(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】リフト装置及びレセプター基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/18 20230101AFI20230808BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230808BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230808BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20230808BHJP
【FI】
H10K71/18
H10K50/10
H10K59/10
H10K71/20
(21)【出願番号】P 2022099528
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2018119419の分割
【原出願日】2018-06-25
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2017125875
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018116692
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】山岡 裕
(72)【発明者】
【氏名】仲田 悟基
(72)【発明者】
【氏名】小沢 周作
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-318372(JP,A)
【文献】特開2014-067671(JP,A)
【文献】特開2011-228033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/18
H10K 50/10
H10K 59/10
H10K 71/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー基板を保持するドナーステージ、光学系を保持する光学ステージ、及び、レセプター基板を保持するレセプターステージを有するリフト装置であって、
前記ドナーステージ及び前記レセプターステージは、各々異なる定盤に設置され、
前記光学ステージは、前記ドナーステージ上に載置される、又は、前記ドナーステージが設置された定盤に前記ドナーステージとは独立して設置されるリフト装置。
【請求項2】
前記光学系に向けてパルスレーザ光をパルス発振するレーザ装置を更に有する請求項1に記載のリフト装置。
【請求項3】
前記パルスレーザ
光は
、エキシマレーザである請求項2に記載のリフト装置。
【請求項4】
前
記レーザ装置から出射するレーザパルスの任意のパルス列を遮断する、パルスシャッターを備えている請求項2
又は3に記載のリフト装置。
【請求項5】
前記光学系
は、整形光学系を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のリフト装置。
【請求項6】
前記ドナーステージが設置された定盤及び前記レセプターステージが設置された定盤は、基礎定盤上に構築される請求項1~5のいずれか1項に記載のリフト装置。
【請求項7】
前記ドナー基板上の対象物の表面と前記レセプター基板間の間隔を設けたままリフトを行う請求項1~6のいずれか1項に記載のリフト装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のリフト装置によって、ドナー基板上の対象物をレセプター基板上にリフトすることを特徴とする対象物が移載されたレセプター基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー基板上に位置する対象物をレセプター基板上にレーザ照射を用いて精度よくリフト(LIFT:Laser Induced Forward Transfer)する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドナー基板上の有機EL層にレーザを照射し、対向する回路基板にこれをリフトする技術がある。特許文献1には、その技術として一つのレーザ光を矩形形状の均一強度分布を備える複数の矩形レーザ光へと変換し、これらを直列且つ等間隔に配置し、ドナー基板の所定の領域に一定時間以上隔てて所定回数重畳して照射し、ドナー基板と有機EL層間に位置する金属箔に吸収させ、弾性波を発生させ、これにより剥離された有機EL層を対向する回路基板上にリフトする技術が開示されている。
【0003】
この技術においては、ドナー基板と回路基板の間に80~100[μm]を好適値とするスペーサを挟み、これらの間隔を一定に保持した状態にて一体化したものを一台のステージ上に載置してレーザ光に対し相対的にスキャンさせる構造を用いている。しかし、この場合対向させたドナー基板と回路基板を一体化させる工程が別途必要となるほか、回路基板と同一サイズのドナー基板が必要となり、回路基板の大型化の需要に伴い製造コストや装置の大型化も必要となる。
【0004】
同じく、ドナー基板上の有機EL層を対向する回路基板にリフトする技術として、光吸収層をドナー基板と有機EL層間に設け、この光吸収層に照射したレーザ光を吸収させ、衝撃波を発生させ、10~100[μm]の間隔が設けられて対向する回路基板にリフトする技術が特許文献2において開示されている。しかし、レーザ光の走査方法やこれを実現するステージ構成、ひいては、リフト装置としての開示がない。そのため、回路基板の大型化に対応可能なリフト位置精度を維持、向上するための技術として参照することができない。
【0005】
また、半導体デバイスの製造に用いられる露光装置において、ステップアンドスキャン法に関する技術が特許文献3に開示されている。その基本的な考え方は、ウエハステージの走査露光方向に沿った一列分のショット領域を、途中いくつかのショット領域を飛ばしながら間欠的に露光して、その途中でウエハステージを停止させないというものである。すなわち、レチクルを保持するレチクルステージと、ウエハを保持するウエハステージと、レチクルのパターンをウエハに投影する投影光学系を備え、投影光学系に対してレチクルステージとウエハステージを共に走査しながら露光を行い、レチクルのパターンをウエハの複数のショット領域に順に投影する露光装置であって、走査方向に沿って並んだウエハ上の複数のショット領域に対して、該ウエハステージを静止させることなく走査移動させながら、間欠的に露光を行う装置である。これにより、ウエハの大型化且つ処理速度の高速化の要求において、ウエハステージの加減速を繰り返すステップアンドリピート方式と比べ、そのステージの走査に伴う振動や揺れの露光精度に対する影響を軽減することができる。
【0006】
しかし、この特許文献3に開示されている技術は、縮小投影露光を基本とする半導体露光装置の技術であり、本発明であるリフト技術とはその技術分野を異にするものである。すなわち、露光装置におけるレチクルステージとウエハステージの構成及び走査技術と、本発明に係るマスクパターンをドナー基板上の対象物に位置精度よく縮小投影し、さらに当該対象物を同じく高い位置精度にてレセプター基板にリフトするためのステージ構成及び走査技術とは全く異なるものである。従って、本発明における具体的なステージ構成及びその走査技術としては、これを参照することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-67671号公報
【文献】特開2010-40380号公報
