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特許7328755野菜細片を含む衣用組成物及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】野菜細片を含む衣用組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20230809BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230809BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230809BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/00 F
A23L5/00 H
A23L5/10 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018229913
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089333
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】株式会社ニッスイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大條 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山村 宏
(72)【発明者】
【氏名】丸山 聖也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 絵理
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 圭樹
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-189069(JP,A)
【文献】特開2005-348601(JP,A)
【文献】特開平05-103643(JP,A)
【文献】特開昭62-190060(JP,A)
【文献】特開昭54-163847(JP,A)
【文献】特開昭59-120059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺3mmのダイス状に細断した場合の離水率が3重量%以上である野菜を一辺2~10mmのダイス状、直方体または三角柱に細断した細断野菜と、
付着防止剤として、一辺3mmのダイス状に細断した細断野菜に12重量%添加して混合した10分後に、細断野菜同士が付着せず、8mm径のメッシュを76重量%以上通過させることができる食用粉体と、
の混合物であって、
前記食用粉体が、コーンフラワー、植物性タンパク質、クラッカーパン粉、ドライパン粉、及びタピオカのリン酸架橋澱粉から選択される1種又は2種以上である、食品の衣用組成物。
【請求項2】
一辺3mmのダイス状に細断した場合の離水率が3重量%以上である野菜を一辺2~10mmのダイス状、直方体または三角柱に細断した細断野菜と、
付着防止剤として、コーンフラワー、植物性タンパク質、クラッカーパン粉、ドライパン粉、及びタピオカのリン酸架橋澱粉から選択される1種又は2種以上と、
の混合物である、食品の衣用組成物。
【請求項3】
前記食用粉体が、コーンフラワー、植物性タンパク質、ドライパン粉、及びタピオカのリン酸架橋澱粉から選択される1種又は2種以上である、請求項1の衣用組成物。
【請求項4】
細断野菜に対して付着防止剤を1重量%以上含有する、請求項1ないし3いずれかの衣用組成物。
【請求項5】
野菜が、生の野菜、又は、加熱処理、冷凍解凍処理、乾燥品の水戻し処理の少なくともいずれかの処理をされた野菜である、請求項1ないし4いずれかの衣用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかの衣用組成物を食品の衣として付着させ、加熱処理することを特徴とする加工食品の製造方法。
【請求項7】
加工食品が油ちょう食品、焼成食品又は蒸煮食品である請求項6の方法。
【請求項8】
食品が畜産物、水産物、野菜、大豆製品、乳製品のいずれかである請求項6又は7の方法。
【請求項9】
食品にバッターを付着後、衣用組成物を付着させることを特徴とする請求項6ないし8いずれかの方法。
【請求項10】
請求項1ないし5いずれかの衣用組成物が付着していることを特徴とする加工食品。
