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特許7328011電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置、及び電子・電気機器部品屑の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置、及び電子・電気機器部品屑の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/194 20170101AFI20230808BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230808BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G06T7/194
B09B5/00 C
G01N21/27 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019104044
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020197953
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後田 智也
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼川 幸毅
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-063577(JP,A)
【文献】特開2013-050912(JP,A)
【文献】特表2017-520859(JP,A)
【文献】特開2001-009435(JP,A)
【文献】特開2010-191487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
B09B 5/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状又は面積が異なる複数の部品屑を含む電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から前記複数の部品屑毎にそれぞれ異なる描画条件の認識枠を付与し、
前記認識枠が2個以上重なり合う前記部品屑を前記画像の中から抽出し、抽出された前記部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、前記任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する前記重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、前記小さい方の認識枠を削除し、
前記削除後の画像に含まれる前記認識枠が付された複数の部品屑を、前記複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測し、
前記複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を前記複数の部品屑の総面積と乗算して前記複数の部品屑の重量比率を解析することにより、前記電子・電気機器部品屑の組成を推定すること
を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項2】
前記認識枠が3個以上重なり合う場合に、前記小さい方の認識枠を削除する処理を、削除する認識枠が無くなるまで繰り返すことを含む請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項3】
前記複数の部品屑毎に認識枠を付与することが、前記部品屑の構成要素及び色彩を含む認識情報を含む分類データに基づいて、前記部品屑に対して前記部品屑と外接する最小外接図形を付与することを含む請求項1又は2に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項4】
前記基準値が、0.75~1.0であることを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項5】
前記部品屑を前記画像の中から抽出することが、前記電子・電気機器部品屑を、基板、プラスチック及びその他部品屑に分類して抽出することを含み、且つ、抽出された前記基板、前記プラスチック及び前記その他部品屑について、それぞれ異なる描画条件の認識枠を付与することを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項6】
前記部品屑を前記画像の中から抽出することが、前記電子・電気機器部品屑を、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ及びその他部品屑に分類して抽出することを含み、且つ、抽出された前記基板、前記プラスチック、前記金属片、前記銅線屑、前記コンデンサー、前記ICチップ及び前記その他部品屑について、それぞれ異なる描画条件の認識枠を付与することを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項7】
形状又は面積が異なる複数の部品屑を含む電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から、前記複数の部品屑毎にそれぞれ異なる描画条件の認識枠を付与するための前記部品屑の認識情報を含む分類データを備える記憶装置と、
前記分類データに基づいて、前記複数の部品屑に認識枠を付与する認識枠付与手段と、
前記認識枠が2個以上重なり合う前記部品屑を前記画像の中から抽出し、抽出された前記部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、前記任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する前記重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、前記小さい方の認識枠を削除することにより、認識枠の補正を行う補正手段と、