【文献】特開2000-21702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ドナー基板を保持するドナーステージ及びこれに載置される光学系を保持する光学ステージの両ステージと、レセプター基板を保持するレセプターステージを独立の機構とする構成、さらには、ドナーステージに光学ステージを直接載置するのではなく、剛性の高い定盤にそれぞれが独立して設置される機構とする構成により、各ステージの走査に伴う振動や各種エラーがステージ間の同期位置精度に影響を与えることを最小化する。その結果として、リフト位置精度を維持したままレセプター基板の大型化、細密化、及びタクトタイムの短縮に寄与するリフト装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、移動するドナー基板の表面上に位置する対象物に向けて当該ドナー基板の裏面からパルスレーザ光を照射することで当該対象物を選択的に剥離し、これを当該ドナー基板と対向しながら移動するレセプター基板上にリフトする装置であって、パルス発振するレーザ装置と、前記レーザ装置から出射したパルスレーザ光を平行光にするテレスコープと、前記テレスコープを通過したパルスレーザ光の空間強度分布を均一に整形する整形光学系と、前記整形光学系により整形されたパルスレーザ光を所定のパターンにて通過させるマスクと、前記整形光学系と前記マスクとの間に位置するフィールドレンズと、 前記マスクのパターンを通過したレーザ光をドナー基板の表面に縮小投影する投影レンズと、前記フィールドレンズとマスクを保持するマスクステージと、前記整形光学系と前記マスクステージと前記投影レンズを保持する光学ステージと、ドナー基板をその裏面がレーザ光の入射側となる向きにて保持するドナーステージと、レセプター基板を保持するレセプターステージと、前記パルスレーザ光発振用のトリガー出力機能及びステージ制御機能を有するプログラマブル多軸制御装置と、を含み、前記レセプターステージは、水平面をXY平面としたときのY軸、鉛直方向のZ軸及びXY平面内のθ軸を持ち、前記ドナーステージは、X軸、Y軸及びθ軸を持ち、前記投影レンズは、当該投影レンズ用のZ軸ステージと共に前記光学ステージに保持され、前記テレスコープ、前記整形光学系、前記フィールドレンズ、前記マスク及び前記投影レンズは、当該マスクのパターンをドナー基板表面にて縮小投影する縮小投影光学系を構成し、前記ドナーステージのX軸は、定盤1に設置され、前記レセプターステージのY軸は、当該定盤1とは異なる定盤2に設置され、前記ドナーステージのY軸は、前記ドナーステージのX軸に吊設されていることを特徴とするリフト装置である。
【0010】
ここで、「移動する」基板とは、パルスレーザ光(
図1Aにおいて「LS」と表示。但し、
図1Aは第2の発明の主要構成部を示すものの、第1の発明の構成と共通する構成部分を含むため参照する。以下、同様。)の照射の際も停止せずに移動している場合と、パルスレーザ光の照射の際は停止し、移動と停止を繰り返す場合とを含み、これらは本発明に係るリフト装置によるリフト工程と要求されるタクトタイム等により選択される。また、ドナー基板(D)が移動と停止を繰り返し、レセプター基板(R)は停止しない構成や、その逆の場合の構成も含む。ドナー基板からの対象物の剥離に1ショットのみを用いる場合であって高タクトタイムが要求される場合は、好適に、ドナー基板とレセプター基板は同一又は異なる速度で停止することなく移動する構成が選択される。他方、対象物を一定厚積層させたい場合など、ドナー基板は停止することなく移動し、レセプター基板は一定ショット数の間停止する構成が選択される場合もある。
【0011】
また、「対象物」には特に限定はなく、ドナー基板上に、又は光吸収層(
図1Aにおいて、図示省略。)を介してドナー基板上に一葉に設けられたリフト対象物であって、前述の特許文献に記載された有機EL層に代表される薄膜や、微細な素子状に且つ規則的に多数配設されたものを含み、これらに限定されない。なお、リフトのメカニズムには、レーザ光を照射された前記光吸収層が衝撃波を発生し、これにより対象物がドナー基板から剥離されレセプター基板に向けてリフトされるものや、光吸収層を持たず対象物に直接照射されたレーザ光により剥離されるものを含み、これらに限定されない。
【0012】
ドナー基板の材質は、前記レーザ光の波長に対し透過特性を有していればよく、基板の大型化によるたわみ量の少ない材質が望ましい。なお、当該たわみ量がドナー基板とレセプター基板間のギャップの均一性を満たせない程に大きい場合は、ドナーステージ(Yd、θd)におけるドナー基板の保持方法、例えばドナー基板の中央付近に吸着エリアを設けるなどにより機械的に矯正するほか、後述するハイトセンサーの組み合わせによるギャップセンサーを用いて補正する方法がある。
【0013】
本発明においてドナーステージの可動範囲は、ドナー基板の縁付近に位置する対象物をレセプター基板にリフトするためにドナー基板が移動すべきXY平面領域を含み、レセプター基板の大きさに依存する範囲をいう。一例として、ドナー基板のXY平面内のサイズが200×200[mm]、同じくレセプター基板が400×400[mm]の場合、ドナーステージ(Xd、Yd)が移動すべき所定の範囲は、概ね800×800[mm]となる。その様子を
図4に示す。なお、ドナー基板の取り外しの為にさらに移動する必要がある場合は、その領域も含む。
【0014】
また、「定盤」とあるのは、特にその材質は限定しないものの、極めて高い剛性をもつ材質でなければならない。定盤1(G1)については、剛性を持たせるために上面視にて「コ」型や、「□」型の形状にするのが望ましい。また、
図1Aにおいては、定盤2を一枚の形状にて図示しているが、具体的には、これをY軸方向に2本設置した定盤とし、その中間にリニアスケール及びリニアモーターを載置する構成でもよい。なお、定盤1及び定盤2は、同一の基礎定盤(G)上に固定されている構造とすることができる。さらに、G1は定盤11(G11)と定盤12(G12)との組み合わせから成る構成でもよい。
【0015】
そして、いずれの定盤の材質も、鉄鋼、石材又はセラミック材などの剛性の高い部材を用いる必要がある。例えばこの石材には、グラナイト(花崗岩/御影石)に代表される石材を用いることができ、これに限定されない。また、すべての定盤が同一の材質から構成されている必要もない。
【0016】
各ステージの移動については、後述する実施例において詳細説明するが、概ね以下の動作を行う。まず、ドナーステージのX軸(Xd)は、ドナーステージのY軸(Yd)を吊設した状態で、G1に設置され、X軸方向に移動する。そして、この移動はドナー基板とレセプター基板間のX軸に沿った相対的位置を変更する。移動の様子を
図1Bに示す。なお、いずれの図においても、ステージの可動テーブルやリニアガイド等の詳細は図示していない。
【0017】
光学ステージ(Xo)の定盤等への設置方法は限定していないが、例えば、Xdに載置された状態、Xdが設置された定盤と同一の定盤に設置された状態、又はXdとは異なる定盤上に載置された状態など、様々な機構を選択することができる。XoはXdと並行してX軸方向を移動し、整形光学系(H)、フィールドレンズ(F)、マスク(M)及び、投影レンズ(Pl)の各々の相対的位置は変動させることなく、これらを一体にて移動させる。他方、このX軸に沿ったXoの移動は、ドナー基板と投影レンズ間の相対的位置関係を変更する。その移動の様子を
図1Cに示す。
【0018】
なお、ドナー基板と投影レンズのX軸方向における相対的位置の変更が不要な場合は、常にドナーステージのX軸と共に移動する構成、すなわち光学ステージを省略し、ホモジナイザー、フィールドレンズ、マスク及び投影レンズは全てドナーステージのX軸上、又は、別途定盤上に固定する構造でもよい。
【0019】
マスクは、マスクステージに保持され、そのマスクステージは、少なくともフィールドレンズと共にX軸方向に移動するW軸を有し、好適には、そのほかY軸方向のU軸、Z軸方向に移動するV軸、YZ面内の回転軸であるR軸、V軸に対する傾きを調整するTV軸及びU軸に対する傾きを調整するTU軸を有するとよい。また、マスクへのレーザ照射による熱量の投入を抑えるため、当該マスクの手前に、マスクパターンより一回り大きいパターンを配したアパーチャーマスクを設け、前記マスクと合わせてダブルマスク構造とすることもできる。
【0020】