【請求項11】
請求項1ないし5いずれかの衣用組成物が付着して、加熱処理されていることを特徴とする加工食品。
【請求項12】
さらに冷凍されている請求項10又は11の加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ちょう食品や蒸し食品などの衣として、野菜細片を用いるための方法に関する。詳細には、加工食品を大量生産する際に、野菜細片を衣素材として良好な状態に維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライの衣としては、パン粉が主流であるが、パン粉にナッツ類やパセリ、青海苔などの異なる素材を加えたものも多数工夫されている。野菜細片についても、油ちょう食品の揚げ衣として用いることが試みられている。
特許文献1には、「練り粉と細片材料でころもを付けた食品素材を有する冷凍食品、それも冷凍される前に予め揚げ処理済みの冷凍食品において、細片材料が生の根菜から得られたものであることを特徴とする冷凍食品。」が記載されている。
特許文献2には、「中身の芯具材と表面の衣具材との二層から成り、芯具材を衣具材と異なる材料で構成し、保形性のある芯具材に結着剤を付着し、切片状に細切りした衣具材を結着剤を介して芯具材の表面にまぶし付け、全体を加熱処理して、具材衣に切片状具材の細かい凹凸形状を浮き出させたことを特徴とする凹凸表面を有する具材衣被覆食品。衣具材が肉類、野菜類、パン類、穀物類などであることを特徴とする凹凸表面を有する具材衣被覆食品。」が記載されている。
特許文献3には、「フライ等のころも揚に供される揚材料の外周面全体を覆う水分含有のころもの一部に、野菜等の揚げて食することのできる小片が、その表面側がころもによって小片表面が外部から透けて見える程度に薄く覆われ、かつ前記野菜等の小片と揚材料とが凍結されたころもによって一体に結着されていることを特徴とする冷凍食品。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平5-16828号
【文献】特開平5-103643号
【文献】特開2000-189069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-3に記載のように、フライ食品の衣として野菜細片を用いることは知られているが、特許文献2及び3には、手作りで野菜細片を付着させることしか開示されていない。パン粉やナッツ類など乾燥物と異なり、野菜細片は水分を多く含むため、大量生産する場合に、衣素材として用いるには、何らかの工夫が必要となる。特許文献1は、野菜細片の表面に小麦粉などの粉をまぶすことが開示されている。
しかしながら、小麦粉をまぶしたのでは、まぶした直後は衣素材として機能するが、短時間のうちに、野菜の水分が出てきて、小麦粉がむしろ糊状になって野菜細片がくっつき衣素材として用いることができない状態になった。
本発明では、水分の多い野菜細片を衣素材として用いるため、特に大量生産に適した衣素材とする方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(1)~(5)の衣用組成物、(6)~(9)の加工食品の製造方法、及び(10)~(12)の加工食品を要旨とする。
(1)一辺3mmのダイス状に細断した場合の離水率が3重量%以上である野菜を細断した細断野菜に、付着防止剤として、細断野菜に12重量%添加して混合した際に、細断野菜同士が付着せず、8mm径のメッシュを通過させることができる食用粉体を混合することを特徴とする食品の衣用組成物。
(2)一辺3mmのダイス状に細断した場合の離水率が3重量%以上である野菜を細断した細断野菜に、付着防止剤として、トウモロコシ粉、大豆粉、植物性タンパク質、加工でん粉及びパン粉類から選択される1種又は2種以上を混合することを特徴とする食品の衣用組成物。
(3)細断野菜に対して付着防止剤を1重量%以上混合することを特徴とする(1)又は(2)の衣用組成物。
(4)細断野菜が、一辺が2~10mmに細断された野菜である(1)ないし(3)いずれかの衣用組成物。
(5)野菜が、生の野菜、又は、加熱処理、冷凍解凍処理、乾燥品の水戻し処理の少なくともいずれかの処理をされた野菜である(1)ないし(4)いずれかの衣用組成物。
【0006】
(6)(1)ないし(5)いずれかの衣用組成物を食品の衣として付着させ、加熱処理することを特徴とする加工食品の製造方法。
