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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】基板固定装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019110515
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020202352
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯島 信行
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 啓晴
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜二
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-061049(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152345(WO,A1)
【文献】特開2011-222978(JP,A)
【文献】特開2018-148162(JP,A)
【文献】特開2014-130908(JP,A)
【文献】特開2010-34256(JP,A)
【文献】特開2011-176275(JP,A)
【文献】特開2010-40644(JP,A)
【文献】特開2010-147095(JP,A)
【文献】特開2003-258072(JP,A)
【文献】特開2016-12608(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147931(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080262(WO,A1)
【文献】米国特許第8940115(US,B2)
【文献】特開2020-136536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
基板を吸着保持する静電吸着部材と、
前記ベースプレート上で前記静電吸着部材を支持する複数の支持部材と、
前記静電吸着部材を前記ベースプレートに接着する接着層と、
を有し、
前記複数の支持部材の各々は、前記ベースプレート及び前記静電吸着部材に直接接触し、
前記複数の支持部材の各々の弾性率は、前記接着層の弾性率より高く、
前記複数の支持部材の各々の材料は樹脂であり、
前記複数の支持部材の各々の前記静電吸着部材に接触する面は平坦であることを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記支持部材の弾性率は、前記接着層の弾性率の10倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記静電吸着部材は、静電チャックを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記静電吸着部材は、前記ベースプレートと前記静電チャックとの間に発熱部を有することを特徴とする請求項3に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記ベースプレートは、
金属基体と、
前記金属基体の前記静電吸着部材側に設けられた樹脂層と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記支持部材の熱伝導率と前記接着層の熱伝導率との差は、2W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記支持部材の熱膨張率は、前記接着層の熱膨張率の0.1倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記複数の支持部材の前記静電吸着部材に接触する面は、前記複数の支持部材の間で面一であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項9】
前記樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項10】
基板を吸着保持する静電吸着部材とベースプレートとの間に、半硬化状態の接着層と、前記ベースプレート上で前記静電吸着部材を支持する複数の支持部材と、を設ける工程と、
前記静電吸着部材及び前記ベースプレートを加熱しながらプレスして前記接着層を硬化させる工程と、
を有し、
前記複数の支持部材の各々は、前記ベースプレート及び前記静電吸着部材に直接接触し、
前記複数の支持部材の各々の弾性率は、前記接着層の弾性率より高く、
前記複数の支持部材の各々の材料は樹脂であり、
前記複数の支持部材の各々の前記静電吸着部材に接触する面は平坦であることを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【請求項11】
前記支持部材の弾性率は、前記接着層の弾性率の10倍以上であることを特徴とする請求項10に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項12】
前記支持部材の熱伝導率と前記接着層の熱伝導率との差は、2W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項10又は11に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項13】
前記支持部材の熱膨張率は、前記接着層の熱膨張率の0.1倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項10乃至1のいずれか1項に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項14】
前記接着層を硬化させる工程の後に、前記静電吸着部材の吸着面を研磨する工程を有することを特徴とする請求項10乃至1のいずれか1項に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項15】
前記複数の支持部材の前記静電吸着部材に接触する面を、前記複数の支持部材の間で面一とすることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項16】