前記削除後の画像に含まれる前記認識枠が付された複数の部品屑を、前記複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測する計測手段と、
前記複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を前記複数の部品屑の総面積と乗算して前記複数の部品屑の重量比率を解析することにより、前記電子・電気機器部品屑の組成を推定する解析手段と
を備えることを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析装置。
【請求項8】
複数の部品屑からなる電子・電気機器部品屑を撮像する撮像工程と、
前記電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から前記複数の部品屑毎にそれぞれ異なる描画条件の認識枠を付与するための前記部品屑の認識情報を含む分類データに基づいて、前記複数の部品屑の画像を抽出して前記複数の部品屑毎に認識枠を付与する認識枠付与工程と、
前記認識枠が2個以上重なり合う前記部品屑を前記画像の中から抽出し、抽出された前記部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、前記任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する前記重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、前記小さい方の認識枠を削除することにより、認識枠の補正を行う補正工程と、
前記補正工程後の画像に含まれる前記認識枠が付された複数の部品屑を、前記複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測する計測工程と、
前記複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を前記複数の部品屑の総面積と乗算して前記複数の部品屑の重量比率を解析することにより、前記電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析工程と、
を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の画像抽出処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置、及び電子・電気機器部品屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IOT機器の普及やAIの進化等により多種多用かつ大量のデータを効率的且つ効果的に収集、共有、分析及び活用することが可能となってきている。中でも画像から得られる情報を処理して活用する技術は、飛躍的に向上している。
【0003】
画像から得られる情報処理は、様々な業界で用いられており、近年、資源保護の観点から自動車を破砕して得られるシュレッダーダスト、廃家電製品、PC及び携帯電話等の電子・電気機器部品屑から有価金属を回収する金属リサイクル業界においても注目されてきている。
【0004】
電子・電気機器部品屑から有価金属を回収する金属リサイクル方法としては、例えば、電気・電子部品屑を焼却後、所定のサイズに粉砕し、粉砕した電気・電子部品屑を銅の溶錬炉で処理して銅を回収する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子・電気機器部品屑の処理量が増加することにより、電子・電気機器部品屑に含まれる物質の種類によってはその後の銅製錬工程での処理に好ましくない物質(製錬阻害物質)が従来よりも多量に投入される場合がある。そのため、電子・電気機器部品屑の投入量を制限せざるを得なくなる状況が生じる。
【0007】
電子・電気機器部品屑の投入量の制限を抑制するためには、電子・電気機器部品屑から製錬阻害物質を低減しておくことが効率性の観点から望ましい。しかしながら、電子・電気機器部品屑には、様々な形状及び種類の部品屑が含まれているため、選別機等を用いて機械的に目的とする物質を除去することが難しい。供給元の違い等によりその原料組成が変化する場合も多い。そのため、選別前に、選別すべき対象物を、画像解析技術を用いて抽出することができれば、効率性の観点からも望ましいと考えられる。
【0008】
しかしながら、画像解析技術は多少なりとも誤認識が生じる場合がある。例えば、電子・電気機器部品屑を構成する実装部品、基板、筐体のプラスチック等の破砕物は、形状及び面積がばらばらの状態で混在しているため画像認識が難しい場合がある。誤認識の発生は、上述した電子・電気機器部品屑の処理だけではなく、種々の形状及び面積を有する対象物が混在する画像の画像認識処理においても同様の課題が存在する。
【0009】
上記課題を鑑み、本開示は、認識精度を向上させることが可能な、対象物の画像抽出処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置、及び電子・電気機器部品屑の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態は一側面において、認識枠付与手段が、形状又は面積が異なる複数の対象物を撮像した画像の中から、対象物の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に認識枠を付与することにより対象物の画像を抽出することと、補正手段が、認識枠が2個以上重なり合う対象物を画像の中から抽出し、抽出された対象物に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、小さい方の認識枠を削除することを含む対象物の画像抽出処理方法である。
【0011】
