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特許7328982プロピレンオキサイド精製装置、及び、プロピレンオキサイドの製造方法
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  • 特許-プロピレンオキサイド精製装置、及び、プロピレンオキサイドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】プロピレンオキサイド精製装置、及び、プロピレンオキサイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/32 20060101AFI20230809BHJP
   C07D 303/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C07D301/32
C07D303/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550210
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034247
(87)【国際公開番号】W WO2020075417
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018192452
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】竹本 拓央
(72)【発明者】
【氏名】中村 元志
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-309853(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104109138(CN,A)
【文献】特開2005-089413(JP,A)
【文献】国際公開第01/83468(WO,A1)
【文献】特開2006-232744(JP,A)
【文献】特開2005-281163(JP,A)
【文献】特公昭53-19562(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗プロピレンオキサイドを受け入れる入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第1蒸留塔、
入口、還流入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第2蒸留塔、
第2蒸留塔の塔頂出口から供給される流の少なくとも一部を液化し、気相を気相出口から、液相を液相出口から排出する、液化分離設備、
入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第3蒸留塔、
前記第1蒸留塔の塔頂出口と前記第2蒸留塔の入口とを接続するラインLA、
前記液化分離設備の液相出口と前記第2蒸留塔の還流入口とを接続するラインLC、
前記第2蒸留塔の塔底出口と前記第3蒸留塔の入口とを接続するラインLD、並びに、
抽剤供給源と、ラインLA、前記液化分離設備、ラインLC、及び、前記第2蒸留塔、からなる群より選ばれる少なくとも一つとを接続するラインLE、を備える、プロピレンオキサイド精製装置。
【請求項2】
前記液化分離設備が、前記気相出口、前記液相出口、及び、流体入口を有する気液分離器と、前記第2蒸留塔の塔頂出口と前記気液分離器の流体入口とを接続するラインLBと、前記ラインLB又は前記気液分離器に設けられた液化部と、を有する、請求項1記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項3】
前記液化部は、冷却器を含む、請求項2に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項4】
前記液化部は、前記ラインLEと、前記ラインLB又は前記気液分離器とを接続させる接続部を含む、請求項2又は3に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項5】
前記液化部は、水供給源に接続されたラインLHと、前記ラインLB又は前記気液分離器とを接続させる接続部を含み、及び、以下の(a)又は(b)を満たす、請求項2~4のいずれか一項に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
(a)前記気液分離器は水相出口をさらに有する3相分離器である。
(b)前記ラインLCに、混合物入口、油相出口、及び、水相出口を有する油水分離器が設けられ、前記混合物入口は前記気液分離器の液相出口に接続され、前記油相出口は前記第2蒸留塔の還流入口に接続される。
【請求項6】
前記液化分離設備が、入口、塔頂に設けられた前記気相出口、及び、塔底に設けられた前記液相出口を有する第5蒸留塔と、前記第5蒸留塔の入口と前記第2蒸留塔の塔頂出口とを接続するラインLBと、を有する、請求項1記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項7】
前記液化分離設備が、さらに、前記ラインLEと、前記ラインLBとを接続させる接続部を有する、請求項6に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項8】
前記液化分離設備が、前記ラインLBに設けられた冷却器をさらに有する、請求項6又は7に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項9】
除害装置と前記液化分離設備の気相出口とを接続するラインLJと、を更に備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項10】
前記抽剤供給源は、前記第3蒸留塔の塔底出口である、請求項1~9のいずれか一項記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項11】
入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第4蒸留塔、
前記第3蒸留塔の塔底出口又は前記塔底出口に接続されたラインと前記第4蒸留塔の入口とを接続するラインLF、及び、
前記第4蒸留塔の塔底出口と、前記第2蒸留塔、前記液化分離設備、ラインLC、ラインLA、及び、前記第3蒸留塔からなる群より選ばれる少なくとも一つとを接続するラインLGを更に備える、請求項1~10のいずれか1項記載のプロピレンオキサイド精製装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のプロピレンオキサイド精製装置を用いた、精製プロピレンオキサイドの製造方法であって、
前記第1蒸留塔で、粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底からプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂から高沸点成分を除去したプロピレンオキサイド含有流(F1)を排出させる工程と、
抽剤を、前記ラインLA、前記液化分離設備、前記ラインLC、及び、前記第2蒸留塔、からなる群より選ばれる少なくとも一つに供給する工程と、
