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特許7328229トポグラフィーを改善したタングステンバルク研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】トポグラフィーを改善したタングステンバルク研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230808BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230808BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20230808BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
B24B37/10
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020537628
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 US2019012268
(87)【国際公開番号】W WO2019139828
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】15/866,008
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【氏名又は名称】板谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.ワード
(72)【発明者】
【氏名】マシュー イー.カーンズ
(72)【発明者】
【氏名】チー ツイ
(72)【発明者】
【氏名】キム ロング
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157195(JP,A)
【文献】特開2017-019929(JP,A)
【文献】特表2017-524767(JP,A)
【文献】特開2016-069535(JP,A)
【文献】特開2017-066386(JP,A)
【文献】特表2007-519828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0121560(US,A1)
【文献】特開2016-167580(JP,A)
【文献】特開2016-048777(JP,A)
【文献】特開2016-069465(JP,A)
【文献】特開2018-026422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 37/10
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を化学機械的に研磨する方法であって、
(i)基板を提供することであって、前記基板が前記基板表面上のタングステン層と、前記基板表面上の酸化ケイ素層とを含む基板を提供することと、
(ii)研磨パッドを提供することと、
(iii)
(a)粒子の表面に負に帯電した基を含む表面改質コロイダルシリカ粒子であって、
負電荷、
0nm~350nmの粒子サイズ、および
のpHで-20mV~-70mVのゼータ電位を有する、表面改質コロイダルシリカ粒子、
(b)鉄化合物、
(c)安定化剤、ならびに
(d)水性キャリア、を含む、化学機械研磨組成物を提供することと、
(iv)前記基板を、前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物と接触させることと、
(v)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物を、前記基板に対して動かして、前記タングステン層の少なくとも一部と前記酸化ケイ素層の少なくとも一部を研削して、前記基板を研磨することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記表面改質コロイダルシリカ粒子の表面の前記負に帯電した基が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面改質コロイダルシリカ粒子が、90nm~180nmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面改質コロイダルシリカ粒子が、120nm~180nmの粒子サイズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化学機械研磨組成物のpHが、1.5~3である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化学機械研磨組成物のpHが、2~3である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面改質コロイダルシリカ粒子が、前記化学機械研磨組成物中に、0.01重量%~6重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記表面改質コロイダルシリカ粒子が、前記化学機械研磨組成物中に、0.1重量%~4.5重量%の濃度で存在する、任意の請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記鉄化合物が、硝酸第二鉄またはその水和物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記鉄化合物が、前記化学機械研磨組成物中に、0.001重量%~1.0重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記安定化剤が、リン酸、o-ホスホリルエタノールアミン、アレンドロン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記安定化剤が、マロン酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記安定化剤が、前記化学機械研磨組成物中に、0.01重量%~1.50重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記タングステン層の少なくとも一部の前記研削が、タングステン除去速度を提供し、前記酸化ケイ素層の少なくとも一部の前記研削が、酸化ケイ素除去速度を提供し、前記タングステン除去速度と前記酸化ケイ素除去速度との比が、20:1超である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
集積回路および他の電子デバイスの製造において、導体、半導体、および絶縁体材料の複数の層が基板表面上に堆積され、または基板表面から除去される。材料の層が基板上に順次堆積され、基板から除去されるにつれて、基板の最上面は非平面状になり得、平坦化を必要とし得る。表面を平坦化すること、または表面を「研磨すること」は、材料が基板の表面から除去されて、概して均一で平坦な表面を形成するプロセスである。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子損傷、スクラッチ、および汚染された層または材料などの望ましくない表面トポグラフィーおよび表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化はまた、フィーチャを充填するために使用される過剰に堆積された材料を除去することによって基板上にフィーチャを形成し、メタライズおよび加工の後続レベルのために均一な表面を提供するのに有用である。
【0002】