本発明の実施の形態は別の一側面において、形状又は面積が異なる複数の部品屑を含む電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から複数の部品屑毎にそれぞれ異なる描画条件の認識枠を付与し、認識枠が2個以上重なり合う部品屑を画像の中から抽出し、抽出された部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、小さい方の認識枠を削除し、削除後の画像に含まれる認識枠が付された複数の部品屑を、複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測し、複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を複数の部品屑の総面積と乗算して複数の部品屑の重量比率を解析することにより、電子・電気機器部品屑の組成を推定することを含む電子・電気機器部品屑の組成解析方法である。
【0012】
本発明の実施の形態は更に別の一側面において、形状又は面積が異なる複数の部品屑を含む電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から、複数の部品屑毎にそれぞれ異なる描画条件の認識枠を付与するための部品屑の認識情報を含む分類データを備える記憶装置と、分類データに基づいて、複数の部品屑に認識枠を付与する認識枠付与手段と、認識枠が2個以上重なり合う部品屑を画像の中から抽出し、抽出された部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、小さい方の認識枠を削除することにより、認識枠の補正を行う補正手段と、削除後の画像に含まれる認識枠が付された複数の部品屑を、複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測する計測手段と、複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を複数の部品屑の総面積と乗算して複数の部品屑の重量比率を解析することにより、電子・電気機器部品屑の組成を推定する解析手段とを備える電子・電気機器部品屑の組成解析装置である。
【0013】
本発明の実施の形態は更に別の一側面において、複数の部品屑からなる電子・電気機器部品屑を撮像する撮像工程と、電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から複数の部品屑の画像を抽出して複数の部品屑毎に分類するための分類データを記憶する分類データに基づいて、複数の部品屑の画像を抽出して複数の部品屑毎に認識枠を付与する認識枠付与工程と、認識枠が2個以上重なり合う部品屑を画像の中から抽出し、抽出された部品屑に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、小さい方の認識枠を削除することにより、認識枠の補正を行う補正工程と、補正工程後の画像に含まれる認識枠が付された複数の部品屑を、複数の部品屑毎に分類してそれぞれの総面積を計測する計測工程と、複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を複数の部品屑の総面積と乗算して複数の部品屑の重量比率を解析することにより、電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析工程とを含む電子・電気機器部品屑の処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、認識精度を向上させることが可能な、対象物の画像抽出処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置、及び電子・電気機器部品屑の処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置を示す概略図である。
図2図2(a)は単一の対象物について認識枠が2個付された場合の例を示し、図2(b)は単一の対象物について認識枠が3個以上付された場合の例を示す説明図である。
図3】画像中に存在する電子・電気機器部品屑を部品屑毎に特定して部品屑毎にそれぞれ認識枠で色分けした画像の例を示す写真である。
図4】本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置を用いた解析結果の一例を表す表である。
図5】本発明の実施の形態に係る対象物の画像抽出処理方法の一例を表すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置を用いた電子・電気機器部品屑の処理方法の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
なお、以下に示す実施の形態においては、画像抽出対象物として電子・電気機器部品屑を抽出する場合を例に示すが、電子・電気機器部品屑以外にも種々の画像の構成要素を対象物として応用できることは勿論である。
【0017】
(対象物の画像抽出処理方法)
本発明の実施の形態に係る対象物の画像抽出処理方法は、解析装置を用いて、形状又は面積が異なる複数の対象物を撮像した画像の中から、対象物の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に認識枠を付与することにより対象物の画像を抽出することと、認識枠が2個以上重なり合う対象物を画像の中から抽出し、抽出された対象物に含まれる任意の2個の認識枠の重複部分の面積を算出し、任意の2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積に対する重複部分の面積の比が基準値以上となる場合に、小さい方の認識枠を削除することを含む。
【0018】
本実施形態に係る対象物は、破砕物であることが好ましい。破砕物とは、破砕機などで破砕処理が行われた後の物品を意味し、様々な形状及び表面積がばらばらである。特に、破砕前の物品が複数の部品及び材質で構成される場合は、破砕により完全に部品毎、材質毎には分離されにくいという特徴を有する。
【0019】
