(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】レーダ装置およびレーダ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230808BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20230808BHJP
【FI】
G01S7/40 104
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2019050533
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】長田 真幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215236(JP,A)
【文献】特開2019-007776(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163853(WO,A1)
【文献】特開2016-102801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外装体の内側に配置され、電波により物標を検出するレーダ装置において、
前記物標に向けて電波を送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信され、前記物標によって反射された反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記反射波に基づいて前記物標を検出する検出手段と、を有し、
前記検出手段は、前記外装体の内側に貼付された誘電体部材の左右端からの反射波の振幅の比を求め、前記反射波の振幅の比に変化が生じている場合には、前記誘電体部材の左右端のいずれかに異常が発生したと判定する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記送信手段は垂直方向に異なる指向特性を有する送信信号を異なるタイミングで送信し、
前記受信手段によって受信される異なる指向特性を有する送信信号に対する2種類の受信信号の状態が変化した場合には、前記誘電体部材の上下端のいずれかに異常が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記検出手段によって前記誘電体部材に異常が発生したことが検出されたことを示す情報を出力し、ユーザに警告をする出力手段を有することを特徴とする請求項1
または2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
車両の外装体の内側に配置され、電波により物標を検出するレーダ装置の制御方法において、
前記物標に向けて電波を送信する送信ステップと、
前記送信ステップにおいて送信され、前記物標によって反射された反射波を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信された前記反射波に基づいて前記物標を検出する検出ステップと、を有し、
前記検出ステップは、前記外装体の内側に貼付された誘電体部材によって反射される電波の変化から前記誘電体部材に異常が発生したことを検出し、前記誘電体部材の左右端からの反射波の振幅の比を求め、反射波の振幅の比に変化が生じている場合には、前記誘電体部材の左右端のいずれかに異常が発生したと判定する
ことを特徴とするレーダ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の周囲に存在する他の車両、歩行者、障害物等の物標に対して電波を送信して検出するレーダ装置が多く使用されるようになってきた。
【0003】
ところで、レーダ装置は、車両の外装体(例えば、バンパ)の内部に配置されることから、バンパを介して電波を送信することが一般的である。このため、バンパの厚さ等によっては、特性が劣化する場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示された技術では、波長λの電波を出射して反射波を測定することにより物標を検出するレーダ装置において、介在物の厚さdを、当該厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となる厚さとし、所定の誘電体の厚さd2は、介在物において厚さ方向に電波が伝搬する電気長が実質的にλ/2の整数倍となるように調整するようにしている。これにより、特性の劣化を抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、誘電体に異常が生じた場合には、特性が劣化したり、誤検出が生じたりするという問題点がある。
【0007】
本発明は、誘電体部材に異常が生じた場合でも特性が劣化することを抑制可能なレーダ装置およびレーダ装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の外装体の内側に配置され、電波により物標を検出するレーダ装置において、前記物標に向けて電波を送信する送信手段と、前記送信手段によって送信され、前記物標によって反射された反射波を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記反射波に基づいて前記物標を検出する検出手段と、を有し、前記検出手段は、前記外装体の内側に貼付された誘電体部材によって反射される電波の変化から前記誘電体部材に異常が発生したことを検出する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、誘電体部材に異常が生じた場合でも特性が劣化することを抑制することが可能になる。
【0009】
また、本発明は、前記検出手段は、前記誘電体部材を貼付する前において検出した反射波と、前記誘電体部材を貼付した後において検出した反射波を比較し、振幅に変化が生じている場合には、前記誘電体部材に異常が発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、誘電体部材を貼付する前の反射波と比較するとで、誘電体部材の異常を精度良く検出することができる。
【0010】
また、本発明は、前記検出手段は、前記誘電体部材の左右端からの反射波の振幅の比を求め、反射波の振幅の比に変化が生じている場合には、前記誘電体部材の左右端のいずれかに異常が発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、誘電体部材の左右端の異常を精度良く検出することができる。
【0011】
また、本発明は、前記受信手段を構成する受信アンテナの近傍に共振周波数が異なる分散部が設けられ、前記検出手段は、前記分散部からの信号が変化した場合には、前記誘電体部材の上下端のいずれかに異常が発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、簡単な構成により、誘電体部材の上下端の異常を精度良く検出することができる。
【0012】
また、本発明は、前記送信手段は垂直方向に異なる指向特性を有する送信信号を異なるタイミングで送信し、前記受信手段によって受信される異なる指向特性を有する送信信号に対する2種類の受信信号の状態が変化した場合には、前記誘電体部材の上下端のいずれかに異常が発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、簡単な構成により、誘電体部材の上下端の異常を精度良く検出することができる。
【0013】
また、本発明は、前記検出手段は、前記物標を検出する視野角を有するとともに、前記視野角の外側から前記視野角の中心方向に対して90°の方向までの角度範囲のうちの所定の角度の反射信号の変化により、前記誘電体部材の水平方向の異常を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、誘電体部材の水平方向の端部の異常を容易に検出することができる。
【0014】
また、本発明は、前記検出手段によって前記誘電体部材に異常が発生したことが検出されたことを示す情報を出力し、ユーザに警告をする出力手段を有することを特徴とする。
このような構成によれば、誘電体部材の異常をユーザに通知することができる。
【0015】
また、本発明は、車両の外装体の内側に配置され、電波により物標を検出するレーダ装置の制御方法において、前記物標に向けて電波を送信する送信ステップと、前記送信ステップにおいて送信され、前記物標によって反射された反射波を受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信された前記反射波に基づいて前記物標を検出する検出ステップと、を有し、前記検出ステップは、前記外装体の内側に貼付された誘電体部材によって反射される電波の変化から前記誘電体部材に異常が発生したことを検出する、ことを特徴とする。
