(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィプロセスの要素の検査において統計的に分布した測定値を評価するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20230809BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230809BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230809BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230809BHJP
G01B 21/02 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
H01L21/66 J
G01B21/02
(21)【出願番号】P 2021500173
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019068067
(87)【国際公開番号】W WO2020008021
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】102018211099.9
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】サイデル ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フレイタグ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウォジェク クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】トプファー スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュースマン クリストフ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0195194(US,A1)
【文献】特表2017-536584(JP,A)
【文献】特開2007-103882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/075814(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0189009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0067900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0151268(US,A1)
【文献】国際公開第2018/072980(WO,A1)
【文献】特開2005-174929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィプロセスに関する要素(810)の検査において統計的に分布した測定値(100、300、350)を評価するための方法(900)であって、以下:
a.訓練された機械学習モデル(700)において複数の特徴付けパラメータ(730)を使用するステップであって、前記特徴付けパラメータ(730)は前記測定値(100、300、350)の測定に割り当てられた時間期間内における測定環境(880)の状態を特徴付ける、使用するステップと、
b.前記測定値(100、300、350)を評価するために、前記訓練された機械学習モデル(700)を実行するステップであって、前記訓練された機械学習モデル(700)は、特徴付けパラメータ(630)と前記特徴付けパラメータ(630)に関連付けられた品質基準(640)とを含む訓練データセットを用いて訓練されている、ステップと、を含む、方法(900)。
【請求項2】
前記測定値(100、300、350)は品質基準(740)に基づいて評価される、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項3】
前記品質基準(740)は、以下の群:前記測定値(100、300、350)に割り当てられた統計的分布の期待値に関する閾値(380)、前記測定値(100、300、350)の前記統計的分布に関する事前に定められた複数の範囲のうちの1つの範囲への割り当て、および、前記統計的分布の前記期待値からの前記測定値(100、300、350)の偏差、のうちの、少なくとも1つの要素を含む、請求項2に記載の方法(900)。
【請求項4】
前記訓練された機械学習モデル(700)は、測定されるべき値の測定に割り当てられた時間期間の開始前に、複数の特徴付けパラメータ(730)を、品質基準(740)に関して前記測定されるべき値を評価するために用い、前記方法は、以下:前記測定されるべき値が前記品質基準(740)を
前記測定されるべき値の測定に割り当てられた前記時間期間内に満たさない場合に、
前記測定されるべき値の測定を行わないステップ、を更に含み、前記訓練された機械学習モデルは、前記測定されるべき値の測定に割り当てられた時間期間に対する前記品質基準(740)を予測する、請求項2に記載の方法(900)。
【請求項5】
以下:前記測定されるべき値が前記品質基準(740)を
前記測定されるべき値の測定に割り当てられた前記時間期間内に満たすまで、
前記測定されるべき値の測定を保留するステップ、を更に含む、請求項4に記載の方法(900)。
【請求項6】
前記測定値(100、300、350)はその測定後に評価され、以下:前記測定されるべき値が前記品質基準(740)を
前記測定されるべき値の測定に割り当てられた前記時間期間内に満たさなかった場合は、前記測定値(100、300、350)を棄却するステップ、を更に含む、請求項2または3に記載の方法(900)。
【請求項7】
以下:前記測定値(100、300、350)に関する信頼度ステートメントを生成するステップ、を更に含み、前記信頼度ステートメントは、前記訓練された機械学習モデル(700)がその出力データを信頼性に関してどのように評価するかを反映しており、前記訓練された機械学習モデル(700)は、前記特徴付けパラメータ(730)と前記関連付けられた品質基準(740)に基づき信頼度ステートメントを予測する、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項8】
前記特徴付けパラメータ(730)はそれらの数値の時間的推移を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項9】
