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特許7328231毛髪の着色のための改善された組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】毛髪の着色のための改善された組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20230808BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230808BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20230808BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61K8/898
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/41
A61K8/81
A61K8/89
A61Q5/06
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2020540478
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019014633
(87)【国際公開番号】W WO2019144157
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】62/620,044
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/620,083
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ベンジオン・ランダ
(72)【発明者】
【氏名】サジ・アブラモヴィッチ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504629(JP,A)
【文献】特開2010-083892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0235655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の毛髪をコーティングする方法であって、前記方法は以下の工程:
(a)少なくとも3個のシラノール及び/又は加水分解性基を有する、少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、並びにシリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤及び疎水性無機充填剤から選択される少なくとも1つの成分を含む油相を提供する工程であって、前記油相は以下の少なくとも1つを満たす工程:
(i)前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、最大1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む
(ii)前記油相は、前記油相の重量あたり少なくとも0.01重量%の水を含む; (b)前記油相を水性前処理溶液とともにインキュベートする前処理期間に供し前処理した油相を得た後、前記前処理した油相を、水を含む水相で乳化して前処理した水中油型エマルションを得る工程;
(c)哺乳類の毛髪の個々の毛髪の外側表面に、前記前処理した水中油型エマルションを塗布する工程;
(d)個々の毛髪の外側表面上に少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを形成するために、前記前処理した水中油型エマルションの前記プレポリマーの部分縮合硬化が起こった後に、リンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記前処理した水中油型エマルションを除去する工程;
(f)前記アミノシリコーンコートの外側表面に付着する積層ポリマー層を作製するために、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料から形成される複数のポリマー粒子を含む水性分散液を塗布する工程(ここで、前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている、及び前記水性分散液は顔料及び揮発性塩基を含む)、及びリンス液で毛髪を洗浄して、過剰の前記水性分散液を除去する工程
を含む、方法。
【請求項2】
哺乳類の毛髪をコーティングする方法であって、前記方法は以下の工程:
(a)縮合硬化に続いて、硬化アミノシリコーンコートを形成する少なくとも3個のシラノール及び/又は加水分解性基を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、並びにシリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤及び疎水性無機充填剤から選択される少なくとも1つの成分を含む油相を提供する工程であって、前記油相は以下の少なくとも1つを満たす工程:
(i)前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、最大1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む;及
(ii)前記油相中の前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマー、シリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤又は疎水性無機充填剤の少なくともつは、水を含む;及び
(b)前記油相を水性前処理溶液とともにインキュベートして前処理して、前処理した油相の重量あたり少なくとも0.01重量%の水を有する前処理した油相を得る工程;
(c)前処理した水中油型エマルションを得るために、前記前処理した油相を、水を含む水相で乳化する工程;
(d)哺乳類の毛髪の個々の毛髪の外側表面に、前記前処理した水中油型エマルションを塗布する工程;
(e)個々の毛髪の外側表面に少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを形成するために、前記前処理した水中油型エマルションの前記プレポリマーの部分縮合硬化が起こった後に、リンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記前処理した水中油型エマルションを除去する工程;
(f)前記アミノシリコーンコートの外側表面に付着する積層ポリマー層を作製するために、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料から形成される複数のポリマー粒子を含む水性分散液を塗布する工程(ここで、前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている、及び前記水性分散液は顔料及び揮発性塩基を含む)、及びリンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記水性分散液を除去する工程
を含む、方法。
【請求項3】
前記油相又は前処理した油相中の油と水相の体積比は、少なくとも9:1でる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
インキュベートされる前記成分は、成分の重量あたり1重量%未満の水を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記水性前処理溶液は、前記成分の重量の、10重量%以下の量で前記成分に添加され、前記水性前処理溶液は、前記成分の重量の、少なくとも0.1重量%の量で、前記成分に添加される、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
記油相を前記前処理期間にわたって水性前処理溶液とインキュベートし、前記水性前処理溶液は油相の重量の、2.5重量%以下の量で前記油相に添加され、前記水性前処理溶液は油相の重量の、0.01重量%以上ので前処理した油相に添加される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記水性前処理溶液は、0.5~2.5の範囲のpHを有し;前記水性前処理溶液はさらに酸を含み;前記酸は、前記水性前処理溶液の重量の少なくとも30重量%を成する、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記前処理期間は、24時間以下である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記前処理は、15℃~60℃の範囲の温度で実行される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの前処理した成分が、反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、アミノ及び非アミノシリコーン油、疎水性無機充填剤及び顔料分散剤の群から選択される乾燥成分から調製される、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
記油相又は前記前処理した油相内の前記アミノシリコーンプレポリマーの濃度は、前記油相又は前記前処理した油相の重量の、少なくとも15%であり、最大95%である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記油相又は前記前処理した油相は、アミノシリコーン油、非アミノシリコーン油又は1分子あたり2個以下のシラノール及び/又は加水分解性基を有する反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの少なくとも1つを含み、前記成分は前記油相又は前記前処理した油相の重量の、1%~65%の範囲内の合計濃度である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
1つのシラノール又は加水分解性基を有する末端縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの前記油相又は前記前処理した油相中の濃度は、前記油相又は前処理した油相の重量の、最大5%でる、請求項1~12のいずれかに記載の方法
【請求項14】
記水中油型エマルションの表面ゼータ電位はゼロより大きい、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記油相又は前記前処理した油相中の有機溶媒の、重量に基づく総濃度は、前記油相又は前記前処理した油相の重量の、最大10重量%でる、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記水相中の水混和性共溶媒の、重量に基づく総濃度は、最大10重量%でる、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、固体の疎水性無機充填剤をさらに含み、前記充填剤は前記油相又は前記前処理した油相中に配置されるか又は分散されており、前記充填剤は前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの硬化を促進するように選択されるか又は適合されており、前記固体の疎水性無機充填剤は、5~500nmの範囲内の平均粒子径(Dv50)を有する疎水性ヒュームドシリカを含;前記油相中又は前記前処理した油相中に配置されるか又は分散された前記固体の疎水性無機充填剤の濃度は、油相の重量の0.2重量%~12重量%の範囲内である、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、ゼロより大きい表面ゼータ電位を有し;前記表面ゼータ電位は、前記水中油型エマルションの本来のpHで測定される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記水性分散液のpHにおいて、前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、第1の表面ゼータ電位(ζ1)を有し、前記水性分散液は、第2のゼータ電位(ζ2)を有し、前記pHでのゼータ差(Δζ)は、Δζ=ζ1-ζ2で定義され、ミリボルト(mV)でのΔζは、以下:
(i)Δζは少なくとも10;
(ii)Δζは10~80の範囲内である;
(iii)前記pHは4~11の範囲内であり、前記第1の表面ゼータ電位(ζ1)はゼロより大きい(ζl>0)
の少なくとも1つを満たす、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、23℃で1重量%未満の水への溶解度を有する反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートは、個々の毛髪の外側表面上で自己終端(self-terminated)している、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、酸部分が前記親水性ポリマー材料の重量の、少なくとも8重量%を構成する、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記揮発性塩基は、アンモニア(NH )、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はモルホリンの群から選択され、前記方法は、前記中和された酸部分を酸性化するために、前記複数のポリマー粒子を含む水性分散液に関連する揮発性塩基を揮発させる工程をさらに含む、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記方法は、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に水性分散液を塗布した後に疎水性ポリマー材料を得るために、前記親水性ポリマー材料をその共役酸に変換させる工程をさらに含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記中和された酸部分を有する前記親水性ポリマー材料は、中和されたアルケン-アクリル酸コポリマー、中和されたアルケン-メタクリル酸コポリマー及び中和されたアクリルアミド/アクリレートコポリマーの群から選択される1つ又は複数の中和されたコポリマーを含む、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、7.5~11の範囲内のpHで、前記親水性ポリマー材料は、分散剤及び他のすべての添加剤が水中にない場合に、水中で自己分散可能である、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記親水性ポリマー材料は、pH10のとき少なくとも2重量%の溶解度を有する、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記部分縮合硬化は、最高38℃の度で起こる、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記洗浄は、前記前処理した水中油型エマルションの前記塗布が完了した後30分以内に行われ、前記リンス液は、(i)水、又は(ii)カチオン性界面活性剤を含むカチオン性リンス液、又は(iii)非カチオン性界面活性剤、それぞれ少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを脱脂及び膨潤させることができる脱脂剤及び/又は膨潤剤を含まないリンス液、である請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記洗浄が行われ、前記洗浄に続いて、湿気又は周囲水分のみによって、さらに硬化蒸発する、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記油相又は前記前処理した油相内の反応性縮合硬化性アミノシリコーン成分の総濃度は、顔料が無い場合に基づき、少なくとも45重量%である、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、アルコキシ-シラン反応性基、シラノール反応性基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性基を含む、請求項1~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記油相又は前記前処理した油相は、すべての無機含有物及び顔料を除いて、ガラス転移温度を有さず、前記油相又は前記前処理した油相の、23℃で適切なレオメーターで測定した粘度は、2~1,000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲内である、請求項1~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは23℃で液体である、請求項1~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
a)前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、b)前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーのすべて、c)顔料分散剤及びd)前記油相又は前処理した油相のすべて:の少なくとも1つは、3~1,000の範囲のアミンナンバー(Amine Number)又は重量平均アミンナンバーを有する、請求項1~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
アミノシリコーン油は、前記油相又は前記前処理した油相内に存在し、前記油相又は前記前処理した油相内のアミノシリコーン油の総濃度は重量で、最大40重量%である、請求項1~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
任意の顔料粒子及び前記顔料粒子のための分散剤を含む前記プレポリマー、前記疎水性無機充填剤、前記アミノシリコーン油及び前記シリコーン油の、前記油相内又は前記前処理した油相内の総濃度は、重量で少なくとも90重量%である、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記水相は、水中油型乳化剤をさらに含み、前記水中油型乳化剤は、12~18の範囲内のHLB数を有する、請求項1~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記水相内の前記水及び任意の乳化剤の総濃度は、重量に基づいて少なくとも90重量%である、請求項1~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記前処理された水中油型エマルションが塗布される哺乳類の毛髪は、乾燥又は非湿潤の哺乳類の毛髪、又は予め染められた毛髪である、請求項1~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記油相、前記前処理した油相又は中和された酸部分を有する親水性ポリマーの前記ポリマー粒子の少なくとも1つが存在する場合、顔料をさらに含むか又は包埋し、前記油相又は前記前処理した油相は分散剤をさらに含み、前記顔料は前記分散剤内に分散され;前記油相、前記前処理された油相又は中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料の前記ポリマー粒子の少なくとも1つが存在する場合、それぞれ油相又はポリマー材料の重量で、油相及び/又は水性分散内に少なくとも0.1重量%の前記顔料を含むか又は包埋する、請求項1~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記水中油型エマルションの前記水相は、前記水相中に前記顔料を最大20重量%の量で含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記前処理した水中油型エマルションは、第1の顔料を含有するか又は包含し、前記複数のポリマー粒子を含む前記水性分散が、少なくとも部分的に硬化されたアミノシリコーンコート上に塗布され、前記水性分散は第2の顔料を含有するか又は包含し、前記第1及び第2の顔料は同じであるか又は異なる、請求項41又は42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、哺乳類の毛髪などのケラチン繊維をコーティング又は着色するための組成物に関する。これを調製及び使用する方法、ならびにそのような組成物の調製及びそのような方法の実施を可能にするキットも開示される。
【背景技術】
【0002】
天然の毛髪の色は、2つのタイプのメラニン:ユーメラニン及びフェオメラニンに起因する毛包の色素沈着である。一般に、ユーメラニンが多いほど、毛髪の色は黒くなり;ユーメラニンの量が少ないと、毛髪の色が明るくなる。メラニンのレベルは時間の経過とともに変化し、毛髪の色の変化を引き起こす。
【0003】
ヒトの毛根でのメラニン生成は加齢とともに減少し、毛髪の明色化を引き起こし、最終的に停止する。いったんメラニンの生成が停止すると、光が新しい毛髪を通して反射する場合、新しい毛髪は灰色又は白色になる。
【0004】
ヘアカラーリングは毛髪の色を変える習慣である。この習慣の主な理由は美容(例えば、白髪を覆うため、よりファッショナブル又は望ましいと見なされる色に変更するため、又は例えば理髪処理又は日焼けによって毛髪の色が変色した後に元の毛髪の色に戻すため)である。ヘアカラーリングは、化学的、オーガニック、植物性又は天然の着色剤を含む着色組成物の使用により達成される。着色剤は、一般に2つのカテゴリ:a)毛髪に浸透し(外部に留まることもできる)、目的の着色効果を誘導するように反応し得る可溶性染料、及びb)それらの寸法を考慮すると、通常毛髪繊維の外側の着色に限定される水不溶性顔料に分類される。
【0005】
効果がどのくらい持続するかに基づいて、カラーリングは永久的、半永久的(デミパーマネント;demi-permanent)、半永久的(セミパーマネント;semi-permanent)又は一時的であり得る。
【0006】
永久的ヘアカラーリングは、典型的には直接染料又は酸化染料前駆体の毛幹の奥への浸透を含み、一般に、ブリーチを必要とする既存のメラニンの除去が先行し、毛髪皮質内への着色剤のシーリングを含む。永久的カラーリングは、完全に発色させるために酸化剤又は結合剤をさらに必要とする。少なくとも30回のシャンプー洗浄でも、その色はシャンプーで洗い流されない。しかしながら、そのような永久的な着色は毛髪に深刻な損傷を与え得る。
【0007】
デミパーマネントヘアカラーリング組成物も、付着層のみのヘアカラーとして知られている。これらは永久的な毛髪着色組成物よりも化学的に穏やかであり、部分的にのみ毛幹に浸透し、通常毛髪の元の色素を除去しない。デミパーマネントヘアカラーは約10~30回のシャンプー洗浄で洗い流される。
【0008】
セミパーマネントヘアカラーリング組成物は、永久的又はデミパーマネントカラーリング組成物よりも化学的に穏やかであり、毛幹への浸透の程度がごくわずかである。セミパーマネント着色組成物は、4~10回のシャンプー洗浄の間のみ、毛髪上に残る。
【0009】
永久的、デミパーマネント又はセミパーマネントカラーリングプロセスは、ケラチン繊維を損傷することが知られている。さらに、一定のプロセスは健康への懸念を引き起こし、一部の組成物は発がん性である可能性がある。
【0010】
一時的なヘアカラーリング組成物は、毛幹に浸透せず、毛幹の外側表面上に残る。そのような着色組成物は、1回のシャンプーによって容易に洗い流され得、好ましい状況下でせいぜい2~3回のシャンプーに耐え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
繊維の着色が長時間持続するにも関わらず、既知の着色組成物と比較して、浸透を低減し、着色された繊維の完全性(integrity)への影響を低減する、毛髪などのケラチン繊維を着色するための着色組成物の必要性が依然存在している。
【0012】
さらに、暗色ケラチン繊維用の着色組成物が必要とされており、そのような着色組成物は、天然のケラチン繊維よりも明るい色を提供し、前記着色組成物は、ケラチン繊維のブリーチを必要とせずに使用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、ヒトの毛髪などのケラチン繊維をコーティング又は着色するための方法、組成物及びキットが提供される。例示的な実施形態によれば、哺乳類の毛髪をコーティングする方法は、(a)少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーを含む油相を提供する工程を含む。前記油相は、以下の少なくとも1つを満たす:
(i)前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、最大1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む;
(ii)前記油相は、前記プレポリマーを硬化するように適合されたか又は選択された非アミノ架橋剤をさらに含み、前記非アミノ架橋剤は、最大1,000g/モルの範囲の分子量を有する;
(iii)前記(i)及び/又は(ii)による油相は、シリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤又は反応性疎水性無機充填剤の少なくとも1つをさらに含む。
前記油相は、前記油相の重量当たり少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%又は少なくとも1重量%の水を含む。前記方法は、(b)前処理した油相を得るために、前記油相を前処理期間に供した後に、前処理した水中油型エマルションを得るために、前記前処理した油相を、水を含む水相で乳化する工程をさらに含む。前記方法は、(c)哺乳類の毛髪の個々の毛髪の外側表面に、前記前処理した水中油型エマルションを塗布する工程をさらに含む。前記方法は、(d)個々の毛髪の外側表面上に少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを形成するために、前記前処理した水中油型エマルションの前記プレポリマーの部分縮合硬化が起こった後に、場合により過剰の前記前処理した水中油型エマルションを除去するために、リンス液で毛髪を洗浄する工程をさらに含む。場合により、前記方法は、(f)前記アミノシリコーンコートの外側表面に付着する積層ポリマー層を作製するために、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料で形成された複数のポリマー粒子を含む水性分散液(前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている)を塗布する工程をさらに含む。場合により、前記方法は過剰の前記水性分散液を除去するためにリンス液で毛髪を洗浄する工程をさらに含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して本明細書で説明される。前記説明は、前記図面とともに、本開示のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0015】
図面は例示的な説明を目的とするものであり、本開示の基本的な理解に必要なものよりも詳細に実施形態の構造の詳細を示す試みはなされていない。明確性のために、図面に描かれているいくつかの物体は縮尺通りではない。
【0016】
図1A図1Aは、いくつかの実施形態による、反応性アミノシリコーンプレポリマーを含有するいくつかのエマルション液滴の存在下での、単一のケラチン繊維の概略図である。
図1B図1Bは、図1Aのエマルション液滴のいくつかが、どのようにして前記繊維に向かって移動し、その上に配置し得るかを表す概略図である。
図1C図1Cは、前記エマルション液滴がどのようにして前記繊維の外部表面上にさらに蓄積し得るかを概略的に示す。
図1D図1Dは、前記エマルション液滴が、繊維の外部表面上に連続フィルムを形成するためにどのようにして合体し得るかを概略的に示す。
図1E図1Eは、拡大された倍率でヘアスケールを表示し、コーティングされていない哺乳類の毛髪の表面の上面図を概略的に示す。
図1F図1Fは、拡大された倍率での持ち上げられたヘアスケールを含む、コーティングされた哺乳類の毛髪の表面を通る縦断面の側面図を概略的に示す。
図2A図2Aは、酸部分を有する中和されたポリマーのポリマー粒子が、どのようにして繊維の外部表面上のアミノシリコーンフィルムに向かって移動し得るかを概略的に示す。
図2B図2Bは、ポリマー粒子がどのようにして、アミノシリコーンフィルムの外部表面上にさらに蓄積し得るかを概略的に示す。
図2C図2Cは、ポリマー粒子が、アミノシリコーンフィルムの外側表面上に連続層を形成するためにどのようにして合体し得るかを概略的に示す。
図2D図2Dは、中和剤がどのようにして、ポリマー材料の特性を改質するポリマー層から蒸発し得るかを概略的に示す。
図2E図2Eは、ポリマー層の下のアミノシリコーンフィルムがどのようにして、下層の繊維の外側表面に付着し得るかを概略的に示す。
図3A図3Aは、反応性油相の前処理期間の関数として、例示的な前処理組成物中に存在するヒドロキシルのパーセンテージを示す概略プロットである。
図3B図3Bは、その反応性油相の前処理期間の関数として、例示的な水中油型エマルションによって達成可能な着色の程度を示す概略プロットである。
図3C図3Cは、その反応性油相の前処理期間の関数として、例示的な水中油型エマルションによって達成可能な着色永続性の程度を示す概略プロットである。
図3D図3Dは、その反応性油相の前処理期間の関数として、例示的な水中油型エマルションによって示される粘着性のレベルを示す概略プロットである。
図4図4は、図3A図3Dと同様のプロットが単一のグラフに表示される概略グラフであり、個々の曲線は改善された実施形態における加水分解、着色、永続性及び粘着性の程度を表す。
図5図5は、本教示の様々な実施形態による、前処理組成物を含む組成物を調製するための方法の簡略化された概略図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、ヒト又は動物の毛髪などの哺乳類の毛髪を含むケラチン繊維を着色又は美容的に処理するための組成物に関し、特に毛髪繊維の外部表面上にアミノシリコーンコートを形成できる反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーを含む油相を含む水中油型エマルションに関する。次に、前記アミノシリコーンコートは、ポリマー粒子(場合により、顔料粒子を包含する親水性ポリマー材料のミセルを含む)を含む水性分散液の基材として機能することができる。本開示は、特に油相から乳化された水中油型エマルション、得られるアミノシリコーンコート及び次に続くポリマー材料の層の性能を特に改善するために、油相を前処理する方法により特に関する。
【0018】
<ヘアコーティングプロセスの概要>
前処理方法を詳述する前に、第1のコートの形成のために反応性縮合硬化アミノシリコーンを使用する革新的なコーティング又は着色プロセスの概要が、図1を参照して提供される。簡略化するために、プロセスの種々の相は、独立した毛髪繊維の片面に示されている。哺乳類の繊維10の外部表面上にアミノシリコーンコート(「ASコート」)を形成するには、駆動力(driving force)が必要である。理論によって制限されることを望まないが、本開示の様々な方法において、エマルション内からアミノシリコーン含有反応相液滴12を繊維表面に送達するための初期駆動力は、繊維の外部表面(等電pHより高い)に配置された負に帯電した官能基(例えばヒドロキシル、カルボキシルなど)と、アミノシリコーン含有反応相液滴中の正に帯電した官能アミン基との間の静電引力14を含むか、又は主に含むと考えられる。111is静電引力は、図1Aに概略的に示されている(111is electrostatic attraction is shown schematically in Figure 1A)。そのような駆動力は、湿潤液と湿潤表面の表面エネルギーの相違によって評価することもできる。ケラチン基質の表面エネルギー以下の表面エネルギーを有するアミノシリコーンは、有利であると考えられる。例えば、未処理の損傷を受けていないヒトの毛髪の表面エネルギーは、通常24~28ミリニュートン/メートル(mN/m、dyn/cmとも呼ばれる)であるが、処理した毛髪は38~47mN/mの範囲である。
【0019】
疎水性である反応相の液滴が繊維表面に到達した後、図1Bの矢印16で概略的に示されるように、前記液滴は、繊維表面上に配置された水又は空気と置き換わると考えられ、アミノシリコーン種中の正に帯電した官能性アミン基のいくつかは、繊維表面に配置された負に帯電した官能基のいくつかに結合する、又はそうでなければ一体化するために十分近づくよう駆動される(d:ravvn)ものと考えられる(図1Bを参照のこと)。
【0020】
短時間、通常数分以内に、最初のアミノシリコーンフィルムが繊維表面上に形成され、それは約500ナノメートルの典型的な厚さ(通常100nm~2,000nmの範囲内)を有する。前記フィルムは、有利には自己終結性(self-terminating)であってよい。理論によって制限されることを望まないが、前記最初のアミノシリコーン単一層の形成に続いて、アミノシリコーンの最初の(及び介在する)層12’を「通って」さえ、連続するアミノシリコーン含有液滴は、繊維表面の負電荷によって引き付けられ続けるが、その中のアミンに基づく部分の正電荷によりはね返される。最初は、引力対反発力の合力は正であるので、アミノシリコーン含有液滴は、図1Cに示すようにアミノシリコーンが蓄積する繊維表面に引き付けられ続ける。この繊維上のアミノシリコーンの蓄積は、引力対反発力の合力が正のままである限り、静電的に駆動され続ける。
【0021】
この凝集の厚さが増加するにつれて、負に帯電した繊維表面は、凝集したアミノシリコーン中で又はその近くで、バルク中に配置された正に帯電した液滴から離れ、その上の引力が減少する。加えて、アミノシリコーン凝集物の全体的な正電荷は、凝集の質量が増加するとともに増加するので、反発力が増加し続ける。合力がゼロに近づいた後、繊維表面へのアミノシリコーン含有液滴の正味の流束(net flux)は実質的には存在しないため、自己終結が行われる。負に帯電した繊維表面に配置された、自己終結した正に帯電したアミノシリコーン凝集体を図1Cに概略的に示す。帯電した種の移動が、毛髪繊維上の静止層とバルク液滴との間の反発力が以前の引力を超える点に達するとすぐに、フィルムは自己終結する。言い換えれば、自己終結が達成されると、それ以上の物質は毛髪繊維に蓄積できなくなる。
【0022】
前記プロセスのこの自己終結は、いったん駆動勾配がなくなると、従来ではコーティングの制御されない厚さにつながる材料の無限の蓄積を有利に防止する。極端な場合には、材料の無限の堆積により、実用的ではない分離できない毛髪の固まりが蓄積する。より許容できる状況においては、材料の蓄積を防ぐことはできないが、コーティングを中断することができ、この望ましくないプロセスで液体架橋された毛髪繊維は、しばしば激しいコーミングを通して個別化することができ、そのようなもつれを解くプロセスは、存在する場合、典型的には、劣悪な外観及び/又はカラーコーティングの機械抵抗/付着力の低下をもたらす。有利なことに、本教示による自己終結プロセスは、適当な厚さのコーティングをもたらし、それによりコーティングされた毛髪が個々の繊維で分離したままであり、互いに張り付かなくなる。コートの厚さは、エマルションの液滴のサイズを介して制御できる(例えば、激しい手動振とうにより容易に形成される、1~2μmのDv50を有する液滴は、0.5~1μmの厚さのコートになり得る)。
【0023】
時間が経つにつれて、繊維表面を包むアミノシリコーン凝集体が合体して、ASフィルム又はコートを形成する(図1D)。いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性アミノ官能性シリコーンプレポリマーは、エマルションの場合、200nm~100μm、200nm~50μm、200nm~25μm又は1μm~20μm又は200nm~1μm又は0.5μm~5μm又は0.7μm~3μm又は1μm~2.5μm又は1μm~10μmの範囲の平均サイズ(Dv50)を有するエマルション液滴を形成する。液滴のサイズ及び/又は液滴の集合のサイズ均一性は、任意の所望の乳化方法を選択することにより、例えば、プロセスに費やされるエネルギー及びその持続時間を調節することにより、変更することができる。低エネルギープロセス(例えば手動で混合物を振とうする)は、サイズが不均一であってよい1~5μmの範囲の液滴を提供するのに十分であり得る。中程度のエネルギープロセス(例えばプラネタリー遠心ミルを使用する)は、より均一な集合を提供し得、そのサイズは持続時間及び速度によって調整できる(例えば短時間であれば、10~20pmの範囲の液滴を提供する)。高エネルギープロセス(例えば超音波処理器を使用する)は、サブミクロン範囲の液滴を迅速に提供し得る。
【0024】
有利には、正に帯電したアミノシリコーンのコートによって湿潤した毛髪繊維が互いに反発しているので、隣接する繊維間に液体架橋がなくてもよく、したがって毛髪のクラスターが防止され、繊維は個別のままである。部分的な縮合硬化が十分に速い場合、アミノシリコーンコートの最外層は、別々の個別の毛髪として繊維の維持を促進するために、乾燥の前に十分に固くなることができる[外皮様のbamerの形成(forming a crust-like bamer)]。
【0025】
理論によって束縛されることを望まないが、比較的低いMW(比較的低い粘度)を有するプレポリマーは、比較的高いMW(比較的高い粘度)を有するプレポリマーよりも、毛髪繊維を十分に湿潤させる可能性が高いと考えられる。
【0026】
したがって、静電結合のおかげで組成物構成要素が繊維に十分に近接するように駆動されると、追加のメカニズム[例えば酸:塩基水素結合(acid:base hydrogen bonding)又は共有結合でさえ]が、アミノシリコーン分子の毛髪表面への付着のために利用可能になり得る。そのようなプロセスは、プレポリマー分子の進行中の縮合硬化と組み合わせて、(a)下層繊維への付着(「接着性」)及び(b)アミノシリコーンフィルムの「凝集性」を提供すると考えられる。
【0027】
