(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230808BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230808BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230808BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230808BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20230808BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/22
C08K3/08
C08L83/06
C08K5/5415
(21)【出願番号】P 2020133644
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】岩田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 瞳子
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/030126(WO,A1)
【文献】特開2005-344106(JP,A)
【文献】特開2011-122084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)下記平均組成式(1)
R
aR
1
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa
+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(A)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
とを含有する第1液と、
(A)下記平均組成式(1)
R
aR
1
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R
2
cH
dSiO
(4-c-d)/2 (2)
(式中、R
2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa
+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(B)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(D)下記平均組成式(3)
R
3
eH
fSiO
(4-e-f)/2 (3)
(式中、R
3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、
(B)成分と相違する一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
とを含有する第2液と
からなる組成物であって、
前記第1液は前記(B)、(D)成分を含有せず、前記第2液は前記(E)、(F)成分を含有せず、
前記組成物中、前記(A)成分の合計は100質量部であり、前記(B)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量含まれ、前記(C)成分の合計は1,000~7,000質量部であり、前記(D)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量含まれ、前記(E)成分が前記(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、前記(F)成分が0.01~10質量部含まれ、
前記第1液及び前記第2液それぞれの熱伝導率がISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kであり、前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度がスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sであることを特徴とする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分と前記(D)成分中のSiH基の合計量が、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11~5個の割合であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
前記第1液中の加熱処理混合物及び前記第2液中の加熱処理混合物が更にシランカップリング剤(G)及び/又は下記一般式(4)
【化1】
(式中、R
4は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、gは5~100の整数であり、hは1~3の整数である。)
で表され、25℃における粘度が0.01~30Pa・sのオルガノポリシロキサン(H)を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項4】
熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
(A)下記平均組成式(1)
R
aR
1
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa
+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、前記(C)成分を前記(A)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した前記加熱処理混合物に、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
を添加混合することにより、第1液を調製する工程、及び
(A)下記平均組成式(1)
R
aR
1
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R
2
cH
dSiO
(4-c-d)/2 (2)
(式中、R
2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa
+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、前記(C)成分を前記(B)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した前記加熱処理混合物に、
(D)下記平均組成式(3)
R
3
eH
fSiO
(4-e-f)/2 (3)
(式中、R
3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を添加混合することにより、第2液を調製する工程
によって前記第1液及び前記第2液からなる組成物を調製する熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記第1液は前記(B)、(D)成分を、前記第2液は前記(E)、(F)成分を含有しないものとし、
前記組成物中、前記(A)成分の合計は100質量部とし、前記(B)成分を前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量とし、前記(C)成分の合計は1,000~7,000質量部とし、前記(D)成分を前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量とし、前記(E)成分を前記(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、前記(F)成分を0.01~10質量部とし、
得られる前記第1液及び前記第2液それぞれの熱伝導率をISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kとし、得られる前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度をスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sとすることを特徴とする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(B)成分と前記(D)成分中のSiH基の合計量を、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11~5個の割合とすることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第1液中の加熱処理を行う混合物、及び前記第2液の加熱処理を行う混合物に、更にシランカップリング剤(G)及び/又は下記一般式(4)
【化2】
(式中、R
4は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、gは5~100の整数であり、hは1~3の整数である。)
で表され、25℃における粘度が0.01~30Pa・sのオルガノポリシロキサン(H)を混合して加熱処理を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れた熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電子部品回路の高集積化、高電圧化に伴い、IC、回路から発生する熱量は増大しており、熱応力を緩和する目的で熱伝導性シリコーン組成物が使用されている。
【0003】
熱応力の緩和目的として、熱伝導性の良好な充填剤を使用すればよいことが知られているが、このような充填剤としては、シリカ粉末、酸化アルミニウム粉末、炭化珪素粉末、窒化珪素粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、ダイヤモンド粉末、鉄、ステンレススチール、銅等の金属粉末、並びにカーボン粉末等が知られている。
【0004】
しかしながら、上記充填剤のうち、金属粉末、カーボン粉末は電気伝導性があり、電気絶縁を目的とする熱伝導性シリコーン組成物に使用することはできない。炭化珪素粉末、ダイヤモンド粉末はいずれも硬度が高い材料であり、これらの粉末により充填された基板内の配線や素子が摩耗、切断するおそれがある。窒化珪素粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末等は電気絶縁性の観点から使用可能であるが、いずれも加水分解性を示すことから長期の保存安定性に欠けるため、これまでは熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の保存性確保が困難であった。