前記測定値(100、300、350)の測定は複数の測定記録を含み、前記複数の測定記録は少なくとも1つの特徴付けパラメータ(730)についての繰り返しの測定を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項10】
前記複数の測定記録は、少なくとも1つの特徴付けパラメータ(730)の変更を含む、請求項9に記載の方法(900)。
【請求項11】
前記特徴付けパラメータ(730)のうちの少なくとも1つは、前記測定値(100、300、350)に関する前記複数の測定記録の間の、その統計的分布の少なくとも1つの特性変数を含む、請求項10に記載の方法(900)。
【請求項12】
前記機械学習モデル(600、700)は、以下の群:カーネル密度推定量、統計的モデル、決定木、線形モデル、時間不変モデル、最近傍分類、およびk最近傍アルゴリズム、ならびに非線形特徴変換によるそれらの非線形拡張のうちの、少なくとも1つの要素を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項13】
前記機械学習モデル(600)は、前記群のうちの機械学習モデルのタイプの異なる2つ以上のモデルを含む、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項14】
前記機械学習モデル(600)を訓練するための訓練データセットは、データ対:前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(810)のj番目の位置におけるi番目の測定値(100、300、350)の特徴付けパラメータ(630)および前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(810)の前記j番目の位置における前記i番目の測定値(100、300、350)の品質基準(640)、を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項15】
コンピュータシステムによって実行されると前記コンピュータシステムに請求項1~14のいずれか1項に記載の方法ステップを実行させる命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項16】
フォトリソグラフィプロセスに関する要素(810)の検査において統計的に分布した測定値(100、300、350)を評価するためのデバイス(800)であって、
a.訓練された機械学習モデル(700)において複数の特徴付けパラメータ(730)を使用するための手段であって、前記特徴付けパラメータ(730)は前記測定値(100、300、350)の測定に割り当てられた時間期間内における測定環境(880)の状態を特徴付ける、使用するための手段と、
b.前記測定値(100、300、350)を評価するために、前記訓練された機械学習モデル(700)を実行するための手段であって、前記訓練された機械学習モデル(700)は、特徴付けパラメータ(630)と前記特徴付けパラメータ(630)に関連付けられた品質基準(640)とを含む訓練データセットを用いて訓練されている、手段と、を備える、デバイス(800)。
【請求項17】
前記測定を行うための手段を更に備える、請求項16に記載のデバイス(800)。
【請求項18】
前記測定を行うための前記手段は、粒子線の生成源(825)と、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(810)が発する粒子を検出するための検出器(835)と、を備える、請求項17に記載のデバイス(800)。
【請求項19】
前記特徴付けパラメータ(730)を決定するための手段および/または前記特徴付けパラメータ(730)を変更するための手段を更に備える、請求項16~18のいずれか1項に記載のデバイス(800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2018年7月5日に出願された独国特許出願第DE 10 2018 211 099.9号の優先権を主張し、その内容の全体を本開示の一部として参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、半導体産業の分野で使用される測定デバイスの測定正確度を改善するための方法およびデバイスに関する。特に、本発明は、フォトリソグラフィプロセスの要素の検査において統計的に分布した測定値を評価するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業における集積密度の上昇の結果、フォトリソグラフィマスクがウエハ上に結像(image)すべき構造はますます小さくなってきている。ウエハ上の、およびしたがってまた、例えばナノインプリントリソグラフィ用のフォトリソグラフィマスクまたはテンプレートなどの、ウエハの露光に使用されるパターン具備要素上の、構造の小型化の進行は、パターン具備要素の検査、計測、および検証に、広範な影響を及ぼす。フォトリソグラフィマスク、テンプレート、および/またはウエハの製造プロセス中にそれらのモニタリングおよび修復に使用される、現在の測定デバイスまたはツールは、半導体産業における正確度からくる極めて厳しい要件に対処するために、非常に複雑である。
【0004】
フォトリソグラフィマスク、フォトマスク、または単にマスクを製造するためのプロセス用のそのような測定デバイスの例として、フォトマスク上に存在する欠陥を検出するための検査ツール、パターン要素の限界寸法(CD)および位置決め誤差を測定するための計測ツール(例えばWLCDツールまたはPROVE(登録商標)ツール)、ウエハ上でマスクの欠陥が視認できるかを判定するための検証ツール(例えばAIMSTM(商標)ツール)、マスク修復ツール(例えばMeRiT(登録商標)ツール)、および位相測定ツールが挙げられる。
【0005】
新しい手法として現在、フォトマスクの品質評価におけるいくつかの困難に機械学習(ML)モデルを援用して対処する取り組みが行われている。この手法に関して、以下の文献を例として引用するものとする:WO2017/087653A1、WO2017/117568A1、WO2017/120253A1、WO2017/123555A1、WO2017/123561A1、WO2017/117573A1、WO2017/123555A1、およびWO2017/205537A1。
【0006】
特許明細書DE10 2007 924 B4には、適正でない測定値をそれらの測定の直後に品質係数を用いて自動的に検出するための方法が記載されている。検出された適正でない測定値は棄却され、品質係数を満たす新しい測定値によって置換される。