ドナーステージのY軸(Yd)とレセプターステージのY軸(Yr)は、リフト工程中ドナー基板とレセプター基板のギャップを一定に保ったまま、及び極めて高い平行度を維持したまま、同一又は異なる速度で移動する。そして、各ステージ群の移動方法及びこれらを支える定盤等の上述の構造により、レセプター基板の移動機構をY軸に限定し、且つドナー基板の移動機構と分離することで、互いの基板の移動領域の干渉や振動による相互の影響を抑え、レセプター基板のサイズの大型化や細密化に対応できる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、前記ドナーステージのX軸が前記定盤1の上に載置され、前記光学ステージは、当該ドナーステージのX軸上に載置されていることを特徴とするリフト装置である。
【0022】
図1Aは、この第2発明に係るリフト装置の主要構成部分(側面視)を示す。
図1Bは、
図1Aの状態から、XdがXoを載せて移動した様子(側面視)を示す。
図1Cは、
図1Bの状態から、XoがXd上を移動した様子(側面視)を示す。
図1Dは、
図1Cの上面視を示す。
【0023】
第3の発明は、第1の発明において、前記光学ステージが前記定盤1上に載置され、且つ、前記ドナーステージのX軸が当該定盤1に吊設されていることを特徴とするリフト装置である。
【0024】
図2Aは、この第3発明に係るリフト装置の主要構成部分(側面視)を示す。
図2Bは、
図2Aの状態から、XdとXoがG1上(XdはG1に吊設。)を同一距離移動した様子(側面視)を示す。
図2Cは、
図2Bの状態から、XoのみG1上を移動した様子(側面視)を示す。
【0025】
第4の発明は、第1の発明において、前記ドナーステージのX軸が前記定盤1に設置され、前記光学ステージが当該定盤1及び前記定盤2のいずれとも異なる定盤3に載置されていることを特徴とするリフト装置である。
【0026】
ここで「定盤1に設置」とは、定盤1上に載置する状態、及び定盤1から吊設する状態を含み、これらに限定されない。
【0027】
第5の発明は、第1の発明において、前記ドナーステージのX軸と前記定盤1との間、及び、当該ドナーステージのX軸と前記ドナーステージのY軸との間に、それぞれ、両者間のXY平面内における設置角度を微調整するための回転調整機構を有していることを特徴とするリフト装置である。
【0028】
ここで、ドナーステージのX軸(Xd)と定盤1(G1)間に設置する回転調整機構(RP)の一例を
図3Aに示す。この
図3Aにおいて、左図は上面視、右図はX軸方向からの側面視を表す。そして、上面視図において外側に位置する一列の孔は、G1との固定に用いられ、且つ、回転調整機能を持たすために「あそび」(余裕・ゆとり)を有している。さらに、上面視図において内側に位置する二列の孔は、このRPとXdのリニアガイドを固定するためのネジを通す孔である。なお、「あそび」を持たせる側をこのXdのリニアガイド用の孔とすることも可能であるが、2本のリニアガイドを独立平行にて固定する場合、設置工程の難易度が上がる可能性がある。
【0029】
他方、Xdとこれに吊設するドナーステージのY軸(Yd)間に設置するRPの一例を
図3Bに示す。上面視図において外側に位置する二列の孔は、Xdとの固定に用いられ、且つ、回転調整機能を持たすために「あそび」を有している。さらにY軸方向に並ぶ二列の孔は、Ydとの固定に用いられる。
【0030】
このほか、G1とXdの間に設置するRPとして、前記とは異なるRPを用いることもできる。例えば、(図示は省略するが)Xdを載置するRPをG1に対しXY平面内にて回転調整させるための支点(Z軸方向の回転軸)を当該RPとG1の接触面に設け、その支点から十分離れたRPの側面(鉛直面)に当該支点に対する力点を設ける。この力点近くのG1上に、力点に向かって水平に押し込む大型ネジを設置する。同様に、これと反対側のRPの側面に大型ネジを設置する。これにより、Xdが載置されたこのRPを、G1に対し前記支点を中心に[μrad]オーダーでXY平面内を回転させることができる。
【0031】
第6の発明は、第2の発明において、前記ドナーステージのX軸と前記定盤1との間、当該ドナーステージのX軸と前記光学ステージとの間、及び、当該ドナーステージのX軸と前記ドナーステージのY軸との間に、ぞれぞれ、両者間のXY平面内における設置角度を微調整するための回転調整機構を有していることを特徴とするリフト装置である。
【0032】
これらのRPとしては、例えば、前出の
図3Aに示すG1とXd間に用いるRP、
図3Cに示すXdとXo間に用いるRP、及び
図3Bに示すXdとYd間に用いるRPを使用することができる。
【0033】
第7の発明は、第3の発明において、前記ドナーステージのX軸と前記定盤1との間、前記光学ステージと前記定盤1との間、及び、当該ドナーステージのX軸と前記ドナーステージのY軸との間に、ぞれぞれ、両者間のXY平面内における設置角度を微調整するための回転調整機構を有していることを特徴とするリフト装置である。
【0034】
ここでは、例えば、XoとG1間及びXdとG1間の回転調整機構として
図3Aに示すRPをそれぞれに用い、他方、XdとYd間の回転調整機構として
図3Bに示すRPを用いる。前者のRPにはXo及びXdのリニアガイド固定用ネジを通す孔を有し、当該孔に持たせた「あそび」により、それぞれのステージ用リニアガイドが固定されたRPとG1とのXY平面内の設置角度を調整する。
【0035】
第8の発明は、第4の発明において、前記ドナーステージのX軸と前記定盤1との間、前記光学ステージと前記定盤3との間、及び、当該ドナーステージのX軸と前記ドナーステージのY軸との間に、ぞれぞれ、両者間のXY平面内における設置角度を微調整するための回転調整機構を有していることを特徴とするリフト装置である。
【0036】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記パルスレーザ装置がエキシマレーザであることを特徴とするリフト装置である。
【0037】
ここで、エキシマレーザの発振波長は、主に193、248、308又は351[nm]であるが、光吸収層の材料や対象物の光吸収特性により、これらの中から好適に選択される。
【0038】
第10の発明は、第9の発明において、前記パルスレーザ装置から出射するレーザパルスの任意のパルス列を遮断する、パルスシャッターを備えていることを特徴とするリフト装置である。
【0039】
パルス発振するレーザ装置は、前記プログラマブル多軸制御装置からトリガー信号を受信し発振を開始するが、その発振直後の一定数又は一定時間内のパルスのエネルギーは、その応用によっては用いることができないほどに不安定であることが知られている。よって、この不安定なパルス群を排除するため機械的シャッター動作によりこれを排除することが必要である。具体的には、例えば1[kHz]で発振するエキシマレーザの場合、隣り合うレーザパルス間のタイムウインドーは約1[ms]であり、この時間内に一定の距離を移動(横切ることが)できる高速のシャッター機能が必要である。この一定の距離は、シャッターを動作させる場所におけるレーザ光の空間的大きさに依存し、その距離が5[mm]であれば要求されるシャッター動作速度は、5[m/s]となり、ボイスコイル等を用いて光路に光学素子を出し入れして行う超高速シャッターが要求される。なお、その空間的大きさを成形光学系等により小さくし、シャッター部材が横切る距離を短くできたとしても、レーザ光のエネルギー密度によっては容易に損傷してしまう。
【0040】
第11の発明は、第1乃至第10のいずれかの発明において、前記プログラマブル多軸制御装置が、少なくともレセプターステージのY軸とドナーステージのY軸を同時に制御する機能を有し、且つ、各ステージの移動位置エラーを補正するために予め作成された二次元分布補正値データを用いて当該移動位置エラーを補正する手段を備えていることを特徴とするリフト装置である。
【0041】
例えば、Xd又はXoと、Yr又はYdとの、いずれかの組み合わせによる疑似的なXY平面における二次元分布補正値データ情報を用いて、レーザ光の照射時の、レセプター基板とドナー基板の位置補正を行うものである。補正される位置エラーの要因には、各ステージの移動に伴うピッチング、ヨーイング及びローリングが含まれ、これらに限定されない。また、補正値を決定するパラメータには、前記各ステージの位置情報に加え、YrとYdの移動速度とその比も含まれる。
【0042】