前記第2蒸留塔で、前記流(F1)を抽剤と共に蒸留し、C1~C4炭化水素及びプロピレンオキサイドを含む流(F2)を塔頂から排出させ、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F3)を塔底から排出させる工程と、
前記液化分離設備で、前記流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部を液化し、気相流(F2G)を前記気相出口から、液相流(F2O)を液相出口から排出させる工程と、
前記液相流(F2O)を、ラインLCを介して前記第2蒸留塔に戻す工程と、
前記第3蒸留塔で、流(F3)を蒸留して、塔底から抽剤を含む流を排出させ、塔頂から精製プロピレンオキサイドを排出させる工程と、を備える、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンオキサイド精製装置、及び、プロピレンオキサイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粗プロピレンオキサイドを精製する装置が知られている。例えば、特許公報1には、4つの蒸留塔を用いた精製装置が開示されている。
【0003】
第1蒸留塔では粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底からプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂から高沸点成分を除去したプロピレンオキサイド含有流を排出させる。第2蒸留塔では、第1蒸留塔の塔頂流を抽剤と共に蒸留し、塔頂から水を排出させ、塔底から水が除去された、抽剤とプロピレンオキサイドとの混合物を排出させる。第3蒸留塔では、抽剤とプロピレンオキサイドとの混合物を蒸留して、塔底から抽剤を排出させ、塔頂から精製プロピレンオキサイドを排出させる。第4蒸留塔では、第3蒸留塔の塔底から排出された抽剤を蒸留し、精製した抽剤を第2蒸留塔にリサイクルする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許公開104109138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では、プロピレンオキサイドをロスすることなく、C1~C4炭化水素を十分に除去することができない。
【0006】
本発明者らが検討したところ、粗プロピレンオキサイド中に含まれる炭素数1~4の炭化水素(以下、C1~C4炭化水素と呼ぶ)を従来の装置で除去しようとすると、第2蒸留塔の塔頂流の流量を増加させなければならない。しかし、第2蒸留塔の塔頂流には、特許文献1に記載の通り、プロピレンオキサイドが含まれるため、第2蒸留塔の塔頂流の流量を増加させると、粗プロピレンオキサイド中のプロピレンオキサイドの回収率が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、プロピレンオキサイドのロスを低く抑えても、得られるプロピレンオキサイド中のC1~C4炭化水素を十分に除去できる、プロピレンオキサイド精製装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプロピレンオキサイド精製装置は、粗プロピレンオキサイドを受け入れる入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第1蒸留塔、
入口、還流入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第2蒸留塔、
第2蒸留塔の塔頂出口から供給される流の少なくとも一部を液化し、気相を気相出口から、液相を液相出口から排出する、液化分離設備、
入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第3蒸留塔、
前記第1蒸留塔の塔頂出口と前記第2蒸留塔の入口とを接続するラインLA、
前記液化分離設備の液相出口と前記第2蒸留塔の還流入口とを接続するラインLC、
前記第2蒸留塔の塔底出口と前記第3蒸留塔の入口とを接続するラインLD、並びに、
抽剤供給源と、ラインLA、前記液化分離設備、ラインLC、及び、前記第2蒸留塔、からなる群より選ばれる少なくとも一つとを接続するラインLE、を備える。
【0009】
本発明によれば、第1蒸留塔で、粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底からプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂から高沸点成分を低減したプロピレンオキサイド含有流(F1)を排出させることができる。また、抽剤供給源から抽剤を、ラインLEを介して、ラインLA、前記液化分離設備、ラインLC、及び、第2蒸留塔からなる群より選ばれる少なくとも一つに供給することができ、さらに、第2蒸留塔で、流(F1)を抽剤と共に蒸留し、C1~C4炭化水素及びプロピレンオキサイドを含む流(F2)を塔頂から排出させ、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F3)を塔底から排出させることができる。ここで、流(F1)中のプロピレンオキサイドの全重量の半分以上が、流(F3)に含まれる。また、第3蒸留塔で、流(F3)を蒸留して、塔底から抽剤を含む流(FS)を排出させ、塔頂から精製プロピレンオキサイドを排出させることができる。また、液化分離設備で、流(F2)の少なくとも一部を液化し、液相と気相とを含む流を、液相流(F2O)、及び、気相流(F2G)に分離し、液相流(F2O)を、液相出口及びラインLCを介して第2蒸留塔に戻すことができる一方、気相流(F2G)を、気相出口を介して、第2蒸留塔に戻すことなく液化分離設備から排出させることができる。
【0010】
これにより、粗プロピレンオキサイドから、第1蒸留塔で高沸点成分を低減することができ、第2蒸留塔及び液化分離設備でC1~C4炭化水素を除去することができ、第3蒸留塔の塔頂から、高純度のプロピレンオキサイドを得ることができる。
【0011】
特に、液化分離設備で、流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部を液化し、気相と分離して第2蒸留塔へ戻すことができるので、C1~C4炭化水素を除去しつつプロピレンオキサイドのロスを低減することができる。C1~C4炭化水素は、第3蒸留塔ではプロピレンオキサイドと共に塔頂に分配されるため、C1~C4炭化水素が第3蒸留塔に供給されるとC1~C4炭化水素をプロピレンオキサイドから分離することが困難である。しかしながら、本発明によれば、液化分離設備で、プロピレンオキサイドからC1~C4炭化水素を含むガスを分離することで、第3蒸留塔から得られるプロピレンオキサイドのC1~C4炭化水素の量を低減でき、純度を高くすることができる。
【0012】
ここで、前記液化分離設備が、前記気相出口、前記液相出口、及び、流体入口を有する気液分離器と、前記第2蒸留塔の塔頂出口と前記気液分離器の流体入口とを接続するラインLBと、前記ラインLB又は前記気液分離器に設けられた液化部と、を有することができる。
【0013】
また、前記液化部は、冷却器を含むことができる。
【0014】