図面には示されていないが、本開示によるアミノシリコーン組成物と組み合わせて任意に塗布される顔料粒子は、プレポリマーの成長しているネットワーク内に有利に捕捉され、その硬化は毛髪繊維のその場で完了する。そのような捕捉は、毛髪繊維への顔料粒子の付着を改善し、非反応性ポリマーの存在下で単なる物理的堆積によって得られるよりもより長い期間、毛髪繊維への顔料粒子の保持を確実にすると考えられる。サイズ縮小及び/又は顔料を粒子に分散させるために、顔料分散剤を別の予備工程で使用する場合、顔料粒子は最初に顔料分散剤によって部分的に覆われ、次に周囲のアミノシリコーンマトリックスとの界面を形成すると考えられる。このような場合、前処理は顔料粒子ではなく、顔料分散剤に施すことが好ましい。さらに、顔料分散剤の前記前処理は、顔料の分散後に行うことが好ましい。
【0028】
図面には示されていないが、上記の例示的な実施形態に従って形成されたアミノシリコーンフィルム20は、正に帯電すると考えられる(例えばアミン部分のプロトン化を可能にする塩基性pH下)。
【0029】
驚くべきことに、塩基性pH(少なくとも9.0、少なくとも9.5又は少なくとも9.75及び典型的には9.0~11.5、9.0~11.0、9.5~11.5、9.5~11.0又は9.5~10.7)を有するAS調製物(例えば水中油型エマルション)を適用すると、ASフィルムの毛髪表面への接着が明らかに向上し得ることが発見された。理論によって制限されることを望まないが、そのような塩基性pHでは、(図1Eの上から見た図に概略的に示されるように)毛髪繊維10のキューティクルスケール30が開くと考えられる。これにより、一部のアミノシリコーンが開いたキューティクルスケール30の「下」の領域に接触することが可能になる(図1F、縮尺どおりに描かれていない)。続いて、[例えばプロトン化の程度を調整する揮発性camer(volatile camer)の蒸発によって]pHが低下した後、毛髪のキューティクルスケールが通常の閉じて重なり合った構成に戻り、それによってアミノシリコーンフィルム20の一部を機械的に捕捉又は保持し、アミノシリコーンフィルムの付着を強化する。アミノシリコーンフィルムのそのような機械的捕捉を、「機械的マクロ接着(mechanical macroadhesion)」又は単に「マクロ接着」と呼んでもよい。
【0030】
さらに、水中油型エマルションのそのような塩基性pHは、コートされている毛髪繊維と反応性アミノシリコーンプレポリマーの液滴との間の電荷の差をさらに増加させると考えられる。塩基性pHでは、組成物のプレポリマー(アミン官能基によるカチオン性)は正に帯電し、毛髪繊維の表面は同様のpHで負に帯電する。当然のことながら、これらの原理によればアニオン性及びノニオン性ポリマーは、毛髪繊維へのそのような静電駆動を受けず、存在するのであれば毛髪とそれらの予想される付着は、それに応じて減少する(例えば、せいぜい物理的な堆積又は疎水性:疎水性相互作用を可能にする)。
【0031】
静電引力は、フィルムの初期接着を可能にするための主要なものであり得るが、この初期引力のための接着を確立するために、及びその後にこの接着を維持及び強化するために乗り越えなければならない相当な追加の障害が存在し得ることが見出された。
【0032】
そのような障害の1つは、相互作用部分(例えば、アミノ部分又はシラノール部分)を含む種の、繊維の外部表面との界面への輸送に関係する。このような輸送は、エマルション内のアミノシリコーン含有反応相液滴によって繊維が湿潤される程度によって強く影響を受ける、又は制御され得ることが見出された。より具体的には、この反応相の表面張力は、好ましくはこの液相が繊維の疎水性表面を十分に湿潤させるように制御される。さらに、いくつかの実施形態において、調製物の粘度、より具体的には反応相の粘度は、好ましくは、そのような種の繊維表面への輸送を促進するために十分に低くあるべきであることが見出された。
【0033】
粘性ポリマー材料を利用することの様々な利点にもかかわらず、そのような材料は、粘性がより低いモノマー及び/又はオリゴマーの対応物に関して、永久的なヘアカラーを達成するのに著しく適さない可能性があると考えられる。
【0034】
さらに、これらの条件をすべてが満たしたとしても、繊維表面に配置された負に帯電した官能基と繊維表面に輸送された正に帯電した官能アミン基との間の静電引力が、他の引力相互作用とともに、さまざまなタイプの立体障害を乗り越えるには不十分であり得ることが見出された。例えば大きなポリマー構造は、繊維表面上に位置をすでに確立している他のそのような構造(それがはるかに小さいものであっても)のために、繊維表面上の位置に適切に進め得ない。そのような干渉がない場合でも、距離の増加に伴って著しく減少する静電引力が、ポリマー構造を繊維表面に近づけない、又は帯電した官能基間の有意もしくは十分な結合を達成できないような方法で、大きなポリマー構造を繊維表面に適合させない場合がある。場合によっては、そのような結合が形成された場合でも、剪断力及び/又は抗力にさらされたとき(例えば、洗髪中)に、大きなポリマー構造をその場所に保持するには不十分であり得る。大きなポリマー構造は、繊維表面に利用できる表面積が非常に小さい(十分に近くにある)ものであり得、そのような剪断及び抗力に耐える結合の能力をさらに損ない得る。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性アミノ官能性シリコーンプレポリマーは、約100~約100,000の範囲の平均分子量を有する。典型的には、モノマーは約100~約1,000の範囲のMWを有し、オリゴマーは約200~約2,000の範囲の平均MWを有し、ポリマーは少なくとも約2,000の平均MWを有し、いくつかの実施形態では、最大で50,000の平均MWを有する。
【0036】
毛髪繊維への最初のAS結合の強度は、一般に、エマルションの反応相に配置された1つ又は複数のアミノシリコーン種のアミンナンバー(amine number)の増加と相関し得ることが見出された。しかしながら、明らかに(例えば、立体障害などによる)各アミン基の接近しやすさも考慮する必要がある。十分な静電引力及び/又は繊維への結合を起こすために、これらの1つ又は複数のアミノシリコーン種のアミンナンバー又は平均(例えば、重量平均)アミンナンバーは、少なくとも3又は少なくとも4、より典型的には少なくとも5、少なくとも6、少なくとも8、又は少なくとも10及び/又は3~200、5~500、10~1,000、10~400、10~300又は25~250の範囲内であるべきことが見出された。アミンナンバーを参照する際に、前記アミノシリコーンプレポリマーは主に考慮されるが、縮合硬化基を欠くアミノシリコーン油も、反応性油相の全体的及び平均アミンナンバーに影響し得ることも覚えておくべきである。
【0037】
アミノシリコーンプレポリマー、アミノシリコーン油又は他の任意のアミノシリコーン種のアミンナンバーは、一般に製造業者により提供されるが、例えばASTM D 2074-07に記載されるように、標準的な方法により独立して測定できる。これは、対象の材料10gを中和するのに必要な0.1NのHClのミリリットルの量で規定できる。
【0038】
本開示の実施形態によれば、このASフィルムをコーティングする積層ポリマーフィルムを生成するために、中和された酸部分を有するポリマー材料を含有する水性分散液を、下層のASフィルムに塗布してよい。いくつかの実施形態において、このポリマー材料は中和され得る酸部分を有し、例えば非限定的な例としてアクリル酸部分及びメタクリル酸部分に見出され得るカルボン酸基を含む。
【0039】
多くの実施形態において、このポリマー材料は、中和されたアルケン-アクリル酸コポリマー(例えばエチレンアクリル酸(EAA)コポリマー)又は中和されたアルケン-メタクリル酸コポリマー(例えばエチレン-メタクリル酸(EMAA)コポリマー)又は中和されたアクリルアミド/アクリレート(AAA)コポリマーを含んでよい、主に含んでよい、本質的にそれらからなってよい又はそれらからなってよい。いくつかの実施形態において、このポリマー材料は、中和されたアクリル酸部分及び中和されたメタクリル酸部分の両方を有するアクリルコポリマーを含んでよい、主に含んでよい、本質的にそれらからなってよい又はそれからなってよい。
【0040】
顔料粒子を含んでよいこのようなポリマー層は、耐摩耗性、化学種(例えば石鹸及びシャンプー)の介在に対する耐性などを含む様々な有利な特性を、(着色された)フィルム構造に提供し得る。
【0041】
さらに、このようなコポリマーは、顔料分散剤として有利に役立つ可能性があり、それにより、(例えば顔料をASコート中に分散する場合に典型的に必要な)専用の分散剤の必要性を無くす又は少なくとも軽減することが見出された。したがって、積層ポリマーフィルム内にはるかに多くの顔料を充填してよく、それにより、一定のフィルム厚に対する光学密度(着色)が改善される。そのような専用の分散剤は、積層ポリマーフィルムの凝集力、及び/又は積層ポリマーフィルムの下層ASコートへの接着力、及び/又は耐水性も損ない得る。そのような専用の分散剤は(典型的には不利なことに)、ポリマー層の軟化点温度及び/又はガラス転移温度も低下させ得る。
【0042】
ASフィルムの上及びASフィルムを包むこのポリマー層の形成は、駆動力を必要とする。理論によって制限されることを望まないが、本開示の様々な方法において、中和された酸部分を有するポリマー材料を外部のAS表面に送達するための初期駆動力には、ASフィルム上及びASフィルム内に配置された正に帯電した官能アミン基と、水性分散液内の分散ポリマー粒子22中の負に帯電した官能基(例えばカルボキシル部分)との間の静電引力が含まれるか、又は主に含まれると考えられる。この静電引力24は、図2Aに概略的に示されている。この静電引力は、塩基性pHで増強する。この静電引力によって駆動される分散したポリマー粒子はASフィルム表面に到達し、そこで負に帯電した官能基が粒子の外部表面に近づきASフィルムに面すると、ASフィルムの外部表面に配置された正に帯電した官能性アミン基と結合し、ASフィルムを覆うと考えられる。この(下層のASフィルムに関して)外側のポリマー層は、有利には自己終結してよい。ここでも理論によって制限されることを望まないが、分散した負に帯電したポリマー粒子22は、ASフィルムの全体的な正電荷によって引き付けられ続け、その結果、ポリマー粒子の複数の層22’がASフィルムの表面と結合するようになると考えられる(図2Bを参照)。しかし、分散液の「バルク」中のポリマー粒子は、これらのポリマー粒子の負電荷によってはじかれるため(図2B中の矢印28を参照)、ASフィルム上でのこれらのポリマー粒子の静電駆動による蓄積は、このポリマー層の蓄積が自己終結するように、(実質的にASフィルムに関して上記で説明したように)徐々に停止する。言い換えれば、ASコーティングの表面とその上に蓄積するポリマー粒子の層との間にゼータ電位差がある限り、ポリマー層の形成は進行する。
【0043】
上記で説明したように、ポリマー粒子によるアミノシリコーンコートのコーティングは、プロセス中のそれぞれの電荷によって部分的に駆動されると考えられるため、本方法に有利な閾値条件を説明する別の方法は、互いの相互作用による材料の初期表面ゼータ電位に基づく。塗布した水性分散液のpHでは、アミノシリコーンコートでプレコートされた哺乳類の毛髪繊維は第1の表面ゼータ電位(ζ1)を有し、水性分散液は第2のゼータ電位(ζ2)を有する。前記pHでのゼータ差(Δζ)とも呼ばれる2つの値の間のずれは、Δζ=ζ1-ζ2として定義され、各ζ1、ζ2及びΔζはミリボルト(mV)で与えられる。いくつかの実施形態において、Δζは、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも25mV、少なくとも30mV、少なくとも40mV又は少なくとも50mVである。いくつかの実施形態において、Δζは、10~80mV、10~70mV、10~60mV、15~80mV、15~70mV、15~60mV、20~80mV、20~70mV、20~60mV、25~80mV、25~70mV、25~60mV、30~80mV、30~70mV、30~60mV、35~80mV、35~70mV又は35~60mVの範囲内である。水性分散液のpHは、4~11、4~10.5、4~10、6~11、6~10.5、6~10、7~11、7~10.5又は7~10の範囲内であり、アミノシリコーンコートの第1の表面ゼータ電位(ζ1)はゼロより大きい(ζ1>0)。
【0044】
材料の表面ゼータ電位は、通常液相で測定する。固体コートのゼータ電位は、サンプルが配置されているチューブを通して、水流を流させるように適合させたゼータ電位分析器の流動電流検出器を使用して測定することができる。このような方法で得た結果は、懸濁液中の同じ粒子のゼータ電位をある程度反映している。逆に、アミノシリコーン水中油型エマルションのゼータ電位は、それから生じるアミノシリコーンコートの表面ゼータ電位の予測と見なされる。
【0045】
2つの表面間のゼータ差(Δζ)が本質的にゼロ又はゼロになると、上層のポリマー層によるアミノシリコーンコートのコーティングは自己終結する。
【0046】
経時的に、ASフィルム上の分散したポリマー粒子の凝集は合体を受けて、図2Cに概略的に提供されるポリマーオーバーコート30を形成する。並行して、ウォーターcamer(water camer)及び中和剤を含む揮発性物質は、矢印26によって概略的に示されるように蒸発する。
【0047】
塗布後の待機時間は、最大10分又は最大5分、より典型的には最大3分、最大2分、最大1.5分、又は最大1分であってよい。ポリマーオーバーコートは、約100~5,000nm、より典型的には150~2,000nm、さらにより典型的には150~1,000nm又は150~600nmの厚さを有してよい。
【0048】
概略的に示されているように、水性分散液のバルクに面して接触するこのポリマーオーバーコートの外部表面は、負に帯電した部分を含む。例えば、中和された酸部分を有するポリマー材料を含有する水性分散液中に典型的に存在する揮発性塩基(例えばアンモニア)を介して、外部表面上のこれらの部分を中和することが有利であり得る。そのような操作は、特に揮発性塩基が蒸発した後、改善された耐水性及び/又は改善された機械的特性を示すポリマー材料の共役酸のコート(図2Dにおいて32として概略的に示される)をもたらし得る。
【0049】
特に、親水性材料の中和された部分が本来の疎水性ポリマーへ戻るための酸抱合の促進、耐水性ポリマー層の形成及び粘着性の低減を起こす、より迅速な蒸発のために、過剰な中和剤は避けることが好ましい。さらに、過剰な中和剤(例えば塩基)は、第1のコートのアミノシリコーンのシラノール基を水素結合によってブロックして、他のアミノシリコーンのアミン部分へのそのようなヒドロキシル基の接近を制限し、その結果、アミノシリコーンコートの縮合硬化が遅延し得る。言い換えると、第2のコートの過剰な塩基が第1のコートの硬化を阻害する可能性がある。
【0050】
中和剤の過剰を回避するために、所望の中和度に基づく(特定の含有量の酸部分を有する)特定のポリマー材料に添加される特定の塩基の量を推定することができる。さらに、中和された分散液中の塩基の量を監視することができる。例えばpHメーターを使用してpH経由で監視できる。一実施形態において、中和された分散液中の中和剤の量は導電率によって監視された。導電率が3ミリジーメンス未満になるまで、塩基を添加するか、又は分散液を蒸発させる。
【0051】
上記のオーバーコートポリマー層の上に1つ又は複数の追加のコートを生成することが望ましい場合がある。別のアミノシリコーン含有調製物(通常はエマルション)の追加。塩基性媒体において、これによりポリマーオーバーコートの外部表面の酸基が中和され負に帯電した部分が形成され、それによって正に帯電したアミン部分が静電的に引き付けられ、続いてこれらの負に帯電した部分に結合する。
【0052】
長期間(例えば特定の前処理がない限り、12~36時間)にわたって、毛髪繊維と前記アミノシリコーンフィルムとの間の追加の結合が有利に起こってよい。図2Eは、共有結合15したアミノシリコーンフィルム20を有する毛髪繊維10の概略断面図を示し、アミノシリコーンコートは、ポリマーオーバーコート30によってさらに包まれている。
【0053】
ポリマー(又は反応性プレポリマーから形成されたフィルム)は、例えばそのガラス転移温度がもはや経時的に変化しない、すなわち実質的に安定した値に達したときに完全に硬化すると考えられ、さらなる架橋は行われないことを示唆する。あるいは、及びさらに、プレポリマーが硬化性流体中で形成できるシロキサン結合の数が、適用可能な硬化条件下で経時的に実質的に変化しない場合、アミノシリコーンポリマー(又はそれから得られるフィルム)は完全に硬化することになる。アミノシリコーンポリマー(又はそれから得られるフィルム)は、硬化したアミノシリコーンポリマー中のシロキサン結合の数は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法などの通常の分析方法で評価できる。
【0054】
<アミノシリコーンコート>
以下において、文脈からそうでないことが明確でない限り、油相又は反応性油相(及び類似の変種)は、本教示に従って前処理された反応性油相を包含するか、又はそれに関連する。同様に、(反応性)アミノシリコーン水中油型エマルションは、本教示に従って油相が前処理されたエマルションを包含するか、又はそれに関連する。
【0055】
プレポリマーは、一般に、硬化プロセスとして知られている技術により、架橋性基(反応性基とも呼ばれる)を介して、より大きなマクロ分子を形成するために架橋できる材料(例えば、未硬化/硬化性モノマー、オリゴマー及び/又はポリマー)を指す。本明細書で使用されるように、プレポリマーはガラス転移(Tg)温度を欠くとき(最初は油相にあるとき)、反応性である(重合又は硬化に依然として加わることができる)と見なされる。架橋されるプレポリマーの化学組成、それらの反応基及び硬化補助因子(架橋剤、硬化促進剤又は触媒など)に応じて、様々な硬化プロセスが存在する。
【0056】
反応性アミノシリコーンプレポリマーは初期のTgを欠いているが、エマルションに導入されて、毛髪繊維への塗布及びその後十分に硬化すると、ネットワークが形成され、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンフィルムが柔軟なエラストマーとして作用し、脆性を上げ(Jacking brittleness)、プレポリマーは、好ましくは硬化して約25℃未満のTg、すなわち-100℃~+20℃の間のTgを有する3Dネットワークを形成し、前記Tgは+10℃を超えないことが多い、又は0℃、あるいは-5℃未満、-15℃未満又は-25℃未満であり;場合により、-80℃~-20℃、又は-70℃~-30℃の範囲である。しかしながら、非常に薄い(例えば1ミクロン以下の厚さの)コートを使用することによって脆性を回避することができる。そのような場合、約25℃を超えるTgを有する硬化したポリマーのフィルムも使用することができる。比較的高いTgを有する硬化フィルムは、比較的低いTgを有する硬化フィルムよりも高い架橋密度を有する。より高いTg/架橋密度を有する硬化フィルムは、摩耗、膨潤又は化学的攻撃に対してより耐性があると予想される(例えば、アルコールに対する耐性)。
【0057】
典型的には、前記縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、水と実質的に非混和性である、水とは別の相を形成する。そのような異なる相は、「油相」、反応性油相又はそのような変形とも呼ばれてよい。以下でさらに詳細に説明する理由により、反応油相はいくつかの実施形態において、反応性アミノシリコーンプレポリマーに加えて、シリコーン油、アミノシリコーン油、架橋剤、3Dネットワーク形成剤、顔料粒子及び顔料分散剤の少なくとも1つをさらに含んでよい。油相に存在するすべての物質は、たとえ油相の他の分子と反応又は相互作用する特定の能力を欠いていても、「反応物」と呼ぶことができる。
【0058】
本開示は、縮合硬化性、すなわちプロセスにおいてアルコール、オキシム又は水の分子を遊離させながら、縮合することによってシロキサン結合を形成するように互いに反応することができる架橋性基を有するシリコーンプレポリマーに関する。様々な縮合硬化性反応基が存在するが、それらはシラノール基及び加水分解によりシラノール基を形成する加水分解性基(例えば、アルコキシ基)に容易に分類することができる。縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、それらの反応性基の化学的同一性だけでなく、分子あたりの反応基の数によっても分類できる。簡単にするために、シラノール又は加水分解性基であっても、分子あたり1つの反応基を有する縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、1-SiOH、2つの反応性基を有する分子は2-SiOH及び3つ以上の反応性基を有する分子は3+SiOHとして特定できる。2つ以上の基を有する縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、各反応性部分に対して異なる基を有してよい。
【0059】
1つの反応性基を有する縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー(1-SiOH)は、唯一の縮合硬化性基を介して重合(硬化)に関与することができるが、ネットワークの進行に関する限り、それらは一般にそのようなプロセスを終結するとみなされる。したがって、アミノシリコーンフィルムの3次元(3D)ネットワークを必要とする場合、プレポリマーの混合物中の、分子あたり1つの縮合硬化反応性基を有する縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの存在量は低くすべきであり、好ましくは避けるべきである。同じ原理が、油相に存在する他の物質にも同様に適用される。好ましくは、反応物は重合停止又は硬化阻害と同様の様式で作用すべきではない。いくつかの実施形態において、分子あたり1つの縮合硬化反応性基を有するアミノシリコーンプレポリマー及び/又は硬化を阻害することができる任意の反応物の濃度は、油相の重量の最大7重量%、最大5重量%、最大2重量%又は最大1重量%である。いくつかの実施形態において、油相は前記1-SiOHプレポリマー又は停止させる反応物を含まない。
【0060】
1分子あたり2つの縮合硬化反応性基を有するアミノシリコーンプレポリマー(2-SiOH)は、前述の1-SiOH対応物よりも有意義な様式でネットワーク形成に関与できる。好ましくは、そのようなネットワークは、硬化を受けるプレポリマーのそのような鎖の間に十分に凝集性のある3Dマトリックスの形成を可能にするために、直鎖伸長のみに依存すべきではない。類推によって、2つの異なる基(一般に、異なる分子のみに限定されるわけではない)と相互作用できる反応物は、本明細書において「二官能性」と呼ぶことができる。アミノシリコーンプレポリマーではない二官能性反応物の例は、非アミノ架橋剤であり得る。いくつかの実施形態において、1分子あたり2つの縮合硬化反応性基を有するアミノシリコーンプレポリマー及び/又は任意の二官能性反応物の濃度は、油相の重量の最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%又は最大5重量%である。いくつかの実施形態において、油相は、前記2-SiOHプレポリマー及び/又は二官能性反応物を欠いている。少なくとも3つの縮合硬化反応性基(例えば、3つのシラノール及び/又は加水分解性基)を有する反応性ポリマー形成縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、有利には3次元ネットワークの形成を助力する。同様に、3Dネットワーク(3D-netv,ork)の形成を加速又は他の方法で強化する「三官能性」反応物は、官能基がより少ない対応物よりも好ましい。そのような「三官能性」反応物の例には、いくつかの架橋剤及び反応性充填剤が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリマー形成アミノシリコーンの第1の反応物は、少なくとも1つの反応物及び/又は1分子あたり少なくとも3つの縮合硬化反応性基を有する3Dネットワーク形成剤を含む。
【0061】
縮合硬化性アミノ官能性シリコーンは、炭素原子を介してシリコーンプレポリマーの骨格に結合したアミノ基の存在によってさらに特徴付けられる。これらの(末端又は側鎖上)アミノ基はさらに、求核反応又は相互作用(例えば限定されるものではないが、カルボン酸、無水物もしくはエポキシ官能性分子又は基質に対する)を通じて、他の分子に結合又は相互作用することができる。したがって、本明細書に開示されているシリコーンプレポリマーのいくつかは「反応性」又は「縮合硬化性」アミノ官能性シリコーンと呼ばれているが、この用語は、縮合硬化反応性基の縮合のみによって硬化プロセスを限定することを意図したものではなく、アミノ基は、窒素-炭素結合の形成をもたらすような「非縮合」プロセスによっても硬化することができる。そのような硬化プロセスの生成物は、それらの粘弾性特性に関して、エラストマー又はエラストマー性ネットワーク(ゴム様)と呼ばれる架橋オリゴマー又はポリマーのネットワークである。エラストマーは一般に、通常の周囲値より低いガラス転移温度を有する硬化ポリマーを指すが、そのような周囲値より高いTgを有し、すべての実用的な目的で形式上のエラストマーとして機能する「エラストマー性の」ポリマーの薄いコートは許容できる。したがって、本発明の方法から得られる硬化アミノシリコーンコートは薄いため、エラストマー(例えばTg<30℃を有する)及びエラストマー性ネットワーク(例えばTg>30℃を有する)の両方が適切である。このような硬化したネットワーク(好ましくは凝集性を高めるために3次元)は、連続したフィルムを形成し得るため、このような形成に関与するプレポリマーを単独で、又は追加のフィルム形成剤(例えば架橋剤、3Dネットワーク形成剤)と組み合わせて、フィルム形成プレポリマーと呼ぶこともできる。
【0062】
本開示の前記アミノ官能性シリコーンプレポリマー(あるいは「アミノシリコーン」とも呼ばれる)は、適切な化学的環境下(例えば、毛髪の等電点を超えるpH下で)で正に帯電するか、又は正に帯電可能であると見なしてよい。特定の物質の電荷は、その化学構造及びそれが受けることができるプロトン化のタイプから推定できる。これは、材料が水、又は研究中の材料の動作条件に関連する他の水性環境に分散又は溶解したときに評価できる。この場合、アミノシリコーンプレポリマーは(単独で、又は他の反応物と組み合わせて)水中油型エマルションの形態で使用される。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記水中油型エマルジョンは、ゼロより大きい、又は少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV、少なくとも+10mV、少なくとも+15mV、少なくとも+20mV、少なくとも+30mV、少なくとも+40mV又は少なくとも+60mV;場合により、最大+100mV又は最大+80mVの表面ゼータ電位を有する。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記水中油型エマルションは、ゼロより大きい、及び90mV未満又は1~50mV、1~30mV、1~20mV、1~15mV、2~100mV、2~30mV、3~100mV、3~50mV、3~30mV、3~20mV、5~100mV、5~50mV、5~30mV、5~20mV、7~100mV、10~80mV、15~80mV、20~80mV又は20~60mVの範囲内の表面ゼータ電位を有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルションの表面ゼータ電位は、pH9で測定する。他の実施形態において、表面ゼータ電位は、前記水中油型エマルションの本来のpH(約pH10)で測定する。水中油型エマルションの固形分が多すぎる場合、ゼータ電位は、固体に基づいて2重量%以下の材料を含む希釈サンプルで測定できる。
【0066】
そのような材料は、分子あたり(又はフィルム形成性にかかわらず、アミノシリコーン材料の所定の重量あたり)のアミノ基の量を示す、それらのアミンナンバーによって部分的に特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、反応性油相に配置された反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの少なくとも1つ、及び場合によりすべては、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバー又は重量平均アミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、反応性油相全体は、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを示す。
【0067】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、水に不溶性又は実質的に水に不溶性であり、その場合プレポリマーは疎水性であるとも言える。いくつかの実施形態において、プレポリマーの溶解度は、プレポリマーが配置される水性組成物の重量に関して、5重量%以下、2重量%以下、重量%以下、0.5重量%以下又は0重量%以下である。溶解度は肉眼で評価することができ、組成物は通常23℃である。水中で透明な溶液を形成する場合、材料はしきい値濃度以下で水溶性である。材料がポリマーなどの大きな高分子である場合、それから形成されたミセルが検出できず、ウォーターcamer(water camer)が透明なままである場合、ポリマーは水溶性であると言える。逆に、材料(又はプレポリマー)が、水溶性でない場合(例えば、視覚的に検出可能な分散液又はエマルションを形成する)は不溶性である。
【0068】
いくつかの実施形態において、反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、分子あたり少なくとも3つの縮合硬化反応性基を有し、23℃で1重量%未満の水への溶解度を有する。いくつかの実施形態において、分子あたり少なくとも3つの縮合硬化反応性基を有する反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、23℃で1重量%未満の水への溶解度を有する反応性縮合硬化性アミノシリコーンモノマーを含む。
【0069】
述べたように、本発明の組成物及び方法で使用されるアミノシリコーンプレポリマーは、反応性でありかつ縮合硬化性である。ガラス転移温度の有無により、材料又は混合物の反応電位の評価が可能になるが、粘度は、通常より容易に利用可能又は評価可能な代替指標を提供し得る。比較的高い粘度を有するアミノシリコーン材料、特に本発明の方法の実行に関連する温度(例えば約23℃の周囲温度)で固体である材料は、有意に又は完全に架橋している。たとえ完全に架橋していないとしても、高すぎる粘度を有するアミノシリコーンは、本方法に関連する条件下(例えば温度、時間枠など)では、さらなる架橋に関与できないと見なされる。同様の理由で、比較的高分子量(MW)を有するアミノシリコーン材料は、ポリマーの場合、一般的にいくつかの考えられる不均一性を考慮して材料の重量平均分子量を指すが、比較的低いMWを有するアミノシリコーンプレポリマーよりも反応性が低いか、又はよりゆっくりと硬化し得る。
【0070】
アミノシリコーンプレポリマーの分子量は、プレポリマー内の同一の又は異なる繰り返し単位の数に依存し得る。単一の単位を有するプレポリマーはモノマーである。数個の単位を有するプレポリマーはオリゴマーである。より大きなプレポリマーを、ポリマーと定義してよい。プレポリマーの3つの主要なクラスは、化学構造によって、又は化学情報が欠落している場合は任意に分子量によって区別できる。材料の分子量又は重量平均MWは一般に製造元から提供されるが、例えばゲル浸透クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又はマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行型質量分析装置MALDI-TOF MSを含む既知の分析方法によって独立に測定できる。
【0071】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーは、混合物を含むアミノシリコーンモノマーからなるか、又は本質的にそれからなる。アミノシリコーンモノマーは、より小さいサイズ/反応性基へより近づきやすいという点から、それらのオリゴマー又はポリマー対応物よりも急速に縮合硬化することができる。このようなモノマーは、高い架橋密度で3次元(3D)ネットワークを形成できる。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーが主にモノマーである場合、反応性油相は、シリコーン油及び/又はアミノシリコーン油をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンモノマーは、少なくとも200、少なくとも220、少なくとも240、少なくとも275、少なくとも325又は少なくとも400のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンモノマーは最大1,500、最大1,250、最大1,150、最大1,050又は最大1,000のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンモノマーは、200~1500、220~1250、200~1250、200~1,150、200~1,100、220~1,250又は220~1,150の範囲内のアミンナンバーを有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーは、混合物を含むアミノシリコーンオリゴマーからなるか、又は本質的にそれからなる。アミノシリコーンオリゴマーは、単一のモノマーよりも柔軟なコーティングを提供しながら、ポリマーの対応物よりも迅速に縮合硬化することができる。このようなオリゴマーは、モノマーより低密度及びポリマーより高密度の架橋で3Dネットワークを形成できる。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーが主にオリゴマーである場合、反応性油相は、シリコーン油、アミノシリコーン油、非アミノ架橋剤及び/又は反応性充填剤をさらに含むことができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマーは、少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも75、少なくとも85、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200又は少なくとも250のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンオリゴマーは、最大600、最大500、最大450又は最大400のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンオリゴマーは、20~600、40~600、60~500、60~400又は75~500の範囲内のアミンナンバーを有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーは、混合物を含むアミノシリコーンポリマーからなるか、又は本質的にそれからなる。アミノシリコーンポリマーは、毛髪などのしなやかな基質に適した、低架橋密度の柔軟な3Dネットワークを提供できる。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーが主にポリマーである場合、反応性油相は、非アミノ架橋剤、シリコーン油、アミノシリコーン油及び/又は反応性充填剤をさらに含むことができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンポリマーは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも40、少なくとも75、少なくとも100又は少なくとも125のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンポリマーは、最大200、最大180、最大160又は最大140のアミンナンバーを有する。いくつかの実施形態において、アミノシリコーンポリマーは、2~200、5~200、10~200、25~200、5~150又は10~135の範囲内のアミンナンバーを有する。
【0076】
異なるタイプのプレポリマーを混合すること、又は少なくとも特定のタイプのプレポリマーと追加の非反応性シリコーンとを混合することは、それぞれの欠点を減らしながら各タイプの利点を利用することにより、そこから生じ得る硬化フィルムの特性を調整することを可能にすることが見出された。例えば、以下の結果は各サブタイプの正確な化学化合物に依存し得るが、一般的にモノマーを単独で使用すると、非常にもろいコートが形成され、ポリマーだけでは遅すぎて完全な硬化ができない、又は十分な凝集力を欠くコートになることが認められる。したがって、もろさを低減するために、プレポリマー間の架橋の程度を低減することが望ましい場合がある。そのような効果は、例えばより大きなプレポリマー、通常は縮合硬化性アミノシリコーンポリマーを添加することによって達成することができる。あるいは又はさらに、アミノシリコーン油及び/又は非アミノシリコーン油を添加してもよい。そのような分子は、架橋密度を低下させ、もろさを緩和できる。
【0077】
そのような大きなプレポリマー及びシリコーン油が多すぎると、架橋密度が低下する可能性があり、フィルム又はコーティングのさまざまな機械的特性が損なわれる可能性もある。さらに、非アミノシリコーン油が多すぎると、アミノ基の正電荷密度が低下する可能性があり、静電引力のメカニズムが損なわれる及び/又はフィルムの自己終結メカニズムが弱まる又は破壊される。
【0078】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーは、縮合硬化性アミノシリコーンモノマー、アミノシリコーンオリゴマー及びアミノシリコーンポリマーから選択される少なくとも2つのタイプのプレポリマーの混合物からなる。例えば、プレポリマーミックスは、縮合硬化性アミノシリコーンモノマー(例えば硬化の迅速性のため)、縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマー(例えば架橋の密度を制御するそれらの能力のため)及び縮合硬化性アミノシリコーンポリマー(例えばコートの柔軟性への寄与のため)を含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンモノマーは、縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマーの量よりも多い量でプレポリマー混合物中に存在する。いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンモノマーは、縮合硬化性アミノシリコーンポリマーの量よりも多い量で存在する。いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンモノマーは、縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマー及びポリマーの総量よりも多い量で存在する。