例えば、対象物を電子・電気機器部品屑とした場合、典型的には基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他部品屑をそれぞれ単体部品として分離しておくことが好ましい。しかしながら、破砕による分離では、完全なる単体分離は難しく、一部の部品屑上に他の部品屑が残る場合がある。例えば、コンデンサーやICチップなどは破砕による分離によっても原形をとどめ、同じような形状及び大きさを有するものが多いが、基板、プラスチック、金属片、銅線屑などは、破砕されると形状も大きさもそれぞれ変化し、同一の形状及び大きさを有するものは殆どない。
【0020】
本実施形態では、対象物の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に認識枠を付与することにより、対象物の画像を抽出する。例えば、電子・電気機器部品屑を対象物とする場合、電子・電気機器部品屑を撮像した画像を用いて、例えば、基板、プラスチック、その他部品屑の3種類に分類する場合には、基板とプラスチック、その他の部品屑を分類して抽出するための分類対象物の構成要素及び色彩の情報を含む基本情報(以下「教師データ」ともいう)を与え、この基本情報に基づいて抽出処理を行う。
【0021】
ここで、基本情報に含まれる「構成要素」とは、それぞれの部品屑を構成する要素及び要素の位置関係を含む。例えば、電子・電気機器部品屑を対象物とする場合、基板に対する構成要素としては、基板の表面を覆う樹脂層、基板表面に形成された配線層、基板上に実装されるパーツなどの各要素と、その大きさ及び配置位置関係などを含む。基本情報に含まれる「色彩」とは、部品屑が備える色彩を示し、例えば、基板の場合は、基板表面に塗布された層の色、例えば緑色を含む。
【0022】
このような教師データの作製は、例えば、電子・電気機器部品屑を対象物とする場合は、電子・電気機器部品屑を予め手選別などにより仕分けし、基板、プラスチック、金属片などの夫々の画像を、解析装置及び解析装置が備える記憶装置に読み込ませる。教師データとして読み込まれる基板、プラスチック、金属片の形状及び面積の情報はそれぞれ代表例であり、形状も面積も異なり、一つとして同じものはない。教師データ数を多くするほど解析精度は高まる。
【0023】
対象物の画像を抽出する場合は、画像中の対象物の特徴と分類対象の教師データから導き出された夫々の特徴を比較し、確信度、即ち、教師データから導き出された特徴に対して対象物がどの程度特徴に合致しているかを示す度合を算出する。そして、確信度が一定値以上のものを分類対象として、分類対象毎に異なる認識枠が付与される。
【0024】
ところが、形状又は面積が異なる複数の対象物の場合、一の対象物に対して認識枠が複数設定される場合がある。例えば、基板上に金属片が残っていれば、基板としての認識枠と金属片としての金属枠の両方の認識枠が重なった状態で設定される場合がある。この場合、基板としての確信度も高く、金属片としての確信度も高く、認識枠の設定としては間違っていない。
【0025】
また、基板全体で一つの認識枠が設定されるほか、基板の一部に、教師データから導き出された基板としての合致がみられる領域に別の基板としての認識枠が更に付される場合がある。その結果、一の部品屑に対して複数の認識枠が付される場合がある。更に、基板には、回路が配置されていない部分もあるため、その部分がプラスチックとして認識枠が付される場合もある。このように、教師データの精度を高めて認識枠が適正に付与されたとしても、実際の部品屑の個数と認識枠の個数が大きくずれる場合がある。
【0026】
よって、本実施形態に係る対象物として、電子・電気機器部品屑等のような形状又は面積が少なくとも異なる物質を画像認識する場合には、対象物の認識情報を含む分類データの精度を機械学習などにより更に高めたとしても、比較的同一形状及び面積の物質を対象物として画像認識する場合に比べて誤認識が生じやすくなるという点から本実施形態に係る処理方法の適用において特に有利である。
【0027】
確信度については、確信度を低く設定すれば、複数の認識枠が設定される対象物が多くなる一方で、確信度を高く設定してしまうと、認識枠が設定されない対象物が増えてしまう恐れがある。確信度の設定は、対象物の性質に応じて当業者が適宜変更することが好ましい。
【0028】
以下に詳細に説明するが、本発明の実施に係る対象物の画像抽出処理方法によれば、認識枠が複数設定される場合、認識枠の重なりが大きいもの、具体的には、2個の認識枠の重なり部分の面積が2個の認識枠のうちの小さい認識枠の面積に対して、一定の基準値より大きい場合に、小さい認識枠を削除することで、認識枠の個数を実際の対象物の個数により近づけることができ、認識精度を高めることができる。
【0029】
本実施形態では、対象物については、電子・電気機器部品屑を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、多くの部品及び材質で構成される組立品の破砕物などに対しても適用され得ることは勿論である。
【0030】
(処理装置)
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置は、図1に示すように、電子・電気機器部品屑を撮像する撮像装置12と、電子・電気機器部品屑の組成を推定する解析手段を備える組成解析装置10と、組成解析装置10によって解析された組成解析結果に基づいて電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機13とを備える。
【0031】
本実施形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさには破砕されたものを指す。本実施形態では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0032】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0033】
