(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】水酸化カルシウムナノ粒子の製造及びミネラルバインダー組成物での硬化促進剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 22/06 20060101AFI20230809BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20230809BHJP
C04B 22/12 20060101ALI20230809BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20230809BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20230809BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230809BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230809BHJP
C01F 11/02 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C04B22/06 Z
C04B22/08 B
C04B22/12
C04B24/04
C04B22/14 Z
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 G
C04B28/02
C01F11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020543859
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019057201
(87)【国際公開番号】W WO2019180191
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ユイルラント
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ガルーチ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニーズ シェーネンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ルイーゼ ペガド
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フランツ
(72)【発明者】
【氏名】アルント エーバーハルト
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/001965(WO,A1)
【文献】特開2010-184841(JP,A)
【文献】特開2007-031212(JP,A)
【文献】特開2016-008148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112115(US,A1)
【文献】特開2001-278674(JP,A)
【文献】特開2003-277111(JP,A)
【文献】特表2017-510681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-28/36
C01F 11/02-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラルバインダー組成物の硬化を促進するための水性懸濁液
の使用であって、
前記水性懸濁液が下記を含み:
- 5~65重量%の水酸化カルシウムであって、前記水酸化カルシウムの少なくとも50重量%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウム、及び
- 前記懸濁液を安定させるための少なくとも一種の化合物
、
前記水性懸濁液が、水酸化カルシウムの1モルを基準として、0.01~2.5モルのアルカリ金属の硝酸塩、塩化物塩、酢酸塩、ギ酸塩、チオシアン酸塩又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、
使用。
【請求項2】
前記水酸化カルシウムは、少なくとも65重量
%の範囲までナノ粒子の形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
前記水酸化カルシウムナノ粒子は、光子相互相関分光法での動的光散乱によって測定して、950nm未
満の粒径を有し、且つ/又は800nm未
満のD90を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項4】
10重量%の水酸化カルシウム含有量を有する場合、毎分8000回転で15分にわたる50ml遠心分離管中での50mlの前記懸濁液の遠心分離及び濁度測定のための上部40mlの取出後に、HACH(登録商標)2100AN濁度計で測定して、3000NTU
超の濁度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項5】
前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、カルボキシレ-ト基、スルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基若しくはホスホネート基、又はそれらの混合物、又はそれらの塩を含むアニオン性ポリマーであることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項6】
前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、櫛形ポリマーであり、且つ式Iの構造単位及び式IIの構造単位を含むことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
使用:
【化1】
[式中、
R
1は、それぞれの場合に互いに独立して、-COOM、-SO
2-OM、-O-PO(OM)
2、-PO(OM)
2、-(CO)-NH-C(CH
3)
2-CH
2-SO
3M、-CH
2-SO
3M、
【化2】
であり、
R
2は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-CH
2COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
3、R
5及びR
6は、それぞれの場合に互いに独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4及びR
7は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、互いに独立して、H
+、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを表し、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
Xは、それぞれの場合に互いに独立して、-O-、-NH-又は-NR
8-であり、
R
8は、式-[AO]
n-R
aの基である
(式中、A=C
2~C
4アルキレンであり、且つR
aは、H又はC
1~C
20アルキル、シクロヘキシル若しくはアルキルアリール基であり、及び
nは、1~250である)]。
【請求項7】
前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、水酸化カルシウムの100部を基準として、固体として計算して5~40
部で存在することを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項8】
前記水性懸濁液の100重量%を基準として、
前記水性懸濁液が下記を含むことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の