【0007】
上述した高精度測定デバイスに関する測定値の品質係数の確立は複雑なプロセスであるが、その理由は、高精度の複雑なツールに関して、品質要因とその関連する測定値との間の関係が、一般に知られていないからである。
【0008】
本発明はしたがって、測定デバイスの測定正確度を向上させ上記した欠点を少なくとも部分的に回避する方法およびデバイスを明確にする、という課題に対処する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によれば、この課題は、請求項1に記載するような方法および請求項17に記載するようなデバイスによって解決される。一実施形態では、フォトリソグラフィプロセスに関する要素の検査において統計的に分布した測定値を評価するための方法は、以下:(a)訓練された機械学習モデルにおいて複数のパラメータを使用することであって、パラメータは測定値の測定に割り当てられた時間期間内における測定環境の状態を特徴付ける、使用するステップと、(b)測定値を評価するために、訓練された機械学習モデルを実行するステップと、を含む。
【0010】
本発明に係る方法によって、測定環境を特徴付けるパラメータに基づいて、測定前、測定中、または測定後に、計画された測定値または記録された測定値が、その統計的分布においてどのようになるか、またはどのように配置されているかを、自動的に示すことが可能になる。こうして測定の重要度を、上記の測定値の測定前に予め、測定中に、または測定の直後に、評価することができる。適当な対策を開始することによって、本発明に係る方法はこのように、高精度の複雑な測定デバイスの測定正確度の大きな向上を可能にする。
【0011】
本発明に係る方法では、測定データと測定環境を特徴付けるパラメータとの間の任意の未知の関係を検出し、それらを測定値の評価のために利用することができる。これはここに示す方法の決定的な利点であるが、その理由は、非常に正確で複雑な測定デバイスの場合、そもそもの測定データと、測定環境を特徴付けるパラメータとの間の因果関係が、一般に未知であるからである。
【0012】
測定値および測定環境を特徴付けるパラメータは理想的には、同じ「時点」で測定されるべきである。実際の測定デバイスにおいては、測定値の測定は1つの時点ではなく、むしろある時間間隔内で行われる。このことは、時間期間が測定もしくは測定値の記録に割り当てられる、または、測定または測定値の記録が時間期間と相関していることを意味する。特徴付けパラメータは、測定に割り当てられた時間期間内の測定環境を特徴付けるものとされる。しかしながら、このことは、あらゆる特徴付けパラメータについて相関する時間期間内に測定を行わなければならないことを意味しない。急な変化を示す特徴付けパラメータには、計画された測定に割り当てられた時間期間内に、1回または場合によっては複数回の測定を行うべきである。対照的に、遅いドリフトしか示さない特徴付けパラメータの場合、計画された測定に割り当てられた時間期間よりも大きい時間間隔内で測定を行えば十分な場合がある。
【0013】
測定値は品質基準に基づいて評価できる。品質基準は、以下の群:測定値に割り当てられた統計的分布の期待値に関する閾値、測定値の統計的分布に関する事前に定められた複数の範囲のうちの1つの範囲への割り当て、および、統計的分布の期待値からの測定値の偏差のうちの、少なくとも1つの要素を含み得る。
【0014】
品質基準によって測定値を分類することができる。測定値の分類は二値であってもよい、すなわち、測定値は要件を満たすか満たさないかである。測定値の二値分類は閾値に基づいて行うことができる。ただし、分類は測定値の多クラス割り当ても含み得る、すなわち、測定値は例えば、品質基準を非常に良好に満たす場合、または普通に良好に満たす場合、または満たさない場合がある。更に、品質基準は、品質パラメータを連続関数の形態で定義することが可能である。品質パラメータは正規化されても正規化されなくてもよい。
【0015】
測定の相対的な反復精度についての予測を可能にすることが、本発明に係る方法の目的である。
【0016】
計画された測定の前に測定値を評価することができ、本発明に係る方法は以下を更に含み得る:測定値の計画された測定に割り当てられた時間期間内に品質基準が満たされない場合に、計画された測定値の測定を行わないステップ。
【0017】
測定が行われる前に予め、測定のために計画された時点において、測定環境が測定を行うのに好ましい状態にあるか否かを決定できることは、本願に記載する方法の重要な利点である。このことにより、デバイスの測定正確度を高めること、および同時に測定の複雑さの上昇はごく僅かにすることが可能になり、後から棄却すべき測定値はそもそも生成すらされない。
【0018】
上で規定した方法は以下を更に含む:測定値の計画された測定に割り当てられた時間期間内に品質基準が満たされるまで、計画された測定を保留するステップ。
【0019】
効率上の理由から、後から使用不可能な測定値を識別し、それらを棄却しそれらを新しい測定で置換する代わりに、使用可能な測定だけを行うのがより好ましい。
【0020】
測定値はその測定後に評価することができ、本発明に係る方法は、以下:品質基準が測定値の計画された測定に割り当てられた時間期間内に満たされなかった場合は、測定値を棄却するステップ、を更に含み得る。
【0021】
本願に提示する方法を、まず測定を行いその後記録された測定値を分析または評価するように実装することも可能である。
【0022】
訓練された機械学習モデルは、測定デバイスの測定またはデータの記録を追跡すること、および、全ての必須の特徴付けパラメータを常時モニタする、すなわち測定することができる。特徴付けパラメータは訓練された機械学習モデルに入力データとして提供され、訓練されたモデルは品質基準に関する値または数値を予測する。次いで訓練されたモデルのステートメントを使用して、測定値の測定を開始または保留することができる。機械学習モデルによって品質基準を出力することは、直前に記録された測定値を測定デバイスが棄却し、更新された測定または繰り返しの測定を行う、という効果を有し得る。
【0023】
本発明に係る方法は以下を更に含み得る:測定値に関する信頼度ステートメント(confidence statement)を生成するステップ。信頼度ステートメントは、測定デバイスの測定値と一緒に伝達することができる。
【0024】
