(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】生体関連サンプル及び生体関連器具の清浄度測定キット及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/48 20060101AFI20230809BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20230809BHJP
C12Q 1/42 20060101ALI20230809BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20230809BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z
C12Q1/66
C12Q1/42
C12Q1/34
G01N21/76
(21)【出願番号】P 2018567525
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004721
(87)【国際公開番号】W WO2018147442
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017022020
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017059008
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017156631
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017192752
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月21日にウェブサイト(アドレス:htts://iafp.confex.com/iafp/2017/webprogram/Paper14337.html)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月21日に開催されたルシパック発売20周年記念特別講演会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月1日に発行された月刊HACCP、6月号第23巻6号、第100~108頁に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月23日に開催された日本防菌防黴学会・女性研究者の会第16回学術講演会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月30日に開催された第92回日本医療機器学会大会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月18日に発行された日経産業新聞第14頁に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月5日に発行されたジャパンフードサイエンス4月号、Vol.56、No.4、49頁に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日にウェブサイト(アドレス:http://biochemifa.kikkoman.co.jp/pdf/j/j_iryou/iyou4.pdf)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月1日に開催されたアズワン株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月2日に開催されたアズワン株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月5日に開催された東レ・メディカル株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月30日に開催された第92回日本医療機器学会大会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月14日~6月16日に開催されたAssociation for Professional in Infection Control and Epidemiology,44th Annual Conference 2017にて展示
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月9日~7月12日に開催されたThe International Association for Food Protection 2017にて展示
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日に発行された医療メインパンフレットに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月3日に発行された医療メインパンフレット(日水製薬株式会社社名ロゴ入り)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月30日に発行された医療メインパンフレット(アズワン株式会社社名ロゴ入り)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月10日に発行された医療メインパンフレット(東レ・メディカル株式会社社名ロゴ入り)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月16日に開催された株式会社アルボースセールス向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月20日に開催された第110回ルミテスターセミナーにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日に発行された医療メインパンフレットに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日に発行された医療メインパンフレットに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月30日に発行された医療メインパンフレットに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月30日に開催されたHo Chi Minh City University Medical Center勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月30日に開催されたHo Chi Minh City University Medical Center勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月14日にウェブサイト(アドレス:http://www.kikkomana3.com/)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月14日に発行された医療メインパンフレットに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月10日に開催されたサラヤ株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月13日に開催された株式会社カーク向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月26日に開催されたサラヤ株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月4日に開催された東レ・メディカル株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日に「発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書」に添付の書面に記載の国内及び海外代理店にルシパック A3 Surface、ルシパック A3 Surface 40、及びルシパック A3 Waterを販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月22日に開催された内視鏡感染管理セミナー高松にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月27日に開催された内視鏡感染管理セミナー東京にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月30日に開催された内視鏡感染管理セミナー札幌にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月21日に開催された中国衛生代理店Boppard社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月10日に開催された中国衛生代理店Boppard社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月1日に発行された日本食糧新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月27日に発行された食品産業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月8日に発行された食品産業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月10日に開催されたThe International Association for Food Protection 2017にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月24日に開催された第111回ルミテスターセミナーにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月29日に開催された第112回ルミテスターセミナーにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月24日に開催されたジャパン・インターナショナル・シーフードショーにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月10日に開催された衛生検査推進協会勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月19日に開催された株式会社神戸物産勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月25日に開催されたMicrogenietix社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月26日に開催されたMacroAsia社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月29日に開催されたVissan Joint Stock Company社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月30日に開催されたNissin Foods Vietnam社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月31日に開催されたVietnam Nissin Seifun社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月15日に開催されたAcorn Scientific社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月16日に開催されたFoodcare