【0080】
粘度に関して、比較的低い粘度を有するアミノシリコーンプレポリマーは、より粘度の高い対応物よりもあらかじめ反応性がある及び/又は移動性が高いだけでなく、毛髪繊維に塗布した後、さらに毛髪繊維をより湿潤させ得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、すべての無機含有物を除いて、油相はガラス転移温度を有さない。いくつかの実施形態において、縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、23℃で液体である。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、以下の構造特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ又は少なくとも3つを満たす:
a)プレポリマーは、アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を含む;
b)プレポリマーはガラス転移温度を有さない;
c)プレポリマーは23℃で固体ではない;
d)プレポリマーは、23℃で適切なレオメーターで測定して、1~2,000ミリパスカル秒(mPa・s、cpsとも呼ぶ)、l0~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPaの範囲の粘度を有する;
e)プレポリマーは前記毛髪を湿潤させることができる;
f)プレポリマーはフィルム形成プレポリマーである;
g)プレポリマーは第一級アミンを含む;
h)プレポリマーは3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有する;
i)プレポリマーは末端アミノ部を含む;
j)プレポリマーはペンダントアミノ部を含む;
k)プレポリマーは、プレポリマーに加えて、異なるプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、架橋剤及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相に混和性である;
l)プレポリマーは、異なるプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、架橋剤、疎水性ヒュームドシリカ及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相の屈折率の±10%以内の屈折率を有する;
m)プレポリマーは疎水性である;
n)プレポリマーは、23℃で51重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満又は0.25重量%未満の水(例えば約pH7)への溶解度を有する;
o)プレポリマーは直鎖又は分岐ポリマーである;
p)プレポリマーは直鎖又は分岐オリゴマーである;
q)プレポリマーはモノマーである;及び
r)プレポリマーは、1000を掛けると少なくとも40、少なくとも100、少なくとも200又は少なくとも500のアミンナンバー(AN)とmPa・sでの粘度(Vise.)との比率を有する(これは数学的にl000*(AN/Visc.)≧40などとして表現できる)。
【0083】
23~25℃で固体のシリコーン材料は、粒子として適用される場合、毛髪の潤滑性を改善するのに適していると開示されているが、そのような固体は非反応性であり、同じ温度で流体であるシリコーン材料の液滴の合体によって可能になる連続層のその後の形成に関与できないことは容易に明らかである。固体シリコーン粒子は、機械的ベアリングと同様の様式で摩擦低減剤として機能すると考えられる。
【0084】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず、23℃で水性組成物の1重量%未満、0.5重量%未満又は0.25重量%未満の水への溶解度(pH7)を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず、23℃で測定して、1~2,000mPa・s、10~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず、アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、プレポリマーは、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有し、23℃で測定して1~2,000mPa・s、10~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、プレポリマーは、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有し、23℃で水性組成物の重量の1重量%未満、0.5未重量%未満又は0.25重量%未満の水への溶解度を有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、プレポリマーは、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有し、プレポリマーに加えて、異なるプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、架橋剤及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相に混和性である。
【0090】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず;アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を有し;23℃で適切なレオメーターで測定して、1~2,000mPa・s、10~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、プレポリマーは、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有し;23℃で水性組成物の重量の1重量%未満、0.5重量%未満又は0.25重量%未満の水への溶解度を有し;プレポリマーに加えて、異なるプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、架橋剤及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相と混和性である。
【0092】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず;アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を有し;23℃で測定して1~2,000mPa・s、10~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPa・sの範囲の粘度を有し;アミンナンバーは3~1,000、3~500又は3~200の範囲である。
【0093】
いくつかの実施形態において、プレポリマーはガラス転移温度を有さず;アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を有し;23℃で測定して1~2,000mPa・s、10~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、5~100mPa・s、10~20,000mPa・s、10~15,000mPa・s、20~15,000mPa・s、30~15,000mPa・s(mPw11>s)、40~10,000mPa・s又は50~10,000mPa・sの範囲の粘度を有し;3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有し;23℃で水性組成物の重量の1重量%未満、0.5重量%未満又は0.25重量%未満の水への溶解度を有する。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、適切な反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、以下を含む群から選択できる:ATM 1322、ビス[メチルジエトキシシリルプロピル]アミン、ジエトキシジメチルシラン、DMS-S 12、Dynasylan(登録商標)SIVO 210、Dynasylan(登録商標)1146、KF-857、GP-145、GP-34、GP-397、GP-657、GP-846、KF-862、OFX 8630、OFX 8822、SIB1824.5、SF 1706、Silquest(登録商標)VX-225、Silquesf (登録商標)Y-15744、SI06629.l、SIT8187.2、TSF 4703、TSF 4707、TSF 4708及び前述の市販品の同等物。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、水中油型エマルション(これは1つの調製物中にあり得るか、又は副調製物(sub-formulations)の組み合わせから生じ得る)は、少なくとも1つのプレポリマーと混和性及び/又は架橋剤と混和性及び/又は縮合硬化促進剤もしくは触媒と混和性である化粧品として許容される油をさらに含み、前記化粧品として許容される油にはシリコーン油が含まれるがこれに限定されない。
【0096】
化粧品として許容される油及び、より一般的には化粧品として許容される成分、ならびに同様に化粧品として許容される組成物又は調製物は、過度の毒性、不安定性、アレルギー応答などがない、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪と接触して使用するためのそのような材料の適合性を指す。
【0097】
上記において、及び本明細書にさらに詳細に説明されるように、本開示に適したアミノシリコーンプレポリマーのいくつかの特性が、個々の材料について考慮された。しかしながら、反応性油相は1つ超のアミノシリコーンプレポリマー及びさらに追加の反応物を含んでよいので、そのような混合物の推奨される特性も指摘されるべきである。特定の特性が許容され得る、又は逆に個々の材料にとって望ましくない一方で、油相での材料の混合により、さまざまな許容誤差が生じる得ることを当業者は容易に理解する。油相の反応物は、特定の測定に影響を与え得る固体無機粒子(例えば顔料粒子、3Dネットワーク形成剤)を含んでよいため、特定の測定のためにそれらを除外できるという事実は、毛髪繊維に塗布するために乳化した完全な油相にそのような無機粒子が存在しないということを意味するものではない。
【0098】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、液体疎水性架橋剤及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相は、ガラス転移温度を有さない。いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、架橋剤、反応性充填剤、顔料及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相は、23℃で適切なレオメーターで測定して、1~2,000mPa・s、2~1,000mPa・s、2~500mPa・s、2~400mPa・s、2~300mPa・s、2~200mPa・s、2~200mPa・s又は2~50mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー、非反応性シリコーン油、非反応性アミノシリコーン油、液体疎水性架橋剤及び顔料分散剤の少なくとも1つを含む反応性油相は、23℃で水性組成物の総重量の51重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満の水への溶解度を有する。
【0100】
油相の溶解度を評価することが望ましいが、前記相が乳化又は他の任意の混合形態である場合、油は、当業者に知られている(knm.vn)適切な方法(例えば遠心分離)によって分離することができる。次に、そのように抽出された油相は、任意の適切な標準的な方法によって、任意の望ましい特性(例えば溶解度、ガラス転移温度、化学分析)を評価できる。
【0101】
有機溶媒などの溶媒は、とりわけ材料の溶解度を変更できるため、適切な水中油型エマルションを維持するために及び/又は水相と油相の間の水中油型エマルションの成分の適切な分配を維持するために、そのような溶媒は避けるべきである。
【0102】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、油相内又は油相に関する用語「有機溶媒」は、少なくとも1つの溶質(例えばプレポリマー又は反応物)を含む油相内に配置される有機液体を指し、有機液体は、ポリマー内結合にも、哺乳類の毛髪表面へのアミノシリコーンフィルムの結合にも実際的に関与しない。
【0103】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、水相内又は水相に関する用語「共溶媒」は、水相内で少なくとも部分的に混和性である有機液体を指し、有機液体は、油相中に配置される少なくとも(at ]east)1つの成分の水相内での溶解度を増加させるという点でさらに特徴付けられる。極端に言うと、水混和性の共溶媒は、水相内の油相全体の「可溶化」を本質的に引き起こし得る。
【0104】
有機溶媒には、非限定的な例として、揮発性C1-C6アルカノール、例えばエタノール;揮発性C5-C7アルカン、例えばヘキサン;液体C1-C20酸と揮発性C1-C5アルコールとのエステル、例えば酢酸メチル;室温で液体である揮発性ケトン、例えばアセトン;C8-C16アルカンなどの揮発性炭化水素に基づく油、例えばイソドデカン;揮発性エーテル又はグリコールエーテル、例えばジメトキシメタン又はジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びそれらの混合物が含まれ得る。
【0105】
水混和性共溶媒には、非限定的な例として、揮発性C1-C6アルカノール、例えばエタノール;液体C1-C20酸と揮発性C1-C8アルコールとのエステル、例えば酢酸メチル;室温で液体である揮発性ケトン、例えばアセトン;及びそれらの混合物が含まれ得る。
【0106】
そのような溶媒は、油相の効果を損なう及び/又はエマルションの形成を阻害することに加えて、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーと同じ相に存在する場合、縮合硬化を低減させ得るか又は遅延させ得ると考えられる。
【0107】
いくつかの実施形態において、エマルションの油相内の有機溶媒の総濃度は、重量基準で最大10%、最大5%、最大2%又は最大1%である。いくつかの実施形態において、油相はいかなる有機溶媒を含まない。
【0108】
いくつかの実施形態において、エマルションの水相内の水混和性共溶媒の総濃度は、重量基準で最大10%、最大5%、最大2%又は最大1%である。いくつかの実施形態において、水相はいかなる前記共溶媒を含まない。
【0109】
いくつかの実施形態において、エマルションの油相内の有機溶媒及びエマルションの水相内の水混和性共溶媒の総濃度は、水中油型エマルションの重量の最大10%、最大5%、最大2%又は最大1%である。いくつかの実施形態において、水中油型エマルションは、有機溶媒及び水混和性共溶媒を実質的に含まない。
【0110】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、成分又は成分の混合物(「成分」)及び溶媒又は溶媒混合物(「溶媒」)に関する用語「溶解度」は、他の成分が存在せず、いかなるpH調整剤が存在しない状態で、従来のpH、すなわち成分を溶媒に単独で添加することによって得られる自然のpHでの、溶媒中の成分の溶解度を指す。水溶性の特定のケースにおいて、定義では水は初期pH7を有していると想定する。
【0111】
顔料は、染料とは対照的に一般的に水不溶性である。いくつかの実施形態において、エマルションの反応性油相内に任意に分散された顔料粒子は油相中に溶解しない。
【0112】
いくつかの実施形態において、油相内で1分子あたり3つ以上のシラノール及び/又は加水分解性基を有する縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの濃度は、前記油相の重量の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%である。いくつかの実施形態において、3-SiOHプレポリマーの濃度は、最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大75%又は最大70%である。いくつかの実施形態において、油相内のアミノシリコーンプレポリマーの濃度は、20~95%、20~85%、30~95%、30~85%、40~95%、40~85%、40~75%、45~95%、45~85%、50~95%、50~85%、55~95%、55~85%、55~75%、60~95%、60~90%、60~85%又は60~80%の範囲内である。
【0113】
いくつかの実施形態において、非アミノ架橋剤が油相中に存在する。そのような実施形態において、油相内のアミノシリコーンプレポリマーと非アミノ架橋剤との合計濃度は、前記油相の重量の35~95%、40~95%、40~85%、40~75%、45~95%、45~85%、50~95%、50~85%、55~95%、55~85%、55~75%、60~95%、60~90%、60~85%又は60~80%の範囲内である。
【0114】
いくつかの実施形態において、組み合わせた濃度内の非アミノ架橋剤の濃度は、水中油型エマルションがゼロより大きい(>0)、又は少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV又は少なくとも+10mVの表面ゼータ電位を有するような条件によって制限される。
【0115】
いくつかの実施形態において、油相内での、アミノシリコーン油、非アミノシリコーン油及び1分子当たり3つ未満の縮合硬化性反応基を有する任意の縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの総濃度は、重量で3%~65%、3%~60%、3%~55%、3%~50%、3%~45%、3%~40%、7%~40%、10%~40%、10%~50%、15%~50%、15%~45%、15%~40%、20%~45%、25%~45%、25%~50%、30%~45%、30%~60%、35%~50%又は35%~60%の範囲内である。いくつかの実施形態において、油相の前述の異なる構成要素の合計濃度は、23℃で測定して、2,000mPa・s(mPa0 s)以下、500mPa・s以下又は100mPa・s以下の粘度を有する油相を条件とする。
【0116】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルションは、固体の疎水性反応性無機充填剤をさらに含み、前記充填剤は油相内に配置又は分散され、前記充填剤は、縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの硬化を促進するように選択されるか、又は適合される。このようなフィルム補強充填剤は、反応性充填剤と呼ぶこともできる。有利には、反応性補強充填剤は、アミノシリコーンフィルムの凝集性の増加に寄与する疎水性3Dネットワーク形成剤である。
【0117】
補強充填剤は一般に、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、マグネシア、アルミナ[例えばAl・3HO(Ah03°3H20)]、ブラック、アモルファス、カーボン(black, amorphous, carbon)[カーボンブラック、チャンネルブラック又はランプブラック(]amp black)]の群から選択できる。補強充填剤は、特定の色に合わせて選択できる。例えば、補強充填剤が比較的大量に必要な場合、比較的明るい色合いに影響を与える得るサイズ範囲にある場合、黒色の充填剤は避けるべきである。逆に、暗い色合いが必要な場合、黒色の補強充填剤が有利である。
【0118】
適切な反応性充填剤は、疎水性ヒュームドシリカから選択することができ、その表面は少なくとも(at ]east)部分的にシロキサン基又は疎水性の性質を有する他の基で覆われており、そのような基は通常、シリカ上のシラノール官能基と反応する。したがって、このような場合、疎水性ヒュームドシリカはシラノールブロックシリカと呼ぶことができ、シラノール官能基をブロックするヒュームドシリカの表面処理は、HDMS、ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、シラザン、アミノシラン及びシリコーン油の1つ又は複数によって達成される。ブロッキング処理は完全である必要はなく、いくつかの残留シラノール基は許容可能であり、少なくとも部分的な硬化を確実にするか、又は容易にするために望ましくもある。疎水性ヒュームドシリカは、存在する場合、通常縮合硬化性シリコーンの水中油型エマルションの油相に配置される。
【0119】
いくつかの実施形態において、反応性充填剤は、疎水性ヒュームドシリカを含む、主に含む、又はそれからなる。
【0120】
いくつかの実施形態において、固体の疎水性反応性無機充填剤の平均粒子サイズ(Dv50)は、5~500nm、5~250nm、10~200nm、20~200nm、40~300nm、60~300nm、60~250nm又は60~200nmの範囲内である。
【0121】
いくつかの実施形態において、油相内に配置又は分散された固体の疎水性反応性無機充填剤の濃度は、重量で0.2%~12%、0.2~10%、0.2~8%、0.4~10%、0.4~8%、0.6~10%、0.6~8%、0.8~8%又は0.8~6%の範囲内である。いくつかの実施形態において、水中油型エマルション中の固体の疎水性反応性無機充填剤の濃度は、重量で0.005%~0.5%、0.005%~0.3%の範囲内である。
【0122】
いくつかの実施形態において、場合によりヒュームドシリカ充填剤である、固体の疎水性反応性無機充填剤の屈折率は、油相中に配置されたいかなる顔料粒子を除いて、油相の屈折率の±10%、±7%、±5%又は±3%の範囲内である。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、水中油型エマルションは、少なくとも4.0、少なくとも5.5、少なくとも7.0、少なくとも8.5、少なくとも10.0のpHを有し;場合により最大11.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、水中油型エマルションは、4.0~12.0、5.5~12.0、7.0~11.0又は8.5~11の範囲内のpHを有する。コートされる毛髪繊維の等電点を超えるpHにより、繊維の負の帯電及び/又はアミノシリコーンプレポリマーのアミノ官能基の正の帯電が可能となる。ヒトの毛髪を例にとると、等電点は約pH2.5(例えば損傷した毛髪の場合)と約pH3.5~3.7(例えば未処理の毛髪の場合)の間であると報告されている。以下に詳述するように、毛髪繊維の表面と組成物のプレポリマーとの間の電荷の勾配は、コート形成の第1のステップとして、2つの間の静電的付着を可能にすると予測される。特定の実施形態において、水中油型エマルションは、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも9.0又は少なくとも9.5、及び最大11の塩基性pHを有する。
【0124】
繊維の等電点を超えるpH(例えば>4、好ましくは>7)を有する組成物を使用する場合、毛髪表面は負に帯電することになる。いくつかの実施形態において、反応性縮合硬化性アミノ官能性シリコーンプレポリマーは、camerに分散される(例えば乳化される)と正に帯電する。例えばアミノシリコーンプレポリマーは、pH4.0で正に帯電することができ、等電点(通常はpH10-12の範囲)に達するまで正に帯電することができる。興味深いことに、酸性pHを超えるアミン基のプロトン化(十分な濃度と想定)は、たとえ専用のpH緩衝剤がなくても、組成を塩基性pH範囲内に維持することができる。比較的高いpH(>9)では、毛髪のスケールが十分に帯電して互いに反発して、毛幹に通じるチャネルが開くことに注意すべきである。スケールの持ち上げは、毛髪繊維の表面積を増やし、表面と反応性アミノシリコーンプレポリマーのエマルションとの接触を増強する。キャマーが蒸発すると、コートのpHが徐々に低下し、毛髪のスケールが元の位置に戻り、プロセス中にアミノシリコーンフィルムの一部を取り込み、機械的な結合によって毛髪への付着が促進される。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、繊維を湿潤させ連続コートを形成する液滴を十分駆動させるこのような勾配のために、水中油型エマルションは十分な時間毛髪に塗布される。一実施形態において、塗布時間は5秒~10分の間、又は10秒~2分の間、又は1分以下である。いくつかの実施形態によれば、部分的硬化を可能にする持続期間は、5秒~30分の間、又は1分~15分の間である。水中油型エマルションの塗布時に部分硬化が開始し得るが、過剰なエマルションが除去されても(例えば毛髪繊維をすすぐ前に)部分硬化は進行できる。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも部分的に硬化したフィルムは、個々の毛髪の外部表面上で自己終結している。
【0127】
いくつかの実施形態において、部分的縮合硬化は、最大38℃、最大36℃、最大34℃、最大32℃、最大30℃又は最大28℃、及び場合により少なくとも15℃の温度で影響を受けるか、又は蒸発する。いくつかの実施形態において、毛髪の洗浄は、水中油型エマルションの塗布が完了した後、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、3分以内、2分以内又は1分以内に行われる。
【0128】
いくつかの実施形態において、洗浄に続いて、湿度もしくは周囲湿度のみによって、又は実質的に湿度もしくは周囲湿度のみによってさらに硬化する。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記洗浄の少なくとも半日以内、少なくとも1日以内、少なくとも2日以内、少なくとも3日以内、少なくとも5日以内又は少なくとも1週間以内に、すべてさらなる硬化が、毛髪にいかなる非カチオン性界面活性剤を添加することなく進行する。
【0130】
いくつかの実施形態において、洗浄の少なくとも半日以内、少なくとも1日以内、少なくとも2日以内、少なくとも3日以内、少なくとも5日以内又は少なくとも1週間以内に、カチオン性界面活性剤を含む毛髪調製物を使用して毛髪の処理を行うことができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、リンス液は、(i)水、又は(ii)カチオン性界面活性剤を含有するカチオン性リンス液、又は(iii)非カチオン性界面活性剤、脱脂剤及び/又は膨潤剤を含まないリンス液であり、脱脂剤及び膨潤剤は、それぞれ少なくとも部分的に硬化したフィルムを脱脂及び膨潤することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、カチオン性界面活性剤は、化粧品として許容できる一級、二級、三級もしくは四級アンモニウム化合物又はポリマーである。
【0133】
いくつかの実施形態において、油相内の反応性縮合硬化性アミノシリコーン成分の総濃度は、顔料が無い状態に基づいて、重量で少なくとも45%、少なくとも55%、少なくとも60%又は少なくとも65%である。いくつかの実施形態において、反応性成分の総濃度は、50~100%、50~95%、50~90%、50~85%、50~80%、55~95%、55~85%、60~95%、60~85%、65~95%、65~90%又は70~95%の範囲内である。
【0134】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンプレポリマーは、アルコキシシラン反応基、シラノール反応基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応基を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの水への溶解度は、重量で0.5%未満又は0.25%未満である。
【0136】
いくつかの実施形態において、油相内のアミノシリコーン油の総濃度は、重量で最大で40%、最大35%、最大30%、最大20%、最大15%、最大10%又は最大5%である。
【0137】
いくつかの実施形態において、油相内のアミノシリコーン油の総濃度は、重量で1%~40%、5%~40%、10%~40%、20%~40%、1%~30%、5%~30%、10%~30%、15%~30%、20%~35%又は20%~30%の範囲内である。
【0138】
いくつかの実施形態において、油相内の非アミノシリコーン油の総濃度は、前記水中油型エマルションの表面ゼータ電位がゼロより大きい、又は少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV又は少なくとも+10mVであることを条件として、重量で最大15%、最大12%、最大10%、最大7%又は最大5%である。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記油相内の非アミノシリコーン油の総濃度は、重量で1%~15%、3%~15%、5%~15%、8%~15%、1%~12%、3%~12%、5%~12%、3%~10%、3%~8%又は2%~5%の範囲内である。
【0140】
いくつかの実施形態において、非アミノ架橋剤は、反応性縮合硬化性フィルム形成非アミノシリコーンモノマーを含む、主に含む、又はそれからなる。
【0141】
いくつかの実施形態において、非アミノ架橋剤は、エチルシリケート、ポリ(ジメトキシシロキサン)及びポリ(ジエトキシシロキサン)を含む、主に含む、又はそれらからなる。
【0142】
いくつかの実施形態において、油相内の非アミノ架橋剤の総濃度は、水中油型エマルションの表面ゼータ電位がゼロより大きい、又は少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV又は少なくとも+10mV以上であることを条件として、最大35%、最大30%、最大20%、最大15%、最大10%又は最大5%である。
【0143】
いくつかの実施形態において、プレポリマー、非アミノ架橋剤、固体の疎水性反応性無機充填剤、アミノシリコーン油及び非アミノシリコーン油の油相内の総濃度は、いかなる顔料粒子及び顔料分子のための分散剤を含めて、重量で少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも95%である。
【0144】
いくつかの実施形態において、水相は、場合により非イオン性である水中油型乳化剤をさらに含み、前記水中油型乳化剤は、12~18、12~17、12~16、12~15又は13~16の範囲内のHLB数を有する。いくつかの実施形態において、水相内の水及び任意の乳化剤の総濃度は、重量に基づいて少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%である。
【0145】
いくつかの実施形態において、水相はpH調整剤をさらに含有する。いくつかの実施形態において、水中油型エマルションが本明細書に記載されるように適切なpH(pi-I)及び/又は適切な表面ゼータ電位を有するように、pH調整剤が水相に添加される。
【0146】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルションが塗布される哺乳類の毛髪は、乾燥している、もしくは濡れていない哺乳類の毛髪であるか、又は予め染めた毛髪である。いくつかの実施形態において、前記水中油型エマルションが塗布される哺乳類の毛髪は、予め脱脂されていない、予めシャンプーされていない及びあらかじめブリーチされていないもののうちの少なくとも1つである。
【0147】
いくつかの実施形態において、油相は、複数のサブミクロン顔料粒子又は複数の金属顔料から選択される少なくとも1つの顔料をさらに含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルションはさらに分散剤を含み、サブミクロン顔料粒子は分散剤内に分散されている。
【0149】
いくつかの実施形態において、水相は、重量で最大20%、最大10%、最大5%又は最大2%の量の顔料を油相内に含んでいる。いくつかの実施形態において、水相は前記顔料を含まない。
【0150】
いくつかの実施形態において、30%~50%の相対湿度及び23℃の温度で、少なくとも部分的に硬化したフィルムは、前記水中油型エマルションを毛髪に塗布した後24時間以内に永続性を達成し、場合により、12時間以内、4時間以内、2時間以内又は1時間以内に達成する。特定の実施形態において、前記永続性は、45分以内、30分未満、15分未満、10分未満又は5分未満で達成される。
【0151】
<反応性油相の前処理>
アミノシリコーン層の縮合硬化の前に、様々なシリコーン系分子は加水分解を受ける必要があり得る。アミノシリコーン層の縮合硬化速度は、この加水分解の程度によって大きく影響を受けるか、又は制御されることさえあることが見出され、(特に繊維表面に最も近いフィルム領域における)前記加水分解はASコーティングの薄さ(通常は0.5マイクロメートルオーダー)にも関わらず、拡散制御(すなわち、存在する場合上層のフィルムを介して、環境からの水/湿度の拡散によって制限される)され得ることが見出された。繊維表面に最も近いフィルム領域での不完全な硬化は、着色耐久性をかなり損ない得ると考えられている:機械的せん断、抗力又はその他の力が繊維に加えられると、フィルムと繊維との間の弱い結合が切断されるか、そうでなければ弱くなり、劣化及び繊維からのフィルムの少なくとも部分的な離脱が引き起こされる。おそらくさらに重要なことは、そのような不完全な硬化により、シャンプー、石鹸及びアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を含む他の材料がASフィルムを介して繊維表面に介入すること、又はフィルムの欠陥を介して繊維表面に到達することが可能になり得、それらは繊維表面のアニオン性官能基と首尾よく競合してよく、それにより界面での繊維とASフィルムとの間の結合を弱める(「脱脂」操作と同様)。この劣化した「窓」は、特に繊維とASの界面での凝縮硬化反応の全体的な(すなわち、拡散の制限を含む)反応速度が遅いため、最初のフィルム形成後1週間以上にわたって利用できる可能性がある。生きている被験者のヒトの毛髪を着色する特定の場合においては、最初の塗布後、被験者の毛髪が比較的低温の周囲条件に曝されるため、反応速度が特に遅くなり得る。
【0152】
繊維への塗布前の1つ又は複数のアミノシリコーン種のインビトロ(in vitro)での部分的縮合硬化は、得られるアミノシリコーンフィルムの様々な特性を著しく改善し得ることが、さらに見出された。このインビトロでの工程は前処理と呼ぶことができ、そのような工程の進行を可能にする時間は、インキュベーション時間、前処理時間又は前処理期間と呼ばれ得る。十分な期間の適切な前処理によって改善される特性には、とりわけアミノシリコーンフィルムの接着性が含まれる。繊維に付着してその上で追加の硬化を受けるために十分な反応性を保持する必要があると同時に、この部分的な加水分解及び予備硬化の程度は、「反応性パッチ」の形成を誘発するのに十分であるべきである。特定の理論に縛られることを望まないが、硬化したアミノシリコーンのエラストマーネットワークの形成は、初めは「指数関数的」な様式で進行すると考えられる。考慮されている任意の前処理時点での硬化速度及び予備硬化の程度は、とりわけ、関与するプレポリマー中の反応性縮合硬化性基の量、反応性プレポリマーの量及び前処理した油相の場合、反応物中の前処理溶液の量に応じる。単純化するために、ネットワーク形成は、硬化ペースが大幅に減少するプラトーに到達するまで、時間とともに勢いを増す初期のペースの遅い連鎖反応に同化することができる。
【0153】
油相が(特定の前処理なしで)調製後に容易に乳化され、得られた水中油型エマルションがすぐに(例えば30分未満以内で)毛髪繊維に塗布されるとき、インビトロでの硬化工程は実質的に存在しない。したがって、従来の場所(in situ)での硬化は、本質的に従来のアミノシリコーン種から開始する必要がある。したがって、初期の比較的遅い速度で重合が進行している場合、毛髪繊維上の部分的な縮合硬化は、硬化の遅滞期から始まる。前処理により、部分硬化がネットワーク形成工程の加速された「指数関数的」フェーズに到達することが可能となる。インビトロで生成された反応性パッチは、そのような前処理した油相から調製される水中油型エマルションの塗布後、従来の場所である毛髪繊維上で起こる(occumng)継続的な硬化のための核として作用すると考えられる。したがって、従来の場所での硬化は、開始するのではなく毛髪繊維上で進行することができ、凝集ネットワークの形成に対してより発達した出発点を提供する。
【0154】
十分な前処理期間は、前処理される油相に依存し得る。前処理の開始時の同じ油相の初期粘度と比較して、20%以上の油相の粘度の増加は十分な前処理期間を示し得る。この部分的な予備硬化の程度は、前処理組成物のFTIR分析によるヒドロキシルのピークの検出が可能となるのに十分であるべきである。部分的加水分解及び予備硬化のこの段階では、前処理組成物はガラス転移温度の形成によって検出されるであろう量の完全に硬化したポリマーを含んでおらず、それゆえにTgを欠いている。インビトロの予備硬化は、検出可能なTgを有する3Dネットワークの形成を防止するために十分に短い。いくつかの実施形態において、部分的に予備硬化された前処理組成物の粘度(初期混合物の単離された反応物の粘度とは独立に)は、100mPa・s以下、又は50mPa・s以下、又は25mPa・s以下である。いくつかの実施形態において、部分的に予備硬化された前処理組成物の粘度は、少なくとも1mPa・s、又は少なくとも5mPa・s、又は少なくとも10mPa・sである。
【0155】
反応性油相の前処理は、上述の通り物質移動の制限をさらに低減する。有利には、縮合硬化が繊維上で進行できる限り、着色はそのような予備加水分解工程によってほとんど影響を受け得ないことが見出された。その結果、この追加の工程は目的の光学密度を実質的に損なうことはなく、有利にはフィルムの永続性、ならびにそのような永続性を達成するために必要な時間をさらに改善し得る。