【0005】
上記のような観点から、実際に使用可能な充填剤としては、シリカ粉末、酸化アルミニウム粉末が挙げられるが、シリカ粉末は熱伝導性が十分でなく、高い熱伝導性を与えようとすると、シリコーン組成物の粘度等の作業性が大幅に低下する。また、酸化アルミニウム粉末を使用した場合、アルミナ表面に残存するAl-OH基の影響により、珪素原子に結合した水素原子と反応して脱水素反応を起こすことが知られており、低架橋密度に設定した低硬度材料では、脱水素反応の影響が無視できない。その対策として、シリルケテンアセタール等で処理した酸化アルミニウムを使用すること(特許文献1)や、酸化アルミニウムのpHを規定したシリコーンゲル組成物の提案がなされている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、前記シリルケテンアセタールによる表面処理酸化アルミニウムでは、熱経時での硬さ変化が懸念され、応力緩和を主目的とする環境での使用が困難であった。また、前記pHを規定した酸化アルミニウムでは無機酸の処理剤を使用しており、残存する無機酸により経時での脱水素反応が発生し、経時での硬さ変化を抑制することが困難であった。
【0007】
そのため、流動性と長期保存性に優れ、硬化した後は優れた応力緩和特性と共に、経時における硬さ変化が少ない熱伝導性シリコーンゲル組成物が提案されているが、具体的な熱伝導率や熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物に関しての記述がなく、また規定された酸化アルミニウムの煮沸抽出後のNa+イオン量が多すぎることから、熱伝導率が2.0W/m・K以上となる場合は不十分であった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平05-001237号公報
【文献】特開平11-049959号公報
【文献】特開2011-122084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、特に電子部品用放熱部材として使用した際に、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU(中央処理装置)等の発熱性電子部品を損傷させることなく、電子機器に組み込むことができる、応力緩和と絶縁性に優れた熱伝導性シリコーン硬化物を与える熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法が求められていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、電気・電子部品及びこれらを搭載した回路基板を含むモジュール内に塗布可能で、かつ硬化後、優れた応力緩和特性と熱伝導性を発揮することができる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、
熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(A)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
とを含有する第1液と、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R2
cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(B)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(D)下記平均組成式(3)
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 (3)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
とを含有する第2液と
からなる組成物であって、
前記第1液は前記(B)、(D)成分を含有せず、前記第2液は前記(E)、(F)成分を含有せず、
前記組成物中、前記(A)成分の合計は100質量部であり、前記(B)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量含まれ、前記(C)成分の合計は1,000~7,000質量部であり、前記(D)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量含まれ、前記(E)成分が前記(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、前記(F)成分が0.01~10質量部含まれ、
前記第1液及び前記第2液それぞれの熱伝導率がISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kであり、前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度がスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sである熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【0012】
このような熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物であると、保存性が向上し、経時での硬さ変化が抑えられる。該組成物の硬化物である熱伝導性2液付加硬化型シリコーンは、電気・電子部品及びこれらを搭載した回路基板を保護するために好適に使用し得ることから、優れた応力緩和特性と熱伝導性を発揮することができる。
【0013】
また、前記(B)成分と前記(D)成分中のSiH基の合計量が、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11~5個の割合であることが好ましい。
【0014】
このようなものであれば、安定したシリコーン硬化物になるとともに、硬くなりすぎて脆くなったりすることがない。
【0015】
更に、前記第1液中の加熱処理混合物及び前記第2液中の加熱処理混合物が更にシランカップリング剤(G)及び/又は下記一般式(4)
【化1】
(式中、R
4は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、gは5~100の整数であり、hは1~3の整数である。)
で表され、25℃における粘度が0.01~30Pa・sのオルガノポリシロキサン(H)を含有することが好ましい。
【0016】
このような熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物であると、第1液と第2液を低粘度化できる。
【0017】
また、熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、前記(C)成分を前記(A)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した前記加熱処理混合物に、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
を添加混合することにより、第1液を調製する工程、及び
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R2
cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、前記(C)成分を前記(B)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した前記加熱処理混合物に、
(D)下記平均組成式(3)
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 (3)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を添加混合することにより、第2液を調製する工程
によって前記第1液及び前記第2液からなる組成物を調製する熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記第1液は前記(B)、(D)成分を、前記第2液は前記(E)、(F)成分を含有しないものとし、
前記組成物中、前記(A)成分の合計は100質量部とし、前記(B)成分を前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量とし、前記(C)成分の合計は1,000~7,000質量部とし、前記(D)成分を前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量とし、前記(E)成分を前記(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、前記(F)成分を0.01~10質量部とし、
得られる前記第1液及び前記第2液それぞれの熱伝導率をISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kとし、得られる前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度をスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sとする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【0018】
このような2液付加硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法であれば、保存性が向上し、経時での硬さ変化が抑えられる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物が得られ、該組成物の硬化物である熱伝導性付加硬化型シリコーンは、電気・電子部品及びこれらを搭載した回路基板を保護するために好適に使用し得ることから、優れた応力緩和特性と熱伝導性を発揮することができる。
【0019】
更に、前記(B)成分と前記(D)成分中のSiH基の合計量を、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11~5個の割合とする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であることが好ましい。
【0020】
