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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】アンカー部およびクランプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20230808BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230808BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20230808BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
F16B19/00 Q
B60R16/02 623B
F16L3/08 E
H02G3/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058374
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156383
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】江崎 敢
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和志
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-002199(JP,U)
【文献】特開2000-197242(JP,A)
【文献】特開2017-195725(JP,A)
【文献】特開2014-052000(JP,A)
【文献】特開2011-122646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00
B60R 16/02
F16L 3/08
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着箇所に設けた長円状のアンカー孔に挿入し、被装着部材を取付ける取付け部材に設けられたアンカー部であって、
台座部と、
前記台座部に立設され、前記アンカー孔に挿入する挿入軸部と、
前記挿入軸部の先端側から基端側に向かって、前記挿入軸部から徐々に離間するとともに、弾性を有する一対の係止アーム部とで構成され、
取り付け状態において前記アンカー孔に係止する基部側において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する基部仮想形状が、前記アンカー孔の長円状に対応する形状であり、
前記アンカー孔へ挿入する先端部において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する先端部仮想形状が、長円状の前記アンカー孔の短軸方向の長さより短い径の略円形状であり、
前記先端部から基端部の間において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する仮想形状が、前記先端部仮想形状から前記基部仮想形状まで徐々に変化する仮想テーパ形状である
アンカー部。
【請求項2】
一対の前記係止アーム部は、前記挿入軸部において、長円状の前記アンカー孔の長軸方向に配置された
請求項1に記載のアンカー部。
【請求項3】
前記基部仮想形状と前記先端部仮想形状とを上面及び下面とし、
前記先端部から前記基端部の間において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する仮想形状によって形成される錐台状の仮想立体形状における外周面に沿うように螺旋状のリブが形成された
請求項2に記載のアンカー部。
【請求項4】
前記取付け部材は、前記被装着部材を取り付ける取付部と、
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の前記アンカー部とで構成した
クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、装着箇所に設けた長円状のアンカー孔に挿入し、例えば、ワイヤーハーネスなどの被装着部材を取付ける取付け部材に設けられたアンカー部およびクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のボディパネル等の装着箇所に設けたアンカー孔に挿入し、ワイヤーハーネス等の被装着部材を取付けるクランプのアンカー部が知られている。