【0156】
架橋密度及び架橋速度は、反応性シリコーンを使用することによって強化され得、前記密度及び速度は、これらの反応性シリコーンに適切な架橋剤を利用することによってさらに強化され得ることが見出された。架橋は、ポリマーフィルムの三次元結合及び強度に大きく貢献し得る。これは、フィルムを繊維表面に強化又は固定するために特に重要である。この場合も理論によって制限されることを望まないが、(「永続性」に関連する)繊維への接着の強さは、反応性シリコーン由来のシラノール基と繊維表面上の様々な官能基(例えば-OH)との間の相互作用及び/又は結合によって大きく改善され得ると考えられる。加えて、フィルムの全体積内の強化された絡み合いはフィルムの凝集力を改善し、(例えば立体的阻害を介して)繊維-フィルム結合の安定性に寄与し得る。いくつかの実施形態において、これらの反応性シリコーンのための強化充填剤は調製物に組み込まれる。強化充填剤は、ヒュームドシリカなどの3次元反応性充填剤を含むか、主に含む(重量又は体積で50%超)か、又は本質的にそれからなってよい。前記ヒュームドシリカは、水中で自己分散しないという意味で疎水性である。しかしながら、反応性AS含有相では、前記疎水性3次元反応性充填剤は、少なくともいくらか自己分散する[すなわち、反応性AS含有相中にサブミクロン平均粒子径(例えば体積D50で、200ナノメートル以下まで)分散する]ように選択及び/又は適合されることが好ましく、それにより疎水性3次元反応性充填剤粒子が、強力な3次元架橋を迅速に促進するための核形成中心として容易に機能する。この様式において、フィルムの凝集性と繊維表面への接着の両方が比較的短い時間枠内で、典型的には縮合硬化が完了に近づくかなり前に改善される。
【0157】
調製物内のそのような充填剤の(それ自体の)存在は、3次元反応性充填剤としてのいかなる機能性を示唆するものではないことを強調しなければならない。例えば、当該技術分野で既知の様々な工業用途において、ヒュームドシリカは増粘剤として役立ち得る。そのような場合、増粘が水性媒体のためであると仮定すると、前記ヒュームドシリカは当然親水性であろう。しかしながら、反応性の3次元架橋充填剤として機能するために、前記充填剤(例えば疎水性ヒュームドシリカ)は、調製物の反応相中(この場合、反応性アミノシリコーン材料を含有する非水性相中)に配置される必要がある。
【0158】
そのような充填剤は、縮合硬化プロセス全体の物質移動が制限された速度論を克服するか、又は大きく軽減するために使用してよいことがさらに見出された。典型的には、そのような充填剤は非常に大きい比表面積を特徴としている。ヒュームドシリカなどの多孔性固体の全体的な比表面積及び内表面積は、Brunauer、Emmett及びTeller(BET)法に従って、物理吸着したガスの量を測定することによって決定できる。比表面積は、ISO 9277に従って決定することができ、一実施形態において、少なくとも25m2/g、少なくとも50m2/g又は少なくとも75m2/g、より典型的には、少なくとも100m2/g、少なくとも110m2/g又は少なくとも120m2/g、及び/又は25~400m2/g、60~400m2/g、60~300m2/g、80~400m2/g、80~350m2/g、80~300m2/g、90~400m2/g、90~350m2/g、90~300m2/g又は100~350m2/gの範囲内である。これらの充填剤材料は、十分に分散された低濃度の吸着水(例えば約0.5%)を含んでよい。その結果、充填剤材料が調製物の反応相内に配置されると、この低量だが十分に分散された利用可能な含水量が、フィルムを介して環境から繊維表面に拡散する水の物質移動制限を部分的に迂回又は回避するのに役立ち得る。
【0159】
この効果は、比較的高い水の濃度を有する反応性充填剤材料の利用によって強化されてよい[例えば、飽和点(例えば室温)に実際上可能な限り近い及び/又は特に大きい比表面積を有する反応性充填材料の使用によって]。実際、いくつかの実施形態において、固体反応性充填剤材料を飽和水蒸気に曝して、その水分濃度を大幅に増加させる前処理工程が導入されている。フィルムの耐久性に対応する改善が観察された。
【0160】
さらに又は代替的に、反応性油相の液体成分に水を添加して同様の改善を達成できることがさらに見出された。いくつかの実施形態による、既知量の前処理溶液(例えば水)を縮合硬化性アミノシリコーンエマルションの反応物に導入する方法は、図5を参照して示される。この説明の目的のために、「反応物」という用語は、水に富む又は前処理された反応物を使用して調製された完成したエマルションの縮合硬化に関して反応性であるかどうかに関係なく、前処理に関与する任意の材料に関する。したがって、反応物という用語は、反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー及び反応性油相に存在する範囲で、アミノシリコーン油、非アミノシリコーン油、架橋剤、固体反応性充填剤及び顔料分散剤を包含してよい。供給された反応物中の水の初期量に応じて、予備の任意選択の乾燥工程S101が望ましい場合がある。そのような工程は、変動する自然の水分含有量を有する可能性のある反応物に加えられる前処理溶液の量をより制御することの助けとなり、そのような自然含有量から生じ得る変動を低減する。
【0161】
過剰量の水を除去するために反応物(例えば水に富む反応物)を乾燥させる様々な方法が当業者に知られている。乾燥方法が選択され、乾燥させる反応物に適合させることができる。例えば、疎水性ヒュームドシリカ(hydrophobic formed silica)の反応性充填などの固体反応物を、過剰な水を蒸発させるために、オーブンで乾燥できる。反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー、特定の架橋剤又はシリコーン油などの液体反応物の場合、過剰な水の除去は、水を選択的に捕捉するように適合した細孔を有するモレキュラーシーブを使用して実行できる。工程S101に続いて、必要に応じて適宜に乾燥された反応物は、実質的に乾燥状態であり、残留水があればそれは最小限の量である。乾燥状態の又は乾燥した反応物は、一般にデシケーター中のより広い乾燥不活性雰囲気又は真空に保管され、水分が存在する場合は、使用するまでそれぞれの最小量に保たれる。反応物の重量あたり1重量%未満の水、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の水を含有する場合、反応物は実質的に乾燥している。
【0162】
工程S102において、乾燥反応物に、既知量の水又は任意の所望の水性前処理溶液が補充される。制御された水を添加するこの工程S102(St02)は加湿工程とも呼ばれ、加湿された反応物は、プレミックス又は前処理した反応物とも呼ばれる。いくつかの実施形態において、添加される水の量は、自然の供給状態で反応物によって従来吸収されている水の量(例えば少なくとも25%以上、又は少なくとも一桁)を超える。特定の前処理については、前処理組成物の単一の反応物を加湿することで十分であり得る。しかしながら、他の実施形態による前処理組成物のために、2つ以上の反応物を別々に加湿することができる。少なくとも1つの加湿された反応物を含む反応物は、工程S103において混合され、時点0の前処理組成物を形成する。あるいは、少なくとも1つの加湿された反応物は、個別に加湿及び前処理でき、そのような個別に実施された前処理に続いて「前処理された」混合物が形成される。添加する水の量が十分に少ない場合、前処理組成物は均一な油相(視覚的に検出可能な分離した水相がない)を形成する。前処理した油相は、透明(dear)(濁りが少ない)ため、添加する水の量が十分に少ないことがさらに確認される。水性前処理溶液は通常、乾燥しているか又は乾燥した反応物に徐々に添加され、より緩やかで均一な水の吸着を可能にし、相分離のリスクを低減する。
【0163】
いくつかの実施形態において、水(又は水性前処理溶液)は、反応物の10重量%以下、又は5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、1重量%未満を構成し;場合により、反応物の重量の少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%を構成する。いくつかの実施形態において、水(又は水性前処理溶液)は、反応物の重量の10重量%以下、又は5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は1重量%未満の量で反応物に添加され;場合により、反応物の少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%で添加される。
【0164】
いくつかの実施形態において、水(又は水性前処理溶液)は、油相の重量の2.5重量%以下、又は2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満を構成し;場合により、油相の重量の少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%を構成する。いくつかの実施形態において、水(又は水性前処理溶液)は、油相の少なくとも1つの反応物に、油相の2.5重量%以下、又は2重量%未満(Jess than 2wt.%)、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満の総量で添加され;場合により、油相の重量の少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%で少なくとも1つの反応物に添加される。
【0165】
いくつかの実施形態において、油相又は前処理した油相内の油相と水相の体積比は、少なくとも9:1、少なくとも9.5:0.5、又は少なくとも9.75:0.25であり、油相又は前処理した油相は、場合により完全に水相を含まない。
【0166】
反応物に添加される水性前処理溶液の量は、油相の乳化後の液滴を取り囲む水又は水性媒体の量と比較して重要ではないことに留意すべきである。エマルションの水相は、インビトロの前処理によって引き起こされるプロセスに穏やかに寄与するだけであることが確立されている。周囲の水は油滴の外部表面とのみ相互作用することができ、液滴の内容物へのさらなる拡散は事実上非常に遅いと考えられている。同様の理由で、毛髪繊維に存在するか、又は保湿剤としてさらに追加された水は、前処理と同等の様式では寄与しない。この特定の場合において、毛髪繊維上への付着に続く油滴は、そのような水をはじく(フィルム形成に利用不可能にする)傾向があるとさらに考えられている。油相内の水の存在は、外部/周囲の供給源からのそのような分子の遅い拡散を緩和すると考えられている。
【0167】
次に、工程S103の前処理組成物は工程S104において、所定の時間の間、インキュベートすることができる。インキュベーションは、室温(約23℃)又は周囲温度を超える場合は一般に50℃("C)を超えない他の温度で行うことができる。前処理組成物のインキュベーション時間中、水は関連する反応物の加水分解性部分の少なくとも一部の加水分解を誘発するのに十分な量であると考えられる。前処理時間中に完全な加水分解は求められないが、そのような場合でもプレポリマーは、縮合硬化の点で反応性を維持できることを理解すべきである。プレポリマーが依然として反応性であるという事実は、前処理組成物が依然として液体である、及び/又はガラス転移温度を欠いているという事実によって容易に確認することができる。
【0168】
インキュベーション後、工程S105での乳化のために、前処理された油相を所望の水相に(例えば乳化剤を添加して又は添加せずに)添加することができる。この工程に続いて、反応性縮合硬化性アミノシリコーンのエマルションを塗布する準備ができる。毛髪繊維への実際の塗布S106は、一般的に乳化から30分以内に行うことができる。
【0169】
特定の理論によって束縛されることを望まないが、前処理組成物(すなわち反応性油相)中に存在する微量の水(又は水性前処理溶液)は、反応性反応物の加水分解性部分の加水分解を促進することができると考えられている。この部分的なインビトロ加水分解は、反応性反応物(すなわちアミノシリコーンプレポリマー)の加水分解された部分の縮合硬化を次々に(in tum)促進することができる。アミノシリコーンプレポリマーの縮合硬化のインビトロでの誘発は、いったん毛髪繊維に塗布されると進行中の縮合を加速し、通常は完全な硬化に必要な期間を短縮することが見出された。前処理組成物のインキュベーション時間(これは、例えば温度、水性前処理溶液のタイプ、反応物に対して加えられる量及び総量、ならびに同様の要因に依存し得る)は、そのようなトリガーを提供するのに十分であるべきであるが、乳化に続いて塗布されるアミノシリコーンプレポリマーが依然として反応性であり、毛髪繊維に塗布した後に毛髪繊維上で縮合硬化できることを確実にするために十分短時間であるべきである。
【0170】
図3Aは、本開示の実施形態による反応性アミノシリコーン調製物(例えば水中油型エマルション)のインビトロ前処理反応における、時間の関数としてのヒドロキシル濃度を示す概略プロットである。絶対時間は特定のプレポリマー、調製物の成分及び操作パラメーターに応じて遅くなるか又は速くなる可能性があるため、示されている時間(X軸に沿っている)は定性的及び例示的である。
【0171】
本開示のいくつかの実施形態によれば、反応は7.5~12のpH範囲内、より典型的には8~11、又は8~10.5の間で起こる。ヒドロキシル濃度の最初の上昇は、シラノール基を形成するための加水分解性基(通常、アルコキシ、アシルオキシ及び/又はオキシム)の加水分解に起因すると考えられる。この最初の上昇は、ヒドロキシル基の生成速度が遅くなるにつれて横ばいになり始め得る。時間の経過とともに、比較的遅い硬化反応が起こり、シラノール基は縮合反応を介して重合してシロキサン結合を生成(及び水を遊離)する。この縮合反応はヒドロキシル基を消費するため、反応時間が進むにつれてヒドロキシル濃度が低下する。
【0172】
図3Bは、部分的に反応した調製物の毛髪繊維への塗布に先立って、前処理調製物のインビトロ反応時間の関数として、毛髪繊維に塗布された図3Aの部分的に反応したアミノシリコーン調製物の毛髪着色効果を示す概略プロットである。本明細書でさらに詳細に説明するように、生成された部分的に反応したアミノシリコーン調製物は、(乳化剤又はpH調整剤などの追加の添加剤の有無にかかわらず)続いて水で乳化され、直接毛髪繊維に塗布されるヘアトリートメントエマルションを生成する。図3Bに示されている定性的なプロットから明らかなように、毛髪繊維に効果的な着色がt=0でも達成され得、これは毛髪繊維に調製物を塗布する前に、反応性アミノシリコーン調製物のインビトロ反応がないことに対応する。比較的高程度の架橋が達成されるまで、毛髪の着色効果は長期間にわたって高いままであり得ることが見出された。次に、架橋の程度が増加し続けるにつれて、毛髪の着色効果は減少し得るか、又は大きく減少し得る。部分的に硬化したアミノシリコーン調製物を毛髪に塗布すると、高度に架橋された材料は毛髪の濡れ性を悪くし、ポリマー包埋顔料の多くは過剰な材料を取り除く際に簡単に洗い流されると考えられる。例として、そのような状態は、図3Bの点Aによって示される。
【0173】
高度に架橋された材料を使用したこの結果は、様々な開示された非反応性アミノシリコーンベースの毛髪着色調製物の失敗及び毛髪繊維の満足できる初期着色を達成するための方法の失敗によって裏付けられるように考えられる。そのような本教示には不十分である架橋シリコーンはシリコーン樹脂と呼ばれることがあり、これは説明されるように、高分子量、高粘度(又は周囲温度で固体状態である)又はガラス転移温度(Tg)の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0174】
さらに、例えば毛髪繊維表面を十分に湿潤させる、あまり架橋されていない材料を含む調製物によって満足のいく初期着色が達成されたとしても、そのような調製物は、着色耐久性(例えば耐洗浄性)を明らかに示さない場合がある。例として、そのような状態は図3Bの点Bによって示される。点Bは図3Cにも示されており、これは乳化及び毛髪繊維への調製物の塗布前の、部分的に反応したAS調製物のインビトロ反応時間の関数としての、毛髪の色の永続性を示す概略図である。点Bのインビトロ反応時間では、着色は満足できるように見えるが、永続性は低いことが明らかである。
【0175】
本明細書でさらに詳細に示されるように、着色永続性は毛髪から過剰量の塗布した調製物を除去し、その後に塗布した調製物を周囲条件で毛髪繊維上で硬化させた後に(例えば24時間)測定される。図3Cは、塗布から24時間後の着色の耐洗浄性によって評価される永続性を概略的に示す。以下及び実施例で説明するように、いくつかの実施形態において、反応性油相の前処理により、着色後24時間以内のより早い時点で着色の永続性を発現させることができる。
【0176】
実質的に上記のように、繊維表面に最も近いフィルム領域における不完全な硬化は、ASフィルム及び繊維の外部表面の間の界面における機械的な力ならびにインターカレーション及び化学的攻撃に対する感受性のために、着色耐久性を大きく損ない得ると考えられる。
【0177】
「反応性」と見なされる様々なアミノシリコーン調製物は、塗布前に調製物がすでに高度に架橋されているため、塗布後の追加の架橋の程度が(特に周囲条件下で)小さく、満足できる(初期)着色を達成するには不十分な場合があるという点で、実際には実質的に非反応性であることを強調しなければならない。あるいは、初期の着色は満足のいくものであり得るが、永続性は不十分であり得るか、又は満足のいくものではない可能性がある。
【0178】
再び図3Cを参照すると、この定性的プロットから毛髪繊維の着色永続性はt=0で不十分であり得ることが明らかであり、これは毛髪繊維への調製物の塗布前の反応性アミノシリコーン調製物のインビトロ反応がないことに対応する。毛髪繊維の効果的な着色は、インビトロの反応時間が短いことで達成され得るが、ASフィルム及び繊維の外部表面の間の界面での架橋のレベルが幾分か非常に低いことにより、前述のように着色の永続性が不十分であり得ることが見出された。界面での架橋のレベルが時間とともに増加するにつれて、最初の肩Cによって示されるように、永続性は対応して増加する。界面での架橋のレベルが時間とともにさらに増加するにつれて、永続性は、永久プラトーDで示されるようにプラトーであり得るか、実質的にプラトーであり得る。
【0179】
図3Dは、毛髪繊維に塗布された、図3Aの部分的に反応したアミノシリコーン調製物の毛髪粘着性を、毛髪繊維への調製物の塗布前の、調製物のインビトロ反応時間の関数として示す概略プロットである。
【0180】
毛髪の粘着性は、架橋の増加と共に減少すると考えられる。
【0181】
したがって、インビトロ反応時間及び操作条件を制御することにより、本明細書で意図する方法は、十分な毛髪の着色(例えば光学濃度などによって特徴付けられる)ならびに着色の永続性を達成するために、着色、粘着性及び永続性「時間枠」(time windows)(「枠」)の重複内での操作を可能にする。
【0182】
さらに驚くべきことに、実質的に即座(例えば最大10分の短いインビトロ反応時間)に粘着性を低減させる及び/又は着色、粘着性及び永続性時間枠の重複を広げるための、加水分解及び縮合反応を加速するために、インビトロ反応混合物の反応物を加湿するために使用される前処理溶液のpHを制御できることが見出された。より具体的には、前処理溶液のpHは、最大2.5、最大2、より典型的には最大1.8、最大1.6、最大1.4又は最大1.2であるべきである。pHは、0.5~2.5、0.5~2.0、0.7~2.0、0.7~1.8、0.7~1.6、0.7~1.4、0.7~1.2、0.9~2.0、0.9~1.7、0.9~1.5、0.9~1.3又は0.9~1.2の範囲内であるべきである。
【0183】
しかしながら、pHを下げるために使用される典型的な酸は、反応混合物の「永久的な」イオン含有量に寄与し、これは最終的にアミノシリコーンフィルムの特性を損ない得ることが見出された。
【0184】
驚くべきことに、pHを下げるために揮発性酸(好ましくは濃縮酢酸、例えば少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも80%を含有する)を使用すると、前処理溶液のpHを十分に下げてインビトロ反応の時間枠を有利に変更し得、さらに酸からの残留イオン含量が残らないように揮発させ得ることが見出された。その結果、酸性化剤を介して汚染物質を導入することなく、必要なインビトロ反応時間が短縮され、反応制御が緩和され、プロセスの堅牢性が向上され得る。
【0185】
図4は、(ヒドロキシル/シラノール濃度により検出可能な)加水分解の程度、毛髪着色効果、毛髪の粘着性及び毛髪着色永続性を、pHを調整した水性前処理溶液、図3Aの調製物に基づく反応性アミノシリコーン調製物の、またはそれを利用した(部分的に反応した調製物の毛髪繊維への塗布前の)インビトロ反応時間の関数として示す概略図を示す。
【0186】
したがって、前処理期間は、とりわけ所望の結果の種類及び開始(onset)、ならびに前処理溶液の種類及び、それに応じて前処理された反応物の存在に基づく反応性油相中のその総濃度に応じる。いくつかの実施形態において、前処理期間は24時間を超えない、あるいは12時間未満、8時間未満、6時間未満又は4時間未満である。有利には、前処理期間は120分以下、90分未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満又は5分未満であり得る。
【0187】
加水分解及び/又は(部分的)縮合硬化の速度は温度に依存し得るため、前処理の温度が上昇するにつれて、前処理期間を短縮することができる。前処理は周囲温度で都合よく行われるが、代わりに高温、通常60℃を超えない温度で行うことができる。いくつかの実施形態において、前処理は15~50℃、18~45℃、20~40℃、20~35℃、20~30℃又は20~25℃の範囲の温度で行われる。
【0188】
本教示に従って前処理された反応性油相は、その後、本教示に従って毛髪繊維に塗布されるエマルションに関するそれぞれの教示を満たす、反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの水中油型エマルションの調製のために乳化することができる。
【0189】
いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性アミノ官能性シリコーンプレポリマーは、組成物(例えば水中油型エマルション)の総重量の約0.001~20重量%の範囲、例えば組成物の総重量の約0.005~10重量%、約0.005~5重量%、約0.005~2.5重量%又は0.01~1重量%の範囲の濃度で存在する。
【0190】
いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性アミノ官能性シリコーン化合物の濃度は、油相の重量の少なくとも45重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%又は少なくとも65重量%、及び場合により50~100重量%、50~95重量%、50~90重量%、50~85重量%、50~80重量%、55~95重量%、55~85重量%、60~95重量%、60~85重量%、65~95重量%、65~90重量%又は70~95重量%の範囲内である。
【0191】
いくつかの実施形態によれば、アミノシリコーン油の総濃度は、油相の最大30重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%又は最大5重量%である。
【0192】
いくつかの実施形態によれば、非アミノシリコーン油の総濃度は、油相の最大15重量%、最大12重量%、最大10重量%、最大7重量%又は最大5重量%である。
【0193】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料粒子は、有機顔料、例えばペリレン顔料;フタロシアニン顔料;キナクリドン顔料;及びイミダゾロン顔料からなる群から選択される有機顔料を含む。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料粒子は、無機顔料、例えば二酸化チタン、スルホセレン化カドミウム、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、チタン酸コバルト、アルミノスルホケイ酸ナトリウム、Fe-Mg-Ti酸化物混合物、マンガンフェムテ(manganese femte)及び金属又は合金の顔料からなる群から選択される無機顔料を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、サブミクロンの有機又は無機顔料(又はそれらの組み合わせ)は、色を付与する剤として機能する。サブミクロン顔料は、光吸収顔料又は単に吸収顔料と呼ばれてもよい。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料は、化粧品用途のための以下のEU承認色素からなる群から選択される有機又は無機顔料である:CI 10006、CI 10020、CI 10316、CI 11680、CI 11710、 CI 11725、CI 11920、CI 12010、Cl 12085、CI 12120、CI 12370、CI 12420、CI 12480、CI 12490、CI 12700、CI 13015、CI 14270、CI 14700、CI 14720、CI 14815、CI 15510、CI 15525 、CI 15580、CI 15620、CI 15630、CI 15800、CI 15850、CI 15865、Cl 15880、CI 15980、CI 15985、CI 16035、Cl 16185、CI 16230、CI 16255、CI 16290、CI 17200、CI 18050、CI 18130、CI 18690、Cl 18736、Cl 18820、Cl 18965、CI 19140、CI 20040、Cl 20470、CI 21100、CI 21108、CI 21230、CI 24790、CI 26100、CI 27755、CI 28440、CI 40215、CI 40800、 CI 40820、CI 40825、CI 40850、CI 42045、CI 42051、Cl 42053、Cl 42080、CI 42090、CI 42100、Cl 42170、Cl 42510、CI 42520、CI 42735、5 CI 44045、CI 44090、Cl 45100、Cl 45190、Cl 45220、Cl 45350、CI 45370、CI 45380、CI 45396、CI 45405、CI 45410、CI 45430、CI 47000、CI 47005、CI 50325、CI 50420、Cl 51319、CI 58000、CI 59040、CI 60724、CI 60725、CI 60730、CI 61565、Cl 61570、Cl 61585、Cl 62045、CI 69800、CI 69825、Cl 71105、 CI 73000、CI 73015、Cl 73360、Cl 73385、CI 73900、CI 73915、CI 74100、CI 74160、CI 74180、CI 74260、CI 75100、CI 75120、CI 75125、CI 10 75130、CI 75135、CI 75170、CI 75300、CI 75470、CI 75810、CI 77000、CI 77007、CI 77266、Cl 77267、CI 77268:1、CI 77891、CI 77947、ラクトフラビン、カラメル、カプサンチン、カプソルビン、ビートルートレッド、アントシアニン、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールグリーン及びアシッドレッド195。
【0197】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料は、化粧品用途のための以下の米国で認証された有機色素からなる群から選択される:
15 D&C Black No. 2、 D&C Black No. 3、 FD&C Blue No. 1、 D&C Blue No. 4、 D&C Brown No. 1、 FD&C Green No. 3、 D&C Green No. 5、 D&C Green No. 6、 D&C Green No. 8、 D&C Orange No. 4、 D&C Orange No. 5、 D&C Orange No. 10、 D&C Orange No. 11、 FD&C Red No. 4、 D&C Red No. 6、 D&C Red No. 7、 D&C Red No. 17、 D&C Red No. 21、 D&C Red No. 22、 D&C Red No. 27、 D&C Red No. 28、 D&C Red No. 30、 D&C Red No. 31、 D&C Red 20 No. 33、 D&C Red No. 34、 D&C Red No. 36、 FD&C Red No. 40、 Ext D&C Violet No. 2、 FD&C Yellow No. 5、 FD&C Yellow No. 6、 D&C Yellow No. 7、 Ext. D&C Yellow No. 7、 D&C Yellow No. 8、 D&C Yellow No. 10及びD&C Yellow No. 11。
【0198】
いくつかの実施形態において、本組成物の顔料は着色効果及び/又はメタリック外観の代わりに又はそれに加えて、特別な視覚効果を提供する。特殊効果には、非限定的な例として、蛍光効果、光彩効果、真珠光沢効果(a pearlescent effect)、真珠光沢効果(a nacreous effect)及び燐光効果が含まれる。これらの効果は、通常の照明下で見えてよく、又は照明条件機能や観察角度などの特殊な観察条件を必要として(又はさらに増加させて)よい。例えば、紫外(UV)光にさらされるとき、蛍光顔料が見えるようになってよく、又は蛍光効果をもたらしてよい。スペクトルの反対側では、アップコンバート顔料は、近赤外(NIR)光を可視(VIS)光に変換できる発光材料である。典型ではない着色を示す追加の着色剤には、非限定的な例として熱変色性顔料又は染料(それらを含む組成物は温度の変化の結果として色が変わることが可能となる)及びpH依存性の顔料(その色はpHによって変化する)が含まれる。
【0199】
上記の顔料のいずれも、例えば有機剤でさらに表面処理して、顔料の任意の所望の特性(例えば視覚効果、化学的安定性、分散性、電荷、繊維への付着能力、アミノシリコーンマトリックスと相互作用する能力など)をさらに改善することができる。表面処理技術はここで詳細に説明する必要はなく、表面処理された顔料は必要な形態(例えば非イオン性、カチオン性、アニオン性又は正に帯電、負に帯電又は実質的に非帯電)で市販されている。顔料粒子の表面処理は、化学コーティングであってよく、例えば(fr1r instance)オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸、アクリルポリマーなどの接着促進ポリマーコート、シランポリマー又はアミノシランポリマー、及び顔料の分野で知られているような化学コートであってよい。
【0200】
そのような顔料のAH(AH of such pigments)は、本発明の毛髪染色方法及びそのためのキットのすべての態様及びすべての実施形態で使用してよく、顔料はそれらが組み込まれるマトリックスに適合される。一実施形態について(fa one embodiment)、顔料がアミノシリコーンコートで望まれる場合、毛髪繊維上でアミノシリコーンの3Dネットワークを形成する間に、それらを捕捉する顔料とアミノシリコーンプレポリマーとの間の相互作用を改善するために、顔料粒子を表面処理(例えば酸基によって)することができる。しかしながら、顔料はポリマーコートに組み込まれると、中和可能な酸部分を有するポリマー材料と異なるように配合されるので、そのような顔料処理は不必要であり得、望ましくない場合さえある。本開示で使用される色付与剤は、特定の場合に(例えば着色のために)場合により染料と組み合わせてよいか、又は置き換えてよい顔料である。しかしながら、染料が組成物又は顔料コートへの色付与剤として使用される場合でさえ、それらは酸化染料ではない。いくつかの実施形態において、本教示による組成物は、非限定的な例として染料のカプラー及び酸化剤(例えば過酸化水素発生剤)を含む、酸化染料及び酸化染料と組み合わせて従来から使用されるいかなる化学薬品を実質的に含まない。
【0201】
いくつかの実施形態において、顔料は本エマルションの反応性油相への組み込みに先立って、サイズが減少する及び/又は分散される。そのような場合、サイズ減少及び/又は分散工程は、顔料分散剤の存在下で行うことができる。いくつかの実施形態によれば、顔料分散剤は、水中油型エマルション中にサブミクロン顔料粒子の重量の25~400%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態において、分散剤及び顔料粒子は、0.5:1~2:1、0.75:1~1.5:1又は0.8:1~1.2:1の範囲の相対重量/重量比で存在する(present at a relativeweightperweightratiointherangeof)。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、顔料を分散させるように適合された分散剤は、縮合硬化性調製物と適合性である。適合性とは、例えば顔料分散剤が調製物の反応性油相に混和性であること、顔料分散剤が縮合硬化を遅延、低減又は阻害しないこと、及び顔料分散剤が顔料のサイズ減少中に安定(例えば非反応性)であることを意味する。好ましくは、顔料分散剤は正の電荷を有することができる。
【0203】
そのような分散剤は、シリコーンポリエーテル及びシリコーンアミン分散剤などのシリコーン主鎖を有することができる。適切な顔料分散剤には、例えば、BYKのBYK LPX 21879、Genesee PolymersのGP-4、GP-6、GP-344、GP-851、GP-965、GP-967及びGP-988-1、シリコーンアクリレート、例えばEvonikのTego(登録商標)RC 902、Tego(登録商標)RC 922、Tego(登録商標)RC 1041及びTego(登録商標)RC 1043、カルボキシル官能基を有するPDMSシリコーン、例えばShin-EtsuのX-22162及びX-22370、シリコーンエポキシ、例えばGenesee PolymersのGP-29、GP-32、GP-502、GP-504、15 GP-514、GP-607、GP-682及びGP-695、又はEvonikのTego(登録商標)RC 1401、Tego(登録商標)RC 1403、Tego(登録商標)RC 1412が含まれる。シリコーンアミン分散剤は正に帯電しており、本教示によるいくつかの実施形態では有利であり得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンである顔料分散剤は、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバーを有する。
【0205】
反応性油相の反応物と反応することができる官能性部分を有する顔料分散剤は、有利には顔料分散液自体に加えて、それから形成されるアミノシリコーン3Dネットワーク形成をさらに改善し得る。例えば、シリコーンエポキシ顔料分散剤は、アミノシリコーンプレポリマーのアミン部分と有利に相互作用して、着色されたアミノシリコーンフィルムの凝集性をさらに高めることができる。
【0206】
一般に、本教示による組成物で使用される材料は、それがその活性を妨げないか、又は意図された目的に著しく影響する程度までその活性を減少させない場合、別のものと適合性であると言われる。例えば、とりわけ縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの硬化を阻害する場合、又はアミノシリコーンフィルムが十分に及び/又は迅速に基質毛髪繊維に付着しない程度に硬化を低下又は遅延させる場合、顔料分散剤は適合性があるとはならず、又は顔料分散剤は顔料及び任意の同様の望ましくない効果に有害であり得る。いくつかの実施形態において、適合性は、適合性があると見なされる材料が、一般的なシリコンベースの化学又は同様の物理的パラメータなどの共通の特性を共有することをさらに意味してよい。例えば、同様の屈折率(RI;相互に±10%以内)を有する材料は、より濁りがあり得る比較的異なるRIを有する材料と比較して、より透明な硬化フィルムをもたらすと考えられる。
【0207】
いくつかの実施形態によれば、反応性油相中に存在する複数の顔料粒子は、それぞれが異なる色又は同じ色の異なるシェードを示す、異なる顔料の混合物であり得る。
【0208】
それらの形態に応じて、粒子(例えばサブミクロン(吸収性)顔料、強化充填剤など)は、それらの長さ、幅、厚さ、直径又はそれらのX-、Y-及びZ-寸法の任意のそのような代表的な測定によって特徴づけられてよい。典型的には、そのようなサイズは粒子の母集団の平均として示され、そのような材料の製造業者によって提供される。これらのサイズは、顕微鏡及び動的光散乱(DLS)などの当技術分野で知られている任意の技術によって決定することができる。DLS技術では、粒子は同等の挙動の球に近似され、サイズは流体力学的直径に関して提供され得る。DLSでは、母集団のサイズ分布を評価することもできる。同じことが液滴にも当てはまり、例えばすべてが典型的には球状の形状を有する、エマルション液滴の特徴付けの助けとなり得る。本明細書で使用される場合、例えば1μm以下のサイズを有する粒子は、形状に応じて少なくとも1つ、場合によっては2つ又は3つの1μm以下の寸法を有する。例として5μm以下のサイズを有するエマルション液滴に関係する場合、液滴は5μm(~tm)以下の平均直径(Dv50)を有すると理解される。
【0209】
必須ではないが、特定の種類の粒子又はエマルション液滴は、好ましくは均一に成形されてよい、及び/又は母集団の中央値に対して対称的な分布内にあってよい、及び/又はこの特定の種類の比較的狭いサイズ分布内であってよい。以下において、及び特に文脈から明らかでない限り、「粒子」という用語は、固体粒子(例えば顔料など)及び液滴(例えばエマルション液滴、ミセルなど)の両方を指す。
【0210】
粒子サイズ分布(PSD)は、以下の2つの条件のうちの少なくとも1つが当てはまる場合、比較的狭いと言われる:
A)粒子の90%の流体力学的直径と粒子の10%の流体力学的直径の差が150nm以下、又は100nm以下、又は50nm以下であり、これは数学的に次のように表すことができる:(D90---D10)≦150nmなど;及び/又は
B)a)粒子の90%の流体力学的直径と粒子の10%の流体力学的直径の差;及びb)粒子の50%の流体力学的直径の比が2.0以下、又は1.5以下、又は1.0以下であり、これは数学的に次の様に表すことができる:(D90---D10)/D50~2.0など。