このような製造方法であれば、得られる硬化物が安定したシリコーン硬化物となり、硬くなりすぎて脆くなったりすることがない。
【0021】
また、前記第1液中の加熱処理を行う混合物、及び前記第2液の加熱処理を行う混合物に、更にシランカップリング剤(G)及び/又は下記一般式(4)
【化2】
(式中、R
4は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、gは5~100の整数であり、hは1~3の整数である。)
で表され、25℃における粘度が0.01~30Pa・sのオルガノポリシロキサン(H)を混合して加熱処理を行う熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であることが好ましい。
【0022】
このような熱伝導性2液付加硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法であれば、第1液と第2液が低粘度化した熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、保存性が向上し、経時での硬さ変化が抑えられる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物が得られ、該組成物の硬化物である熱伝導性シリコーンは、電気・電子部品及びこれらを搭載した回路基板を保護するために好適に使用し得ることから、優れた応力緩和特性と熱伝導性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱伝導性充填剤として、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウムと、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとを70℃以上の温度で加熱処理混合した後、該混合物に、硬化触媒と陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤を添加する第1液と、熱伝導性充填剤として、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウムと、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、特定構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを同時に70℃以上の温度で加熱処理混合した後、該混合物に、特定構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加する第2液とからなる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物を用いることにより保存性が向上し、経時での硬さ変化が抑えられることを見出し、本発明をなすに至った。
【0025】
すなわち、本発明は、
熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(A)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
とを含有する第1液と、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R2
cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含み、かつ前記(C)成分が前記(B)成分の一部で表面処理されたものである加熱処理混合物と、
(D)下記平均組成式(3)
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 (3)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
とを含有する第2液と
からなる組成物であって、
前記第1液は前記(B)、(D)成分を含有せず、前記第2液は前記(E)、(F)成分を含有せず、
前記組成物中、前記(A)成分の合計は100質量部であり、前記(B)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量含まれ、前記(C)成分の合計は1,000~7,000質量部であり、前記(D)成分が前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し前記(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量含まれ、前記(E)成分が前記(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、前記(F)成分が0.01~10質量部含まれ、
前記第1液及び前記第2液それぞれの熱伝導率がISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kであり、前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度がスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sである熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法である。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[(A)成分]
本発明の組成物の(A)成分は、組成物の主剤(ベースポリマー)となる成分である。(A)成分は、下記平均組成式(1)で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基(以下、「珪素原子結合アルケニル基」という)を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。前記珪素原子結合アルケニル基は、一分子中に少なくとも2個有するものであり、2~50個有することが好ましく、2~20個有することがより好ましい。これらの珪素原子結合アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖末端以外)の珪素原子に結合していても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
【0028】
上記式(1)中、Rは、通常、炭素原子数が2~6、好ましくは2~4のアルケニル基である。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等の低級アルケニル基が挙げられ、特にはビニル基が好ましい。
【0029】
R1は、通常、炭素原子数が1~10、好ましくは1~6の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられるが、合成の容易さ等の観点から、メチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0030】
また、aは0.0001~0.2の正数であり、0.0005~0.1の正数であることが好ましく、bは1.7~2.2の正数であり、1.9~2.0の正数であることが好ましく、a+bは1.9~2.4を満足する正数であり、1.95~2.05を満足する正数であることが好ましい。
【0031】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、直鎖状;分子鎖の一部に、RSiO3/2単位、R1SiO3/2単位、SiO2単位(式中、R及びR1で表される基は、上記で定義したとおりである)等を含む分岐鎖状;環状;三次元網状(樹脂状)、及びこれらの組み合わせのいずれでもよいが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが特に好ましい。
【0032】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、好ましくは50~100,000mPa・sであり、より好ましくは100~10,000mPa・sである。この粘度が50~100,000mPa・sである場合には、得られる硬化物は、強度、流動性、作業性により優れたものとなる。なお、粘度は回転粘度計により測定した25℃における値である(以下、同じ)。
【0033】
以上の要件を満たす(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1A):
【化3】
(式中、R
6は、独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、但しR
6の少なくとも2個はアルケニル基であり、iは20~2,000の整数である。)
で表されるものが挙げられる。
【0034】
この式(1A)中、R6で表される非置換又は置換の1価炭化水素基は、前記R(アルケニル基)、及びR1(脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基)で定義したものと同じであり、その炭素原子数、具体例等も同じである。但しR6の少なくとも2個、好ましくは2~50個、より好ましくは2~20個はアルケニル基である。また、iは、好ましくは40~1,200、より好ましくは50~600の整数である。
【0035】
上記式(1A)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0036】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
上述したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、それ自体公知のものであり、従来公知の方法で製造される。
【0038】
なお、(A)成分は、第1液、第2液の両方に用いるものであり、第1液と第2液に使用する(A)成分の割合は特に限定されないが、第1液と第2液との混合割合がほぼ同等の質量比となるように用いることが好ましい。
【0039】
[(B)成分]
本発明の組成物の(B)成分は、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであり、(C)成分である酸化アルミニウムの表面処理剤兼架橋剤として作用するものである。即ち、高温で熱処理する際に、(C)成分中の表面に残存したAl-OH基や無機酸の表面処理剤残渣と脱水素反応により一部が消費され、残存した珪素原子に結合した水素原子が(A)成分中のアルケニル基と付加反応するものであり、本発明に必須の成分である。
【0040】