電子・電気機器部品屑は、基板、筐体などに使われるプラスチック(合成樹脂類)、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他、等の複数の部品屑からなり、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、粒度50mm以下に破砕されている電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。
【0034】
組成解析装置10は、組成解析処理を処理するための処理装置100、各種制御に必要な情報を記憶する記憶装置110、入力装置120、表示装置130を備えることができる。処理装置100は、画像抽出手段140、分類手段101、計測手段102、解析手段103、運転条件生成手段104、変更情報生成手段105、位置情報出力手段106、機械学習手段107及び更新手段108を含むことができる。
【0035】
記憶装置110は、分類データ記憶手段111、解析情報記憶手段112、運転条件記憶手段113、位置情報記憶手段114を備えることができる。解析手段103はネットワーク11を通じて解析手段103の解析結果を、サーバ15或いはネットワーク11を介して接続された選別機13とは別の選別機14へ出力することができるようになっている。
【0036】
分類データ記憶手段111は、電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から画像解析の対象物となる複数の部品屑の画像を抽出して複数の部品屑毎に分類するための分類データが記憶されている。例えば、分類データ記憶手段111は、電子・電気機器部品屑の画像情報から、複数の部品屑、即ち、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他(コネクタ、フィルム状部品屑、被覆線屑等)の少なくとも3種類以上、好ましくは7種類以上に分類するための分類対象物の構成要素及び色彩を含む認識情報を備える基本情報(教師データ)が記憶されている。
【0037】
基板情報としては、基板を例に挙げると、基板を構成する樹脂基板の色彩や、表面に実装されたIC、配線等の形状、色彩、これらの相対的位置関係等の情報が記憶される。なお、電子・電気機器部品屑の中の特定の部品を上記の部品屑のいずれかに設定するための条件は、その後の選別処理目的に応じて、操作者が予め設定することができる。
【0038】
画像抽出手段140は、認識枠付与手段141及び補正手段142を備えることができる。認識枠付与手段141は、形状又は面積が異なる複数の対象物を撮像した画像の中から、対象物の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に特定の認識枠を付与することにより対象物の画像を抽出する。
【0039】
例えば、認識枠付与手段141は、対象物の構成要素及び色彩を含む認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に対して対象物と外接する最小外接図形を付与することができる。最小外接図形には、操作者の要望に応じて、矩形、平行四辺形、台形、正方形、多角形、超多面体等の種々の形状を採用することができるが、一般的には矩形が好適に用いられる。
【0040】
図2(a)は、対象物O1の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物O1に最小外接矩形からなる認識枠1、2が付された場合の画像例を示す。図2(a)においては、対象物O1の個数が1つであるにも関わらず認識枠が2つ付されている。補正手段142は、認識枠1、2が2個以上重なり合う対象物O1を画像の中から抽出し、抽出された対象物O1に含まれる任意の2個の認識枠1、2の重複部分の面積So(不図示)を算出する。そして、任意の2個の認識枠1、2のうち面積が小さい方の認識枠2の面積Ssに対する重複部分の面積So(不図示)の比(面積比So/Ss)が基準値P以上となる場合に、小さい方の認識枠2を削除する補正を実施する。
【0041】
例えば、図2(a)の場合、認識枠1、2の重複部分の面積Soは、2個の認識枠1、2のうち面積が小さい方の認識枠2の面積Ssと同様となるため、面積比So/Ssは1.0となる。ここで、基準値Pが0.90であると予め定められている場合、補正手段142は、面積比So/Ss≧基準値Pとなることから、認識枠2を削除する。これにより、対象物O1には適正な1個の認識枠1が付される結果となる。
【0042】
画像認識では、図2(a)に示すように、分類データの精度によらず、一の対象物O1に対して複数の認識枠1、2が付されてしまう場合がある。特に、電子・電気機器部品屑のような種々の形状及び構成を含む部品屑を対象とする場合、対象物O1を認識するための膨大な正解データ(教師データ)を分類データとして保持している場合においても一定の割合で誤認識が生じてしまう。
【0043】
本実施形態に係る補正手段142によれば、認識枠が2個以上重なり合う対象物O1を、認識枠を付した画像の中から抽出し、認識枠の数を本来の対象物O1の個数に基づいて適正な数に補正することができるため、誤認識を減らし、画像認識精度を高める認識枠を用いて、例えば画像中の対象物の組成等を解析する場合においてもより精度良く解析することができる。
【0044】
図2(b)に示すように、一の対象物O2に対して3つ以上の認識枠3~6が付されてしまう場合がある。この場合、補正手段は、認識枠3~6が3個以上重なり合う場合において、大小重なる認識枠3~6のうちの任意の認識枠3~6を2つ選択し、基準値Pに基づいて、小さい方の認識枠3~6を削除する処理を、削除する認識枠3~6が無くなるまで繰り返すことが好ましい。これにより、認識枠の数を本来の対象物O1の個数に合うように補正することができる。
【0045】
基準値Pは、画像中の対象物O1、O2の実際の個数Noと、分類データに基づいて付与された認識枠Ncとの比(No/Nc)で表される、対象物の誤認識率(FR)に基づいて設定されることが好ましい。分類データに基づいて付与された認識枠Ncには、図2(a)及び図2(b)に例示される認識枠1~6以外にも、対象物以外の物質が囲われた認識枠、画像の背景を誤って囲った認識枠等も含まれる。対象物の画像認識の誤認識が生じ得る具体的な割合に基づいて、認識枠の補正を行うように設定することで、補正手段142により、より精度良く認識枠の削除処理を行うことができる。