【0211】
D10、D50及びD90は、母集団における粒子の数によって(その場合それらはDN10、DN50及びDN90として示され得る)、又はそれらの粒子の体積によって(その場合それらはDv10、Dv50及びDv90として示され得る)評価できる。前述の測定値は、調査対象のサンプルが適切に流体である場合はDLS技術によって、調査対象の粒子が乾燥した形態の場合は顕微鏡法によって取得できる。本明細書で使用される「平均測定粒子径」又は単に「平均粒子径」とも呼ばれるD50は、検討中の粒子とその媒体に最も適した測定方法に応じて、Dv50(DLSなどによる)、又は粒子のスケールで分析するように適合された顕微鏡の視野で形成される粒子の体積平均サイズを参照して良い。したがって、D90は対象の母集団の90%に適用される測定値に関連するため、「主な測定粒子径」又は単に「主な粒子径」とも呼ばれ、たとえばDLS技術によってDv90として評価できる。
【0212】
上述のように、そのような比較的均一な分布は、特定の用途では必要ない可能性がある。例えば、比較的不均一なサイズ集団のサブミクロン顔料粒子を有することにより、それによって形成されるコーティングにおいて、比較的小さな粒子が比較的大きな粒子によって形成される隙間に存在し、組み合わせて比較的均一なコーティングを示す可能性がある。
【0213】
粒子はアスペクト比、すなわち粒子の最小寸法と、それらの形状に関連する最小寸法に直交する最大平面における最大寸法又は同等の直径との間の無次元比によって特徴付けられてよい。相当直径(Deq)は、その最大の直交平面の最長寸法と最短寸法との間の算術平均によって定義される。ほぼ球形の粒子、及びその中のエマルション液滴は、アスペクト比が約1:1であることを特徴とするが、棒状の粒子はより大きいアスペクト比を有することができ、フレーク状の粒子は最大1:100、またはそれ以上のアスペクト比を有することができる。
【0214】
そのような特徴的な寸法は、一般にそのような粒子のサプライヤーによって提供され、当技術分野で既知の方法、例えば特に数ミクロン又は約200nmの推定寸法に至る粒子のための光学顕微鏡を含む顕微鏡、200nm未満の寸法を有するより小さな粒子のための走査型電子顕微鏡SEM(SEMは特に平面寸法に適している)、及び/又は(好ましくは、本明細書ではナノ粒子又はナノサイズ粒子とも呼ばれるサブミクロン粒子の厚さ及び長さ(長い)寸法のための)集束イオンビームFIBによって、いくつかの代表的な粒子で評価することができる。母集団を正確に(例えば直径、最長寸法、厚さ、アスペクト比及び同様の粒子の特徴的な尺度によって)特徴付け得る代表的な粒子又は代表的な粒子の群を選択する一方、より統計的な手法が望まれ得ることが理解されることになる。粒子サイズの特性評価に顕微鏡を使用する場合、画像キャプチャー機器(例えば光学顕微鏡、SEM、FIB-SEMなど)の視野全体が分析される。典型的には、倍率は少なくとも5個の粒子、少なくとも10個の粒子、少なくとも20個の粒子又は少なくとも50個の粒子が単一の視野内に配置されるように調整される。当然、前記視野は、顕微鏡分析の当業者によって評価される代表的な視野であるべきである。そのような視野におけるそのような粒子の群を特徴付ける平均値は体積平均化によって得られる。そのような場合、Dv50=Σ[(Deq(m))/m]1/3(式中、mは視野内の粒子の数を表し、合計はすべてのm粒子に対して実行される)である。述べたように、そのような方法が研究される粒子のスケールに、またはそれらの媒体を考慮して選択される技術である場合、そのような測定はD50と呼ぶことができる。
【0215】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料は、平均して最大1000nm、最大750nm、最大500nm、最大250nm、最大150nm又は最大100nmのDv50を有する粒子、及び場合により少なくとも10nm、少なくとも25nm、又は少なくとも50nmのDv10を有する粒子を含む。いくつかの実施形態において、サブミクロン顔料粒子は、少なくとも10nmのDv10及び最大2,500nmのDv90のの間を含む範囲、又は少なくとも25nmのDv10及び最大1,500nmのDv90の間の範囲、又は少なくとも50nmのDv10及び最大1,000nmのDv90の間の範囲にある。
【0216】
いくつかの実施形態によれば、サブミクロン顔料は、最大1,000nm、最大750nm、最大500nm、最大250nm、最大150nm又は最大100nmのDv90、及び場合により最大300nm、最大250nm、最大200nm、最大150nm、最大100nm又は最大75nmのDv50を有する粒子を主に含む。いくつかの実施形態において、サブミクロン顔料粒子は、少なくとも10nm、少なくとも25nm又は少なくとも50nmのDv10を有する。いくつかの実施形態において、サブミクロン顔料粒子は、少なくとも10nmのDv10及び最大1,000nmのDv90の間を含む範囲、又は少なくとも25nmのDv10及び最大750nmのDv90の間の範囲、又は少なくとも25nmのDv10及び最大500nmのDv90の間の範囲にある。
【0217】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される組成物又はキットは、架橋剤(cross-linker)、例えば反応性シリコーンのすべての非アミノ反応性基を通して反応することができるオルガノシリコーン化合物、及び全て反応性シリコーンのアミノ反応性基を通して反応することができる、メルカプト基、エポキシ基又はアクリレート基を含む架橋剤(cross-liking agent)をさらに含む。一般に、架橋剤は、エラストマーネットワークをもたらすオリゴマー及びポリマーのネットワークの形成のための少なくとも3つの反応基を含む。
【0218】
オルガノシリコーン架橋剤は、加水分解性基(Y)を有さなければならない。
【0219】
加水分解後、得られたシラノール基は、反応性アミノシリコーンプレポリマーと縮合反応することができ、シロキサン結合をもたらす。
【0220】
オルガノシリコーン架橋剤は以下を含むことができる:
-四官能性の加水分解性基であり、例えばSiY4などのQ単位(SiO4/2)を有するシランからなる
-又は三官能性の加水分解性基であり、RSiY3などの式RSiO3/2のT単位を有するシラン又はシロキサンオリゴマーからなる
-又は二官能性の加水分解性基であり、架橋剤が合計で少なくとも3つの加水分解性基を有している限り、R2SiY2などの式R2SiO2/2のD単位を有するシラン又はシロキサンオリゴマーからなる
-架橋剤が合計で少なくとも3つの加水分解性基を有し、加水分解性基(Y)が以下から選択できる限り、M単位を有する単官能性加水分解性基
-アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メトキシエトキシなど)
-オキシム(例えばメチルエチルケトキシム)
-アシルオキシ(例えばアセトキシ)
[式中、Ra及びRb置換基は以下から選択される
-C1-C6又はC1-C4アルキル基
-アルケニル基(ビニル、アリルなど)、
-アミノアルキル基(アミノプロピルNH2(CH2)3などのモノアミノ:アミノエチルアミノプロピルNH2(CH2)2NH(CH2)3などのジアミノ又はトリアミノ)
-エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル)
-アクリレート基(例えばメタクリロキシプロピル)
-メルカプト基(例えばメルカプトプロピル)]
【0221】
いくつかの実施形態によれば、架橋剤は、架橋剤中の加水分解性基及び/又はシラノールの合計量が少なくとも3つであることを条件として、Q単位、T単位、D単位及びM単位の少なくとも1つを含む分岐又は直鎖ポリオルガノシロキサンであることができ、3Dネットワークの形成を可能にする。架橋剤の混合物を使用する場合、混合物の少なくとも1つの架橋剤は、合計で少なくとも3つの加水分解性基及び/又はシラノールを含まなければならない。
【0222】
いくつかの実施形態によれば、架橋剤は、エチルシリケート、例えばテトラエチルシリケート(CAS No 78-10-4)、ポリ(ジエトキシシロキサン)オリゴマー、例えば完全加水分解時に約40~42%の二酸化ケイ素含量を有するEvonik Dynasylan(登録商標)40、完全加水分解時に約48%の二酸化ケイ素含量を有するColcoat(登録商標) Ethylsilicate 48(CAS No. 11099-06-2)、ポリ(ジメトキシシロキサン)(CAS No. 25498-02-6)、Evonikの3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アニオン性エマルション中に40%の多官能性ポリカルボジイミドを有するCarbodilite Emulsion E-05、及び100%の多官能性ポリカルボジイミドを有するCarbodilite V02-Bであることができる。
【0223】
いくつかの実施形態によれば、架橋剤は反応性アミノシリコーンモノマー、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン(CAS No.919-30-2)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(CAS No.13497-18-2)又はそれらの混合物であることができる。
【0224】
いくつかの実施形態によれば、架橋剤は1,000g/mol未満の分子量を有する非アミノシリコーンであり、したがって反応性縮合硬化性フィルム形成非アミノシリコーンモノマーを含むか、主に含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態において、非アミノ架橋剤の総濃度は、油相の重量の最大35重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%又は最大5重量%である。
【0225】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用する場合、「主に含む」という用語は、典型的には調製物内の成分に関して、その成分の少なくとも50%の重量含量を指す。
【0226】
いくつかの実施形態によれば、反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー;アミノ及び非アミノシリコーン油;非アミノ架橋剤;及び前記油相内の顔料粒子もしくは前記顔料粒子用の分散剤を含む反応性充填剤:の合計濃度は、全組成物の重量の少なくとも90重量%、少なくとも93重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも95重量%である。
【0227】
いくつかの実施形態によれば、水中油型エマルションは非イオン性乳化剤の存在下で調製され、前記乳化剤は好ましくはグリフィンスケール(Griffin scale)で、12~18、12~17、12~16、12~15又は13~16の間の親水親油バランス(HLB)値を有する。エマルションは、当業者に知られているいくつかの乳化技術によって調製することができる。手動の振とうで十分であり得るが、さまざまな機器、いくつか挙げると例えばボルテックス、オーバーヘッドスターラー、マグネチックスターラー、超音波分散機、高剪断ホモジナイザー、ソニケーター及びプラネタリー遠心ミルなどを使用でき、それは典型的には水相における油滴のより均一な集合を与える。エマルションは、その調製後又は好適に安定したままである期間内に、容易に塗布することができる。例えばエマルションは、油滴がそれらの所望のサイズ範囲内である限り、乳化されたアミノシリコーンプレポリマーが反応性のままであるという条件で塗布することができる。コーティングの厚さは液滴の平均直径に比例すると考えられるため、薄いコーティングが必要な場合は大きすぎる液滴は避ける必要があるが、一方、小さすぎる液滴は、所望の視覚効果を提供するために十分なサイズを有する顔料粒子を包埋することができないことになる。この時間枠は、エマルションの成分及びそれらのそれぞれの量によって異なってよく、乳化剤の存在は典型的にはそれを延長する。いくつかの実施形態において、エマルションは乳化から最大30分以内、又は最大20分以内、最大10分以内又は最大5分以内に毛髪繊維に塗布される。
【0228】
いくつかの実施形態によれば、水性担体は、液体担体の少なくとも60重量%の水、又少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の水を含む。いくつかの実施形態において、水及び任意の乳化剤の総濃度は、水相の重量の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%である。
【0229】
顔料の量が多い及び/又はそれらの密度が大きい場合、液体担体は主に水を含むことになるが、水は全組成物の30重量%のみを構成してよい。
【0230】
いくつかの実施形態において、硬化後のアミノシリコーンコートの厚さ、平均厚さ又は複数の繊維の平均厚さは、少なくとも20nm、少なくとも50nm又は少なくとも100nmであり、および場合により最大3,000nm、最大2,000nm、最大1,200nm、最大800nm、最大500nm、最大400nm、最大300nm、最大200nm、最大150nm又は最大120nmであり、さらに場合により20nm~3,000nm、20nm~1,000nm、20nm~500nm、20nm~300nm、20nm~200nm、20nm~150nm、50nm~150nm、50nm~500nm、50nm~3.50nm、50nm~250nm又は50nm~200nmの範囲内である。
【0231】
本明細書で使用される場合、用語「平均厚さ」は、典型的には1つ又は複数のコーティング又は層に関して、繊維の長さに沿った1つ又は複数のコーティング又は層の測定した厚さの算術平均を指すことを意味する。当技術分野で知られているように、各個々の厚さの測定は、集束イオンビーム(FIB)技術を使用して行われる。コートされた繊維の全長に沿って等間隔に配置された10個のポイントが個々の厚さ測定で測定され、10個の測定の算術平均がこの個々の繊維に関する平均厚さを定義する。
【0232】
本開示の又は本開示によって生成されるコートされた繊維は、かなりの程度にかかわらず、毛髪繊維基材の特定の局所の組織分布的な特徴の、非常に一貫したコーティング厚さを示し得る。さらに、個々のコートされた繊維は、同様のコーティング厚さを示し得る。それにもかかわらず、コーティング厚さへのより統計的な手法は、本開示と当技術分野のさまざまな教示とを区別するのによりよく役立ち得ることが理解される。したがって、本開示のいくつかの実施形態において、「複数の繊維の平均厚さ」は、個々のコートされた繊維について上記で定義された「平均厚さ」として定義されるが、共にコーティング処理を受けた繊維からランダムに選択された、少なくとも10個であるコートされた繊維の複数に適用され、コートされた繊維の複数に対して算術平均される。
【0233】
<ポリマーオーバーコート>
ポリマー層は、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料で形成された複数のポリマー粒子を含む水性分散液から形成され、前記親水性ポリマー材料は、顔料が水性分散液中に存在する場合、場合により顔料粒子を包埋する。
【0234】
水性分散液中に分散されるポリマー粒子は、アミノシリコーンコートでプレコートされた毛髪繊維への塗布時に多少親水性であり、それらの酸部分は、中和剤の存在下でこの目的のために中和される。しかしながら、中和可能な酸部分のそのような中和前のポリマー材料は疎水性である。アミノシリコーンプレコートされた哺乳類の毛髪繊維の外部表面に水性分散液を塗布した後、中和剤が(例えば蒸発により)除去され、(哺乳類の毛髪繊維にプレコートされている)アミノシリコーンコートの外部表面に付着する、上層のポリマー層(場合により着色されている)が生成される。
【0235】
明細書及び以下の特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、中和されたポリマー材料などのポリマー材料に関する用語「親水性ポリマー」は、以下の溶解度特性のうちの少なくとも(at ]east)1つを有するポリマーを指す:(i)純粋な脱イオン水への溶解度が23℃で少なくとも1重量%(より典型的には、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%)及び(ii)pH10に調整した純粋な脱イオン水への溶解度が23℃で少なくとも1重量%(より典型的には、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%)。ポリマーの溶解性は、顔料又はその他の存在し得る添加剤がない状態で評価される。
【0236】
典型的には、親水性の中和されたポリマー材料の共役酸は疎水性ポリマー材料である。
【0237】
明細書及び以下の特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、ポリマー材料に関する「溶解度」という用語は、脱イオン水媒体の透明度を維持しながら、上記の(i)又は(ii)の脱イオン水媒体に導入できるポリマー材料の量を指す。
【0238】
明細書及び以下の特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、溶液に関する「透明度」という用語は、以下の特性の少なくとも1つ、典型的には両方を有する溶液を含むことを意味する:(i)溶液は肉眼で透明に見える;及び(ii)そこに配置されたミセルの平均直径又は粒子サイズ(DLSにより決定される)は、最大100nmである。より典型的には、そのようなミセルの平均直径又は粒子サイズは最大80nm、最大70nm又は最大50nmである。水性分散液からの揮発性塩基の除去により、親水性ポリマー材料の中和された酸性部分がその共役酸に再酸化される。したがって、そのような除去の後、疎水性ポリマー材料を得ることができる。
【0239】
有利には、水性分散液の塩基性pHは、アミノシリコーンフィルムでプレコートされた毛髪繊維に塗布されると、(例えばアミノ基のプロトン化によって)アミノシリコーンフィルムの正電荷を復活させることができる。並行して、塩基性pHは、(例えばカルボキシル基のプロトン化によって)ポリマー材料の高い負への帯電を可能にする。したがって、水性分散液の塩基性pHは、ポリマー粒子によるアミノシリコーンフィルムのコーティングプロセスの開始時に有意な電荷勾配に有利に働き、強力な初期静電駆動を示す。
【0240】
いくつかの実施形態において、疎水性ポリマー材料の中和可能な酸部分は、前記疎水性ポリマー材料の重量の少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%又は少なくとも22%を構成する。いくつかの実施形態において、疎水性ポリマー材料の中和可能な酸部分は、前記疎水性ポリマー材料の重量の8~30%、10~30%、12~30%、12~28%、12~26%、15~30%、15~28%、15~26%、17~22%、17~23%、18~30%、18~28%、18~26%、20~30%、20~28%又は20~26%を構成する。
【0241】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマー材料の中和可能及び/又は中和された酸部分は前記親水性ポリマー材料の重量の、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%又は少なくとも22%を構成する。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー材料の中和可能及び/又は中和された酸部分は前記親水性ポリマー材料の重量の、8~30%、10~30%、12~30%、12~28%、12~26%、15~30%、15~28%、15~26%、17~22%、17~23%、18~30%、18~28%、18~26%、20~30%、20~28%又は20~26%を構成する。そのような値は、ポリマー材料の総重量あたりの、酸部分を有するモノマーの重量パーセント含量(例えばEAAコポリマー中のアクリル酸(重量%AA)又はEMAA中のメタクリル酸(重量%MA))に関しても報告される。ポリマー材料のそのような特性は、一般に製造元によって提供されるが、ASTM D 4094に記載されているような標準的な方法で評価できる。
【0242】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は(中和前に)少なくとも100mgKOH/g、少なくとも(at ]east)115mgKOH/g、少なくとも130mgKOH/g又は少なくとも145mgKOH/gの酸価を有する。いくつかの実施形態において、ポリマー材料の酸価は、最大230mgKOH/g、最大215mgKOH/g、最大200mgKOH/g又は最大185mgKOH/gである。いくつかの実施形態において、100~230mgKOH/g、115~215mgKOH/g、130~200mgKOH/g、130~185mgKOH/g、145~185mgKOH/g又は145~170mgKOH/gの範囲内の酸価を有する。酸価(Acid number)(酸価(Acid Value)又は中和価とも呼ばれる)は、化学化合物中のカルボン酸基の量を評価し、ポリマー材料1グラムを中和するために必要なミリグラム単位の水酸化カリウム(KOH)の重量に一致する。酸価は一般に、そのようなポリマー材料の製造業者によって提供されるか、又はASTM D 974-04に記載されているような標準的な方法によって個別に評価できる。
【0243】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、水性分散液の重量の少なくとも1重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも5重量%の量で水性分散液中に分散される。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、水性分散液の重量の最大45重量%、最大30重量%、最大25重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大12.5重量%又は最大10重量%の量で水性分散液中に分散される。
【0244】
いくつかの実施形態において、水性分散液は:
(a)それぞれ独立して中和可能な酸部分を有する少なくとも1つの疎水性ポリマー材料(前記疎水性ポリマー材料は場合により顔料と複合されている)を、水を含む水性担体中で混合し、疎水性ポリマー材料のペレットを含む中和可能な混合物を形成する工程;
(b)中和可能な混合物に中和剤を添加する工程であって、前記添加は少なくとも1つの疎水性ポリマー材料の最も高い軟化温度及び/又は最も高い溶融温度の少なくとも1つを超える温度で撹拌下で行われ、前記中和剤は前記ポリマー材料の中和可能な酸部分の少なくとも75%を中和するのに十分な量で添加され、親水性ポリマー材料の一部を含む中和された混合物を形成する工程;
(c)前記水性分散液を形成するために、中和された混合物を分散させる工程であって、前記水性分散液は少なくとも1つの親水性ポリマー材料の粒子を含む
によって製造される。
【0245】
いくつかの実施形態において、水性分散液は:
(a)それぞれ独立して中和可能な酸部分を有する少なくとも1つの疎水性ポリマー材料を、水を含む水性担体中で混合し、疎水性ポリマー材料のペレットを含む中和可能な混合物を形成する工程;
(b)中和可能な混合物に中和剤を添加する工程であって、前記添加は少なくとも1つの疎水性ポリマー材料の最も高い軟化温度及び/又は最も高い溶融温度の少なくとも1つを超える温度で撹拌下で行われ、前記中和剤は前記ポリマー材料の中和可能な酸部分の少なくとも75%を中和するのに十分な量で添加され、親水性ポリマー材料の一部を含む中和された混合物を形成する工程;
(c)中和された混合物に少なくとも1つの顔料を添加する工程;及び
(d)前記水性分散液を形成するために着色された中和混合物を分散させる工程であって、前記水性分散液は、少なくとも1つの親水性ポリマー材料の粒子を含み、前記親水性ポリマー材料の一部が前記少なくとも1つの顔料を少なくとも部分的に包埋している工程
によって製造される。
【0246】
中和剤の量は簡単な方法で実験的に決定することができるが、ポリマー粒子の自己分散性を可能にし、(顔料を含まない場合は)ミセルの透明な分散液の形成を可能にするその濃度は、数式によっても評価できる。例えば、中和可能な酸部分を有するポリマー材料に添加される中和剤の量(B-グラムでの重量)は:
B=(W・A・N・E)/l000
[式中、Wはポリマー材料のグラム単位での重量を表し、
AはmEq/ポリマー材料のグラム単位で表したポリマー材料の酸性度であり、
Nは所望の中和のパーセント(0~1の小数であり、後者は100%中和されていることを表す)であり、
Eは使用される中和剤の当量である]
である。
【0247】
いくつかの実施形態において、水性分散液の調製で使用される中和剤は揮発性塩基である。そのような場合、得られる水性分散液は揮発性塩基を含む。揮発性塩基は、アンモニア(NH3)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモルホリンからなる群から選択される。耐洗浄性が望ましい場合、ポリマー材料の酸部分が塩基の金属イオンと再結合して、耐水性がより低いイオノマーが生じ得るため、中和剤としてのアルカリ金属塩基は避けることが好ましい。いくつかの実施形態において、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料はpH10で、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%の溶解度を有するか、又は前記溶解度は2~30重量%、5~30重量%、10~30重量%又は15~30重量%の範囲内にある。
【0248】
いくつかの実施形態において、水性分散液及び親水性ポリマー材料の粒子は、その中に分散された顔料粒子をさらに含み、前記顔料は、場合により前記の詳細なリストから選択され、さらに場合によりそれに関連する構造的特徴(例えば粒子のサイズ)を満たす。
【0249】
いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、親水性ポリマー材料の重量の少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも重量%、少なくとも2重量%又は少なくとも5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、親水性ポリマー材料の重量の、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%(wi.%)、最大20重量%、最大15重量%又は最大10重量%の量である。いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、親水性ポリマー材料の重量の0.1重量%~50重量%、1重量%~30重量%、2重量%~20重量%又は5重量%~15重量%の範囲内の量で存在する。
【0250】
いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、水性分散液の重量の少なくとも0.05重量%、少なくとも0.5重量%又は少なくとも1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、水性分散液の重量の最大15重量%、最大10重量%、最大7.5重量%、最大5重量%又は最大2.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、顔料は水性分散液中に、水性分散液の重量の0.05重量%~15重量%、0.5重量%~10重量%、1重量%~7.5重量%、1.5重量%~5重量%又は1.5重量%~2.5重量%の範囲内の量で存在する。
【0251】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンコーティングを有する哺乳類の毛髪繊維の外部表面を、少なくとも部分的に中和されたポリマー材料の水性分散液で処理する方法は、中和された酸部分を酸性化する、大部分をもしくは主に酸性化する又は完全に酸性化するために、上層のポリマー層(場合により着色されている)に関連する揮発性塩基を揮発させることをさらに含む。
【0252】
水性分散液の塗布に続いて、この方法は上層の着色ポリマー層中の親水性ポリマー材料の一部、主要部分又はすべてを、その共役酸に変換することをさらに含む。いくつかの実施形態において、変換は、中和された酸部分を酸性化して共役酸を形成することを含むか、主に含むか又はそれからなる。
【0253】
親水性ポリマー材料がその共役酸に十分に変換されると、疎水性ポリマー材料が得られる。したがって、ポリマー材料が塩基によって酸部分を有する形態(親水性)から共役酸形態(疎水性)に十分に変換されたポリマー層は、下層のアミノシリコーンコートへの十分な付着を形成できる。このような場合、外部のポリマーコートは疎水性コートである。
【0254】
いくつかの実施形態において、中和された酸部分を有するポリマー材料は、中和されたアルケン-アクリル酸コポリマー、中和されたアルケン-メタクリル酸コポリマー及び中和されたアクリルアミド/アクリレートコポリマーからなる群から選択される1つ又は複数の中和されたコポリマーを含むか、主に含むか、本質的にそれらからなる又はそれらからなる。
【0255】
いくつかの実施形態において、中和されたアルケン-アクリル酸コポリマーは、中和されたエチレン-アクリル酸(EAA)コポリマーを含むか、主に含むか、本質的にそれからなる又はそれからなる。いくつかの実施形態において、中和されたアルケン-メタクリル酸コポリマーは、中和されたエチレンメタクリル酸(EMAA)コポリマーを含むか、主に含むか、本質的にそれからなるか又はそれからなる。いくつかの実施形態において、中和された酸部分を有するポリマー材料は、中和されたアクリルアミド/アクリレート(AAA)コポリマーを含むか、主に含むか、本質的にそれからなるか又はそれからなる。
【0256】
7.5~11の範囲内のpHで、分散剤及び他のすべての添加剤が水中に存在しない場合、好適な親水性ポリマー材料は、水中で自己分散可能である。
【0257】
いくつかの実施形態において、中和された親水性ポリマー材料の水性分散液は、界面活性剤及び/又は増粘剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤は水性分散液の表面張力を調整することができる超湿潤剤(super-wetting agent)であり、アミノシリコーンコートの湿潤性(wetting)を促進する。
【0258】
いくつかの実施形態において、水性分散液中の界面活性剤又は超湿潤剤は、それによって水性分散液が25℃で最大30、最大28、最大26又は最大24、及び場合により少なくとも12、少なくとも14又は少なくとも16ミリニュートン/メートル(mN/m)の表面張力を示すような十分な量で選択及び添加される。いくつかの実施形態において、水性分散液の表面張力は、12~30、15~30、18~28、18~26、18~24、19~24又は20~24mN/mの範囲内である。
【0259】
本開示による水性分散液の調製に役立つことのできる、アクリル酸(AA)又はメタクリル酸(MAA)などの中和可能な酸部分を有する好適な疎水性ポリマー材料は商業的に利用可能であり、非限定的な例として、Dow Chemical CompanyのPrimacor(登録商標)、DuPontのNucrel(登録商標)、BASFのJoncryl(登録商標)とLuwax(登録商標)、AkzoNobelのDermacryl(登録商標)及びExxonMobil ChemicalのEscor(登録商標)の商品名で市販されている、いくつかのEAA、EMAA及びAAAポリマー材料を含む。
【0260】
好適には、中和可能な酸部分を有する疎水性ポリマー材料は熱可塑性である。熱可塑性ポリマーは、例えばホットメルトコンパウンディングなどのコンパウンディングプロセスにおける顔料粒子の部分的な包埋を促進する。
【0261】
いくつかの実施形態において、アミノシリコーンコート上への水性分散液の塗布に続いて、プレコートされた哺乳類の毛髪繊維の外部表面に接着する上層のポリマーコーティング(例えば着色されている)を生成するために、上層のポリマー層が処理される。そこから過剰な材料を除去するために、塗布後の処理には複数の繊維を洗浄及び/又はコーミングすること、及び場合により、続いて複数の繊維を乾燥及び/又はコーミングすることが含まれる。
【0262】
洗浄及び/又は乾燥及び/又はコーミング、及びより一般的にはコーティングプロセス全体を含む、コーティングされた毛髪繊維の処理は、典型的には最大45℃、40℃、35℃、30℃又は25℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、そのような工程は、少なくとも5℃、10℃、12℃、15℃、17℃又は20℃の温度で、及び場合により室温又は周囲温度から7℃、5℃又は3℃以内で行われる。
【0263】
いくつかの実施形態において、複数の繊維の洗浄は、水性分散液の塗布が完了してから最大20分、最大10分、最大5分、最大3分、最大2分、最大1分又は最大30秒以内に行われる。
【0264】
いくつかの実施形態において、毛髪繊維及びその上のコートの乾燥は、積極的な(active)乾燥である。いくつかの実施形態において、水性分散液の塗布、毛髪繊維の洗浄及び/又は積極的な乾燥のための期間の合計時間は、2~90分、2~75分、2~60分、2~45分、2~30分、2~20分、2~10分又は2~5分の範囲内である。
【0265】
いくつかの実施形態において、前記合計時間の直後(例えば洗浄又は乾燥後)24~72時間以内、24~48時間以内、24~36時間以内又は24~30時間以内、及び複数の繊維が室温又は周囲温度の7℃、5℃、3℃又は1℃以内に維持されている間、上層の着色されたポリマーコーティングは、耐洗浄性、永続性又は永続的な着色を実現する。
【0266】
上層のポリマーコーティングのそのような弾性は、下層のアミノシリコーンコートの抵抗性及び下方の毛髪繊維への付着の強さによって寄与されると考えられる。アミノシリコーンコートの硬化は毛髪繊維上で進行できるため、いったんこのようなコートがポリマー層によって覆われると、縮合硬化が周囲の湿気から恩恵を受けることができるように、上層のポリマーコーティングは、湿気の拡散に対して有利には透過性であることに着目することができる。哺乳類の毛髪が生体のものである場合、ポリマー層は好ましくは「呼吸する」コートを形成する。
【0267】
いくつかの実施形態において、上層のポリマーコートの厚さは、下層のアミノシリコーンコートの厚さと組み合わせると、前記アミノシリコーンコート及び前記上層の着色されたポリマーコーティングの総厚さ、総平均厚さ又は総複数繊維平均厚さ(multiple-fiber average thickness)は、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも500nm、少なくとも800nm、少なくとも1,200nm又は少なくとも2,000nmになるようになる。いくつかの実施形態において、2つのコートの総厚さ、総平均厚さ又は総複数繊維平均厚さは、最大5,000nm、最大3,500nm、最大2,500nm、最大2,000nm、最大1,700nm又は最大1,400nmである。いくつかの実施形態において、2つのコートの総厚さ、総平均厚さ又は総複数繊維平均厚さは、100nm~5,000nm、200nm~3,500nm、200nm~2,500nm、200nm~1,000nm、200nm~700nm、200nm~500nm、200nm~450nm又は200nm~400nmの範囲内である。
【0268】
いくつかの実施形態において、組み合わせた2つのコートの前記総厚さ、前記総平均厚さ及び前記総複数繊維平均厚さの少なくとも1つの、下層のアミノシリコーン層の前記厚さ、平均厚さ又は複数繊維平均厚さに対する比は、1.2:1~100:1、1:4~100:1、1:7~100:1、2:1~100:1、3:1~100:1、4:1~100:1、5:1~100:1、7:1~100:1、10:1~100:1、2:1~30:1、2:1~20:1、3:1~30:1、3:1~20:1、5:1~30:1、5:1~20:1、7:1~30:1、7:1~20:1、10:1~50:1、10:1~30:1又は10:1~20:1の範囲内である。
【0269】
いくつかの実施形態によれば、本教示による組成物(又はそれらの調製及び使用を可能にするキット)は、分散剤、pH調整剤、防腐剤、殺菌剤、防カビ剤、粘度調整剤、増粘剤、キレート剤、ビタミン及び香料からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。塗布の形態に応じて追加の薬剤を要求することができ、例えば組成物が推進スプレー(propelled spray)として塗布される場合、推進剤を添加することができる。
【0270】
いくつかの実施形態によれば、組成物はペースト、ゲル、ローション及びクリームからなる群から選択される形態である。
【0271】
いくつかの実施形態によれば、哺乳類の毛髪はヒトの毛髪又は動物の毛であり、毛髪は、体毛、顔の毛(例えば口ひげ、あごひげ、睫毛及び眉毛を含む)又は頭髪から選択される。さらなる実施形態において、毛髪はヒト又は動物である対象の身体又は頭皮に付着している。ヒトの毛髪は、あらゆる人種(ヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系など)のもの及び自然なものであっても人工的なものであっても、直毛、ウェーブ状、カール状、縮れ状などのいかなる種類のものであってよい。対象に付着していないヒトの毛髪は、かつら、ヘアエクステンション、まつげエクステンションなどの製品で見つけることができる。いくつかの実施形態において、哺乳類の毛髪繊維は、乾燥しているか、湿っていないか又は予め染色されている。いくつかの実施形態において、哺乳類の毛髪繊維は、脱脂されておらず、シャンプーされておらず、ブリーチされていない。
【実施例
【0272】
<材料>