信頼度ステートメントは、MLモデルがその出力データを信頼性に関してどのように評価するかを反映している。例として、95%の信頼度ステートメントを有して外れ値として評価される測定値であれば、この測定値が棄却される結果となるであろう。対照的に、測定値が品質基準を51%の度合まで満たすとの評価であれば、用途に応じてそれが維持または新しく測定される結果となるであろう。本発明に係る方法は、品質基準が満たされているまたは満たされていないことについてのステートメント、および、品質基準に関する信頼度ステートメントの、両方を予測することができる。ただし、信頼度ステートメントを、後から機械学習モデルの外部で、その出力データから決定することも可能である。
【0025】
フォトリソグラフィプロセスに関する要素の特徴としては、フォトマスクのもしくはウエハのパターン要素、および/または、フォトマスクのもしくはウエハの位置合わせマーキングを挙げることができる。
【0026】
測定値の信頼度ステートメントは例えば、測定の基礎となる特徴の照射のタイプに依存し得る。このことは、反射の場合(すなわち反射光を使用する)または透過の場合(すなわち透過光を使用する)における、パターン要素のおよび/またはフォトマスクの位置合わせマーキングの測定が、測定されるパターン要素のおよび/または測定される位置合わせマーキングの信頼度ステートメントに影響を与えることを意味する。
【0027】
また更に、測定値の信頼度ステートメントは、照射強度および/またはフォトリソグラフィプロセス用の要素上の測定位置から、独立したものであり得る。
【0028】
更に、本発明に係る方法は、以下を含み得る:1つまたは複数の測定値の信頼度ステートメントに起因して、測定デバイスによって警告および/またはエラーメッセージを生成するステップ。MLモデルはその場合、MLモデルが状況を高い信頼度で評価できないことを示し得る。出力された警告および/またはエラーメッセージを受けて、専門の人員がプロセスに介入してもよい。
【0029】
本発明に係る方法は以下を含み得る:1つまたは複数の測定値の信頼度ステートメントに起因して測定デバイスを停止させるステップ。測定デバイスによるそれ以上の測定データの記録を終了することによって、無価値の測定値の生成を回避することが可能である。
【0030】
特徴付けパラメータは、以下の群のうちの2つ以上の要素を含み得る:測定環境の温度、測定環境の圧力、測定環境の空気湿度、測定環境の屈折率、測定値を測定するためのデバイスの焦点位置、デバイスの光学系の波長、デバイスの光学系の露光強度、デバイスの光学系の露光設定、デバイスの光学系のコヒーレンス度、デバイスの検出器設定、デバイスの1つまたは複数の干渉計の設定、デバイスの1つまたは複数のダンピングシステムの設定、および1つまたはデバイスの複数の駆動装置の設定。
【0031】
測定環境を特徴付けるパラメータは、測定場所におけるまたは測定場所の直接の近傍における周囲条件と、測定を行う測定デバイスの設定と、を含む。
【0032】
特徴付けパラメータはそれらの数値の時間的推移を含み得る。
【0033】
特徴付けパラメータは、測定に割り当てられた時間範囲内の測定値または数値を含むだけではなく、それらの数値の最近の推移を上で説明した方法に導入することができる。特徴付けパラメータの数値の時間的推移を考慮することは、既存の測定値のおよび/またはこれから測定される測定値の評価の改善に寄与し得る。
【0034】
測定値は複数の測定記録を含み得る。複数の測定記録は、少なくとも1つの変更された特徴付けパラメータを含み得る。
【0035】
測定値は、例えばパターン要素の位置の、および/または、フォトリソグラフィマスクの特定の場所における限界寸法(CD)の、繰り返される測定を含み得る。次いで漸進的な測定または測定記録の測定データを組み合わせて、測定値または測定点を形成する。測定値が複数の測定記録を含む場合、測定と相関するまたは測定に割り当てられた時間範囲は通常、測定値が単一の測定に基づく場合の、測定値に割り当てられたまたは測定値と相関する時間範囲と比較して、有意に大きい。
【0036】
繰り返される測定は、実質的に同一の条件下で、すなわち、測定環境を特徴付けるパラメータのうちの1つを意図的に変更することなく、実施できる。ただし、特徴付けパラメータのうちの1つまたは複数を、個々の測定記録について定められた方法で変更することも可能である。例として、露光設定、焦点設定、および/またはフォトマスクの場所の露光のコヒーレンス度を、個々の測定記録について個別に設定することができる。
【0037】
複数の測定記録は、フォーカススタック(focus stack:焦点スタック)を測定することを含み得る。また更に、フォーカススタックの測定値の信頼度ステートメントは、そのフォーカススタックの記録の数から独立したものであり得る。
【0038】
特徴付けパラメータのうちの少なくとも1つは、測定値に関する複数の測定記録の間の、その静的分布(static distribution)の少なくとも1つの特性変数を含み得る。
【0039】
上記したように、測定値を記録することが変数を繰り返し測定することを含む場合、特徴付けパラメータは測定記録が行われる時間期間内で、統計的変動に曝される。特徴付けパラメータを測定記録の時間期間内の主要な点としてのみ決定する代わりに、特徴付けパラメータを時間間隔内で繰り返し、例えば周期的に測定すること、および、時間間隔内で測定される数値の統計的分布を決定することもまた、可能である。結果的に、特徴付けパラメータの正確度が向上され得る。
【0040】
機械学習モデルは、以下の群のうちの少なくとも1つの要素を含み得る:カーネル密度推定量、統計的モデル、決定木、線形モデル、時変モデル、最近傍分類、およびk最近傍アルゴリズム、ならびに非線形特徴変換によるそれらの非線形拡張。
【0041】
カーネル密度推定量(KDEと呼ばれる)によって、無作為抽出に基づく未知の確率分布の連続的な推定が可能になる。カーネル密度推定量は、例えば、ガウスカーネル、コーシーカーネル、ピカードカーネル、またはEpanechnikovカーネルを含むことができ、機械学習モデルに含まれているカーネルパラメータ、例えば帯域幅を、例えば、全ての入力パラメータについて個別にまたは集合的に割り当てるまたは推定することができる。一般に、存在する入力パラメータを有効なカーネル関数に導く、任意の相似関数を使用することが可能である。
【0042】
統計的モデルは少なくとも1つの混合分布を含み得る。混合分布は、以下の群のうちのある要素を含み得る:ガウス混合分布(Gaussian mixture distribution)(GMM、ガウス混合モデル)、多変量正規分布、およびカテゴリカル混合分布(categorical mixture distribution)。混合分布の好適な数は存在するデータによって決まり、検証データセットを援用して最適化され得る。
【0043】