基板の表面を平坦化または研磨するための組成物および方法は、当該技術分野において周知である。化学機械平坦化、または化学機械研磨(CMP)は、基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。CMPは、基板から材料を選択的に除去するために、CMP組成物、またはより簡単に研磨組成物(研磨スラリーとも称される)として既知の化学組成物を利用する。研磨組成物は、通常、基板の表面を、研磨組成物を十分にしみ込ませた研磨パッド(例えば、研磨布または研磨ディスク)と接触させることにより基板に適用される。基板の研磨は、典型的には、研磨組成物の化学的活性、および/または研磨組成物中に懸濁した、もしくは研磨パッド(例えば、固定研削剤研磨パッド)に組み込まれている研削材の機械的活性によってさらに補助される。
【0003】
絶縁体のフィーチャ間に配置されたタングステンのフィーチャを有する基板は、絶縁体材料のフィーチャ間に提供されるタングステンの「プラグ」および「相互接続」構造を含む半導体基板を含む。絶縁体材料(例えば、酸化ケイ素)は、基板の下にあるトポグラフィーに適合し、したがって、絶縁体材料の表面は、典型的には、絶縁体材料のトレンチによって分離された絶縁体材料の隆起領域の不均一な組み合わせによって特徴付けられる。隆起絶縁体材料およびトレンチを含む基板表面の領域は、基板のパターンフィールド、例えば、「パターン材料」、「パターン酸化物」、または「パターン絶縁体」と称される。
【0004】
タングステンの「プラグ」および「相互接続」構造を作製するために、少なくとも部分的に絶縁体材料で作られたパターン化された構造を含有する表面にタングステンを適用する。トレンチの深さのばらつきによって、典型的に、確実にすべてのトレンチを完全に埋めるために、基板の上に過剰のタングステンを堆積させる必要がある。次いで、余分なタングステンは、CMP加工によって除去されて、下にある絶縁体層を露出させ、絶縁体材料のスペースの間に配置されたタングステンの平坦な表面を作製する。比較的大部分のタングステンは「バルク」研磨中に除去されるが、これはタングステン除去速度が高いことを望ましい特徴とする。ただし、バルクタングステン研磨はまた、適切なトポグラフィー性能を示す必要がある。
【0005】
既知のCMPスラリーは、多くの欠点を持っている。例えば、タングステン除去速度特性を有するスラリーは、歩留まり損失を引き起こし得る過剰なエッジオーバーエロージョン(edge-over erosion、EOE)(ファンジングと呼ばれる場合もある)を欠点として持ち得る。名前で示唆されるように、EOEまたはファンジングとは、パターン化された領域の縁部付近の局所的な浸食を指す。あるいは、所望のトポグラフィー性能を達成し得る多くのスラリーは、プロセス時間を増加させ、デバイスのスループットを低下させる低い膜除去速度を欠点として持つ。さらに、トポグラフィー性能および欠陥は、既存のシリカ系タングステンバフスラリーの間隙として特定されている。アニオン系は欠陥を改善し得ると同時に、改善された貯蔵寿命のための改善されたコロイド安定性を提供する。しかしながら、アニオン性シリカの使用は、現在、多くの要因によって制限されており、例えば、アルミニウムをドープしたシリカは、Al浸出に起因する、pHの制限によって、配合作業スペースが制限されている。また、MPS(メルカプトプロピルシランスルホン化コロイダルシリカ)のようなアニオン性粒子で配合された既知のスラリーは、低い膜除去速度および不十分なパターン性能(例えば、高い浸食またはEOE)によって制限される。
【0006】
EOE現象は、ケイ素、銅、およびタングステンCMPを含むさまざまなCMP用途で既知であるが、その現象はよく理解されていない。米国特許第6,114,248号は、ポリシリコン研磨におけるEOEを改善するために、濃度を低減したコロイダルシリカおよびヒュームドシリカを使用して、アルカリ化学作用を増やすことを開示している。さらに、銅CMPにおけるEOE現象は、銅の電気化学的特性を改質することによって対処され得ることが提案されている(例えば、G.BanerjeeおよびR.L.Rhoades(ECS Transactions,2008,vol.13,pp.1-19)を参照されたい)。しかしながら、タングステンは、銅およびケイ素とは本質的に異なる電気化学的特性を有するため、タングステン研磨用途におけるファンジングに対する化学をベースとする解決は好適ではない可能性がある。タングステンCMPにおけるEOEは、機械的要因(例えば、小粒子コロイダルシリカの使用)、または加工条件(例えば、研磨中の2工程の高いダウンフォース、次いで低いダウンフォースの設定、または研磨アセンブリの再構成)を変更することによって、対処され得ると提案している者もいる(例えば、R.VacassyおよびZ.Chen、“Edge Over Erosion in Tungsten CMP”、2006、https://www.researchgate.net/publication/290577656、S.H.Shinら、“Relative Motion and Asymmetry Effect Analyses in Tungsten CMP Process”、http://www.planarization-cmp.org/contents/ICPT/PacRim2005/S5-2.pdfを参照されたい)。
【0007】
しかしながら、複雑な作業が伴い、かつ研磨時間増加によるスループット低下の可能性があるため、一般的に加工パラメーターを変更することは望ましくない。処理パラメーターを変更すると、均一な研磨特性が得られなくなる場合があり、デバイスの歩留まりに悪影響を与える可能性がある。加えて、出願人は、小さなコロイダルシリカを用いて配合されたタングステン研磨スラリーが、タングステン研磨用途においてEOE現象の高い傾向をもたらすことを見出した。
【0008】
したがって、平坦化効率も改善しつつ有用なバルク研磨除去速度(例えば、タングステンバルク研磨)を提供する、基板の化学機械研磨のための組成物および方法が依然として必要とされている。本発明は、このような研磨組成物および方法を提供する。本発明のこれらの利点および他の利点、ならびに追加の発明的特徴は、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、基板を化学機械的に研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板が、基板表面上のタングステン層と、基板表面上の酸化ケイ素層とを含む基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)粒子の表面に負に帯電した基を有する表面改質コロイダルシリカ粒子であって、負電荷、約90nm~約350nmの粒子サイズ、および約2のpHで約-20mV~約-70mVのゼータ電位を有する、表面改質コロイダルシリカ粒子、(b)鉄化合物、(c)安定化剤、ならびに(d)水性キャリア、を含む、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を、研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を、基板に対して動かして、基板表面のタングステン層の少なくとも一部と基板表面の酸化ケイ素層の少なくとも一部を研削して、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、基板を化学機械的に研磨する方法であって、(i)基板を提供することであって、基板が、基板表面上のタングステン層と、基板表面上の酸化ケイ素層とを含む基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)粒子の表面に負に帯電した基を含む表面改質コロイダルシリカ粒子であって、負電荷、約90nm~約350nmの粒子サイズ、および約2のpHで約-20mV~約-70mVのゼータ電位を有する、表面改質コロイダルシリカ粒子、(b)鉄化合物、(c)安定化剤、ならびに(d)水性キャリア、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を、研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を、基板に対して動かして、タングステン層の少なくとも一部と酸化ケイ素層の少なくとも一部を研削して、基板を研磨することと、を含む、方法を提供する。