使用:
- 8~15重量%の水酸化カルシウムであって、前記水酸化カルシウムの少なくとも50重量
%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウム、
- 15~25重量%のアルカリ金属
の硝酸塩、塩化物塩、酢酸塩、ギ酸塩、チオシアン酸塩又はそれらの混合物及び
- 0.8~3重量%の櫛形ポリマー
である、前記懸濁液を安定させるための少なくとも一種の化合物。
【請求項9】
前記ミネラルバインダー組成物において、ミネラルバインダーの重量を基準として、0.05~6重量
%の水酸化カルシウム粒子が存在する量で、前記水性懸濁液を計量供給する、請求項
1に記載の使用。
【請求項10】
水性懸濁液を含むミネラルバインダー組成物
であって、
前記水性懸濁液が下記を含み:
- 5~65重量%の水酸化カルシウムであって、前記水酸化カルシウムの少なくとも50重量%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウム、及び
- 前記懸濁液を安定させるための少なくとも一種の化合物、
前記水性懸濁液が、水酸化カルシウムの1モルを基準として、0.01~2.5モルのアルカリ金属の硝酸塩、塩化物塩、酢酸塩、ギ酸塩、チオシアン酸塩又はそれらの混合物を含有することを特徴とする、
ミネラルバインダー組成物。
【請求項11】
請求項
10に記載のミネラルバインダー組成物を硬化させることによって得ることができる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化カルシウムナノ粒子の水性懸濁液、それを製造する方法及びミネラルバインダー組成物のための硬化促進剤としての懸濁液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、ミネラルバインダーであり、コンクリート及びモルタルのために主として使用されている。セメントが水と混合されるとき、それは、セメント水和と呼ばれる化学プロセスで硬化する。セメントの硬化とも呼ばれるセメント水和は、セメント水和物を生成する。これらの水和物は、コンクリート及びモルタル中の骨材 - 典型的には砂、砂利及び石 - のためのバインダーとして機能して固体物品を形成する。セメント水和は、強度成長反応が、典型的には遅れてのみ、多くの場合、セメントと水との混合の数時間後にのみ始まる発熱プロセスである。
【0003】
結果として生じる時間のゲイン及び従ってコスト削減のため、迅速な硬化及び強度の迅速な成長が非常に重要であるモルタル又はコンクリートの多くの用途がある。
【0004】
セメント水和を促進する様々な方法がある。温度の上昇は、硬化を促進し、型枠エレメント及び骨材の加熱を通して且つ/又は熱水の使用を通して既製部品を製造する工場において用いられている。この技術は、費用の増加をもたらし、既製部品製造工場外でのその使用の可能性が制限される。セメント水和を促進する別の可能な方法は、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム若しくは亜硝酸ナトリウムなどの水溶性塩及び/又は例えばヒドロキシアルキルアミンなどのアミンを添加することである。しかしながら、それらの促進効果の限界及び/又はそれらの使用の制限がある。塩化カルシウムは、強化コンクリートにおける鋼腐食をもたらし、亜硝酸塩及びアミンは、健康に有害であり、及びアミンは、不快な臭気の結果としてコンクリート打設作業を妨げ得る。
【0005】
先行技術の水溶性硬化促進剤は、それらを使用して促進されるモルタル又はコンクリート混合物が、それらの有効な作業性をそれらが急速に失うことを意味する迅速な剛化を受けるという不利点を更に有する。このようにして促進されるモルタル又はコンクリート混合物は、多くの場合、とりわけ新鮮なモルタル又は新鮮なコンクリートに関して長い輸送時間の場合に可能ではない1時間以内で通常処理されなければならない。
【0006】
セメントの硬化を促進するために記載されている別の可能な方法は、微細な無機粉末を添加することである。
【0007】
欧州特許第1719742号明細書は、水硬性バインダー中の硬化促進剤成分としての、25m2/g以上の比BET表面積を有する水酸化カルシウム粉末の使用を記載している。
【0008】
国際公開第2008/034616号パンフレットは、水硬性バインダー組成物を促進するための、7~16m2/gのBET表面積又は4.5~7μmの平均粒径を有する水酸化カルシウム粉末の添加を記載している。
【0009】
粉末のハンドリングは、典型的には、とりわけ粉末が非常に細かい場合、ダスチングを必然的に伴う。アルカリ性水酸化カルシウム粉末は、それを扱う作業を行って個人の目、気道及び皮膚への損傷を容易に引き起こし得る。
【0010】
その結果、述べられた不利点をできる限り克服する、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物のための非常に有効な硬化促進剤が必要とされ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、良好なハンドリング品質を有し、非常に有効であり且つ貯蔵安定性があり、製造するのが簡単であり且つ迅速であり、及び十分に長い作業時間を確保する、ミネラルバインダー組成物、とりわけ例えばモルタル又はコンクリートなどのセメント質バインダー組成物のための硬化促進剤を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意外にも、この目的は、請求項1に記載されるような水性懸濁液によって達成される。
【0013】
本水性懸濁液は、計量供給することが容易であり、且つ健康に有害であるダストを形成しない。
【0014】
本発明の懸濁液は、意外にも、セメント及びセメント質組成物の水和反応の非常に有効な促進をもたらす。それは、いわゆる休息期間であって、セメントと水との混合と、発熱水和反応の開始との間の時間である休息期間を短くし、それは、水和反応自体を促進する。
【0015】
更に、例えば強化コンクリートにおいて又はプレストレストコンクリートにおいて、水酸化カルシウムは、強化鉄を迅速な腐食から防護する。
【0016】
固形分の懸濁液は、貯蔵安定性及び硬化促進剤効果について起こり得る悪影響ありで凝集体を形成し且つ沈降を受ける傾向を有するが、本発明の懸濁液は、意外にも、極めて貯蔵安定性があり、沈降への傾向を示さない。
【0017】
モルタル又はコンクリート混合物に添加される場合、本懸濁液は、意外にも、長い作業時間及び強度の成長の高度の促進の両方を確保し、それは、大きい利点である。
【0018】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0019】
本発明の主題は、水性懸濁液であって、
- 5~65重量%の水酸化カルシウムであって、水酸化カルシウムの少なくとも50重量%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウムと、
- 懸濁液を安定させるための少なくとも一種の化合物と
を含む水性懸濁液である。
【0020】
本明細書における「懸濁液を安定させるための化合物」は、懸濁液における水酸化カルシウムの沈降を減らすか又は防ぐ化合物を意味する。
【0021】
本明細書における「水性懸濁液」は、液相が水を含む懸濁液を意味する。特に、水を別として、液相は、例えば、アルコール、グリコール又はケトンなどの他の溶媒を含まない。
【0022】
ナノ粒子は、そのサイズがナノ範囲である粒子である。これらの超微細粒子は、非常に高い比表面積及びその結果として特定の特性で知られる。
【0023】
本明細書における「ナノ粒子」は、1μm未満のサイズを有する粒子を指す。
【0024】
本明細書における「粒径」は、粒子の直径を意味する。
【0025】
本明細書における「D50」は、粒子の50重量%がこの値よりも小さく、粒子の50重量%がこの値よりも大きい粒径値である。