また、前記液化部は、前記ラインLEと、前記ラインLB又は前記気液分離器とを接続させる接続部を含むことができる。
【0015】
また、前記液化部は、水供給源に接続されたラインLHと、前記ラインLB又は前記気液分離器とを接続させる接続部を含み、及び、以下の(a)又は(b)を満たすことができる。
(a)前記気液分離器は水相出口をさらに有する3相分離器である。
(b)前記ラインLCに、混合物入口、油相出口、及び、水相出口を有する油水分離器が設けられ、前記混合物入口は前記気液分離器の液相出口に接続され、前記油相出口は前記第2蒸留塔の還流入口に接続される。
【0016】
ラインLB又は気液分離器に水が供給されれば、ラインLB又は気液分離器で、流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドを、効率的に液相(水相及び油相の混合物)に含ませることができ、さらに、3相分離器又は油水分離器で、液相(水相及び油相の混合物)から水相を分離し、液相中に含まれる水溶性不純物、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタノール、アセトン等の濃度を低減できる。従って、得られるプロピレンオキサイドの純度をより高くできる。
【0017】
また、上記装置において、前記液化分離設備が、入口、塔頂に設けられた前記気相出口、及び、塔底に設けられた前記液相出口を有する第5蒸留塔と、前記第5蒸留塔の入口と前記第2蒸留塔の塔頂出口とを接続するラインLBと、を有することもできる。
【0018】
ここで、前記液化分離設備が、さらに、前記ラインLEと、前記ラインLBとを接続させる接続部を有することができる。
【0019】
また、前記液化分離設備が、前記ラインLBに設けられた冷却器をさらに有することもできる。
【0020】
上記のいずれの装置においても、除害装置と前記液化分離設備の気相出口とを接続するラインLJと、を更に備えることができる。
【0021】
また、上記のいずれの装置においても、前記抽剤供給源は、前記第3蒸留塔の塔底出口であることができる。
【0022】
また、上記のいずれの装置においても、
入口、塔底出口、及び、塔頂出口を有する第4蒸留塔、
前記第3蒸留塔の塔底出口又は前記塔底出口に接続されたラインと前記第4蒸留塔の入口とを接続するラインLF、及び、
前記第4蒸留塔の塔底出口と、前記第2蒸留塔、前記液化分離設備、ラインLC、ラインLA、及び、前記第3蒸留塔からなる群より選ばれる少なくとも一つとを接続するラインLGを更に備えることができる。
【0023】
本発明に係る精製プロピレンオキサイドの製造方法は、上記のいずれかに記載のプロピレンオキサイド精製装置を用いた精製プロピレンオキサイドの製造方法であって、
前記第1蒸留塔で、粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底からプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂から高沸点成分を除去したプロピレンオキサイド含有流(F1)を排出させる工程と、
抽剤を、前記ラインLA、前記液化分離設備、前記ラインLC、及び、前記第2蒸留塔、からなる群より選ばれる少なくとも一つに供給する工程と、
前記第2蒸留塔で、前記流(F1)を抽剤と共に蒸留し、C1~C4炭化水素及びプロピレンオキサイドを含む流(F2)を塔頂から排出させ、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F3)を塔底から排出させる工程と、
前記液化分離設備で、前記流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部を液化し、気相流(F2G)を前記気相出口から、液相流(F2O)を液相出口から排出する工程と、
前記液相流(F2O)を、ラインLCを介して前記第2蒸留塔に戻す工程と、
前記第3蒸留塔で、流(F3)を蒸留して、塔底から抽剤を含む流(FS)を排出させ、塔頂から精製プロピレンオキサイドを排出させる工程と、を備える。
【0024】
上記方法において、第3蒸留塔の塔底出口から排出される抽剤の流(FS)の一部を、ラインLEを介して、ラインLA、前記第2蒸留塔、前記液化分離設備、及び、ラインLCからなる群より選ばれる少なくとも一つに供給することができる。
【0025】
また、前記第4蒸留塔で、第3蒸留塔の塔底から排出される抽剤の流(FS)の一部を蒸留し、抽剤よりも低い沸点を有する低沸点成分を塔頂から排出させ、塔底から低沸点成分を除去した抽剤の流(FSS)を排出する工程と、
前記抽剤の流(FSS)を、ラインLGを介して、ラインLA、前記第2蒸留塔、前記液化分離設備、ラインLC、及び、前記第3蒸留塔からなる群より選ばれる少なくとも一つに供給する工程とを有することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、プロピレンオキサイドのロスを低くでき、かつ、得られるプロピレンオキサイド中のC1~C4炭化水素の濃度を低減できる、プロピレンオキサイド精製装置およびこれを用いた方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第1実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図4図4は、本発明の第4実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図5図5は、本発明の第5実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図6図6は、本発明の第6実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
図7図7は、本発明の第7実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態にかかる装置及び方法について、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置100について説明する。
【0030】
このプロピレンオキサイド精製装置100は、第1蒸留塔10、第2蒸留塔20、液化分離設備LQ、第3蒸留塔30を主として備えている。
【0031】
第1蒸留塔10は、粗プロピレンオキサイドが供給される、すなわち粗プロピレンオキサイドを受け入れる入口10i、還流入口10r、塔底出口10b、及び、塔頂出口10tを有する。入口10iと、粗プロピレンオキサイドの供給源とが、ラインL1で接続されている。第1蒸留塔10の塔頂出口10tには、ラインLAが接続されている。
【0032】
第2蒸留塔20は、入口20i、還流入口20r、塔底出口20b、及び、塔頂出口20tを有する。
【0033】
第1蒸留塔10の塔頂出口10tと、第2蒸留塔20の入口20iとが、ラインLAにより接続されている。ラインLAから分岐するラインL3が、第1蒸留塔10の還流入口10rに接続されている。還流入口10rは、入口10iよりも上に設けられている。ラインLAにおける、ラインL3の分岐点よりも上流側(第1蒸留塔10の塔頂出口10t側)には、上流側から順に、流の少なくとも一部を液相にする1以上の冷却器、及び、気液分離器が設けられていてもよい。
【0034】