(B)成分は、下記平均組成式(2)で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子(以下、「珪素原子結合水素原子」ともいう)を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有する珪素原子結合水素原子は、好ましくは3~100個、より好ましくは3~50個、特に好ましくは3~20個である。この珪素原子に結合した水素原子は分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。
R2
cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
【0041】
上記式(2)中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換した3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
【0042】
また、cは0.7~2.2の正数であり、1.0~2.1の正数であることが好ましい。dは0.001~0.5の正数であり、0.005~0.1の正数であることが好ましい。c+dは0.8~2.5を満足する正数であり、1.0~2.5を満足する正数が好ましく、1.5~2.2を満足する正数であることがより好ましい。
【0043】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの一分子中の珪素原子の数(即ち、重合度)は、通常10~1,000個であるが、組成物の取扱作業性及び得られる硬化物の特性が良好となる点から、好ましくは20~500個、より好ましくは20~100個である。
【0044】
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されない。
【0045】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度は、通常、1~10,000mPa・s、好ましくは3~2,000mPa・s、より好ましくは10~1,000mPa・sであり、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0046】
上記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(C6H5)2SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)(C6H5)HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とC6H5SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)(CF3C2H4)HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)(CF3C2H4)HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位と(CF3C2H4)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0047】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、従来公知の方法で合成される。
【0049】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分の合計中のアルケニル基1個に対し(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量、好ましくは0.1~1.8個となる量、更に好ましくは0.1~1.5個となる量である。配合量が少なすぎると保存安定性向上効果が不十分となることがあり、配合量が多すぎると得られる熱伝導性シリコーン硬化物の物性が不安定となることがある。
【0050】
[(C)成分]
本発明の組成物の(C)成分は、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウムである。
【0051】
120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量は100ppm以下、好ましくはNa+イオン量は80ppm以下、より好ましくは60ppm以下である。Na+イオン量が100ppmを超えると、経時で(E)成分が失活する場合がある。
【0052】
ここで、本発明に用いる酸化アルミニウムのNa+イオン量を上記範囲とするためには、市販の酸化アルミニウム粉末を水に分散させ、常温(1~25℃)、あるいは工程時間短縮のために、例えば60℃に加温して攪拌させることにより水洗することで、Na+イオン量を調整することができる。
【0053】
酸化アルミニウム粉末は、レーザー回折法測定による平均粒子径が1~100μmのものが好ましく、より好ましくは1~80μmのものであり、更に粒子の形状として好ましくは破砕状粒子、丸み状を帯びた粒子、又は球状粒子であり、好ましくは破砕状粒子と球状粒子である。酸化アルミニウム粉末は、1種単独でも、平均粒子径が異なる2種類以上の複数種を併用してもよい。平均粒子径が1μm以上であれば、粒子同士の接触が十分であり、粒子間接触熱抵抗が増大せず熱伝導率が良好になる。また、平均粒子径が100μm以下であれば、シート表面の凹凸が十分に小さくなり界面熱抵抗が増大せず熱伝導率が良好になる。
【0054】
(C)成分の熱伝導性充填剤の合計は、(A)成分の合計100質量部あたり1,000~7,000質量部、好ましくは1,000~6,900質量部、更に好ましくは1,000~6,700質量部である。配合量が上記範囲内であると、本発明の粘度、熱伝導率、保存性、経時での硬さ変化が抑制できる熱伝導性シリコーン硬化物を与える熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物とすることができる。
【0055】
なお、(C)成分は、第1液、第2液の両方に用いるものであり、第1液と第2液に使用する(C)成分の割合は特に限定されないが、第1液と第2液との混合割合がほぼ同等の質量比となるように用いることが好ましい。
【0056】
[(D)成分]
本発明の組成物の(D)成分は、下記平均組成式(3)
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 (3)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0057】
上記式(3)中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1~10、好ましくは1~6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換した3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
【0058】
また、eは0.7~2.2の正数であり、1.0~2.1の正数であることが好ましい。fは0.001~0.5の正数であり、0.005~0.1の正数であることが好ましい。e+fは0.8~2.5を満足する正数であり、1.0~2.5を満足する正数が好ましく、1.5~2.2を満足する正数であることがより好ましい。
【0059】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するものであるが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にそれぞれ1個ずつあってもよいが、好ましくは分子鎖末端である。
【0060】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの一分子中の珪素原子の数(即ち、重合度)は、通常10~1,000個であるが、組成物の取扱作業性及び得られる硬化物の特性が良好となる点から、好ましくは15~500個、より好ましくは18~100個である。
【0061】
また、(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されない。
【0062】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度は、通常、1~10,000mPa・s、好ましくは3~2,000mPa・s、より好ましくは10~1,000mPa・sであり、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0063】
上記式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(C6H5)2SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)(C6H5)HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)2SiO単位とC6H5SiO3/2単位からなる共重合体、(CH3)(CF3C2H4)HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)(CF3C2H4)HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)(CF3C2H4)SiO単位と(CH3)2SiO単位と(CF3C2H4)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0064】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、従来公知の方法で合成される。
【0066】
ここで、(D)成分は、一分子中に珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個有するものであり、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する(B)成分とはこの点において相違するものである。また、(B)成分は(C)成分の表面処理剤としても使用されるのに対し、(D)成分は(A)成分中のアルケニル基と反応して、硬化物を得るための架橋剤としてのみ使用される。即ち、(D)成分はSiH基が2個のため、1個でも失活してしまうと三次元架橋しなくなってしまう。このため、本発明においては、第2液に配合する(D)成分が経時で劣化しないよう、上述した(B)成分で(C)成分を表面処理させるものである。
【0067】