第12の発明は、第1乃至第11のいずれかの発明において、前記ドナー基板の位置をモニターする高倍率カメラが前記レセプターステージのZ軸に設置され、又は、レセプター基板の位置をモニターする高倍率カメラが、前記ドナーステージのX軸若しくはこれと共に移動する部分、若しくは、前記光学ステージ若しくはこれと共に移動する部分に設置されていることを特徴とするリフト装置である。
【0043】
ここで、「ドナーステージのX軸と共に移動する部分」には、Xdに吊設されるYdも含まれる。本発明において、各ステージのY軸同士の平行度及びX軸同士の平行度、並びに、各ステージのY軸とX軸の直角度は、リフト位置精度を左右する重要なパラメータである。そして、各ステージを組み上げる際の平行度及び直角度の検証においては、アライメント用基板を保持した各ステージの移動距離に対し、これと直交する方向のズレ量を高倍率且つ高分解能のカメラにてモニターし、前記回転調整機構を用いて直角度の調整をする。また、YrとYd間の平行度の調整においては、両ステージを同期して同一距離を移動(並走)させ、一方のステージに取り付けられた高倍率カメラにより、対向するステージに付されたパターンマッチングされたアライメントマーク画像(十字マークなど)の位置が、移動することなく静止しているか否かを観察する。この場合、Y軸方向の移動はYdとYrの同期の異常を意味し、X軸方向の移動はYdとYrの平行度の調整ミスを意味する。
【0044】
なお、高倍率カメラとしては一般的にCCDカメラを用いる。倍率等はリフト位置精度に依存するものの、一例として前述の[μrad]オーダーのズレ量を検知する場合、すなわち1[m]のステージ移動距離に対し1[μm]のズレ量を検知する場合は、分解能1[μm]、且つ倍率20倍乃至50倍程度のものを用いるとよい。
【0045】
第13の発明は、第1乃至第12のいずれかの発明において、前記ドナーステージと前記レセプターステージが、前記ドナー基板の表面(下面)と前記レセプター基板の表面のギャップを計測するギャップセンサーを備えていることを特徴とするリフト装置である。
【0046】
ここで、ギャップセンサーとは、ドナー及びレセプターステージの各々に設置されたハイトセンサーを組み合わせたものであり、ドナーステージに設置されたハイトセンサーはレセプター基板までの距離を、レセプターステージに設置されたハイトセンサーはドナー基板までの距離を計測し、両計測値及びハイトセンサーの高さ情報からドナー基板とレセプター基板間のギャップを算出する。
【0047】
第14の発明は、第11乃至13のいずれかの発明において、前記レセプターステージのY軸用及び前記ドナーステージのY軸用として、それぞれにレーザ干渉計を用いた位置計測手段を備えていることを特徴とするリフト装置である。
【0048】
レセプターステージのY軸(Yr)用レーザ干渉計の構成としては、Yrと共に移動する部分に保持されたミラー(Ic)と、当該移動による振動等の影響を受けにくい定盤、例えば定盤2(G2)に固定された干渉計用レーザ(IL)と、1/4波長板等(図示省略)からなる構成とすることができる。また当該ミラーとして、好適には、3軸のコーナーキューブ(レトロリフレクター)を用い、レセプター基板の位置(高さ)に可能な限り近いほうが望ましい。
図5Aにて概略を示す。(ドナーステージ群及びレセプターステージのZ軸、θ軸の図示は省略。)
【0049】
Yrは、そのリニアエンコーダからの位置情報に基づいてプログラマブル多軸制御装置により制御されるものの、このリニアエンコーダの校正用として、さらには、後述するYrとYdのギアモード動作において、そのギア比を精細に調整する際の校正用として、このレーザ干渉計を用いる。
【0050】
ドナーステージのY軸(Yd)用レーザ干渉計の構成としては、Xdに吊設されたYdと共に移動する面に保持されたIcと、同じくXdに固定されたILと、1/4波長板等(図示省略。)からなる構成とすることができる。ここでも、当該ミラーとして、好適には、3軸のコーナーキューブ(レトロリフレクター)を用い、ドナー基板の位置(高さ)に可能な限り近いほうが望ましい。
図5Bにて概略を示す。(レセプターステージ群は図示を省略。)なお、いずれの干渉計用レーザの検出方式の選択も、要求されるリフト位置精度によって最適なものを選択すればよい。
【0051】
第15の発明は、第1乃至第14のいずれかの発明において、前記マスクパターンが前記投影レンズにより縮小投影され結像する位置と共役な位置に撮像面を持つ共焦点ビームプロファイラーを備えていることを特徴とするリフト装置である。
【0052】
この共焦点ビームプロファイラーにより、ドナー基板表面に縮小投影されているレーザ光の位置及び空間的強度分布の状態、並びにその結像状態を、リアルタイム且つ縮小結像光学系の結像分解能と同等の精度でモニターすることができる。
【0053】
第16の発明は、第13乃至第15のいずれかの発明において、前記ギャップセンサーを用いて、予めドナー基板のたわみ量をドナー基板のXY位置情報と共に計測し、当該計測により得られるたわみ量の二次元分布データに基づき、前記レセプターステージのZ軸(Zr)又は前記投影レンズのZ軸ステージによる調整を用いてドナー基板とレセプター基板のギャップを補正しながらリフトすることを特徴とする第13乃至第15のいずれかの発明に係るリフト装置の使用方法である。
【0054】
第17の発明は、第11乃至第16のいずれかの発明に係る前記リフト装置の組み上げ工程における、前記レセプターステージのY軸と前記ドナーステージのY軸の平行度の調整方法であって、前記レセプターステージのZ軸及びθ軸と共に真直度の調整がなされたY軸を基準とし、当該レセプターステージのY軸と前記ドナーステージのX軸の直角度を、前記定盤1と当該ドナーステージのX軸との間に位置する回転調整機構により調整するステップと、直角度が調整された当該ドナーステージのX軸に吊設されたドナーステージのY軸と前記レセプターステージのY軸を同期して並走させ、当該レセプターステージのY軸と共に移動する部位に取り付けられた高倍率カメラにより対向するドナーステージのY軸上のアライメントマークを観察するステップと、当該観察の結果に基づき、前記ドナーステージのX軸と前記ドナーステージのY軸の間の回転調整機構により、当該レセプターステージのY軸と当該ドナーステージのY軸の平行度を調整するステップとを、この順にて含むことを特徴とする第11乃至第16のいずれかの発明に係るリフト装置の調整方法である。
【0055】
なお、高倍率カメラは、YdとYrの平行度を精度よく確認し、調整するために、Yr上に載置される各ステージやプレートなどのうち最も高い位置にあり、且つ剛性の高い部分に取り付けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、ドナー基板とレセプター基板の高い同期位置精度を基に、リフト装置におけるレセプター基板の大型化とタクトタイムの短縮を、高いリフト位置精度を保ったまま実現する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】本発明に係るリフト装置の主要構成部分(側面視)を示す。(第2発明)
【
図1B】
図1Aの状態から、ドナーステージのX軸が光学ステージを載せて移動した様子(側面視)を示す。
【
図1C】
図1Bの状態から、光学ステージがドナーステージのX軸上を移動した様子(側面視)を示す。
【
図2A】本発明に係るリフト装置の主要構成部分(側面視)を示す。(第3発明)
【
図2B】
図2Aの状態から、ドナーステージのX軸と光学ステージが定盤1上を同一距離移動した様子(側面視)を示す。
【
図2C】
図2Bの状態から、ドナーステージのX軸のみ定盤1上を移動した様子(側面視)を示す。
【
図3A】G1とXd間に用いる回転調整機構の例を示す。
【
図3B】XdとYd間に用いる回転調整機構の例を示す。
【
図3C】XdとXo間に用いる回転調整機構の例を示す。
【
図4】レセプター基板のサイズに応じてドナーステージが移動すべき範囲を示す。
【
図5A】レセプターステージのY軸用レーザ干渉計が設置されている様子を示す。
【
図5B】ドナーステージのY軸用レーザ干渉計が設置されている様子を示す。
【
図7】複数列のマスクパターンによるリフト工程の様子を示す。
【
図8】共焦点ビームプロファイラーのモニターの様子を示す。