液化分離設備LQは、気液分離器22、ラインLB、冷却器(液化部)26、及び、接続部(液化部)LBJ1を備える。気液分離器22は、流体入口22i、気相出口22g、及び、液相出口(油相出口)22oを有する。ラインLBは、第2蒸留塔20の塔頂出口20tと気液分離器22の流体入口22iとを接続する。冷却器26は、ラインLBに設けられている。接続部LBJ1は、ラインLEとラインLBとの合流部である。本実施形態では、接続部LBJ1は、ラインLBにおいて、冷却器26よりも下流側(気液分離器22側)に設けられている。ラインLEは抽剤供給源に接続されている。
【0035】
冷却器26及び接続部LBJ1は、それぞれ、冷却による気体から液体への相変化、及び、流(F2)と液体との接触により、第2蒸留塔20の塔頂出口20tからラインLBを介して供給される流(F2)の少なくとも一部を液化させる。気液分離器22は、流体入口22iから供給される液体及び気体を含む流体を気液分離し、気相を気相出口22gから、液相を液相出口(油相出口)22oから排出する。冷却器26は、冷媒が供給される熱交換器であることができる。熱交換器の形状は特に限定されず、例えば、多管型熱交換器、プレート型熱交換器等が挙げられる。冷却器26の運転条件の例は、流(F2)の出口温度がプロピレンオキサイドの沸点以下となるように、或いは、流(F2)の出口に少なくとも液相が生成するように冷却することである。
【0036】
気液分離器22の具体的構成は、液体及び気体を含む流体を貯留して、気液界面を形成し、気相を気液界面よりも上方に、液相を気液界面よりも下方に分離し、気相を気相出口から、液相を液相出口からそれぞれ独立に排出できるものであれば、種々の形態の物を使用することができる。通常、液相出口22oは、ドラム形状の気液分離器22の底部に、気相出口22gは気液分離器22の上部に設けられている。
【0037】
気液分離器22の液相出口22oは、第2蒸留塔20の還流入口20rとラインLCを介して接続されている。還流入口20rは、入口20iよりも上に設けられている。また、気液分離器22の気相出口22gにはラインLJが接続されている。ラインLJには、気相中の化合物を焼却処理する除害装置が接続されていても良い。ラインLCには、ラインLE2が合流している。ラインLE2は、ラインLEを介して抽剤供給源に接続されている。
【0038】
第3蒸留塔30は、第1入口30i、還流入口30r、塔底出口30b、及び、塔頂出口30tを有する。還流入口30rは、第1入口30iよりも上に設けられている。
【0039】
第2蒸留塔20の塔底出口20bと第3蒸留塔30の第1入口30iとが、ラインLDで接続されている。
【0040】
第3蒸留塔30の塔頂出口30tにはラインL7が接続されている。ラインL7からは、ラインL8が分岐し、ラインL8は還流入口30rに接続されている。ラインL7における、ラインL8の分岐点よりも上流側(第3蒸留塔30の塔頂出口30t側)には、上流側から順に、流の少なくとも一部を液相にする1以上の冷却器、及び、気液分離器が設けられていてもよい。第3蒸留塔30の塔底出口30bには、ラインL10が接続されている。
【0041】
(プロピレンオキサイドの製造方法)
続いて、第1実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置100を用いたプロピレンオキサイドの製造方法について説明する。
【0042】
まず、粗プロピレンオキサイド供給源から、粗プロピレンオキサイドをラインL1を介して第1蒸留塔10に供給する。
【0043】
(粗プロピレンオキサイド)
粗プロピレンオキサイドは、プロピレンオキサイド以外に不純物を含む。不純物の例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;蟻酸メチル等のエステル類;水;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン等のケトン類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;メタン、エタン、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、ブタジエン等の炭素数が1~4の炭化水素(C1~C4炭化水素と呼ぶ);ペンタン類、ペンテン類、ペンタジエン類、ヘキサン類、ヘキセン類、ヘキサジエン類等の炭化水素(C5~C6炭化水素と呼ぶ)を含むことができる。
【0044】
粗プロピレンオキサイドの例は、触媒の存在下、過酸化物とプロピレンを反応させることにより得た組成物である。必要に応じて、この組成物から一部の不純物をあらかじめ除去しておくこともできる。
【0045】
過酸化物としては、過酸化水素、tert-ブチルベンゼンハイドロパーオキサイド、エチルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等があげられる。過酸化物とプロピレンを反応させる触媒の例は、珪素酸化物と化学的に結合したチタンを含有する、いわゆるチタン-シリカ触媒である。
【0046】
過酸化物とプロピレンとを、溶媒中反応させることが好適である。溶媒は、反応時の温度及び圧力のもとで液体であり、かつ反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものであればよい。溶媒の例は、クメン、芳香族の単環式化合物(たとえばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン)及びアルカン(たとえばオクタン、デカン、ドデカン)、アルコール(メタノール、エタノール)、水である。反応温度は一般に0~200℃であるが、25~200℃の温度が好ましい。圧力は、反応混合物を液体の状態に保つのに充分な圧力でよい。一般に圧力は100~10000kPaであることが有利である。
【0047】
第1蒸留塔10では、粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底出口10bからプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂出口10tから高沸点成分を除去したプロピレンオキサイド含有流(F1)を排出させ、第2蒸留塔20に供給する。
【0048】
プロピレンオキサイドより沸点が高い不純物の例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;蟻酸メチル等のエステル類;水;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン等のケトン類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;メタン、エタン、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、ブタジエン等の炭素数が1~4の炭化水素(C1~C4炭化水素と呼ぶ);ペンタン類、ペンテン類、ペンタジエン類、ヘキサン類、ヘキセン類、ヘキサジエン類等(C5~C6炭化水素と呼ぶ)の炭化水素があげられる。
【0049】
第1蒸留塔10の好適な操作条件の例は、理論段で5~200段、運転圧力として絶対圧力で0.01~5MPa、温度は0℃~300℃の間である。
【0050】
塔頂出口10tから排出される流(F1)の一部を、ラインL3を介して第1蒸留塔10に還流させて、高沸点成分の除去の程度を調節することができる。