そのため、(D)成分の使用量は、(A)成分の合計中のアルケニル基1個に対して(D)成分中のSiH基が0.01~3個、好ましくは0.05~2個、より好ましくは0.2~1.5個となる量である。(D)成分中のSiH基が(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.01個未満であると軟らかくなりすぎて安定したシリコーン硬化物が得られないことがあり、(D)成分中のSiH基が(A)成分中のアルケニル基1個に対して3個を超えるとシリコーン硬化物が硬くなりすぎて脆くなる場合がある。
【0068】
本発明においては、上述した(B)成分と(D)成分中のSiH基の合計量が、(A)成分の合計中のアルケニル基1個に対して0.11~5個、特に0.25~4個の割合となるように用いることが好ましい。(B)成分と(D)成分中のSiH基の合計量が、(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11個以上であると軟らかくなりすぎず安定したシリコーン硬化物が得られ、(B)成分と(D)成分中のSiH基の合計量が、(A)成分中のアルケニル基1個に対して5個以下であれば、シリコーン硬化物が十分に柔軟性を持ち脆くならない。
【0069】
[(E)成分]
本発明の組成物の(E)成分は白金族金属触媒であり、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分及び(D)成分中の珪素原子に結合した水素原子の付加反応を促進する触媒である。例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、アルデヒド類、ビニルシロキサン類、もしくはアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等が使用されるが、好ましくは白金触媒であり、最も好適には塩化白金酸とビニルシロキサンの配位化合物が使用される。
【0070】
(E)成分の配合量は触媒量でよいが、通常(A)成分の合計に対して白金族金属の質量換算で1~200ppmであり、好ましくは2~100ppmである。(E)成分の配合量がこの範囲外であると、適切な硬化性が得られない。
【0071】
[(F)成分]
(F)成分は陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、本発明の組成物における(C)成分中に含まれるNa+イオンによる、(E)成分の経時劣化を抑制できる成分である。従って、陰イオン交換型のトラップ剤は本発明においては適さない。
【0072】
(F)成分は、Zr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されていることが特徴であり、好ましくはZr、Bi、Mg、Alの元素から選択され、更に好ましくはZr、Mg、Alの元素から選択される。
【0073】
(F)成分は、その他の部分では特に限定されないが、その担体としては、例えばハイドロタルサイト類および多価金属酸性塩等の無機イオン交換体から選択される一種または二種以上であることが好ましい。これらの中でも、本発明の組成物の保存特性を向上させる観点から、ハイドロタルサイト類で担持されたものであることが特に好ましい。
【0074】
(F)成分の元素の担持量としては、各イオンの総交換量として、0.1~10meq/gであることが好ましく、1~8meq/gであることが特に好ましい。この範囲内であれば、本発明の組成物の保存特性をより効果的に向上させることができる。なお、イオンの総交換量とは、0.1N 塩酸中又は0.1N 水酸化ナトリウム水溶液中におけるイオン交換量である。
【0075】
(F)成分は、例えばIXE-100、IXE-600、IXEPLAS-A1、IXEPLAS-A2(東亞合成株式会社製)などの市販品を使用することができる。
【0076】
(F)成分の添加量は、(A)成分の合計100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.5~10質量部である。(F)成分が0.01質量部未満であると、(E)成分の経時劣化を抑制できない場合があり、(F)成分が10質量部を超えると、適切な硬化性が得られない場合がある。
【0077】
[(G)成分]
本発明の組成物には、必要に応じて(G)シランカップリング剤を用いることができる。(G)成分を配合することにより第1液と第2液を低粘度化させる効果が得られる。(G)シランカップリング剤としては、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、並びに長鎖アルキル系シランカップリング剤等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、長鎖アルキル系シランカップリング剤が好ましく、デシルトリメトキシシランが好ましい。
【0078】
本発明において、(G)成分を用いる場合、上述した(A)、(C)成分又は(A)~(C)成分と共に70℃以上の温度で加熱処理混合物とすることが好ましいが、(C)成分を(G)成分にて事前に処理することもできる。この場合、(G)成分による(C)成分の表面処理方法としては、流体ノズルを用いた噴霧方式、せん断力のある攪拌方式、ボールミル、ミキサー等の乾式法、水系又は有機溶剤系等の湿式法を採用することができる。攪拌は、球状酸化アルミニウム粉末の破壊が起こらない程度にして行う。乾式法における系内温度又は処理後の乾燥温度は、表面処理剤の種類に応じ、表面処理剤が揮発や分解しない領域で適宜決定されるが、80~180℃である。
【0079】
(G)成分を用いる場合の使用量は、(C)成分の合計100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。0.1質量部以上であれば低粘度化させる効果が十分に得られ、5質量部以下であれば使用量にあった効果が得られる。
【0080】
なお、(G)成分を用いる場合、第1液、第2液の両方に用いるものであり、第1液と第2液に使用する(G)成分の割合は特に限定されるものではないが、例えば第1液と第2液に同量配合することができる。
【0081】
[(H)成分]
本発明の組成物には、必要に応じて(H)下記一般式(4)で表される加水分解性シリル基を一分子中に少なくとも1個含有し、25℃での粘度が0.01~30Pa・sであるオルガノポリシロキサンを用いることができる。(H)成分を配合することにより第1液と第2液を低粘度化させる効果が得られる。
【化4】
(式中、R
4は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、gは5~100の整数であり、hは1~3の整数である。)
【0082】
上記式(4)中、R4は独立に非置換又は置換の、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3の1価炭化水素基であり、その例としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が挙げられる。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(ノナフルオロブチル)エチル基、2-(ヘプタデカフルオロオクチル)エチル基等が挙げられる。R4としては、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0083】
上記式(4)中、R5は独立にアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基である。アルキル基としては、例えば、R4において例示したものと同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられ、炭素原子数2~10のものが好ましい。アルケニル基としては、例えば、前述のRにおいて例示したものと同様のものが挙げられ、炭素原子数は2~8のものが好ましい。アシル基としては、例えば、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられ、炭素原子数2~10のものが好ましい。R5はアルキル基であることが好ましく、特にはメチル基、エチル基であることが好ましい。
【0084】
また、gは5~100の整数、好ましくは8~50の整数であり、hは1~3の整数、好ましくは3である。
【0085】
(H)成分のオルガノポリシロキサンの好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化5】
(式中、Meはメチル基である。以下、同じ。)
【0086】
(H)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、通常、0.01~30Pa・sであり、0.01~10Pa・sが好ましい。粘度が0.01Pa・s以上であれば、シリコーン組成物から(H)成分のオイルブリードが発生しにくくなる。粘度が30Pa・s以下であれば、得られるシリコーン組成物は流動性に優れ、塗布作業性が良好となる。
【0087】
(H)成分を用いる場合の配合量は、(A)成分の合計100質量部に対して5~900質量部が好ましく、10~900質量部がより好ましく、15~700質量部が更に好ましい。(H)成分の配合量が、5質量部以上であれば低粘度化させる効果は十分に得られ、900質量部以下であれば、シリコーン組成物から(H)成分のオイルブリードが発生する恐れがない。
【0088】
なお、(H)成分を用いる場合、第1液、第2液の両方に用いるものであり、第1液と第2液に使用する(H)成分の割合は特に限定されるものではないが、例えば第1液と第2液に同量配合することができる。
【0089】
なお、(H)成分を配合する場合、(H)成分は、上述した(A)、(C)成分又は(A)~(C)成分と共に配合して、70℃以上の温度で加熱処理を行い、冷却した加熱処理混合物とした後に、(E)成分、(F)成分、又は(D)成分を配合することが好ましい。
【0090】
本発明の組成物には、その他の配合剤として上述した(A)~(H)成分以外に、それ自体公知の種々の添加剤を配合することができる。
【0091】
例えば、硬化速度や保存安定性を調節するための反応制御剤、具体的にはトリアリルイソシアネートアルキルマレエート、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール及びこれらのシラン類、シロキサン変性物;ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等、着色剤としての酸化第一鉄、酸化第二鉄等の単独又は組み合わせ、チクソ付与剤としてのフュームドシリカ等を配合することができる。これらの配合量は、それぞれ本組成物あたり、質量換算で0.01~100,000ppmであることが好ましい。