【0026】
「D10」は、粒子の10重量%がこの値よりも小さい粒径値を示す。
【0027】
「D90」は、粒子の90重量%がこの値よりも小さい粒径値を示す。
【0028】
本明細書における「ミネラルバインダー」は、特に、水の存在下において水和反応で反応して固体水和物又は水和物相を与えるバインダーを意味する。
【0029】
本明細書における「ミネラルバインダー組成物」は、相応に、少なくとも1種のミネラルバインダーを含む組成物を意味する。この組成物は、より特に、バインダーと、充填材と、任意選択的に1種以上の混和剤とを含む。
【0030】
本明細書における「セメント質バインダー」は、特に、100重量%の最大含有量で少なくとも5重量%、より特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、とりわけ少なくとも65重量%の分率のセメントクリンカーを有するバインダーを意味する。セメントクリンカーは、好ましくは、ポルトランドセメントクリンカー、アルミン酸カルシウムクリンカー又はスルホアルミン酸カルシウムクリンカーを含む。本明細書におけるセメントクリンカーは、より特に、すり潰されたセメントクリンカーを指す。
【0031】
本明細書における「セメント質組成物」は、相応に、少なくとも1種のセメント質バインダーを含む組成物を意味する。この組成物は、特に、バインダーと、充填材と、任意選択的に1種以上の混和剤とを含む。
【0032】
本明細書における「モルタル」又は「コンクリート」は、少なくとも1種のセメントと少なくとも1種の無機充填材とを含み、且つセメントの水和後、固体形状で硬化することができる水性分散系を意味する。「モルタル」は、これに関連して、典型的には最大で約8mmの粒径を有する充填材を含む分散系を意味し、「コンクリート」は、8mm超の粒径を有する充填材も含む分散系を意味する。
【0033】
本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、メタアクリル酸及びアクリル酸の両方を意味し、これは、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸の他の化合物にも相応に適用される。
【0034】
本明細書において、水酸化カルシウム粒子の粒径は、2つの異なる機器を用いて測定されている。
【0035】
両方ともSympatec、Germany製のQuixel分散ユニットを備えたHELOS機器で水酸化カルシウム懸濁液の粒径がレーザー回折によって測定された。この場合、懸濁液は、飽和水酸化カルシウム溶液で希釈された。この測定は、懸濁液において0.10~8750μmの粒径を捕らえる。
【0036】
ナノ粒子のサイズ測定のためにSympatec、Germany製のNanophox機器が用いられた。この場合、粒径は、光子相互相関分光法での動的光散乱によって測定される。この機器は、0.5~10000nmの粒径を捕らえる。
【0037】
水酸化カルシウムは、ナノ粒子の形態で好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、より特に少なくとも85重量%の程度まで水性懸濁液中に存在する。
【0038】
水酸化カルシウムナノ粒子は、有利には、ISO 22412:2017に記載されるような光子相互相関分光法での動的光散乱によって測定される950nm未満、好ましくは10~800nm、より好ましくは20~500nm、最も好ましくは30~400nm、より特に40~300nm、とりわけ50~200nmの粒径を有し、且つ/又は800nm未満、好ましくは600nm未満、より特に400nm未満、とりわけ200nm未満のD90を有する。
【0039】
そのような寸法を有する水酸化カルシウム粒子を含む懸濁液は、特に、貯蔵安定性があり、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物の硬化促進に非常に有効である。
【0040】
懸濁液の貯蔵安定性は、好ましくは、実施例に記載されるように遠心分離し、溶液の濁度を測定することによって決定される。遠心分離後の上相がより濁っているほど、沈降する粒子の数がより少なく、懸濁液がより安定である。濁度は、有利には濁度計で測定され、NTU単位で報告される。NTUは、比濁法濁度単位を意味する。この値が高いほど、試料の濁度がより大きく、懸濁液がより安定である。
【0041】
有利には、水性懸濁液は、それが10重量%の水酸化カルシウム含有量を有する場合、8000回転毎分で15分にわたって50ml遠心分離管中での50mlの懸濁液の遠心分離及び濁度測定のための上部40mlの取出後、HACH(登録商標)2100AN濁度計で測定される3000NTU超、好ましくは4000NTU超、より好ましくは5000NTU超、より特に6000NTU超、とりわけ7000NTU超又は8000NTU超の濁度を有する。
【0042】
懸濁液は、アルカリ金属塩を更に含み得る。アルカリ金属塩は、水酸化カルシウム懸濁液に添加され、その中に溶解され得る。
【0043】
代わりに、アルカリ金属塩は、水溶性カルシウム塩及びアルカリ金属水酸化物からの沈殿反応による水酸化カルシウムの調製中に生じ得る。
【0044】
水性懸濁液は、水酸化カルシウムの1モルを基準として0.01~2.5モル、好ましくは0.1~2.2モルのアルカリ金属塩、より特にナトリウム、カリウム若しくはリチウム塩、好ましくはナイトレート、クロリド、アセテート、ホルメート若しくはチオシアネートのナトリウム塩又はそれらの混合物を好ましくは含む。これは、とりわけ良好な硬化促進をもたらすことができる。
【0045】
ある種の用途のために、とりわけ鋼強化材入りセメント質組成物における硬化促進剤として、アルカリ金属塩がクロリドを含まない場合が有利である。クロリドは、建築用鋼材の腐食を促進し、従って強化構成要素の寿命に有害であり得る。
【0046】
最も好ましくは、アルカリ金属塩は、硝酸ナトリウム又は硝酸カリウム、より特に硝酸ナトリウムである。
【0047】
本発明の更なる有利な実施形態において、水酸化カルシウムだけでなく、懸濁液も、より特にナノ粒子の形態の非常に細かい炭酸カルシウム及び/又はCSH粒子を更に含み得る。炭酸カルシウム及び/又はCSH粒子の分率は、水酸化カルシウムの重量を基準として好ましくは0.01~50重量%、より特に0.05~30重量%である。これは、硬化促進効果にとって有利であり得る。
【0048】
CSHは、ここで、ケイ酸カルシウム水和物を表す。
【0049】
有利には、懸濁液は、硫酸カルシウムを含まない。
【0050】
懸濁液は、安定化のための少なくとも1種の化合物を含む。この化合物は、意外にも、水酸化カルシウム粒子の非常に良好な安定性をもたらし、より特に、それは、粒子の凝集を減らし且つ/又は防ぐ。結果として、水酸化カルシウム粒子は、ナノ範囲の粒径で非常に小さいままであり、従って沈降への傾向が非常に少ないか又は傾向がなく、従ってナノ粒子の高い分率の非常に細かい極めて貯蔵安定性がある懸濁液を可能にする。
【0051】
懸濁液を安定させるための化合物は、好ましくは、カルボキシレ-ト基、スルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基若しくはホスホネート基、又はそれらの混合物、又はそれらの塩を含むアニオン性ポリマーである。
【0052】
アニオン性ポリマーは、より特に、鎖付加ポリマー又は重縮合物である。アニオン性ポリマーは、好ましくは、12.0のpH、より好ましくは7のpH、より特に4以下のpHで水に可溶性である。
【0053】
アニオン性ポリマーは、好ましくは、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物のための可塑剤としての役割も果たす。
【0054】