【0051】
続いて、流(F1)を、ラインLAを介して第2蒸留塔20の入口20iに供給して蒸留する。第2蒸留塔20では、ラインLE、ラインLB、気液分離器22、及びラインLCを介して供給される抽剤の存在下で蒸留が行われる。
【0052】
抽剤の例は、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数7~10の飽和炭化水素;トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;アセトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類である。なかでも、炭素数7~10の飽和炭化水素と芳香族炭化水素が好ましく、炭化水素7~10の飽和炭化水素がもっとも好適である。このような抽剤を添加すると、メタノール、水、アセトアルデヒド、炭化水素類等の低沸点成分とプロピレンオキサイドとの相対揮発度を大きくしてこれらを分離しやすくなる。
【0053】
第2蒸留塔20では、抽剤の存在下での蒸留により、水、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタノール、ギ酸メチル等を含む流(F2)を塔頂出口20tより排出させ、塔底出口20bよりプロピレンオキサイド及び抽剤を含む流(F3)を排出させる。流(F3)中におけるプロピレンオキサイドの濃度は、流(F1)中におけるプロピレンオキサイドの濃度よりも高くなる。
【0054】
第2蒸留塔の好適な蒸留条件の例は、理論段で5~200段、運転圧力として絶対圧力で0.01から5MPa、温度は0℃~300℃である。第2蒸留塔に供給する抽剤の量は、供給されるプロピレンオキサイドの重量に対して、重量比で0.1~20倍の量とすることができる。
【0055】
次に、塔頂出口20tから排出された流(F2)をラインLBに設けられた冷却器26で冷却し、流(F2)の一部を液化する。具体的には、流(F2)の温度をプロピレンオキサイドの沸点以下に下げて、少なくとも一部のプロピレンオキサイドを液化することが好適である。
【0056】
また、ラインLEを介して供給される抽剤の液体の流(FS)を、接続部LBJ1からラインLBに供給し、流(F2)中のガスの一部を抽剤の液相に溶解/吸収させる、すなわち、流(F2)中のガスの一部を液化する。具体的には、流(F2)中のプロピレンオキサイドガスの一部を液化、すなわち液相に溶解/吸収させることが好適である。
【0057】
気液分離器22では、流(F2)及び流(FS)の混合物を、気相、及び、液相に分離する。そして、気相の流(F2G)を、気相出口22g及びラインLJを介して外部に排出させる。この気相は、主として、C1~C4炭化水素を含む。ラインLJには、C1~C4炭化水素を除去する除害装置を接続することができ、必要に応じて除害処理することができる。除害装置の例は、C1~C4炭化水素を吸着する吸着装置、C1~C4炭化水素を燃焼させる燃焼装置である。ラインLJには、C1~C4炭化水素を除去する除害装置を1以上接続することができる。
【0058】
また、液相の流(F2O)を、液相出口22oおよびラインLCを介して、第2蒸留塔20の還流入口20rに供給する。必要に応じて、ラインLE2を介して供給される抽剤の液体の流(FS)を、ラインLCに供給しても良い。
【0059】
気液分離器22の運転条件は、気相及び液相の界面が形成される条件であれば良く、好ましくは、温度は0~80℃及び圧力は常圧~2MPaである。
【0060】
続いて、第2蒸留塔20の塔底出口20bから排出する流(F3)を、ラインLDを介して、第3蒸留塔30の第1入口30iに供給する。
【0061】
第3蒸留塔30では、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F3)を蒸留し、塔頂出口30tから精製されたプロピレンオキサイドの流(F4)を、ラインL7を介して排出させる一方、塔底出口30bから、ラインL10を介して抽剤の流(FS)を排出させる。流(FS)を、必要に応じて、ラインLE等を介して、ラインLB、及び/又は、ラインLCに供給することができる。もちろん、抽剤をリサイクルしなくても実施は可能である。また、抽剤を更に精製して、リサイクルすることもできる。
【0062】
塔頂出口30tから排出される流(F4)の一部を、ラインL8を介して第3蒸留塔30の還流入口30rに還流させて、流(F4)に含まれる抽剤の純度を調節することができる。このようにして、ラインL7から精製されたプロピレンオキサイドの流(F4)を得ることができる。
【0063】
第3蒸留塔30の好適な操作条件の例は、理論段で5~200段、運転圧力として絶対圧力で0.01から5MPa、温度は0℃~300℃である。
【0064】
(作用)
本実施形態によれば、第1蒸留塔10で、粗プロピレンオキサイドを蒸留して、塔底出口10bからプロピレンオキサイドよりも高い沸点を有する高沸点成分を、塔頂出口10tから高沸点成分を低減したプロピレンオキサイド含有流(F1)を排出させることができる。また、第2蒸留塔20で、流(F1)を抽剤と共に蒸留し、C1~C4炭化水素及びプロピレンオキサイドを含む流(F2)を塔頂出口20tから排出させ、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F3)を塔底から排出させることができる。ここで、流(F1)中のプロピレンオキサイドの全重量の半分以上が、流(F3)に含まれる。また、第3蒸留塔30で、流(F3)を蒸留して、塔底出口30bから抽剤を含む流(FS)を排出させ、塔頂出口30tから精製プロピレンオキサイドを流(F4)として排出させることができる。
【0065】
また、液化分離設備LQで、流(F2)の少なくとも一部を液化し、液相と気相とを含む流を、液相、及び、気相に分離し、液相の流(F2O)を液相出口22o及びラインLCを介して第2蒸留塔20に戻す一方、気相流(F2G)を、気相出口22gを介して、第2蒸留塔20に戻すことなく液化分離設備LQから排出させることができる。
【0066】
これにより、粗プロピレンオキサイドから、第1蒸留塔10で高沸点成分を低減することができ、第2蒸留塔20及び液化分離設備LQでC1~C4炭化水素を除去することができ、第3蒸留塔30の塔頂から、高純度のプロピレンオキサイドを得ることができる。
【0067】
特に、液化分離設備LQで、流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部を液化し、気相と分離して第2蒸留塔20へ戻すので、C1~C4炭化水素を除去しつつプロピレンオキサイドのロスを低減することができる。C1~C4炭化水素は、第3蒸留塔30ではプロピレンオキサイドと共に塔頂出口30tに分配されるため、C1~C4炭化水素が第3蒸留塔30に供給されるとC1~C4炭化水素をプロピレンオキサイドから分離することが困難である。しかしながら、本実施形態によれば、液化分離設備LQで、プロピレンオキサイドからC1~C4炭化水素を含むガスを分離することで、第3蒸留塔30から得られるプロピレンオキサイドのC1~C4炭化水素の量を低減でき、プロピレンオキサイドの純度を高くすることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図2を参照して、第2実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置110について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0069】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、ラインLBと水供給源に接続されたラインLHとを接続する接続部LBJ2が設けられている点と、気液分離器22に変えて、3相分離器23が設けられている点である。