【0011】
特定の理論に拘束されることを望まないが、出願人は、負電荷、約90nm~約350nmの粒子サイズ、および約2のpHで約-20mV~約-70mVのゼータ電位を有する、本明細書に記載の表面改質粒子を含む研磨組成物が、タングステン除去速度特性および酸化ケイ素除去速度特性の改善を示し、浸食およびファンジングがより少ないことを含むトポグラフィー性能の改善を示すことを見出した。
【0012】
研磨組成物は、表面改質(例えば、表面官能基化)コロイダルシリカ粒子を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる研削剤を含み、コロイダルシリカ粒子は、改質コロイダルシリカ粒子が、粒子の表面に負に帯電した基を有するように表面改質されている。したがって、表面改質コロイダルシリカ粒子は、負電荷を有する。負電荷は、負に帯電した基をシリカ表面に共有結合させることによる、シリカ粒子の改質によって提供される。
【0013】
本明細書で使用される場合、「負電荷」という用語は、例えば、フラッシング、希釈、または濾過を介して、容易に元に戻せない(すなわち、不可逆的または永久的)表面改質コロイダルシリカ粒子上の負電荷を指す。負電荷は、例えば、アニオン性種(例えば、負に帯電した基)をコロイダルシリカと共有結合させた結果であり得る。対照的に、可逆的な負電荷(非永久的な負電荷)は、例えば、静電気的にシリカ粒子の表面に結合し得るアニオン性界面活性剤またはアニオン性ポリマーなどの、例えば、アニオン性種とコロイダルシリカとの間の静電相互作用の結果であり得る。
【0014】
負に帯電した基は、コロイダルシリカ粒子の表面の負電荷に影響を及ぼし得る任意の好適な基であり得る。例えば、負に帯電した基は、有機酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸、および/またはホスホン酸)であり得る。好ましい実施形態では、負に帯電した基は、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基、およびこれらの組み合わせを含む。
【0015】
好ましい実施形態では、スルホネート基は、1つ以上のスルホネート基またはスルフェート基を含有するシランである。スルホネート基はまた、スルホネート前駆体またはスルフェート前駆体であり得、これは、続いて、例えば、酸化によって、スルホネートまたはスルフェートに変換され得る。好適なスルホネート基としては、例えば、3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸、トリエトキシシリルプロピル(ポリエチレンオキシ)プロピルスルホン酸のカリウム塩などのその塩、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、および3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0016】
好適なカルボキシレート基またはカルボキシレート前駆体としては、例えば、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、カルボキシエチルシラントリオールまたはその塩、およびN-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸またはその塩が挙げられる。
【0017】
好適なホスホネート基としては、例えば、3-(トリヒドロキシシリル)プロピルメチルホスホン酸およびその塩が挙げられる。
【0018】
負に帯電した基はまた、シランカップリング剤であり得る。シランカップリング剤を使用して、シリカ表面を改質して、本発明による表面改質コロイダルシリカ粒子を提供することができる。負に帯電した基または負に帯電した基の前駆体を含むシランカップリング剤の例は、Gelest,Inc.(Silane Coupling Agents、Copyright 2014、Gelest,Inc.、ペンシルベニア州モリスビル)に記載されており、参照により本明細書に含まれる。
【0019】
表面改質コロイダルシリカ粒子は、任意の好適な方法を使用して調製可能である。典型的には、負に帯電した基(複数可)で表面改質する前のコロイダルシリカ粒子(すなわち、未改質コロイダルシリカ粒子)は、負に帯電した基を含まないか、または実質的に含まない。未改質コロイダルシリカ粒子は、任意の好適なコロイダルシリカ粒子であり得、典型的には、「湿式プロセス」コロイダルシリカ粒子である。本明細書で使用される場合、「湿式プロセス」シリカとは、(例えば、ヒュームドシリカまたは熱分解法シリカとは対照的に)沈殿、縮重合、または類似のプロセスによって調製されたシリカを指す。好ましい実施形態では、コロイダルシリカ粒子は、Si(OH)の縮重合によって調製される。前駆体Si(OH)は、例えば、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)などの高純度アルコキシシランの加水分解によって得ることができる。このようなコロイダルシリカ粒子は、PL-5およびPL-7などの扶桑化学工業の「PL」コロイダルシリカ製品などのさまざまな市販品として得ることができる。別の好ましい実施形態では、シリカ粒子は、ケイ酸ナトリウムから調製される。本発明に有用なケイ酸ナトリウムは、例えば、Nalcoから入手され得る。ケイ酸ナトリウムから誘導される市販のコロイダルシリカの例としては、Nalco 1050、2327、および2329製品、ならびにDuPont、Bayer、Applied Research、日産化学、およびClariantから入手可能な他の類似の製品が挙げられる。
【0020】
コロイダルシリカ粒子は、任意の好適な方法を使用して表面改質され得る。一実施形態では、コロイダルシリカ粒子の表面に負に帯電した基を提供するための表面処理は、コロイダルシリカとのシラン表面反応によるものである。例えば、コロイダルシリカに有機酸であるスルホン酸(例えば、スルホネート基)を共有結合させる場合、結合は、Cano-Serranoらの“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”、Chem.Commun.、2003(2):246-247(2003)の方法によって実行され得る。具体的には、スルホン酸が表面に共有結合したコロイダルシリカは、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤とコロイダルシリカとをカップリングし、次いで、過酸化水素水を使用してチオール基を酸化することによって得られる。あるいは、例えば、コロイダルシリカにカルボン酸(すなわち、カルボキシレート基)を共有結合させる場合、結合は、Yamaguchiらの“Novel silane coupling agents containing a photolabile 2-nitrobenzyl ester for introduction of a carboxy group”、Chemistry Letters、3:228-229(2000)の方法によって実行され得る。具体的には、カルボン酸が表面に共有結合したコロイダルシリカは、感光性2-ニトロビンジル(nitrovinzyl)エステルを含有するシランカップリング剤とコロイダルシリカとをカップリングし、次いで、それを光で照射することによって得られる。
【0021】
表面改質コロイダルシリカ粒子は、約90nm~約350nmの粒子サイズを有する。本明細書で使用される場合、粒子サイズは、粒子を包含する最小の球の直径を指す。コロイダルシリカ粒子の粒子サイズは、任意の好適な技法、例えば、光散乱技法を使用して測定され得る。適切な粒子サイズ測定機器は、例えば、Malvern Instruments(Malvern,UK)から入手可能である。粒子サイズは、当業者に既知の任意の好適な技法、例えば、レーザー回折技法、CPS Instruments(Prairieville,LA)からのような(例えば、CPS Disc Centrifuge Model DC24000UHR)ディスク遠心分離機を使用する示差遠心沈降(DCS)を使用して測定され得る。