上述のアンカー部は、装着箇所としてのボディパネルの一側面に当接する台座部と、この台座部に立設されて前記アンカー孔に挿入する挿入軸部と、この挿入軸部の先端側から挿入軸部の基端側に向けて、前記挿入軸部から徐々に離間する一対の係止アーム部とを備えている。
【0003】
前記一対の係止アーム部は弾性を有し、挿入軸部および係止アーム部を前記アンカー孔に挿入した時、ボディパネル等の装着箇所の一側面には前記台座部が当接する。また、他側面には一対の係止アーム部が弾性力により圧接することで、アンカー孔の孔縁を一側面と他側面との両側から挟持して、アンカー部を確実にアンカー孔の孔縁に固定支持するものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、次のような構造のアンカー部を備えたクランプが開示されている。
すなわち、該特許文献1に開示されたアンカー部は、長円状のアンカー孔の形状に対応した長円状かつ筒状の挿入軸部と、この挿入軸部の長軸方向の側面部位に外方へ突出するように形成された係止片とを合成樹脂にて一体形成したものであり、アンカー孔に対して安定して取付けることができるとされている。
【0005】
しかしながら、前記アンカー孔の形状が長円状であり、これに対応してアンカー部も長円状に形成されているため、アンカー孔の長円状の向きに対してアンカー部の長円状の向きを揃えない限り、アンカー部をアンカー孔に対して挿入することが不可であり、アンカー部の挿入に際しては、アンカー部の向きをアンカー孔の向きに符合させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-153049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、長円状のアンカー孔の向きと、アンカー部の向きが異なっていても、容易にアンカー部の挿入ができ、挿入操作性の向上を図ることができるアンカー部及びクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、装着箇所に設けた長円状のアンカー孔に挿入し、被装着部材を取付ける取付け部材に設けられたアンカー部であって、台座部と前記台座部に立設され、前記アンカー孔に挿入する挿入軸部と、前記挿入軸部の先端側から基端側に向かって、前記挿入軸部から徐々に離間するとともに、弾性を有する一対の係止アーム部とで構成され、取り付け状態において前記アンカー孔に係止する基部側において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する基部仮想形状が、前記アンカー孔の長円状に対応する形状であり、前記アンカー孔へ挿入する先端部において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する先端部仮想形状が、長円状の前記アンカー孔の短軸方向の長さより短い径の略円形状であり、前記先端部から基端部の間において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する仮想形状が、前記先端部仮想形状から前記基部仮想形状まで徐々に変化する仮想テーパ形状であることを特徴とする。
上述の装着箇所は車両のボディパネルに設定してもよく、上述の被装着部材はワイヤーハーネスに設定してもよい。
【0009】
この発明により、前記アンカー部の前記先端部仮想形状がアンカー孔の短軸方向の長さよりも短い外径の略円形状であり、かつ、前記先端部仮想形状から基部仮想形状まで徐々に変化する仮想テーパ形状となっている。このため、長円状のアンカー孔の向きと、アンカー部の向きとが異なっていても、アンカー部を押し込むことで、アンカー部は仮想テーパ形状に沿って徐々に向きが揃うように変位し、互いの向きが一致するようにアンカー部をアンカー孔に対して挿入することができる。
したがって、アンカー部の挿入操作性の向上を図ることができる。
【0010】
この発明の態様として、一対の前記係止アーム部は、前記挿入軸部において、長円状の前記アンカー孔の長軸方向に配置されてもよい。
この発明により、アンカー孔の長軸方向の長いスパンに対し、前記係止アーム部の弾性力により、台座部と係止アーム部との間にアンカー孔の孔縁を弾性挟持するので、アンカー部の支持安定性の向上を図ることができる。
【0011】
この発明の態様として、前記基部仮想形状と前記先端部仮想形状とを上面及び下面とし、前記先端部から前記基端部の間において前記係止アーム部と前記挿入軸部とで構成する仮想形状によって形成される錐台状の仮想立体形状における外周面に沿うように螺旋状のリブが形成されてもよい。