【
図10】ギア比1:2により1回走査後のレセプター基板の様子を示す。
【
図11】ドナーステージのX軸のステップ走査の様子を示す。
【
図12】レセプターステージのY軸とドナーステージのY軸を並進させた際の同期位置エラーを示す。
【
図13A】マトリックス状のドナー基板を用いたリフト工程の1ショット目を示す。
【
図13B】マトリックス状のドナー基板を用いたリフト工程の2ショット目を示す。
【
図13C】マトリックス状のドナー基板を用いたリフト工程の3ショット目を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、図面を参照して本発明に係るリフト装置の具体的構成について詳細に説明する。
【実施例1】
【0059】
本実施例1においては、サイズが200×200[mm]のドナー基板上に、光吸収層を介して一葉に形成された層状(ベタ膜)の対象物を、サイズが400×400[mm]のレセプター基板に対し、1個当たりの形状が10×10[μm]の素子状のリフト対象物として縦12000×横12000の合計144百万個マトリックス状にリフトする実施例を示す。この144百万個のリフト位置は、±1[μm]の位置精度であり、各々の縦・横のピッチは30[μm]である。
【0060】
はじめに、本発明の実施に係るリフト装置の主要構成部分を
図1Aに示す。なお、
図1Aにおいてはレーザ装置、制御装置、その他モニター等の図示は省略し、X軸、Y軸及びZ軸方向は図中に示した。定盤1(G1)、定盤11(G11)、定盤12(G12)及び定盤2(G2)には全てグラナイトを用いた石定盤とした。そして、基礎定盤(G)には合成の高い鉄を用いた。なお、本実施例は、前出の第6の発明の構成を基本とする実施例である。
【0061】
本発明の実施例1に係るリフト装置の構成を、レーザ装置からパルスレーザ光が出射しドナー基板上の対象物に照射されるまでを、レーザ光の伝搬にそって順に説明する。まず、本実施例1において用いるレーザ装置は、発振波長を248[nm]とするエキシマレーザである。出射するレーザ光の空間的分布は、概ね8×24[mm]であり、ビーム拡がり角は1×3[mrad]である。いずれも(縦×横)の表記であり、数値はFWHMである。
【0062】
なお、エキシマレーザの仕様は様々であり、出力の違い、繰り返し周波数の違い、ビームサイズの違い、ビーム拡がり角の違い等はもとより、出射するレーザ光が縦長(前記縦と横を逆転したもの。)のものまで存在するが、光学系の追加、省略又は設計変更により、本実施例1において用いることができるエキシマレーザは多く存在する。また、レーザ装置は、その大きさにも依存するが、一般的にリフト装置のステージ群が設置される土台とは異なる土台(レーザ用定盤)の上に設置される。
【0063】
エキシマレーザからの出射光はテレスコープ光学系に入射し、その先の整形光学系へと伝搬する。ここで、整形光学系は、
図1Aに示すとおり、その光軸をX軸に沿って光学ステージ(Xo)上に保持されており、当該光学ステージは、ドナー基板を移動させるドナーステージのX軸(Xd)上に設置されている。そして、この整形光学系に入射する直前におけるレーザ光は、このドナーステージのX軸の移動範囲内のいずれの位置においても、概ね平行光となるよう、テレスコープ光学系により調整されている。そのため、Xd及び/又はXoのX軸方向の移動に拘わらず、常に、整形光学系に対し、概ね、同一サイズ、同一角度(垂直)により入射する。本実施例1においては、そのサイズは、概ね25×25[mm](縦×横)である。
【0064】
本実施例1における整形光学系(H)は、光軸方向に対し垂直な面内に2枚一組の1軸シリンドリカルレンズアレイを2組直角に組み合わせたものである。ぞれぞれの組内における初段のレンズアレイは、後段のレンズアレイ及びその後に位置するコンデンサーレンズ(図示省略。)により、マスク(M)上に像を結ぶ配置である。
【0065】
整形光学系を通過したレーザ光は、投影レンズ(Pl)との組み合わせにおいて像側テレセントリック縮小投影光学系を構成するフィールドレンズ(F)を経てマスクに入射する。マスク上でのレーザ光のサイズは、1×50[mm](FWHM)であり、その空間的強度分布均一性が±5%以内の領域のサイズは、0.5×45[mm]以上を維持している。
【0066】
マスクはマスクステージに固定されており、このマスクステージは、前述のとおりフィールドレンズと共にX軸方向に移動するW軸、Y軸方向のU軸、Z軸方向に移動するV軸、YZ面内の回転軸であるR軸、V軸に対する傾きを調整するTV軸及びU軸に対する傾きを調整するTU軸の計6軸調整機構を持つ。
【0067】
本実施例1におけるマスクには、合成石英板にクロムメッキにてパターンが描画された(施された)ものを用いる。
図6にその概略を示す。このマスクにおいて、クロムメッキが施されていない白く示された窓部分(a)はレーザ光を透過し、クロムメッキが施されている有色部分(b)はレーザ光を遮断する。一つの窓の形状(a)は50×50[μm]であり、これがX軸方向(一列)に、150[μm]間隔にて43.85[mm]にわたり、合計300個配置されている。また、クロムメッキを施す面は、レーザ光の出射側であり、他方、入射側には248[nm]用の反射防止膜を施してある。さらに、クロムメッキに代えて、アルミ蒸着や誘電体多層膜を用いることもできる。
【0068】
なお、一枚のマスクにおいて、複数のパターンを切り替えて用いるリフト工程の場合には、前記整形光学系からマスク上に照射されるレーザ光のサイズの範囲内、且つマスクステージの可動範囲内であれば、異なるパターンの描画されたマスクを用いることができる。
【0069】
また、
図7において、レセプター基板(R)を1回走査させる間(但し、途中停止を含む。)に、ドナー基板(D)を同一の速度で複数回又は往復走査させるリフト工程を用いる場合など、
図6に示すマスクパターンが一列ではなく、複数列のパターン(但しレーザ照射はそのマスクパターンのうち間欠的且つ選択的に照射。
図7においては、3×2列のマトリックスとして表示。)を採用することも可能である。これにより、レセプター基板よりサイズの小さなドナー基板を用いることが可能になる。
【0070】
前記マスクパターンを通過したレーザ光は、その伝搬方向を落射ミラーにより鉛直下方(-Z方向)に変え、投影レンズに入射する。この投影レンズは、248nm用の反射防止膜が施され、1/5の縮小倍率を持つ。詳細は下表1のとおりである。
【0071】
【0072】
投影レンズから出射されたレーザ光は、ドナー基板の裏面から入射し、その表面(下面)に形成されている光吸収層の所定の位置に対し、前記マスクパターンの1/5の縮小サイズにて正確に投影される。ここで、XY平面内における所定の位置は、予めドナー基板に付されたアライメントマーク等を基準に、ドナーステージのX軸(Xd)、Y軸(Yd)及びθ軸(θd)により調整後、決定される。
【0073】
ドナー基板の表面と光吸収層の境界面に投影レンズによるマスクパターンの像面が焦点を結ぶように調整するには、投影レンズのZ軸ステージ(Zl)とフィールドレンズ(F)を載せたマスクステージのW軸の位置を調整する。なお、ドナー基板のZ軸方向の調整機能(Z軸ステージ)を追加することもできるが、ドナーステージのX軸(Xd)への加重負荷が増加することによるリフト位置精度の低下を考慮する必要がある。
【0074】
ドナー基板表面と光吸収層の境界面における結像位置の調整の際には、結像面と共役の関係にある平面を撮像面に持つ共焦点ビームプロファイラー(BP)を用いたリアルタイムモニターが有効である。その調整画面の様子を
図8に示す。本実施例1においては、ドナー基板表面と光吸収層との境界面に縮小結像されるレーザ光の空間的強度分布を、リアルタイム且つ高分解能にてモニターする。
【0075】
以上が、レーザ装置から出射したパルスレーザ光の伝搬に関する本実施例1における装置構成が果たす機能である。
【0076】
次に、本発明に係る装置において、レセプターステージのY軸(Yr)とドナーステージのY軸(Yd)の平行度を、本実施例1の構成を用いていかに機械的に実現するかについて簡単に説明する。
【0077】
各ステージは、