System社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月7日に開催されたLuminUltra社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月10日に開催されたSabeco社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月4日に開催された株式会社サンリツ勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月17日に開催されたサラヤ株式会社向け勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月18日に開催されたアルボース株式会社勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月9日に開催された株式会社IPLジャパン勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月12日に開催された株式会社バハール勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月16日に開催されたアルボース株式会社勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月10日に開催されたアルボース株式会社勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月26日に開催された東京サラヤ株式会社勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月17日に開催された大井町立学校給食センター勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月31日に開催された二の宮町立学校給食センター勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月3日にウェブサイト(アドレス:http://biochemifa.kikkoman.co.jp/pdf/j/j_jirei/atpamp.pdf)に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月22日に開催された株式会社バーテック勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月29日にコープミート千葉にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月25日に開催されたシニアライフ財団商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月22日に開催された昭和鶏卵商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月21日に開催された呉中央水産株式会社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月6日に開催されたカゴメ那須研究所商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月5日に開催されたおいしい環境づくり株式会社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月10日に開催された株式会社トリリオン商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月1日に開催された株式会社LEOC商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月27日にサクサ株式会社にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月19日に開催されたイビデン株式会社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月7日に開催されたADEKAクリーンエイド株式会社勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月23日に開催されたケニス株式会社商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月20日に開催された高知県水産部商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月12日に開催された漁港漁場漁村総合研究所商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月1日に開催された静岡県水産技術研究所商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月29日に開催された大阪府水産課商談にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年7月12日に開催された茨城県水産試験場講習会にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月28日に開催された井藤漢方製薬講習会にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月8日に開催された茨城県磯崎漁港勉強会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月8日に開催された日水製薬株式会社勉強会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 繁哉
(72)【発明者】
【氏名】一柳 悠子
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-512151(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002892(WO,A1)
【文献】特開平11-069997(JP,A)
【文献】特開2010-284297(JP,A)
【文献】特開平10-262697(JP,A)
【文献】特表2007-530025(JP,A)
【文献】特開2001-204496(JP,A)
【文献】大迫しのぶ ほか,ATP+AMP量を指標とした上部消化管内視鏡チャンネル内の汚染と洗浄消毒の評価,日本環境感染学会誌,2016年,Vol. 31,pp. 285-291
【文献】鈴木繁哉 ほか,洗浄剤を抽出液に用いた抽出ATP+AMP検出法による医療機器洗浄度評価方法の検討,医療機器学,2014年,Vol. 84,p. 254
【文献】Rakotonirainy, M. S. et al.,"Development of a new procedure based on the energy charge measurement using ATP bioluminescence assay for the detection of living mould from graphic documents",Luminescence,2008年,Vol. 23,pp. 182-186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/00-33/98
G01N 21/62-21/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄された、医療器具、手術器具、内視鏡、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、手術台、洗浄槽、衣類、又は保護用具の清浄度を測定するためのキットであって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含
み、
ATP及びADPを測定するための、前記キット(ただしRNA分解酵素を含むキットは除く)。
【請求項2】
ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
さらに、AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素を含む、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ(ADK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)である、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
洗浄された、医療器具、手術器具、内視鏡、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、手術台、洗浄槽、衣類、又は保護用具の清浄度を測定するためのキットであって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含む、前記キット(ただしRNA分解酵素を含むキットは除く)。
【請求項6】
前記AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)であり、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素が、ADP依存性ヘキソキナーゼ又はアピラーゼである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
洗浄された、医療器具、手術器具、内視鏡、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、手術台、洗浄槽、衣類、又は保護用具の清浄度を測定する方法であって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用
し、
ATP及びADPを測定する、前記方法(ただしRNA分解酵素を含む方法は除く)。
【請求項8】
ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ(ADK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
洗浄された、医療器具、手術器具、内視鏡、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、手術台、洗浄槽、衣類、又は保護用具の清浄度を測定する方法であって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する、前記方法(ただしRNA分解酵素を含む方法は除く)。
【請求項12】
前記AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)であり、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素が、ADP依存性ヘキソキナーゼ又はアピラーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ADPを含まない、請求項1~6のいずれか1項に記載のキット。
【請求項14】
測定系にADPを添加しない、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連サンプル及び生体関連器具の清浄度測定キット及び方法、例えば血液関連サンプル及び血液関連器具の清浄度測定キット及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体由来の物質(液又は固体)は、病原菌やウイルス感染の原因となり得るため、生体関連サンプルを取り扱う器具や環境は清潔であることが必要とされる。特に血液は、ウイルス感染の原因となる等の理由から、医療の現場では取り扱いに注意を要する。また、手術器具、手術台、内視鏡、衣服、手袋などの血液関連器具や医療関連器具、及び寝台、ベッド柵、ドアノブ、スイッチ、ナースコールボタン等の環境は清浄に保たれていることが、患者や医療関係者の安全面から重要である。
【0003】
生体関連サンプルや生体関連器具、又は環境に生体由来の物質が付着又は残留しているかを調べるには、生体由来の物質に特徴的な物質を測定する方法が用いられる。例えば血液関連器具や医療関連器具、又は環境に血液が付着したか否か、或いは残留しているか否かを調べるには、血液に特徴的な物質を測定する方法が用いられる。生体由来の物質はアデノシン三リン酸(以下、ATPという)を含むことが知られており、特に血液はATPを多く含むことが知られている。
【0004】
代表的なATP測定法としては、ルシフェラーゼの存在下でATPと基質ルシフェリンを反応させ、発光を測定する方法が知られている(非特許文献1)。この反応はルシフェラーゼにより触媒され、2価金属イオンの存在下で以下のように進行する。
ルシフェリン+ATP+O2→オキシルシフェリン+アデノシン一リン酸(AMP)+ピロリン酸(PPi)+CO2+光