(7)加工食品が油ちょう食品、焼成食品又は蒸煮食品である(6)の方法。
(8)食品が畜産物、水産物、野菜、大豆製品、乳製品のいずれかである(6)又は(7)の方法。
(9)食品にバッターを付着後、衣用組成物を付着させることを特徴とする(6)ないし(8)いずれかの方法。
(10)(1)ないし(5)いずれかの衣用組成物が付着していることを特徴とする加工食品。
(11)(1)ないし(5)いずれかの衣用組成物が付着して、加熱処理されていることを特徴とする加工食品。
(12)さらに冷凍されている(10)又は(11)の加工食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、水分の多い野菜細片を用いる場合でも、野菜の水分を制御して、相互に付着せず、べた付きが抑制された、衣素材として適した物性を有する野菜細片を含有する組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「一辺3mmのダイス状に細断した場合の離水率が3重量%以上の野菜」とは、野菜を一辺3mmのダイス状に細断して、ろ紙の上に重ならないように広げ10分間放置後、野菜を除去し、ろ紙に吸収された水分の重量を測定し、下記式により得た数値を離水率とし、それが元の野菜の重量の3重量%以上となる野菜である。
離水率(重量%)=ろ紙に吸収された水分の重量(g)/元の野菜の重量(g)×100
【0009】
野菜の離水率が3重量%以上になるかどうかは、野菜の種類だけでなく、野菜の部位、野菜の処理方法によって決まる。もともと水分の多い野菜であれば、生でも離水率が3重量%以上になる。また、生では離水率が低い野菜であっても、加熱、冷凍解凍、あるいは乾燥品を水で戻すなどの処理により、それら野菜の離水率は高くなる。野菜の種類は問わず、果菜類、葉菜類、根菜類又は菌茸類などに分類される、いずれの野菜であっても水分が多い野菜であれば、本発明の対象となる。例えば、ニンジン、ジャガイモなどは生の場合、離水率は3重量%未満となるが、加熱処理や冷凍解凍したものでは3重量%以上となる。また、干し野菜を水戻ししたものなどは、離水率3重量%以上となる。
野菜としては、パプリカ、ピーマン、ナス、キュウリ、サヤインゲン、サヤエンドウ、ニンニク、タマネギ、セロリ、トマト、チンゲンサイ、大根、カブ、ブロッコリー、白菜、キャベツ、小松菜、ホウレンソウ、春菊、ヨモギ、トウモロコシ、シソ、パセリ、シイタケ、マッシュルーム、レタス、ショウガ、アスパラガス、ネギ、ビーツ、ゴボウ、カボチャ、モヤシ、モロヘイヤ、枝豆、ユズ、ニガウリ、山芋、サツマイモ、ジャガイモ等が例示される。
【0010】
野菜は衣として用いるのに適したサイズに細断する。通常の食品に用いるのであれば、一辺が2~10mmに細断された野菜が適する。手切り、もしくはスライサー、ダイスカット機等の装置を用いて、一辺2~10mmのダイス状、あるいはそれと同程度のサイズにするのが好ましい。ダイス状以外に、ランダムにカットする、あるいは、直方体、三角柱などの形状もとりうる。
【0011】
細断した野菜をそのまま用いることもできるが、水分が多すぎる場合は、脱水処理をしてから用いることもできる。野菜から離水してくる水分を、遠心分離機による分離、吸着物に吸着させるなどの方法により、分離することができる。また、適量の塩を振ってから、脱水することもできる。好ましくは、離水率が20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、7重量%以下になるように脱水処理をするのが好ましい。
【0012】
細断野菜に混合する付着防止剤は、「細断野菜に12重量%添加して混合した際に、細断野菜同士が付着せず、8mm径のメッシュを通過させることができる食用粉体」を用いる。12重量%程度の粉体は細断野菜の表面を薄くカバーし、付着を抑制するのに適した量である。また、衣として用いた際に野菜の密度が十分で野菜を主体とした衣となる。12重量%程度を添加して、細断野菜同士が付着しない粉体を用いることにより、大量生産する加工食品の製造に適した衣用組成物を得ることができる。
具体的には、付着防止剤として適した食用粉体として、トウモロコシ粉(コーンフラワー、コーンミール、コーングリッツ)、大豆粉、植物性タンパク質、加工澱粉及びドライパン粉やクラッカーパン粉などのパン粉類が例示される。加工澱粉には各種の加工があるが、リン酸架橋澱粉などが好ましい。
【0013】