以下の実施例で使用される材料は、以下の表1にリストされている。報告された特徴は、それぞれ5つのサプライヤーが提供する製品データシートから取得又は推定されたか、又は通常の分析方法によって評価された。特に明記しない限り、すべての材料は入手可能な最高の純度レベルで購入した。次の表において、AAはアクリル酸を表し、ANはアミンナンバーを表し、EAAはエチレンアクリル酸を表し、N/Aは情報が利用できないことを意味し、PDMSはポリジメチルシロキサンを表し、2-SiOHおよび3+SiOHは、プレポリマーが、分子あたりそれぞれ2つ又は3つ以上の加水分解可能な反応基10及び/またはシラノール基を有していることを意味し、ポリマーに関連して分子量(MW)を使用する時、それは重量平均分子量を指す。これらの材料のサプライヤーに関して、BASFは米国のBASF Corporationを表し、Dowは米国のDow Chemical Companyを表し、EvonikはドイツのEvonik Resource Efficiency GmbBを表し、Gelestは米国のGelest Inc.を表し、Geneseeは米国のGenesee Polymer Corporationを表し、15 Momentiveは米国のMomentive Performance Materialsを表し、ShinEtsuは日本のShinEtsu Chemical Company Ltdを表し、Sigma-Aldrichは米国のSigma-Aldrich Corporationを表す。
【0273】
【表1-1】
【0274】
【表1-2】
【0275】
<機器>
以下の例で使用される機器は、最初に詳しく説明するものとする。
特に明記しない限り、同じ装置は最初に説明した機器を参照するものとする。
【0276】
<例1:反応性アミノシリコーン油相及びその成分の前処理>
この例では、ヘアコーティング組成物の成分の含水量の寄与が研究された。前の記載で説明したように、縮合硬化性アミノシリコーンエマルションの反応相に少量の水が含まれると、アミノシリコーンプレポリマーの加水分解性部分の加水分解速度を発動(trigger)するか又は改善し得ると考えられ、得られたシラノール部分の縮合硬化を次々に増加させる。本明細書で使用する場合、「反応物」という用語は、組成物を使用して調製されたアミノシリコーンコートの最終的な縮合硬化に関して反応性又は非反応性に関わらず、それらの化学的同一性とは独立に、組成物の任意の及びすべての成分に関する。
【0277】
〔水の脱離〕
最初の段階ですべての反応物を乾燥させた。反応性充填剤などの固体反応物は、乾燥コンベクションオーブン(イスラエル、MRC社製の機械式コンベクションオーブンDF0-240N)で150℃で24時間乾燥した。液体反応物は、水の存在を最小限の含水量に減らすため、約4オングストロームの均一な細孔を有する多孔質シリカモレキュラーシーブを使用して乾燥した(以下の条件下ではモレキュラーシーブは残留水を脱着できなくなる)。使用前に、モレキュラーシーブをセラミックオーブン(リトアニア、Snol社製のSNOL 30/1300 LSF01)で350℃の温度で3時間乾燥させ、乾燥アルゴン雰囲気下のデシケーター中で室温(約23℃)に戻るまで冷却した。乾燥させる材料を適切な容量の容器に入れ、材料と組み合わせたときに容量の約2/3を占めるように、乾燥させたモレキュラーシーブを加えた。24時間のインキュベーション後、乾燥させた材料を濾過によりモレキュラーシーブから分離した。使用するまで各無水反応物のそれぞれの残留水量を最小限に維持するために、乾燥させた各反応物をアルゴン雰囲気下のデシケーター内に室温で個別に保管した。
【0278】
乾燥(無水)反応物中の水の残留量は、例えばカールフィッシャー滴定によって決定することができる。例えば反応性疎水性ヒュームドシリカの水の残留量は、Mettler-ToledoのC30電量計及びMi11iporeSigma l .09257 .0500Aquastar(登録商標)CombiCoulomat Fritless Reagentを使用して0.4重量%であることがわかった。このような結果は、材料が通常、配送時に0.5重量%以下の水を含むことを特定するサプライヤーのデータと一致する。非反応性アミノシリコーン油も同様に試験した。供給時には約0.007重量%の水を含むGP-965は、乾燥されて約0.006重量%の水を含むようになり、これはどちらの値も同等であり、この油に吸着され得る水の最小残留量を示すとみなされ、供給時には約0.089重量%の水を含んでいたGP-967は、約0.064%含むように乾燥された。
【0279】
反応性プレポリマー中の水の残留量をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)で評価し、そのスペクトルは、シラノール部分の加水分解性基を示す約3600~3700cm-1のヒドロキシルピークの存在及び3100~3700cm-1の範囲の水の存在について分析された。本研究では、FTIR分析は、4cm-1の解像度及び64スキャン/サンプルで、NicoletTM 6700 FTIR(Thermo Electron Corporation)を使用して中赤外域(約500~4000cm-1)で行った。テストしたサンプルは、四塩化炭素で5重量%に希釈した。関連する範囲での加水分解性基のピークの欠如は、乾燥材料中には実質的に加水分解性基がないことを意味すると解釈され、同様に、存在するとしても、乾燥した反応性プレポリマー中の水の量は非常に少量であることを示す。反応性アミノシリコーンGP-145及びKF-857をこの方法で試験すると、モレキュラーシーブで乾燥する前と後の両方のそれぞれのスペクトルには、水及びシラノールの範囲にピークはなかった。
【0280】
〔制御された水分吸着〕
以下のように、第1段階の乾燥反応物に水を加えた。この制御された水の添加又は加湿は、反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー、反応性補強充填剤、及び/又は非反応性反応物に対して行った。既知の量の水にさらした反応物は、ここではプレミックスと呼ぶ。反応物の制御された加湿に使用される水は、6.5~7.5の範囲のpHを有する蒸留水であり、したがって中性水とも呼ぶ。
【0281】
プレポリマーの重量に対して所定量の水(0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1重量%及び3重量%)を含む反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの一連のプレミックスは、20mlの密閉可能なガラスバイアルにそれぞれ:0.01g、0.03g、0.05g、0.10g及び0.30gの蒸留水(pH6.5~7.5)ならびに9.99g、9.97g、9.95g、9.90g及び9.70gのKF-857又はGP-145を入れて調製した。水及び反応物のそれぞれの量は、ドイツ、Sartorius製のCubisc(登録商標)分析天びんを使用して計量した。KF-857又はGP-145のプレミックス組成物を、均一になるまで約10秒間ボルテックス(Vortex Genius 3、1KA、ドイツ)で混合した。KF-857又はGP-145プレミックスは、以下に詳述するように、すべての反応物を前処理組成物に組み込む直前に調製した。
【0282】
同様に、アミノシリコーン油の重量に対して所定量の水(0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1重量%及び3重量%)を含む非反応性アミノシリコーンの一連のプレミックスは、20mlの密閉可能なガラスバイアルにそれぞれ:0.01g、0.03g、0.05g、0.10g及び0.30gの蒸留水(pH6.5~7.5)ならびに9.99g、9.97g、9.95g、9.90又は9.70gのGP-967またはGP-965を入れて調製した。GP-967又はGP-965プレミックス組成物を、均一になるまで約10秒間ボルテックスで混合した。GP-967又はGP-965プレミックスは、すべての反応物を前処理組成物に組み込む直前に調製した。
【0283】
シリカの重量の0.8重量%の水を含む疎水性ヒュームド(formed)シリカのプレミックスは、乾燥したヒュームドシリカを湿気のある雰囲気下でオーブンに入れることにより調整した。乾燥したヒュームドシリカを温度40℃、相対湿度80%のオーブン(イスラエル、MRC製の機械式コンベクションオーブンDF0-240N)中で24時間インキュベートした。そのように処理した疎水性ヒュームドシリカ中の水の量は、カールフィッシャー滴定によって測定し、反応性ヒュームドシリカの約0.8重量%であることがわかった。参考として、制御された加湿処理前の、乾燥した疎水性ヒュームド(formed)シリカ中の水の量は、0.4重量%であった。
【0284】
以前に詳述したように、反応物への水の添加はFTIR分光法によって確認した。簡潔に言うと、乾燥したDynasylan(登録商標)SlVO 210に0重量%、2重量%及び5重量%の中性の蒸留水を加え、水を加えた直後に分析した。乾燥したDynasylan(登録商標)SIVO 210のスペクトルには、水及びシラノールを示す範囲においてピークがなかった。この反応物に2重量%又は5重量%の水を加えると、狭いシラノールピーク及び広い水ピークが検出された。これらの結果は、水が反応物に吸着され、それが引き起こすことができる加水分解が容易に引き起こされたことを示す。2重量%の水で加湿した反応物を再度試験したところ、水の添加から3日後に水のピーク特性は見えなくなり、サンプル中で起こった加水分解を示すシラノール基のピークが残った。これらの結果は、添加された水が加水分解のために完全に「消費」されたことを示す。
【0285】
〔前処理組成物〕
[前処理組成物1~5(PTCJ~PTC5)]
20mlの密封可能なガラスバイアルに以下を入れた:
0.23g(最終混合物の2.23重量%)の、0.8重量%の水で加湿した疎水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)R 8200);
0.27g(最終混合物の2.62重量%)の乾燥したGP-145;
1.80gの(最終混合物の17.4重量%)の、0.1重量%の水(PTC1)、0.3重量%の水(PTC2)、0.5重量%の水(PTC3)、1重量%の水(PTC4)又は3重量%の水(PTC5)を含有するKF-857反応性アミノシリコーンプレミックス;及び
8.00g(最終混合物の77.67重量%)の乾燥したDynasy1an(登録商標)srvo 210。
【0286】
[前処理組成物6~8(PTC6~PTC8)]
20mlの密封可能なガラスバイアルに以下を入れた:
10 0.23g(最終混合物の2.23重量%)の、0.8重量%の水で加湿した疎水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)R 8200);
1.80g(最終混合物の17.42重量%)の乾燥したKF-857;
0.30g(最終混合物の2.9重量%)の、0.1重量%の水(PTC6)、0.3重量%の水(PTC7)又は1重量%の水(PTC8)を含むGP-145反応性アミノシリコーンプレミックス;及び
8.00g(最終混合物の77.44重量%)の乾燥したDynasylan@ SIVO 210。
【0287】
[前処理組成物9~13(PTC9~PTC13)]
20mlの密封可能なガラスバイアルに以下を入れた:
2.00g(最終混合物の20重量%)の、0.1重量%の水(PTC9)、0.3重量%の水(PTC10)、0.5重量%の%水(PTC11)、1重量%の水(PTC12)又は3重量%の水(PTC13)を含むGP-967非反応性アミノシリコーンプレミックス;
0.67g(最終混合物の6.66重量%)の乾燥したGP-965;及び
7.33g(最終混合物の73.33重量%)の乾燥したDynasylanc(登録商標)SIVO 210。
【0288】
[前処理組成物14~17(PTCJ4~PTCJ7)
20mlの密封可能なガラスバイアルに以下を入れた:
0.67g(最終混合物の6.67重量%)の、0.1重量%の水(PTC14)、0.3重量%の水(PTC15)、1重量%水の(PTC16)又は3重量%の水(PTC17)を含むGP-965非反応性アミノシリコーンプレミックス;
2.00g(最終混合物の20重量%)の乾燥したGP-967;及び
7.33g(最終混合物の73.33重量%)の乾燥したDynasylan@SIVO 210。
【0289】
[前処理組成物18(PTC18)]
20mlの密封可能なガラスバイアルに以下を入れた:
0.23g(最終混合物の2.23重量%)の、0.8重量%の水で加湿した疎水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)R 8200);
0.27g(最終混合物の2.62重量%)の乾燥したGP-145;
1.80g(最終混合物の17.4重量%)の乾燥したKF-857;及び
8.00g(最終混合物の77.67重量%)の乾燥したDynasy1an(登録商標)SIVO 210。
【0290】
油相の均一性を向上させるために、小金属ビーズ(直径1.5mm、ステンレス鋼製)を各バイアルに入れた。バイアルに蓋をし、前述の組成物をTurbula@ミキサー(ドイツ、Willey A.Bachofen AG、Maschinefabrik)中で、均一になるまで10分間混合した。次に、存在する場合はヒュームドシリカの分散性を改善するために、粉砕ボールミル(IKA Tube Drive)を使用して、最高速度6,000rpmで2分間、均質な混合物を剪断に供した。得られた混合物をそれぞれ4つのサンプルに分け、室温で0時間、2時間、4時間及び24時間維持した。
AH前述の前処理組成物(AH afore-said pre-treatment compositions)は、(混濁せず、少量の水を明確な水相に分離することなく)透明な均一の(unifom1)油相を形成した。
【0291】
〔前処理組成物の分析(Analvsis)〕
前処理組成物PTC3の粘度は、Haake TM Mars TM レオメーター(geometry DG4 l)を1秒-1の剪断速度で使用して、各インキュベーション時間の終了時に測定した。前処理組成物の粘度は時間とともに増加することが見出され、PTC3は、その調製直後(t=0時間)は9.7mPa・sの平均粘度、2時間後には10.0mPa・sの粘度、4時間後には10.2mPa・sの粘度及び12時間後には24.4mPa・sの粘度を有する。したがって前処理の12時間後に、粘度は151%増加することが観察された。
【0292】
加水分解性部分を含む反応物の加水分解の開始を示すヒドロキシルピークの存在は、単離された反応物の分析に関連して記載されているように、FTIR分光法を使用して評価した。PTC3組成物を時間0で分析すると、前処理のこの最初の時点でシラノールの狭いピークがすぐに示されたが、水を加えていない対照組成物には存在しなかった。
【0293】
PTC3前処理液体組成物のガラス転移温度がある場合、ガラス転移温度は、24時間までのインキュベーションのすべての時点の後に行われた示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。サンプルは-80℃~+30℃の間で、約10℃/分の加熱速度で試験した。結果は、スキャン範囲の温度(℃)に対する熱流(J/s)に関して(in tem1s )プロットした。特定のTgから検出可能である、十分に架橋されたネットワークを欠く材料から予測されるように、平坦な曲線はガラス転移温度が存在しないことを示す。0~24時間の間のいかなるインキュベーション時間においてTgは検出されなかった。
【0294】
いったん前処理組成物を乳化すると、エマルションを一般に乳化から30分以内に塗布することに留意すべきである。このような時間が経過すると、満足のいく着色及び永続性(pem1anency)を得る能力が低下し、相当に遅くなると消えてしまう。実施例2でさらに詳細に記載されるように、PCT3を乳化した。エマルションを室温で30分間放置した。次に、熟成したエマルションを遠心分離して水相を除去し、油相を上記のようにDSCで試験した。熟成したエマルションから抽出された油相は、約-1℃のTgを示した。このガラス転移温度は、前処理組成物の反応物から生じる、完全に硬化したフィルムを表し得ないが、検出可能なTgが単に存在していることは、熟成エマルション中にネットワークを形成するように縮合硬化が起こったことを示した。
【0295】
同様の分析をPTC9~17シリーズの前処理組成物に対して行った(GP-965又はGP-967に添加する代わりに、Dynasy1an(登録商標)STVO 210に中性水を2重量%で添加した)。得られた前処理組成物をPTC21とした。この前処理組成物の粘度は、その調製直後(t=0時間)に約6.1mPa・sであり、24時間後に約8.3mPa・sであり、t0と比較して百分率で約35%の粘度増加をもたらした。
【0296】
Tgを有している場合、前処理組成物のTgを決定するための液体PTC21のDSC分析は、すべての時点で行った。前処理の0~24時間のいかなるインキュベーション時間においてTgは検出されなかった。水の添加から48時間後にDSC分析を繰り返し、前処理組成物はまだ検出可能なガラス転移温度は有していなかった。しかしながら、PTC21を乳化して室温で30分間熟成すると、その後そこから抽出された油相は、DSCによって試験した場合に約0℃のTgを示した。完全に硬化したネットワークを示すものでないとしても、検出可能なTgの存在は熟成したエマルション中で縮合硬化が起こったことを示した。明細書中で以前に説明したように、架橋ポリマーが着色コートを形成できないことは予想外ではない。
【0297】
<例2:反応性アミノシリコーンエマルションの調製>
例1で調製した乾燥した及び中性水で再加湿した反応物の前処理油相混合物を、それぞれのインキュベーション時間(すなわち上記のように、0時間、2時間、4時間又は24時間)維持した後、各混合物0.2gを、乳化剤として0.1%Tweeni!<J 80を含む水溶液60ml(PTC1~8及びPTC18に由来する混合物)か、又は100mlのプラスチック容器に含まれる60mlの純水(PTC9~PTC17及びPTC21に由来する混合物)に加えた。油相及び水相の得られた組み合わせを、プラネタリー遠心ミキサー(Thinky Mixer ARE-250、Thinky Nippon Monozukuri Innovator、日本)を使用して、一定の剪断速度(2,000rpm)で30秒間混合及び乳化した。便宜上、この例に従って調製されたアミノシリコーンエマルションは、ASEntxとして参照される(refe1rnd)べきである[nは乳化された前処理組成物の数を表し、txは前処理組成物のインキュベーション時間を表す(xは時間単位で示される)]。説明のために、0、2、4又は24時間インキュベートした前処理組成物番号1(PTC1)の乳化から得られるアミノシリコーンエマルションは、それに応じてASEHo、ASE1t2、ASE114及びASE1!24と呼ぶ。得られたエマルション(例えばこれまでに記載されたASE1t0からASE18f24)のpHは、pHメーター(pH 211、Hanna Instruments、アメリカ)を使用して測定し、一般に約pH10であることがわかった。このpH(約pH10)は、本教示に従って調製されたすべてのエマルションに典型的であった。
【0298】
得られたエマルションのゼータ電位は、折りたたまれたキャピラリーセル(folded capillary cell)DTS1070を備えるZetasizer Nano Z(Malvern Instruments製)を使用して測定した。すべてのエマルションは、自然のpH(-10)でゼロより大きい正のゼータ電位、例えば少なくとも+1mVを示した。例えば、ASE3t0(PTC3、t0から調製)のゼータ電位は+4mVであり、ASE21t0(PTC21、t0から調製)のゼータ電位は+6mVであった。自然のpHにおけるわずかな変動による穏やかな増減を排除するため、すべてのエマルションに共通で同等であり得るpH値に到達させるためにエマルションを(例えば氷酢酸などで)pH9にわずかに酸性化することができる。pH9では、ASE3t0のゼータ電位は+24mVであることがわかった。
【0299】
アミノシリコーンエマルションは一般に、乳化から最大15分以内に毛髪繊維に塗布された。コーティングプロセスは例4に詳述されている。毛髪繊維をコートすることができるアミノシリコーンエマルションの調製のための追加の反応性アミノシリコーンプレポリマーの適合性が、同時係属出願において確立されている。これらのプレポリマー(pre-polyn1ers)は、参考として含まれる前述のDynasylanc(登録商標)SlVO 210、GP-145及びKF-857と共に、以下の表2にリストされている。報告された特性は、それぞれのサプライヤーが提供する製品データシートから取得又は推定された。以下の表において、BPは分岐ポリマーを表し、LPは直鎖ポリマーを表し、I及びIIはそれぞれ第1級又は第2級アミン基を示す。他の略語及び頭字語は表1で定義したものである。これらの代替反応物のそれぞれにおける水の量は、例1で教示されているように制御できると考えられる。
【0300】
【表2】
【0301】
追加の非反応性アミノシリコーン油は、毛髪繊維をコートできる反応性アミノシリコーンエマルション、例えばGP-4、GP-6、GP-468及びGP-581の調製に適していると予想される。これらの代替反応物のそれぞれにおける水の量は、例1で教示されるように制御できると考えられる。
【0302】
毛髪繊維をコートすることができるアミノシリコーンエマルションの調製のための追加の非アミノシリコーン系材料の適合性は、同時係属中の出願で確立されている。これらの材料を以下の表3に示す(略語及び頭字語は以前に定義したものである)。これらの代替反応物のそれぞれにおける水の量は、例1で教示されるように制御できると考えられる。
【0303】
【表3】
【0304】
<例3:ポリマー包埋顔料組成物の調製>
〔中和可能な酸部分を有するEAAコポリマーと顔料のコンパウンディング〕
混練ロールが内部オイル循環によって約100℃に熱されたツリーロール混合ミル(Mixing mill Model 00、Sailing international Industry Group、中国)に、次の順序で投入した:4.5%のPrimacor(登録商標)5990I、10%の顔料、45%のLuwax(登録商標)EAS-5(アクリル酸含有量がそれぞれ約20.5%及び21.5%であるエチレンアクリル酸[EAA(EA.I)コポリマー]。例えば、300gのコンポジットは、30gの顔料及び135gの各EAAコポリマーをコンパウンドすることで調製できる。BAA-顔料複合ペーストを、混練ロールを通して再投入し、約10分間剪断及び混合した(合計10サイクルの粉砕)。溶融混練コンパウンドプロセスの最後に、比較的乾燥したBAA-顔料ストライプ様コンポジットをハサミで約0.5cmの縁部を有する、小さくて平らな正方形に切断した。コンポジットの平らな正方形を、EAAに埋め込まれた顔料が、数ミリメートルのおおよその直径(dian1eter)を有する顆粒状の粉末を形成するまで、コーヒー豆粉砕機(De'Longhi Appliances、イタリア製、KG40)で液体窒素を使用して極低温条件下でさらに粉砕した。
【0305】
中和可能な酸部分を有する上記のポリマー材料が顔料と別々に配合されるときのこの方法、ならびに(as wen as)追加の熱可塑性(them1oplastic)である中和可能な酸ポリマーの適合性が、同時係属出願においてさらに確立された。
【0306】
(混錬ロールの)コンパウンディング温度をかっこ内に示す。適切な代替EAAコポリマーには以下のものが含まれる:Primacor(登録商標) 59801[サプライヤーであるDow Chemical Companyによって測定された20重量%のアクリル酸含量を有するEAAコポリマー(コンパウンディング温度約150℃)];Nucrel(登録商標)2806(サプライヤーであるDuPont Companyによって測定された18.0重量%のアクリル酸含量を有するEAAコポリマー(コンパウンディング温度約150℃));Luwax@EAS-5(BASFから提供された160~180mgKOH/gの酸価に基づいて計算された、約21.5重量%のアクリル酸含量を有するEAAコポリマー(コンパウンディング温度約180℃));及びA-Cil)5180(Honeywell International Inc.によって製造された約20.0重量%のアクリル酸含量を有するEAAコポリマー(コンパウンディング温度約130℃)。
【0307】
追加の適切な熱可塑性である中和可能な酸ポリマーには、中和可能な酸部分がメタクリル酸単位であるコポリマー、例えばエチレンメタクリル酸(EMAA)コポリマーが含まれる。例えば、DuPontによって製造された、約15.0重量%のメタクリル酸含有量を有するEMAAコポリマーであるNucrel(登録商標)960(コンパウンディング温度約140℃)が適切であることが分かった。
【0308】
他の適切なコポリマーは、アクリルアミドコポリマー中にアクリル酸及びメタクリル酸単位の両方を含む中和可能な酸部分を有する。例えばDermacyl(登録商標)79(AkzoNobelにより製造された、133mgKOH/gポリマーの酸価を有するオクチルアクリルアミド/アクリレート(AAA)コポリマー)(コンパウンディング温度200℃)が適切であることが分かった。さらに、コポリマーの混合物、例えば同じコポリマーの混合物(例えば上記で例示したPrimacor(登録商標)59901及びLuwax(登録商標)EAS-5)及び異なるコポリマーの混合物(例えばNucrel(登録商標)2806(EAA)及びNucrel(登録商標)960(EMAA)、約130℃の温度で等量をコンパウンディングする)も同様に使用できる。
【0309】
〔ポリマー包埋顔料の中和〕
20gのEAA-包埋色素粉末を500mLのガラスビーカーに投入し、その後180mLの脱イオン水(pH6.5~7.5)を加えた。総重量あたり10重量%のコンポジットを含む分散液を、加熱プレート(Fried Electric Ltd.、イスラエル)を使用して50℃まで加熱している間に、高剪断ミキサー(米国、Silverson Machines Inc.製L5M-A)を使用して3,000rpmで10分間混合した。温度は、標準の科学水銀温度計(Si-Mada、イスラエル)を使用して測定した。顔料が包埋されたEAAコポリマーブレンドを中和するために、加熱した分散液に5mLの水酸化アンモニウム(25重量%)を添加した。同じ条件で約20分間混合し続けながら、混合物をさらに80℃(又はポリマー材料の軟化温度よりも高い他の適切な温度)に加熱した。次に、着色ポリマー粒子の水分散性が得られるまで中和反応を続けるために、BAA包埋顔料の少なくとも部分的に中和した分散液に5mLの水酸化アンモニウム(25重量%)をさらに追加した。コポリマー中の十分な量のアクリル酸基の中和は、一般に約10のpHを有する分散液をもたらす。ポリマー材料中の酸部分の含有量及び所望の中和度の関数として、添加される中和剤の量を推定する式は当業者に知られており、そのような量は慣用的な実験により容易に決定(dete1mined)することができる。
【0310】
水酸化アンモニウムは、特に中和された着色ポリマー粒子の水性ミセル分散液が薄いコートとして塗布されると、徐々に蒸発する揮発性中和剤であることに留意されたい。追加の適切な揮発性中和剤は、エタノールアミン(MEA、DEA又はTEA)などの脂肪アミン又は同等の有機アミン(例えばモルホリン)であり得る。中和剤の蒸発に続いて、中和されたポリマー材料のコートのpHは徐々に低下し、フィルム形成は顔料を捕捉するために進行する。中和剤の除去及びフィルムのpHの低下に伴い、着色ポリマーコートの耐水性(TI1e water-resistance of the pigmented polymeric coat)が向上する。
【0311】
フィルム形成の加速及び粘着性の減少をもたらすより迅速な蒸発のために、過剰な中和剤は好ましくは避けるべきである。この目的のために、中和された分散液中の塩基の量(amom1t)を導電率によって監視した。具体的には、電極プローブを水性分散液に浸し、導電率を、米国のEutech Instruments製のCyberScan CON 200導電率計を使用して測定した。3ミリジーメンス未満の導電率に達するまで、塩基を添加するか又は分散液を蒸発させたままにした。
【0312】
非限定的な方式で上述したように、他の適切な熱可塑性の酸ポリマーの中和は、同様のプロセスによって実施することができる。水酸化アンモニウムのアルカリ性溶液は、EAA、EMAAもしくはAAAコポリマーまたはそれらのブレンドの水分散性を促進すると考えられる。さらに、この段階で、顔料はミセルを形成するポリマー殻に捕捉されると考えられる。したがって、顔料のサイズはミセルのサイズを制御し、狭い粒子径分布を有する顔料は、同様に狭いサイズ分布を有するミセル分散液をもたらす。
【0313】
中和プロセス中に、凝集体の存在の有無を視覚的に評価するために、0.1mLのミセル分散液のサンプルを採取し、2枚のスライドガラスの間に置いた。塊、凝集体又は粒子の集合体が存在する場合、追加の塩基(例えば水酸化アンモニウム(25重量%))を分散液に導入し、その後より長い時間混合した。
【0314】
中和プロセスの最後に、中和されたポリマー包埋顔料ミセル分散液が得られた。分散液は、pHが7.5から10.0の間にある限り、揮発性中和剤を部分的に蒸発させた後であっても、塩基性条件下(m1der basic pH conditions)で安定していた(例えば時間が経過しても同様のPSDを示した、比較的一定の電荷を保持したなど)。このような安定性は、追加の専用分散剤がなくても観察され、コポリマーは中和プロセスのあと水中で自己分散性となる。この場合、中和された分散液に専用分散剤が添加され、安定性をpH7.5未満に拡張できる。このような場合、分散液はpH6~7.5の範囲であっても、安定して効果を維持できる。一般に、本明細書に記載のように顔料包埋ポリマーの分散ミセルは、サブミクロン範囲の中央値(たとえば、Dv50::S:1μm)のサイズ分布を示し、DLSで評価すると、通常750nm未満、500nm未満又は250nm未満のDv50値を有する。Pigment Violet 23を包埋する中和されたPrimacor(登録商標)59901:Luwax(登録商標)EAS-5の分散粒子は、約374nmのDv50及び約647nmのDv90を示した。顔料がない場合、中和されたポリマー材料のミセルのDv50は100nm未満、50nm未満及び30nm未満である。
【0315】
中和されたPrimacor(登録商標)59901:Luwax(登録商標)EAS-5の粒子中に包埋されたPigment Violet 23の分散液のゼータ電位は、0.5重量%の材料のみを含むように希釈されたサンプル中、pH10.0(自然のpH)で測定した。ゼータ電位は負(-55mV)であることがわかった。詳細は例9に記載する。
【0316】
中和ポリマーの分散ビーズ内の顔料粒子の存在は、100倍の倍率で光学顕微鏡により確認した。さまざまな分散液中のEAA包埋顔料の固形分は、通常9.0重量から20.0重量%の範囲であった。必要に応じて、蒸発を補うため、又は特定の固形分(例えば10.0重量%)に達するために脱イオン水を追加した。分散液のpHは一般に、約7.5~11.0、9.0~1LO又は約9.5~10.5の範囲であった。中和されたPrimacor(登録商標)5990I:Luwax(登録商標)EAS-5の粒子に包埋されたPigment Violet 23の分散液のpHは、約10.0であることがわかった。
【0317】
より高い酸価を有する中和可能なポリマーと比較して、より低い酸価を有するポリマー材料は、より少ない量の顔料と投入されるべきであると考えられる。いずれにせよ、中和後に酸基の一部は、ポリマー包埋顔料の水分散性を確保するために利用可能なままであるべきなので、顔料を投入する程度は、それらがコンパウンドされる酸基を有するポリマーの最大能力に到達または近づくべきではないと考えられる。酸部分の一部は、顔料親和性基として機能し、ポリマー材料に包埋されている顔料と関与していると考えられる。
【0318】
同時係属出願で報告されているように、酸部分がないポリマー材料を含む分散液も同様に調製(及び着色について試験)されており、このコントロールポリマーは既知の水分散性顔料親和性ポリマーである。コントロールポリマー(Eastman Chemical CompanyによってEastman AQTM polymersして商品化された変性ポリエステル)は、顔料とのコンパウンドに成功し、粒子の形態で水に分散されたが、得られた水性分散液は、例4に記載されているものと類似の手順による、下層の縮合硬化性アミノシリコーンフィルムに付着できる外層を形成できなかった。これらの発見は、ポリマー材料の酸部分が水分散性及び/又は顔料親和性を確実にするだけでなく、おそらくシリコーンポリマーの接近可能なアミノ側鎖に結合することで、近接したアミノシリコーン層にも付着可能であるという仮説を支持する。
【0319】
<例4:毛髪繊維の着色>
1-縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーならびに追加の反応性及び非反応性反応物(例1で詳述したもの)を含む前処理組成物は、例2によるさまざまなインキュベーション時間(例えば0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間及び24時間)後に調製されたアミノシリコーンエマルションとして提供された。
2-毛束(ドイツ、Kerling international Haarfabrik GmbHによる、白ヤクの体毛、約7cmの長さの自由毛(free hair))をASEntx反応性アミノシリコーンエマルションサンプルに、約60秒間穏やかに撹拌しながら浸した。
3-次に、反応性アミノシリコーンエマルションでコートされた毛束を約25℃の水道水で完全にすすぎ、余分なエマルションを取り除いた。
4-次に、反応性アミノシリコーンエマルションでコートされたすすぎ洗いした毛束を、例3に記載されるように調製した顔料包埋中和ポリマーの水性分散液に、穏やかに撹拌しながら約60秒間浸した。顔料-コポリマー複合体は、最終分散物の10重量%を構成し、その導電率は3ミリジーメンス未満であった。
5-次に、ポリマー包埋顔料の分散液でコーティングされた毛束を、約25℃の水道水で数秒間すすぎ、過剰な着色分散液を除去した。
6-すすぎ洗いした着色毛束は、カチオン性シャンプー(Expert Selection、Keratin Smooth、TRESemme、Unilever、米国)で洗浄され、適切な被覆を保証するため繊維はシャンプーで軽くマッサージされ、約25℃の水道水でしっかりとすすぎ洗いした。
7-洗浄した着色毛束を、毛髪表面が約50℃の温度になるように、毛髪繊維から約20cmの距離で熱風を吹き付けて、Philipsコンパクトヘアドライヤーで約30秒間乾燥した。
【0320】
フィルムは通常まだ硬化しており、さらにその形成(凝集性)及び下層の基質への付着(接着性)が進行しているため、この段階ではカチオン性シャンプーが好ましいことに留意すべきである。
【0321】
さらに、気流の温度は、揮発性成分(例えば水担体又は中和剤)の蒸発を加速することができるが、本教示によるコーティングプロセスには重要ではなく、周囲温度(約23℃)で空気を吹き付けて乾燥させた毛髪サンプルでも同様の結果が得られることに留意すべきである。乾燥プロセスを短縮するために、毛髪サンプルは一般に、すべての繊維が気流にさらされるのを容易にするために乾燥プロセス中にとかされる。しかしながら、本教示による毛髪繊維のコーティングは自己終結プロセスであるため、コーミングは本開示に必須ではない。図1及び2を参照して説明したように、自己終結プロセスは隣接する繊維間の液体架橋の形成を有利に防止するか又は低減する。コーティングの自己終結がないプロセスにおいて、液体架橋は着色組成物の固まりに毛髪の固着をもたらし得る。このような有害な場合においては、集合化した毛髪はコーミングによる個別化が必要であり、このプロセスでは毛髪に機械的ストレスが加わり、満足のいくコーティングの可能性がさらに減少する。さらなる研究まで、乾燥した着色毛髪サンプルを室温で保管した。
【0322】
<例5:着色毛髪繊維の感触>
例4に従って着色した乾燥毛髪繊維の感触は、訓練を受けた人によって定性的に評価した。AUサンプル(AU samples)は、べたつくことのない感触を示し、毛髪繊維は個別に使用でき、いかなる固まりも形成していなかった。しかしながら、乳化前の前処理組成物のインキュベーション時間が延長されるほど、感触は一般的により心地よいものであった。例1で評価された最大24時間の期間内で、ASEnt24が示す非粘着性の感触は、ASEnt4が示す感触と等しいか又はそれより強く、同様にASEnt4はASEnt2が示す感触と等しいか又はそれより強く、ASEnt2それ自体はASEnt0が示す感触よりもより心地よいことが一般に観察された。数学的用語に当てはめると、その結果は着色毛髪の感触に関して、ASEnt24 2 ASEnc4 2 ASEnt2 2 ASEntoであることを示唆する。
【0323】
同じ反応物を含む前処理組成物の各シリーズの中で、添加される水の量が増加するものを含む1つは、乾燥した反応物に添加される水の量を増加させるとプロセスが加速されることが一般に観察された(着色のペースを追うと視覚的に認識されやすくなる)。したがって、最初の時点であるt0及び水がKF-857と事前に混合されるPTC1~5を例にとると、ASE5の非粘着性の感触は、少なくともASE4と同じくらいの心地よさであり、同様にASE4は少なくともASE3と同じくらいの心地よさであり、以下同様である。数学的用語に当てはめると、その結果は着色毛髪の感触に関して、ASE5 2 ASE4 2: ASE3 ~ ASE2 2: ASEl)(反応性KF-857のプレミックス);ASE8 2 ASE7 2: ASE6(反応性GP-145のプレミックス);ASE13 2: ASE12 2 ASEll 2 ASElO ~ ASE9(非反応性GP-967のプレミックス);及びASE17 2: ASE16? ASE15 2 ASE14(非反応性GP-965のプレミックス)であることを示唆する。
【0324】
プレミックスのすべてのシリーズは、以下の着色非粘着性毛髪繊維をもたらしたが、ASE9~ASE17及びASE21で着色された毛髪は、やや硬いが満足できる感触(激しい摩擦後にざら紙への移行がないことにより評価される、改善した耐摩耗性を示す)を示すことが観察された。ASE1~ASE8及びASE18の対比は、比較的自然/柔軟な感触を示す。しかしながら、このより心地よい感触は、比較的減少した耐摩耗性を犠牲にしていた。ASE18と比較して、ASE1~ASE8で得られた結果は、油相の前処理中に複数の反応物を加湿できることを示している。t0では、油相に2つの加湿反応物(疎水性ヒュームドシリカに加えてKF-857又はGP-145)を含めることによって調製したASEは、ASE18よりも穏やかにより鮮やかな色を示した(疎水性ヒュームドシリカは、水を補充された唯一の反応物であった)。
【0325】
<例6:着色された毛髪繊維の耐洗浄性>
この例の目的は、着色の永続性(pem1anency)の予測モデルとして、激しい洗浄に例4に従って着色された毛髪サンプルを素早く供することである。この手順は、(特定の実験で特に明記されていない限り)一般に着色毛髪サンプルの乾燥から24時間後に行った。
【0326】