ルシフェラーゼは細菌、原生動物、軟体動物、昆虫などに見出される。ルシフェラーゼを有する昆虫としては甲虫、例えばホタルやコメツキムシが挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子は多数単離されておりその塩基配列も決定されている。
【0005】
特許文献1は血液検体のATPを測定する方法を記載している。
特許文献2は、ATP、アデノシン一リン酸(AMP)及びアデノシン二リン酸(ADP)を測定する清浄度検査法を記載している。この方法には、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、ピロリン酸(PPi)、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩、並びにピルビン酸キナーゼ(PK)が使用されている。測定サンプルは酵母エキス、牛肉エキス、麦芽エキス、ビール、牛乳、ご飯、豚肉である。
【0006】
特許文献3は疲労の判定法を記載している。実施例では、採取された全血や血漿、赤血球について、タンパク変性剤であるトリクロロ酢酸(TCA)を添加してATP分解酵素を失活させ、その直後に試料に含まれるADP、ATP及びAMPの量を測定している。
【0007】
特許文献4はPPDK及びその製造方法を記載している。
特許文献5はATP及びAMPの測定方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-042156
【文献】特開平11-69997
【文献】国際公開第2005/012903号
【文献】特開平8-168375(特許第3181801号)
【文献】特開平9-234099(特許第3409962号)
【非特許文献】
【0009】
【文献】Marlene DeLuca, William D. McElroy, Biochemistry, 1974, 13 (5), pp 921-925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、血液関連サンプルに含まれるATPがどのように経時的に分解されるかを調べるために、希釈血液サンプルについて残留ATPを測定したところ、初期に100%であったものが、25℃、数十分で約5~10%まで分解されることを見出した。すなわち、本発明者らは血液関連サンプルについて、ATPのみを測定したのでは残留又は付着している血液を正確に評価できないことを見出した。したがって本発明は、ATP分解活性の影響を受けにくい、正確な血液由来汚染の検出方法を提供することを課題とする。
【0011】
さらに本発明者らは、ATPが分解された可能性のあるサンプルについて、残存するATPがどのように経時的に変化するか種々の期間加熱したサンプルを用いて測定を行ったところ、初期に100%であったものが、80℃、120時間で約50%まで分解されることを見出した。すなわち、本発明者らはATPが分解された可能性のある生体由来の物質について、ATPのみを測定したのでは残留又は付着する生体由来の物質を正確に評価できないことを見出した。したがって本発明は、ATP分解活性の影響を受けにくい、正確な生体由来汚染の検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
血液関連器具等について、ATPのみを測定したのでは残留血液や付着血液を正確に評価できない。また、ATPが分解された可能性のある生体由来の物質に関する生体関連器具等について、ATPのみを測定したのでは残留する生体由来の物質や付着物を正確に評価できない。そこで本発明者らは、次に血液希釈サンプルについてATP+ADP、又はATP+ADP+AMPがどのように経時的に分解されるかを調べたところ、初期100%であったものが、驚くべきことに25℃で数十分でも90~95%程度(ATP+ADP)又はほぼ100%(ATP+ADP+AMP)維持されることを見出した。したがって本発明者らは、血液関連器具等について残留血液や付着血液を検出するには、ATP単独ではなく、ATP及びADP、又は、ATP、ADP及びAMPを測定することにより正確な検出を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
また別の実施形態において本発明者らは、長時間加熱したサンプルについてATP+ADP、又はATP+ADP+AMPがどのように経時的に分解されるかを調べたところ、初期100%であったものが驚くべきことに、80℃で8時間後でも70~95%程度(ATP+ADP)又は90~100%(ATP+ADP+AMP)維持されることを見出した。また、本発明者らは、加熱されたサンプルについてのATP+ADPの経時変化と、ATP+AMPの経時変化を比較したところ、驚くべきことに、ATP+AMPよりもATP+ADPの方が安定していることを見出した。したがって本発明者らは、長時間の加熱を経た生体関連器具等について残留する生体由来の物質や付着物を検出するには、ATP単独ではなく、ATP及びADP、又は、ATP、ADP及びAMPを測定することにより、さらに正確な検出を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は以下の実施形態を含む:
[1] 血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度を測定するためのキットであって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含む、前記キット。
[2] 生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度を測定するためのキットであって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含む、前記キット。
[3] ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択される、1又は2に記載のキット。
[4] さらに、AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素を含む、1~3のいずれかに記載のキット。
[5] 前記AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ(ADK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)である、4に記載のキット。
[6] 血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度を測定するためのキットであって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含む、前記キット。
[7] 生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度を測定するためのキットであって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含む、前記キット。
[8] 前記AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)であり、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素が、ADP依存性ヘキソキナーゼ又はアピラーゼである、6又は7に記載のキット。
[9] 前記血液関連サンプルが、血液が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記血液関連器具が、血液が付着又は残留する可能性のある器具である、1、3~6及び8のいずれかに記載のキット。
[10] 前記生体関連サンプルが、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記生体関連器具が、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着又は残留する可能性のある器具である、2~5及び7~8のいずれかに記載のキット。
[11] 前記生体関連サンプルが、汗が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記生体関連器具が、汗が付着又は残留する可能性のある器具である、10に記載のキット。
[12] 前記血液関連器具又は生体関連器具が、内視鏡である、1~8のいずれかに記載のキット。
[13] 血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度を測定する方法であって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する、前記方法。
[14] 生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度を測定する方法であって、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する、前記方法。
[15] ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択される、13又は14に記載の方法。
[16] さらに、AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素を含む、13~15のいずれかに記載の方法。
[17] 前記AMPからADP又はATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ(ADK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)である、16に記載の方法。
[18] 血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度を測定する方法であって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する、前記方法。
[19] 生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度を測定する方法であって、AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する、前記方法。
[20] 前記AMPからATPを生成する反応を触媒する酵素が、ピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)であり、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素が、ADP依存性ヘキソキナーゼ又はアピラーゼである、18又は19に記載の方法。
[21] 前記血液関連サンプルが、血液が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記血液関連器具が、血液が付着又は残留する可能性のある器具である、13及び15~18及び20のいずれかに記載の方法。
[22] 前記生体関連サンプルが、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記生体関連器具が、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着又は残留する可能性のある器具である、14~17及び19~20のいずれかに記載の方法。
[23] 前記生体関連サンプルが、汗が付着又は残留する可能性のあるサンプルである、或いは前記生体関連器具が、汗が付着又は残留する可能性のある器具である、22に記載の方法。
[24] 前記血液関連器具又は生体関連器具が、内視鏡である、13~20のいずれかに記載の方法。
【0015】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-022020号、2017-059008号、2017-156631号、2017-192752号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱やpHや時間の経過やATP分解酵素によりATPが分解された試料についても、生体由来の物質、例えば血液に由来するATP、AMP、ADPを測定することができる。したがって本発明の効果として、生体関連サンプルや生体関連器具の清浄度を測定することができる。また、血液関連サンプルや血液関連器具の清浄度を測定することができる。また生体由来の物質、例えば血液若しくは固形物が付着又は残留したと疑われる環境を調べ、清浄度を測定することができる。また、長時間の加熱を経たサンプルや器具の清浄度を測定することができる。