決定木(DT)は、以下の群のうちの少なくとも1つの要素を含み得る:従来の決定木(DT)、ランダム決定木(randomized decision tree)(RDT)、ならびに決定森(decision forest)(DF)、および決定森のランダム版(randomized variant)(RDF)。RDTおよびRDFでは、ランダム化の程度または「レベル」は様々であり得る。各ノードに対し、訓練(トレーニング)において、可能な決定の全てが、またはそこから無作為に選択したもののみが、存在し得る。決定木の各葉に対して、その時点までに存在する訓練例の全てまたは一部のみを使用できる。
【0044】
線形モデルは、以下の群のうちの少なくとも1つの要素を含み得る:潜在的ディリクレ配分法(latent Dirichlet allocation)(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、ロジスティック回帰、最小二乗法(最小二乗推定)、ラッソ回帰(Lasso regression)、リッジ回帰(Ridge regression)、およびパーセプトロン(perceptron)。線形モデルを有利に適用するには、入力データおよび訓練データの正規化が必要である。
【0045】
機械学習モデルは、カーネルサポートベクトルマシンの形態のSVMの非線形拡張を含み得る。更に、機械学習モデルは、ガウス過程回帰の形態のガウス混合分布の非線形拡張を含み得る。機械学習モデルは、深層ニューラルネットワーク(DNN)を更に含み得る。
【0046】
時変(time-variant:時間変化)モデルは以下の群のうちの少なくとも1つの要素を含み得る:回帰型ニューラルネットワークおよび隠れマルコフモデル。代替の例示的な実施形態では、時間不変モデルが早期の測定のパラメータを入力データとして利用可能となっていることにより、時間不変モデルによって時変モデルをシミュレーションすることができる。
【0047】
時変または時間依存機械学習モデルは、測定環境を特徴付けるパラメータの時間プロファイルを考慮することが可能である。
【0048】
回帰型ニューラルネットワーク(RNN)では、ある層の出力が、それよりも後の時点の追加の出力として同じ層に組み込まれる。RMMの1つの好ましい実施形態は、LSTM(長短期記憶)ネットワークである。
【0049】
更に、機械学習モデルは、上で指定した群のうちのタイプの異なる2つ以上の機械学習モデルを含み得る。様々なタイプの複数のモデルまたは複数の学習アルゴリズムの集合体または群を使用する機械学習モデルは一般に、単一のタイプのモデルまたは学習アルゴリズムに基づくMLモデルよりも、良好な結果を達成できる。このいくつかのタイプの異なるモデルの結果の計算は通常、単一のタイプのMLモデルの評価よりも時間がかかる。ただしその見返りに、1つのタイプのMLモデルまたは1つの学習アルゴリズムを有するMLモデルに対応する結果が、より小さい演算深度で予め達成され得る。
【0050】
この組合せの様々な構成要素の予測は、等しく重み付けされた様式で機械学習モデルの予測に寄与し得る。様々なタイプのMLモデルの予測は、重み付けされた様式で機械学習モデルの予測に寄与し得る。
【0051】
様々なタイプのMLモデルの群を含む機械学習モデルを、訓練フェーズにおいて、特に、群中の先行するモデルのタイプでは予測できないかまたは不十分にしか予測できない訓練データを与えられた、群に新たに追加される各タイプのモデルによって、漸増的に構築することができる。
【0052】
機械学習モデルの2つ以上の異なるMLモデルのタイプを、自動機械学習(Automated Machine LearningまたはAutoML)を援用して選択することができる。
【0053】
機械学習モデルおよび/または機械学習モデルの様々なMLモデルのタイプのハイパーパラメータは、自動機械学習を援用して同様に最適化され得る。機械学習モデルのハイパーパラメータは、機械学習モデルのための訓練フェーズの開始前に定義されるモデルパラメータである。
【0054】
機械学習モデルを訓練するための訓練データセットは、データ対:i番目の測定値の特徴付けパラメータおよびi番目の測定値の品質基準、を含み得る。
【0055】
機械学習モデルを訓練するための訓練データセットは、データ対:フォトリソグラフィプロセスの要素のj番目の位置におけるi番目の測定値の特徴付けパラメータおよびフォトリソグラフィプロセスの要素のj番目の位置におけるi番目の測定値の品質基準、を含み得る。
【0056】
上で既に説明したように、品質基準は、測定値、1つの範囲もしくは複数の範囲のクラスへの測定値の割り当て、または連続関数の数値に関する、閾値条件を満足することを含み得る。
【0057】
本発明に係る方法は以下を更に含み得る:訓練された機械学習モデルを測定を行う測定デバイスの修正に適合させるステップ。
【0058】
測定デバイスの部品の保守および/または交換後、訓練された機械学習モデルを、新しいまたは第2の訓練データセットを用いた再学習プロセスによって、その修正された測定デバイスに適合させることができる。
【0059】
更に、本発明に係る方法は以下を含み得る:訓練された機械学習モデルを測定デバイスの位置特異的な設置に適合させるステップ。
【0060】
訓練されるモデルを、第2の訓練データセットを援用して、測定デバイスの位置特異的な設置に適合させることができる。適合プロセスまたは再学習プロセスの複雑さは、機械学習モデルの具現化の選択に依存する。例として、適合プロセスの場合、ストレージに最初の訓練データセットの訓練データを有し、再学習プロセスがそれらを利用できるようにすることも必要な場合がある。更に、複雑さまたは演算の複雑さは、機械学習モデルの具現化の選択に依存する。
【0061】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されるとコンピュータシステムに上記した方法のうちの1つの方法ステップを実行させる命令を備え得る。
【0062】
一実施形態では、フォトリソグラフィプロセスに関する要素の検査において統計的に分布した測定値を評価するためのデバイスは、(a)訓練された機械学習モデルにおいて複数のパラメータを使用するための手段であって、パラメータは測定値の測定に割り当てられた時間期間内における測定環境の状態を特徴付ける、使用するための手段と、(b)測定値を評価するために、訓練された機械学習モデルを実行するための手段と、を備える。
【0063】
本発明に係るデバイスは、測定を行うための手段を更に備え得る。
【0064】
測定を行うための手段は、粒子線の生成源と、フォトリソグラフィプロセスの要素の要素が発する粒子を検出するための検出器と、を備え得る。
【0065】
粒子線は、以下の群:光子線、電子線、イオン線、原子線、および分子線のうちの、少なくとも1つの要素を含むことができ、かつ/または、検出器は、以下の群:光電子増倍管、光ダイオード、アバランシェ光ダイオード、CCDカメラ、およびx線検出器のうちの、少なくとも1つの要素を含み得る。