前記樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の基板固定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板固定装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板固定装置の製造方法では、接着層を用いて、静電吸着部材をベースプレートに接着している。この接着の際には、ベースプレート、接着層及び静電吸着部材の構造体を、静電吸着部材の吸着面が定盤に接触するようにして定盤上に載置し、ベースプレートの下面に荷重を印加する。また、平面視で接着層の外側で、ベースプレートと定盤との間にスペーサを設け、ベースプレートの下面と静電吸着部材の吸着面とが互いに平行になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-183143号公報
【文献】特開2016-012608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法で製造した基板固定装置では、静電吸着部材の吸着面に十分な均熱特性が得られないことがある。つまり、静電吸着部材の吸着面の温度にばらつきが生じることがある。
【0005】
本開示は、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上することができる基板固定装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、ベースプレートと、基板を吸着保持する静電吸着部材と、前記ベースプレート上で前記静電吸着部材を支持する複数の支持部材と、前記静電吸着部材を前記ベースプレートに接着する接着層と、を有し、前記複数の支持部材の各々は、前記ベースプレート及び前記静電吸着部材に直接接触し、前記複数の支持部材の各々の弾性率は、前記接着層の弾性率より高く、前記複数の支持部材の各々の材料は樹脂であり、前記複数の支持部材の各々の前記静電吸着部材に接触する面は平坦である基板固定装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図2】実施形態に係る基板固定装置の製造方法を例示する図(その1)である。
図3】実施形態に係る基板固定装置の製造方法を例示する図(その2)である。
図4】実施形態に係る基板固定装置の製造方法を例示する図(その3)である。
図5】実施形態に係る基板固定装置の製造方法を例示する図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、従来の基板固定装置において静電吸着部材の吸着面に温度のばらつきが生じる原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、静電吸着部材の厚さに偏りが生じていることがあり、そのような場合、接着層の厚さの面内均一性が低下し、静電吸着部材の吸着面に温度がばらつくことが明らかになった。
【0010】
本開示は、このような知見に基づきなされたものであって、静電吸着部材の厚さに偏りが生じている場合でも、接着層の厚さの面内均一性を向上し、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上する。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
[基板固定装置の構造]
図1は、実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。図1を参照するに、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、支柱構造体21と、静電吸着部材50とを有している。
【0013】
ベースプレート10は、静電吸着部材50を搭載するための部材であり、例えば、金属プレート11と、金属プレート11上の樹脂層12とを有する。金属プレート11の厚さは、例えば、20mm~50mm程度とすることができる。金属プレート11は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。金属プレート11に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電吸着部材50上に吸着されたウェハ等の基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0014】
金属プレート11の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させ金属プレート11を冷却することで、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができる。金属プレート11には、水路15の他に、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0015】
樹脂層12は、基板固定装置1の熱抵抗の調整に用いられる。樹脂層12が設けられていなくてもよい。
【0016】
静電吸着部材50は、発熱部30と、静電チャック40とを有し、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。
【0017】
発熱部30は、絶縁層31と、絶縁層31に内蔵された発熱体32とを有している。発熱体32の周囲は、絶縁層31に被覆され、外部から保護されている。発熱体32としては、圧延合金を用いることが好ましい。圧延合金を用いることにより、発熱体32の厚さのばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、発熱体32は、必ずしも絶縁層31の厚さ方向の中央部に内蔵される必要はなく、要求仕様に応じて絶縁層31の厚さ方向の中央部よりもベースプレート10側又は静電チャック40側に偏在してもよい。
【0018】