【0017】
例えば手術器具や内視鏡は、洗浄槽や洗浄液に一定時間浸けた後、洗浄されることがある。洗浄後の手術器具や内視鏡についてATPのみを測定した場合、汚染が検出されない可能性があるが、本発明の知見によれば、それは必ずしも当該器具が清浄であることを意味するものではなく、汚染が残留している可能性がある。本発明の方法により、例えば洗浄後の医療器具や内視鏡について、ATP+ADP又はATP+ADP+AMPを測定し、ATPのみを測定した場合と比較して、より正確に清浄度を測定することができる。
【0018】
また生体関連器具は、洗浄工程に加熱工程や乾燥工程も含まれることがあるが、加熱又は乾燥後の器具についてATPのみを測定した場合、汚染が検出されない可能性があるが、本発明の知見によれば、それは必ずしも当該器具が清浄であることを意味するものではなく、汚染が残留している可能性がある。本発明の方法により、例えば加熱後の器具について、ATP+ADP又はATP+ADP+AMPを測定し、ATPのみを測定した場合と比較して、より正確に清浄度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】血液サンプルを50倍希釈し25℃で保存した場合の、発光量の経時変化である。
【
図2-1】pH 4における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(10時間)。
【
図2-2】pH 4における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(120時間)。
【
図3-1】pH 7における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(10時間)。
【
図3-2】pH 7における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(120時間)。
【
図4-1】pH 11における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(10時間)。
【
図4-2】pH 11における、加熱サンプルのATP分解を経時的に調べた結果である(120時間)。
【
図7】唾液サンプルを200倍希釈し保存した場合の、発光量の経時変化である。
【
図8】内視鏡を拭き取った綿棒を懸濁したサンプルを25℃で保存した場合の、発光量の経時変化である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ある実施形態において、本発明は生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度測定方法を提供する。別の実施形態において、本発明は血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度測定方法を提供する。ある実施形態において、本発明の方法は、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を使用する。該ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素は、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択され得る。別の実施形態において、本発明の方法はさらにピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)を使用する。
【0021】
また、ある実施形態において本発明は、生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度測定に用いるためのキットを提供する。別の実施形態において本発明は、血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度測定に用いるためのキットを提供する。本発明のキットはADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩、並びに場合により使用説明書を含む。該ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素は、ピルビン酸キナーゼ(PK)、酢酸キナーゼ(AK)、クレアチンキナーゼ(CK)、ポリリン酸キナーゼ(PPK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、及びフルクトースビスホスファターゼからなる群より選択され得る。別の実施形態において、本発明のキットはさらにピルベートオルトホスフェートジキナーゼ(PPDK)、アデニル酸キナーゼ又はピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)を含む。
【0022】
試料にATPが含まれると、これはルシフェラーゼによりAMPに変換されるとともに発光が生じる。試料にADPが含まれると、これはADPからATPを生成する反応を触媒する酵素によりATPに変換され、その後ATPが発光反応に供される。これにより系に存在するATP及びADPの総量を測定することができる。さらにPPDKが存在する系において、試料にAMPが含まれると、これはPPDK、PEP、PPiによりATPに変換される。或いはPWDKが存在する系において、試料にAMPが含まれると、これはPWDK、PEP、リン酸によりATPに変換される。生成したATPは再度、ルシフェラーゼにより発光する。発光は安定して維持され、発光量は系に存在するATP及びAMPの総量と相関することから、ATP及びAMPの定量が可能となる。ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素とPPDK、ADK又はPWDKが存在すると、ATP、ADP及びAMPの総量を測定することができる。PPDK等を用いる方法の利点は、低感度の装置でも、ルシフェラーゼで生成したAMPもATPに変換するため発光量が減衰することなく、安定して発光を測定できることである。
【0023】
試料にAMP及びATPが含まれると、これはアデニル酸キナーゼにより2分子のADPに変換される。次いで、生じたADP分子は、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素によりATPに変換され得る。生じたATPは、次にルシフェラーゼにより検出され得る。
【0024】
本発明者らが見出した知見によれば、生体由来の物質について、ATPのみを測定したのでは、正確に汚染を検出できない可能性がある。生体由来の物質はATPを含むが、ATPは比較的容易に脱リン酸化してADPになり得る。また本発明者らが見出した知見によればADPは高温で長時間保存しなければAMPに変換されない。ADPも最終的にはAMPになり得るが、本発明者らの知見によれば、生体由来の物質に由来するAMPの有するリン酸が脱リン酸化されてアデノシンとなるのは容易ではない。そのため、ATP及びADPの2成分、或いはATP、ADP及びAMPの3成分を測定すれば、生体由来の物質に含まれるATP(或いはその分解物)を安定して測定することができる。
【0025】
また、血液にはATP分解酵素やADP分解酵素が含まれるが、本発明者らが見出した知見によれば、ATP及びADPの2成分、或いはATP、ADP及びAMPの3成分を測定すれば、血液に含まれるATP(又はその分解物)を安定して測定することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これはADPをAMPに変換する酵素の活性が弱いこと、及び/又はAMPを脱リン酸化してアデノシンに分解できる酵素が限られているかその酵素活性が弱いことによるものと考えられる。したがって、ATP及びADPの2成分、或いはATP、ADP及びAMPの3成分を測定することにより、分解活性や測定のタイミングに影響されず、放置されたサンプルでも安定して測定でき、汚れを見逃すことがなく、清浄度の検査の指標として優れている。
【0026】
[ルシフェラーゼ]
ある実施形態において、本発明のキットは、ルシフェラーゼ及びルシフェリンを含む。この場合、マグネシウム、マンガン、カルシウムなどの金属イオンも含まれうる。当業者であれば用いる酵素に応じて金属イオンの濃度を決定することができる。必要なルシフェラーゼによりATP、O2及びルシフェリンはAMP、ピロリン酸、CO2及びオキシルシフェリンに変換され、このとき発光がもたらされる。ルシフェラーゼは、天然ルシフェラーゼでもよく、遺伝子工学的に操作された組換えルシフェラーゼ変異体であってもよい。ルシフェラーゼ変異体は、部位特異的突然変異導入又はランダム突然変異導入されたものであってもよい。他の機能を有するタンパク質との融合タンパク質でもよい。ルシフェラーゼ変異体は、耐熱性が向上したもの、界面活性剤耐性が向上したもの等、所望の性質を有するものでありうる。
【0027】
ルシフェラーゼの発光量は、適当な発光測定装置、例えば、ルミノメーター(ベルトールド社製、CentroLB960或いはLumat3 LB9508、キッコーマンバイオケミファ社製、ルミテスターC-110、ルミテスターC-100、ルミテスターPD-20、ルミテスターPD-30等)を用いて得られる相対発光強度(RLU)を指標に評価することができる。通常、ルシフェリンからオキシルシフェリンへの変換の際に生じる発光を測定する。発光測定装置としては、高感度測定が可能であり、光電子増倍管を備えた装置(3M社製等)やフォトダイオードを備えた装置(Hygiena社、Neogen社製等)を使用することもできる。
【0028】
ルシフェラーゼは、ATPを基質とするものであれば、特に限定されないが細菌、原生動物、動物、軟体動物、昆虫由来のものを用いることができる。昆虫由来としては甲虫ルシフェラーゼが挙げられ、例えばフォーチヌス(Photinus)属、例えば北米ボタル(Photinus pyralis)、フォーツリス(Photuris)属、例えばPhoturis lucicrescens、Photuris pennsylvanica、ルシオラ(Luciola)属、例えばゲンジボタル(Luciola cruciata)、ヘイケボタル(Luciola lateralis)、ヒメボタル(Luciola parvula)、マドボタル(Pyrocoelia属)、オバボタル(Lucidina biplagiata)のホタルやピロフォールス(Pyrophorus)属のコメツキムシ由来のものが挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子は多数報告されており、GeneBankなどの公知のデータベースよりその塩基配列及びアミノ酸配列を取得することができる。
【0029】
ルシフェラーゼ遺伝子は、野生型のものでもよく、変異を有するものでもよい。変異は、部位特異的に導入されたものでもよく、ランダム変異でもよい。公知の変異としては、特開2011-188787号公報に記載されるような発光量を向上させる変異、特開2000-197484号公報に記載されるような発光持続性を高める変異、特許第2666561号公報又は特表2003-512071号公報に記載されるような発光波長を変化させる変異、特開平11-239493号公報に記載されるような界面活性剤耐性を高める変異、国際公開第99/02697号パンフレット、特表平10-512750号公報又は特表2001-518799号公報に記載されるような基質親和性を高める変異、特許第3048466号公報、特開2000-197487号公報、特表平9-510610号公報及び特表2003-518912号公報に記載されるような、安定性を高める変異等が挙げられるがこれに限らない。
【0030】
ルシフェラーゼ遺伝子及びその組換え体DNAは慣用法により調製できる。例えば、特公平7-112434号公報はヘイケボタルルシフェラーゼ遺伝子を記載している。また特開平1-51086号公報はゲンジボタルルシフェラーゼ遺伝子を記載している。
【0031】
ルシフェラーゼ遺伝子は、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド等のベクターに組み入れ、これで適当な宿主を形質転換する又は形質導入することができる。宿主は微生物、大腸菌等の細菌、酵母等でありうる。形質転換されルシフェラーゼ産生能を有する宿主は各種公知の方法で培養することができる。