このような方法によれば、誘電体部材に異常が生じた場合でも特性が劣化することを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電体部材に異常が生じた場合でも特性が劣化することを抑制することが可能なレーダ装置およびレーダ装置の制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す制御・処理部の詳細な構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示すレーダ装置の受信アンテナアレイの構成例を示す図である。
【
図4】
図1に示すレーダ装置の取り付け例を示す図である。
【
図5】
図1に示すレーダ装置の視野角を示す図である。
【
図6】
図4において誘電体部材が剥離した状態を示す図である。
【
図7】バンパの厚みが好適な場合においてバンパの有無に対する受信信号の振幅を示す図である。
【
図8】バンパの厚みが不適な場合においてバンパの有無に対する受信信号の振幅を示す図である。
【
図9】第1実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図1に示すレーダ装置の受信アンテナアレイの構成例を示す図である。
【
図16】
図11に示す分散部のシミュレーションを行う際の座標軸を示す図である。
【
図17】
図11に示す分散部に入射された電波の反射パターンのシミュレーション結果を示す図である。
【
図18】
図11に示す分散部に入射された電波の反射パターンのシミュレーション結果を示す図である。
【
図19】
図11に示す分散部に入射された電波の反射パターンのシミュレーション結果を示す図である。
【
図20】第1実施形態における、電波の入射角度と受信信号の関係を示す図である。
【
図21】第3実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図22】本発明の第4実施形態の構成例を示す図である。
【
図23】
図22に示すレーダ装置の動作原理を説明するための図である。
【
図24】従来のレーダ装置の送信信号の指向特性を示す図である。
【
図25】
図22に示す実施形態の送信信号の指向特性を示す図である。
【
図26】
図22に示すレーダ装置に格納されているテーブルの一例である。
【
図27】
図22に示す実施形態の送信信号の時間波形を示し図である。
【
図28】
図22に示す実施形態の送信アンテナおよび受信アンテナの配置例である。
【
図29】
図22に示す実施形態による仮想アレイアンテナとしての動作を示す図である。
【
図30】
図22に示す送信アンテナの詳細な構成例を示す図である。
【
図31】送信アンテナから放射されるビームの幅と検出可能な距離の関係を説明するための模式図である。
【
図32】受信アンテナによってサイドローブを抑圧した状態を示す図である。
【
図33】
図22に示す受信アンテナの詳細な構成例を示す図である。
【
図34】
図1に示す実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
(A)第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。この図に示すように、本発明の第1実施形態に係るレーダ装置1は、局部発振部10、送信部11、制御・処理部15、受信部16、および、A/D(Analog to Digital)変換部21を主要な構成要素としている。
【0020】
ここで、局部発振部10は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部11と受信部16に供給する。
【0021】
送信部11は、変調部12、および、送信アンテナ13を有し、局部発振部10から供給されるCW信号を、変調部12によってパルス変調し、送信アンテナ13を介して物標に向けて送信する。
【0022】
送信部11の変調部12は、制御・処理部15によって制御され、局部発振部10から供給されるCW信号をパルス変調して出力する。送信アンテナ13は、変調部12から供給されるパルス信号を、物標に向けて送信する。
【0023】
制御・処理部15は、局部発振部10、変調部12、アンテナ切換部18、および、利得可変増幅部19を制御するとともに、A/D変換部21から供給される受信データに対して演算処理を実行することで、物標を検出する。
【0024】
図2は、
図1に示す制御・処理部15の詳細な構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御・処理部15は、制御部15a、処理部15b、検出部15c、および、通信部15dを有している。ここで、制御部15aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、ROMおよびRAMに記憶されているデータに基づいて装置の各部を制御する。処理部15bは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行する。検出部15cは、例えば、DSP等によって構成され物標を検出する処理を実行する。通信部15dは、検出部15cによる検出結果を、外部の装置に対して通知する。
【0025】
図1に戻る。受信部16は、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-N(N≧2)、アンテナ切換部18、利得可変増幅部19、および、復調部20を有し、送信アンテナ13から送信され、物標によって反射された信号を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。
【0026】
受信部16の第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nは、N個のアンテナ素子によって構成され、送信アンテナ13から送信され、物標によって反射された信号を受信し、アンテナ切換部18に供給する。
【0027】
アンテナ切換部18は、制御・処理部15の制御部15aによって制御され、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのいずれか1つを選択して、受信信号を利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、制御・処理部15の制御部15aによって利得が制御され、アンテナ切換部18から供給される受信信号を所定の利得で増幅して復調部20に出力する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される受信信号を、局部発振部10から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。
【0028】
A/D変換部21は、復調部20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して制御・処理部15に供給する。
【0029】
図3は、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのより詳細な構成例を示す図である。なお、
図3の例では、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8が配置されており、N=8の場合を例示している。なお、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は受信アレーアンテナ17を構成する。
図3に示すように、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、それぞれが
図3の上下方向に所定の長さLを有し、左右方向に幅W(W<L)を有している。第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、回路基板30の板面上に、間隔Dをそれぞれ隔てて配置される。
【0030】
図4は、
図1に示すレーダ装置1の車体への装着例を示す図である。
図4では、レーダ装置1の筐体1bが車体130にネジ等によって固定されている。レーダ装置1のレドーム1aは、外装体であるバンパ150側を向くように配置されている。また、バンパ150の裏側には、誘電体部材140が接着剤等によって貼付されている。レーダ装置1から送出される電波の波長をλとするとき、誘電体部材140とバンパ150とを合わせた厚みがn×λ/2(nは整数)になるように調整されている。
