(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230809BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230809BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022506833
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020226
(87)【国際公開番号】W WO2022249398
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清末 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】磯村 僚一
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】松芳 勉
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-048690(JP,A)
【文献】特開2000-150387(JP,A)
【文献】特開平05-042990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、処理用ガスを前記処理室の内部へ供給するためのガス供給装置とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記ガス供給装置は、
吸気口および排気口を有するマスフローコントローラボックスと、
前記マスフローコントローラボックスの内部に設けられ、且つ、それぞれにマスフローコントローラが取り付けられた複数の第1配管と、
前記マスフローコントローラボックスの内部において前記複数の第1配管に連結され、且つ、前記マスフローコントローラボックスの外部において、前記処理用ガスの供給源となる複数の第3配管に、複数の第1継手によって連結された複数の第2配管と、
を有し、
前記複数の第1継手のうち少なくとも1つは
、第1配管カバーによって覆われ、
1つの前記第1配管カバーは、1つの前記第1継手を密閉し、
前記第1配管カバーの内部および前記マスフローコントローラボックスの内部は、第1連通部材によって連通している、プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1連通部材は、前記複数の第2配管のうち前記第1配管カバーが設けられている前記第2配管の外周を覆う外周配管を含む、プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記外周配管は、金属材料で構成される、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記外周配管は、樹脂材料で構成される、プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1連通部材は、前記第1配管カバーおよび前記マスフローコントローラボックスに着脱可能に接続されたチューブを含む、プラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置において、
前記チューブは、可視光が透過可能な樹脂材料で構成される、プラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記複数の第1継手のうち少なくとも1つは
、第2配管カバーによって覆われ、
1つの前記第2配管カバーは、1つの前記第1継手を密閉し、
前記第2配管カバーの内部および前記マスフローコントローラボックスの内部は、第2連通部材によって連通し、
前記第2連通部材は、前記第2配管カバーおよび前記マスフローコントローラボックスに着脱可能に接続されたチューブを含み、
前記第2連通部材が適用されている前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管に流される前記処理用ガスは、前記第1連通部材が適用されている前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管に流される前記処理用ガスよりも、高い沸点を有するガスである、プラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1連通部材が適用されている前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管に流される前記処理用ガスは、H
2、CH
3F、CH
4、Cl
2、SO
2、HBr、SiF
4、NF
3またはCO
2であり、
前記第2連通部材が適用されている前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管に流される前記処理用ガスは、SiCl
4またはBCl
3であり、
前記第1連通部材または前記第2連通部材が適用されていない前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管に流される前記処理用ガスは、Ar、He、O
2、N
2、CHF
3、SF
6またはCF
4である、プラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載のプラズマ処理装置において、
前記第2連通部材が適用されている前記第1配管、前記第2配管および前記第3配管の外周には、ヒータが設けられている、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関し、特に、処理用ガスを処理室の内部へ供給するためのガス供給装置を備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの製造工程において、プラズマ処理装置を用いて、半導体ウェハの表面にプラズマ処理が行われている。例えば特許文献1には、フッ素元素を含有するガスを用いて、プラズマ処理装置の処理室の内部をプラズマクリーニングした後、シリコン元素を含有するガスを用いて、プラズマにより堆積膜を処理室の内部に堆積させ、その後、被処理材である半導体ウェハに対して、プラズマエッチングを行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、近年、SiCl4またはBCl3などの低蒸気圧ガスを用いるプロセスが実現されている。これら可燃性を有した低蒸気圧ガスを処理室へ導入する際には、低蒸気圧ガスを高温状態に維持すると共に、プラズマ処理装置の周囲へのガスの漏洩を抑制できる供給手段が求められる。
【0005】