好適なアニオン性ポリマーの例としては、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ビニルコポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、ホスホネート基を有するポリアルキレングリコール、ホスフェート基を有するポリアルキレングリコール、アニオン基及びポリエーテル側鎖を有する櫛形ポリマー、又はそれらの塩、又は述べられたポリマーの混合物が挙げられる。
【0055】
懸濁液を安定させるための化合物は、好ましくは、ポリアルキレンオキシド単位、より特にポリエチレンオキシド単位を含む。
【0056】
アニオン性ポリマーは、有利には、水性懸濁液中で安定である。有利には、それは、高いpH、とりわけ12.0超で加水分解を受ける基を有さず、より特に側鎖結合を有さない。
【0057】
アニオン性ポリマーは、より特に、ポリアルキレンオキシド側鎖を有するポリマー主鎖と、主鎖に結合したアニオン性基とを含む櫛形ポリマーである。側鎖は、ここで、特にエステル、エーテル、イミド及び/又はアミド基によってポリカルボキシレ-ト主鎖に結合している。
【0058】
懸濁液を安定させるための化合物は、好ましくは、式Iの構造単位(i)及び式IIの構造単位(ii)
【化1】
(式中、
R
1は、それぞれの場合に互いに独立して、-COOM、-SO
2-OM、-O-PO(OM)
2、-PO(OM)
2、-(CO)-NH-C(CH
3)
2-CH
2-SO
3M、-CH
2-SO
3M、
【化2】
であり、
R
2は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-CH
2COOM又は1~5つの炭素原子を有するアルキル基であり、
R
3、R
5及びR
6は、それぞれの場合に互いに独立して、H又は1~5つの炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4及びR
7は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-COOM又は1~5つの炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、互いに独立して、H
+、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを表し、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
Xは、それぞれの場合に互いに独立して、-O-、-NH-又は-NR
8-であり、
R
8は、式-[AO]
n-R
a
(式中、A=C
2~C
4アルキレンであり、且つR
aは、H又はC
1~C
20アルキル、シクロヘキシル若しくはアルキルアリール基であり、及び
nは、1~250である)
の基である)
を含む櫛形ポリマーである。
【0059】
構造単位(i)及び構造単位(ii)(式中、
R1は、-COOMであり、
R2及びR5は、それぞれの場合に互いに独立して、H又はCH3であり、
R3、R6及びR7は、Hであり、
R4は、それぞれの場合に互いに独立して、H又は-COOMであり、
Mは、それぞれの場合に互いに独立して、H+、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを表し、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
Xは、それぞれの場合に互いに独立して、-O-又は-NH-であり、
R8は、式-[AO]n-Ra
(式中、A=C2~C3アルキレン、好ましくはC2アルキレンであり、且つRaは、H又はC1~C4アルキル基であり、及び
nは、10~200、好ましくは22~150、より特に50~120である)
の基である)
を含む櫛形ポリマーがとりわけ好ましい。
【0060】
構造単位(i)がアクリル酸又はメタクリル酸に由来し、且つ構造単位(ii)がポリエチレングリコールメタクリレート又はアルケニル基中に2~5つの炭素原子を有し、且つポリエチレングリコール鎖が10~150、好ましくは22~120のエチレングリコール単位を有するアルケニル-ポリエチレングリコールエーテルに由来する櫛形ポリマーが特に有利である。
【0061】
有利には、櫛形ポリマーは、専ら構造単位(i)及び(ii)からなる。
【0062】
構造単位(i)対構造単位(ii)のモル比は、好ましくは、1:1~25:1、より好ましくは1.5:1~23:1、更により好ましくは2:1~20:1、より特に2.3:1~18:1である。
【0063】
しかしながら、構造単位(iii)が構造単位(i)及び(ii)と異なる状態で、櫛形ポリマーが更なる構造単位(iii)を含む場合も有利であり得る。有利な更なる構造単位は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、ビニルエステル、スチレン、スルファニル酸又はアルキルアミンとのマレイン酸のモノアミド、とりわけヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシプロピルアクリレートに由来する。
【0064】
構造単位(iii)は、櫛形ポリマー中に有利には0~70重量%、好ましくは0.1~50重量%、より特に0.5~40重量%で存在する。
【0065】
アニオン性ポリマー中の疎水性構造単位の分率は、好ましくは、50モル%未満、より特に30モル%未満、とりわけ10モル%未満である。
【0066】
疎水性構造単位は、これに関連して、水に不溶性であるか又は非常に不十分に可溶性であるモノマーに由来する。
【0067】
アニオン性ポリマー、より特に櫛形ポリマーは、好ましくは、専ら高水溶性構造単位からなる。
【0068】
櫛形ポリマーは、ホスフェート又はホスホネート基が2のアニオン性官能価を有する状態で、ポリマーの1g当たり好ましくは1.5~6、より好ましくは1.8~5、より特に2.0~4、とりわけ2.2~3.5ミリモルのアニオン性官能基の分率を有する。
【0069】
そのような構造を有する櫛形ポリマーは、とりわけ、懸濁液を安定させ、且つ粒子の凝集を防ぎ、そのようにして非常に細かい及び安定した懸濁液をもたらすのにとりわけ好適である。同時に、それらは、懸濁液を使用して硬化促進される、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物を可塑化すること及び強度の所望の迅速な成長に過度に影響を及ぼすことなく長期にわたってこれらの組成物の高い作業性を確保することに極めて好適である。
【0070】
櫛形ポリマーは、好ましくは、8000~150000の、より好ましくは9000~120000、より特に10000~100000、とりわけ11000~80000の平均分子量Mwを有する。
【0071】
重量平均分子量Mw又は数平均分子量Mnなどの分子量は、ここで、標準としてのポリエチレングリコールを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。使用される溶離剤は、そのpHがNaOHを使用して12に調整されている0.1N NaNO3溶液である。
【0072】
この技法は、当業者にそれ自体公知である。
【0073】
櫛形ポリマーの好適な調製方法は、対応するモノマーのフリーラジカル共重合又は一端でキャップされているポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールアミンでのカルボキシル基を含むポリマーのポリマー類似エステル化又はアミド化である。
【0074】
有利な櫛形ポリマーは、好適なモノマーの「リビングラジカル重合」によって調製することもできる。ブロック構造又は勾配構造を有する櫛形ポリマーがとりわけ有利である。例示的な好適なポリマー及びまたそれらの調製は、国際公開第2015/144886号パンフレット及び国際公開第2017/050907号パンフレットに記載されている。
【0075】
懸濁液を安定させるための化合物は、水性懸濁液中において、水酸化カルシウムの100部を基準として、固体として計算される好ましくは5~40部、より好ましくは8~35部、更により好ましくは10~32部、非常に好ましくは11~30部で存在する。