【0070】
本実施形態では、接続部LBJ2は、ラインLBにおいて、冷却器26と第2蒸留塔20との間に設けられているが、冷却器26と3相分離器23との間に設けられていても良い。
【0071】
ラインLHは、接続部LBJ2からラインLBに対して液体又は気体の水を供給する。水の供給量は、塔頂出口20tから供給される流(F2)の重量に対する水の量の比が、水/塔頂流=0.01/1~1/1を満たすよう定めることができる。
【0072】
3相分離器23は、流体入口23i、気相出口23g、油相出口(液相出口)23o、及び、水相出口23wを有し、流体を、気相、水相、及び、油相に分離する。流体入口23iはラインLBと、気相出口23gはラインLJと、油相出口(液相出口)23oはラインLCと、水相出口23wはラインL5と接続されている。
【0073】
3相分離器23は、具体的には、図2に示すように、メインドラム23cと、メインドラム23cから下方に突出するブーツ部23bを有するドラムであることができる。このような3相分離器23では、ブーツ部23b内に油水界面を形成させることができ、メインドラム23c内に気液(気油)界面を形成させることができる。流体入口23iをメインドラム23cの上部に設け、油相出口23oをメインドラム23cの下部に設け、水相出口23wをブーツ部23bの下部に設けることができる。
【0074】
本実施形態では、ラインLHからラインLBの接続部LBJ2に液体又は気体の水を供給する。接続部LBJ2は、第2蒸留塔20の塔頂出口20tからラインLBを介して供給される流(F2)に対して水を接触させることにより、流(F2)の少なくとも一部を水に溶解/吸収させて、流(F2)中のガスの一部を液化させる。具体的には、流中のプロピレンオキサイドガス及び水に溶解/吸収し得る成分(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、メタノール等のアルコール類、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン等のケトン類、ギ酸メチル等のエステル類等)の一部を水に溶解/吸収させて、液化することができる。
【0075】
さらに、3相分離器23では、流(F2)、水、及び流(FS)の混合物を、気相、水相、及び、油相に分離する。そして、気相の流(F2G)を、ラインLJを介して外部に排出させ、油相の流(F2O)を、ラインLCを介して第2蒸留塔20の還流入口20rに戻し、水相の流(F2W)を、ラインL5を介して、第2蒸留塔20に戻さずに外部に排出する。ラインL5には、周知の水処理装置を接続することができる。
【0076】
本実施形態によれば、冷却器26、並びに、接続部LBJ2、及び接続部LBJ1により、流(F2)の少なくとも一部が液化し、液体及び気体を含む流体は、3相分離器23で、気相、水相、及び、油相に分離され、油相は油相出口(液相出口)23oからラインLCを介して第2蒸留塔20に還流され、水相は水相出口23wからラインL5を介して排出され、気相は第1実施形態と同様にして気相出口23gから排出される。
【0077】
本実施形態では、特に、接続部LBJ2によるラインLBへの水の供給により、流(F2)中のガスの水に溶解/吸収し得る成分が水に溶解/吸収する。具体的には、流中の水に溶解/吸収し得る成分(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、メタノール等のアルコール類、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン等のケトン類、ギ酸メチル等のエステル類等)の一部が水相に溶解/吸収する。そして、3相分離器23により、油相と分離した水相を第2蒸留塔20に戻さずに排出することにより、水に溶解/吸収し得る成分を分離することができ、精製プロピレンオキサイドの純度をより高くすることができる。
【0078】
(第3実施形態)
続いて、図3を参照して、本発明の第3実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置120について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0079】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、液化分離設備LQの構成である。本実施形態の液化分離設備LQは、第5蒸留塔(液化部)50及びラインLBを主として備える。
【0080】
第5蒸留塔50は、入口50i、還流入口50r、塔頂出口(気相出口)50t、及び、塔底出口(液相出口)50bを有する。ラインLBは、第2蒸留塔20の塔頂出口20tと、第5蒸留塔50の入口50iとを接続している。ラインLBには、第1実施形態と同様に、ラインLEとの接続部LBJ1及び冷却器26が設けられている。冷却器26は、接続部LBJ1と第2蒸留塔20との間に設けられることが好適であるが、接続部LBJ1と第5蒸留塔50との間に設けられても良い。
【0081】
第5蒸留塔50の塔頂出口50tにはラインLJが接続されている。ラインLJからはラインL19が分岐しており、ラインL19は還流入口50rと接続されている。還流入口50rは、入口50iよりも上に設けられている。ラインLJにおけるラインL19の分岐点よりも上流側(第5蒸留塔50の塔頂出口50t側)には、上流側から順に、流の少なくとも一部を液相にする冷却器、及び、気液分離器が設けられていてもよい。
【0082】
第5蒸留塔50の塔底出口50bは、ラインLCを介して第2蒸留塔20の還流入口20rに接続されている。
【0083】
本実施形態では、第1実施形態と同様に第1蒸留塔10、第2蒸留塔20及び第3蒸留塔30での蒸留を行うのに加えて、第5蒸留塔50での蒸留を行う。すなわち、第2蒸留塔20の塔頂出口20tから排出される、C1~C4炭化水素及びプロピレンオキサイドを含む流(F2)、及び、ラインLEから供給される抽剤の流(FS)の混合物を、第5蒸留塔50で蒸留して、C1~C4炭化水素を主とする流(F2G)を塔頂出口50t及びラインLJを介して排出させ、C1~C4炭化水素が低減された、抽剤及びプロピレンオキサイドを含む流(F2O)を塔底出口50bから第2蒸留塔20の還流入口20rに排出させる。
【0084】
第5蒸留塔50の好適な運転条件の例は、入口50iから流入する流体中のC1~C4炭化水素を塔頂出口50tへ、プロピレンオキサイド及び抽剤を塔底出口50bへ抜き出すことができる温度及び圧力条件である。具体的には、理論段で5~200段、運転圧力として絶対圧力で0.01から5MPa、温度は0℃~300℃である。
【0085】