図1Aに示すとおり、石定盤1(G1)上にドナーステージのX軸(Xd)が載置され、その上に光学ステージ(Xo)が載置されている。レセプターステージ群(Yr、θr、Zr)は、石定盤2(G2)上に載置されている。そして、全体は基礎定盤(G)の上に構築されている。そして、回転調整機構(RP)はG1とXd間、XoとXd間、そしてXdとYd間に設けた(図示省略)。
【0078】
なお、各ステージの軸の直角度及び平行度を調整するためには、ドナー基板の代わりにドナーステージに保持させる調整基板AD及びレセプター基板の代わりにレセプターステージに載置する調整基板ARを用いる。いずれの調整基板にもアライメントラインとして正確に直角を成すX軸(アライメントラインX)とY軸(アライメントラインY)を示す線が描画されており、所定の位置(間隔)にマークも付されている。
【0079】
1)YrとAR(Y)の平行度(YrとAR(X)の直角度)
レセプターステージのY軸(Yr)と調整基板AR上のアライメントラインYの平行度を調整するため、レセプターステージのZ軸(Zr)上に載置された調整基板ARを、光学ステージ(Xo)又はこれに設置された投影レンズ用のZ軸ステージに固定された高倍率CCDカメラにより観察する。前記Yr軸を400[mm]移動させ、アライメントラインYのX軸方向のズレ量が1[μm]以内に収まるよう、レセプターステージのθ軸(θr)を用いて調整する。なお、このときのステージの移動距離は、ステージの有効ストロークの範囲内であり、また、許容すべきズレ量については、要求されるリフト精度に応じて変動する。(以下同じ。)
【0080】
2)AR(X)とXdとの平行度(YrとXdの直角度)
次に、前記により調整された調整基板ARのアライメントラインXを用いて、ドナーステージのX軸(Xd)とレセプターステージのY軸(Yr)との直角度を、同じく光学ステージ(Xo)又はこれに設置された投影レンズ用のZ軸ステージに固定された高倍率CCDカメラにより観察しながら調整する。前記Xd軸を400[mm]移動させ、アライメントラインXのY軸方向のズレ量が1[μm]以内に収まるよう、前述のG1とXd間の回転調整機構を用いて両者の取り付け角度を調整すると共に、G1とXd、すなわちYrに対するXdの取り付け角度を調整する。
【0081】
3)AR(X)とXoの平行(YrとXoの直角度、XdとXoの平行度)
前記により調整された調整基板ARのアライメントラインXを用いて、光学ステージ(Xo)とドナーステージのX軸(Xd)との平行度を、光学ステージ(Xo)又はこれに設置された投影レンズ用のZ軸ステージに固定された高倍率CCDカメラにより観察しながら調整する。前記Xo軸を200[mm]移動させ、アライメントラインXのY軸方向のズレ量が0.5[μm]以内に収まるよう、ドナーステージのX軸(Xd)に対する光学ステージ(Xo)の平行度を両者間の回転調整機構により調整する。
【0082】
4)YdとAD(Y)の平行度
ドナーステージのY軸(Yd)と調整基板AD上のアライメントラインYの平行度を調整するため、ドナーステージのθ軸(θd)に保持された調整基板ADを、光学ステージ(Xo)又はこれに設置された投影レンズ用のZ軸ステージに固定された高倍率CCDカメラにより観察する。前記Yd軸を200[mm]移動させ、アライメントラインYのX軸方向のズレ量が0.5[μm]以内に収まるよう、ドナーステージのθ軸(θd)を用いて調整する。
【0083】
5)AD(X)とXoの平行度(AD(X)とXdの平行度、XdとYdの直角度)
ドナーステージのX軸(Xd)とドナーステージのY軸(Yd)の直角度を調整するため、調整基板AD上のアライメントラインXを、ドナーステージのX軸(Xd)との平行度が既に調整された光学ステージ(Xo)又はこれに設置された投影レンズ用のZ軸ステージに固定された高倍率CCDカメラにより観察する。その光学ステージ(Xo)を200[mm]移動させ、アライメントラインXのY軸方向のズレ量が0.5[μm]以内に収まるよう、ドナーステージのX軸(Xd)に吊設されたドナーステージのY軸(Yd)との直角度を両者間の回転調整機構により調整する。
【0084】
6)AD(Y)とYrの平行度(YdとYrの平行度)
最後に、ドナーステージのY軸(Yd)とレセプターステージのY軸(Yr)の平行度を確認するため、ドナーステージのY軸(Yd)に高倍率CCDカメラを取り付け、対向するレセプターステージ上に載置した調整基板ARのアライメントラインYを観察する。
この時、調整基板ADは取り外しておく。この高倍率CCDカメラがレセプターステージの任意の一端を観察できるようにドナーステージのX軸(Xd)を移動する。次に、ドナーステージのY軸(Yd)を400[mm]移動させ、アライメントラインYのX軸方向のズレ量が1[μm]以内に収まっているかを確認する。さらに、レセプターステージの他端についても同様の確認するため、Xdをその他端に移動させたのち、再びYdを400[mm]移動し、アライメントラインYのX軸方向のズレ量が1[μm]以内に収まっていることを確認する。なお、YdとYrを併進させ、アライメントマークの位置の変動を観察するのもよい。
【0085】
なお、高倍率CCDカメラをドナーステージのY軸(Yd)に取り付けた場合、ドナーステージのX軸の位置や石定盤1の形状(開口)によっては、これらと接触する可能性がある。その場合、高倍率CCDカメラの取り付けをYdではなく、レセプターステージのZ軸(Zr)に取り付け、レセプターステージのY軸(Yr)を200[mm]移動することで調整基板ADのアライメントラインYを観察し、そのX軸方向のズレ量を確認することも可能である。
【0086】
石定盤1(G1)と石定盤2が独立して各ステージを支え、且つYdはG1上に設置されたXdに吊設されているため、YrとYdの平行度を直接調整することはできないものの、上述のとおり段階を踏んでYrとYdの平行度の調整を[μrad]オーダーで行う。なお、前記1)から6)の順に調整ステップを踏むにしたがって、平行度(直角度)の誤差が累積するため、初期段階の許容ズレ量は可能な限り微小に抑えるよう調整することが望ましい。また、前記1)から6)の調整ステップは、XY平面における各ステージの平行度や直角度の調整について記載したものの、他の軸周り(X軸やY軸)についての調整も必要である。
【0087】
次に、本実施例1におけるリフトの際のドナー基板及びレセプター基板の走査について
図9A乃至9Cを用いて説明する。ここで、
図9A乃至9CのTop Viewは、これらの図の左側にオペレーターを配し、ドナー基板(D)及びレセプター基板(R)がそのオペレーターに対し前後に走査するイメージである。
【0088】
まず、ドナーステージのθ軸(θd)に吸着させてセットするドナー基板のたわみ量を、ドナー基板の全面において計測し、これを位置情報と共に二次元データとしてマッピングする。この情報はリフト工程中に移動するドナーステージのX軸(Xd)及びY軸(Yd)に対応するレセプターステージのZ軸(Zr)の補正量として用いる。
【0089】
また、以下の説明において便宜的に、オペレーターからみてレセプター基板(R)及びドナー基板(D)の左手前の所定の位置を各々の基板の原点と定義する。そして、レセプター基板の原点にレーザ光が照射されるときの光学ステージ(Xo)及びレセプターステージ(Yr、θr)の位置を、それぞれ原点と定義する。また、ドナー基板においても、前記レーザ光(LS)の照射時のドナーステージ(Xd、Yd、θd)の位置を、それぞれの原点と定義する。但し、各ステージの原点は、そのストローク範囲の片端とは限らず、その後のリフトの工程や基板の取り外しのために移動するストローク分を残す位置である。
【0090】
図9Aに、原点位置にあるドナー基板(D)とレセプター基板(R)に、レーザ光(LS)の最初のパルスが照射された様子を示す。ここでは、Side View(側面図)とTop View(上面図)の両方を図示している。一点鎖線は、レーザ光が縮小投影光学系により対象物(S)に照射される様子を示し、当該照射を受けた10×10[μm]の領域の光吸収層(図示省略。)はレーザ光を吸収し、アブレーションされ、衝撃波を発生し、これにより同一領域の対象物が対向するレセプター基板にリフトされる。図示された対象物は3つだが、本実施例1の場合、合計300個の対象物がレセプター基板に向け一度にリフトされる。