【0032】
培地としては、トリプトン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、或いはダイズ若しくは小麦ふすまの浸出液等の1以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、塩化マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸マグネシウム、若しくは硫酸マンガン等の無機塩類を1種以上添加し、必要により糖質原料、ビタミン等を添加したものが挙げられる。
【0033】
培地の初期pHは例えば7~9とすることができる。培養は例えば30~40℃で2~24時間、通気撹拌培養、振とう培養、静置培養等により行うことができる。培養後、公知の手法により培養物からルシフェラーゼを回収する。
【0034】
具体的には、慣用法により菌体を超音波破砕処理、磨砕処理等に供するか、又はリゾチーム等の溶菌酵素を用いてルシフェラーゼを抽出する。得られた抽出液を濾過、遠心分離等し、必要によりストレプトマイシン硫酸塩等により核酸を除去し、これに硫酸アンモニウム、アルコール、アセトン等を加えて分画し、粗酵素を得ることができる。
【0035】
粗酵素はさらに各種のゲルろ過やクロマトグラフィー手法により精製してもよい。市販されているルシフェラーゼを用いることもでき、例えばキッコーマンバイオケミファ社、カタログ番号61314のルシフェラーゼを使用しうる。このルシフェラーゼは特開平11-239493号公報(特許第3749628号)に記載されているものである(当該文献における配列番号1)。また市販されているシグマ・アルドリッチ社、プロメガ社、ライフテクノロジー社のモレキュラープローブ(登録商標)のルシフェラーゼを用いることもできる。
【0036】
[ルシフェリン]
ルシフェリンは、用いるルシフェラーゼにより基質として認識されるものであればどのようなものでもよく、天然のもの又は化学合成されたものでもよい。また任意の公知のルシフェリン誘導体を用いることもできる。ルシフェリンの基本骨格はイミダゾピラジノンであり、多くの互変異性体がある。ルシフェリンとしては、ホタルルシフェリンが挙げられる。ホタルルシフェリンはホタルルシフェラーゼ(EC 1.13.12.7)の基質である。ルシフェリン誘導体は特開2007-91695、特表2010-523149(国際公開2008/127677号)等に記載されているものであり得る。
【0037】
ある実施形態においてルシフェラーゼの測定系における終濃度は、280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)としたときに0.001μg protein/mL以上、0.01μg protein/mL以上、0.02μg protein/mL以上、0.05μg protein/mL以上、0.10μg protein/mL以上、0.20μg protein/mL以上、又は0.25μg protein/mL以上とすることができる。ある実施形態においてルシフェラーゼの測定系における終濃度は、280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)としたときに1μg protein/mL以下、0.5μg protein/mL以下、0.3μg protein/mL以下とすることができる。ある実施形態においてルシフェリン又はルシフェリン誘導体の測定系における終濃度は0.01mM~20mM、0.05mM~20mM、0.1mM~20mM、0.5mM~10mM、例えば0.75mM~5mMとすることができる。
【0038】
ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素
ある実施形態において、本発明の方法は、ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素を使用する。ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素により、系に存在するADPはATPに変換される。次いで、ATPがルシフェラーゼによりAMPに変換されるとともに発光が生じる。
【0039】
ADPからATPを生成する反応を触媒する酵素としては、任意の公知のものを用いることができ、例えばATP生成能を有するキナーゼが挙げられる。ATP生成能を有するキナーゼとしては、例えばピルビン酸キナーゼ、酢酸キナーゼ、クレアチンキナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、グリセロールキナーゼ、フルクトキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リボフラビンキナーゼ、フルクトースビスホスファターゼ及びその組み合わせが挙げられるがこれに限らない。
【0040】
[ピルビン酸キナーゼ(PK)]
ピルビン酸キナーゼ(EC 2.7.1.40)は、解糖系においてホスホエノールピルビン酸をピルビン酸に変換し、その際、ADPがATPに変換される。この反応はギブスエネルギーが負の発エルゴン反応であり、天然の条件下では不可逆的である:
PEP+ADP→ピルビン酸+ATP
逆方向の反応は、糖新生において、ピルビン酸カルボキシラーゼ及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼが触媒し、ATP及びピルビン酸からPEP及びADPを生じる。細胞抽出を行うと、系には種々の酵素が混在し、上記反応は両方向進行しうる。その際、ホスホエノールピルビン酸が高濃度に存在するとADPがATPに変換され得る。また、ホスホエノールピルビン酸のみならずピルビン酸キナーゼが系に存在すれば、よりADPがATPに変換されると考えられる。特に限定されないが、例えば、ウサギ、ラット、ニワトリ等の動物、酵母、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などの微生物由来のものを用いることができる。
【0041】
[酢酸キナーゼ(AK)]
酢酸キナーゼ(EC 2.7.2.1)は陽イオンの存在下で、ATP及び酢酸と、ADP及びアセチル化リン酸との間の変換を触媒する:
ATP+酢酸←→ADP+アセチル化リン酸
酢酸キナーゼ(AK)は別名をATP:酢酸ホスホトランスフェラーゼ、アセチルキナーゼともいう。本明細書ではこれらの用語は互いに置き換えることができる。生体内ではATP及び酢酸から、ADP及びアセチル化リン酸を生じ、最終的にはアセチルCoAを生成する反応を促進する。系にアセチルCoAから生じたアセチル化リン酸及びADPが存在する場合、これを酢酸及びATPに変換しうる。特に限定されないが、微生物由来の例えばエシェリシア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、コストリジウム・パスツーリアナム(Costridium pasteurianum),ラクトバチルス・デリュブルッキー(Lactobacillus delbruckii)、ヴェイロネラ・アルカレッセンス(Veillonella alcalescence)由来のものを用いることができる。
【0042】
[クレアチンキナーゼ(CK)]
クレアチンキナーゼ(EC 2.7.3.2)は、クレアチン及びATPと、クレアチンリン酸及びADPとの間の変換反応を媒介する:
クレアチン+ATP←→クレアチンリン酸+ADP
クレアチンキナーゼ(CK)は別名をクレアチンホスホキナーゼ(CPK)又はホスホクレアチンキナーゼともいう。本明細書ではこれらの用語は互いに置き換えることができる。通常、動物の筋肉などではクレアチン及びATPからクレアチンリン酸及びADPを生じる。しかしながらこの反応は可逆反応であり、系にクレアチンリン酸及びADPが高濃度で存在すると、反応は逆方向に進行し、クレアチン及びATPが生じうる。生体内では細胞質性クレアチンキナーゼは2つのサブユニットB又はMから構成される。したがってサブユニットの組み合わせにより3種のアイソザイム、CK-MM、CK-BB及びCK-MBが存在しうる。アイソザイムパターンは組織によって異なるが、本発明ではどのような組み合わせも使用可能である。特に限定されないが、動物由来のものが使用でき、例えば、ウサギ、ニワトリ、ウシ、ブタ、コイ、ナマズ、カエル由来のものが挙げられる。
【0043】
[ポリリン酸キナーゼ(PPK)]
ポリリン酸キナーゼ(EC 2.7.4.1)は、ポリリン酸(PolyPn)及びADPを、ポリリン酸(PolyPn-1)及びATPに変換する反応を触媒する:
ADP+PolyPn←→ATP+PolyPn-1
ポリリン酸キナーゼ(PPK)は別名をATP:ポリリン酸ホスホトランスフェラーゼともいう。本明細書ではこれらの用語は互いに置き換えることができる。PPKは生体内では酸化的リン酸化に関与する。系にポリリン酸(n)及びADPが存在する場合、これをポリリン酸(n-1)及びATPに変換しうる。特に限定されないが、例えば、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、酵母、コリネバクテリウム・ゼロシス(Corynebacterium xerosis)等の微生物由来のものが使用できる。
【0044】
[リボフラビンキナーゼ(FMNK)]
リボフラビンキナーゼ(EC 2.7.1.26)は、FMNKとも記載され、リボフラビン及びATPを、リン酸リボフラビン(FMN)及びADPに変換する反応を触媒する:
ATP+リボフラビン←→ADP+FMN
リボフラビンキナーゼはATP:リボフラビン5'-ホスホトランスフェラーゼ(フラボキナーゼともいう)に属する。特に限定されないが、例えば、微生物や動物由来のものを用いることができ、例えば、酵母、ラット、マメ(Phaseolus radiatus)由来のものが挙げられる。
【0045】
[ホスホフルクトキナーゼ1(PFK1)]
ホスホフルクトキナーゼ1(EC 2.7.1.11)は、PFK1とも記載され、フルクトース-6-リン酸(Fru6P)及びATPを、フルクトース-1,6-ビスリン酸(Fru1,6-BP)及びADPに変換する反応を触媒する:
Fru6P+ATP←→Fru1,6-BP+ADP
ホスホフルクトキナーゼ1はホスホフルクトキナーゼに属する。本明細書ではホスホフルクトキナーゼ1をFru-1,6BPKと記載することがある。特に限定されないが、動物や微生物由来のものを用いることができ、例えば微生物由来のものは、パン酵母、ビール酵母、クロストリジウム・パスツーリアナム(Clostridium pasteurianum)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のものが挙げられる。
【0046】
[フルクトースビスホスファターゼ(FBPase)]
フルクトースビスホスファターゼ(EC 3.1.3.11)は、FBPaseとも記載され、フルクトース-1,6-ビスリン酸(Fru1,6-BP)及びADPをフルクトース-6-リン酸(Fru6P)及びATPに変換する反応を触媒する:
Fru1,6-BP+ADP←→Fru6P+ATP
フルクトースビスホスファターゼはFBP、FBP1とも記載されることがある。特に限定されるものではないが、動物、植物、微生物由来のものを用いることができ、例えばウサギやニワトリ由来のものが挙げられる。
【0047】
[ピルビン酸-リン酸ジキナーゼ(PPDK)]
ピルビン酸-リン酸ジキナーゼ(EC 2.7.9.1)はATP、ピルビン酸、及びオルトリン酸と、アデノシン一リン酸(AMP)、ホスホエノールピルビン酸(PEP)及びピロリン酸(PPi)との間の反応を触媒する:
ATP+ピルビン酸+リン酸←→AMP+PEP+PPi
ピルビン酸-リン酸ジキナーゼ(PPDK)は別名をATP:ピルビン酸,リン酸ホスホトランスフェラーゼ、ピルビン酸オルトリン酸ジキナーゼ、ピルビン酸リン酸リガーゼともいう。本明細書ではこれらの用語は互いに置き換えることができる。PPDKは通常、ピルビン酸をPEPに変換し、そのプロセスでATPが1分子消費されAMPに変換される。反応は次の3つの可逆反応に分けられる。
1.酵素PPDKがATPに結合し、AMPに変換と二リン酸化PPDKを生じる。
2.二リン酸化PPDKが無機リン酸に結合し、二リン酸と一リン酸化PPDKを生じる。
3.一リン酸化PPDKがピルビン酸に結合し、PEPを生じるとともにPPDKを再び生じる。
このとき、系に存在するPEP濃度が高いと反応は以下のように逆方向に進行する。