【0092】
[熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物]
本発明の組成物は、上記(A)~(F)成分、及び必要に応じて上記(G)、(H)成分やその他の成分を含有する、第1液と第2液とからなる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物である。
【0093】
ここで、第1液は、(A)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分の温度70℃以上の加熱処理混合物と、(E)、(F)成分を含有し、かつ(B)、(D)成分を含有しないものであり、第2液は、(A)、(B)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分の温度70℃以上の加熱処理混合物と、(D)成分と、必要によりその他の添加剤を含有し、かつ(E)、(F)成分を含有しないものである。
【0094】
[第1液]
第1液は、上記(A)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分の温度70℃以上の加熱処理混合物と、上記(E)、(F)成分を含有し、かつ上記(B)、(D)成分を含有しないものである。
【0095】
加熱処理混合物の調製は、上記(A)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分を70℃以上、好ましくは100~200℃、より好ましくは100~170℃、更に好ましくは100~160℃、特に好ましくは100~150℃の加熱下で、好ましくは60分以上混合する。熱処理時間の上限は特に制限はないが、好ましくは60~240分、より好ましくは60~180分、特に好ましくは60~120分熱処理する。熱処理温度が70℃未満の場合、(A)成分による(C)成分の表面処理が不十分な場合がある。熱処理温度が200℃以下の場合、(A)、(G)、(H)成分が分解することがない。また、熱処理時間が十分に長ければ、(A)成分による(C)成分の表面処理が十分となる。
【0096】
上記で得られた(A)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分を混合して70℃以上で加熱した加熱処理混合物を、好ましくは0~50℃、より好ましくは常温(1~25℃)に冷却したものに、上記(E)、(F)成分を添加し、均一に混合する。ここで、加熱処理混合物と(E)、(F)成分との混合条件は、常温(1~25℃)で5~30分間程度であり、上記の方法により、第1液を得ることができる。
【0097】
[第2液]
第2液は、上記(A)、(B)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分の温度70℃以上の加熱処理混合物と、上記(D)成分と、必要によりその他の添加剤を含有し、かつ上記(E)、(F)成分を含有しないものである。
【0098】
加熱処理混合物の調製は、上記(A)、(B)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分を70℃以上、好ましくは100~200℃、より好ましくは100~170℃、更に好ましくは100~160℃、特に好ましくは100~150℃の加熱下で、好ましくは60分以上混合する。熱処理時間の上限は特に制限はないが、好ましくは60~240分、より好ましくは60~180分、特に好ましくは60~120分熱処理する。熱処理温度が70℃未満の場合、(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子と(C)成分中のAl-OH基や残存無機酸等の保存安定性を低下させ得る反応性基や反応性物質との反応の進行が遅くなる。熱処理温度が200℃以下であれば、(A)成分や(B)成分のポリマー自身の劣化が発生することがない。また、熱処理時間が十分に長ければ、(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子と(C)成分中のAl-OH基等の反応性基や残存無機酸等の保存安定性を低下させる反応性基や反応性物質との反応が十分に進行し、保存安定性向上効果が十分となる。
【0099】
上記で得られた(A)、(B)、(C)成分、及び必要により(G)、(H)成分を混合して70℃以上で加熱した加熱処理混合物を、好ましくは0~50℃、より好ましくは常温(1~25℃)に冷却したものに、上記(D)成分、及び必要によりその他の添加剤を添加し、均一に混合する。ここで、加熱処理混合物と(D)成分と必要によりその他の添加剤との混合条件は、常温(1~25℃)で5~30分間程度であり、上記の方法により、第2液を得ることができる。
【0100】
なお、上記第1液及び第2液を調製する際の混合装置は、スタティックミキサー、プラネタリーミキサー、パドルミキサー等の公知の混合機を用いることができる。
【0101】
本発明の組成物において、第1液及び第2液の熱伝導率は、ISO 22007-2準拠のホットディスク法において、それぞれ2.0~7.0W/m・Kであり、好ましくは2.2~7.0W/m・Kである。熱伝導率が低すぎると発熱性電子部品の放熱性能が不十分となる場合がある。なお、本発明において、熱伝導率を上記範囲とするには、特に(C)成分の配合量を上記に規定した範囲内とすることにより達成できる。
【0102】
本発明の組成物において、第1液及び第2液の25℃における粘度は、スパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、それぞれ30~800Pa・sであり、好ましくは30~700Pa・sである。粘度が低すぎると本組成物の形状維持性が不十分となる場合があり、高すぎると作業性が困難になる場合がある。なお、本発明において、粘度を上記範囲とするには、特に(C)成分の配合量を上記に規定した範囲内とすることにより達成できる。
【0103】
本発明の組成物において、第1液及び第2液は、粘度の差が小さいものであれば、これらをスタティックミキサー等の静止型混合器により均一に混合することができる。この場合、スパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、25℃の粘度について第1液、第2液の初期(調製時)粘度差が第1液の粘度を基準にして、±0~80%、特に±0~50%であることが好ましい。
【0104】
本発明の組成物において、上記第1液と第2液との混合割合は、ほぼ同等の質量比とすることが好ましいものであるが、具体的には、第1液と第2液とが1:0.5~1:2、特には1:0.75~1:1.25、更には1:0.9~1:1.1、とりわけ1:0.95~1:1.05程度の質量比で混合することが望ましい。
【0105】
なお、本発明の組成物において、上記第1液と第2液との混合装置は、スタティックミキサー等の静止型混合器に限定されるものではなく、プラネタリーミキサー、パドルミキサー等の公知の混合機であってもよい。
【0106】
また、本発明の組成物の硬化条件は特に限定されず、公知の付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化条件と同じでよく、例えば、常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよい。なお、加熱する場合の硬化条件としては、40~180℃で1~60分間とすることができる。
【0107】
得られた本発明の組成物の硬化物は、ASTM D 2240-05に規定されるShore OO硬度計において、5~95、特には10~90の範囲にあることが好ましい。
【0108】
[組成物の製造方法]
また、本発明では、熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、(C)成分を(A)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した加熱処理混合物に、
(E)白金族金属触媒、
(F)陽イオン交換、及び/又は両イオン交換型のイオントラップ剤であり、かつZr、Bi、Sb、Mg、Alから選択される少なくとも1種の元素が担持されたイオントラップ剤
を添加混合することにより、第1液を調製する工程、及び
(A)下記平均組成式(1)
RaR1
bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R1は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001~0.2、bは1.7~2.2で、かつa+bが1.9~2.4を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(2)
R2
cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7~2.2、dは0.001~0.5で、かつc+dが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が100ppm以下の酸化アルミニウム
を含む混合物に70℃以上の温度で加熱処理を行い、(C)成分を(B)成分の一部で表面処理をし、その後冷却した加熱処理混合物に、
(D)下記平均組成式(3)
R3
eHfSiO(4-e-f)/2 (3)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、eは0.7~2.2、fは0.001~0.5で、かつe+fが0.8~2.5を満足する正数である。)
で表され、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を添加混合することにより、第2液を調製する工程
によって第1液及び第2液からなる組成物を調製する熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
第1液は(B)、(D)成分を、第2液は(E)、(F)成分を含有しないものとし、
上記組成物中、(A)成分の合計は100質量部とし、(B)成分を(A)成分中のアルケニル基1個に対し(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.1~2個となる量とし、(C)成分の合計は1,000~7,000質量部とし、(D)成分を(A)成分中のアルケニル基1個に対し(D)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3個となる量とし、(E)成分を(A)成分に対して白金族金属質量で1~200ppm、(F)成分を0.01~10質量部とし、