【0031】
図5は、レーダ装置1の視野角の一例を示す図である。
図5の左下に示すように、レーダ装置1のレドーム10aに平行な面をX-Y面とすると、電波はZ軸方向に送出される。レーダ装置1から送出される電波は、X軸方向(垂直方向)に2αの視野角を有し、Y軸方向(水平方向)に2βの視野角を有している。また、
図5において、破線は、レーダ装置1から遠方を仮定した受信視野Eの形状を模式的に示している。受信視野Eは、車両の水平方向であるY軸方向には幅が広く、車両の上下方向であるX軸方向には幅が狭い形状を有している。視野中心方向はAである。なお、βはαの約5~7倍程度とされている。もちろん、これ以外の値であってもよい。なお、
図4に示す誘電体部材140は、誘電体部材140が配置される位置において、
図5に示す受信視野Eの断面の面積よりも広い面積を有している。
【0032】
(B)第1実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第1実施形態の動作を説明する。第1実施形態では、
図6に示すように、例えば、誘電体部材140が剥離した場合に、剥離の発生を検出し、例えば、ユーザに対して通知する。
【0033】
図7~
図8は、バンパ150の厚みが好適/不適な場合に、バンパ150の有無による受信信号の距離による強度を示す図である。
図7は、バンパ150の厚みが好適な場合において、バンパ150の有無による受信信号の振幅を示している。
図7において、横軸はレーダ装置1からの距離[m]を示し、縦軸は受信信号の振幅[dB]を示している。
図7では、バンパ150の厚みが好適であることから、バンパ150有りの場合と、無しの場合の振幅は略一致している。
【0034】
図8は、バンパ150の厚みが不適な場合におけるバンパ150の有無による振幅を示している。
図8の例では、バンパ150の有りの場合と、無しの場合の振幅は乖離している。
【0035】
図7~
図8に示すように、バンパ150の厚みが好適である場合には、バンパ150の有無に拘わらず、振幅は略一致する。このため、
図6に示すように、誘電体部材140が剥離した場合には、厚さが好適でなくなることから、バンパ150が無い場合に比較すると、両者の振幅が乖離する。
【0036】
そこで、第1実施形態では、誘電体部材140が貼付された状態(バンパ150の厚みが好適な状態)において、受信信号の振幅をリファレンスデータとして記憶しておく。そして、所定のタイミングで、受信信号の振幅のデータを取得し、記憶されているリファレンスデータと比較し、振幅が増加した場合には、誘電体部材140に異常(例えば、剥離)が生じたと判定することができる。なお、リファレンスデータは、例えば、車両の組み立て工程において、誘電体部材140が貼付されて調整がされた後に測定して記憶することができる。あるいは、実測値の平均値を求めておき、当該平均値をリファレンスデータとして記憶させるようにしてもよい。
【0037】
つぎに、
図9を参照して、第1実施形態において実行される処理の一例について説明する。
図9に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0038】
ステップS10では、制御・処理部15の制御部15aは、変調部12を制御して、送信アンテナ13からパルス信号の送信を開始させる。この結果、送信アンテナ13から送信されたパルス波は、物標によって反射され、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nに入射される。
【0039】
ステップS11では、制御・処理部15の制御部15aは、アンテナ切換部18を制御して、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのいずれかによって受信された信号を利得可変増幅部19に供給する。
【0040】
ステップS12では、制御・処理部15の制御部15aは、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nの全てによる受信が終了したか否かを判定し、全てのアンテナによる受信が終了しておらず、繰り返し処理を実行すると判定する場合(ステップS12:Y)にはステップS11に戻って同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS12:N)にはステップS13に進む。
【0041】
ステップS13では、制御・処理部15の検出部15cは、ステップS10~ステップS12の繰り返し処理によって受信された受信信号に基づいて、物標の検出処理を実行する。具体的には、クラスタリング処理およびトラッキング処理によって物標を検出する。
【0042】
ステップS14では、検出部15cは、ステップS10~ステップS12の繰り返し処理によって受信された受信信号の振幅と、予め記憶しているリファレンスデータとを比較する。
【0043】
ステップS15では、検出部15cは、ステップS14における比較の結果、リファレンスデータよりも、受信信号の振幅が増加している場合(ステップS15:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS15:N)にはステップS17に進む。例えば、リファレンスデータよりも受信信号の振幅の方が増加している場合には、
図8または
図10のように、リファレンスデータに対応する破線の曲線よりも、受信信号に対応する実線の曲線の方が、振幅が増加するので、その場合にはYと判定してステップS16に進む。
【0044】
ステップS16では、検出部15cは、誘電体部材140の異常(例えば、誘電体部材140の剥離)が生じたと判定し、通信部15dを介して上位のECUに通知する。このような情報を受信したECUは、例えば、ディスプレイに情報を表示することで異常が生じていることをユーザに通知する。あるいは、ECUは、剥離が生じたレーダ装置1からの情報の確度が低下している可能性があることから、当該レーダ装置1から得られた情報については、例えば、判断の対象から除外することができる。
【0045】
ステップS17では、検出部15cは、処理を終了するか否かを判定し、処理を終了すると判定した場合(ステップS17:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS17:N)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
【0046】
以上の処理によれば、誘電体部材140の剥離等の異常を検出することができる。なお、異物がバンパ150に付着することで、リファレンスデータよりも振幅が増加することも想定されるので、誘電体部材140の異常と直ちに判断するのではなく、一定期間を隔てて再判定し、それでも、振幅が増加している場合には、誘電体部材140の異常と判定するようにしてもよい。
【0047】
(C)第2実施形態の構成の説明
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の構成は、第1実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0048】
(D)第2実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第2実施形態の動作について説明する。第2実施形態では、誘電体部材140の左右端の剥離等の異常を検出する。すなわち、第2実施形態に係るレーダ装置1では、
図5に示す受信視野Eの左右の端部付近の受信信号の振幅の比を求め、振幅の比が変化した場合には、誘電体部材140の左右端の一方に剥離等が発生したと判定する。
【0049】
図10は、本発明の第2実施形態の動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図10に示すフローチャートにおいて、
図9と対応する処理には同一の符号を付しているのでその説明は省略する。
図10では、
図9と比較すると、ステップS14およびステップS15がステップS30およびステップS31にそれぞれ置換されている。
【0050】
ステップS30では、制御・処理部15の検出部15cは、受信視野Eの左右端に対応する受信信号の振幅の比を計算する。例えば、左端付近の受信信号の振幅と、右端付近の受信信号の振幅との比Rを計算する。なお、
図1に示す実施形態では、
図3に示すように、複数の受信アンテナ17-1~17-8を有するので、
図5に示すY方向の角度については、受信アンテナ17-1~17-8の受信信号の位相差に基づいて検出することができる。