発熱体32の比抵抗は、10μΩ/cm~70μΩ/cmであることが好ましく、10μΩ/cm~50μΩ/cmであることが更に好ましい。比抵抗が100μΩ/cm程度であるNiCr系の発熱体が使用される場合、20Ω~50Ωの配線設計では、配線幅が1mm~2mm、厚さが50μm程度となり、発熱体のパターンのファイン化が困難である。発熱体32の比抵抗をNiCr系の発熱体の比抵抗よりも低い10μΩ/cm~70μΩ/cmとすることにより、上記と同様の20Ω~50Ωの配線設計において、発熱体32のパターンのファイン化が可能となる。なお、比抵抗が10μΩ/cmよりも小さいと発熱性が低下するため好ましくない。
【0019】
発熱体32に用いると好適な具体的な圧延合金としては、例えば、CN49(コンスタンタン)(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン (Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等を挙げることができる。なお、CN49(コンスタンタン)の比抵抗は約50μΩ/cm、ゼラニンの比抵抗は約29μΩ/cm、マンガニンの比抵抗は約44μΩ/cmである。発熱体32の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、60μm以下とすることが好ましい。
【0020】
絶縁層31としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層31の熱伝導率は3W/(m・K)以上とすることが好ましい。絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。また、絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。また、絶縁層31の厚さは100μm~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0021】
なお、発熱体32と絶縁層31との高温下での密着性を向上するため、発熱体32の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体32の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体32の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長が355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0022】
静電チャック40は、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。静電チャック40の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8インチ、12インチ、又は18インチ程度とすることができる。
【0023】
静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、基体41と、静電電極42とを有している。静電チャック40は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック40は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0024】
基体41は誘電体であり、基体41としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体41の厚さは、例えば、1mm~10mm程度、基体41の比誘電率は、例えば、1kHzの周波数で9~10程度とすることができる。静電チャック40と発熱部30の絶縁層31とは直接接合されている。発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上することができる。発熱部30と静電チャック40とを接着剤で接合する基板固定装置の耐熱温度は150℃程度であるが、基板固定装置1では耐熱温度を200℃程度とすることができる。
【0025】
静電電極42は、薄膜電極であり、基体41に内蔵されている。静電電極42は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、ウェハ等の基板との間に静電気による吸着力が発生し、静電チャック40上に基板を吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極42に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極42は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極42の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0026】
接着層20は、発熱部30をベースプレート10に接着している。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、0.1mm~3mm程度とすることができる。接着層20の熱伝導率は2W/(m・K)以上であることが好ましい。接着層20は、1層から形成してもよく、複数層から形成してもよい。例えば、熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、アルミニウム製の金属プレート11との熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0027】
支柱構造体21は、ベースプレート10上で静電吸着部材50を支持する。支柱構造体21の弾性率は接着層20の弾性率より高く、支柱構造体21の弾性率は接着層20の弾性率の10倍以上であることが好ましい。例えば、支柱構造体21の弾性率は数百MPa以上であり、接着層20の弾性率は数十MPa以下である。支柱構造体21は、ベースプレート10と静電吸着部材50との間のスペーサとして機能し、接着層20の厚さの面内均一性を向上することができる。支柱構造体21は支持部材の一例である。
【0028】
[基板固定装置の製造方法]
図2図5は、実施形態に係る基板固定装置の製造方法を例示する図である。図2図5を参照しながら説明する。なお、図2(a)~図3(b)及び図5(a)は、図1とは上下を反転した状態で描いている。
【0029】