【0076】
この種の量は、水酸化カルシウム粒子の非常に有効な分散と、懸濁液の高い貯蔵安定性とをもたらす。
【0077】
意外にも、懸濁液の安定性は、水性懸濁液のpHが増加する場合に更により良好であることが明らかになった。これは、有利には、懸濁液の製造中又は製造後にアルカリ金属水酸化物を添加することによって達成される。
【0078】
懸濁液のpHは、有利には、24℃で測定される12.0超及び13.8未満である。
【0079】
特に好適な水性懸濁液は、水性懸濁液の100重量%を基準として、
- 8~15重量%の水酸化カルシウムであって、水酸化カルシウムの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%は、ナノ粒子の形態である、水酸化カルシウムと、
- 15~25重量%のアルカリ金属塩、より特にNaNO3と、
- 0.8~3重量%の櫛形ポリマーと
を含む。
【0080】
懸濁液は、有利には、少なくとも1種の更なる添加物、より特に天然若しくは合成ポリマーを好ましくはベースとする増粘剤及び/又は消泡剤を更に含み得る。
【0081】
懸濁液は、懸濁液の総重量を基準として0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満のメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、例えばエチレングリコールなどのグリコール、グリセロール、ケトン並びに/又は例えばキシリトール、ソルビトール及びエリトリトールなどの糖アルコールを含有する。そのようなアルコールは、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物の硬化に抑制効果を有し、従って硬化促進剤中にあまり望ましくない。
【0082】
本発明の更なる主題は、
- 5~65重量%の水酸化カルシウムであって、水酸化カルシウムの少なくとも50重量%は、ナノ粒子の形態である、水酸化カルシウムと、
- 懸濁液を安定させるための少なくとも1種の化合物と
を含む水性懸濁液を製造する方法である。
【0083】
水性懸濁液は、好ましくは、水溶性カルシウム塩をアルカリ金属水酸化物と反応させることによって製造され、懸濁液を安定させるための化合物は、反応中に存在するか又は反応後に添加される。
【0084】
より特に、水溶性カルシウム塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム及びチオシアン酸カルシウム並びにそれらの混合物を包含する群から選択される。
【0085】
ある種の用途のために、水溶性カルシウム塩がクロリドではない場合が有利である。クロリドは、例えば、コンクリート中の強化鉄の腐食を促進する。
【0086】
アルカリ金属水酸化物は、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0087】
より特に、カルシウム塩対アルカリ金属水酸化物のモル比は、1.0:2.0~2.4、好ましくは1.0:2.02~2.3である。
【0088】
反応は、好ましくは、水中又は水と水混和性溶媒、より特にアルコールとの混合物中、最も好ましくは純水中で行われる。アルコール、とりわけメタノール、エタノール又は2-プロパノールは、可燃性液体であり、従って懸濁液を製造する場合に爆発防護デバイスを必要とし、そのため費用を増加させる。有機溶媒、とりわけアルコール、グリコール又はケトンは、セメント質バインダーの硬化も抑制し得るか又は更に防止し得る。
【0089】
とりわけ好ましくは、従って、水性懸濁液は、有機溶媒、とりわけアルコール、グリコール、より特にエチレングリコール若しくはプロピレングリコール又はケトンを含まない。
【0090】
低い溶解CO2含有量の水が好ましくは使用される。
【0091】
1つの有利な実施形態において、反応は、不活性ガス又は低CO2空気下で実施される。
【0092】
これは、炭酸カルシウムの形成を減少させる。
【0093】
水性懸濁液は、有利には、
(a)好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より特に少なくとも20重量%のカルシウム塩により、水溶性カルシウム塩、より特に硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム又はそれらの混合物を含む水溶液Aを提供する工程と、
(b)好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より特に少なくとも18重量%のアルカリ金属水酸化物により、アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOH、KOH又はそれらの混合物を含む水溶液Bを提供する工程と、
(c)溶液Aと溶液Bとを接触させる工程であって、2つの溶液は、非常に迅速に且つ強く、好ましくは連続的に混合される、工程と、
(d)結果として生じた懸濁液を反応容器又は連続反応器から排出する工程と
によって製造され、懸濁液を安定させるための化合物は、溶液A、溶液B若しくは両方の溶液又は製造された懸濁液に添加される。
【0094】
懸濁液を安定させるための化合物は、好ましくは、専ら溶液A及び/又は溶液B、とりわけ溶液A中に存在する。
【0095】
懸濁液を安定させるための好ましい化合物は、上で既に記載されている。
【0096】
溶液Aは、好ましくは、10~87重量%、より好ましくは15~85重量%、非常に好ましくは20~80重量%のカルシウム塩を含有する。溶液A中に存在するカルシウム塩は、好ましくは、硝酸カルシウム、より特に硝酸カルシウム四水和物である。硝酸カルシウム四水和物は、反応のために有利である特に高い水溶性を有する。
【0097】
溶液Bは、好ましくは、10~50重量%、より好ましくは20~40重量%のアルカリ金属水酸化物、より特に水酸化ナトリウムを含有する。
【0098】
本発明の1つの好ましい実施形態において、溶液A及び溶液Bは、それらがその中で強く混合される反応容器又は連続反応器に同時に計量供給される。溶液が計量供給される方法は、好ましくは、カルシウム塩対アルカリ金属水酸化物のモル比、1:2.0~2.4、好ましくは1:2.02~2.3が計量供給期間の全体にわたってほぼ観察されるようなものである。
【0099】
強い混合は、好ましくは、連続反応器中で行われる。
【0100】
好ましくは、溶液A及び溶液Bは、好ましくは、ポンプにより、連続反応器中に有利には圧力下で非常に迅速に計量供給される。
【0101】
好ましくは、溶液A及び溶液Bは、連続反応器中に少なくとも5バール、より特に少なくとも8バール、とりわけ少なくとも10バールの圧力下でそれぞれ計量供給される。圧力は、より特に、50バール以上までであり得る。連続反応器は、好ましくは、それ自体圧力下にないか、又は反応区画中で0.5バール以下の圧力を有する。「圧力」は、ここで、外部圧力、換言すれば周囲大気圧に対する圧力差を意味する。
【0102】
高い圧力及び反応器への導入時の溶液の得られる高速度は、2つの溶液の強い渦巻き、従って迅速な且つ強い混合をもたらす。
【0103】
特に、溶液Aと溶液Bとが混合される混合エネルギーは、製造される水酸化カルシウム懸濁液の1キログラム当たり200kJ以下、好ましくは150kJ、とりわけ100kJ、特に70kJ未満である。
【0104】
連続反応器は、好ましくは、管型反応器である。反応器中に存在する静的及び/又は動的混合エレメントもあり得る。
【0105】
反応時間は、好ましくは、非常に短い。
【0106】
2つの溶液の迅速な且つ強い混合は、好ましくは、連続的に行われ、及び混合時間は、好ましくは、1分未満、より好ましくは30秒未満、より特に10秒未満、とりわけ1秒未満である。
【0107】
そのような方法は、簡単で迅速であり、且つ意外にも狭い粒度分布を有する水酸化カルシウムナノ粒子が得られる。
【0108】