この発明により、前記螺旋状のリブにより、長円状のアンカー孔に対して、係止アーム部と挿入軸部とが案内されることで、これら両者(すなわち、挿入軸部と係止アーム部)が、より一層挿入しやすくなる。
【0012】
この発明の態様として、前記取付け部材は、前記被装着部材を取り付ける取付部と、前記アンカー部とで構成したクランプであってもよい。
上述の取付部は、ワイヤーハーネスを取り付けるバンドと、バンドを固定するバックルとで構成してもよい。
この発明により、前記発明の効果を発揮するクランプを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、長円状のアンカー孔の向きと、アンカー部の向きが異なっていても、容易にアンカー部の挿入ができ、アンカー部の挿入操作性の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のアンカー部を備えたバンドクランプの外観斜視図。
図2図1の要部の拡大斜視図。
図3】アンカー部を備えたバンドクランプの正面図。
図4】アンカー部を備えたバンドクランプの右側面図。
図5図4のA-A線に沿ってアンカー部のアンカー孔に対する取付状態を示す断面図。
図6】アンカー部を備えたバンドクランプの底面図。
図7】アンカー部を備えたクランプの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図面はアンカー部30、および、アンカー部30を備えたクランプの一例としてのバンドクランプ20を示している。詳しくは、図1は本発明のアンカー部30を備えたバンドクランプ20の外観斜視図、図2図1の要部の拡大斜視図、図3はアンカー部30を備えたバンドクランプ20の正面図、図4はアンカー部30を備えたバンドクランプ20の右側面図である。また、図5図4のA-A線に沿ってアンカー部30のアンカー孔11に対する取付状態を示す断面図、図6はアンカー部30を備えたバンドクランプ20の底面図である。なお、図中、矢印Xはアンカー孔11の短軸方向を示し、矢印Yはアンカー孔11の長軸方向を示す。
【0016】
図1に示すように、この実施形態のバンドクランプ20は、装着箇所としての車両のボディパネル10に設けられた長円状のアンカー孔11に対して、被装着部材であるワイヤーハーネス12を取付けるものである。
ワイヤーハーネス12は、その端部がバッテリまたは車載電子機器類に接続されるものである。
【0017】
図1図3図4図5に示すように、バンドクランプ20は、ワイヤーハーネス12の外周に巻き付ける帯状のバンド21と、このバンド21を固定するバックル22とを有する取付部23を備えている。
同図に示すように、バックル22は、上壁22aと、下壁22bと、左右一対の側壁22c,22dとを有すると共に、これらの各壁22a,22b,22c,22dで囲繞されたバンド挿通孔22e(図3図5参照)がバックル22の正面側から背面側にかけて貫通形成されている。
【0018】
一方、図4に示すように、バンド21の基端部21aはバンド挿通孔22eの内壁上面部に固定されている。バンド21はその基端部21aから自由端側をバンド挿通孔22eの背面側へ導出し、バンド21をワイヤーハーネス12の外周に巻き付けた後、バンド21をバンド挿通孔22eの正面側から基端部21a下側に導入して、バンド21の先端部21bをバンド挿通孔22eの背面側へ再び導出している。
【0019】
バンド21においてワイヤーハーネス12基端巻き付け時に外周となる側には、鋸歯状かつ複数の係合部(図示せず)がバンド21の長手方向に連続して形成されている。また、バックル22の下壁22bには、係合部に係合するバンド係止部(図示せず)がバンド挿通孔22e内に臨設するように形成されている。
【0020】
そして、バンド21の先端部21bを図4の矢印a方向に引っ張って、バンド21でワイヤーハーネス12を締め付け固定すると、バンド21側の鋸歯状の係合部に対してバックル22側のバンド係止部が係入して、ワイヤーハーネス12の締め付け状態を保持するように構成されている。
【0021】
図3図4に示すように、バンド21はバックル22の下壁22bに対して、その一方側(図3図4の上方側)に位置するものである。
図3図4に示すように、バックル22の下壁22bの他方側(図3図4の下方側)には、ディスタンスピース部24(いわゆるスペーサ)を介して左右一対の台座部25を設けている。この台座部25はアンカー部30の一部を構成するものである。
【0022】
アンカー部30は、図1に示すボディパネル10に設けた長円状のアンカー孔11に挿入されて、ワイヤーハーネス12を取付ける取付部23をボディパネル10に固定するためのものである。