【化1】
【0048】
便宜上、反応段階は上と同じ番号で説明する。
3.PEPがPPDKに結合し、一リン酸化PPDK及びピルビン酸を生じる。
2.二リン酸と一リン酸化PPDKから二リン酸化PPDKと無機リン酸が生じる。
1.二リン酸化PPDKとAMPからPPDKとATPが生じる。
【0049】
[アデニル酸キナーゼ(ADK)]
アデニル酸キナーゼ(EC 2.7.4.3)は、アデニレートキナーゼとも呼ばれ、金属イオンの存在下で、以下の反応を触媒する:
ATP+AMP←→2ADP
この反応は可逆的である。ADKは、AMPからADPを生成する反応を触媒する酵素の一例である。ADKをPK等と組み合わせると、ADPはATPに変換されるため、結果としてATP及びADP及びAMPを測定することができる。
【0050】
[ピルビン酸ウォータージキナーゼ(PWDK)]
ピルビン酸ウォータージキナーゼ(EC 2.7.9.2)は次の反応を触媒する:
ATP+ピルビン酸+H2O←→AMP+ホスホエノールピルビン酸(PEP)+リン酸(P)
ピルビン酸ウォータージキナーゼは別名を、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ;ピルビン酸ウォータージキナーゼ(リン酸化);PEPシンテターゼ; ホスホエノールピルビン酸シンテターゼ;ホスホエノールピルビックシンテターゼ;ホスホピルベートシンテターゼともいう。本明細書ではこれらの用語は互いに置き換えることができる。
【0051】
PWDKをPEPと共に使用することで、AMP及びPEPからATP生成を促進することができる。PWDKをPK等と組み合わせると、ADPはATPに変換されるため、結果としてATP及びADP及びAMPを測定することができる。
【0052】
[RNA分解酵素]
ある実施形態において、本発明のキットはRNA分解酵素を含んでもよい。またある実施形態において、本発明の方法は、RNA分解酵素を使用してもよい。なお、ここでいうRNA分解酵素は、サンプルに由来しないRNA分解酵素を意味する。
【0053】
本明細書において、RNA分解酵素とは、RNAから5'-モノヌクレオチド(AMP、GMP、CMP、及びUMP)を生成する反応を触媒する酵素を意味し、例えば以下に記載のものが挙げられる:(1)エンドヌクレアーゼ・エス・ワン(Endonuclease S1)(EC3.1.30.1)、(2)ベノム・エキソヌクレアーゼ(Venom exonuclease)(EC3.1.15.1)、(3)ホスホ・ジエステラーゼ・ワン(Phospho diesterase 1)(EC3.1.4.1)。なお、上記エンドヌクレアーゼ・エス・ワンには、ヌクレアーゼ・ピイ・ワン(Nuclease P1)、マング・ビーン・ヌクレアーゼ(Mung beans nuclease)、ニューロスポラ・クラッサ・ヌクレアーゼ(Neurospora crassa nuclease)が含まれる。
【0054】
別の実施形態において、本発明のキットはRNA分解酵素を含まないか、又は実質的な量のRNA分解酵素を含まない。またある実施形態において、本発明の方法は、RNA分解酵素を使用しないか、又は実質的な量のRNA分解酵素を使用しない。この実施形態において、サンプルに由来するRNA分解酵素が反応系に含まれてもよい。本明細書において、「実質的な量のRNA分解酵素」とは、本発明のキット又は方法の効果(例えばATP分解活性の影響を受けにくい、正確な汚染の検出方法を提供するという効果)に影響を与えない量のRNA分解酵素を意味する。実質的なRNA分解酵素の量を含まない例として、例えば反応系での終濃度として0.3U/ml以下、0.15U/ml以下、0.1U/ml以下、0.05U/ml以下、0.01U/ml以下、又は0.001U/ml以下のRNA分解酵素を含むキット、又はこのような量のRNA分解酵素を用いる方法が挙げられる。本明細書において、RNA分解酵素の酵素単位は、酵素のRNA分解能に着目し、RNA分解能を有する酵素の活性単位(U)を37℃にて、1分当たり1.0μモルの基質を酸可溶性のヌクレオチドに変換する酵素量と定義する。例えば、Nuclease P1の酵素単位は、37℃にて、pH5.3で、1分当たり1.0μモルの基質を酸可溶性のヌクレオチドに変換する酵素量と定義される(Nuclease P1の酵素活性の定義の詳細については、Merck社のカタログ(http://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Sigma/General_Information/nuclease_p1.pdf)を参照されたい。
【0055】
本発明のキット若しくは方法が、RNA分解酵素を含む若しくは使用する、又は実質的に含む若しくは使用するある実施形態において、RNA分解酵素はルシフェラーゼによる発光反応に寄与しなくともよいか、又は実質的に寄与しなくともよい。
【0056】
本発明のキットが、RNA分解酵素を実質的に含むある実施形態において、本発明のキットはAMPからATPを生成する酵素を含まなくともよいか、又は実質的に含まなくともよい。本発明の方法がRNA分解酵素を実質的に使用するある実施形態において、本発明の方法はAMPからATPを生成する酵素を使用しなくともよいか、または実質的に使用しなくともよい。
【0057】
本発明のキット若しくは方法が、RNA分解酵素を含む若しくは使用するある実施形態において、本発明はRNA分解酵素が完全に作用する前、例えばRNAに由来するATPが、RNAに由来しないATP、ADP、及びAMPの測定に影響を与える前に発光量の測定を行う。例えば、RNA分解酵素を含む場合の発光量が、RNA分解酵素を含まない場合の発光量に対して2倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.2倍以下、1.1倍以下、又は同等となるような時点で測定を行うことができる。測定時間はRNA分解酵素の量に応じて適宜設定可能であり、例えば10分以内、5分以内、4分以内、好ましくは3分以内、2分以内、又は1分以内、30秒以内、又は10秒以内とすることができる。多量のRNA分解酵素が含まれていても、反応時間を短くすることで、RNA分解酵素の作用を低減できる。
【0058】
本発明のキット若しくは方法が、RNA分解酵素を含む若しくは使用するある実施形態において、本発明はRNAを含まないか、又はRNAを実質的に含まないサンプルに対して用いられてもよい。そのような例として、RNA分解酵素を含む場合の発光量が、RNA分解酵素を含まない場合の発光量に対して2倍以下、1.8倍以下、1.5倍以下、1.2倍以下、1.1倍以下、又は同等となるようなサンプルが挙げられる。
【0059】
本明細書の開示に基づき、種々の変法が可能となる。ある実施形態において、本発明はADPからAMPを生成する酵素、AMPからATPを生成する酵素(例えばPPDK)、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及び金属塩を含むキット並びにこれを用いる測定方法を提供する。ADPからAMPを生成する酵素及びAMPからATPを生成する酵素(例えばPPDK)を組み合わせると、ADPがAMPに変換され、AMPはATPに変換されるため、結果としてATP及びADP及びAMPを測定することができる。本キットは、さらにPEP及びPPiを含み得る。AMPからATPを生成する酵素については上記のとおりであり、ADPからAMPを生成する酵素としては、ADP依存性ヘキソキナーゼ、及びアピラーゼが挙げられる。
【0060】
[ADP依存性ヘキソキナーゼ]
ADP依存性ヘキソキナーゼ(EC 2.7.1.147)は、ADP特異的ヘキソキナーゼとも呼ばれ、以下の反応を触媒する:
D-グルコース+ADP←→D-グルコース-6-リン酸+AMP
【0061】
[アピラーゼ]
アピラーゼ(EC 3.6.1.5)は、アデノシンジホスファターゼ、ADPアーゼ、ATPジホスファターゼ、又はATPジホスホヒドロラーゼとも呼ばれ、以下の2つの反応を触媒する:
ATP+H2O←→ADP+リン酸(P)
ADP+H2O←→AMP+リン酸(P)
【0062】
本明細書において、上記のADPからATPを生成する反応を触媒する酵素、PPDK、PWDK、ADK及びADPからAMPを生成する酵素を、ATP生成能を有する酵素と総称することがある。
【0063】
ATP生成能を有する酵素は、微生物由来、細菌由来、真核生物由来、原生生物由来、植物由来、動物由来のもの等、任意の公知のものを用いることができ、例えば市販されているものを用いることができる。PPDKは、特に限定されるものではないが、例えば、特許文献4記載のミクロビスポーラ・サーモローザ(Microbispora thermorosea)、Propionibacterium shremanii、Bacteroides symbiosus、Entamoeba histolytica、Acetobacter xylinum、Propionibacter shermaniiなどの微生物由来のものや、トウモロコシやサトウキビなどの植物由来のものが挙げられる。ADKは特に限定されるものではないが、例えば酵母などの微生物由来のものや、ウサギ、ブタ、ウシ、ラット、ブタなどの動物由来のものが挙げられる。PWDKは特に限定されるものではないが、例えば大腸菌、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、ピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)、スタフィロテルムス・マリヌス(Staphylothermus marinus)、スルホロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)、サーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)、サーモプロテウス・テナックス(Thermoproteus tenax)、トウモロコシ(Zea mays)由来のものが挙げられる。酵素の添加量は、目的の濃度や反応系に応じて適宜設定することができる。
【0064】
ATP生成能を有する酵素としては種々のものが知られている。本明細書では酵素のATP生成能に着目し、ATP生成能を有する酵素の活性単位(U)を37℃でpH 7.8にて、1分当たり1.0μモルの基質をATPに変換する酵素量と定義する(1U=1μmol ATP/min, pH 7.8, 37℃)。ある実施形態においてATP生成能を有する酵素は、測定系における活性単位が0.001U以上、0.01U以上、0.1U以上、1U以上、2U以上、3U以上、4U以上、又は5U以上となるよう添加することができる。ある実施形態においてATP生成能を有する酵素は、測定系における活性単位が10000U以下、1000U以下、100U以下、50U以下、10U以下、9U以下、8U以下、7U以下、又は6U以下となるよう添加することができる。当業者であれば該酵素の添加量を適宜決定することができる。
【0065】
ATP生成能を有する酵素を使用する場合は、それぞれの酵素の基質を添加することができ、特に限定をされるものではないが、例えば、PPDKに対してはホスホエノールピルビン酸及びピロリン酸を、PK、AK、CK、PPK、FMNK、PFK1、FBPase、に対してはそれぞれ、ホスホエノールピルビン酸、アセチルリン酸、クレアチンリン酸、ポリリン酸、リン酸リボフラビン、フルクトース-1,6-ビスリン酸を使用できる。例えばPWDKに対してはホスホエノールピルビン酸及びリン酸を使用できる。また、例えばADP依存性ヘキソキナーゼに対してはグルコースを使用できる。ある実施形態において、本発明のキットはこれらの基質をさらに含む。ある実施形態において、本発明の方法はこれらの基質をさらに使用しうる。
【0066】
[ホスホエノールピルビン酸(PEP)]
本発明の方法は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)を使用しうる。場合により系に過剰量のPEPを添加することで、系に存在するATPやAMPの測定を促進しうる。使用するPEPの濃度としては、終濃度として、0.001mM~4500mM、例えば2.1mMが挙げられる。
【0067】
[ピロリン酸(PPi)]
本発明の方法は、ピロリン酸(PPi)を使用しうる。場合により系に過剰量のPPiを添加することで、系に存在するATPやAMPの測定を促進しうる。使用するPPiの濃度としては、終濃度として、0.001mM~2000mM、例えば0.2mMが挙げられる。
【0068】