【0022】
したがって、表面改質コロイダルシリカ粒子は、約90nm以上、例えば、約95nm以上、約100nm以上、約105nm以上、約110nm以上、約115nm、約120nm以上、約125nm以上、約130nm以上、約135nm以上、約140nm以上、約145nm以上、約150nm以上、約155nm以上、約160nm以上、約165nm以上、約170nm以上、約175nm以上、約180nm以上、約185nm以上、約190nm以上、約195nm以上、または約200nm以上の粒子サイズを有し得る。あるいは、または加えて、コロイダルシリカ粒子は、約350nm以下、例えば、約345nm以下、約340nm以下、約335nm以下、約330nm以下、約325nm以下、約320nm以下、約315nm以下、約310nm以下、約305nm以下、約300nm以下、約295nm以下、約290nm以下、約285nm以下、約280nm以下、約275nm以下、約270nm以下、約265nm以下、約260nm以下、約255nm以下、約250nm以下、約245nm以下、約240nm以下、約235nm以下、約230nm以下、約225nm以下、約220nm以下、約215nm以下、約210nm以下、または約205nm以下の粒子サイズを有し得る。したがって、コロイダルシリカ粒子は、前述の終点の任意の2つで定められた範囲の粒子サイズを有し得る。例えば、コロイダルシリカ粒子は、約90nm~約350nm、約95nm~約345nm、約90nm~約340nm、または約85nm~約335nmの粒子サイズを有し得る。
【0023】
一実施形態では、コロイダルシリカ粒子は、約90nm~約180nmの粒子サイズを有する。
【0024】
別の実施形態では、コロイダルシリカ粒子は、約120nm~約180nmの粒子サイズを有する。
【0025】
表面改質コロイダルシリカ粒子は負のゼータ電位、より具体的には、約2のpHで約-20mV~約-70mV(例えば、約-25mV、約-30mV、約-35mV、約-40mV、約-45mV、約-50mV、約-55mV、約-60mV、または約-65mV)のゼータ電位を有する。粒子のゼータ電位とは、粒子を取り巻くイオンの電荷とバルク溶液(例えば、水性キャリアおよびその中に溶解した任意の他の構成要素)の電荷との間の差異を指す。ゼータ電位は、典型的には、水性媒体(例えば、水性キャリア)のpHに依存する。所与の研磨組成物について、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロになるpHとして定義される。等電点から離れてpHが増加または減少すると、それに応じて表面電荷(および、したがってゼータ電位)が減少または増加する(負または正のゼータ電位値に)。さらに、本発明の文脈において、約1.5~約3のpH範囲にわたる、より負のゼータ電位は、一般により高い表面改質の程度に対応するので、ゼータ電位は、コロイダルシリカ粒子の表面改質の程度の指標である。
【0026】
したがって、前述のゼータ電位値の任意の2つを使用して、範囲を定義し得る。例えば表面改質コロイダルシリカ粒子は、約1.5~約3のpH範囲で、約-25mV~約-65mV、約-30mV~約-60mV、約-35mV~約-55mV、または約-40mV~約-50mVのゼータ電位を有し得る。さらなる例として、表面改質コロイダルシリカ粒子は、約2のpHで約-20mV、約-21mV、約-22mV、約-23mV、約-24mV、約-25mV、約-26mV、約-27mV、約-28mV、約-29mV、約-30mV、約-31mV、約-32mV、約-33mV、約-34mV、約-35mV、約-36mV、約-37mV、約-38mV、約-39mV、約-40mV、約-41mV、約-42mV、約-43mV、約-44mV、約-45mV、約-46mV、約-47mV、約-48mV、約-49mV、約-50mV、約-51mV、約-52mV、約-53mV、約-54mV、約-55mV、約-56mV、約-57mV、約-58mV、約-59mV、約-60mV、約-61mV、約-62mV、約-63mV、約-64mV、約-65mV、約-66mV、約-67mV、約-68mV、約-69mV、または約-70mVのゼータ電位を有し得る。したがって、表面改質コロイダルシリカ粒子は、好適なpH範囲にわたって好適なゼータ電位を有する。典型的には、研磨組成物のpHは、約1.5~約3(例えば、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、または約2.9のpH)である。例えば、研磨組成物のpHは、約1.6~約2.9、約1.7~約2.8、約1.8~約2.7、約1.9~約2.6、約2~約2.5、約2.1~約2.4、または約2.2~約2.3であり得る。
【0027】
一実施形態において、研磨組成物のpHは、約1.8~約3である。
【0028】
いくつかの実施形態では、表面改質コロイダルシリカ粒子は、約1.5~約3のpH範囲にわたって約-35mV~約-45mVのゼータ電位を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、表面改質コロイダルシリカ粒子は、約2~約3のpH範囲にわたって約-40mV~約-45mVのゼータ電位を有する。
【0030】
研磨組成物のゼータ電位は、例えば、Dispersion Technology,Inc.(Bedford Hills,NY)から入手可能である電気音響分光計であるDT-1202などの市販の測定器を使用して、任意の好適な手段によって測定され得る。DT-1202でゼータ電位を測定するためには、化学機械研磨において使用される研削剤の濃度に対応する固形分濃度、例えば、2%固形分で溶液を測定することが好ましい。
【0031】
化学機械研磨組成物は、任意の好適な量の表面改質コロイダルシリカ粒子を含み得る。組成物に含まれる表面改質コロイダルシリカ粒子が少なすぎる場合、組成物は、十分な除去速度を示さないことがある。対照的に、研磨組成物に含まれる表面改質コロイダルシリカ粒子が多すぎる場合、組成物は、望ましくない研磨性能を示すことがあり、費用効果が低い場合があり、かつ/または安定性に欠ける場合がある。
【0032】
表面改質コロイダルシリカ粒子が望ましくコロイド安定性であるように、表面改質コロイダルシリカ粒子は、研磨組成物の水性キャリア中に懸濁される。本明細書で使用される場合、「コロイド安定性」という用語は、液体キャリア(例えば、水)中の研削粒子の懸濁液を指し、その懸濁液の経時的な維持を指す。本発明の文脈において、研削粒子を100mLのメスシリンダーに入れ、2時間にわたって無撹拌で静置した際、メスシリンダー底部の50mL内の粒子濃度(g/mL換算で[B])と、メスシリンダー上部の50mL中の粒子濃度(g/mL換算で[T])との間の差異を、研削剤組成物中の粒子の初期濃度(g/mL換算で[C])で割った値が、0.5以下(すなわち、{[B]-[T]}/[C]≦0.5)の場合、研削粒子(すなわち、表面改質コロイダルシリカ粒子)は、コロイド的に安定しているとみなされる。[B]-[T]/[C]の値は、望ましくは0.3以下であり、好ましくは0.1以下である。
【0033】