付着防止剤は、細断野菜の水分によるが、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、あるいは5重量%以上、好ましくは10重量%以上、混合するのが好ましい。付着防止の効果は12重量%程度で十分であるが、野菜の食感だけでなく、粉体の食感も生かす目的で多く使用してもよく上限はない。1~50重量%、3~40重量%、好ましくは5~35重量%、10~30重量%である。
【0014】
上記のように付着防止剤を混合した細断野菜は、通常のパン粉のようにフライ食品などの衣として用いることができる。各種畜産物、水産物、野菜、大豆製品、乳製品などを原料とする中種にバッターを付けた後、本発明の細断野菜を付着させ、油ちょう、焼成、蒸煮などの加熱処理を行う。粘着性のある中種に付着させる場合は、打ち粉、バッター等を用いず、直接付着させることもできる。粘着性のある中種としては、つくね、つみれ、肉団子、ハンバーグなど練り肉を含むような食品が例示される。
野菜のみを衣に用いるよりも、粉体が存在することにより、打ち粉の効果がありバッターに付着しやすく、油ちょう時に野菜がはがれにくくなり、野菜が過加熱されにくいなどの副次的なメリットもある。
【0015】
本発明の付着防止剤と混合した細断野菜には、さらに、通常のパン粉、クラッカー粉、ナッツ、ドライ野菜、ドライハーブなどを添加して用いることもできる。
【0016】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
ニンジン、レンコン、パプリカをダイスカット機を用いて、それぞれ3mm角のダイス状に細断し、混合後、食品用高速脱水機(株式会社エムラ販売)にて、中速で1分半脱水した。さらに1.2重量%の食塩を添加し、5~10分置いた後、再度脱水した。脱水後の細断野菜に12重量%のコーンフラワーを加え撹拌した。さらにmediumサイズのクラッカー粉を15重量%混合し、衣用組成物を調製した。
鶏むね肉を7~11gの大きさのダイス状に細断し、調味液により下味をつけた。鶏むね肉100kgに打ち粉3.2kg、バッター液10.24kgを付けたのち、前記衣用組成物64kgを付着させ、165℃の植物油にて1分油ちょう後、蒸気で芯温が75℃以上になるよう蒸し、再度165℃の植物油で45秒油ちょうした。冷却後、-18℃で冷凍保存した。
【0018】
上記の方法により、1個当たり15~17gほどの、細断野菜の衣がついた直径2.5cm程度のミートボールを製造することができた。細断野菜の衣は剥がれることなく、肉の表面を覆うことができた。また、製造中、衣用組成物はバッター等の水分により塊になることもなく、通常のパン粉を付けるのと同様の操作性を有するものであった。コーンフラワーが加熱後も野菜に適度な食感を与え、さらにクラッカーパン粉の存在により、全体にサクサクした食感を付与することができた。
【実施例2】
【0019】
3mmダイス状に細断したニンジンとパプリカ、それぞれ50gに表1に記載の粉体を野菜重量の12重量%混合し均一になるまで軽くかきまぜた。混合直後及び10分後に目開き8mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社、Test sieve試験用ふるい JIS Z 8801)に載せ、手で軽く15回振って、メッシュを通過した重量を測定した。通過した重量の割合を表1に示した。
用いた野菜は洗浄後、洗浄による水分は除去したものを用い、ダイサーを用いて細断した。パプリカの脱水は、手動の野菜用脱水器(パール金属社製)で10秒×2回行った。
小麦粉は日東富士製粉社製アルプス、コーンスターチはAsia modified starch Co.,Ltd製corn starch、米粉は日本製粉社製米粉、粉末状植物性タンパク質はSolae L.L.C.のSupro 515IP、コーンフラワーは日本製粉社製コーンフラワー、クラッカーパン粉はグリフィス社製Breadcrumb T04636A、ドライパン粉は山東東営半球久明食品有限公司製白ドライパン粉(干白糠BB03-3)を使用した。
【0020】
表1に示すように、野菜のみの場合、水分の少ないニンジンでは、3mmダイス状に細断しても、野菜同士が付着して塊になることはなかったが、水分が多く軽いパプリカでは水分により塊となり、メッシュ通過率は60%であった。
