102 二酸化炭素供給部
103 合成ガス生成部
104 触媒構造体収容部
105 分離部
114 酸素供給部
115 検出部
116 第2供給部
図1
図2
図3