本発明の更なる好ましい実施形態において、水性懸濁液は、固形分を増加させるために、好適な手段、特に例えば蒸発による水のいくらかの除去によっても濃縮され得る。
【0109】
結果として、懸濁液は、より少ない添加量で使用することができ、輸送及び貯蔵の費用を削減することができる。
【0110】
水酸化カルシウム粒子の水性懸濁液は、製造の過程で使用された又は生じた補助剤又は副生成物を除去するために任意選択的にクリーニングされ得る。これは、特に、イオン交換、濾過又は限外濾過によって行われ得る。
【0111】
好ましくは、懸濁液の製造並びにクリーニング及び/又は濃縮の両方は、連続的に、好ましくは直接に連続的段階で行われる。
【0112】
これは、時間及び費用を節約する。
【0113】
本発明の懸濁液は、例えば、酸性溶液を中和するために、又はミネラルバインダー組成物のための硬化促進剤としてのような様々な目的のために使用することができる。
【0114】
水性懸濁液は、好ましくは、ミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物の硬化を促進するために使用される。
【0115】
ミネラルバインダー組成物は、好ましくは、凝集体を更に含む。
【0116】
ミネラルバインダー組成物は、好ましくは、モルタル又はコンクリートである。
【0117】
水性懸濁液は、ミネラルバインダー、とりわけセメントの硬化を促進し、それによって高い強度を迅速に達成するのに極めて好適であり、それは、非常に望ましい。
【0118】
好適なセメントは、全ての一般的なセメント、特にDIN EN 197-1で分類される以下のセメント:ポルトランドセメント(CEM I)、ポルトランド複合セメントCEM II)、溶鉱炉スラグセメント(CEM III)、ポゾランセメント(CEM IV)及び複合セメント(CEM V)並びにまた例えばアルミン酸カルシウムセメント又はスルホアルミン酸カルシウムセメントなどの特殊セメントを包含する。例えば、ASTM標準又はJIS標準などの代わりの標準に従って製造されるセメントは、当然のことながら、等しく好適である。
【0119】
水性懸濁液は、有利には、ミネラルバインダー組成物中において、ミネラルバインダーの重量を基準として0.05~6重量%、より好ましくは0.1~5重量%、より特に0.2~4重量%の水酸化カルシウム粒子があるような量で計量供給される。
【0120】
この種の量は、硬化の有効な促進をもたらす。
【0121】
本発明の水性懸濁液は、セメントと水との混合と、硬化の開始とも呼ばれる発熱水和反応の開始との間の時間である休息期間を短くするのみならず、代わりに、それは、水和反応自体も促進する。
【0122】
これは、低温では休息期間が長引き、且つセメントの水和反応が大幅に遅くなるため、比較的低い温度、とりわけ20℃未満又は15℃未満での適用にとって特に重要である。
【0123】
この促進の結果として、意外にも、セメント質組成物の良好な作業性が影響を受けず、且つまた可使時間が短くされない。これは、水性懸濁液を含むモルタル又はコンクリート混合物の両方が、直ちに及び60又は90分後、同じw/cについて、水性懸濁液なしのコンクリート又はモルタル混合物のものに匹敵するスランプを有することを意味する。w/cは、ここで、水対セメントの重量比を示す。
【0124】
本発明の懸濁液は、可使時間が影響を受けず、それにもかかわらず高い強度が迅速に達成されるため、レディミックスコンクリートでの使用にとりわけ有利である。
【0125】
セメント質組成物は、好ましくは、例えばコンクリート混和剤及び/又はモルタル混和剤のような少なくとも1種の添加物を更に含む。少なくとも1種の添加物は、より特に、消泡剤、湿潤剤、染料、保存剤、可塑剤、抑制剤、別の硬化促進剤、ポリマー、空気共留剤、レオロジー補助剤、粘度調整剤、ポンピング補助剤、収縮低減剤、腐食防止剤若しくは繊維又はそれらの組み合わせを包含する。
【0126】
そのような混和剤は、当業者に公知である。
【0127】
懸濁液は、混合水と一緒に又は混合水後にミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質組成物に好ましくは添加される。
【0128】
懸濁液は、好ましくは、少なくとも20秒間にわたり、機械ミキサー付きの好適な混合容器中で組成物と完全に混合される。
【0129】
これは、混合物中の水酸化カルシウム粒子の一様な分配及び硬化促進剤としての良好で一様な効果を確実にする。
【0130】
本発明の更なる主題は、本発明の水性懸濁液を含むミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質バインダー組成物である。
【0131】
本発明の更なる主題は、上に記載されたようなミネラルバインダー組成物、とりわけセメント質バインダー組成物を硬化させることによって得ることができる造形品に関する。
【0132】
造形品は、好ましくは、大形建造物又は大形建造物の一部であり、大形建造物は、例えば、橋、建物、トンネル、交通道路又は滑走路であり得る。
【0133】
本発明の更なる有利な実施形態は、以下に続く実施例から明らかである。
【0134】
【図面の簡単な説明】
【0135】
【発明を実施するための形態】
【0136】
図1は、等温熱流熱量測定法によって測定される、セメントペーストの水和熱の経時推移のグラフを描く。矢印は、硬化の開始を示し、破線は、上昇角度が描き込まれている状態で曲線の上昇を示す。
【実施例】
【0137】
記載される本発明をより詳細に例示することを意図する実施例を以下に提示する。本発明は、当然のことながら、記載されるこれらの実施例に限定されない。
【0138】
「Ex.」は、「実施例」を表す。
【0139】
「Ref.」は、「参考例」を表す。
【0140】
1.測定方法の説明
HELOSによる粒径:水酸化カルシウム懸濁液の粒径は、レーザー回折によって測定した。測定のために用いられる機器は、両方ともSympatec、Germany製のQuixel分散ユニットを備えたHELOSであった。この機器は、0.10~8750μmの粒径を捕らえる。測定のために、懸濁液を飽和水酸化カルシウム溶液で希釈した。
【0141】
Nanophoxによる粒径:水酸化カルシウムナノ粒子の粒径は、光子相互相関分光法での動的光散乱によって測定した。測定のために用いられる機器は、Sympatec GmbH、Germany製のNanophoxであった。この機器は、0.5~10000nmの粒径を捕らえる。試料が希釈される必要はない。測定前に試料を1分間にわたって超音波探触子で均質化した。
【0142】
懸濁液の貯蔵安定性は、次のとおり測定した:45°の固定角度の回転子を備えた、遠心分離機(Thermo ScientificTM製のHeraeusTM Biofuge Primo R)において、50mlの新鮮な懸濁液及び完全撹拌の懸濁液のそれぞれをスクリュークロージャ付きのFalcon(登録商標)遠心分離管(50ml)に導入し、23℃で15分間、8000回転毎分で遠心分離した。上部40mlを次に遠心分離管から取り出し、それらの濁度を確認した。
【0143】
濁度は、US EPA 180.1に従って比濁分析により測定した(90°)。この目的のために用いられる機器は、タングステン光源及び単位NTU(比濁法濁度単位)の、HACH(登録商標)、Germany製のHACH(登録商標)2100AN濁度計であった。
【0144】
セメントペーストの水和挙動は、等温熱流熱量測定法を用いて測定した。この目的のために用いられる機器は、TA Instruments、USA製のTAM Airであった。硬化セメント参考試料と比較して水和熱の経時推移を測定した。セメントと水との混合から、第1最小値の達成後の熱流の第1増加までの間のタイムスパンを硬化の開始までの時間として評価する。熱流曲線の上昇の角度を測定するために、硬化の開始と次の最大値との間に位置する曲線セクションのターニングポイントに接線を置いた。接線と水平軸とによって形成される角度を熱流曲線の上昇の角度として評価する。上昇の角度は、水和反応の速度の尺度である。反応が速いほど、上昇が急であり、角度がより大きい。