したがって表面改質コロイダルシリカ粒子は、典型的には、研磨組成物中に約6重量%以下、例えば、約5.5重量%以下、約5重量%以下、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、または約2.5重量%以下の濃度で存在する。あるいは、もしくは加えて、表面改質コロイダルシリカ粒子は、研磨組成物中に、約0.1重量%以上、例えば、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、または約2重量%以上の濃度で存在することができる。したがって、表面改質コロイダルシリカ粒子は、研磨組成物中に、前述の終点の任意の2つで定められた範囲の濃度で存在し得る。例えば、表面改質コロイダルシリカ粒子は、約0.1重量%~約6重量%、例えば、約0.2重量%~約5.5重量%、約0.3重量%~約5重量%、約0.4重量%~約4.5重量%、例えば、約0.5重量%~約4重量%、約1重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3重量%、または約2重量%~約2.5重量%の濃度で研磨組成物中に存在することができる。
【0034】
好ましい実施形態において、表面改質コロイダルシリカ粒子は、研磨組成物中に、約0.1重量%~約4.5重量%の濃度で存在する。
【0035】
本発明の研磨組成物は、鉄化合物を含む。鉄含有塩の例は、米国特許第5,958,288号および同第5,980,775号に記載されており、これらはどちらも参照により本明細書に組み込まれる。好適な鉄化合物(例えば、鉄含有塩)としては、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、ハロゲン化鉄(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ならびに過塩素酸塩、過臭素酸塩、および過ヨウ素酸塩を含む)などの第二鉄(鉄III)もしくは第一鉄(鉄II)化合物の塩、または酢酸鉄、鉄アセチルアセトネート、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、フタル酸鉄、もしくはコハク酸鉄などの有機鉄化合物が挙げられる。
【0036】
好ましい実施形態では、鉄化合物は、硝酸第二鉄またはその水和物(例えば、硝酸第二鉄九水和物)である。
【0037】
研磨組成物は、任意の好適な量の鉄化合物を含有し得る。理解されるように、活性種は鉄カチオンであり、したがって、本明細書に記載の量は、溶液中で鉄イオンの当量を提供する鉄化合物の量を指す。研磨組成物に含まれる鉄化合物が少なすぎる場合、組成物は、十分な除去速度を示さないことがある。対照的に、研磨組成物に含まれる鉄化合物が多すぎる場合、組成物は、望ましくない研磨性能を示すことがあり、費用効果が低い場合があり、かつ/または安定性に欠ける場合がある。したがって鉄化合物は、典型的には約1重量%以下、例えば、約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下の濃度で研磨組成物中に存在する。あるいは、または加えて、鉄化合物は、研磨組成物中に、約0.001重量%以上、例えば、約0.005重量%以上、または約0.01重量%以上の濃度で存在し得る。したがって、鉄化合物は、研磨組成物中に、前述の終点の任意の2つで定められた範囲の濃度、例えば、約0.001重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.9重量%、約0.01重量%~約0.8重量%、約0.05重量%~約0.7重量%、約0.1重量%~約0.6重量%、約0.2重量%~約0.5重量%、または約0.3重量%~約0.4重量%の濃度で存在し得る。
【0038】
好ましい実施形態では、鉄化合物は、研磨組成物中に、約0.005重量%~約0.1重量%の濃度で存在する。
【0039】
本発明の研磨組成物は、安定化剤を含む。特定の理論に拘束されることを望まないが、その両方が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,980,775号および同第6,068,787号に記載されているように、安定化剤は、組成物中の遊離金属カチオンの量を制御するのに役立ち、それによって、触媒の速度を減衰させて、研磨性能を最適化する。
【0040】
本発明の別の実施形態では、鉄化合物は、研削剤の表面に固定化され得る。例えば、鉄化合物は、研削剤の表面に結合した安定化剤とともに鉄塩から構成され得る。
【0041】
一実施形態では、安定化剤は、リン酸、o-ホスホリルエタノールアミン、ホスホン酸、アレンドロン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、またはこれらの組み合わせを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、安定化剤は、マロン酸を含む。
【0043】
研磨組成物は、任意の好適な量の安定化剤を含み得る。組成物に含まれる安定化剤が少なすぎる場合、組成物は、十分な安定性を示さないことがある。対照的に、研磨組成物に含まれる安定化剤が多すぎる場合、組成物は、望ましくない研磨性能を示すことがあり、費用効果が低い場合があり、かつ/または不安定になる場合がある。したがって、安定化剤は、典型的には約1重量%以下、例えば、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、または約0.01重量%以下の濃度で研磨組成物中に存在する。あるいは、もしくは加えて、安定化剤は、約0.0001重量%以上、例えば、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、または約0.005重量%以上の濃度で研磨組成物中に存在し得る。したがって、安定化剤は、研磨組成物中に、前述の終点の任意の2つで定められた範囲の濃度で存在し得る。例えば、安定化剤は、約0.0001重量%~約1重量%、例えば、約0.0005重量%~約0.5重量%、約0.001重量%~約0.1重量%、または約0.005重量%~約0.05重量%の濃度で、研磨組成物中に存在し得る。
【0044】
好ましい実施形態では、研磨組成物は安定化剤を約0.0001重量%~約0.1重量%の濃度で含む。
【0045】
研磨組成物は水性キャリアを含む。水性キャリアは水(例えば、脱イオン水)を含み、1種以上の水混和性有機溶媒を含有してもよい。使用できる有機溶媒の例には、プロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノールなどのアルコール、アセチルアルデヒドなどのアルデヒド、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンなどのケトン、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルなどのエステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリムなどのスルホキシドを含むエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどのアミド、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールおよびその誘導体、ならびにアセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミンなどの窒素含有有機化合物が挙げられる。好ましくは、水性キャリアは水のみ、すなわち有機溶媒は存在しない。
【0046】
本発明の研磨組成物は、望ましくは、調製、長期保存、輸送、および使用の間、安定である。安定したスラリーとは、加工された基板の表面に存在する欠陥(特にスクラッチ)のレベルが増加する、保管中に(例えば、懸濁した研削粒子の沈殿により)過度に分離したり沈殿したりすることなく、保管中に過度の粒子サイズの成長を示さず、使用中に過度の粒子サイズの成長を示さないものである。
【0047】