得られる第1液及び第2液それぞれの熱伝導率をISO 22007-2準拠のホットディスク法において、2.0~7.0W/m・Kとし、得られる前記第1液及び前記第2液それぞれの25℃における粘度をスパイラル粘度計によるローターA、回転数10rpm測定時(ずり速度6(1/sec))において、30~800Pa・sとする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【0109】
このような2液付加硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法であれば、保存性が向上し、経時での硬さ変化が抑えられる熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物が得られ、該組成物の硬化物である熱伝導性2液付加硬化型シリコーンは、電気・電子部品及びこれらを搭載した回路基板を保護するために好適に使用し得ることから、優れた応力緩和特性と熱伝導性を発揮することができる。
【0110】
さらに、(B)成分と(D)成分中のSiH基の合計量を、(A)成分中のアルケニル基1個に対して0.11~5個の割合とする熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であることが好ましい。
【0111】
このような製造方法であれば、得られる硬化物が十分な硬度を有し安定したシリコーン硬化物となる上に、硬くなりすぎて脆くなったりすることがない。
【0112】
第1液中の加熱処理を行う混合物、及び第2液の加熱処理を行う混合物に、更にシランカップリング剤(G)及び/又は前述の25℃における粘度が0.01~30Pa・sのオルガノポリシロキサン(H)を混合して加熱処理を行う熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であることが好ましい。
【0113】
このような付加硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法であれば、第1液と第2液を低粘度化させる効果が得られる。
【0114】
(A)~(H)、及びその他の配合剤は、上述したように添加、混合することができる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例においてViはビニル基を示す。
【0116】
[実施例1]
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が600mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン55.2質量部、(H)下記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン9質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が57ppmであり、平均粒子径が43μmの溶融球状酸化アルミニウムA 300質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 200質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0117】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、(E)塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(Pt含有量1質量%)0.18質量部、(F)両イオン交換型のイオントラップ剤IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)1.00質量部を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物1(第1液)を得た。
【0118】
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が600mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン44.8質量部、(B)下記一般式(5)で示され、25℃における粘度が28mPa・sのトリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン1.26質量部(式(5)のポリシロキサン中のSiH基/分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.11)、(H)下記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン9質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が57ppmであり、平均粒子径が43μmの溶融球状酸化アルミニウムA 300質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 200質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0119】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、エチニルシクロヘキサノール0.02質量部、更に(D)下記一般式(7)で示され、25℃での粘度が17mPa・sであるジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン9.4質量部(式(7)のポリシロキサン中のSiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.79、式(5)及び(7)のポリシロキサン中の合計SiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のSiVi基=0.9)を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物1(第2液)を得た。
【0120】
【0121】
[比較例1]
実施例1に記載の第1液中の両イオン交換型IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)を添加しなかった以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物2(第1液/第2液)を得た。
【0122】
[比較例2]
実施例1の両イオン交換型IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)から陰イオン交換型のトラップ剤IXE500(東亞合成株式会社製)1.00質量部に変更した以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物3(第1液/第2液)を得た。
【0123】
[比較例3]
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が600mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン44.8質量部、(H)上記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン9質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が57ppmであり、平均粒子径が43μmの溶融球状酸化アルミニウムA 300質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 200質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0124】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、エチニルシクロヘキサノール0.02質量部、(B)上記一般式(5)で示され、25℃における粘度が28mPa・sのトリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン1.26質量部(式(5)のポリシロキサン中のSiH基/分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.11)、更に(D)上記一般式(7)で示され、25℃での粘度が17mPa・sであるジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン9.4質量部(式(7)のポリシロキサン中のSiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.79、式(5)及び(7)のポリシロキサン中の合計SiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のSiVi基=0.9)を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物4(第2液)を得た。なお、実施例1の第1液は何も変更せず、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物4(第1液)として用いた。
【0125】
[比較例4]
実施例1に記載の熱処理温度を50℃にする以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物5(第1液/第2液)を得た。
【0126】
[比較例5]
実施例1に記載の溶融球状酸化アルミニウムAから、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が111ppmであり、平均粒子径が41μmの溶融球状酸化アルミニウムCに置き換え、実施例1に記載の破砕状酸化アルミニウムBから、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が103ppmであり、平均粒子径が1.0μmの破砕状酸化アルミニウムDに置き換えた以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物6(第1液/第2液)を得た。
【0127】
[実施例2]