まず、図2(a)に示す工程では、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により、基体41に静電電極42を内蔵する静電チャック40を作製する。なお、絶縁樹脂フィルム311(図2(b)参照)との密着性を向上するために、静電チャック40の絶縁樹脂フィルム311がラミネートされる面にブラスト処理等を施し、粗化してもよい。このようにして形成される基体41の厚さに偏りが生じることがある。
【0030】
次に、図2(b)に示す工程では、静電チャック40上に、絶縁樹脂フィルム311を直接ラミネートする。絶縁樹脂フィルム311は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム311は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311は静電チャック40上に仮固定される。
【0031】
絶縁樹脂フィルム311としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率は3W/(m・K)以上とすることが好ましい。絶縁樹脂フィルム311にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率を向上させることができる。また、絶縁樹脂フィルム311のガラス転移温度は250℃以上とすることが好ましい。また、熱伝導性能を高める(熱伝導速度を速める)観点から、絶縁樹脂フィルム311の厚さは60μm以下とすることが好ましく、絶縁樹脂フィルム311の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0032】
次に、図2(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に金属箔321を配置する。金属箔321の材料としては、発熱体32の材料として例示した圧延合金を用いることができる。金属箔321の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、60μm以下とすることが好ましい。金属箔321は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311上に仮固定される。
【0033】
なお、絶縁樹脂フィルム311上に配置する前に、金属箔321の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)を粗化しておくことが好ましい。もちろん、金属箔321の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、金属箔321の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長が355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0034】
また、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の必要な領域を選択的に粗化することができる。そこで、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の全領域に対して粗化を行う必要はなく、最低限、発熱体32として残す領域に対して粗化を行えば足りる。つまり、エッチングで除去される領域に対してまで粗化を行う必要はない。
【0035】
次に、図2(d)に示す工程では、金属箔321をパターニングし、発熱体32を形成する。具体的には、例えば、金属箔321上の全面にレジストを形成し、レジストを露光及び現像し、発熱体32として残す部分のみを被覆するレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンに被覆されていない部分の金属箔321をエッチングにより除去する。金属箔321を除去するエッチング液としては、例えば、塩化第二銅エッチング液や塩化第二鉄エッチング液等を用いることができる。
【0036】
その後、レジストパターンを剥離液により剥離ことにより、絶縁樹脂フィルム311上の所定位置に発熱体32が形成される(フォトリソグラフィ法)。フォトリソグラフィ法により発熱体32を形成することにより、発熱体32の幅方向の寸法のばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、エッチングにより形成された発熱体32の断面形状は、例えば、略台形状とすることができる。この場合、絶縁樹脂フィルム311に接する面と、その反対面との配線幅の差は、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。発熱体32の断面形状をシンプルな略台形状とすることにより、発熱分布を改善することができる。
【0037】
次に、図3(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に、発熱体32を被覆する絶縁樹脂フィルム312をラミネートする。絶縁樹脂フィルム312は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム312の材料は、例えば、絶縁樹脂フィルム311と同様とすることができる。但し、絶縁樹脂フィルム312の厚さは、発熱体32を被覆できる範囲内で適宜決定することができ、必ずしも絶縁樹脂フィルム311と同じ厚さにする必要はない。
【0038】
次に、図3(b)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311及び312を静電チャック40側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム311及び312を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、絶縁樹脂フィルム311及び312が一体化して絶縁層31となり、発熱体32の周囲が絶縁層31に被覆された発熱部30が形成され、発熱部30の絶縁層31と静電チャック40とが直接接合される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム311及び312の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。
【0039】