【0091】
本実施例1においては、レーザ装置は200[Hz]で発振しており、また、リフトは1ショットで行われるため、レセプターステージ(Yr)は次の照射位置までレセプター基板を速度6[mm/s]にて-Y方向に停止することなく走査させる。
【0092】
他方、ドナーステージのY軸(Yd)は、前記レセプターステージのY軸(Yr)との位置の同期を図りながら、ドナー基板を速度3[mm/s]にて同じく-Y方向に停止することなく走査させる。すなわち、YdとYrの移動速度比(ギア比)は、1:2である。各々の基板が移動した2ショット目の様子を
図9Bに示す。
【0093】
YrとYdの位置の同期は、Yrを基準(マスター)、Ydを従属(スレーブ)とし、ステージシステムのギアコマンドを用い、両ステージをギアモード同期動作させることで行う。制御系にはプログラマブル多軸制御装置を用いる。
【0094】
加えて、前記ギアコマンドにおけるギア比の決定のために、レーザ干渉計によるステージ位置の実測値を用いる。Yrの移動テーブルと共に移動し且つレセプター基板の近傍にレーザ干渉計を構成するコーナーキューブ(Ic)を取り付け、波長632.8[nm]のHe-Neレーザ(IL)及び受光部(
図5Aにおいて図示省略。)を石定盤2(又は同等の不動位置)に設置する。同様に、Ydの移動テーブル側面にコーナーキューブを取り付け、干渉計用レーザ及び受光部(
図5Bにおいて図示省略。)をXdに設置する。これらにより、各々のステージの正確な位置同期を実現する。
【0095】
前述のとおり、各ステージは、原点の位置において、既に安定した等速度運動となっているよう、原点の手前の位置から加速を始める。その加速時間内及びステージが原点に到達するまでの時間内は、ドナー基板にレーザ光が照射されないようレーザパルスが遮断されている必要がある。そこで、プログラマブル多軸制御装置からは、レーザ装置への外部発振トリガー又は高速シャッターの動作開始トリガー、及びステージ駆動信号を高精度に送信する。
【0096】
さらに、3ショット目の様子を
図9Cに示す。図からわかるとおり、ドナー基板(D)の移動距離に対し、レセプター基板(R)の移動距離が2倍である様子がわかる。この後も同様にレセプター基板とドナー基板の移動が進行していく。
【0097】
ドナー基板が-Y方向へ180[mm]走査し終わったところで、同じく、レセプター基板が-Y方向へ360[mm]走査し終わったところで、レーザ装置の発振は一旦停止し、又は高速シャッターでレーザ光の照射を遮断する。この距離の走査により、X軸方向に300個並ぶ対象物がレセプター基板のY軸方向に12000段、計360万個リフトされたことになる。
図10にその様子を示す。
【0098】
前記停止時間の内にレセプターステージのY軸(Yr)及びドナーステージのY軸(Yd)はいずれも原点に戻る。(但し、次の走査における加速距離を考慮するものとする。以下、同じ。)他方、ドナーステージのX軸(Xd)は、先の原点より-9[mm]の位置まで戻る。そして、新たな領域から再びリフト工程を開始する。以下、これを繰り返す。
【0099】
図11には、Xdが-9[mm]×20回分のステップ移動が終わったあと、今度は、先の原点(点線にて図示。)から-X方向に15[μm]の位置(実線にて図示。)に戻り、この点を新たな原点として同様の動作を始める直前の様子を示した。このあと、両ステージのY軸走査(180[mm](Yd)と360[mm](Yr))とXdの-9[mm]×20回のステップ操作を繰り返す。これにより、最初のXdの180[mm]走査(-9[mm]の20回ステップ移動)の間にレーザ光の照射を受けていない領域(図においては、次のレーザ光(LS)の照射予定領域を一点鎖線にて図示。)にレーザ光を照射し、ドナー基板上の対象物を無駄なく、且つ、より多くレセプター基板にリフトすることができる。
【0100】
なお、およその加工時間は、360[mm]/6[mm/s]×40[回]=2400[s]である。なお、この時間には、レセプターステージのY軸(Yr)がその加減速に要する距離を移動する時間及びY軸走査の度に原点に戻るまでの時間は含まれていない。また、エキシマレーザの繰り返し周波数を1[kHz]に上げることで、この加工時間は1/5に短縮可能である。
【0101】
図12に、本実施例1の装置構成により、レセプターステージのY軸(Yr)を基準(マスター)として移動速度150[mm/s]にて400[mm]の距離を、ドナーステージのY軸(Yd)を従属(スレーブ)として移動速度75[mm/s]にて200[mm]の距離を、同期をとって並進させた場合の両ステージの同期位置エラーを示す。具体的には、基準(マスター)としてのYrにおいて、そのリニアエンコーダから得られる位置情報とレーザ干渉計により計測した位置情報との誤差量(δYr)と、その1/2の速度で同期して移動する従属(スレーブ)としてのYdにおいて、そのリニアエンコーダから得られる位置情報とレーザ干渉計により計測した位置情報との誤差量(δYd)との差(ΔYdr=δYd-δYr)を、横軸をレセプターステージの移動速度に応じた経過時間としてプロットした。この結果からわかるとおり、400mmの移動距離にわたって±1[μm]以内の位置同期精度を達成している。
【0102】
本実施例1におけるレセプター基板への対象物のリフトパターンは、上述のとおり、10×10[μm]を間隔30[μm]にてマトリックス状にリフトしたものであるが、例えばこの間隔を60[μm]にすると、1枚のドナー基板で4枚のレセプター基板分のリフトが可能となる。
【実施例2】
【0103】
本実施例2においては、実施例1においてドナー基板表面上の対象物が、一葉の層状態であったものと異なり、同じくサイズが200×200[mm]のドナー基板上に、マトリックス状に形成された、1個の形状が10×10[μm]、間隔が15[μm]の合計144百万個の対象物を、サイズが400×400[mm]のレセプター基板に対しドナー基板の1/2の密度、すなわち、30[μm]の間隔で同じくマトリックス状に、リフトする実施例である。
【0104】
最終的にレセプター基板にリフトされる対象物の配置の様子は実施例1と同一であるが、本実施例2においては、予めドナー基板上にも2倍の密度で同様に対象物が配設されており、これを±1[μm]の位置精度にてレセプター基板上へリフトする点で異なる。そして、この場合、実施例1と比較し、ドナーステージのY軸(Yd)とレセプターステージのY軸(Yr)の位置同期精度がさらに厳密に求められることとなる。
【0105】
図13A乃至
図13Cにおいて、実施例1と同様に、原点位置にあるドナー基板(D)とレセプター基板(R)に、レーザ光(LS)の最初のパルスが照射された様子から3ショット目までの様子を示す。
【実施例3】
【0106】
本実施例3においては、ドナー基板表面上の対象物をレセプター基板にリフトする方法については実施例1又は2と同じである。他方、各ステージのY軸同士の平行度及びX軸同士の平行度、そして各々のY軸とX軸の直角度の調整方法が前記実施例とは異なる。すなわち、実施例1に記載した調整方法が、レセプターステージのY軸(Yr)と、ドナーステージのY軸(Yd)の平行度を調整するために、前記1)から6)の調整ステップを行うのに対し、本実施例3においては、そのYrとYdの平行度を、調整ステップの早い段階にて行うものである。
【0107】
1)Yr、θr、Zrの真直度
この調整ステップは、前記実施例1及び2にも共通する前提としての調整ステップである。石定盤2(G2)の上に設置されたレセプターステージのY軸(Yr)とその上に設置されたθ軸(θr)、同じくZ軸(Zr)及びレセプター基板のホルダーの真直度(水平面をXY平面としたときの鉛直方向であるZ軸に対する真直度)を、レーザ干渉計等を用いて調整する。なお、基本的にこの調整のあとは、レセプターステージ群の直角度に影響を与える可能性のある調整は行わず、他のステージの調整は全てこのレセプターステージ群の、例えばその最上面を基準に行う。
【0108】
2)YrとAR(Y)の平行度(YrとAR(X)の直角度)