【0051】
ステップS31では、検出部15cは、ステップS31で計算した比Rが従来から変化したか否かを判定し、変化したと判定した場合(ステップS31:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS31:N)にはステップS17に進む。例えば、制御・処理部15の検出部15cは、過去に求めたRの値と、ステップS30で新たに求めたRの値を比較し、値が変化した場合には、誘電体部材140の左右いずれかの端部に剥離が生じている可能性があるので、その場合にはYと判定してステップS16に進む。
【0052】
ステップS16では、誘電体部材140の異常(例えば、誘電体部材140の剥離)が生じたと判定し、通信部15dを介して上位のECUに通知する。
【0053】
以上に説明したように、第2実施形態によれば、誘電体部材140の左右端に剥離が生じたことを検出することができる。また、第2実施形態では、左右端の受信信号の比を用いるようにしたことから、誘電体110を貼付した後のリファレンスデータを記憶する必要がないため、リファレンスデータを測定する手間を省略することができる。
【0054】
(E)第3実施形態の構成の説明
つぎに、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と比較すると、物標の垂直方向の位置を識別できる点が異なっている。
【0055】
図11は、第3実施形態の受信アンテナの構成例を示している。
図11に示す例では、第8受信アンテナ17-8の右隣に、分散部31を構成する共振素子31-1~31-3が配置されている。なお、共振素子31-1~31-3のそれぞれの長さはL1~L3(L1<L2<L3)とされ、また、幅はW1とされている。このような分散部31を設けることによって、物標の垂直方向の位置を識別することができる。
【0056】
(F)第3実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第3実施形態の動作について説明する。以下では、第3実施形態の動作原理(物標の垂直方向の位置の検出の動作原理)について説明した後、誘電体部材140の異常を検出する動作について説明する。
【0057】
図12は、第3実施形態の動作を説明するための図である。なお、
図12の下に示すように、回路基板30の左右方向(
図3の左右方向)をY軸とし、回路基板30の上下方向(
図3の上下方向)をX軸とし、回路基板30の法線方向をZ軸とする。このような
図12において、図示しない物標からの反射波がZ軸の上方向から実線で示すように入射されたとする。より詳細には、
図12において、矢印Aの方向から回路基板30を眺めた状態を
図13に示す。
図13において、細い実線で示す法線(回路基板30の板面に対する法線)と同じ方向から入射される太い実線が
図4における反射波の入射方向を示している。
【0058】
分散部31は、3つの共振素子31-1~31-3によって構成される。ここで、共振素子31-2は、レーダ装置1が送信する電波の周波数と略同じ周波数f2を共振周波数とする素子である。共振素子31-1は、レーダ装置1が送信する電波の周波数よりも高い周波数f1を共振周波数とする素子である。共振素子31-3は、レーダ装置1が送信する電波の周波数よりも低い周波数f3を共振周波数とする素子である。すなわち、f1>f2>f3となるように設定されている。
【0059】
分散部31に対して、
図13の実線で示すように、法線方向と同じ角度の反射波が入射されると、入射波は分散部31によって様々な方向に反射されるが、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8の方向に反射される電波に注目すると、これらの電波は
図12において実線で示すように、法線に対して略直角に反射されて第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8に入射される。
【0060】
このとき、分散部31を構成する共振素子31-1~31-3は、共振周波数が異なることから、分散特性、すなわち、周波数による伝搬速度が変化する。より詳細には、共振素子31-1によって反射された電波は、共振素子31-3によって反射された電波に比較して反射時に伝搬速度が速くなることから、共振素子31-1によって反射された電波の方が共振素子31-3によって反射された電波よりも位相が進んだ状態となる。この結果、
図12に模式的に示すように、共振素子31-1、共振素子31-2、共振素子31-3の順に位相が進んだ状態となる。なお、このとき、共振素子31-1と共振素子31-3の位相差をΔΦで表すものとする。
【0061】
つぎに、
図13に破線で示すように、反射波の入射角を法線に対して角度θだけX軸のマイナス方向に設定した場合(-θに設定した場合)、共振素子31-1に入射される反射波と、共振素子31-3に入射される反射波の位相差をΔφとすると、Δφは以下の式(1)で表すことができる。なお、式(1)において、dは分散部31のX軸方向の長さを示し、λは反射波の波長を示すものとする。
【0062】
Δφ=2πd/λ・sinθ ・・・(1)
【0063】
この場合、分散部31から出射される電波の位相差は、入射される際に生じる位相差Δφと、分散による位相差ΔΦを加算したものとなる。このため、分散部31から出射される電波は、
図14に破線で模式的に示すように、共振素子31-1から出射される電波の位相が共振素子31-3から出射される電波の位相よりもさらに進んだ状態となる。
【0064】
つぎに、
図13に一点鎖線で示すように、反射波の入射角を法線に対して角度θだけX軸のプラス方向に設定した場合(+θに設定した場合)、共振素子31-1に入射される反射波と、共振素子31-3に入射される反射波の位相差をΔφとすると、Δφは以下の式(2)で表すことができる。
【0065】
Δφ=-2πd/λ・sinθ ・・・(2)
【0066】
このとき、仮に、入射される際に生じる位相差Δφと、分散による位相差ΔΦが同じ位相差である場合(-Δφ=ΔΦ)には、これらを加算した結果は0となることから、
図15に一点鎖線で模式的に示すように、共振素子31-1~共振素子31-3から出射される電波の位相は略同じ状態となる。
【0067】
図17~
図19は、
図16に示すように、分散部31に対してx軸およびy軸を設定した場合に、反射波の入射角を-30°、0°、30°と変化させたときの分散部31によって反射される電波の状態をシミュレーションした結果を示す図である。より詳細には、
図16に示すように、分散部31の共振素子31-1~31-3の中央にx軸を設定し、共振素子31-2の中央にy軸を設定している。また、共振素子31-1~31-3の長さL1~L3は、L1=2mm、L2=6mm、L3=10mmに設定し、共振素子31-1~31-3の素子間のギャップgは1mmに設定し、反射波の周波数は24GHzに設定している。
【0068】
図17は、
図13に破線で示す-θの入射角においてθ=30°とした場合(-30°の入射角)における分散部31によって反射される電波の状態を示す図である。また、
図18は、
図13に太い実線で示す0°とした場合における分散部31によって反射される電波の状態を示す図である。また、
図19は、
図13に一点鎖線で示す+θの入射角においてθ=30°とした場合(+30°の入射角)における分散部31によって反射される電波の状態を示す図である。
【0069】
図17~
図19の比較から、図中に濃淡で示す電波の位相は、
図17では共振素子31-1に比較して共振素子31-3で反射された電波の位相が遅れているが、
図19では共振素子31-1と共振素子31-3で反射された電波の位相はほぼ同じ状態になっている。
【0070】
第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、
図17~
図19に示す反射波を入力する。ここで、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、X軸方向の長さがLであり、これらから出力される電気信号は、長さL方向に電波を積分して得られる値となる。
【0071】
分散部31から出射される電波が
図19に示す状態である場合、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8のそれぞれにおける電波の位相は略同じであることから積分して得られる値はその時点における位相に応じた所定の値となる。一方、分散部31から出射される電波が