ある実施形態では、サンプルに界面活性剤を作用させて、存在しうる細胞を溶解させてもよい。溶解により細胞内のATP、ADP、又はAMPが外部に放出され、測定が促進されうる。界面活性剤としては特に限定されるものではないが、tritonX-100、tween-20、tween-80、brij35等の非イオン界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤、SDS等の陰イオン界面活性剤、CHAPSなどの両性界面活性剤などを使用しうる。
【0069】
ある実施形態において、界面活性剤は、系に存在する酵素に悪影響を及ぼさない又はそれらの活性を有意に低減させないものである。ここで悪影響を及ぼさない又はそれらの活性を有意に低減させない、とは、影響がないか又はあったとしても全体として測定ができることをいう。界面活性剤の測定系における濃度は0.0001重量%~5重量%、0.001重量%~3重量%、0.01重量%~2重量%、0.1重量%~1.5重量%等であり得る。
【0070】
反応試薬はまた、ルシフェラーゼ等のレポーター分子を分解から保護するウシ血清アルブミン又はゼラチンのような酵素安定化剤を含みうる。反応試薬はまた、pH調整や保存性を向上させる物質を添加してもよい。例えば適当なpH緩衝剤(HEPES、Tricine、Tris、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液等)、還元剤(ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール等)、糖(グルコース、スクロース、トレハロース等)等が挙げられる。
【0071】
[生体関連サンプル、生体関連器具]
本明細書において、生体関連サンプルとは、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着した可能性のあるあらゆるサンプルを包含する。また本明細書において、生体関連サンプルは、ATP分解酵素を含み得るあらゆる生体関連サンプルを包含する。本明細書において、生体関連器具とは、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質が付着又は残留する可能性のあるあらゆる器具をいう。また本明細書において、生体関連器具は、ATP分解酵素及びヒト由来の物質が付着若しくは残留する可能性のあるあらゆる器具を包含する。本明細書において生体関連サンプル又は生体関連器具についての環境とは、特に断らない限り、含まれるATPが分解された可能性のある生体に由来する液が付着したり残留しうる環境をいう。該環境としては、衣類、手袋などの保護用具、手、指、寝台、スイッチ、ドアノブ、ベッド柵、ナースコールボタン、手すり、洗面所、洗面器、便所、便器等が挙げられるがこれに限らない。こうした環境から取得されたサンプルも本明細書にいう生体関連サンプルに包含されるものとする。生体由来の物質はヒト又は動物由来であり得る。ある実施形態において生体由来の物質はヒトに由来するものである。ある実施形態において生体関連サンプルは非ヒト動物由来サンプルを含まずヒト由来サンプルを含むものである。ある実施形態において、生体関連器具は非ヒト動物関連器具を含まず人体関連器具を含むものである。
【0072】
生体由来の物質としては液または固体が挙げられる。液としては、体液、血液、リンパ液、汗、鼻水、涙、唾液、消化液、組織液、腹水、羊水、髄液、尿、便、嘔吐物、皮脂等が挙げられるがこれに限らない。固体としては液が固化したもの、凝固血液、排泄物、垢、目やに、瘡蓋が挙げられるがこれに限らない。本明細書において生体由来の物質という場合、特に断らない限り、この用語は、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の物質を意味するものとする。本明細書において生体由来の液という場合、特に断らない限り、この用語は、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の液を意味するものとする。本明細書において生体由来の固体という場合、特に断らない限り、この用語は、含まれるATPが分解された可能性のある生体由来の固体を意味するものとする。ATP分解は、酵素、熱、薬剤、酸、アルカリによる加水分解又はこれらの組み合わせ等であり得る。
【0073】
生体関連器具の例として、医療器具が挙げられ、例えば手術器具、内視鏡(例えば、食道、胃及び十二指腸の検査に用いる上部内視鏡、直腸及び大腸の検査に用いる下部内視鏡、又はダブルバルーン小腸内視鏡、好ましくは下部内視鏡)、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、及び医療器具洗浄環境等が挙げられる。
【0074】
ある実施形態において、本発明のキットは、それが生体関連サンプル又は生体関連器具の清浄度測定用であることを記載した使用説明書を含み得る。使用説明書は、本発明の生体関連器具の清浄度測定方法や本発明のキットの使用方法が記載されたものであり得る。
【0075】
[血液関連サンプル、血液関連器具]
本明細書において、血液関連サンプルとは、血液が付着した可能性のあるあらゆるサンプルを包含する。本明細書において、血液関連器具とは血液が付着又は残留する可能性のあるあらゆる器具をいう。血液関連器具の例として、血液が付着又は残留する可能性のある医療器具をいう。これらの例として、手術器具、内視鏡(例えば、食道、胃及び十二指腸の検査に用いる上部内視鏡、直腸及び大腸の検査に用いる下部内視鏡、又はダブルバルーン小腸内視鏡、好ましくは下部内視鏡)、カテーテル、メス、患者の身体に挿入するチューブ、患者の身体に挿入する器具、手術器具洗浄槽、及び医療器具洗浄環境等が挙げられる。本明細書において血液関連サンプル又は血液関連器具についての環境とは、特に断らない限り、血液が付着したり残留しうる環境をいう。該環境としては、手術台、洗浄槽、衣類、手袋などの保護用具、手、指、寝台、手すり、洗面所、洗面器、及び医療関連施設が挙げられる。他には事故現場や傷害事件現場、血痕捜索が行われる現場も挙げられる。こうした環境から取得されたサンプルも本明細書にいう血液関連サンプルに包含されるものとする。血液の由来はヒト又は動物であり得る。ある実施形態において血液はヒト由来である。ある実施形態において血液は、食品に関連する動物肉や魚肉由来の血液を含まない。
【0076】
血液としては、全血、血清、血漿、輸血用血液、採血された一次血液、一次血液が希釈化された溶液等が挙げられる。血液関連サンプルには、血球細胞(白血球、赤血球、血小板)を含む溶液が付着した可能性のあるサンプルも包含される。
【0077】
ある実施形態において、血液関連サンプルは、採取された血液そのもの(便宜上、一次サンプルという)は包含しない。例えばこの実施形態では、血液関連サンプルに包含される「血球細胞を含む溶液」は、血液そのものは包含しない。ある実施形態において、血液関連サンプルとは、一次サンプルと接触した器具や環境に由来する二次サンプルをいう。二次サンプルは、一次サンプルと接触した可能性のある器具や環境を、綿棒等で拭き取ることにより取得しうる。ある実施形態において、本発明の方法は二次サンプルについて、血液が付着したか、又は血液が残留しているかを調べる。ある実施形態において、血液関連サンプルは、洗浄処理等により、存在する血液が希釈化されたサンプルであり得る。
【0078】
本発明のキット又は測定方法の対象となる生体関連器具又は医療器具としては、特に下部内視鏡が好ましい。これは、腸内に存在する消化液には、ATPのみならず、ADP及びAMPも多く含んでおり、かつ下部内視鏡が、その使用環境に起因してATP及びADPの分解酵素を含んでいることが想定されるため、ATPだけでなく、ATP及びADP、ATP及びAMP、又は、ATP、ADP及びAMPを測定することにより、正確な検出を行うことができると考えられるからである。
【0079】
ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、0~99℃、例えば0~95℃、4~90℃、4~10℃、10~25℃、25~30℃、30~50℃、37~50℃、50~90℃、60~80℃等の低温、中程度の温度、又は高温で保存されたサンプルであり得る。サンプルは長時間、例えば5分以上、10分以上、例えば15分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、又はそれ以上、中程度の温度又は高温で保存されたサンプルであり得る。
【0080】
ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、含有ATPがADPに分解されたサンプル又は分解された可能性のあるサンプルであり得る。ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、含有ATPの10~60%、15~50%、18~45%、例えば20~40%がADPに分解されたサンプル又は分解された可能性のあるサンプルであり得る。ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、2~120時間、例えば4~100時間、8~96時間、16~84時間、24~72時間の加熱又は保存により、含有ATPの10~60%、15~50%、18~45%、例えば20~40%がADPに分解されたサンプル又は分解された可能性のあるサンプルであり得る。ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、pH3~12、例えばpH4~11での、加熱又は保存により、含有ATPの10~60%、15~50%、18~45%、例えば20~40%がADPに分解されたサンプル又は分解された可能性のあるサンプルであり得る。ある実施形態において、本発明の方法が測定するサンプルは、pH3~12、例えばpH4~11での、2~120時間、例えば4~100時間、8~96時間、16~84時間、24~72時間の加熱又は保存により、含有ATPの10~60%、15~50%、18~45%、例えば20~40%がADPに分解されたサンプル又は分解された可能性のあるサンプルであり得る。
【0081】
ある実施形態において、本発明のキットは、それが血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度測定用であることを記載した使用説明書を含み得る。使用説明書は、本発明の血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度測定方法や本発明のキットの使用方法が記載されたものであり得る。
【0082】
ある実施形態において、本発明の方法は、ATP分解酵素を失活させる工程を含まない。例えば、血液に、トリクロロ酢酸(TCA)やトリフルオロ酢酸(TFA)を添加すると、血液中に存在するATP分解酵素を失活させることができる。本発明の方法は、ATPが分解されて生成するADPやAMPも測定することができるため、ATP分解酵素を失活させる工程は必須ではない。
【0083】
[ルシフェラーゼを用いたATPアッセイ方法]
以下にルシフェラーゼを用いたアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。 以下を含むATP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
上記のATP測定試薬0.1mLにATPを含む試料溶液0.1mLを添加し発光を測定する。発光量の測定は、既知のルミノメーター(ベルトールド社CentroLB960或いはLumat3 LB9508や、キッコーマンバイオケミファ社ルミノメーター等)を用いて測定しうる。発光は、ある基準を定めて、それに対する相対発光単位(RLU)と記載することができる。ATP濃度が既知の基質溶液を用いて検量線を作成する。次いで、ATP濃度未知の試料溶液に上記のATP測定試薬を添加し同じ条件で発光を測定する。
【0084】
[ATP+ADPアッセイ方法1(ルシフェラーゼ+PK)]
以下にATP+ADPのアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP+ADP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
PK 25 U/mL
【0085】
[ATP+ADPアッセイ方法2(ルシフェラーゼ+AK)]