図3に示すように、アンカー部30は、台座部25と、この台座部25に対して他端側に向かって立設されてアンカー孔11に挿入する挿入軸部26と、この挿入軸部26の先端26a側(図3の下端側)から基端26b側(図3の上端側)に向かって、挿入軸部26から徐々に離間する一対の係止アーム部27,27とで構成されている。
【0023】
図3図5に示すように、左右一対の台座部25はディスタンスピース部24の中央部から他方側かつ外方に傾斜方向に延びており、左右一対の各台座部25における他方側の面の開角は145度に設定されており、左右一対の各台座部25における一方側の面の開角は113度に設定されている。
つまり、これら左右一対の台座部25は先端25a側の肉厚に対して根元側の肉厚が大きく設定されており、これにより台座部25の剛性を確保している。なお、開角は上述の数値に限定されるものではない。
【0024】
図1に示すアンカー孔11の短軸方向Xの長さをL1とし、長軸方向Yの長さをL2とするとき、左右一対の台座部25における先端25a,25a相互間の離間距離が、アンカー孔11の長軸方向Yの長さL2よりも充分長くなるように形成されている。
【0025】
また、左右一対の台座部25の幅W(アンカー孔11の短軸方向Xに相当する方向の幅W、図6参照)は、アンカー孔11の短軸方向Xの長さL1と同等またはアンカー孔11の短軸方向Xの長さL1よりも大きく形成されている。
【0026】
これにより、アンカー孔11に対するアンカー部30の取り付け状態において、図5に示すように、台座部25の先端25aが長円状のアンカー孔11における長軸方向Yの孔縁周辺部の一方側の面に当接するように構成されている。
【0027】
挿入軸部26は、図5に示すように、台座部25に立設されたもので、挿入軸部26は、台座部25の中央部から他方側に向けて延びている。また、挿入軸部26は、図4に示すように、少なくとも、アンカー孔11の短軸方向Xと対応する方向において、先端26a側の寸法に対して、基端26b側の寸法が大きくなるように形成されている。
【0028】
一対の係止アーム部27,27は、アンカー部30を形成する樹脂固有の弾性力を有している。また、この実施形態において、これらの各係止アーム部27,27は、挿入軸部26において、長円状のアンカー孔11の長軸方向Yに配置されている。
【0029】
図3図5に示すように、係止アーム部27の先端27aは、挿入軸部26の先端26a側と一体化されており、この係止アーム部27はその先端27aから遊端27bにかけて、挿入軸部26から徐々に離間するように構成されている。
【0030】
これにより、アンカー孔11に対するアンカー部30の取り付け状態において、図5に示すように、左右一対の係止アーム部27の遊端27bが長円状のアンカー孔11における長軸方向Yの孔縁の他方側の面に圧接するように構成されている。
また、アンカー孔11の長軸方向Yの長いスパンに対し、係止アーム部27の弾性力により、台座部25と係止アーム部27との間にアンカー孔11の孔縁を弾性挟持して、アンカー部30の支持安定性を図るように構成したものである。さらに、左右の各係止アーム部27は、図1図6に示すように外方側へ膨出する円弧形状に形成されている。
【0031】
図2図1の要部の拡大斜視図であって、図2に示すように、アンカー部30の取り付け状態において、図1のアンカー孔11に係止する基部側(図2の上側)において左右一対の係止アーム部27の遊端27bと挿入軸部26の基端26b側とで構成する基部仮想形状αが、アンカー孔11の長円状に対応する長円状に形成されている。
【0032】
図2に示すように、アンカー孔11へ挿入する先端部(図2の下部)において、左右一対の係止アーム部27の先端27aと挿入軸部26の先端26a側とで構成する先端部仮想形状βが、図1に示す長円状のアンカー孔11の短軸方向Xの長さL1よりも短い外径の略円形状に形成されている。
【0033】
図2に示すように、アンカー部30の先端部から基端部の間において、係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する仮想形状が、先端部仮想形状βから基部仮想形状αまで徐々に変化する仮想テーパ形状γに形成されている。
つまり、仮想テーパ形状γは、他方側(先端側)の略円形状から一方側(基端側)の長円状に次第に変化するように形成されている。
【0034】
ここで、アンカー孔11の短軸方向Xに対応する挿入軸部26の正面および背面の外面形状は、先端26aから基端26bにかけて円弧形状から平面形状になるように漸次変化している。