【0066】
本発明に係るデバイスは、特徴付けパラメータを決定するための手段および/または特徴付けパラメータを変更するための手段を更に備え得る。
【0067】
更に、本発明に係るデバイスは、計画された測定を保留するための手段および/または測定値を棄却するための手段を備え得る。
【0068】
フォトリソグラフィプロセスの要素は、以下の群:フォトリソグラフィマスク、ナノプリントリソグラフィ用のテンプレート、およびウエハのうちの、少なくとも1つの要素を含み得る。
【0069】
以下の詳細な説明では、本発明の現時点で好ましい例示的な実施形態について、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】フォトリソグラフィプロセスの要素上のある位置における測定値の、例示的な統計的分布を表す図である。
【
図2】
図1に示す測定値の分布に関するヒストグラムである。
【
図3】測定値の外れ値を識別するための閾値条件を導入した後の、
図1の統計的分布を示す図である。
【
図4】閾値条件を満たさない測定外れ値を除去した後の、
図3のヒストグラムである。
【
図5】
図3で識別された測定外れ値が識別されている、
図1に示す測定値の分布に属する特徴付けパラメータのセットを示す図である。
【
図6】機械学習モデルの訓練プロセスを概略的に示す図である。
【
図7】機械学習モデルの実行を概略的に示す図である。
【
図8】測定デバイスのいくつかの構成要素を概略的に提示する図である。
【
図9】フォトリソグラフィプロセスに関する要素の検査において統計的に分布した測定値を評価するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明に係る方法のおよび本発明に係るデバイスの現時点で好ましい実施形態が、フォトリソグラフィマスクの測定値の評価に基づいて、以下でより詳細に説明されている。本発明に係る方法および本発明に係るデバイスは、あらゆるタイプの透過型および反射型のフォトマスクの測定値を評価するために使用できる。更に、本発明に係る方法および本発明に係るデバイスはまた、ナノプリントリソグラフィ用のテンプレートおよび/またはウエハから得られる測定値を評価するためにも使用できる。ただし、本発明に係る方法および本発明に係るデバイスは、フォトリソグラフィプロセスに関する要素への適用に制限されない。むしろそれらは一般に、機械学習モデルの訓練に使用できるように、大量の測定データを生み出す高精度測定デバイスの測定値を評価するのに使用できる。
【0072】
図1は、フォトリソグラフィマスクの特定の位置における測定値100の統計的分布の一例を示す。詳細には、
図1には、フォトマスクのj番目の場所において測定点100の測定を1000回繰り返したものが提示されており、すなわちN=1000である。例として、フォトマスクにわたって200個の測定場所を分布させることができ、すなわちM=200である。M個の測定点をフォトリソグラフィマスクを覆う規則的な格子内に分布させることができる。しかしながら、パターン要素および/またはフォトマスクの位置合わせマーキングの間にM個の測定点を分布させる方が都合が良い。
図1に示す例では、フォトマスクにわたって分布させたM個の測定点が連続的に測定される。全M個の測定点を1回測定した後で、この手順をN回繰り返す。
図1における横座標はしたがって、測定プロセス中の、フォトリソグラフィマスクのj番目の場所における測定値100の時間的推移を表している。
【0073】
図1における縦座標は、j番目の位置における測定値100 s
j(i)を、統計的分布の期待値または平均値<s
j>との差として提示している。
図1に示す例では以下が成り立つ:1≦i≦N=1000および1≦j≦M=200。更に、測定値100 s
j(i)は、期待値または平均値<s
j>から標準偏差σ=s
j(i)-<s
j>へと正規化した様式で、すなわちs
j,N(i)=(s
j(i)-<s
j>)/σで提示されている。
【0074】
図2は、測定値100s
j(i)またはs
j,N(i)の統計的分布から導出したヒストグラムを示す。3σ=3という3σの値、すなわち全測定値100の99.73%が正規分布している統計的分布の間隔が、
図2から導出できる。
【0075】
図3では、±2σの正規化した偏差に関して描写された点線380と共に、
図1を再び示す。点線380は、測定値100s
j(i)またはs
j,N(i)に関する閾値条件を具現化している。±2σの間隔内にある統計的分布の測定値100は、使用可能な測定値300と見なされ、および±2σの間隔外にある測定値100は、外れ値350と見なされて棄却される。1つの手順では、正規分布が存在する場合、全ての測定値100の95.45%が「良好」として分類され、点線の外側にある測定値の4.55%が「不良」として分類される。
図3に示す例では、1000個の測定値100のうち49個の測定値350が±2σの範囲または間隔の外側にある。
【0076】
図4には、
図1からの測定値100s
j(i)の統計的分布の、±2σの範囲内にある測定値300に関するヒストグラムが提示されている。測定値300s
j(i)またはs
i,N(i)の最大測定誤差は、外れ値350を除外することによって、
図1の3σ=3から
図3の3σ=2へと減少した。
【0077】
図1~
図4は、測定後に、全ての測定値100の統計的分析に基づいて、記録された測定値100 s
j(i)の統計的分布において外れ値350となるものを判定すること、ならびに、こうして測定の評価およびしたがって測定デバイスの正確度を最適化することが、常に可能であることを示す。本願に記載する方法はその場合、計画された測定を行う前に予め、または測定中に、計画された測定が「良好」な測定値300、すなわち使用可能な測定値300を生み出すのか、それとも「不良」の測定値350、すなわち外れ値350を生み出すのかを、判定できるようにする、という利点を有する。この結果、測定デバイスの測定正確度が、測定デバイスのスループットを明白に損なうことなく、大きく向上し得る。
【0078】
図5には、
図1に示す測定値s
j(i)の統計的分布に属する特徴付けパラメータP
j(i)のセットが提示されている。
図5には、特徴付けパラメータP
j(i)の可能な時間プロファイルの一例が提示されている。特徴付けパラメータP
j(i)のセットのうち、
図5の外れ値350は
図3の場合と同様に、「正方形」によって識別されている。
【0079】
図5から理解できるように、測定値s
j(i)またはs
j,N(i)の測定中の測定環境を特徴付けるパラメータP