図17に示す状態である場合、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8のそれぞれにおける電波の位相がずれていることから積分して得られる値は、相殺されて
図19の場合よりも小さい値となる。
【0072】
図20は、
図17~
図19において、レーダ装置1によって検出される信号の一例を示している。より詳細には、
図20(A)は、
図17に示す状態において検出される信号を示している。なお、
図20(A)において、横軸はY軸方向の角度(法線方向を0°とし、Y軸プラス側をマイナスとし、Y軸マイナス側をプラスとする角度)を示し、縦軸は信号のレベルを示している。また、
図20において、-Θ~Θの範囲は通常の検出範囲(例えば、-60°~+60°)を示し、90°は分散部31によって反射された信号を示している。
図20(A)では、分散部31によって反射された信号の位相が揃っていないことから検出される信号のレベルは低い状態になっている。一方、
図20(C)では、分散部31によって反射された信号の位相が揃っていることから検出される信号のレベルは高い状態になっている。
図20(B)では検出される信号は、
図20(A)および
図20(C)の中間となっている。なお、
図20(C)の場合のみ一定の出力を生じ、
図20(A),(B)は殆ど出力を生じない設定としてもよい。
【0073】
このため、分散部31から入射される信号、すなわち、90°の角度から入射される信号のレベルを参照し、信号のレベルが所定の閾値Th2よりも大きい場合には
図13に示すプラス方向に物標が存在していると判定する。また、-Θ~Θの範囲において、物標を検出した場合において、90°の角度から入射される信号のレベルが所定の閾値Th1よりも小さい場合には
図13に示すマイナス方向に物標が存在していると判定する。さらに、-Θ~Θの範囲において、物標を検出した場合において、90°の角度から入射される信号のレベルが所定の閾値Th1より大きく、閾値Th2より小さい場合には、
図13に示す0°の方向に物標が存在していると判定する。もちろん、
図13に示す3つの場合を全て検出するのではなく、例えば、プラス方向だけを検出するようにしてもよい。
【0074】
以上が、垂直方向(仰角方向)の物標を検出する処理であるが、つぎに、誘電体部材140の異常を検出する動作について説明する。
【0075】
図21は、本発明の第3実施形態の動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図21に示すフローチャートにおいて、
図9と対応する処理には同一の符号を付しているのでその説明は省略する。
図21では、
図9と比較すると、ステップS14およびステップS15がステップS50およびステップS51にそれぞれ置換されている。
【0076】
ステップS50では、制御・処理部15の検出部15cは、90°の信号を検出する。より詳細には、
図20に示す90°の信号を検出する。
【0077】
ステップS51では、検出部15cは、ステップS50で検出した90°の信号の振幅が変化しているか否かを判定し、変化したと判定した場合(ステップS51:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS51:N)にはステップS17に進む。例えば、
図6に示すように、誘電体部材140の上端部が剥離した場合には、当該位置からの反射波が増加することから、
図13に示す+θ成分が増加する。この結果、90°の信号の振幅が増加する。検出部15cは、90°の信号の振幅が変化した場合には、Yと判定してステップS16に進む。なお、逆に、誘電体部材140の下端部が剥離した場合には、当該位置からの反射波が増加することから、
図13に示す-θ成分が増加する。この結果、90°の信号の振幅が減少する。
【0078】
ステップS16では、誘電体部材140の異常(例えば、誘電体部材140の剥離)が生じたと判定し、通信部15dを介して上位のECUに通知する。
【0079】
以上に説明したように、第3実施形態によれば、誘電体部材140の上下端に剥離が生じたことを検出することができる。特に、重力の影響で、誘電体部材140の上端部が剥離しやすいことから、第3実施形態では、このような上端部の剥離を正確に検出することができる。また、第3実施形態では、共振素子31-1~31-3を用いて垂直方向の位置を検出するようにしたので、簡単な構成によって垂直方向の位置を検出することができる。
【0080】
(G)本発明の第4実施形態の構成の説明
図22は、本発明の第4実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。なお、第3実施形態では、第1実施形態と比較すると、物標の垂直方向の位置を識別できる点が異なっている。
【0081】
ここで、レーダ装置1Aは、制御部111、局部発振部112、パルス整形部113、可変増幅部114、アンテナ切換部115、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2、第1受信アンテナ117-1~第N受信アンテナ117-N、アンテナ切換部118、増幅部119、乗算部120、IF(Intermediate Frequency)増幅部121、A/D変換部122、記憶部123、および、演算部124を主要な構成要素としている。なお、以下では、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4(N=4)の場合を例に挙げて説明する。
【0082】
ここで、制御部111は、例えば、CPU、ROM、および、RAM等によって構成され、装置の各部を制御する。なお、図中破線の矢印は、制御線を示している。
【0083】
局部発振部112は、制御部111の制御に応じて所定の周波数の局発信号を生成して出力する。
【0084】
パルス整形部113は、制御部111から供給される矩形波を、後述するパルス波形を有する信号に整形して出力する。
【0085】
可変増幅部114は、電圧制御増幅回路によって構成され、パルス整形部113から供給されるパルス波形の電圧に応じて局発信号を増幅して出力する。
【0086】
アンテナ切換部115は、制御部111の制御に応じて、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の一方を選択し、可変増幅部114からの出力信号を供給する。
【0087】
第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2は、可変増幅部114からの出力信号を電磁波として物標に向けて送信する。
【0088】
第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4は、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2によって送信され、物標によって反射された反射信号を受信し、RF信号に変換してアンテナ切換部118に供給する。
【0089】
アンテナ切換部118は、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4から供給されるRF信号のいずれか一つを選択して増幅部119に出力する。
【0090】
増幅部119は、アンテナ切換部118から出力されるRF信号を所定のゲインで増幅して乗算部120に供給する。
【0091】
乗算部120は、局部発振部112から供給される局発信号と、増幅部119から供給されるRF信号とを乗算し、IF信号を生成して出力する。
【0092】
IF増幅部121は、乗算部120から出力されるIF信号を所定のゲインで増幅して出力する。
【0093】
A/D変換部122は、IF増幅部121から出力されるIF信号をデジタルデータに変換して出力する。
【0094】
記憶部123は、例えば、RAM等によって構成され、A/D変換部122から供給されるデジタルデータを記憶する。
【0095】
演算部124は、水平方向検出処理部241、垂直方向検出処理部242、および、統合処理部243を有している。
【0096】
水平方向検出処理部241は、記憶部123に格納されているデータを取得し、物標の水平方向の位置を検出して出力する。垂直方向検出処理部242は、記憶部123に格納されているデータを取得し、物標の垂直方向の位置を検出して出力する。
【0097】
統合処理部243は、水平方向検出処理部241から供給されたデータと、垂直方向検出処理部242から供給されたデータを統合する処理を実行し、統合されたデータを、例えば、図示しない上位の装置(例えば、同レーダ装置1A内のアプリケーション処理部、または、レーダ装置1A外のECU(Electric Control Unit)等)に供給する。