なお、絶縁樹脂フィルム311及び312を静電チャック40側に押圧しながら加熱硬化させることにより、発熱体32の有無の影響による絶縁層31の上面(静電チャック40と接しない側の面)の凹凸を低減して平坦化することができる。絶縁層31の上面の凹凸は、7μm以下とすることが好ましい。絶縁層31の上面の凹凸を7μm以下とすることにより、次工程で絶縁層31と接着層20との間に気泡を巻き込むことを防止できる。つまり、絶縁層31と接着層20との間の接着性が低下することを防止できる。
【0040】
このようにして、静電吸着部材50を作製することができる。
【0041】
図4(a)に示すように、静電吸着部材50とは別に、予め水路15等を形成した金属プレート11を準備し、金属プレート11上に樹脂層12を形成することで、ベースプレート10を作製する。次に、ディスペンサ60等を用いて、樹脂層12上の支柱構造体21を形成する予定の位置に、支柱構造体21の材料の樹脂からなる柱状体22を半硬化状態(B-ステージ)で形成する。次いで、オーブン等を用いて、柱状体22を硬化温度以上に加熱して硬化させる。柱状体22は支柱構造体21より高く形成する。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、研磨器等を用いて、支柱構造体21の高さになるまで柱状体22の先端を研磨する。この結果、支柱構造体21が得られる。
【0043】
次に、図4(c)に示すように、ベースプレート10上に接着層20を半硬化状態(B-ステージ)で形成する。そして、静電吸着部材50を上下反転させ、発熱部30が接着層20に対向するようにして、静電吸着部材50を接着層20上に配置する。
【0044】
次に、図5(a)に示すように、図4(c)に示す構造体を定盤70上に載置する。この時、図4(c)に示す構造体を上下反転させ、静電チャック40の上面が定盤70の上面に対向するようにして、図4(c)に示す構造体を定盤70上に載置する。そして、金属プレート11の下面に荷重を印加しながら、オーブン等を用いて、接着層20を硬化温度以上に加熱して硬化させる。つまり、静電吸着部材50及びベースプレート10を加熱しながらプレスして接着層20を硬化させる。
【0045】
次に、荷重を開放し、図5(b)に示すように、静電チャック40の上面(吸着面)を研磨することで、静電チャック40の上面を金属プレート11の下面と平行にする。
【0046】
このようにして、基板固定装置1を製造することができる。
【0047】
本実施形態では、接着層20の硬化の際に、支柱構造体21がベースプレート10と静電吸着部材50との間のスペーサとして機能し、優れた接着層20の厚さの面内均一性を得ることができる。従って、静電チャック40の吸着面における温度のばらつきを抑制して優れた均熱特性を得ることができる。
【0048】
支柱構造体21の数は限定されないが、例えば、基板固定装置1の厚さ方向に垂直な面内で、少なくとも、同一直線上にない3点に設けられている。複数の支柱構造体21の間で高さは均一である。基板固定装置1の厚さ方向に垂直な面内で支柱構造体21の占める割合が高いほど、接着層20の厚さの均一性を高め、優れた均熱特性を得ることができる。その一方で、基板固定装置1の厚さ方向に垂直な面内で支柱構造体21の占める割合が低いほど、接着層20の占める割合が高くなり、ベースプレート10と静電吸着部材50との間の接着力が強くなる。基板固定装置1の厚さ方向に垂直な面内で支柱構造体21の占める割合は、これらを加味して決定されることが好ましい。
【0049】
樹脂層12、接着層20及び支柱構造体21の材料は限定されない。樹脂層12、接着層20及び支柱構造体21の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられる。これらの複合材料が、樹脂層12、接着層20及び支柱構造体21に用いられてもよい。上述のように、支柱構造体21の弾性率が接着層20の弾性率より高い。従って、支柱構造体21の樹脂の平均分子量が、接着層20の樹脂の平均分子量より高いことが好ましい。また、支柱構造体21の樹脂の架橋点が、接着層20の樹脂の架橋点より多いことが好ましい。また、接着層20及び支柱構造体21にフィラーが含まれていてもよく、支柱構造体21が、接着層20よりフィラーを多く含むことが好ましい。支柱構造体21がフィラーを含有し、接着層20がフィラーを含有しなくてもよい。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0050】
また、樹脂層12の弾性率が接着層20の弾性率より高いことが好ましい。接着層20の厚さを均一に保つためである。樹脂層12の樹脂の平均分子量が、接着層20の樹脂の平均分子量より高いことが好ましい。また、樹脂層12の樹脂の架橋点が、接着層20の樹脂の架橋点より多いことが好ましい。また、樹脂層12にフィラーが含まれていてもよく、樹脂層12が、接着層20よりフィラーを多く含むことが好ましい。樹脂層12がフィラーを含有し、接着層20がフィラーを含有しなくてもよい。
【0051】
支柱構造体21の熱伝導率と接着層20の熱伝導率と差は小さいことが好ましく、例えば2W/(m・K)以下であり、より好ましくは1W/(m・K)以下である。吸着面においてより優れた均熱特性を得るためである。樹脂層12の熱伝導率は限定されず、基板固定装置1に求められる熱伝導率に応じて適宜樹脂層12の材料を選択することができる。
【0052】
支柱構造体21の熱膨張率は、接着層20の熱膨張率と同程度であることが好ましく、例えば接着層20の熱膨張率の0.1倍以上10倍以下である。加熱時の優れた形状安定性を得るためである。
【0053】
金属プレート11の表面がアルミナ溶射等により絶縁処理されていてもよい。絶縁処理により、金属プレート11と静電電極42との間の放電をより確実に抑制することができる。
【0054】
絶縁層31が設けられず、発熱体32が基体41に内蔵されていてもよい。また、発熱部30が設けられなくてもよい。これらの場合、接着層20は、基体41をベースプレート10に接着する。
【0055】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 基板固定装置
10 ベースプレート
11 金属プレート
12 樹脂層
20 接着層
21 支柱構造体
30 発熱部
40 静電チャック
50 静電吸着部材
図1
図2
図3
図4
図5