標準シャンプー(イスラエル、Saryna KeyによるShea natural keratin shampoo)を乾燥した着色毛髪サンプルに塗布し、全体を被覆し密接に接触するように、実施者の指の間で徹底的にマッサージした。この段階では、以下に示すように着色したフィルムを含むフィルムは、毛髪にしっかりと付着していると考えられる。したがって、カチオン性シャンプーの使用はもはや推奨されず、通常のシャンプーがより攻撃的な化学的条件を模倣するために好ましかった。余分なシャンプーを絞り取り、この工程をさらに4回繰り返した。合計5回のそのようなシャンプーサイクルの後、毛髪を約25℃の水道水ですすいだ。前のステップをさらに4回繰り返し、手順の最後にはシャンプーサイクルの総数は25に達した。最後のシャンプーサイクルの後、毛髪サンプルを約25℃の水道水で完全にすすぎ、その後、例4で記載したように乾燥及びコーミングした。
【0327】
<例7:光学密度測定>
乾燥した毛髪サンプルの光学密度(OD)は、X-Rite 939、D65110分光光度計(X-Rite Inc.、アメリカ)を使用して測定した。測定は、コートされた(着色された)又はコートされていない(参照)毛髪サンプルの少なくとも3つのセグメントで実施し、平均化した。平均値を以下に報告する。
【0328】
ベースラインであるODbaseは着色の完了後に測定した。シャンプー耐性試験に供された毛髪サンプルについては、試験の完了後にODwashも測定した。ベースラインからの201%未満のODの減少(ODwash/ODbase~0.8x ODhase)は十分であり、毛髪繊維への着色フィルムのかなりの付着を示すと考えられる。この条件を満たす着色(そのような効果を支持する顔料を含まない下層コートを含む)を、本明細書では「永続的」と呼ぶ。明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、コートされ、着色された哺乳類の毛髪繊維に関する用語「永久性(permanence)」及び「耐洗浄性(wash resistance)」は、(例えば例4に記載されるような)コーティングプロトコルに従う顔料含有コーティングでコートされた繊維(例えばコートされた毛髪繊維)を指すために互換的に使用され、それは(i)コーティングプロトコルに従うコーティングの塗布に続く硬化後に測定される(determined after fol] curning)測定したベースライン光学密度(OD)値(「ベースラインOD」又は「ODoase」)、ならびに(ii)コーティングプロトコルに従ってコーティングを塗布したした後、及びそれに続く(例えば標準的な硫酸塩含有シャンプーについて例6に記載されているような)洗浄プロトコルに従って、硬化したコートされた繊維をシャンプーで少なくとも25回洗浄した後に得られる、測定OD値(「洗浄プロトコル後OD(ODpost-wash-protoccl')」又は「ODwash」)を有し、洗浄プロトコル後OD(ODpost-wash-protocoi)はODベースラインの少なくとも80%である。
【0329】
アミノシリコーンの最初のコートの形成に、例1及び2に記載されているように調製したエマルションのいずれかを使用した、例4に記載されているように着色されたAHサンプル(例えばASE1t0~ASE18t24)は、少なくとも約1.3のODを示した(provided fr1r)。比較のために、コートされていない白ヤクの毛は、約0.36のODを示した。例1で評価した最大24時間の期間内に、即時の乳化と比較して、前処理組成物を乳化の少なくとも2時間前にインキュベートした場合に、着色(OD)がより強いことが一般に観察された。一部のサンプルにおいて、最大24時間まで前処理されたASEで強い着色が依然観察されたが、他のサンプルでは、テストされた期間の前処理の終了時点での着色は、減少を示した。数学的な用語に当てはめると、結果は2つの主要な挙動を示唆し、1つ目は、24時間の処理後も着色が依然プラトーにあること、すなわちASEnt24 2: ASEnt4 2: ASEnt2> ASEntoであり、2つ目は、4時間超24時間未満のプラトー後に着色が減少すること示唆する。2時間未満の前処理で強い着色が得られると考えられるが、0~2時間に及ぶ期間の中間値についてまだ調査されていない。
【0330】
同じ反応物を有する前処理組成物の各シリーズの中で、添加される水の量が増加するものを含む1つは、乾燥した反応物への水の添加量の増加は、着色プラトーの初期段階(最大OD)においてそのような問題が考慮されたときに、着色の強度を改善することが一般に観察された。したがって、例えばプラトーの最初の時点、すなわち例1の特定の状況における2時間の前処理を考慮すると、ASE5t2のODは、ASE4t2のODと少なくとも同等か又はそれよりも大きく、ASE4t2のODは、ASE3t2のODと少なくとも同等か又はそれよりも大きく、以下同様である。数学的な用語に当てはめると、この結果は以下のアミノシリコーンエマルションによって着色されたサンプルの光学濃度をランク付けできることを示す:ASE5t2 2:: ASE412 :::: ASE3t2 ~ ASE2t2 ~ASE1t2(反応性KF-857のプレミックス);ASE8t2? ASE7t2 2: ASE6t2(反応性GP-145のプレミックス);ASE13t22'. ASE12t2 2: ASEl b,? ASE10t2 2: ASE9t2(非反応性GP-967のプレミックス);及びASE17t2?:. ASEl6t2?:. ASE15t2 2:: ASE14t2(非反応性GP-965のプレミックス)。シャンプーへの耐性に関して、時間ゼロですぐに調製されたエマルションと比較して、少なくとも2時間の前処理により、永続性が大幅に向上することが一般的に観察された。パフォーマンスにプラトーがあるように考えられ、その後それぞれのベースラインと比較して光学密度のわずかな低下が観察された。さらに、24時間以上単発的に前処理した油相で着色されたサンプルでは、耐洗浄性が損なわれ、油相の24時間以上の前処理後にODがベースライン値から20%以上減少したことが観察された。
【0331】
着色自体に関して、他の点では同じ反応物を有する前処理組成物の各シリーズについて、水の量が増加するにつれて耐洗浄性が向上した。したがって、例えばプラトー段階で測定された最初の時点、すなわち例1でテストされた時点を考慮して2時間の前処理を行うと、ASE5t2の耐洗浄性は、ASE4t2の耐洗浄性と少なくとも同等か又はそれより強く、同様にASE4t2の耐洗浄性は、ASE3t2の耐洗浄性と同等か又はそれより強く、以下同様である。第1の毛髪サンプルのODwash/ODbase比が、第2の毛髪サンプルの前記比よりも大きい場合、第1の毛髪サンプルは第2の毛髪サンプルよりも耐洗浄性が優れている。数学的な用語に当てはめると、結果は以下のアミノシリコーンエマルションによって着色されたサンプルのODwash/ODbase比をランク付けできることを示唆する: ASE5 t2? ASE4 t2:.::: ASE3t2? ASE2 t2 :.::: SE 1 t2(反応性KF-857のプレミックス); ASE8 t2? ASE7 t2?:. ASE6 t2(反応性GP-145のプレミックス);ASE13 t2?:. ASE12t2 2:: ASE11 t2?:. ASE10t2?:. ASE9t2(非反応性GP-967のプレミックス);及びASEl 7 ,2? ASE16 t2? ASE15 t2:.::: ASE14 t2(非反応性GP-965のプレミックス)。
【0332】
Dynasylan@SIVO 210(推定平均アミンナンバー370)は、そのサプライヤーによると、3つのモノマーのブレンド:450のアミンナンバーを有する、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン(CAS No. 919-30-2、一般的に(generalJy)25%以上存在する)、235のアミンナンバーを有する、ビス(トリエトキシ-シリルプロピル)アミン(CAS No. 13497-18-2、一般的に20%以上存在する)及び263のアミンナンバーを有する、1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン(CAS No. 1184179-50-7、一般に1~5%の範囲で存在)を含んでいることに注意されたい。これらの材料は、それぞれEvonikのDynasylan iiJ AMEO、GelestのSIB1824.5及びSIT8187.2)として個別に入手可能であり、Dynasylan(登録商標)SIVO 210をその構成要素のいずれか(同量)に置き換えることにより、それぞれの効果を個別に評価できる。
【0333】
この実験が行われ、水不溶性モノマーは水溶性モノマーよりも好ましいことがわかった。水溶性は、室温でほぼ中性(-pH7)の蒸留水に1重量%の材料を混合した後、均一になるように短時間ボルテックスすることで評価した。透明な溶液は水溶性物質を示すが、濁り(tu_rbidity)は少なくとも部分的に水不溶性物質であることを示した。この方法により、Dynasylan@AMEOは水溶性であることが確認されたが、SIB1824.5及びSIT8187.2(及び元々のDynasylan@SIVO 210)は不溶性であることが判明した。
【0334】
参考のために、上記の前処理組成物の調製に使用される他の液体反応物を水溶性について同様に試験した。すべてが約pH7及び23℃で、1重量%(またはそれ以上)において水不溶性であることがわかった。すなわち、反応性縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマー(KF-857、GP-145)及びアミノシリコーン油(GP-965、GP-967)は、水に混濁した分散液を生成した。これらの結果は、本開示では反応性油相である同じ相に、すべての反応物が存在していることを支持する。比較のために、低いMWを有する反応性シランである3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン(MW161)及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(MW264)は、同じ方法で1重量%において透明な溶液を形成し、水溶性であることがわかった。
【0335】
Dynasy1anriP SIVO 210の個々の成分を、例1で前述したようにモレキュラーシーブで乾燥させた。次に、アミノシリコーンプレポリマー(例えばKF-857、GP-145)及び/又はアミノシリコーン油(例えばGP-965、GP-967)と組み合わせて、元々の混合物として、アミノシリコーンエマルションの調製の適合性について乾燥成分をテストした。この問題を評価するために、2つの前処理組成物である2時間前処理されたPTC3及びPTC9を変更した。「変更したPTC3」組成物において、置換される反応物は反応性油相の約78重量%で存在し、「変更したPTC9」組成物において、置換される反応物は反応性油相の約73重量%で存在した。Dynasylan(登録商標)SIVO 210がその不溶性成分であるSIB 1824.5及びSIT8187.2に置き換えられたとき、元々の混合物の約1.39のODと比較して、及びコートされていない毛髪のベースライン値に近いODを有する水溶性成分とは反対に、どちらも少なくとも1.25のODで十分な色強度を示した。Dynasy1an(登録商標)SIVO 210を水溶性成分であるDynasylan(登録商標)AMEOで置き換えることにより調製したエマルションは、毛髪繊維への水不溶性反応物の堆積のみに起因すると考えられる、かすかな着色をもたらした。Dynasylan(登録商標)SIVO 210又はその個々の成分が反応性油相の唯一の構成要素であり、水60mlあたり0.2gで乳化された対照実験では、着色がわずかすぎて、永続性及び水溶性のものと比較した不溶性材料の予想される利点についてさらに評価できなかった。
【0336】
24時間後に評価した着色の永続性に関して、Dynasylan@SIVO 210が不溶性成分であるSIB1824.5及びSIT8l87.2に置き換えられ、乳化に先立ってそれらを水と事前に混合しなかった場合、SIT8187.2は、元々の混合物に匹敵し、SIB1824.5より優れることが判明し、両方の前処理組成物から調製された最初のコートにおいて、シャンプー耐性のある着色(ODwash/ODbaseが約91%)を示した。前処理組成物をさらに変更するために、置換反応物をそれぞれ中性水の2重量%含むように事前に混合し、乳化の前に2時間インキュベートすると、良い効果が観察された。
【0337】
Dynasylan@SIVO 210がSIT8187.2に置き換えられた組成物を採用し、この不溶性成分を2重量%の中性水でさらに加湿した。前処理組成物(2時間インキュベート)は、約1.51の満足できる着色を示した。永続性に関しては、着色直後、又はその後2、4、6及び24時間にシャンプー耐性試験を実施することにより評価した。時間0では永続性は観察されなかったが、耐洗浄性は時間とともに増加し、着色後4~24時間の範囲でODwash/ODbasc比が約90%になった。さらに、SIT8187.2を2重量%の代わりに1重量%の中性水で前処理すると、2時間の前処理組成物で得られた着色の永続性がすぐに達成された。言い換えると、着色は塗布後すぐにシャンプー耐性があった。これらの結果は、反応性油相の反応物に水を添加すると、着色の永続性が始まるまでの時間を短縮できることをさらに示す。
【0338】
最後に、すべての化合物に2重量%の中性水を補充し、前処理の24時間でインキュベートした、変更したPTC9組成物として調製した。次に前処理した油相を乳化し、以前に詳述したように着色毛髪サンプルとして使用した。着色した毛髪サンプルをさらに24時間熟成させ、その時点で耐洗浄性を評価した。
【0339】
これらの実験の結果を次の表にまとめており、前処理組成物は置き換えられた唯一のアミノ官能性材料によって特定される。表において、SRは永続性が報告されたシャンプー耐性を表す。着色の永続性が得られたら、25回のシャンプーサイクルで洗浄したサンプルの光学密度も報告される。
【0340】
【表4】
【0341】
表4からわかるように、Dynasylan(登録商標)SIVO 210の不溶性成分及び元々の混合物の両方が、本研究で同等の永続性を示した。興味深いことに、このことはDynasylan(登録商標)SIVO 210の水溶性成分をその不溶性成分と混合した場合、その存在がそれぞれの性能に大きな影響を与えないことを示唆する。
【0342】
同様の実験の追加のシリーズにおいて、前述の縮合硬化性アミノシリコーンモノマーを、オリゴマーによって置き換えた。縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマーであるSilquest(登録商標)VX-225及びSilquest(登録商標)Y-15744は、Momentive Performance Materialsから供給され、上記のように乾燥又は加湿した形態で試験した。結果を表4に報告する。
【0343】
着色の観点から、縮合硬化性アミノシリコーンオリゴマーは、PTC3又はPTC9から変更された前処理組成物から乳化されたかどうかに関係なく、高いODを示した。乾燥したオリゴマーから調製されたエマルションは、そのような着色の永続性を実現できなかった。しかしながら、変更したPTC3を使用して評価されるように、オリゴマーに最初に2重量%の中性水が補充されたとき、Silquest(登録商標)VX-225(約277のアミンナンバーを有する)は、耐洗浄性のある着色の形成を示した。
【0344】
<例8:油相の短い前処理>
前の例で述べたように、例1~20で使用した前処理の時点は互いに比較的離れていて、少なくとも2時間処理したエマルションで最初に観察された現象のいくつかは、実際には、0~2時間の間のより早い時点に発生した可能性があると考えられる。この例の目的は、短い間隔を使用してこの可能性を確認することであり、インキュベーション時間は0、15、30、45、60、90及び120分である。より短いインキュベーションは、PTC3(KF-857)、PTC15(GP-965)及びPTC18(ヒュームドシリカ)に対応する組成物で行われ、加湿された反応物を括弧内に示す。それぞれ異なるタイプの反応物を示し、KF-857は縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーを表し、GP-965は非反応性アミノシリコーンを表し、ヒュームドシリカは固体補強充填剤を表す。
【0345】
結果は、プラトーの開始に到達するのに十分である15分以下のより短い前処理期間で最大の着色に到達できることを示した。感触に関して、以前に実証されたように、訓練された実施者によって定性的に評価されるように、時間とともに穏やかに改善されただけの心地よい感触を、すべてが時間0において示した。本例において、ASE15及びASE18は、15分以下で前処理した油相により、それぞれ優れた感触を示した。ASE3は、15分以上30分以下前処理した油相により、優れた感触を示した。永続性に関しては、0~2時間の時間枠で改善は測定されなかった。
【0346】
<例9:さまざまな顔料での毛髪繊維の着色>
第1のコートにアミノシリコーンエマルションASE3t4(PTC3から4時間インキュベートして乳化)を使用することで例4を繰り返した(その調製については、例1及び2で詳しく説明している)。第2のコートについて、ポリマー包埋顔料組成物(例3に従って調製)は、10重量%のChromophtal(登録商標)Violet K5800の代わりに、表5にリストした10重量%の着色剤を含む。顔料又はコントロール染料のカラーインデックス(CT)番号を括弧内に示す。すべての水性分散液は、10重量%のコンポジットを含んでおり、したがって塗布した分散液の重量の1重量%の顔料。すべての分散液の導電率は、毛髪繊維への塗布時に3ミリジーメンス未満であった。便宜上、分散された着色ミセルのPSD(DLSによりナノメートルで測定、体積で表す)及び分散液のゼータ電位(pH10及び0.5重量%の固形分で測定、mVで表す)も報告する。
【0347】
表5において、N/Tは試験しなかったこと(Not Tested)を表し、サプライヤーの列において、Cabotは米国のCabot Corporationを表し、CappelleはベルギーのCappelle Pigmentsを表し、ClariantはスイスのClariant Internationalを表し、GeotechはオランダのGeotech Internationalを表し、HeubachはドイツのHeubachを表し、Lowensteinは米国のJos. H. Lowenstein&Sonsを表し、NeelikonはインドのNeelikon Dyestuffsを表し、Sensientは米国のSensient Colorsを表す。
【0348】
【表5】
【0349】
上記の着色剤から調製されたすべての分散液は、EAAコポリマーにコンパウンドされ、前述のように中和されると、満足のいく着色を示した。着色は、反応性アミノシリコーンプレポリマーの第1のフィルムで既にコートされた毛髪繊維に塗布した後に評価した。これらの着色分散液の追加例で着色されたすべての毛髪サンプルは、心地よい非粘着性の感触を示した。異なる顔料はASE3t4で観察された挙動を変更することが予想されないため、耐洗浄性は試験しなかった。
【0350】
興味深いことに、上記の着色剤の一部は、本来比較的水に不溶性の顔料とは対照的に、比較的可溶性の染料と見なされる。前記染料には、例えばユニピュア(Unipure)レッド LC 3079が含まれ、それらで着色された毛髪は顔料で着色された毛髪よりも耐洗浄性が劣っていた(shov.'11 to be less wash-resistant)。
【0351】
前述のようなポリマー材料の着色水性分散液を混合することの適合性が、同時係属出願において確立されており、それにより着色工程の間に組み合わされる個々の分散液の色合いの組み合わせから生じる、新しい色合いが得られる。
【0352】
酸部分を有するコポリマーに包埋された顔料の中和された分散液のゼータ電位値に関して、いくつかの実施形態において、前記ゼータ電位は、少なくとも8.0及び最大12.0のpHで測定することができ、前記測定は場合により自然のpH(例えば約10)で行われる。好都合なことに、材料又は組成物のゼータ電位の測定は、適切な担体中又は組成物を希釈した形態で、材料が低濃度の状態で行うことができる。例えば試験サンプルは、2重量%以下、1重量%以下又は0.1重量%以下の固体材料又は組成物成分を含んでよい。
【0353】
本例において、前述の分散液の表面ゼータ電位値は、0.5重量%の固体材料を含み、pHが10である希釈サンプルで測定した。測定は、折りたたみキャピラリーセル(folded capillary cell)DTS1070を備えたZetasizer Nano Z(Malvern instruments製)を使用して行った。表5からわかるように、包埋された顔料に関係なく、すべての分散液は負に帯電していた。いくつかの実施形態によれば、中和された酸部分を有し、顔料を包埋しているポリマー材料(polyn1eric material)の分散液は帯電し、負の表面ゼータ電位を有しており、その負の値は-5mV以下、-10mV以下、-20mV以下、-40mV以下、-60mV以下であり;その負の値は最大-100mV、最大-80mV又は最大-70mVである。いくつかの実施形態において、前記分散液は、-100mV~-10mV、-80mV~-10mV、-70mV~-10mV、-70mV~-20mV又は-70mV~-40mVの範囲内の負の表面ゼータ電位を有する。
【0354】
<例10:皮膚の染色>
従来の毛髪の着色は一般に無秩序(messy)と考えられており、着色剤はしばしばその調製又は塗布する周囲の領域を非選択的に染色する。それらは、例えば皮膚(顔面及び頭皮を含む)、容器及び他のそのような表面を、時には不可逆的な様式で望ましくない染色をし得る。本例の目的は、本明細書に開示される方法及び組成物を使用する着色が毛髪繊維に選択的であり得ることを示すことである。
【0355】
本教示による着色組成物を、ブタの皮膚の腹側及び背側領域に塗布した。2つのシリーズの実験を行った。最初のシリーズでは、表面を縮合硬化性アミノシリコーンエマルション(すなわちASE3)及び中和された酸ポリマーの着色分散液で順次コートした(コーティングプロセスは本質的に毛髪繊維について説明したとおりである)。実験の2番目のシリーズでは、着色分散液をターゲット表面に直接塗布した。最後の塗布後、過剰な組成物を除去し、表面を水道水ですすいだ。すべての皮膚表面は本組成物によって染色されたが、従来の着色方法とは対照的に、この染色は水による単純な洗浄によって容易に元に戻った(reversed)。着色剤のより大きな粒子を含む分散液を用いて達成される着色は、より小さな粒子を含む分散液によって得られる着色よりも除去が容易であることが一般的に観察された。
【0356】
着色分散液がより詳細に記載されている表5を参照すると、ブタの皮膚に直接又はアミノシリコーンの最初のコートを介して塗布したHeliogen(登録商標)グリーン K 8730(369nmのDv50を有する)の分散液は、アシッドグリーン25(26nmのDv50を有する)の分散液よりも簡単に洗浄できた。カーボンブラックMonarch(登録商標)580(269nm(run)のDv50を有する)、ヴィナモン(Vynamon)レッド312201(201nmのDv50を有する)、ピグメントブルー60(669nmのDv50を有する)又はホスタパームオレンジ43(699nmnDv50を有する)を含む分散液は、ブタの皮膚に塗布した場合、同様に非染色であることがわかった。これらの比較的大きな顔料によって生成される皮膚の染色は、アシッドグリーン25(26nmのDv50を有する)、ユニピュア(Unipure)レッドLC 3079(22nmのDv50を有する)、ジアセタニルイエロー HTT 8318C(90nmのDv50を有する)又はディスパースバイオレット1(34nmのDv50を有する)の分散液で生成される一時的な染色よりも洗い流しがより簡単であった。
【0357】
これらの結果は、本発明の着色組成物の毛髪繊維に対する選択性及びそれらを望ましくない領域から取り除くことが比較的容易であることを支持する。
【0358】
<例U(Example U):無水反応物から調製された反応性アミノシリコーンエマルション>
反応性アミノシリコーンプレポリマーのエマルションの油相の調製に役立つ反応物中の制御された(coniro11ed)水の量の、毛髪繊維の着色及び永続性(pem1anency)への効果は、例7及び8に示されている。本例では、すべての反応物を無水状態で使用した比較エマルションを調製した。例1に記載されるように、水の存在を最小限の含水量に減らすために、すべての反応物をオーブンで又はモレキュラーシーブを使用して乾燥した。エマルションの油相の調製中、反応物に水を加えなかった。
【0359】
〔無水比較前処理組成物1(AnPTCJ)〕
20mlの密封可能なガラスバイアルに、以下を入れた:
0.23g(最終混合物の2.23重量%)の乾燥Aerosil(登録商標)R 8200;
0.27g(最終混合物の2.62重量%)の乾燥GP-145;
1.80g(最終混合物の17.4重量%)の乾燥KF-857;及び
8.0g(最終混合物の77.67重量%)乾燥Dynasylan(登録商標)SIVO 210。
AnPTC1はPTC18と比較でき、疎水性ヒュームドシリカの水量のみが異なる(無水バージョンでは0.4重量%であり、加湿バージョンでは0.8重量%)。
【0360】
〔無水比較前処理組成物2(AnPTC2)〕
20mlの密封可能なガラスバイアルに、以下を入れた:
2.00g(最終混合物の20重量%)の乾燥GP-967;
0.67g(最終混合物の6.66重量%)の乾燥GP-965;及び
7.33g(最終混合物の73.33重量%)の乾燥Dynasylan(登録商標)SNO 210。
AnPTC2はPTC9-13と比較でき、GP-967に添加される水の量のみが異なり、PTC14-17とは、GP-965に添加される水の量のみが異なる。
【0361】
エマルションは例2(Exan1ple 2)に従って即座に調製され、油プレミックスのインキュベーション時間はt0と同等であった。着色は例4に記載されているように行った。両方の無水比較エマルションを使用して着色が得られ、ODは1.0を十分に上回っていた(コートされていない毛髪の参照ODの約3倍)。しかしながら、0、2又は4時間のインキュベートにもかかわらず、制御した量で水を補充した関連する反応物を含むサンプルよりも色が鮮やかではなく、ODはやや低かった(すべて通常1.2を超える)。
【0362】
無水反応物の使用の最も厳しい効果は、感触及び着色の永続性に関連していた。無水反応物から即座に調製されたエマルションは、例6に記載された25回のシャンプーサイクルによって評価される場合、初期のべたつき感及び耐洗浄性の欠如を示した。AnPTC1を使用して即座に調製されたエマルションによって着色した毛髪のODwash/ODbaseの比は約50%であり、AnPTC2を使用して即座に調製されたエマルションによって着色した毛髪では約44%であった。永続性の欠如(Jack)という文脈において、反応物に添加され得た少量を超える過剰適用した水にも関わらず、毛髪への塗布中(すなわちエマルションの水相から)の水の存在は反応物の無水状態を相殺するには不十分であったことに注目できる。
【0363】
これらの望ましくない現象は、前処理時間及び/又は毛髪繊維上の硬化時間の延長に伴って消滅すると予想されるため、これらの結果は無水反応物を禁止すべきであることを意味しないことに注意されたい。十分な時間を条件として、乾燥した反応物又はそれから形成されるアミノシリコーンフィルムからなる油相は、周囲の水分と平衡化し、縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの加水分解速度を誘発又は改善する少量の水分を獲得できると考えられている。
【0364】
<例12:pHを調整した水による反応物の調製>
反応性アミノシリコーンプレポリマーのエマルションの油相の調製に役立つ反応物への制御された水の添加の効果は、例7及び8に示されており、例11の結果は無水反応物に対する参照をさらに設定している。本例において、いくつかの反応物を、pHを調整した水で加湿して比較エマルションを調製した。実施例L(Example L)に記載されているように、すべての反応物をオーブン又はモレキュラーシーブを使用して乾燥させた。しかし、6.5~7.5の中性に近いpHを有する蒸留水を加える代わりに、酸性であるpH1の水を既知の量で加えた。酸性化水溶液は、等量の蒸留水及び99.85%の純粋な氷酢酸(Sigma-Aldrich、CAS No. 64-19-7)を混合することによって調製した。簡略化のため、得られた溶液を「酸性水」と呼ぶ。
【0365】
(a)反応性KF-857及び0.5重量%の酸性水を添加したもの、又は(b)反応性Dynasylan(登録商標)SIVO 210及び2.0重量%の酸性水を添加したものを含むプレミックスを、例1に記載したように実質的に調製した。疎水性ヒュームドシリカを、そこに記載されているように中性水で加湿した(最終0.8重量%)。
【0366】
〔組成物19の前処理(PTCJ9)〕
20mlの密封可能なガラスバイアルに、以下を入れた:
0.23g(最終混合物の2.23重量%)の、0.8重量%の中性水で加湿した疎水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標) R 8200);
0.27g(最終混合物の2.62重量%)の乾燥GP-145;
l.80g(最終混合物の17.4重量%)の、0.5重量%の酸性水を含むKF-857反応性アミノシリコーンプレミックス;及び
8.00g(最終混合物の77.67重量%)の乾燥Dynasylan(登録商標) SIVO 210。
【0367】
〔組成物20の前処理(PTC20)〕
20mlの密封可能なガラスバイアルに、以下を入れた:
2.00g(最終混合物の20重量%)の乾燥GP-967;
0.67g(最終混合物の6.66重量%)の乾燥GP-965;及び
7.33g(最終混合物の77.33重量%)の、2重量%の酸性水を含む反応性Dynasylan(登録商標)SIVO 210プレミックス。
【0368】
前述の前処理混合物は、透明で均一な油相を形成した(濁りがなく、微量の水が別個の水相に分離されなかった)。PTC19及びPTC20の油相サンプルを3つのサンプルに分け、上記のようにそれぞれを乳化前に0時間、0.5時間又は1時間インキュベートした。各前処理期間の後、0.2gの各混合物と、乳化剤として0.1%Tween(登録商標)80を含む60mlの水溶液(PTC19由来の混合物の場合)、又は100mlのプラスチック容器に含まれる60mlの普通の水(PTC20由来の混合物の場合)に加えた。油相と水相の得られた組み合わせを、例2で詳述する、プラネタリー遠心ミキサーを使用して2,000rpmで30秒間混合及び乳化した。そのようにして調製したアミノシリコーンエマルションのpHを測定し、約10であることが判明した。エマルションの固形分の、寄与はするがわずかな量である反応物に対する微量の酸性水は無視できる。
【0369】
毛髪サンプルを例4に従って着色し、それらの感触(foe1)、着色及び耐洗浄性を例5~7に記載のように研究した。それに応じて、第1のコートとしてASEl9t0ASE20t1エマルションで着色したすべての毛髪サンプルが、強い着色(少なくとも1.2のOD)及び例3に記載されているように調製したChromophtal(登録商標)バイオレットK5800を含む着色ポリマー分散液の塗布後に、心地よい非粘着性の感触を示した。
【0370】
さらに興味深いことに、酸性水で加湿された反応物で調製した反応性アミノシリコーンエマルションは、無水反応物又は中性水を補充した反応物で調製したエマルションと比較して、前処理の早い時点で着色の永続性(耐洗浄性によって評価される)を示した。第2のコートを塗布してから約24時間後に着色の永続性を評価した。PTC19(0.5重量%の酸性水を含むKF-857を含む)を即座に乳化させてASE19t0を形成するとき、それで着色した毛髪は耐洗浄性ではなかった(ODwash/ODbast、-60%)。この現象は、すでに議論したASEの以前の例ですでに報告されており、耐洗浄性は通常、少なくとも2時間のより長い前処理期間とともに永続性を発揮する。添加する水が中性であることを除いて、PTC19に対応するPTC3は、4時間前処理したときに永続的な着色を支持した。しかしながら、PTC19をわずか30分の前処理後に乳化した場合、ASE19w.sの耐洗浄性が劇的に増加し、ODwash/ODbase比は着色の永続性を定義する80%OD保持のしきい値をはるかに超える約91%であった。反応物に酸性水が存在することに起因するこの永続性への影響は、ASE19t1を第1のコートとして着色した毛髪サンプルでさらに確認され、エマルションの油相を1時間インキュベートすると、ODwash/ODoase比は約96%という結果をもたらした。PTC20(2.0重量%の酸性水を含むDynasylan(登録商標)SIVO 210を含む)及び派生エマルションASE20t0~ASE20t1で得られた結果は、さらに劇的であった。PTC20を直接乳化してASE20t0を形成すると、それで着色した毛髪はすぐに耐洗浄性を有しており、ODwash/ODbase比は0~99%であった。油相の前処理が最大1時間(ASE20t1)のエマルションで着色した毛髪は、ODwash/ODoase比が約93 1%の永続性を示し続けた。これらの結果をPTC21(添加された水が中性である点を除いてPTC20に対応する)と比較すると、ASE21は24時間前処理した際に永続的な着色を支持したため、酸性水の利点をさらに強調する。
【0371】
これらの結果は、反応性アミノシリコーンエマルションの反応物に中性水を添加すると、本教示に従って着色された毛髪の望ましい挙動/結果を大幅に促進できる一方で、添加した水のpHを調整することでこれをさらに劇的に改善できることを示す。本研究において、酸性水を追加することで前処理時間を、中性水の添加により達成できる時間の10分の1以下に短縮した。参考までに、乾燥した反応物(例えばAnPTC1及びAnPTC2)で形成されたコントロール組成物に水を追加すると、永続性が現れるまでの時間が、未処理のエマルションの元の待ち時間の5分1未満に短縮された。
【0372】
<例13:アルコールに対する耐性>
以前の例の上述のサンプルで観察された永続性は、シャンプー耐性を示し、シャンプー耐性のある着色は、強力な洗浄剤を含まない普通の水に対して耐洗浄性があると見なされる。アルコール(特に揮発性アルコール)は多くのヘアケア製品において見出すことができるため、アルコール耐性を評価した。
【0373】
毛髪サンプルは、4時間インキュベートしたPTC3から調製したエマルションで第1のコートをした(例12によれば、PTC19で置き換えることができ、前処理時間を0.5時間以内に短縮できる)。次に、ピグメントバイオレット23をEAAコポリマー(Primacor(登録商標)5990I:Luwax(登録商標)EAS- 5を1:1)に包埋した中和ポリマー粒子の分散液を第2のコートとして塗布し、着色した毛髪サンプルを、アルコール(未希釈又は蒸留水で希釈)耐性を評価するテストに供した。テストは、第2のコートの塗布後約24時間後に行った。
【0374】
3種類のアルコールがテストされ、すべて無水物であり99.9%の純粋なものであった(イスラエルのBio Labから供給された):メタノール(CH3OH);エタノール(C2H6O);及びイソプロパノール(C3HsO)。それぞれは、希釈せずに(アルコールが溶液の100重量%を形成)又は蒸留水で希釈して10重量%もしくは50重量%のアルコールを含む水溶液を形成するようにして、テストした。各アルコールサンプルについて、従来のヘア製品をスプレーすることによって塗布され得る量を模倣するために、数滴の溶液(~0.2ml)を着色毛髪のひと房に滴下した。次に、毛髪のサンプルを指で軽くこすって、さまざまなアルコール溶液で適切に覆われるようにした。次に、均一に湿潤した毛髪サンプルを一枚の白いティッシュ(Kimwipes(登録商標)disposable wipers、Kimberly Clark、米国)で軽くたたいた。こする工程中に指に着色毛髪サンプルから色が移動する及び/又はたたく工程中にティッシュに着色毛髪サンプルから色が移動する場合、着色は特定のアルコール溶液に敏感であると考えられた。逆に、指及び白いティッシュに色が移らない/色が見えない場合、その着色は研究対象のアルコール溶液に耐性があると見なされ、耐アルコール性である。本教示に従って着色した上記の毛髪サンプル[例えば第1のコートとして縮合硬化性アミノシリコーンエマルション(現在はASE3t4)]は、50重量%までのメタノール、エタノール及びイソプロパノールを含む水溶液に対して耐性を示した。C1からC3アルコールの3つの間(amongst the three t}1Jes C1 to C3 alcohols)で検出可能な差異はなかった。したがって、本組成物は、耐洗浄性及び耐シャンプー性を示すだけでなく、重要なアルコール耐性も示す。
【0375】
本開示に従って着色された毛髪は、縮合硬化が十分に進行したか、又は実質的に完了した場合、色が移動しない。これは、着色されたサンプルの影響を受けない着色(OD)によって定量的に確認できる。言い換えれば、溶液の重量あたり最大50重量%のアルコール、又はアルコール溶液の総重量あたり最大で40重量%のアルコール、又は最大30重量%のアルコール、又は最大20重量%のアルコール、又は最大10重量%のアルコールを含む水性アルコール溶液に曝露した場合、光学密度(例えばODalcohol/ODbase 2 :: 0.8xODbase)はまったく減少しないか、又はわずかに減少するのみである。このような色移り及び/又は光学濃度の低下を引き起こし得る、ヘアケア製品で一般的に使用されるアルコールには、分子内に最大12個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコールが含まれ、最大6個の炭素原子を有するアルコールは、より長鎖の分子よりも揮発性が高いと見なされ、ヘア固定剤などのヘアケア製品でより頻繁に使われる傾向にある。
【0376】
同様の試験を、アルコールを含有する製品への着色毛髪の暴露のより一般的な状況を表すと考えられる、市販のヘアケア製品を用いて行った。最初のコートとして、24時間インキュベートしたPTC16の偏光バージョン(GP-965に加えられた2重量%の水を含む)から調製されたエマルション(例12に従い、これは前処理期間なしで即時乳化を可能とする、PTC20で置き換えることができる)及び第2のコートとしてピグメントバイオレット23を包埋する中和されたポリマー粒子の分散液で着色された毛髪サンプルは前述のように準備した。第2のコートの塗布から約24時間後に試験を行った。着色毛髪サンプルは、両方ともSchwarzkopfによる、2つの市販されているヘアケア製品のうちの1つをスプレーするか、それでマッサージした。前記第1の製品はヘア固定剤(hair fixative)(Oasis + Freeze Pump Spray)であり、前記第2の製品は仕上げトリートメント(finishing treatment)(Professional BC Bonacure Oi Miracle Hair Therapy)であった。固定剤は、仕上げローションと比較して、揮発性アルコール含量が多いと考えられる。