【0098】
なお、
図22では図面を簡略化するために図示を省略しているが、乗算部120は増幅部119から出力される信号を直交復調してIQ信号として出力する。このため、乗算部120以降は、I,Qの2つの成分が伝達される。
【0099】
(H)第4実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第4実施形態の動作を説明する。以下では、第4実施形態の動作原理について説明した後、第4実施形態の動作の詳細について説明する。
【0100】
図23~
図26は、本発明の動作原理を示す図である。一例として、
図23に示す車両の後部バンパ内にレーダ装置を装備した場合を考える。この場合、従来のレーダ装置は、
図24に示すような指向特性を有する送信信号を車両の後方に向けて送信する。
図24において、横軸は利得[dB]を示し、縦軸は仰角(垂直方向の角度)を示す。
図24の例では、送信信号は仰角0度の軸を中心として線対称の指向特性を有している。従来のレーダ装置は、垂直方向の角度を検出することができないため、
図23(A)に示す物標O1(例えば、地面に設置されたポール)と、
図23(B)に示す物標O2(例えば、地面に設置された車止め)とを識別することができない。
【0101】
第4実施形態では、
図25に示すような、垂直方向に異なる指向特性を有する送信信号を異なるタイミングで送信する。そして、物標で反射されたこれらの反射信号の電力(例えば、強度、振幅等)の差異から、垂直方向の角度を求める。より詳細には、
図25に示す例では、実線の曲線は第1指向特性を有する送信信号の指向特性を示し、破線の曲線は第2指向特性を有する送信信号の指向特性を示している。
【0102】
本発明の実施形態では、例えば、第1送信アンテナ16-1から第1指向特性を有する実線の送信信号を送信し、物標で反射された第1反射信号を受信する。また、第2送信アンテナ16-2から第2指向特性を有する破線の送信信号を送信し、物標で反射された第2反射信号を受信する。そして、第1反射信号と第2反射信号の差異(例えば、強度の比(第1反射信号/第2反射信号))を求め、この比を
図26に示すようなテーブルと対比することで、物標の高さを求めることができる。
【0103】
図26に示すテーブルでは、第1反射信号/第2反射信号の比と、それぞれに対応する物標の高さが格納されている。例えば、
図23(B)に示す物標O2の場合、第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号はある程度の強度(電力)を有するが、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号の強度は第2反射信号に比較して小さい(第2反射信号>第1反射信号である)ため、第1反射信号/第2反射信号の比<1となる。
【0104】
一方、
図23(A)に示す物標O1の場合、第1指向特性を有する送信信号に対する第1反射信号も第2指向特性を有する送信信号に対する第2反射信号の強度も略ある程度の大きさを有することから、第1反射信号/第2反射信号の比は、
図23(B)に比較して大きくなる。
【0105】
そこで、本実施形態では、例えば、第1反射信号/第2反射信号の比を求め、この比を
図26に示すテーブルと対比することで、物標の仰角方向の高さを検出することができる。
【0106】
つぎに、
図27~
図33を参照して、本発明の実施形態の詳細な動作について説明する。
【0107】
レーダ装置1Aが装備されている車両(不図示)のエンジンが始動されると、
図22に示すレーダ装置1Aの各部に対して電源電力の供給が開始され、動作が可能な状態になる。
【0108】
電源電力の供給が開始されると、制御部111は、局部発振部112に対して局発信号の出力を開始させるとともに、パルス整形部113に対して矩形波を供給し、パルス信号を生成させる。この結果、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2からは
図27に示すパルス信号が出力される。
【0109】
図27は、
図22に示すレーダ装置1Aから送信される送信信号の例を示す図である。
図27(A)に示すように、送信信号には繰り返し周期T0でパルスPが含まれている。パルスPは、
図27(B)に拡大して示すように、振幅がAとされている。
【0110】
図27(C)は、制御部111からパルス整形部113に供給される信号の一例を示している。パルス整形部113は、制御部111から供給される
図27(C)に示す矩形波を、
図27(B)に示すように整形して出力する。可変増幅部114は、パルス整形部113から供給される信号の振幅に基づいて局部発振部112から供給される局発信号を増幅して出力する。
図27(C)に示すように、制御部111から供給される信号は、可変増幅部114から出力されるパルス信号の振幅が
図27(B)に示すAとなるように、パルス幅Wが調整されている。
【0111】
第1送信アンテナ16-1~第2送信アンテナ16-2のいずれか一方から送信されたパルスPは、物標によって反射され、反射信号として第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4に受信され、RF信号に変換されて出力される。
【0112】
アンテナ切換部118は、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4のいずれか1つを選択するので、アンテナ切換部118によって選択された第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4によって受信された反射信号はRF信号に変換されて増幅部119に供給される。
【0113】
増幅部119は、アンテナ切換部118から供給されるRF信号を所定のゲインで増幅して出力する。乗算部120は、増幅部119から供給される受信信号と、局部発振部112から供給される局発信号とを乗算してIF信号に変換(ダウンコンバート)して出力する。
【0114】
IF増幅部121は、乗算部120から供給されるIF信号を増幅して出力する。A/D変換部122は、IF増幅部121から供給されるIF信号をA/D変換して出力する。なお、A/D変換部122は、
図41を参照して後述するように、IF増幅部121から供給される受信信号を、等価時間サンプリングして出力する。
【0115】
記憶部123は、A/D変換部122から出力されるデジタルデータを記憶し、演算部124の水平方向検出処理部241と垂直方向検出処理部242にそれぞれ供給する。
【0116】
水平方向検出処理部241は、従来のレーダ装置と同様に、水平方向における物標の位置および速度を検出する処理を実行する。なお、水平方向検出処理部241は、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2および第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4を用いて、仮想アレイアンテナの原理を用いることで、水平方向の位置の分解能を高めることができる。
【0117】
図28は、
図22に示す第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2および第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の詳細な構成例を示している。
図28に示す例では、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2は、それぞれ4つのパッチアンテナを有するアレイアンテナによって構成されている。また、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4は、それぞれ8つのパッチアンテナを有するアレイアンテナによって構成されている。第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4は、例えば、誘電体基板等の表面に形成され、
図31に示すように、上下方向であるY方向に8つのパッチが所定の間隔を隔てて直線状に配置されて構成される。また、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4は、左右方向であるX方向に所定の間隔を隔てて配置され、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4を構成するパッチがマトリクス状に配置される。第1送信アンテナ16-1は、第1受信アンテナ17-1の右下方に配置され、第2送信アンテナ16-2は、第4受信アンテナ17-4の左下方に配置される。なお、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4のそれぞれの距離をdとすると、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の距離は4×dで表される。