これにより、第5蒸留塔50において、第2蒸留塔20の塔頂出口20tから供給される流(F2)中のプロピレンオキサイドは液化されて、液相出口に対応する塔底出口50bから液体として排出される一方、流(F2)中のC1~C4炭化水素は気体のままとなって気相出口に対応する塔頂出口50tから排出される。
【0086】
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、第2蒸留塔20の塔頂出口20tから排出された流(F2)を、ラインLBに設けられた冷却器26で冷却して流(F2)の一部を液化することができる。また、ラインLEを介して供給される抽剤の液体の流(FS)を、接続部LBJ1からラインLBに供給し、流(F2)中のガスの一部を液化することもできる。
【0087】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、液化分離設備LQで、流(F2)に含まれるプロピレンオキサイドの少なくとも一部が液化され、気相と分離して第2蒸留塔20へ戻されるので、C1~C4炭化水素を除去しつつプロピレンオキサイドのロスを低減することができる。
【0088】
(第4実施形態)
続いて、図4を参照して、本発明の第4実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置200について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0089】
本実施形態が第1実施形態と異なる主要な点は、ラインLE及びLE2の抽剤供給源が第3蒸留塔30の塔底出口30bである点、ならびに、第4蒸留塔40、ラインLF、及びラインLGを有している点である。
【0090】
第3蒸留塔30の塔底出口30bとラインLEとが接続されており、上述のように、第3蒸留塔30の塔底出口30bから排出される抽剤の流(FS)がラインLE及びラインLE2に供給される。
【0091】
第4蒸留塔40は、入口40i、還流入口40r、塔底出口40b、及び、塔頂出口40tを有する。ラインLEと第4蒸留塔40の入口40iとがラインLFを介して接続されている。ラインLFには、抽剤供給源に接続されたラインL20が合流している。
【0092】
第4蒸留塔40の塔頂出口40tにはラインL9が接続されている。ラインL9からはラインL11が分岐しており、ラインL11は還流入口40rと接続されている。還流入口40rは、入口40iよりも上に設けられている。ラインL9におけるラインL11の分岐点よりも上流側(第4蒸留塔40の塔頂出口40t)側には、上流側から順に、流の少なくとも一部を液相にする冷却器、及び、気液分離器が設けられていてもよい。
【0093】
第3蒸留塔30は、第1入口30iよりも上に第2入口30i2を有し、第4蒸留塔40の塔底出口40bは、第3蒸留塔30の第2入口30i2とラインLGにより接続されている。第2入口30i2は、還流入口30rよりは下方に位置している。
【0094】
本実施形態において、第4蒸留塔40において、第3蒸留塔30の塔底出口30bから排出される抽剤の流(FS)の一部を蒸留し、抽剤よりも低沸点の成分を主として含む流(F20)を塔頂出口40t及びラインL9から排出させ、流(FS)よりも純度の高い流(FSS)を塔底出口40bから排出する。塔底出口30bから排出される抽剤の流(FS)には、プロピレンオキサイドよりも高沸点の成分(例えば、ペンタン類、ペンテン類、ペンタジエン類、ヘキサン類、ヘキセン類、ヘキサジエン類等(C5~C6炭化水素と呼ぶ)の炭化水素)のうちの少なくとも一部が含まれることが多い。第4蒸留塔40により、流(FS)から前述の化合物の濃度を低減して高純度の流(FSS)を得ることができる。
【0095】
第4蒸留塔40の好適な操作条件の例は、理論段で5~200段、運転圧力として絶対圧力で0.01~5MPa、温度は0~300℃の間である。
【0096】
塔頂出口40tから排出される流(F20)の一部を、ラインL11を介して第4蒸留塔40の還流入口40rに還流させて、流(FSS)に含まれる抽剤の純度を調節することができる。
【0097】
これにより、第3蒸留塔30の第2入口30i2には、第4蒸留塔40の塔底出口40bからラインLGを介して、第3蒸留塔30の塔底出口30bから排出される抽剤の流(FS)よりも純度の高い抽剤の流(FSS)が供給される。
【0098】
このような高純度の抽剤の流(FSS)が、流(F3)の第1入口30iよりも上段に供給されるため、第3蒸留塔30でも抽出蒸留が行われ、残存する不純物(例えば、C5~C6炭化水素など)が塔底側すなわち、塔底出口30bを介して流(FS)に分配されるので、より一層プロピレンオキサイドの純度が向上するという効果がある。
【0099】
また、ラインLEと第3蒸留塔30の塔底出口30bとが接続されており、抽剤をリサイクルして第2蒸留塔20での抽出蒸留を好適に行うことが出来る。
【0100】
(第5実施形態)
続いて、図5を参照して、本発明の第5実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置210について説明する。ここでは、第2実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0101】
本実施形態が第2実施形態と異なる主要な点は、ラインLE及びLE2の抽剤供給源が第3蒸留塔30の塔底出口30bである点、ならびに、第4蒸留塔40、ラインLF、及びラインLGを有している点である。
【0102】
具体的には、上述の2つの点の詳細は、第4実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
(第6実施形態)
続いて、図6を参照して、本発明の第6実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置220について説明する。ここでは、第3実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0104】
本実施形態が第3実施形態と異なる主要な点は、ラインLE及びLE2の抽剤供給源が第3蒸留塔30の塔底出口30bである点、ならびに、第4蒸留塔40、ラインLF、及びラインLGを有している点である。
【0105】
具体的には、上述の2つの点の詳細は、第4実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0106】
(第7実施形態)
続いて、図7を参照して、本発明の第7実施形態にかかるプロピレンオキサイド精製装置300について説明する。ここでは、第2実施形態と異なる点のみについて説明する。
【0107】
本実施形態が第2実施形態と異なる主要な点は、3相分離器23に代えて、気液分離器22及び油水分離器24の組み合わせが用いられている点である。気液分離器22は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0108】
油水分離器24は、油及び水を含む液体を受け入れる混合物入口24i、油相出口24o、及び、水相出口24wを有する。気液分離器22の液相出口22oと、油水分離器24の混合物入口24iとがラインLC1(LC)により接続されている。油水分離器24の油相出口24oと第2蒸留塔20の還流入口20rとがラインLC2(LC)を介して接続され、油水分離器24の水相出口24wにはラインL5が接続されている。