【0377】
エアロゾル又はローションを塗布した後、毛髪サンプルをマッサージして、異なるアルコール含量を含むヘアケア製品で適切にカバーされるようにした。第1のコートとしてASE16.5t4で着色した毛髪サンプルは、両方のヘアケア製品に耐性があり、指又は白いティッシュへの色移りや、視覚的に検出可能な繊維の退色は見られなかった。
【0378】
前述のすべての結果を踏まえると、(a)反応物あたりに添加される水の量、
(b)添加される水のpH、(c)そのような水(又はpHを変更した水溶液)の添加で補われる反応物の数、同様に影響を与える(d)反応性油相あたりに添加される水の量及び(e)反応性油相の前処理の期間の少なくとも1つを適切に選択することにより、望ましい毛髪の着色の結果を調整することができると結論付けられる。前記結果は、非限定的な例として、着色された毛髪の感触、着色特性(例えば、強度、明るさ、鮮やかさなど)、又は特定の因子(例えば着色の永続性の程度を決める耐洗浄性、耐アルコール性など)に対する着色の耐性に関連し得る。
【0379】
所望の結果はさらに、所望の特性の開始(例えば即時の着色)、満足度の低い又は望ましくない特性の停止(例えば粘着感の即時の停止)、又は反応性油相の前処理が所望の特性を可能とする時間枠(例えば、迅速に達成可能で、時間変動への感受性がより低い着色システムを与える十分に長時間続く着色の永続性)に関係し得る。時間の変動は、例えば、調製、乳化、毛髪への塗布に必要な時間及び人による制御下での着色方法におけるそのようなステップなど、実施者に起因し得る。時間の変動は、着色方法を実施する対象者から生じることもあり得、より多い/より長い毛髪を有する人は、より少ない/より短い毛髪を有する人よりも組成物の塗布のためにより長い時間を必要とし得る。当然のことながら、組成物は安定しており、少なくとも塗布の開始から終了までの全期間を通じて均一な望ましい結果を示す必要がある。
【0380】
<例14:毛髪の外観>
本教示に従ってコートされた毛髪は、一般的に触り心地が柔らかく、光沢のある健康的な外観を示し、訓練を受けた観察者によって評価されたように、場合によってはボリュームの改善も見られた。ボリュームの改善はコートされていない参照に対して評価され、毛髪上に形成された薄いアミノシリコーンフィルムの結果として、毛髪の直径が穏やかに増加したからだと考えられている。約0.3~1.0~tm(0.3-1.0 ~tm)の厚さを有するフィルムは、繊維の直径を約0.6~2.0μm増加させる。約50~100μmの直径を有する毛髪繊維を想定すると、そのようなコートにより、直径が約0.5~5%増加する。満足のいく、又はさらに改善された外観に加えて、本開示に従ってコーティングされた毛髪サンプルは櫛でとかすことが可能であり(コーティング/着色が滑らかな個々の繊維をもたらす)、この点でコーティングされていない対照と比較できる様式の挙動を示すことがわかった。従来の着色方法は一般に毛髪の自然な輝きを減少させる傾向がある、及び/又は毛髪繊維を弱める可能性があるため、そのような発見(着色顔料を含まない対照組成物で発見されたとしても)は注目に値する。そのような現象を定量化するために、本教示に従ってコーティング/着色された毛髪サンプルは、以下の評価を受け得る。
【0381】
コーティングされた毛髪サンプルをシリンダーに取り付け、毛髪繊維を揃えるためにとかす。輝きは、Samba hair system(Bossa Nova Technologies、米国)を使用してモニターすることができ、測定はサンプルが配置されたシリンダーマウントにおける鏡面反射光と拡散光とを識別するために、偏光入射光を使用して収集される。輝きパラメータは、入射光と同じ偏光を伝える第一の反射である。同じ毛髪タイプのコートされていないコントロールを含む各毛髪サンプルについて、房の少なくとも3つの異なる領域で光沢測定が行われ、平均化される。結果は輝きの任意単位(AU)で示される。参考のために、1AU以下の変化は一般に肉眼では検出できないが、2AU以下の変化はほとんどの色で容認できると見なされる。有利には、本教示に従ってコートされた毛髪繊維の光沢は、コーティングが繊維から除去されない限り、安定となる。利用可能な定性的な結果は、本着色方法は毛髪繊維を傷つけず、ボリュームを改善することさえし得ることを示唆している。
【0382】
<例15:毛髪の頑健性>
従来の着色方法は、特に永続的な効果が求められる場合、一般に毛髪繊維に損傷を与え、毛髪を弱めて機械的弾性を低下させる可能性があるが、本教示に従ってコートされた毛髪サンプルは、コートされていない対応物と少なくとも同じくらい耐性があると考えられる。毛髪の頑健性は次のように評価できる。
【0383】
コートされたサンプル、及びコートされていないコントロールのそれぞれについて、破断点で加えられる力を評価するために、Ametek Lloyd InstrumentsのLR X Plus test machineで、個々の毛髪繊維を1mm/分の荷重速度で20ニュートンの力を加えてテストする。テストされた各繊維の直径は、ハンドヘルドマイクロメーターを使用して測定する。破断点での力(N単位)は直径(mm単位)に正規化(normalized)され、6本の繊維の結果を平均化する。次に、本教示に従ってコートされた毛髪繊維の破断点での正規化された力を、天然のコートされていない毛髪繊維の同じ力と比較する。コートされたサンプルとコートされていないコントロールの両方の張力と破断点での力に対する耐性が関係している限り、同様の挙動は、本組成物と方法が毛髪の機械的特性を損なわないことを示唆し、損傷は従来の染色方法で着色した場合によく見られる。
【0384】
本開示の明細書及び特許請求の範囲では、「含む(comprise)」、「含む(include)」及び「有する(have)」という動詞のそれぞれ、ならびにそれらの活用形は、動詞の1つ又は複数の目的語が、動詞の1つ又は複数の主語のメンバー、成分、構成要素ステップ又は部分の完全なリストでは必ずしもないことを示すために使用される。
【0385】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の参照を含み、文脈が明確にそうでないと指示しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。特に明記しない限り、選択オプションのリストの最後の2つの要素間の「及び/又は」という表現の使用は、リストされたオプションの1つ又は複数の選択が適切であり、選択でき得ることを示す。
【0386】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、用語「大部分を含む」は、調製物の範囲内の成分に関して、その成分の少なくとも30%の重量含有量を指す。「大部分を酸性化する」という用語は、中和可能な酸部分の少なくとも50%が、元の形または以前に中和された部分の酸共役型であることを意味する。
【0387】
本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるように、調製物の範囲内の成分に関して「大部分を含む」又は「主に含む」という用語は、その成分の少なくとも50%の重量含有量を指す。「主に酸性化する」という用語('111e term)は、中和可能な酸部分の少なくとも75%が、元の形または以前に中和された部分の酸共役型であることを意味する。
【0388】
議論において、特に明記しない限り、本技術の実施形態の1つ又は複数の特徴の条件又は関係特性(relationship characteristics)を修飾する「実質的に」及び「約」などの形容詞は、条件又は特徴が意図する適用のための実施形態の実行に容認される許容範囲内、又は実施する測定及び/又は使用する測定機器から予想される変動内に定義されることを意味すると理解される(w1derstood)。
【0389】
さらに、特に明記しない限り、本開示で使用される用語は、関連用語の正確な意味から逸脱し得る誤差を有していると解釈されるべきであるが、本開示又はその関連部分が上述の通り、及び当業者によって理解されるように動作及び機能することを可能にするであろう。
【0390】
「約」という用語が数値の前にある場合、それは+/-10%、又は+/-5%、又は+/-1%を示すことを意図しており、すべての場合において、正確な値を含むことを意味する。
【0391】
この開示は、特定の実施形態及び一般に関連する方法に関して説明してきたが、実施形態及び方法の変更及び置換は、当業者にとって明らかであろう。本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態によって限定されないものとして理解されるべきである。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1] 哺乳類の毛髪をコーティングする方法であって、前記方法は以下の工程:
(a)少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーを含む油相を提供する工程であって、前記油相は以下の少なくとも1つを満たす工程:
(i)前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、最大1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む;
(ii)前記油相は、前記プレポリマーを硬化するように適合された又は選択された非アミノ架橋剤をさらに含み、前記非アミノ架橋剤は、最大1,000g/モルの範囲の分子量を有する;
(iii)前記(i)及び/又は(ii)による前記油相は、シリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤又は反応性疎水性無機充填剤の少なくとも1つを含み;前記油相は、前記油相の重量あたり少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%又は少なくとも1重量%の水を含む;
(b)前処理した油相を得るために前記油相を前処理期間に供した後、前処理した水中油型エマルションを得るために、前記前処理した油相を、水を含む水相で乳化する工程;
(c)哺乳類の毛髪の個々の毛髪の外側表面に、前記前処理した水中油型エマルションを塗布する工程;
(d)個々の毛髪の外側表面上に少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを形成するために、前記前処理した水中油型エマルションの前記プレポリマーの部分縮合硬化が起こった後に、場合によりリンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記前処理した水中油型エマルションを除去する工程;
(f)場合により、前記アミノシリコーンコートの外側表面に付着する積層ポリマー層を作製するために、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料から形成される複数のポリマー粒子を含む水性分散液を塗布する工程(ここで、前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている)、及び場合により、リンス液で毛髪を洗浄して、過剰の前記水性分散液を除去する工程
を含む、方法。
[2] 哺乳類の毛髪をコーティングする方法であって、前記方法は以下の工程:
(a)縮合硬化に続いて、硬化アミノシリコーンコートを形成する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーを含む油相を提供する工程であって、前記油相は以下の少なくとも1つを満たす工程:
(i)前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、最大1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマーを含む;
(ii)前記油相は、前記プレポリマーを硬化するように適合された又は選択された非アミノ架橋剤をさらに含み、前記非アミノ架橋剤は、最大1,000g/モルの範囲の分子量を有する:及び
(iii)前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマー、前記非アミノ架橋剤の少なくとも1つ又はシリコーン油、アミノシリコーン油、顔料分散剤又は反応性疎水性無機充填剤の任意の1つが場合によりさらに含まれる、前記(i)及び/又は(ii)による前記油相)は、水に富む反応物である;及び
(b)前記前処理した油相の重量あたり少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%又は少なくとも1重量%の水を有する前処理した油相を得るために、前処理期間にわたって前記油相を前処理する工程;
(c)前処理した水中油型エマルションを得るために、前記前処理した油相を、水を含む水相で乳化する工程;
(d)哺乳類の毛髪の個々の毛髪の外側表面に、前記前処理した水中油型エマルションを塗布する工程;
(e)個々の毛髪の外側表面に少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを形成するために、前記前処理した水中油型エマルションの前記プレポリマーの部分縮合硬化が起こった後に、リンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記前処理した水中油型エマルションを除去する工程;
(f)場合により、前記アミノシリコーンコートの外側表面に付着する積層ポリマー層を作製するために、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に、中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料から形成される複数のポリマー粒子を含む水性分散液を塗布する工程(ここで、前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている)、場合により、リンス液で毛髪を洗浄して、過剰量の前記水性分散液を除去する工程
を含む、方法。
[3] 前記油相又は前処理した油相中の油と水相の体積比は、少なくとも9:1、少なくとも9.5:0.5又は少なくとも9.75:0.25であり、前記油相又は前処理した油相は場合により水相を含まない、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記水に富む反応物が存在し、前記反応物はインキュベーション後に前処理した反応物を生成するために、前記前処理期間にわたって水性の前処理溶液とともにインキュベートされる、[2]又は[3]に記載の方法。
[5] 前記前処理した反応物が、前記前処理期間にわたって、水性の前処理溶液とともにインキュベートされた反応物である、[4]に記載の方法。
[6] インキュベートされる前記反応物は、反応物の重量あたり1重量%未満の水、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の水を含む、実質的に乾燥した反応物である、[4]又は[5]に記載の方法。
[7] 前記水性前処理溶液は、前記反応物又は実質的に乾燥した反応物の重量の、10重量%以下、5重量%以下又は1重量%以下の量で前記前処理した反応物に添加され、前記水性前処理溶液は、前記反応物又は実質的に乾燥した反応物の重量の、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%又は少なくとも0.3重量%の量で、前記前処理した反応物に添加される、[4]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記前処理した油相を前記前処理期間にわたって水性の前処理溶液とインキュベートし、前記水性前処理溶液は油相の重量の、2.5重量%以下、1.0重量%以下又は0.5重量%以下の量で前記前処理した油相に添加され、前記水性前処理溶液は油相の重量の、0.01重量%以上、0.05重量%以上又は0.1重量%以上の量で前記前処理した油相に添加される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記水性前処理溶液は、0.5~2.5、0.5~2.0、0.7~1.4又は0.9~1.2の範囲のpHを有し;前記水性前処理溶液はさらに酸を含み、前記酸は場合により揮発性酸であり;前記酸は、前記水性前処理溶液の重量の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%又は少なくとも80重量%を構成し;前記酸は、場合により水性前処理溶液中に99重量%未満で存在する、[4]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記前処理期間は、24時間以下、4時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下又は5分以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記前処理は、15℃~60℃、20℃~30℃又は20℃~25℃の範囲の温度で実行される、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記少なくとも1つの前処理した反応物が、反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、アミノ及び非アミノシリコーン油、前記反応性アミノシリコーンプレポリマーを硬化させるために適合された又は選択されたアミノ及び非アミノ架橋剤、反応性充填剤及び顔料分散剤の群から選択される乾燥反応物から調製される、[4]~[7]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの第1のアミノシリコーンプレポリマーは、3次元ネットワークを形成するために、少なくとも3個のシラノール及び/又は加水分解性基を有し(3+SiOH)、前記油相又は前記前処理した油相内の前記3+SiOH第1アミノシリコーンプレポリマーの第1の濃度は、前記油相又は前記前処理した油相の重量の、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%であり、前記第1の濃度は、前記油相又は前記前処理した油相の重量の、最大95%、最大90%、最大85%、最大80%、最大75%又は最大70%である、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 前記油相又は前記前処理した油相は、アミノシリコーン油、非アミノシリコーン油又は1分子あたり2個以下のシラノール及び/又は加水分解性基を有する(2-SiOH)反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの少なくとも1つを含み、前記反応物は前記油相又は前記前処理した油相の重量の、1%~65%、3%~40%又は5%~30%の範囲内の合計濃度であり;場合により、前記油相又は前記前処理した油相は23℃で測定して、2,000mPa・s以下、500mPa・s以下又は100mPa・s以下の粘度を有することを条件とする、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 1つのシラノール又は加水分解性基を有する(1-SiOH)末端縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーの前記油相又は前記前処理した油相中の濃度は、前記油相又は前処理した油相の重量の、最大5%、最大2%、最大1%であるか、又は前記油相は、前記末端プレポリマーを含まない、[1]~[14]のいずれかに記載の方法
[16] 前記油相又は前記前処理した油相中の非アミノ架橋剤の濃度は、最大35重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%又は最大5重量%であり、前記水中油型エマルションの表面ゼータ電位はゼロより大きい、又は少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV又は少なくとも+10mVであることを条件とする、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17] 前記油相又は前記前処理した油相中の有機溶媒の、重量に基づく総濃度は、前記油相又は前記前処理した油相の重量の、最大10重量%、最大5重量%、最大2重量%又は最大1重量%であり、又は前記油相もしくは前記前処理した油相は有機溶媒を含まない、[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18] 前記水相中の水混和性共溶媒の、重量に基づく総濃度は、最大10重量%、最大5重量%、最大2重量%又は最大1重量%であり、又は前記水相は前記共溶媒を含まない、[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19] 前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、固体の疎水性反応性無機充填剤をさらに含み、前記充填剤は前記油相又は前記前処理した油相中に配置されるか又は分散されており、前記充填剤は前記縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの硬化を促進するように選択されるか又は適合されており、前記充填剤は場合により前処理した反応物であり、前記固体の疎水性反応性無機充填剤は、5~500nm、5~250nm、20~200nm、40~300nm、60~300nm、60~250nm又は60~200nmの範囲内の平均粒子径(Dv50)を有する疎水性ヒュームドシリカを含むか、主に含むか又はそれらからなり;前記油相中又は前記前処理した油相中に配置されるか又は分散された前記固体の疎水性反応性無機充填剤の濃度は、油相の重量の0.2重量%~12重量%、0.2重量%~10重量%、0.2重量%~8重量%、0.4重量%~10重量%、0.4重量%~8重量%、0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、0.8重量%~8重量%又は0.8重量%~6重量%の範囲内であり;前記反応性充填剤は場合により、エマルションの重量の0.005重量%~0.5重量%、0.005重量%~0.3重量%の範囲内で前記水中油型エマルション又は前記前処理した水中油型エマルション内に存在する、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20] 前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、ゼロより大きい、少なくとも+1mV、少なくとも+2mV、少なくとも+3mV、少なくとも+5mV、少なくとも+7mV、少なくとも+10mV、少なくとも+15mV、少なくとも+20mV、少なくとも+30mV、少なくとも+40mV又は少なくとも+60mVの表面ゼータ電位を有し;場合により最大+100mV又は最大80mVであって、前記表面ゼータ電位は、前記水中油型エマルションの本来のpHで測定される、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21] 前記水性分散液のpHにおいて、前記水中油型エマルション又は前処理した水中油型エマルションは、第1の表面ゼータ電位(ζ1)を有し、前記水性分散液は、第2のゼータ電位(ζ2)を有し、前記pHでのゼータ差(Δζ)は、Δζ=ζ1-ζ2で定義され、ミリボルト(mV)でのΔζは、以下:
(i)Δζは少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40又は少なくとも50;
(ii)Δζは10~80、10~70、10~60、15~80、15~70、15~60、20~80、20~70、20~60、25~80、25~70、25~60、30~80、30~70、30~60、35~80、35~70又は35~60の範囲内である;
(iii)前記pHは4~11、4~10.5、4~10、6~11、6~10.5、6~10、7~11、7~10.5又は7~10の範囲内であり、前記第1の表面ゼータ電位(ζ1)はゼロより大きい(ζl>0)
の少なくとも1つを満たす、[1]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22] 前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは、23℃で1重量%未満、0.5重量%未満又は0.1重量%未満の水への溶解度を有する反応性アミノシリコーンモノマーを含む、[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23] 前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートは、個々の毛髪の外側表面上で自己終端(self-terminated)している、[1]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、酸部分が前記親水性ポリマー材料の重量の、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも21重量%又は少なくとも22重量%を構成し;場合により、前記親水性ポリマー材料の重量の、最大30重量%、最大28重量%、最大26重量%又は最大23重量%である、[1]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記水性分散液は揮発性塩基を含み、前記揮発性塩基は場合により、アンモニア(NH3)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はモルホリンの群から選択され、前記方法は、前記中和された酸部分を酸性化するために、大いにもしくは主に酸性化するために又は完全に酸性化するために、前記積層する着色ポリマー層に関連する揮発性塩基を揮発させる工程をさらに含む、[1]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記方法は、少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に水性分散液を塗布した後に疎水性ポリマー材料を得るために、前記親水性ポリマー材料をその共役酸に十分に変換させる工程をさらに含む、[1]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記中和された酸部分を有する前記ポリマー材料は、中和されたアルケン-アクリル酸コポリマー、中和されたアルケン-メタクリル酸コポリマー及び中和されたアクリルアミド/アクリレートコポリマーの群から選択される1つ又は複数の中和されたコポリマーを含むか、主に含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる、[1]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、7.5~11の範囲内のpHで、前記親水性ポリマー材料は、分散剤及び他のすべての添加剤が水中にない場合に、水中で自己分散可能である、[1]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29] 複数のポリマー粒子を含む前記水性分散液は、前記少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコート上に塗布され、前記親水性ポリマー材料は、pH10のとき少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%の溶解度を有し、又は前記溶解度は、2~30重量%、5~30重量%、10~30重量%又は15~30重量%の範囲内である、[1]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30] 前記部分的縮合硬化は、最高38℃、最高36℃、最高34℃又は最高32℃の温度及び場合により少なくとも15℃で起こる、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31] 前記洗浄は、前記前処理した水中油型エマルションの前記塗布が完了した後30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、3分以内、2分以内又は1分以内に行われ、前記リンス液は、(i)水、又は(ii)カチオン性界面活性剤を含むカチオン性リンス液、又は(iii)非カチオン性界面活性剤、それぞれ少なくとも部分的に硬化したアミノシリコーンコートを脱脂及び膨潤させることができる脱脂剤及び/又は膨潤剤を含まないリンス液、である[1]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32] 前記洗浄が行われ、前記洗浄に続いて、湿気又は周囲水分のみによってか、又は実質的に湿気又は周囲水分のみによって、さらに硬化蒸発する、[1]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33] 前記油相又は前記前処理した油相内の反応性縮合硬化性アミノシリコーン成分の総濃度は、顔料が無い場合に基づき、少なくとも45重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%又は少なくとも65質量%であり、場合により50~100重量%、50~95重量%、50~90重量%、50~85重量%、50~80重量%、55~95重量%、55~85重量%、60~95重量%、60~85重量%、65~95重量%、65~90重量%又は70~95質量%の範囲内である、[1]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34] 前記縮合硬化性アミノシリコーンプレポリマーは、アルコキシ-シラン反応性基、シラノール反応性基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応性基を含む、[1]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35] 前記油相又は前記前処理した油相は、すべての無機含有物及び顔料を除いて、ガラス転移温度を有さず、前記油相又は前記前処理した油相の、23℃で適切なレオメーターで測定した粘度は、2~1,000ミリパスカル秒(mPa・s)、2~500mPa・s、2~300mPa・s、2~200mPa・s、5~1,000mPa・s、5~500mPa・s、5~300mPa・s、7~500mPa・s、7~300mPa・s又は7~200mPa・sの範囲内である、[1]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36] 前記少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーは23℃で液体であり、前記プレポリマーは場合により前処理した反応物である、[1]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37] a)前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマー、b)前記反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーのすべて、c)顔料分散剤及びd)前記油相又は前処理した油相のすべて:の少なくとも1つは、3~1,000、3~500又は3~200の範囲のアミンナンバー(Amine Number)又は重量平均アミンナンバーを有する、[1]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38] アミノシリコーン油は、前記油相又は前記前処理した油相内に存在し、前記油相又は前記前処理した油相内のアミノシリコーン油の総濃度は重量で、最大40重量%、最大35重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%又は最大5重量%であり;場合により、1重量%~40重量%、5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、20重量%~40重量%、1重量%~30重量%、5重量%~30重量%、10重量%~30重量%、15重量%~30重量%、20重量%~35重量%又は20重量%~30重量%である、[1]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39] 任意の顔料粒子及び前記顔料粒子のための分散剤を含む前記プレポリマー、前記非アミノ架橋剤、前記反応性疎水性無機充填剤、前記アミノシリコーン油及び前記シリコーン油の、前記油相内又は前記前処理した油相内の総濃度は、重量で少なくとも90重量%、少なくとも93重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%又は少なくとも98重量%である、[1]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40] 前記水相は、場合により非イオン性である水中油型乳化剤をさらに含み、前記水中油型乳化剤は、12~18、12~17、12~16、12~15又は13~16の範囲内のHLB数を有する、[1]~[39]のいずれかに記載の方法。
[41] 前記水相内の前記水及び任意の乳化剤の総濃度は、重量に基づいて少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%である、[1]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42] 前記前処理された水中油型エマルションが塗布される哺乳類の毛髪は、乾燥又は非湿潤の哺乳類の毛髪、又は予め染められた毛髪である、[1]~[41]のいずれかに記載の方法。
[42] 前記油相、前記前処理した油相又は中和された酸部分を有する親水性ポリマーの前記ポリマー粒子の少なくとも1つが存在する場合、場合により複数のサブミクロン顔料粒子として顔料をさらに含むか又は包埋し、前記油相又は前記前処理した油相は分散剤をさらに含み、前記サブミクロン顔料粒子は前記分散剤内に分散され、前記分散剤は場合により、前記顔料の重量に基づいて、25重量%~400重量%、50重量%~200重量%又は75重量%~125重量%の範囲内であり;前記油相、前記前処理された油相又は中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料の前記ポリマー粒子の少なくとも1つが存在する場合、それぞれ油相又はポリマー材料の重量で、油相及び/又は水性分散液内に少なくとも0.1重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%の前記顔料を含むか又は包埋し、前記顔料は場合により油相及び/又は前記水性分散剤のポリマー材料の20重量%以下で存在する、[1]~[42]のいずれかに記載の方法。
[44] 前記水中油型エマルションの前記水相は、前記水相中に前記顔料を最大20重量%、最大10重量%、最大5重量%又は最大2重量%の量で含むか、又は前記水相は前記顔料を含まない、[43]に記載の方法。
[45] 前記前処理した水中油型エマルションは、第1の顔料を含有するか又は包含し、前記複数のポリマー粒子を含む前記水性分散剤が、少なくとも部分的に硬化されたアミノシリコーンコート上に塗布され、前記水性分散剤は第2の顔料を含有するか又は包含し、前記第1及び第2の顔料は同じであるか又は異なる、[43]又は[44]に記載の方法。
[46] 哺乳類の毛髪の外側表面をコーティングするための反応性化粧品組成物を製造するためのキットであって、前記キットは
A]以下を含むアミノシリコーンコート部:
(a)アミノシリコーン油及び非アミノシリコーン油の少なくとも1つである第1コンパートメント反応物、及び場合により前記油相内に配置された固体の疎水性反応性無機充填剤を含む油相を含む第1コンパートメント;
(b)以下の第2コンパートメント反応物の少なくとも1つを含む調製物を含む第2コンパートメント:
(i)最大で1,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンモノマー;及び
(ii)非アミノ架橋剤;及び場合により
(iii)前記アミノシリコーン油及び前記非アミノシリコーン油の少なくとも1つ;
(c)縮合硬化に続いてアミノシリコーンコートを形成する少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーである反応物を含むコンパートメントであって、前記プレポリマーは縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンポリマー及び反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンオリゴマーの少なくとも1つを含む、コンパートメント;
(d)前処理した水溶液を含むコンパートメント;
であり、前記充填剤は前記縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーの硬化を促進するように選択又は適合され;前記非アミノ架橋剤は前記プレポリマーを硬化させるように適合又は選択され;
ここで、少なくとも1つの反応性縮合硬化性フィルム形成アミノシリコーンプレポリマーを含む前記コンパートメントは、前記第1のコンパートメントが前記固体の疎水性反応性無機充填剤を実質的に含まないことを条件として(A)第3のコンパートメント;(B)前記第2コンパートメント;及び(C)前記第1のコンパートメントの1つであり;
前記反応物、前記第1のコンパートメント反応物及び前記第2のコンパートメント反応物の少なくとも1つは、それぞれのコンパートメントに前処理した水溶液を加えることによって前処理される;及び場合により
B]中和された酸部分を有する親水性ポリマー材料で形成された複数のポリマー粒子を含む水性分散液を含む積層ポリマーフィルム部であって、前記複数のポリマー粒子は前記水性分散液内に分散されている、積層ポリマーフィルム部:
を含む、キット。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
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図2B
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図2D
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図4
図5