粉体をまぶした場合、ニンジンのような水分の少ない野菜では、いずれの粉体をまぶしても、混合直後は、すべてメッシュを通過した。10分後であっても、小麦粉を用いた場合、野菜から染み出す水分により粘り気が生じ、野菜同士が付着し、メッシュ通過率は77%となったが、おおむね独立した状態が保たれていた。パプリカのような水分が多い野菜の場合、小麦粉、コーンスターチ、米粉では、混合直後から粘り気が生じ、メッシュ通過率が低くなり、衣付けに用いるのが困難な状態となったが、コーンフラワー、植物性タンパク質、クラッカーパン粉、ドライパン粉では、野菜同士が付着せず、衣付けに適した状態が保たれていた。
脱水工程の有無は、生のパプリカで粉体添加量が12重量%の場合、特に差はみられなかった。
【0021】
【表1】
【実施例3】
【0022】
粉体の量の影響を確認するために、小麦粉とコーンフラワーについて、粉体添加量を野菜重量の5重量%と25重量%についても実施例2と同様の方法で、メッシュ通過率を測定した。実施例2の12重量%添加の結果と共に、結果を表2に示した。
小麦粉の場合、添加量を増やすほどに濡れた小麦粉が糊として働き、メッシュ通過率はより低くなった。一方、コーンフラワーでは多くするほど、野菜一粒ずつの表面に付着して、塊になるのを防ぐことができた。
【0023】
【表2】
【実施例4】
【0024】
3mmダイス状にカットしたパプリカを用いて、脱水した野菜と脱水しない野菜から出る水分量を測定した。脱水は、遠心力を用いる手動の野菜用脱水器で10秒×2回行った。カットした野菜とカット後脱水した野菜をそれぞれ10gずつ、ろ紙の上に重ならないように広げ10分間放置後、野菜を除去し、ろ紙に吸収された水分の重量を測定した。
結果を表3に示した。パプリカの場合、脱水無しでは、10gの野菜から1.18gの水分が出たのに対し、脱水した場合、0.56gの水分量となり、脱水により染み出す水分を低下させることができた。離水率は、脱水無しでは、11.8重量%、脱水有りでは、5.6重量%であった。
【0025】
【表3】
【実施例5】
【0026】
実施例4と同様の方法で、ニンジン、ジャガイモについて、生、ボイル品、冷凍解凍品の野菜からでる水分量を測定した。3mmダイス状にカットした人参、ジャガイモを使用した。ボイル品としては沸騰水で1分半加熱後、冷水で冷却したものを使用した。冷凍解凍品としては、生の野菜を-18℃以下で冷凍後、流水で解凍したものを使用した。
結果を表4に示した。ニンジンやジャガイモ等は生では水分量が低いため、粉体無しでも付着しにくく、小麦粉のような粘り気が生じやすい粉体でも使用できるが、ボイル品や冷凍解凍品では、脱水したパプリカに近い水分量となることが確認された。本発明の方法は、水分量の多い野菜だけでなく、ボイルや冷凍解凍処理を行って、染み出す水分量が多くなった野菜につても適している。
【0027】
【表4】
【実施例6】
【0028】
3mmダイス状に細断したニンジンとパプリカの冷凍・解凍品について、遠心力を用いる手動の野菜用脱水器で10秒×2回、脱水を行った。脱水後、野菜にそれぞれ付着防止剤として、コーンフラワーを重量比12%混合し、衣用組成物を調製した。
3~5gにカットした鶏胸肉に、打ち粉、バッター、衣用組成物(野菜)の順で衣付けした。打ち粉には、小麦粉を用い、バッターには、でん粉(25%)、小麦粉(21%)、調味料(4%)、卵(1%)、乳化油脂(1%)、水(48%)を混合して用いた。
衣付けした鶏肉を160℃で1分油ちょうし、衣用組成物の落下状況を確認した。
比較例には、脱水したのみで、コーンフラワーを混合していない野菜を衣用組成物の代わりに用いた。
結果を表5に示した。胸肉100g当たりに付着した衣用組成物の重量と、それらから油ちょう中に剥がれ落ちた、衣用組成物の量を示した。付着防止剤を用いることにより野菜同士が付着することを防止するだけでなく、野菜を衣として用いた際に脱落しにくくする効果があることを確認した。
【0029】
【表5】
【実施例7】
【0030】
加工澱粉として、タピオカのリン酸架橋澱粉(National Starch & Chemical (Thailand) Ltd.のTEXTAID A)を用いて、実施例2と同様の試験を行ったところ、ドライパン粉と同程度の効果を示した。
また、粉末状のジャガイモ粉(松田産業製の乾燥ポテトグラニュールス)についても実施例2と同様の試験を行ったところ、パプリカに対しては、水分を吸ってダマになってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、水分の多い野菜を油ちょう食品などの衣用として、大量生産に用いるのに適した状態で用いることができる組成物を提供することができる。各種野菜をフライなどの衣として用いることができる。