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン57.2質量部、(H)上記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン117質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が52ppmであり、平均粒子径が60μmの溶融球状酸化アルミニウムE 2,418質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 907質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0128】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、(E)塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(Pt含有量1質量%)1.00質量部、(F)両イオン交換型のイオントラップ剤IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)2.00質量部を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物7(第1液)を得た。
【0129】
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン42.8質量部、(B)上記一般式(5)で示され、25℃における粘度が28mPa・sのトリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン2.33質量部(式(5)のポリシロキサン中のSiH基/分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.15)、(H)上記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン117質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が52ppmであり、平均粒子径が60μmの溶融球状酸化アルミニウムE 2,418質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 907質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0130】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、エチニルシクロヘキサノール0.11質量部、更に(D)上記一般式(7)で示され、25℃での粘度が17mPa・sであるジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン13.0質量部(式(7)のポリシロキサン中のSiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.85、式(5)及び(7)のポリシロキサン中の合計SiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のSiVi基=1.0)を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物7(第2液)を得た。
【0131】
[比較例6]
実施例2に記載の第1液中の両イオン交換型IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)を添加しなかった以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物8(第1液/第2液)を得た。
【0132】
[比較例7]
実施例2の両イオン交換型IXEPLAS-A1(東亞合成株式会社製)から陰イオン交換型のトラップ剤IXE500(東亞合成株式会社製)1.00質量部に変更した以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物9(第1液/第2液)を得た。
【0133】
[比較例8]
(株)井上製作所製5Lプラネタリーミキサーに、(A)粘度が400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン42.8質量部、(H)上記一般式(6)で示され、25℃における粘度が30mPa・sのオルガノポリシロキサン117質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が52ppmであり、平均粒子径が60μmの溶融球状酸化アルミニウムE 2,418質量部、(C)120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が11ppmであり、平均粒子径が1.2μmの破砕状酸化アルミニウムB 907質量部を添加して混合し、100℃で1時間加熱処理混合した。
【0134】
次いで、この加熱処理混合物を室温(25℃)まで十分冷却した後、エチニルシクロヘキサノール0.11質量部、上記一般式(5)で示され、(B)25℃における粘度が28mPa・sのトリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン2.33質量部(式(5)のポリシロキサン中のSiH基/分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.15)、更に(D)上記一般式(7)で示され、25℃での粘度が17mPa・sであるジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン13.0質量部(式(7)のポリシロキサン中のSiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中の合計SiVi基=0.85、式(5)及び(7)のポリシロキサン中の合計SiH基/上記分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のSiVi基=1.0)を均一に室温(25℃)で20分間混合し、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物10(第2液)を得た。なお、実施例2の第1液は何も変更せず、熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物10(第1液)として用いた。
【0135】
[比較例9]
実施例2に記載の熱処理温度を50℃にする以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物11(第1液/第2液)を得た。
【0136】
[比較例10]
実施例2に記載の溶融球状酸化アルミニウムEから、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が108ppmであり、平均粒子径が61μmの溶融球状酸化アルミニウムFに置き換え、実施例2に記載の破砕状酸化アルミニウムBから、120℃×48時間純水で酸化アルミニウム粉末を加熱抽出し、その水層をイオンクロマトグラフィーで測定した場合のNa+イオン量が103ppmであり、平均粒子径が1.0μmの破砕状酸化アルミニウムDに置き換えた以外は、同様にして熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物12(第1液/第2液)を得た。
【0137】
上記実施例、比較例に記載の熱伝導性付加硬化型シリコーン組成物1(第1液/第2液)~12(第1液/第2液)の粘度は、スパイラル粘度計:マルコム粘度計(タイプPC-10AA、回転数10rpm)を用いて25℃環境下で測定し、熱伝導率は京都電子工業(株)製ホットディスク法熱物性測定装置TPS 2500 Sを用いて25℃におけるシリコーン組成物の硬化前の熱伝導率を測定した(ISO 22007-2準拠のホットディスク法)。
【0138】
その後、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサー(MXA6.3-21)を使用して、各組成物の第1液と第2液を1:1の質量比にて均一になるよう常温(25℃)で混合吐出後、十分真空脱泡してから6mm硬化厚みとなるような成形型に流し込み、25℃×24時間硬化して硬化物を得、その硬度(硬さ)をASTM D 2240-05に規定されるShore OO硬度計により測定した。また、これらの各組成物の第1液と第2液を25℃の恒温槽に6ヶ月間放置後、上記と同様に粘度、熱伝導率、並びに硬度を測定し、初期と比較した結果を表1に示した。
【0139】
【0140】
上記の結果から明らかなように、本発明の実施例1、2の組成物は、長期保存(25℃、6ヶ月)後においても、粘度や熱伝導率に変化はなく、また得られる硬化物の硬度変化も見られないのに対し、比較例1~10の組成物は、長期保存後において、粘度や熱伝導率に顕著な変化は観察されないものの、得られた硬化物の硬度が、初期から10ポイント以上変化していることがわかる。ここから、比較例1、6ではイオントラップ剤を含んでいないため、長期保存後においても十分に硬化させるためにはイオントラップ剤が必要であることが分かる。更に、比較例2、7では陰イオン交換型のイオントラップ剤が含まれており、そこから陰イオン交換型でないイオントラップ剤が必要であることが分かる。またこのように、比較例3、8から、第2液として、(B)成分を(A)、(C)成分と加熱処理混合することが好ましいことがわかる。また、比較例4、9から、(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合後、熱処理温度は70℃以上とすることが好ましいこともわかる。これらは、(C)成分の表面が(A)成分及び(B)成分で処理が進んでいないためと思われる。更には、比較例5、10から、(C)成分で規定したNa+イオン量は100ppm以下が好ましいこともわかる。従って、本発明によれば、長期間の保存安定性を有する熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物及びその硬化物が得られる。
【0141】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明により得られた熱伝導性2液付加硬化型シリコーン組成物を硬化することにより得られる熱伝導性シリコーン硬化物は、長期間保存した後でも熱伝導性充填剤の作用を受けることなく、安定した硬度を維持することができるため、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU(中央処理装置)等の電子部品の放熱兼保護用途で信頼性の向上が期待される。