【0046】
基準値Pは画像解析対象とする対象物に応じて、操作者が適宜設定することが可能である。基準値Pは、0.75以上1.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.85以上1.0以下、更に好ましくは0.90以上1.0以下である。特に、本発明者の検討によれば、分類データを最適化したとしても、電子・電気機器部品屑の画像認識においては約10~15%程度の誤認識率が生じ得ることが分かった。そのため、電子・電気機器部品屑の中から複数の部品屑を抽出して認識枠1~6を付与する場合には、基準値Pを0.85以上、より好ましくは0.90以上とすることが好ましい。
【0047】
確信度によっても基準値Pの設定を調整できる。本実施形態では、確信度の規定値を超える物質に認識枠が付与されるが、確信度の規定値を高く設定しすぎると認識枠が適切に付与されず、誤認識が生じる場合がある。一方、確信度の規定値を低く設定しすぎると、今度は1の物質に複数の認識枠が付与される場合や、1の物質に対する認識枠の設定が重なることで誤認識が生じる場合がある。よって、確信度の規定値についても適正に設定する必要がある。よって、本実施形態では、誤認識率が5%以下となるように、部品屑の画像内の密度に応じて、確信度の規定値と基準値Pとの規定値を調整することが好ましい。例えば、電子・電気機器部品屑の部品密度が高く、部品屑同士で重なりが多くみられる場合には、基準値Pを0.9以上とすることが好ましく、部品密度が低く、一定以上の隙間を介して部品屑同士が配置されている場合には、基準値Pを0.7以上とすることが好ましい。
【0048】
分類手段101は、分類データ記憶手段111に記憶された分類データに基づいて、認識枠が付され、所定の補正処理が施された後の電子・電気機器部品屑を含む画像をそれぞれ異なる描画条件で複数の部品屑毎に分類する。例えば、電子・電気機器部品屑が撮像された画面の中から、基板、プラスチック及びその他部品屑の3種類に分類したい場合、分類手段101は、基板、プラスチック及びその他部品屑について、電子・電気機器部品屑を撮像した画像からそれぞれ別種類の対象物として抽出し、抽出された基板、プラスチック及びその他部品屑について、それぞれ異なる描画条件の認識枠を付与する。図3は分類手段101が画像中に存在する電子・電気機器部品屑を部品屑毎に特定して、部品屑毎にそれぞれ異なる色の認識枠で区分けした画像の例を示している。
【0049】
計測手段102は、分類手段が分類した複数の部品屑それぞれの画像の面積を計測する。計測手段102は、図3に示すように、それぞれ別の色枠で区分けされた部品屑の面積を、部品屑毎に、それぞれ解析情報記憶手段112に記憶された計測情報を用いて計測する。解析情報記憶手段112は、処理装置100による組成分析の解析に必要な情報、例えば、複数の部品屑の面積を計測するための情報、部品屑の重量比率の計算に必要な各部品屑毎の単位当たりの重量比率の情報等を記憶する。
【0050】
解析手段103は、複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を複数の部品屑の面積と乗算して複数の部品屑の重量比率を解析することにより、電子・電気機器部品屑の組成を推定する。複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量は、操業結果に応じて予め操作者により入力装置120等を介して設定しておくことができる。以下に限定されるものではないが、例えば、電子・電気機器部品屑を3種類に分類する場合、基板屑の想定重量を例えば2.0g/cm2、プラスチックの想定重量を1.5g/cm2、その他の部品を1.0g/cm2と設定することができる。
【0051】
解析手段103は、面積の他に、部品屑毎にその部品屑を構成する部品の個数(個)、上記の面積の計算結果と個数とに基づいて算出される平均粒径、重量比などの物理的特性も解析して表示装置130等に出力することができる。解析結果の一例を図4に示す。図3に示す解析結果では、基板が全体の70%を占め、次いでプラスチックが22%、銅線屑が6%、金属片が3%含まれることが分かる。
【0052】
運転条件生成手段104は、解析手段による複数の部品屑の重量比率の解析結果に基づいて、複数の部品屑を選別するための選別機の運転条件の情報を生成する。選別機としては、ピッキング、カラーソーター、メタルソーター、渦電流選別機、風力選別機、篩別機などの種々の選別機がある。例えば、図4に示す解析結果から、運転条件生成手段104は、例えば基板とプラスチックとを選別するカラーソーターの運転条件を生成し、生成した運転条件を運転条件記憶手段113へ格納する。運転条件記憶手段113へ格納された運転条件は、選別機13、14へ出力されて、選別機13、14が、出力された運転条件に応じて選別処理を行うことができる。変更情報生成手段105は、運転条件の変更条件を運転条件記憶手段113へ格納する。
【0053】
位置情報出力手段106は、電子・機器部品屑を撮像した画像において分類手段101が分類した複数の部品屑のそれぞれの位置情報を取得し、位置情報記憶手段114へ格納する。そして、複数の部品屑の中から特定の部品屑の位置を抽出してこれを選別するための特定の選別機13、14に対し、位置情報を出力する。例えば、基板と金属片はメタルソーター等の特定の選別機13、14では分離できないが、画像情報で個別に位置情報が得られれば、ピッキング機能を備える選別機13、14によってこれらを選別することができるようになる。
【0054】
機械学習手段107は、電子・電気機器部品屑を撮像した複数の画像または複数の部品屑を選別するための選別機13、14の選別結果に基づいて、分類手段101が参照する分類データを機械学習により処理する。
【0055】