j(i)は全て、「良好」、すなわち±2σの間隔内にあるか、または「不良」、すなわちこの範囲外にあるものとして、識別または注記されている。品質基準、すなわち
図4の例において「良好」および「不良」の測定値を分けるのに使用される閾値条件は、非常に少ない測定値だけが外れ値として特徴付けられるように選ぶことができる。この結果、測定デバイスの測定正確度はごく僅かにだけ改善され、この見返りとして、デバイスが測定を行うための継続時間がごく僅かだけ増加する。しかしながら、測定デバイスの測定正確度が大きく向上し得るように、品質基準を定義することも可能である。この改善は、測定値s
j(i)の統計的分布の測定のための測定継続時間を犠牲にして実現される。
【0080】
閾値条件、すなわち二分値類に加えて、
図1~
図5に示すように、品質基準には多クラス分類(
図3には示されていない)も含めることができる。更に、品質基準は連続関数の形態で実現することができる(
図3には示されていない)。機械学習モデルおよび品質基準の両方を、解決すべき問題に適合させるのが有利である。
【0081】
図6のダイアグラム690は、機械学習モデルの600のまたはMLモデル600の訓練を概略的に示す。MLモデル600が測定環境を特徴付けるパラメータからその統計的分布内の測定点100、300、350の位置を予測できるようになる前に、この目的用の広範なデータセットまたは訓練データセットを用いて、MLモデル600を訓練しなければならない。訓練データは、測定デバイスとタイプが同一の長い一連の測定を実施することによって生成される。例として、フォトマスクまたはウエハを測定するために、測定デバイス、例えばレジストレーション(記録)ツール(例えばPROVE(登録商標))が同じ方式で繰り返しn回使用され、この場合nは、測定プロセス中に測定デバイスの関連する特徴付けパラメータが有意に変化するような大きさを有するように選択しなければならない。更に、可能な限り代表的な訓練目的のデータベースを生成するために、測定環境を、およびしたがって特徴付けパラメータを、訓練データの記録中に系統的に変更することが可能である。
【0082】
訓練データセットは、訓練に使用される特徴付けパラメータ630と、訓練に使用される特徴付けパラメータ630と関連付けられた品質基準640と、を含む。訓練データは、入力層610において訓練中のMLモデル600に提供される。品質基準640は、訓練に使用される特徴付けパラメータ630の分類を示す、すなわち、最も単純なケースでは、訓練に使用される特徴付けパラメータ630が閾値条件380を満たすかそれとも満たさないかを示す。訓練フェーズ中、訓練中または学習中のMLモデル600は、訓練用の特徴付けパラメータ630および関連する品質基準640から、品質基準640に関する予測650を生成する。予測された品質基準650は、測定に割り当てられた品質基準640と比較される。このことが、
図6において両矢印660で示されている。訓練中のMLモデル600はその出力層620において、予測される品質基準650を提供する。
【0083】
選択されるMLモデル600に応じて、訓練フェーズにおいてMLモデル600のパラメータを適合させるための様々な方法が存在する。例として、DNN(深層ニューラルネットワーク)に関して、典型的には複数のパラメータを有する、逐次的技法の「確率的勾配降下法」が確立されている。この場合、訓練データは学習中のMLモデル600に繰り返し「提出される(submitted)」、すなわち、MLモデル600は、訓練に使用される特徴付けパラメータ630から、その現在のパラメータセットを用いて、品質基準640に関する予測650を計算する。上で検討した比較は、後から行われる。品質基準640の予測650と品質基準640の実際の値の間で偏差が生じる場合、学習MLモデル600のパラメータを適合させる。訓練フェーズは、局所的な最適が達成されると、すなわち、予測される品質基準650と実際の品質基準640の偏差がそれ以上変化しなくなると、またはさもなければ、学習中もしくは訓練中のMLモデル600の訓練サイクル用の所定の時間割当を使い切ると、終了する。
【0084】
ほとんどの線形機械学習モデルについて、モデルパラメータの最適な割り当てのための、閉じた(closed)計算仕様が存在する、すなわち、これらのモデルのモデルパラメータの決定は逐次近似に基づくものではない。決定木のモデルパラメータを決定するために、例えば情報利得などの、様々な分割基準を選択できる。また更に、決定木はまた、例えば最大深さに合わせておよび/または1つの葉あたりの最大多様性に合わせて、後から剪定することもできる。期待値最大化方法またはアルゴリズムは通常、混合モデル、例えばガウス混合モデルに関して使用される。最近傍モデルの場合、ならびにパルツェン密度推定およびカーネル回帰の場合、モデルパラメータを推定する必要はなく、むしろカーネル関数のハイパーパラメータが最適化される。
【0085】
訓練に使用される特徴付けパラメータ630は、光学測定デバイス、例えば
図8の文脈で検討することになる測定デバイス800で生成され得る。ただし、本願に記載する方法を、フォトリソグラフィプロセスの要素を結像する(imaging)ために一般に粒子線を使用する任意の測定デバイスに使用することも可能である。特に、ここで説明される方法は、走査型電子顕微鏡、および/または、フォトマスクもしくはウエハを結像する(imaging)ためにイオン線を使用する測定デバイスに使用できる。
【0086】
図7のダイアグラム790は訓練されたMLモデル700の実行を概略的に示しており、このMLモデルは、測定デバイスによって測定された特徴付けパラメータ730およびその特徴付けパラメータ730に割り当てられた品質基準740を、その測定デバイスにおいて計画される測定の測定値100、300、350の予測される品質基準750に変換する。特徴付けパラメータ730および品質基準740の割り当てられた値は、入力層710を介して訓練されたMLモデル700に提供される。訓練された機械学習モデル700は、出力層720において、測定デバイスに関して計画された測定の測定値100の、300、350の品質基準750の予測を生み出す。
【0087】
MLモデル700は、「発明の概要」の項目に記載したモデルのうちの1つを含み得る。利用可能な複数の包括的なMLモデルから、解決すべき課題に適合されるモデルを選択するのが有利である。更に、選択された包括的なMLモデル700を、解決すべき課題に、および品質基準750の必要な予測正確度に適合させるのが、都合がよい。MLモデル700は、例えばMLモデル700のカーネル関数の複雑さの適合によって、適合され得る。MLモデルがエンコーダ-デコーダのアーキテクチャを有する場合、これは例えば、MLモデルにおける層の数を相応に選択することで実行できる。上記した混合体の形態で実現されたMLモデル700の場合、例えば、例えばDTにおける葉の数RまたはRDFにおける木の数を、解決すべき課題に適合させることができる。