研磨組成物は、任意に、1種以上の他の追加の構成要素(すなわち、添加剤)をさらに含む。例えば、所望の研磨用途に応じて、本発明の研磨組成物は、研磨性能を改善または強化するための1種以上の添加剤を含むことができる。添加剤は、研磨組成物の他の成分と適合性があることが望ましい。例示的な追加の構成要素としては、コンディショナー、スケール抑制剤、分散剤、酸化剤、pH調整化合物(例えば、酸または塩基)、およびpH緩衝化合物が挙げられる。研磨組成物は、界面活性剤ならびに/または、粘度増強剤および凝固剤(例えば、ウレタンポリマーなどのポリマーレオロジー調整剤)を含むレオロジー調整剤、分散剤、殺生物剤(例えば、KATHON(商標)LX)などを含むことができる。好適な界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、アニオン性高分子電解質、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化界面活性剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
研磨組成物は、その多くが当業者には既知である任意の好適な技術によって調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。通常、研磨組成物は、本明細書の成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される場合、「構成要素」という用語は、個々の成分(例えば、表面改質コロイダルシリカ粒子、鉄化合物、安定化剤など)、ならびに成分の任意の組み合わせを含む。
【0049】
例えば、鉄化合物および安定化剤は、所望の濃度(複数可)で水性キャリア(例えば、水)に加えることができる。次いで、pHが(必要に応じて)調整されて、表面改質コロイダルシリカ粒子が所望の濃度で混合物に添加されて、研磨組成物を形成し得る。研磨組成物は、使用の直前に(例えば、使用前の約1分以内に、または使用前の約1時間以内に、または使用前の約7日以内に)1種以上の構成要素を研磨組成物に添加して、使用に先立って調製することができる。研磨組成物はまた、研磨作業中に基板の表面で構成要素を混合することによっても調製することができる。
【0050】
研磨組成物はまた、使用前に適切な量の水性キャリアで、特に水で希釈されることを意図した濃縮物として提供することもできる。このような実施形態では、研磨組成物濃縮物は、適切な量の水で濃縮物を希釈すると、研磨組成物の各構成要素が、研磨組成物中に、上に列挙された各構成要素の適切な範囲内の濃度で存在するようになる量で、表面改質コロイダルシリカ粒子、鉄化合物、安定化剤、および水性キャリアを含み得る。その上、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的にまたは完全に濃縮物中に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する水を好適な比率で含有することができる。
【0051】
研磨組成物は使用のかなり前か、または使用の少し前でも調製することができるが、研磨組成物はまた、使用時点またはその付近で研磨組成物の構成要素を混合することによって作製され得る。本明細書で使用される場合、「使用時点」という用語は、研磨組成物が基板表面(例えば、研磨パッドまたは基板表面自体)に適用される時点を指す。使用時点での混合を利用して研磨組成物を作製する場合、研磨組成物の構成要素は2つ以上の保管デバイスに別々に保管される。
【0052】
本明細書に記載されるように、本発明は、基板表面上のタングステン層および基板表面上の酸化ケイ素層を含む基板を化学機械的に研磨する方法を提供する。
【0053】
本発明の研磨方法は、タングステン層および酸化ケイ素層を含む任意の好適な基板を研磨するために使用され得る。好適な基板としては、フラットパネルディスプレイ、集積回路、メモリまたは剛性ディスク、金属、半導体、層間絶縁体(ILD)デバイス、微小電子機械システム(MEMS)、3D NANDデバイス、強誘電体、および磁気ヘッドが挙げられるが、これらに限定されない。研磨組成物は、シャロートレンチアイソレーション(STI)加工を受けた基板を平坦化または研磨するのに特に適している。望ましくは、基板は、絶縁体含有(例えば、酸化ケイ素含有)表面、特に、絶縁体材料のトレンチ領域によって分離された隆起絶縁体領域を含むパターン絶縁体材料の領域を有する表面を含む。基板は、少なくとも1つの他の層、例えば、絶縁層をさらに含むことができる。絶縁層は、金属酸化物、多孔質金属酸化物、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、または任意の他の好適な高もしくは低κ絶縁層であり得る。絶縁層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせ、を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。酸化ケイ素層は、その多くが当該技術分野で既知である任意の好適な酸化ケイ素、を含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。例えば、酸化ケイ素層は、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、ポロフォスフォシリケートガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、スピンオン絶縁体(SOD)酸化物、化学蒸着(CVD)酸化物、プラズマ増強テトラエチルオルトシリケート(PETEOS)、熱酸化物、またはドープされていないシリケートガラスを含むことができる。基板は、金属層をさらに含むことができる。金属は、例えば、銅、タンタル、タングステン、チタン、白金、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組み合わせなどのその多くが当該技術分野で既知である任意の好適な金属を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなることができる。
【0054】
別の好ましい実施形態では、基板は、タングステンプラグおよび相互接続構造を含む。
【0055】
研磨用途に応じて適切な研磨性能を得るために、研磨組成物は適切な「選択性」または「調整可能性」を有することが望ましい。典型的には、適切な欠陥率または侵食性能を依然として示しながら適切な処理スループットを得るために、誘電体材料(例えば、酸化ケイ素)と比較してタングステンの高い除去速度を有することが望ましい。本発明の研磨組成物は、除去速度選択性を有利に示すため、研磨組成物は、ブランケット研磨、またはバルク研磨用途に好適である。加えて、本発明の研磨組成物は、加工された基板から高品質のデバイスを作製するのに十分に好適な、改善された研磨性能(例えば、欠陥率の改善、浸食の低減、およびEOEの低減)を有利に示す。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、タングステン層の除去速度の酸化ケイ素層の除去速度に対する比(すなわち、W:TEOS比)は、約20:1超であり、例えば、約25:1超、約30:1超、約35:1超、約40:1超、約45:1超、約50:1超、約55:1超、約60:1超、約65:1超、約70:1超、または約75:1超である。
【0057】
本発明の組成物の研磨性能は、任意の好適な基板または方法を使用して評価され得る。研磨性能を評価するのに好適な基板の1つの種類は、ライン&スペース(L&S)パターンを含む基板であり、表面はラインフィールドとスペースを含む。ラインフィールド、またはパターン化されたフィールドは、金属および酸化物のラインアレイを含み、別の酸化物の連続フィールドに金属の孤立ラインを含み得る。ラインフィールドは、連続する絶縁体材料のフィールド(スペース)に分散される。ラインアレイは、タングステンおよび酸化ケイ素のラインなどの金属および酸化物ラインを含み、任意の密度またはサイズ、例えば、1μm幅の金属のラインと1μm幅の酸化物の交互のライン(すなわち50%の1μmのアレイ)、または異なるサイズまたは密度の交互のライン、例えば、1μm幅の金属のラインと3μm幅の酸化物のライン(すなわち25%の1x3μmのアレイ)であり得る。孤立金属ラインは、典型的には、ラインアレイに関連付けられ、アレイからある程度の距離の酸化物フィールド内に位置し、典型的には、アレイ内の金属ラインと同じ寸法(幅)のものである。例えば、1x1μmのラインアレイの片側に、別の酸化物の連続フィールドに位置し、互いにかつアレイから>100μmだけ離れた、2つの1μmの金属の孤立ラインが存在し得る。比較のために、連続する絶縁体材料のフィールドは、典型的には、寸法が大きい場合があり、酸化ケイ素、例えば、TEOSなどの連続する絶縁体材料の表面を有する。連続する絶縁材料の例示的なフィールド(または「スペース」)は、100×100μmの領域であり得る。