機械学習においては、まず、電子・電気機器部品屑を撮像した画像に写る部品屑単体に対して認識枠が付される。例えば、画像内に写っている基板に対し、ペイントソフトで赤線により囲む等して認識枠が付され、機械学習手段107は、認識枠が付された部品屑を基板であると更に学習する。同様に、機械学習手段107は、数種類の色の認識枠でそれぞれ囲まれたプラスチック、金属片、銅線屑などに対し、それぞれ固有の部品屑であると学習する。このような方法で100枚以上、好ましくは数百枚~数千枚の学習データを用意し、学習データを機械学習手段107が処理することで、それぞれの部品屑の特徴を学習し、その分類の精度を向上させるように学習する。
【0056】
更新手段108は、機械学習手段107の学習結果に基づいて、分類手段101が部品屑を分類するために用いられる分類データを更新する。更新された分類データは、ネットワーク11を介して接続された選別機14やサーバ15へ出力されてもよい。
【0057】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置によれば、画像抽出手段140が備える認識枠付与手段141が、形状又は面積が異なる複数の対象物O1、O2を撮像した画像の中から、対象物O1、O2の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に認識枠1~6を付与し、補正手段142が、認識枠1~6が2個以上重なり合う対象物O1、O2を画像の中から抽出し、抽出された対象物O1、O2に含まれる任意の2個の認識枠1~6のうち不適切な認識枠を削除して、実際の対象物O1、O2の個数に合った数の認識枠1~6の数に補正することにより、画像認識による誤認識を低減し、認識精度を高めることができる。これにより、画像に付された認識枠を用いて、例えば対象物O1、O2の存在比や組成の解析を行う際に、より現実に即した適切な解析を行うことができるようになる。
【0058】
(対象物の画像抽出処理方法)
図5に示すフローチャートを用いて本発明の実施の形態に係る対象物の画像抽出処理方法の例を説明する。ステップS1において、画像抽出手段140が備える認識枠付与手段141が、分類データ記憶手段111に記憶された対象物の認識情報を含む分類データに基づいて、対象物に認識枠を付与する。認識枠の付与結果は記憶装置110内に格納される。
【0059】
ステップS2において、画像抽出手段140が備える補正手段142が、認識枠付与手段141によって認識枠が付与された画像の中から、認識枠が2個以上重なり合う対象物を抽出する。ステップS3において、補正手段142が、抽出した対象物は認識枠が3個以上重なり合うか否か判別する。認識枠が3個以上重なる場合はステップS4に進み、認識枠が重なり合う大小2つの認識枠を抽出し、ステップS5へ進む。補正手段142が、抽出した対象物に付与された認識枠が2個である場合はそのままステップS5へ進む。
【0060】
ステップS5において、補正手段142が、重なり合う大小2つの認識枠の重なり部分の面積Soと、2個の認識枠1、2のうち面積が小さい方の認識枠2の面積Ssとを算出する。算出結果は適宜記憶装置110へ記憶される。補正手段142は更に、2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠の面積Ssに対する重複部分の面積Soの比(面積比So/Ss)を予め設定された基準値Pと比較する。面積比So/Ss<基準値Pである場合はステップS8へ進む。面積比So/Ss≧基準値Pである場合はステップS7へ進む。
【0061】
ステップS7において、補正手段142は、2個の認識枠のうち面積が小さい方の認識枠を削除する。ステップS8において、抽出すべき、認識枠が2個以上重なる他の対象物があるか否かを判定し、抽出すべき他の対象物が存在する場合にはステップS2へ戻る。他の対象物が存在しない場合は処理を終了する。
【0062】
本発明の実施の形態に係る対象物の画像抽出処理方法によれば、対象物が一つである場合に誤認識により複数の認識枠が付された場合においても、認識枠の数を適正に補正することができるため、認識精度をより向上させることが可能な画像抽出処理方法が提供できる。
【0063】
(電子・電気機器部品屑を用いた対象物の画像抽出処理及び組成解析方法)
図1に示す電子・電気機器部品屑の処理装置を用いた対象物の画像抽出処理方法、組成解析方法及び電子・電気機器部品屑の処理方法の一例について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6のステップS11~S18は、図5のステップS1~S8と実質的に同様であるため、重複した記載を省略する。
【0064】
ステップS19において、図1の分類手段101が、撮像装置12により撮像された画像内に存在する部品屑を、分類データ記憶手段111に記憶された分類データに基づいて、部品屑毎(例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他の部品屑の7分類)に分類する。
【0065】
分類手段101による分類結果は、表示装置130等によって表示されることができる。操作者の確認がし易くなるように、分類結果はそれぞれ異なる描画条件、例えば色、枠の太さ、枠の線(点線、破線、二重線など)を変更するように表示する。表示装置130に表示される画像において、例えば、基板は赤枠で、プラスチックは青枠にする等して、部品屑毎に色の異なる認識枠が付される。このとき、図1の位置情報出力手段は、分類手段101によるこの分類結果に基づくこれらの位置情報を位置情報記憶手段114に格納することができる。
【0066】
例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他の部品屑の7分類に分類した場合、基板、銅線屑、コンデンサー及びICチップは有価物とし、金属片(アルミやSUS)及びプラスチックを製錬阻害物質と見なして選別するように、選別条件を適切化することで、電子・電気機器部品屑の分離効率やロス率、操業成績を数値化して管理することができる。
【0067】