【0118】
なお、
図28に示すアンテナは、
図29に示すように、仮想アレイアンテナとして動作することができる。すなわち、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2を用いることで、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4が、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8の8アレイのアンテナに仮想的に拡張される。
【0119】
図30は、
図28に示す第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の詳細な構成例を示している。なお、
図30では、図面を簡略化するために第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の距離を実際よりも狭めて描画している。
図30の例では、第1送信アンテナ16-1は、4つのパッチアンテナ1611~1614を有している。また、パッチアンテナ1611~1614は、給電線L11~L13によって相互に接続され、給電点Fp1から送信信号が供給される。また、第2送信アンテナ16-2も同様に、4つのパッチアンテナ1621~1624を有している。また、パッチアンテナ1621~1624は、給電線L21~L23によって相互に接続され、給電点Fp2から送信信号が供給される。
【0120】
ここで、第1送信アンテナ16-1を構成する給電線L11~L13の長さは、L13>L12>L11となるように設定されている。第2送信アンテナ16-2を構成する給電線L21~L23の長さは、L23>L22>L21となるように設定されている。
【0121】
このように設定することで、給電線の長さに応じた位相遅れが生じることから、第1送信アンテナ16-1では、給電点Fp1に送信信号が供給されると、パッチアンテナ1611~1614の順に位相が進んだ電磁波が送信されることから、電磁波が下向きに放射される、第2送信アンテナ16-2では、パッチアンテナ1624~1621の順に位相が進んだ電磁波が送信されることから、電磁波が上向きに放射される。これにより、
図25に示す指向特性を実現することができる。
【0122】
また、本実施形態では、
図28に示すように、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2を構成するパッチアンテナの数は4とされ、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4を構成するパッチアンテナの数は8とされ、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2を構成するパッチアンテナの数の方が少なく設定されている。これは、以下の理由による。すなわち、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2のビームの幅(例えば、半値幅)が広い場合には、ビームが重複する領域が広く、また、ビームの幅が狭い場合には、ビームが重複する領域が狭い。
図31は、ビームが広い場合と狭い場合による重複する領域を模式的に示す図である。より詳細には、
図31は垂直方向に上向きと下向きの2つのビームの重複する様子を示す模式図であり、
図31(A)はビームの幅が広い場合を示し、
図31(B)はビームの幅が狭い場合を示している。なお、
図31(A)と
図31(B)において、ビームの照射する角度(垂直方向の角度)は同じである。2つの第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2を用いて物標を検出する場合、物標を検出可能な範囲は2つのビームが重複する範囲であることから、
図31(A)では利得G1に対応する範囲であり、
図31(B)では利得G2に対応する範囲である。このため、ビーム幅が広い方が遠くまで物標の検出が可能になる。
【0123】
そこで、本実施形態では、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2をそれぞれ構成するパッチアンテナの数を第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の8よりも少ない4とすることで、垂直方向のビーム幅を広くし、水平方向における物標の検出可能な距離を、垂直方向のビーム幅が狭い場合に比較して長くしている。なお、パッチアンテナの数としては、例えば、3~7程度にすることができる。この場合、送信アンテナを構成するパッチアンテナの数を減らして(例えば、受信アンテナを構成するパッチアンテナの数の半分以下)垂直方向のビーム幅を広くする場合においても、可変増幅部114の出力を調整することで水平方向における物標の検出可能な距離を維持することができる。
【0124】
なお、以上は、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の送信利得についての説明であるが、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4も受信利得を有しており、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2の送信利得と第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の受信利得の積によってトータルの利得が計算できる。
図32は、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2と第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の積によって得られるトータルの利得を示す図である。この図において、破線は
図33(A)に示す受信アンテナを使用した場合の利得を示し、実線は
図33(B)に示す受信アンテナを使用した場合の利得を示している。
【0125】
図33(A)に示す受信アンテナでは、パッチアンテナ1711~1718同士を接続する給電線L31~L36の幅は略一定とされている。一方、
図33(B)に示す受信アンテナでは、パッチアンテナ1721~1728同士を接続する給電線L41~L46の一部に隘路が整形されて幅が調整されており、この結果として、
図32に実線で示す曲線のように、破線で示す曲線に比較して、サイドローブが抑圧されている。より具体的には、例えば、
図33(B)のアンテナの上下方向中央からパッチアンテナ1721~1724を見た際の、各パッチアンテナのインピーダンスが互いに異なる値となるように、各パッチアンテナを接続する給電線の一部の幅が調整される。パッチアンテナ1725~1728についても同様である。サイドローブが存在する角度範囲は、利得差が周期的に変化することから、物標の検出には使用できない。破線で示す利得曲線の場合、実線の利得曲線に比較してサイドローブの利得が大きく、数も多いことから、物標を検出可能な角度範囲が狭くなる。一方、実線の利得曲線では、サイドローブが抑圧されている(利得が小さく、数も少ない)ことから、物標を検出可能な角度範囲を広くすることができる。
【0126】
なお、前述したように、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2と第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の積によってトータルの利得が得られるので、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2を調整することでもサイドローブを抑圧することは可能である。しかしながら、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2は、パッチアンテナの数が少ないことから、設計の自由度が低い。一方、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4は、パッチアンテナの数が多いことから、設計の自由度が高い。そこで、本実施形態では、第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4の給電線を調整することで、サイドローブを抑圧するようにしている。