【0145】
【0146】
モルタル混合物のスランプは、EN 1015-3に従って測定した。
【0147】
モルタル混合物の硬化の開始及び硬化の終わりは、水との混合後の時間の過程で温度を測定することによって確認した。温度測定は、20℃に調整された室内の隔離容器中に貯蔵されたモルタル試料に関して温度センサーとしての熱電対で行った。
【0148】
これらの実施例について、硬化の開始は、水との混合から、誘導期(すなわち休止期)後の温度曲線の上昇の時間までの間に経過した時間である。
【0149】
これらの実施例についての硬化の終わりは、水との混合から、誘導期後に起こる温度最大値の達成までの間に経過した時間である。
【0150】
硬化モルタルの圧縮強度は、4×4×16cmのモルタルプリズムに関して測定した。この目的のために、新鮮なモルタルを対応する金型に導入し、20℃で貯蔵した。8及び24時間後、EN 196-1に従ってモルタルプリズムの圧縮強度の測定を行った。
【0151】
2.使用される原材料
ポリマーP1は、15:1のモル比でのアクリル酸単位とポリエチレングリコールメタクリレート単位(ポリエチレングリコールのMw:5000g/モル)とからなり、32重量%の固形分を有する櫛形ポリマーの水溶液である。
Sika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)-20 HE(VC 20 HE)は、Sika Schweiz AG、Switzerlandから入手可能である、変性ポリカルボキシレ-トをベースとする流動化剤の水溶液である。
SikaRapid(登録商標)-1は、Sika Schweiz AG、Switzerlandから入手可能な硬化促進剤である。
SikaRapid(登録商標)C-100は、Sika Schweiz AG、Switzerlandから入手可能な硬化促進剤である。
Emsure(登録商標)ACSは、Merck KGaA、Germanyから入手可能な水酸化カルシウム粉末である。
Verit Naturは、Schretter und Cie GmbH & Co KG、Austriaから入手可能である、粒子の少なくとも93重量%が90μm未満及び20000m2/gのBlaine値(製品データシートからの情報)の白漆喰水和物である。
Zement CEM I 42.5 Nは、Jura-Cement-Fabriken AG、Switzerlandから入手可能なポルトランドセメントである。
Zement CEM I 52.5 Rは、商品名Normo 5RでHolcim Schweizから入手可能なポルトランドセメントである。
【0152】
3.水性水酸化カルシウム懸濁液
懸濁液S1及びS2の製造
ビーカー中で30.0gのポリマーP1を335.2gの水に溶解させ、その後、プロペラ攪拌機を用いて激しく撹拌しながら、54.7gの水酸化カルシウム粉末を散乱させて入れ、次に硝酸ナトリウムを懸濁液に溶解させた。攪拌機を止めると直ちに、水酸化カルシウムの一部は、撹拌容器の底部に沈降した。
【0153】
懸濁液S1及びS2は、表1に報告される組成及び特性を有した。
【0154】
懸濁液S3の製造
懸濁液S3は、懸濁液S2のように製造したが、添加される硝酸ナトリウムを重量で同じ量の水で置き換えた。攪拌機を止めると直ちに、水酸化カルシウムの一部は、撹拌容器の底部に沈降した。
【0155】
懸濁液S3は、表1に報告される組成及び特性を有した。
【0156】
懸濁液S4の製造
硝酸カルシウム溶液:174.4gのCa(NO3)2*4H2O(0.739モル)を62gの温水(45℃)に溶解させ、次に30gのポリマーP1をこの溶液に溶解させた。
【0157】
水酸化ナトリウム溶液:59.1gのNaOH(1.478モル)を冷却しながら220gの水に溶解させた。
【0158】
硝酸カルシウム溶液を1リットルの丸底フラスコに装入した。プロペラ攪拌機を用いて撹拌しながら、水酸化ナトリウム溶液を5分にわたって滴下漏斗によって添加した。結果として生じる懸濁液を更なる60分間にわたって撹拌した。
【0159】
懸濁液S4は、表1に報告される組成及び特性を有した。
【0160】
懸濁液S5の製造
使用される溶液は、懸濁液S4について記載されたものと同じものであった。しかしながら、この実施例では、両方の溶液を連続反応器に同時に計量供給し、混合を短い混合時間において高い混合強度で行った。結果として生じる懸濁液を反応器から連続排出した。
【0161】
懸濁液S5は、表1に報告される組成及び特性を有した。
【0162】
懸濁液S5-UFの製造
懸濁液S5を、30KDaサイズ排除限界を有するポリエーテルスルホン膜を使用する限外濾過によって精製した。この手順において、NaNO3を除去し、懸濁液を濃縮した。その後、100gの懸濁液中の10gの水酸化カルシウムを与えるように懸濁液を飽和水酸化カルシウム溶液で希釈した。
【0163】
懸濁液S5-2の製造
S5-UFの懸濁液の製造を繰り返したが、希釈段階において、100gの懸濁液中に10gの水酸化カルシウム及び23gのNaNO3があるような量でNaNO3も添加した。
【0164】
懸濁液S1~S5の重量%単位での組成及びまた特性を表1に報告する。
【0165】
【0166】
4.実用性試験
4.1 セメントペーストでの試験
32.4gの水と、表2及び3のとおりの4gの水性懸濁液とを100gのCEM I 42.5 Nセメントに添加し、混合を、機械撹拌機を用いて2分間実施した。水和熱の推移を次に測定した。
【0167】
混和剤なしの比較(Ref.5及びRef.11)について、100gのセメントを同じように35gの水と混合した。
【0168】
唯一の混和剤としてNaNO3を用いた比較(Ref.6)について、0.92gのNaNO3を35gの水に溶解させ、上に記載されたようにセメントと混合した。
【0169】
水和熱の測定の評価を表2及び3に報告する。
【0170】
【0171】
【0172】
表2及び表3からの結果、とりわけRef.5及びRef.11並びにまたEx.2及びEx.3を比較する場合、表2及び表3に記載される実験が異なる時点及び異なるセメント供給品で実施されたことに留意すべきである。異なる齢及び異なるバッチからのセメントは、測定値に影響を及ぼし得る変動を受ける。しかしながら、各測定シリーズ(それぞれ表2での測定シリーズ及び表3での測定シリーズ)内では、使用されるセメントは、同じものであった。
【0173】
4.2 モルタル混合物での試験
モルタルシリーズ1
Hobart製の強制ミキサー中で750gのCEM I 52.5 Rセメント、141gの石灰石充填材、738gの0~1mm砂、1107gの1~4mm砂及び1154gの4~8mm砂を1分間乾式混合した。次に、水と、表4に報告される混和剤との292.5gの混合物を撹拌しながら30秒にわたってミキサー中の乾燥モルタル混合物に添加し、モルタルを更なる2.5分間にわたって混合した。全湿式混合時間は、それぞれの場合に3分続いた。混和剤の計量供給添加のレベル、スランプ及びまたモルタル混合物の硬化時間を表4に報告する。
【0174】
【0175】
モルタルシリーズ2
モルタルシリーズ1に記載されるようなモルタル混合物を製造した。しかしながら、このシリーズでは、水と、表5のとおりの混和剤との300gの混合物を使用した。混和剤の計量供給添加のレベル、スランプ及びまたモルタル混合物の圧縮強度を表5に報告する。
【0176】
【0177】
表4及び表5の結果、とりわけRef.12及びRef.15の比較において、モルタル試験が異なる測定シリーズ及び異なる日付で実施されたことに留意すべきである。異なる齢のセメント及び異なるバッチからの砂は、測定値に影響を及ぼし得る変動を受ける。しかしながら、各測定シリーズ(それぞれ表4での測定シリーズ及び表5での測定シリーズ)内では、使用されるセメント及び砂は、常に同じものであった。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]水性懸濁液であって、