更に、ステップS19において、計測手段102が、分類手段101が分類した複数の部品屑の総面積を計測する。計測手段102による各部品屑の面積の計測は、画像から面積を推定するための既知の面積検出ソフトを用いて計測することができる。ステップS20において、解析手段103は、複数の部品屑の単位面積当たりの想定重量を複数の部品屑の面積と乗算して複数の部品屑の重量比率を解析することにより、電子・電気機器部品屑の組成を推定する。
【0068】
例えば図3に示すように、解析手段103によって、撮像装置12が撮像した画像の中から複数の部品屑毎の平均の面積、個数、平均粒径、重量比などを数値化して解析することができるため、従来のように、手線別で電子・電気機器部品屑の原料組成を評価するよりも著しく迅速にその原料組成を数値化して把握することができる。
【0069】
ステップS21において、解析手段103が解析した原料解析結果に基づいて、選別処理が行われる。例えば、ステップS20で得られた組成解析結果に基づいて、原料を選別処理するための選別機の選択と、選別条件、選別順序等の操業条件が決定され、その操業条件に基づいて選別処理が行われる。
【0070】
このように、選別機13に対してそれぞれ本発明の実施の形態に係る組成解析装置による組成解析結果を活用することで、搬送中の電子・電気機器部品屑を連続的に撮影しながら、その画像データをリアルタイムに解析し、原料組成を解析することができる。
【0071】
従来、電子・電気機器部品屑の原料組成は、手選別によって評価し、その結果を選別処理の操業管理、運転条件の設定に反映させることが行われていたが、しかしながら、手選別により原料組成を把握する手法では、迅速な処理を行うことができなかった。
【0072】
本発明の実施の形態によれば、時々刻々とその組成が変化する電子・電気機器部品屑の中からその中の部品屑の組成を画像解析と所定の分類データに基づく分離によって、瞬時に判別し数値化することができるため、大量の電子・電気機器部品屑をより適切な条件で迅速に選別を行うことができる。
【0073】
また、表示装置130に解析結果として各原料種毎に色の異なる枠を付けて表示させることで操作者が認識しやすくなるため、組成解析装置の誤検知も認識しやすくなる。
【0074】
更に、各部品屑に対して付与された認識枠は、ステップS12~S18に示す各工程で補正を加えて適正化されることにより、画像認識における誤認識を少なくすることができ、解析精度を向上することができる。
【0075】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【実施例
【0076】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0077】
(実施例1)
電子・電気機器部品屑を対象として、本実施例に係る処理装置により複数の基板屑からなる部品屑を撮像した画像に認識枠を付与し、認識枠が2個以上重なり合う対象物を抽出した。認識枠が2個以上重なり合う対象物は、以下の3ケースに分類できることが分かった。
【0078】
(1)大きい枠Aの内側に小さい枠Bが完全に入っている場合(面積が枠A∩枠B/枠B=100%となる場合)
(2)大きい枠Aの内側に小さい枠Bが基準値(ここでは90%とする)以上100%未満入っている場合(面積が90%≦枠A∩枠B/枠B<100%となる場合)
(3)二つの枠が一部重なっている場合(面積が枠A∩枠B/枠B<90%となる場合)
【0079】
画像中の2個以上の認識枠が重なり合う基板屑を上記の(1)~(3)の態様で分類した結果について調べた結果、ケース(1)の割合は9.8%、ケース(2)の割合は58.5%を占め、ケース(1)及び(2)の合計で68.3%を占めることが分かった。また、画像中の基板屑の実際の個数Noを目視でカウントし、処理装置の画像認識処理によって付与された認識枠Ncとの比(No/Nc)で表される対象物の誤認識率は、13.8%であった。
【0080】
その後、大きい枠Aの内側に小さい枠Bが90%以上入っている認識枠(上述のケース(1)及び(2)に該当する認識枠)を本実施例に係る補正処理により削除したところ、処理装置の画像認識処理によって付与された認識枠Ncとの比(No/Nc)で表される対象物の誤認識率を4.4%まで下げることができた。
【0081】
(実施例2)
電子・電気機器部品屑を対象として、本実施例に係る処理装置により複数のプラスチックからなる部品屑を撮像した画像に認識枠を付与し、認識枠が2個以上重なり合う対象物を抽出し、実施例1と同様の3ケースに分類したところ、ケース(1)の割合は26.7%、ケース(2)の割合は43.3%を占め、ケース(1)及び(2)の合計で70.0%を占めることが分かった。また、画像中の基板屑の実際の個数Noを目視でカウントし、処理装置の画像認識処理によって付与された認識枠Ncとの比(No/Nc)で表される対象物の誤認識率は、12.3%であった。
【0082】
その後、大きい枠Aの内側に小さい枠Bが90%以上入っている認識枠(上述のケース(1)及び(2)に該当する認識枠)を本実施例に係る補正処理により削除したところ、処理装置の画像認識処理によって付与された認識枠Ncとの比(No/Nc)で表される対象物の誤認識率を3.7%まで下げることができた。
【0083】
このように、本実施例に係る処理方法によれば、画像認識により対象物に付与される認識枠の数を実際の対象物の数に近づけることができ、これにより、画像認識の認識精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
10…組成解析装置
11…ネットワーク
12…撮像装置
13,14…選別機
15…サーバ
100…処理装置
101…分類手段
102…計測手段
103…解析手段
104…運転条件生成手段
105…変更情報生成手段
106…位置情報出力手段
107…機械学習手段
108…更新手段
110…記憶装置
111…分類データ記憶手段
112…解析情報記憶手段
113…運転条件記憶手段
114…位置情報記憶手段
120…入力装置
130…表示装置
140…画像抽出手段
141…認識枠付与手段
142…補正手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6