【0127】
図22に戻る。垂直方向検出処理部242は、水平方向だけでなく、垂直方向における物標の位置および速度を検出する処理を実行する。なお、垂直方向検出処理部242は、第1送信アンテナ116-1~第2送信アンテナ116-2および第1受信アンテナ117-1~第4受信アンテナ117-4を仮想アレイアンテナとしては使用せずに、4アレイのアンテナとして使用する。
【0128】
垂直方向検出処理部242では、第1送信アンテナ16-1および第2送信アンテナ16-2から送信される送信信号の指向性の差異(
図25参照)に基づいて、垂直方向における物標の位置を検出する。
【0129】
以上が、垂直方向(仰角方向)の物標を検出する処理であるが、つぎに、誘電体部材140の異常を検出する動作について説明する。
図6に示すように、誘電体部材140の上端(または下端)が剥離した場合、
図7~
図10に示すように、バンパ150の厚みが不適な状態となり、剥離した側の受信信号の電力が増加する。
【0130】
例えば、
図6に示すように、誘電体部材140の上側が剥離した場合、強度の比(第1反射信号/第2反射信号)が剥離前に比較して増加する。このため、従来(例えば、初期値または所定の時間(例えば、数日から数週間)前)に比較して、強度の比が増加した場合には、誘電体部材140の上側が剥離したと判定することができる。
【0131】
一方、誘電体部材140の下側が剥離した場合、強度の比(第1反射信号/第2反射信号)が剥離前に比較して減少する。このため、従来に比較して、強度の比が減少した場合には、誘電体部材140の下側が剥離したと判定することができる。
【0132】
つぎに、本発明の第4実施形態の詳細な動作について説明する。
図34は、本発明の第4実施形態の動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図34に示すフローチャートにおいて、
図9と対応する処理には同一の符号を付しているのでその説明は省略する。
図34では、
図9と比較すると、ステップS14およびステップS15がステップS70およびステップS71にそれぞれ置換されている。
【0133】
ステップS70では、演算部124の垂直方向検出処理部242は、第1反射信号と第2反射信号の強度の比(第1反射信号/第2反射信号)を算出する。
【0134】
ステップS71では、垂直方向検出処理部242は、ステップS70で検出した第1反射信号と第2反射信号の強度の比と、過去に算出した第1反射信号と第2反射信号の強度の比を比較し、値が変化しているか否かを判定し、変化していると判定した場合(ステップS71:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS71:N)にはステップS17に進む。例えば、
図6に示すように、誘電体部材140の上端部が剥離した場合には、第1反射信号/第2反射信号が増加する。この結果、垂直方向検出処理部242は、Yと判定してステップS16に進む。逆に、誘電体部材140の下端部が剥離した場合には、第1反射信号/第2反射信号が減少する。この場合も、垂直方向検出処理部242は、Yと判定してステップS16に進む。
【0135】
ステップS16では、誘電体部材140の異常(例えば、誘電体部材140の剥離)が生じたと判定し、上位のECUに通知する。
【0136】
以上に説明したように、本発明の第4実施形態では、垂直方向に指向性が異なる送信信号を送信し、反射信号の電力の比が変化した場合には、誘電体部材140が剥離したと判定するようにしたので、簡易な構成によって、垂直方向の誘電体部材140の剥離を検出することができる。
【0137】
(I)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、第1~第4実施形態では、送信アンテナ13からはパルス信号を送信するようにしたが、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いるようにしてもよい。
【0138】
また、以上の各実施形態では、左右方向については、反射波の振幅に基づいて、誘電体部材140の剥離を検出するようにしたが、例えば、
図35に示すように、水平方向の視野角における通常の検出範囲(例えば、-60°~+60°)と、プラスマイナス90°の間に生じる反射信号の有無によって、誘電体部材140の左右端の剥離を検出するようにしてもよい。より詳細には、例えば、誘電体部材140の右端が剥離した場合には、
図35(A)に示すように、Θと破線で示す90°との間に反射信号が生じる。また、誘電体部材140の左端が剥離した場合には、
図35(B)に示すように、-Θと破線で示す-90°との間に反射信号が生じる。このため、これらの反射信号を検出することで、左右端の剥離を確実に検出することができる。より具体的には、例えば、バンパ150の裏側に貼付された誘電体部材140の左右方向の一方の端部が60°<Θ1<90°を満たす領域に配される場合、当該Θ1からの反射信号に基づいて前記一方の端部の剥離を検出する様に設定してもよい。
【0139】
また、
図3に示す実施形態では、アンテナ切換部18によって第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nからの出力を択一的に選択するようにしたが、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのそれぞれに対して利得可変増幅部19、復調部20、および、A/D変換部21を設け、A/D変換部21の出力を選択部によって選択して制御・処理部15に供給するようにしてもよい。もちろん、利得可変増幅部19または復調部20の後段に選択部を設け、選択部によって利得可変増幅部19または復調部20の出力を選択するようにしてもよい。
【0140】
また、以上の実施形態では、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8を用いる場合(すなわち、N=8)の場合を例に挙げて説明したが、これ以外の本数であってもよい。なお、FFT(Fast Fourier Transform)処理を施す都合から、2のべき乗の本数を用いることが望ましい。
【0141】
また、
図3等に示す第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8の形状は一例であって、本発明が
図3に示す形状のみに限定されないことはいうまでもない。
【0142】
また、
図9、
図10、
図21、および、
図34に示すフローチャートの処理は一例であって、本発明がこれらフローチャートの処理に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0143】
また、以上の実施形態では、レーダ装置が車両等の移動体に取り付けられる場合を例に挙げて説明したが、固定的に配置されるレーダ装置に本願発明を適用するようにしてもよい。
【0144】
また、以上の第2実施形態では左右端の剥離を検出し、第3および第4実施形態では上下端の剥離を検出するようにしたが、左右端および上下端の剥離を並行して検出するようにしてもよい。すなわち、
図10の検出処理と、
図21および
図34の検出処理を並行して実行するようにしてもよい。
【0145】
また、水平方向の所定の角度方向についての上下端の剥離を検出するようにしてもよい。このような構成により、例えば、車両側の設計により、重力影響による誘電体140の剥離がより懸念される領域を特定的に監視することができ、より確実に誘電体140の上下端の剥離を検出することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 レーダシステム
10 局部発振部
11 送信部
12 変調部
13 送信アンテナ
15 制御・処理部
15a 制御部
15b 処理部
15c 検出部
15d 通信部
16 受信部
17 受信アレーアンテナ
17-1~17-8 第1受信アンテナ~第8受信アンテナ
18 アンテナ切換部
19 利得可変増幅部
20 復調部
21 A/D変換部
30 回路基板
31,32,33,34 分散部
31-1~31-3,32-1~32-3,33-1~33-3,34-1~34-3 共振素子
111 制御部
112 発振部
113 パルス整形部
114 可変増幅部
115 選択部
116-1~116-2 送信アンテナ
117-1~117-4 受信アンテナ
118 選択部
119 増幅部
120 乗算部
121 IF増幅部
122 A/D変換部
123 記憶部
124 演算部
241 水平方向検出処理部
242 垂直方向検出処理部
243 統合処理部