同様に、アンカー孔11の長軸方向Yに対応する挿入軸部26の左側面および右側面の外面形状も、先端26aから基端26bにかけて円弧形状から平面形状になるように漸次変化している。
【0035】
このように、略円形状の先端部仮想形状βから長円状の基部仮想形状αまで徐々に変化する仮想テーパ形状γを有する。これにより、長円状のアンカー孔11の向きと、アンカー部30の向きとが、仮に異なっている場合であっても、アンカー部30を押し込むことで、アンカー部30は仮想テーパ形状γに沿って徐々に向きが揃うように変位し、互いの向きが一致するようにアンカー部30をアンカー孔11に対して挿入すべく構成したものである。
【0036】
アンカー孔11に対するアンカー部30の取り付け完了時においては、アンカー孔11周縁のボディパネル10の一方側および他方側の両面が左右一対の台座部25と、左右一対の係止アーム部27とで両側から挟持固定され、取付部23で保持したワイヤーハーネス12を所定箇所に配索支持することができる。
【0037】
図1図6、特に、図2に示すように、基部仮想形状αを上面とし、かつ、先端部仮想形状βを下面として、アンカー部30の先端部から基端部の間において、係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する仮想形状によって形成される錐台状の仮想立体形状Zを形成している。
【0038】
そして、図2に示すように、錐台状の仮想立体形状Zにおける外周面に沿うように螺旋状のリブ31,32が形成されている。
詳しくは、仮想立体形状Zの一部を構成する挿入軸部26の正面側外周面と背面側外周面とにリブ31を形成すると共に、仮想立体形状Zの他部を構成する左右一対の係止アーム部27のそれぞれの外周面にリブ32を形成している。
【0039】
リブ31,32は、係止アーム部27が挿入軸部26から離間する部位において途切れてはいるものの仮想立体形状Zの先端部から基端部にかけて螺旋状に連続的に形成されている。すなわち、リブ31,32による螺旋は、間欠的に連続する螺旋形状に形成されたものである。
また、図5に示すように、上記各リブ31,32の螺旋方向に直交する断面形状は半円形状に形成されている。
【0040】
このように、仮想立体形状Zの外周面に沿うように螺旋状のリブ31,32を設けることで、長円状のアンカー孔11に対して、係止アーム部27と挿入軸部26とがリブ31,32にて案内され、これら両者(つまり、挿入軸部26と係止アーム部27)が、アンカー孔11に対して、より一層挿入しやすくなるように構成したものである。
【0041】
詳しくは、アンカー部30のアンカー孔11に対する取り付け時、アンカー部30の先端部をアンカー孔11に挿入した場合、上下のリブ31,31間、または上下のリブ32,32間の上下何れの位置にアンカー孔11の内端部が位置しても、アンカー部30を押し込むことで、アンカー部30はリブ31,32に沿って向きが揃うように変位するものである。
【0042】
このように、実施形態のアンカー部30は、装着箇所(ボディパネル10参照)に設けた長円状のアンカー孔11に挿入し、被装着部材(ワイヤーハーネス12参照)を取付ける取付け部材(バンドクランプ20参照)に設けられており、台座部25と、台座部25に立設され、アンカー孔11に挿入する挿入軸部26と、挿入軸部26の先端側から基端側に向かって、挿入軸部26から徐々に離間するとともに、弾性を有する一対の係止アーム部27とで構成され、取り付け状態においてアンカー孔11に係止する基部側において係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する基部仮想形状αが、アンカー孔11の長円状に対応する形状であり、アンカー孔11へ挿入する先端部において係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する先端部仮想形状βが、長円状のアンカー孔11の短軸方向Xの長さL1より短い径の略円形状であり、先端部から基端部の間において係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する仮想形状が、先端部仮想形状βから基部仮想形状αまで徐々に変化する仮想テーパ形状γであることを特徴とする(図1図3参照)。
【0043】
この構成によれば、アンカー部30の先端部仮想形状βがアンカー孔11の短軸方向Xの長さL1よりも短い外径の略円形状であり、かつ、先端部仮想形状βから基部仮想形状αまで徐々に変化する仮想テーパ形状γとなっている。このため、長円状のアンカー孔11の向きと、アンカー部30の向きとが異なっていても、アンカー部30を押し込むことで、アンカー部30は仮想テーパ形状γに沿って徐々に向きが揃うように変位し、互いの向きが一致するようにアンカー部30をアンカー孔11に対して挿入することができる。