実施例1の調整ステップ1)と同様に、レセプターステージのY軸(Yr)と調整基板AR上のアライメントラインYの平行度を調整する。これにより、YrとアライメントラインXとの直角度も調整されたことになる。なお、調整基板ARを用いることなく、Yrに直接描画等されたアライメントライン又はアライメントマークを用いる場合、この調整ステップ1)は省略できる。
【0109】
3)AR(X)とXdの平行度(YrとXdの直角度)
次に、調整基板ARのアライメントラインXを、ドナーステージのX軸(Xd)上に載置された光学ステージ(Xo)に設置された高倍率CCDカメラにより観察する。この高倍率CCDカメラのZ軸方向の位置は、投影光学系の設計によるものの、本実施例3においては投影レンズ(Pl)の位置近辺に投その影レンズを保持するZ軸ステージ(Zl)を用いて固定されている。Xdを400[mm]移動させ、アライメントラインXのY軸方向のズレ量が0.3[μm]以内に収まるように、石定盤1に対するXdの取り付け角度、すなわちYrに対するXdの直角度を、回転調整機構を用いて調整する。
【0110】
4)YrとYdのYZ平面内平行度
実施例1の記載においては、他の軸周り(X軸やY軸)についての調整ステップの記載は省略したが、ここでは、X軸周り、すなわちYZ平面内の平行度の調整ステップについて簡単に説明する。レセプターステージのZ軸(Zr)又はその他の部位に設置されたハイトセンサーを用いてドナーステージのY軸(Yd)の下面を観察する。YrとYdを同時に200[mm]以上同期して同一距離移動(並走)させ、ギャップセンサーによる測定値(ZrとYdの距離)の変動を観察する。その変動が5[μm]以内、又は投影レンズによる結像の焦点深度より十分小さい範囲に収まるように、XdとYd間に設置された回転調整機構と、Yd又はXdとの間にシム板を挿入し、YrとYd間のYZ平面内の平行度を調整する。
【0111】
5)YrとYdの平行度
Zr又はその他の部位に設置された高倍率CCDカメラにて、Ydの下面に設けたパターンマッチング用のアライメントマークを観察する。YrとYdを同期して同一距離移動(並走)させ、パターンマッチングされたアライメントマーク画像(十字マークなど。)の位置がX軸方向に移動する場合、これを修正するようXdとYd間に設置した回転調整機構を用いて調整する。なお、アライメントマークの代わりにドナーステージのY軸に取り付けた調整基板ADのアライメントラインYを用いることも可能である。
【0112】
6)YrとXoの直角度
前記調整ステップ1)にてレセプターステージのY軸(Yr)との直角度が調整された調整基板ARのアライメントラインXを、光学ステージ(Xo)に設置された高倍率CCDカメラにより観察する。Xoを400[mm]移動させ、アライメントラインXのY軸方向のズレ量が0.3[μm]以内に収まるように、Xdに対するXoの取り付け角度を、両者間に設置された回転調整機構を用いて調整する。
【実施例4】
【0113】
図2Aに、本実施例4のリフト装置の主要構成部分を示す。本発明のうち、第7の発明を基本的構成とするものである。なお、
図2A乃至2Cにおいてはレーザ装置、制御装置、その他モニター等の図示(これらは全て実施例1と同一。)は省略し、X軸、Y軸及びZ軸方向は図中に示した。また、本実施例4において用いるドナー基板、レセプター基板、並びに、リフト対象物のドナー基板上の配置及びレセプター基板へのリフト後の配置については、実施例2と同一である。
【0114】
エキシマレーザ装置からパルスレーザ光が出射しドナー基板上のリフト対象物に照射されるまでの光学系の様子は、以下に記載するとおり、
図1Aと
図2Aのそれぞれにて示す各ステージ群の構築の違いによって生じる部分を除き、実施例1と同様である。すなわち、
図1A乃至1Cが示す第6の発明に係るリフト装置の場合、石定盤1(G1)の上にドナーステージのX軸(Xd)、その上に光学ステージ(Xo)の順に載置されているのに対し、
図2A乃至2Cが示す第7の発明に係るリフト装置の場合、G1の上にXoが載置されG1の下にXdが吊設されている点が、これらステージ群の構築の違いである。
【0115】
エキシマレーザからの出射光はテレスコープ光学系に入射し、その先の整形光学系へと伝搬する。この整形光学系は、
図2Aに示すとおり、X軸方向に移動する光学ステージ(Xo)上に、その光軸が平行となるように設置されている。そして、Xoは、グライナイト製の石定盤1(G1)上に載置され、両者の間には回転調整機構(RP)を有している。ここで、Xoは、G1とは異なる石定盤2(G2)上に載置されたレセプターステージのY軸(Yr)と直角であり、ドナーステージのX軸(Xd)と並行である。なお、整形光学系に入射する直前のレーザ光は、Xoの移動に拘わらず概ね同一形状(概ね25×25[mm](縦×横、FWHM)になるようテレスコープ光学系により調整されている。
【0116】
ドナーステージのX軸(Xd)は、G1の下に吊設され、さらにドナーステージのY軸(Yd)を吊設する。また、それぞれの間には、回転調整機構を有している。
図2Bにおいて、G1に対し、XoとXdが同一距離を移動した様子を側面視にて示す。これにより、XoとXdのX軸上における相対的位置を変えることなく、Ydに対するX軸方向の位置を変えることができる。また、
図2Cにおいて、G1に対しXoのみ移動した様子を側面視にて示す。これにより、XdとXoのX軸上の相対的位置を変えることができる。
【0117】
その他の縮小投影光学系であるフィールドレンズ(F)、マスク(M)、投影レンズ(Pl)の詳細は、実施例1と同一であり、投影レンズから出射されたレーザ光は、ドナー基板の裏面から入射し、その表面(下面)に形成されたリフト対象物に向けて、前記マスクに描画されたパターンの1/5の縮小サイズにて正確に投影する。また、ドナー基板表面における結像の様子は実施例1と同様共焦点ビームプロファイラーにて行う。
【0118】
ドナー基板の表面に配置されたリフト対象物に対し前記のとおり縮小投影されたマスクパターンに基づき、当該リフト対象物が対向するレセプター基板にリフトされる際に、ドナー基板及びレセプター基板がどのように走査し、リフト対象物がどのようにレセプター基板上にリフトされるかについては
図6、
図10、
図11及び
図13A乃至13C、さらに、レセプターステージのY軸(Yr)とドナーステージのY軸(Yd)の移動における位置同期精度については、実施例1において示した
図12と同様である。
【0119】
さらに、各ステージのY軸同士の平行度及びX軸同士の平行度、そして各々のY軸とX軸の直角度の調整方法は、実施例3と同様である。すなわち、真直度の調整されたレセプターステージのY軸(Yr)を調整の基準とし、Yrと石定盤1(G1)から吊設されるドナーステージのX軸(Xd)との直角度を、レセプターステージのZ軸(Zr)に固定された高倍率CCDカメラにより観察し、G1とXd間の回転調整機構(RP)により調整する。そして、調整されたXdに吊設されたドナーステージのY軸(Yd)とYrとの平行度を、同じく高倍率CCDカメラにより観察し、XdとYd間のRPにより調整する。最後に、光学ステージ(Xo)とYrの直角度を、Xoと共に移動する高倍率CCDにより観察し、G1とXo間のRPにより調整する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
ディスプレイの製造装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
AD ドナーステージ用調整用基板
AR レセプターステージ用調整用基板
BP 共焦点ビームプロファイラー
CCD 高倍率カメラ
D ドナー基板
F フィールドレンズ
G 基礎定盤
G1 定盤1
G11 定盤11
G12 定盤12
G2 定盤2
G3 定盤3
H 整形光学系
Ic レーザ干渉計用コーナーキューブ
IL レーザ干渉計用レーザ
LS レーザ光
M マスク
Pl 投影レンズ
R レセプター基板
RP 回転調整機構
S 対象物
TE テレスコープ
Xd ドナーステージのX軸
Xo 光学ステージ(X軸)
Yd ドナーステージのY軸
Yl 投影レンズとカメラの切り替えステージ
Yr レセプターステージのY軸
Zl 投影レンズのZ軸ステージ
Zr レセプターステージのZ軸
θd ドナーステージのθ軸
θr レセプターステージのθ軸