以下にATP+ADPのアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP+ADP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
AK 25 U/mL
【0086】
[ATP+AMPアッセイ方法(ルシフェラーゼ+PPDK)]
以下にATP+AMPアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP+AMP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
PPDK 2 U/mL
【0087】
[ATP+ADP+AMPアッセイ方法1(ルシフェラーゼ+PK+PPDK)]
以下にATP+AMP+ADPアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP、AMP+ADP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
PK 25 U/mL
PPDK 2 U/mL
代替法として、上記において、PPDKに代えて、PWDKを使用しうる(2U/mL)。この場合、ピロリン酸カリウムの代わりにリン酸を使用する。
【0088】
[ATP+ADP+AMPアッセイ方法2(ルシフェラーゼ+PK+ADK)]
以下にATP+AMP+ADPアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP、AMP+ADP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
PK 25 U/mL
ADK 500 U/mL
【0089】
[ATP+ADP+AMPアッセイ方法3(ルシフェラーゼ+PPDK+ADP依存性ヘキソキナーゼ又はアピラーゼ)]
以下にATP+AMP+ADPアッセイ方法を説明する。条件は例示的なものである。
以下を含むATP、AMP+ADP測定試薬を調製する。
MES 1 mM
酢酸マグネシウム 5.1 mM
ピロリン酸カリウム 0.15 mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム 2.1 mM
ルシフェリン 0.8 mM
トリシン 25 mM
ルシフェラーゼ 12.5 μg protein/ml(280nmにおける吸光度をルシフェラーゼ濃度(mg protein/mL)とする。)
ADP依存性ヘキソキナーゼ 30 U/mL+グルコース 10 mM又はアピラーゼ 1 U/m
PPDK 2 U/mL
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
血液由来サンプルに含まれるATP分解の経時変化を調べるために、ルシフェリン及びヘイケボタル由来ルシフェラーゼ(キッコーマンバイオケミファ社、カタログ番号61314)を含む発光試薬を使用した。PKはBiozyme Laboratories社製(カタログ番号PK3)を使用した。PPDKは特許文献4に記載のものを使用した。発光試薬の組成は以下のとおりである。発光試薬のpHは7.7とした。
【0092】
【0093】
手順としては、まず、羊全血を精製水で50倍希釈した(20μl全血+1mLの滅菌超純水)。次いでこれを25℃で保存し、0分、30分、60分、120分でサンプリングした。測定時にはこれをさらに20倍希釈した(サンプル50μL+ 滅菌超純水950μL)ものを使用した。測定試薬(ATP測定試薬、ATP+ADP測定試薬又はATP+ADP+AMP測定試薬)100μLに前記20倍希釈サンプル10μLを加え35秒後に、ルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定を開始した。値はサンプル数n=2の平均値である。
【0094】
結果を
図1に示す。発光量はATPのみ測定した場合は30分、60分、120分と経つにつれ、大幅に減衰した。これに対して、ATP及びADPの値は比較的維持され60分程度までは発光量は90~93%と安定した。またATP+ADP+AMPを測定した場合は、120分経過後のサンプルでも、全血由来のヌクレオチドを正確に測定することができた。
【0095】
[実施例2]
加熱によるATP分解の評価
簡単に説明すると、pH 4、7又は11のATP溶液を80℃で所定時間加熱した。加熱後のサンプルに含まれるATP、ATP+AMP、又はATP+AMP+ADPを測定した。ATP+ADPの量は、(ATP+AMP+ADP)の値から(ATP+AMP)の値を減算し、ATPの値を加算することにより決定した。
【0096】
手順としては、まず以下の緩衝液を調製した:
0.05molフタル酸(pH4.0)
0.05molリン酸(pH6.9)
0.05molグリココール、0.05mol塩化ナトリウム、0.05mol水酸化ナトリウム(pH11.3)
次いで加熱用のサンプルを調製した:
ATP溶液(1mM) 0.05mL
各種緩衝液 10mL
終濃度 5×10-3mM
これを小分けにして80℃で保存し、各時間でサンプリングした。その後、測定までは冷凍保存した。次いで測定のために、各ATP溶液を滅菌超純水で100倍希釈した:
0.99mL 滅菌超純水
0.01mL ATP溶液
これをルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定した。サンプリング数はn=2であった:
0.1mL 発光試薬(ATP測定試薬、ATP+AMP測定試薬又はATP+ADP+AMP測定試薬)
0.01mL 種々のpHで各時間保存したATP溶液
なお、発光試薬の組成は以下のとおりである。
【0097】
【0098】
結果を
図2-1~4-2に示す。ATPのみを測定した場合は、加熱による急速なATP分解のため、正確な測定が難しいことが分かった。一方で、ATP及びADPを測定すると、より正確な測定を行うことができることが分かった。さらにATP、AMP及びADPを測定すると、より正確な測定を行うことができることが分かった。
【0099】
加熱サンプルについてのATP及びADP測定
サンプルに含まれるATP+ADPの量は、ルシフェラーゼ及びPKを用いて測定することもできる。
手順としては、まず以下の緩衝液を調製する:
0.05molフタル酸(pH4.0)
0.05molリン酸(pH6.9)
0.05molグリココール、0.05mol塩化ナトリウム、0.05mol水酸化ナトリウム(pH11.3)
次いで加熱用のサンプルを調製する:
ATP溶液(1mM) 0.05mL
各種緩衝液 10mL
終濃度 5×10-3mM
これを小分けにして80℃で保存し、各時間でサンプリングする。その後、測定までは冷凍保存する。次いで測定のために、各ATP溶液を滅菌超純水で100倍希釈する:
0.99mL 滅菌超純水
0.01mL ATP溶液
これをルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定する。
0.1mL 発光試薬(ATP+ADP測定試薬)
0.01mL 種々のpHで各時間保存したATP溶液
なお、ATP+ADPは濃度既知の標準品から検量線を予め作成しておくこともできる。
【0100】
例えば、ATP又は、ADPの各種濃度の標準品(1×10
-9M~1×10
-6M)を作製し、実施例1記載のATPを測定できる発光試薬に対し、25 U/mlとなるようにPKを加えたものを用い、ルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定した(N=3)。
0.1ml 発光試薬(ATP+ADP測定試薬)
0.01ml 種々の濃度のATP又はADP溶液
発光時の溶液中のATP及びADPのmol量を計算し、検量線を作成した。結果を
図5及び6に示す。
【0101】
[実施例3]
唾液におけるATP分解の経時変化
ATPを含む測定対象に唾液が混入した場合を想定し、Saliva Collection Aid(SALIMETRICS)を用いて回収した唾液を200倍希釈になるように、0.2μMのATP溶液に添加し、唾液サンプルとした。
【0102】
これを以下の比率で発光試薬と混合し、ルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定した。サンプリング数はn=2であった:
0.1mL 発光試薬(ATP測定試薬、ATP+AMP測定試薬又はATP+ADP+AMP測定試薬)
0.01mL 唾液サンプル
なお、発光試薬の組成は実施例2の表2に記載したとおりである。
【0103】
25℃で保管し、ATP添加の60、120、210、及び330分後に発光量の測定を行い、60分後の発光量を100%とした時の相対発光量を算出した。
結果を
図7に示す。ATPのみを測定した場合は、ATP分解のため、正確な測定が難しいことが分かった。一方で、ATP及びAMPを測定すると、より正確な測定を行うことができ、ATP、AMP及びADPを測定すると、さらに正確な測定を行うことができることが分かった。
【0104】
[実施例4]
内視鏡におけるATP分解の経時変化
下部内視鏡(オリンパス社製、使用済)を、40cm綿棒LuciSwab 3.2-400(キッコーマンバイオケミファ社製)で拭き取り、5%グルコース溶液に懸濁したものを滅菌超純水にて4倍希釈し、内視鏡サンプルとした。これを以下の比率で発光試薬と混合し、ルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定した。
0.1mL 発光試薬(ATP測定試薬、ATP+AMP測定試薬、又はATP+ADP+AMP測定試薬)
0.01mL 内視鏡サンプル
なお、発光試薬の組成は実施例2の表2に記載したとおりである。
【0105】
内視鏡サンプルは25℃で保管し、保管直後と0.5、1時間で発光測定を行い、直後の発光量を100%とした時の相対発光量を算出した。
【0106】
結果を
図8に示す。ATPのみを測定した場合は、ATP分解のため、正確な測定が難しいことが分かった。ATP及びAMPを測定した場合、発光量は大きく増加した。これは、サンプルにもともとADPが多く含まれており、これがAMPに分解したため、ATP+AMP量が増加したと考えられ、この結果からATP及びAMPでは正確な測定が難しいことがわかった。一方、ATP、AMP及びADPを測定すると、値の経時的変化が少なく、正確な測定を行うことができることが分かった。
【0107】
[実施例5]
ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素を用いるATP+ADP+AMPの測定系の構築
実施例2の表2のATP+AMP測定用発光試薬に、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素であるADP依存性ヘキソキナーゼ(旭化成ファーマ、T-93 ADP-HKTII)とグルコースを加え、ATP+ADP+AMPの測定が可能かを調べた。
発光試薬の組成は以下の通りである。
【0108】
【0109】
ATP、ADP、又はAMPの各種濃度の標準品(1×10
-9M~1×10
-6M)を作製し、上記発光試薬に対し、以下の比率で発光試薬と混合し、ルミテスターC-110(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて測定した(n=2):
0.1ml 発光試薬
0.01ml 種々の濃度のATP、ADP、又はAMP溶液
発光時の溶液中のATP、ADP、及びAMPのmol量を計算し、検量線を作成した。結果を
図9-1~9-3に示す。
【0110】
続いて、実施例2の表2のATP+AMP測定用発光試薬に、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素であるアピラーゼ(Sigma A6536)を加え、上記と同様にATP+ADP+AMPの測定が可能かを調べた。
発光試薬の組成は以下の通りである。
【0111】
【0112】
発光時の溶液中のATP、ADP、及びAMPのmol量を計算し、検量線を作成した。結果を
図10-1~10-3に示す。
これらの結果は、AMPからATPを生成する反応を触媒するPPDKと、ADPからAMPを生成する反応を触媒する酵素を併用することで、ATP+ADP+AMPの測定が可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、血液関連サンプル又は血液関連器具の清浄度測定を行うことができる。また器具に付着又は残留する血液を検出することができる。
【0114】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。