- 5~65重量%の水酸化カルシウムであって、前記水酸化カルシウムの少なくとも50重量%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウム、及び
- 前記懸濁液を安定させるための少なくとも一種の化合物
を含む水性懸濁液。
[2]前記水酸化カルシウムは、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より特に少なくとも85重量%の範囲までナノ粒子の形態で存在することを特徴とする、上記[1]に記載の水性懸濁液。
[3]前記水酸化カルシウムナノ粒子は、光子相互相関分光法での動的光散乱によって測定して、950nm未満、好ましくは10~800nm、より好ましくは20~500nm、最も好ましくは30~400nm、より特に40~300nm、とりわけ50~200nmの粒径を有し、且つ/又は800nm未満、好ましくは600nm未満、より特に400nm未満、とりわけ200nm未満のD90を有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の水性懸濁液。
[4]10重量%の水酸化カルシウム含有量を有する場合、毎分8000回転で15分にわたる50ml遠心分離管中での50mlの前記懸濁液の遠心分離及び濁度測定のための上部40mlの取出後に、HACH(登録商標)2100AN濁度計で測定して、3000NTU超、好ましくは4000NTU超、より好ましくは5000NTU超、より特に6000NTU超、とりわけ7000NTU超又は8000NTU超の濁度を有することを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の水性懸濁液。
[5]水酸化カルシウムの1モルを基準として、0.01~2.5モル、好ましくは0.1~2.2モルのアルカリ金属の硝酸塩、塩化物塩、酢酸塩、ギ酸塩、チオシアン酸塩又はそれらの混合物、より特にナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩、好ましくはナトリウム塩を含むことを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の水性懸濁液。
[6]前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、カルボキシレ-ト基、スルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基若しくはホスホネート基、又はそれらの混合物、又はそれらの塩を含むアニオン性ポリマーであることを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の水性懸濁液。
[7]前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、櫛形ポリマーであり、且つ式Iの構造単位及び式IIの構造単位を含むことを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の水性懸濁液:
【化3】
[式中、
R
1
は、それぞれの場合に互いに独立して、-COOM、-SO
2
-OM、-O-PO(OM)
2
、-PO(OM)
2
、-(CO)-NH-C(CH
3
)
2
-CH
2
-SO
3
M、-CH
2
-SO
3
M、
【化4】
であり、
R
2
は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-CH
2
COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
3
、R
5
及びR
6
は、それぞれの場合に互いに独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4
及びR
7
は、それぞれの場合に互いに独立して、H、-COOM又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、互いに独立して、H
+
、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを表し、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
Xは、それぞれの場合に互いに独立して、-O-、-NH-又は-NR
8
-であり、
R
8
は、式-[AO]
n
-R
a
の基である
(式中、A=C
2
~C
4
アルキレンであり、且つR
a
は、H又はC
1
~C
20
アルキル、シクロヘキシル若しくはアルキルアリール基であり、及び
nは、1~250である)]。
[8]前記懸濁液を安定させるための前記化合物が、水酸化カルシウムの100部を基準として、固体として計算して5~40部、好ましくは8~35部、より好ましくは10~32部、より特に11~30部で存在することを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の水性懸濁液。
[9]前記水性懸濁液の100重量%を基準として、下記を含むことを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の水性懸濁液:
- 8~15重量%の水酸化カルシウムであって、前記水酸化カルシウムの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%がナノ粒子の形態である水酸化カルシウム、
- 15~25重量%のアルカリ金属塩、より特にNaNO
3
、及び
- 0.8~3重量%の櫛形ポリマー。
[10]下記の工程を含む、水性懸濁液を製造する方法:
(a)水溶性カルシウム塩、より特に硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム又はそれらの混合物を含む水溶液Aであって、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より特に少なくとも20重量%のカルシウム塩を有する水溶液Aを提供する工程、
(b)アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOH、KOH又はそれらの混合物を含む水溶液Bであって、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より特に少なくとも18重量%のアルカリ金属水酸化物を有する水溶液Bを提供する工程、
(c)溶液Aと溶液Bとを接触させる工程であって、前記2つの溶液を、非常に迅速に且つ強く、好ましくは連続的に混合する工程、及び
(d)上記の結果として生じた懸濁液を反応容器又は連続反応器から排出する工程、
ここで、前記懸濁液を安定させるための化合物を、前記溶液Aに、前記溶液Bに、若しくは両方の溶液に、又は製造した前記懸濁液に添加する。
[11]前記2つの溶液の迅速な且つ強い前記混合を連続的に行い、かつ混合時間は、1分未満、好ましくは30秒未満、より特に10秒未満、とりわけ1秒未満であることを特徴とする、上記[10]に記載の水性懸濁液を製造する方法。
[12]ミネラルバインダー組成物、より特にセメント質組成物の硬化を促進するための、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の水性懸濁液の使用。
[13]前記ミネラルバインダー組成物において、ミネラルバインダーの重量を基準として、0.05~6重量%、より好ましくは0.1~5重量%、より特に0.2~4重量%の水酸化カルシウム粒子が存在する量で、前記水性懸濁液を計量供給する、上記[12]に記載の使用。
[14]上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の水性懸濁液を含むミネラルバインダー組成物。
[15]上記[14]に記載のミネラルバインダー組成物を硬化させることによって得ることができる成形品。