【0058】
このようなL&S基板の研磨後のパターン性能を評価するために、連続する絶縁体のフィールドで発生する絶対的な酸化物損失(除去された材料)が、市販の装置(KLA Tencor,Milpitas,CAによって供給されるF5Xツール)を使用した光学的方法などによって決定される。連続する絶縁体のフィールドは、アレイ内の相対的なパターン測定の基準として使用される。例えば、タングステン金属およびTEOS酸化物の交互のラインで構成されるラインアレイは、連続するフィールド酸化物に関して表面形状測定または原子間力顕微鏡(AFM)によって測定され得る。浸食は、連続するフィールド酸化物と比較して、ラインアレイ内の1μmのTEOSラインなどの酸化物の相対的な高さの差異として特徴付けられる。正の浸食値は、連続するフィールド酸化物と比較して、酸化物ラインの相対的な凹みとして解釈される。金属ディッシングとは、典型的には、ラインアレイ内の酸化物ラインと比較した金属ラインの相対的な高さを指す。例えば、50%の1x1μmのラインアレイでは、200Åディッシングの値は、酸化物ラインに対するタングステンラインの200Åの凹みとして解釈される。浸食とディッシングを足すと、この場合は、凹み部(ディッシングされたタングステン)からフィールド酸化物までの合計段差が提供される。アレイ内の酸化物または金属の総損失は、ディッシング値と浸食値と、連続フィールドで決定された絶対酸化物損失値とを組み合わせることによって決定され得る。
【0059】
パターンに関連する他の浸食現象は、ラインアレイの縁部に関連する浸食の増加、または孤立ライン付近の領域の浸食の増加など、局所的な浸食の領域である。例えば、酸化物のフィールド内の1μmの孤立ラインでは、ライン幅が>1μm増加すると、局部的な浸食が観察され得る。浸食は、増加したライン幅の観点から、もしくは参照フィールドに対する特定の深さまでのライン幅の増加の観点から、またはこれら2つの特性の組み合わせから説明され得る。
【0060】
本明細書に記載の化学機械研磨組成物および本発明の方法は、化学機械研磨装置とともに使用するのに特に適している。典型的には、その装置は、使用時に、運動し、軌道運動、直線運動、または円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触して運転時にプラテンとともに動く研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して基板を接触させて動かすことにより研磨されるように基板を保持するキャリアとを含む。基板の研磨は、基板が研磨パッドおよび本発明の研磨組成物と接触するように配置され、次いで研磨パッドを基板に対して動かして、基板の少なくとも一部を研削して基板を研磨することにより行われる。
【0061】
基板は、任意の適切な研磨パッド(例えば、研磨表面)を使用して化学機械研磨組成物で研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布および不織布の研磨パッドが含まれる。さらに、好適な研磨パッドは、さまざまな密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮時に反発する能力、および圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成品、およびそれらの混合物が含まれる。軟質ポリウレタン研磨パッドは、本発明の研磨方法との併用において特に有用である。典型的なパッドとしては、SURFIN(商標)000、SURFIN(商標)SSW1、SPM3100 Eminess Technologies)、POLITEX(商標)(Dow Chemical Company)、ならびにPOLYPAS(商標)27(富士紡)、Cabot Microelectronicsから市販されているNEXPLANAR(商標)E6088およびEPIC(商標)D100パッドが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい研磨パッドは、Dow Chemicalから市販されている硬質の微孔性ポリウレタンパッド(IC1010(商標))である。
【0062】
望ましくは、化学機械研磨装置は、現場で研磨の終点を検出するシステムをさらに備え、その多くは当技術分野で知られている。研磨する基板の表面から反射する光または他の放射を分析することによる研磨プロセスを検査および監視する技術は、当技術分野で知られている。そのような方法は、例えば、米国特許5,196,353号、米国特許5,433,651号、米国特許5,609,511号、米国特許5,643,046号、米国特許5,658,183号、米国特許5,730,642号、米国特許5,838,447号、米国特許5,872,633号、米国特許5,893,796号、米国特許5,949,927号、および米国特許5,964,643号に開示されている。望ましくは、研磨する基板に関する研磨プロセスの進行の検査または監視により、研磨の終点の決定、すなわち特定の基板に関する研磨プロセスをいつ終了するかの決定が可能になる。
【0063】
実施形態
(1)実施形態(1)では、基板を化学機械的に研磨することであって、(i)基板を提供することであって、基板が基板表面上のタングステン層と、基板表面上の酸化ケイ素層とを含む基板を提供することと、(ii)研磨パッドを提供することと、(iii)(a)粒子の表面に負に帯電した基を含む表面改質コロイダルシリカ粒子であって、負電荷、約90nm~約350nmの粒子サイズ、および約2のpHで約-20mV~約-70mVのゼータ電位を有する、表面改質コロイダルシリカ粒子、(b)鉄化合物、(c)安定化剤、ならびに(d)水性キャリア、を含む、化学機械研磨組成物を提供することと、(iv)基板を、研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と接触させることと、(v)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を、基板に対して動かして、タングステン層の少なくとも一部と酸化ケイ素層の少なくとも一部を研削して、基板を研磨することと、を含む、基板を化学機械的に研磨することが提示される。
【0064】
実施形態(2)では、表面改質コロイダルシリカ粒子の表面上の負に帯電した基が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態(1)に記載の方法が提示される。
【0065】
実施形態(3)では、表面改質コロイダルシリカ粒子が、約90nm~約180nmの粒子サイズを有する、実施形態(1)または(2)に記載の方法が提示される。
【0066】
実施形態(4)では、表面改質コロイダルシリカ粒子が、約120nm~約180nmの粒子サイズを有する、実施形態(3)に記載の方法が提示される。
【0067】
実施形態(5)では、研磨組成物のpHが、約1.5~約3である、実施形態(1)~(4)のいずれか1つに記載の方法が提示される。
【0068】
実施形態(6)では、研磨組成物のpHが、約2~約3である、実施形態(5)に記載の方法が提示される。
【0069】
実施形態(7)では、表面改質コロイダルシリカ粒子が、研磨組成物中に、約0.01重量%~約6重量%の濃度で存在する、実施形態(1)~(6)のいずれか1つに記載の方法が提示される。