【0088】
図8は、デバイス800のまたは測定デバイス800の概略図を通る断面を示しており、このデバイスは、フォトマスクのおよび/もしくはウエハの構造またはパターン要素の位置決め誤差、マスクおよび/もしくはウエハのパターン要素の限界寸法、すなわちそのCD(限界寸法)、ならびに/または、マスクスタックのマスクの位置合わせ時のオーバーレイ誤差を測定するために使用できる。フォトリソグラフィプロセスのフォトリソグラフィマスク810またはより一般的に要素810は、高精度測定ステージ805またはステージ805によって保持される。
図8に示す例では、フォトマスク810は反射型マスク、例えば極端紫外線(EUV)波長範囲用のマスクである。ただし、測定デバイス800は、透過型フォトマスク810を測定することもできる。測定ステージ805は位置決めユニット815によって全6自由度で能動的に制御され、
図8に示す例では測定デバイス800の唯一の可動部である。以下でxy平面と呼ぶ、フォトマスク810の平面内の測定ステージ805の位置は、1つまたは複数の干渉計820によって、例えば1つまたは複数のレーザ干渉計によって検出される。また更に、干渉計820を使用して、z方向(
図8には示されていない)における測定ステージ805の位置を判定することができる。
【0089】
測定デバイス800における光源825として、DUV(深紫外)波長範囲の光を生成するエキシマレーザ、例えば193nmの範囲内の波長で出射されるArF(フッ化アルゴン)レーザが使用される。
図8に示す例では、レンズ830は0.6の開口数(NA)を有する。ただし、測定デバイス800の分解能を上げるために、測定デバイス800においてより大きいNAを有するレンズ830を使用することが可能である。光源825のレーザ放射は、測定ステージ805を垂直方向またはz方向に移動させることによって、マスク810の表面に集光される。マスク810がレンズ830に対面する面であるマスク810の上面は、パターン要素を有するが、
図8には示されていない。
【0090】
CCD(電荷結合デバイス)センサ835は、測定デバイス800の空間分解検出器を形成する。CCDセンサ835は、マスク810によって局所的に反射される光を測定する。典型的には、CCDセンサ835は、例えば1000・1000ピクセルの、二次元ピクセル構成またはピクセルアレイを備える。CCDセンサ835はその測定信号を信号処理ユニット840に送信し、このユニット840が、CCDセンサ835によって検出された信号から画像を計算する。必須の構成要素として光源825とレンズ830とを有する露光システム827と、検出器835とで、測定デバイス800の光学系885が形成される。
【0091】
コンピュータシステム850は、信号処理ユニット840によって計算された画像を表示することができる、ならびに/または、測定されデータを生データとしておよび/もしくは画像データとして、不揮発性メモリ855に格納することができる。明晰さの理由から、
図8にはコンピュータシステム850のディスプレイは示していない。コンピュータシステム850のメモリ855には、機械学習モデル600および/または訓練されたMLモデル700を格納することができる。また更に、メモリ855には、訓練に使用される特徴付けパラメータ630および品質基準640の割り当てられた値を格納することができる。コンピュータシステム850は、MLモデル600を訓練するおよび/または訓練されたMLモデル700を実行する、1つまたは複数のプロセッサ860を備える。プロセッサは例えば、1つまたは複数の強力なGPU(グラフィック処理ユニット)の形態で具現化され得る。
【0092】
コンピュータシステム850の最適化ユニット860は、信号処理ユニット840に、測定デバイス800の光学系885による測定値100、300、350の計画された測定を行わせるか、または保留させる。
【0093】
最後に、分析ユニット865は、測定デバイス800の測定値を分析して、測定値の統計的分布の特性変数を決定することができる。更に、コンピュータシステム850の分析ユニット865は、計画された測定値と既に測定された測定値を分類することができる。
【0094】
コンピュータシステム850は、
図8の例に示すように、別個のユニットとして具現化され得る。ただし、コンピュータシステム850および/または信号処理ユニット840を測定デバイス800に組み込むことも可能である(
図8には示されていない)。
【0095】
コンピュータシステム850は、測定ステージ805の位置決めユニット815、1つまたは複数の干渉計820、光源825、レンズ830、CCDセンサ835、信号処理ユニット840、分析ユニット865、および最適化ユニット860を、モニタおよび/または制御することができる。
【0096】
フォトリソグラフィマスク810の表面は、僅かに傾斜させることができる。更に、マスク810がその固有の重量によって僅かに曲がることによって、最良の焦点条件が変化する。したがって、測定デバイス800は、斜めのグリッドに基づく自動焦点(AF)システム870を有する(
図8には示されていない)。傾斜したミラー875と部分透過型ミラー880とによって、レーザビームがレンズ830上へと導かれる。更に、
図8の例示的な測定デバイス800は、レンズ830とフォトマスクの810パターン要素を大まかに位置合わせするための、補助光学系890を備える。
【0097】
マスク810が透明なマスクである場合、光源825は第2のレンズによって下方からフォトマスク810上へと導かれ、レンズ830はフォトマスク810の表面から放たれるレーザ放射を集束させる(
図8には示されていない)。
【0098】
また更に、測定デバイス800は、測定環境880(
図8には示されていない)における例えば圧力、温度、および/または空気湿度を測定する、センサを備える。
【0099】
最後に、
図9は、フォトリソグラフィプロセスに関する要素810の検査において統計的に分布した測定値100、300、350を評価するための方法のフロー
図900を表す。方法はステップ910から開始する。1番目のステップ920では、測定値100、300、350の測定に割り当てられた時間期間内における測定環境880の状態を特徴付ける複数のパラメータ730が、訓練された機械学習モデル700において使用される。次いで2番目のステップ930は、測定値100、300、350を評価するために、訓練された機械学習モデル700を実行することを含む。最後に方法はステップ940で終了する。