【0109】
油水分離器24は、油及び水を含む液体を貯留して、油水界面を形成し、油相を油水界面よりも上方に、水相を油水界面よりも下方に分離し、油相を油相出口24oから、水相を水相出口24wからそれぞれ独立に排出できるものであれば、種々の形態を使用することができる。通常、油相出口24oは、ドラム形状の油水分離器24の上部に、水相出口24wは油水分離器24の底部に設けられている。
【0110】
本実施形態によれば、気液分離器22において、液相すなわち水相及び油相の混合物と気相とが分離され、気相の流(F2G)は気相出口22g及びラインLFを介して排出される。一方、水相及び油相の混合物の流は、液相出口22o、ラインLC1及び混合物入口24iを介して油水分離器24に供給されて油相と水相とに分離され、油相の流(F2O)が油相出口24o及びラインLCを介して排出され、水相の流(F2W)が水相出口24w及びラインL5を介して排出される。これにより、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0111】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様をとることができる。
【0112】
(気液分離器、3相分離器、及び、油水分離器)
例えば、気液分離器22、3相分離器23、及び油水分離器24の形態は上記に限られない。気液分離器22は、気相と液相との混合物を気相と液相に分離し、気相と液相を互いに分離して排出できればよい。3相分離器23は、気相と水相と油相との混合物を気相と水相と油相に分離し、気相と水相と油相を互いに分離して排出できればよい。油水分離器24は、油相と水相との混合物を油相と水相に分離し、油相と水相を互いに分離して排出できればよい。例えば、各分離器の形状に特に限定はなく、ドラム形状を有する場合には、縦型でも横型でもよいし、分離器内に気液分離、油水分離用のバッフルを有していても良い。また、例えば、図5の装置210において、3相分離器23に代えて、第7実施形態のように、気液分離器22、及び、油水分離器24の組み合わせを採用しても良い。
【0113】
(液化分離設備LQの液化部)
第1、及び、第4実施形態において、液化分離設備LQのラインLBは、液化部としての接続部LBJ1及び冷却器26を両方備えているが、いずれか一つのみを備えていてもよい。ラインLBは2以上の冷却器を備えていてもよい。接続部LBJ1及び冷却器26の内、ラインLBに設けられないものは、液化分離設備LQの他の部材すなわち気液分離器22に設けられることができる。また、液化分離設備LQのラインLBが、接続部LBJ1及び冷却器26のうちのいずれも有さず、液化分離設備LQの他の部材すなわち気液分離器22に接続部LBJ1及び/又は冷却器26が設けられていても実施は可能である。なお、接続部LBJ1が液化分離設備LQに設けられない場合、抽剤を供給するために、接続部LBJ1を、ラインLA、ラインLC、及び、第2蒸留塔20に設けることができる。
【0114】
第2、第5、及び、第7実施形態において、液化分離設備LQのラインLBは、液化部としての接続部LBJ1、LBJ2,及び冷却器26をすべて備えているが、3つのうちのいずれか一つのみ、又は、3つのうちの任意の2つのみの組み合わせを備えていてもよい。接続部LBJ1、LBJ2,及び冷却器26の内、ラインLBに設けられないものは、液化分離設備LQの他の部材すなわち、3相分離器23、又は、気液分離器22に設けられることができる。また、液化分離設備LQのラインLBが、接続部LBJ1、LBJ2,及び冷却器26のうちのいずれをも有さず、液化分離設備LQの他の部材、すなわち3相分離器23、又は、気液分離器22に、接続部LBJ1、LBJ2、及び/又は冷却器26が設けられていても実施は可能である。なお、接続部LBJ1が液化分離設備LQに設けられない場合、抽剤を供給するために、接続部LBJ1を、ラインLA、ラインLC、及び、第2蒸留塔20に設けることができる。
【0115】
第3及び第6実施形態において、液化分離設備LQのラインLBは、冷却器26及び接続部LBJ1を有しているが、これらのうちのいずれか一方のみを有していてもよいし、これらのうちのいずれも有しなくてもよい。ラインLBに冷却器26及び接続部LBJ1のいずれも設けられていない場合であっても、第5蒸留塔50は液化の機能も果たしうる。なお、接続部LBJ1がラインLBに設けられない場合、接続部LBJ1は、第5蒸留塔50などの液化分離設備LQの他の部材に設けられることができる。接続部LBJ1が液化分離設備LQに設けられない場合、抽剤を供給するために、接続部LBJ1を、ラインLA、ラインLC、及び、第2蒸留塔20に設けることができる。
【0116】
また、上記実施形態において、ラインLBに冷却器26及び接続部LBJ1が設けられている場合、どちらがラインLBにおいて上流側(第2蒸留塔の塔頂出口20t側)に設けられていてもよいが、設備費の観点から、冷却器26が上流側に設けられることが好適である。
【0117】
また、上記実施形態において、ラインLBに接続部LBJ2が設けられている場合、接続部LBJ2は、冷却器26よりも上流側でも下流側でもよく、接続部LBJ1よりも上流側でも下流側でもよいが、十分な液化を達成する観点から、冷却器26及び接続部LBJ1よりも上流側が好ましい。
【0118】
(ラインLEの接続先)
上記実施形態において、液化分離設備LQが接続部LBJ1を有していない場合、上述のように、ラインLEを、ラインLA、ラインLC、又は、第2蒸留塔20に接続して、抽剤供給源からこれらに対して抽剤を供給してもよいが、液化分離設備LQが接続部LBJ1を有している場合であっても、ラインLEから分岐するラインLE2などによって、抽剤の流(FS)を、ラインLA、ラインLC、又は、第2蒸留塔20に供給してもよい。
【0119】
また、第4~第6実施形態において、ラインLGを介して供給する流(FSS)を、第3蒸留塔30でなく、第2蒸留塔20、液化分離設備LQ(すなわち気液分離器22、3相分離器23、第5蒸留塔50、及びラインLB)、ラインLC、ラインLAからなる群より選ばれる少なくとも一つに供給してもよい。
【0120】
また、上記第4~6実施形態では、ラインLFは、ラインLEから分岐しているが、ラインLFは第3蒸留塔の塔底出口30bに接続されていても良い。
【符号の説明】
【0121】
10i…入口、10b…塔底出口、10t…塔頂出口、10…第1蒸留塔、20i…入口、20b…塔底出口、20t…塔頂出口、20…第2蒸留塔、30i…第1入口、30b…塔底出口、30t…塔頂出口、30…第3蒸留塔、LA,LB,LC,LD,LE,LF…ライン、22…気液分離器、22g…気相出口、22o…液相出口、22i…流体入口、26…冷却器(液化部)、LBJ1…接続部(液化部)、LBJ2…接続部(液化部)、23…3相分離器、23g…気相出口、23o…油相出口、23i…流体入口、23w…水相出口、24…油水分離器、24o…油相出口、24w…水相出口、40i…入口、40b…塔底出口、40t…塔頂出口、40…第4蒸留塔、50i…入口、50b…塔底出口、50t…塔頂出口、50…第5蒸留塔、LQ…液化分離設備、100,110,120,200,210,220,300…プロピレンオキサイド精製装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7