【0070】
実施形態(8)では、表面改質コロイダルシリカ粒子が、研磨組成物中に、約0.1重量%~約4.5重量%の濃度で存在する、実施形態(7)に記載の方法が提示される。
【0071】
実施形態(9)では、鉄化合物が、硝酸第二鉄またはその水和物を含む、実施形態(1)~(8)のいずれか1つに記載の方法が提示される。
【0072】
実施形態(10)では、鉄化合物が、研磨組成物中に、約0.005重量%~約0.1重量%の濃度で存在する、実施形態(9)に記載の方法が提示される。
【0073】
実施形態(11)では、安定化剤が、リン酸、o-ホスホリルエタノールアミン、アレンドロン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態(1)~(10)のいずれか1つに記載の方法が提示される。
【0074】
実施形態(12)では、安定化剤がマロン酸を含む、実施形態(11)に記載の方法が提示される。
【0075】
実施形態(13)では、安定化剤が、研磨組成物中に、約0.01重量%~約1.5重量%の濃度で存在する、実施形態(1)~(12)のいずれか1つに記載の方法が提示される。
【0076】
実施形態(14)では、タングステン層の少なくとも一部の研削が、タングステン除去速度を提供し、酸化ケイ素層の少なくとも一部の研削が、酸化ケイ素除去速度を提供し、タングステン除去速度と酸化ケイ素除去速度との比が、約20:1超である、実施形態(1)~(13)に記載のいずれか1つの方法が提示される。
【実施例
【0077】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0078】
本明細書では以下の略語が使用される。MPSは(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを指し、Wはタングステンを指し、TEOSはテトラエトキシシランを指し、RRは除去速度を指す。
【0079】
実施例1
本実施例では、本発明の実施形態による、表面改質コロイダルシリカ粒子、鉄化合物、安定化剤、および水性キャリアを含む化学機械研磨組成物を使用して本発明の方法によって提供される、基板表面上のタングステン層および基板表面上の酸化ケイ素層を含む基板の研磨における有効性を示す。
【0080】
表1および表2に記載されているように、8種の異なる研磨組成物(研磨組成物1A~1H)を、8種の異なるコロイダルシリカ粒子(粒子P1~P8)のうちの1種を使用して調製した。コロイダルシリカ粒子P1は、68nmの平均粒子サイズを有する比較コロイダルシリカ粒子であった。
【0081】
表面改質コロイダルシリカ粒子(P1~P8)を以下のようにして調製した。反応器(10L)に脱イオン水およびコロイダルシリカ分散液を充填して、3.5kgの10%(w/v)SiOコロイド分散液を得た。これに0.5gのKOH(45%)溶液を添加して、pHを約8.5に調整し、続いて表1に示されている量のMPSを撹拌しながら添加した。反応器を45℃に加熱し、その温度で48時間維持した後、過酸化水素(30%)をH:MPSのモル比3:1で添加し、溶液を45℃で6時間撹拌した。MPSおよびH反応の化学量論を表1に記載する。
【表1】
【0082】
研磨組成物1A~1Gを、以下のように粒子P1~P7を使用して調製した:攪拌した水溶液(5.2kg)に、安定化剤としてマロン酸(5.3g)、鉄化合物として硝酸鉄九水和物(硝酸鉄九水和物10%溶液を41.3g)、アニオン性コロイダルシリカ(粒子の11%溶液を250g)および殺生物剤としてKATHON(商標)LX(10.6%溶液を0.3g)を加えた。必要に応じて、溶液のpHを硝酸(70%)または水酸化カリウム(45%)で2.3に調整した。研磨前に、酸化剤として2%の過酸化水素(30%)を各スラリーに加えた。
【0083】
タングステン層および酸化ケイ素層を含む基板を、研磨組成物1A~1Gで別個に研磨した。E6088研磨パッド(Cabot Microelectronics、イリノイ州オーロラ)を使用して、以下の研磨条件下で基板を研磨した:ツール=MIRRA(商標)、SFR=150mL/分、プラテン速度/ヘッド速度=115/121rpm、内部チューブ圧力=159hPa、保持リング圧力=186hPa、膜圧=138hPa、およびex situ法コンディショナー=SAESOL(商標)D4 26.7N。
【0084】
除去速度(RR)を含むブランケット研磨性能の結果を表2に示す。
【表2】
【0085】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の研磨組成物は、改善されたバルク研磨性能を示す。例えば、研磨組成物1B~1Gは、比較例の研磨組成物1Aより、TEOSに対するタングステンの選択性がより高く、タングステン除去速度がより高いことを示した。本発明の研磨組成物1Eは、タングステンブランケット除去速度が、比較例の研磨組成物1Aのタングステン除去速度のほぼ2倍であることを示し、本発明の研磨組成物1FのTEOSに対するタングステン選択性が、比較例の研磨組成物1Aと比較して、約2倍を示した。
【0086】
タングステン層および酸化ケイ素層を含むパターン化された基板を、次の条件を使用して研磨した:スラリー流量=150mL/分、内管/保持リング/膜圧=3.3/2.7/2(psi)、プラテン速度/ヘッド速度=115/121、コンディショナー=SAESOL(商標)D4 6ポンド ex situ法、研磨時間=エンドポイント+20秒、4箇所の中央値。パターンをレーザー照射したエンドポイントまで研磨し、その後20秒の固定時間で研磨した。値はパターン上の4箇所の平均を表す。
【0087】
パターン研磨性能結果を表3に記載する。
【表3】
【0088】
表3の結果から明らかなように、本発明の研磨組成物は、パターン化された基板に対して改善された研磨性能を示した。例えば、本発明の研磨組成物1Eは、0.18x0.18μmラインにおいて、実験誤差(すなわち、5nm対4nm)内で、比較例の研磨組成物1Aと同じ侵食値を示したが、0.18μmの孤立ライン(つまり、1nm対5nm)において、局部腐食は20%しか示さず、1μmの孤立ライン(つまり、4.8nm対11.1nm)においては、局部腐食は半分しかない。
【0089】
本明細書に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語および同様の指示語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ以上の項目の列挙に続く「少なくとも1つの」という用語(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(AまたはB)から選択される1つの項目、または列挙された項目(AおよびB)の2つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言葉(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であるとして特許請求されていないすべての要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0091】
本発明を行うための本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切なものとして使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたとおりではなく別の方法で実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変形および同等物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、それらのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。