したがって、アンカー部30の挿入操作性の向上を図ることができる。
【0044】
また、実施形態においては、一対の係止アーム部27は、挿入軸部26において、長円状のアンカー孔11の長軸方向Yに配置されている(図3参照)。
この構成によれば、アンカー孔11の長軸方向Yの長いスパンに対し、係止アーム部27の弾性力により、台座部25と係止アーム部27との間にアンカー孔11の孔縁を弾性挟持するので、アンカー部30の支持安定性の向上を図ることができる。
【0045】
さらに実施形態においては、基部仮想形状αと先端部仮想形状βとを上面及び下面とし、先端部から基端部の間において係止アーム部27と挿入軸部26とで構成する仮想形状によって形成される錐台状の仮想立体形状Zにおける外周面に沿うように螺旋状のリブ31,32が形成されている(図2図3参照)。
【0046】
この構成によれば、螺旋状のリブ31,32により、長円状のアンカー孔11に対して、係止アーム部27と挿入軸部26とが案内されることで、これら両者(すなわち、挿入軸部26と係止アーム部27)が、より一層挿入しやすくなる。
【0047】
さらに実施形態においては、取付け部材(バンドクランプ20参照)は、被装着部材(ワイヤーハーネス12参照)を取り付ける取付部23と、アンカー部30とで構成している(図4参照)。
なお、この実施形態においては、取付部23は、ワイヤーハーネス12を取り付けるバンド21と、バンド21を固定するバックル22とで構成されている。
これにより、各請求項の効果を発揮するクランプ(バンドクランプ20)を提供することができる。
【0048】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の装着箇所は、実施形態のボディパネル10に対応し、
以下同様に、
アンカー孔は、アンカー孔11に対応し、
被装着部材は、ワイヤーハーネス12に対応し、
取付け部材およびクランプは、バンドクランプ20に対応し、
台座部は、台座部25に対応し、
挿入軸部は、挿入軸部26に対応し、
係止アーム部は、係止アーム部27に対応し、
アンカー部は、アンカー部30に対応し、
螺旋状のリブは、リブ31,32に対応し、
基部仮想形状は、基部仮想形状αに対応し、
先端部仮想形状は、先端部仮想形状βに対応し、
仮想テーパ形状は、仮想テーパ形状γに対応し、
仮想立体形状は、仮想立体形状Zに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0049】
例えば、ワイヤーハーネス12とバンド21との間にコルゲートを介設する構造の取付け部材を採用してもよい。ここに、コルゲートは、屈曲、伸縮ができるような合成樹脂等の可撓性を有する素材で構成され、環状の凹凸部がその軸方向に連続するチューブ状のものである。
【0050】
また、図7に示すように、取付部23を平板状の取付板23aで構成したクランプ20aであってもよい。取付板23aは図7に示すように、ワイヤーハーネス12に沿わせ、図示省略する粘着テープで固定するように構成している。なお、上述のバンドクランプ20では、アンカー部30にリブ31,32を備えたが、図7に図示するクランプ20aのように、アンカー部30aを台座部25、挿入軸部26及び係止アーム部27で構成し、リブ31,32を備えなくてもよい。
なお、図7において、上述のバンドクランプ20における構成と同じ構成については、同じ符号を付している。
【0051】
リブ31,32を備えないアンカー部30aは、リブ31,32を備えたアンカー部30に比べ、アンカー孔11に対するアンカー部30の向きが合っていない場合において、アンカー孔11に挿入するバンドクランプ20の向きを合わせる度合いは低いものの、アンカー部30aであっても上述のバンドクランプ20と同様の効果を奏することができる。
【0052】
さらには、取付部23をプロテクタに変更してもよい。このプロテクタは、ワイヤーハーネスを収納する溝形状部をもったプロテクタ本体と、このプロテクタ本体の開口部を閉塞するリッド部とを有する保護部材である。
【符号の説明】
【0053】
10…ボディパネル
11…アンカー孔
12…ワイヤーハーネス
20…バンドクランプ
23…取付部
25…台座部
26…挿入軸部
27…係止アーム部
30…アンカー部
31,32…リブ
α…基部仮想形状
β…先端部仮想形状
γ…仮想テーパ形状
Z…仮想立体形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7