また、従来では、プラズマ処理装置が設置される建屋において、ガスの供給源からの複数種類のガス供給用の複数の配管が、プラズマ処理装置に備えられたマスフローコントローラボックスに連結され、上記マスフローコントローラボックスから延びる処理ガス用の配管を通して、処理室の内部へガスの供給を行っている。更に、建屋のガス供給源からの複数の配管は、上記建屋のプラズマ処理装置の設置される箇所の床面下方に配置されたガス配管接続ボックスに接続され、その内部で上記マスフローコントローラボックスに接続され、下方に伸びる複数のガス供給用の配管と着脱可能に接続されている。そして、各ボックスの内部は、排気ポンプ等の排気機構と接続され、各ボックスの内部のガスが排気されることで、仮に各マスフローコントローラまたはガス配管の接続部からガスが漏れ出た場合でも、上記建屋の内部へのガスの漏洩を防止している。
【0006】
一方で、上記の漏れガスの拡散を抑制するための排気に係るプラズマ処理装置の運転コストの低減のために、ガス配管接続ボックスまたはその内部の排気を省略することが求められている。しかしながら、単にガス配管接続ボックスまたはその内部を排気する機構を停止または除いた場合では、上記建屋からのガスの配管とマスフローコントローラボックスに接続されたプラズマ処理装置側の配管との連結部において、ガスの漏洩が発生した際に、建屋の内部に漏れたガスが容易に拡散してしまう恐れがある。従って、そのようなガスの漏洩または拡散を防止できるガス供給装置を備えたプラズマ処理装置の提供が求められる。
【0007】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態におけるプラズマ処理装置は、処理室と、処理用ガスを前記処理室の内部へ供給するためのガス供給装置とを備える。前記ガス供給装置は、吸気口および排気口を有するマスフローコントローラボックスと、前記マスフローコントローラボックスの内部に設けられ、且つ、それぞれにマスフローコントローラが取り付けられた複数の第1配管と、前記マスフローコントローラボックスの内部において前記複数の第1配管に連結され、且つ、前記マスフローコントローラボックスの外部において、前記処理用ガスの供給源となる複数の第3配管に、複数の第1継手によって連結された複数の第2配管と、を有する。ここで、前記複数の第1継手のうち少なくとも1つは、前記第1継手が密閉されるように、第1配管カバーによって覆われ、前記第1配管カバーの内部および前記マスフローコントローラボックスの内部は、第1連通部材によって連通している。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、プラズマ処理装置の運転コストの低減できると共に、ガスの漏洩を防止できるガス供給装置を備えたプラズマ処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1におけるプラズマ処理装置を示す模式図である。
【
図2】検討例におけるガス供給装置を示す正面図である。
【
図3】検討例におけるガス供給装置を示す正面透過図である。
【
図4】実施の形態1におけるガス供給装置を示す正面図である。
【
図5】実施の形態1におけるガス供給装置を示す正面透過図である。
【
図6】実施の形態1におけるマスフローコントローラを含む配管を示す正面図である。
【
図7】実施の形態1における配管カバーの周囲を示す正面透過図である。
【
図8】実施の形態1における配管カバーの周囲を示す正面透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
<プラズマ処理装置の構成>
以下に
図1を用いて、実施の形態1におけるプラズマ処理装置1の概要について説明する。
【0014】
プラズマ処理装置1は、円筒形状の真空容器である処理室2と、処理室2の内部に設けられたステージ3とを備える。ステージ3の上方には、円板形状を成す窓部材4と、円板形状を成すプレート5とが設けられている。窓部材4は、例えば石英またはセラミクスのような誘電体材料からなり、処理室2の内部を気密に封止する。プレート5は、窓部材4から離間するように窓部材4の下方に設けられ、例えば石英のような誘電体材料からなる。また、プレート5には、複数の貫通穴6が設けられている。
【0015】
ステージ3は、被処理材7に対してプラズマ処理を行う際に、被処理材7を設置するために用いられる。なお、被処理材7は、例えばシリコンのような半導体材料からなるウェハである。ステージ3と処理室2の底面との間の空間は、ステージ3の側壁と処理室2の側面との間の隙間を介して、ステージ3の上方の空間と連通している。そのため、ステージ3上に設置された被処理材7の処理中に生じた生成物、プラズマまたはガスの粒子は、ステージ3と処理室2の底面との間の空間を経由して、処理室2の外部へ排出される。
【0016】
また、詳細な図示はしないが、ステージ3は、円筒形状を成し、且つ、金属材料からなる基材を有する。上記基材の上面は、誘電体膜によって覆われている。誘電体膜の内部には、ヒータが設けられ、ヒータの上方には、複数の電極が設けられている。上記複数の電極には、直流電圧が供給される。この直流電圧によって、被処理材7を上記誘電体膜の上面に吸着させ、被処理材7を保持するための静電気力を、上記誘電体膜および被処理材7の内部に生成することができる。
【0017】
また、ステージ3には、同心円状または螺旋状状に多重に配置された冷媒流路が設けられている。また、上記誘電体膜の上面上に被処理材7が設置された状態において、被処理材7の下面と誘電体膜上面との間の隙間には、Heなどの伝熱性を有したガスが供給される。そのため、上記基材および誘電体膜の内部には、上記ガスが通流する配管が配置されている。
【0018】
また、プラズマ処理装置1は、インピーダンス整合器8と、高周波電源9とを備える。上記基材には、インピーダンス整合器8を介して高周波電源9が接続される。被処理材7のプラズマ処理中において、被処理材7の上面上にプラズマ中の荷電粒子を誘引するための電界を形成するために、高周波電源9から上記基材へ高周波電力が供給される。
【0019】
また、プラズマ処理装置1は、配管31と、ガス供給装置30とを備える。ガス供給装置30は、配管31を介して処理室2に接続されている。ガスは、ガス供給装置30から配管31を介して窓部材4とプレート5との間の空間に供給され、上記空間内で拡散する。拡散したガスは、貫通穴6からステージ3の上方へ供給される。
【0020】
本願の主な特徴は、ガス供給装置30の構成にあるが、この特徴については、後で詳細に説明する。
【0021】
また、プラズマ処理装置1は、導波管10と、マグネトロン発振器11と、ソレノイドコイル12と、ソレノイドコイル13とを備える。窓部材4の上方には、導波管10が配置され、導波管10の一端部には、マグネトロン発振器11が設けられている。マグネトロン発振器11は、マイクロ波の電界を発振して出力できる。導波管10は、マイクロ波の電界が伝播するための管路であり、マイクロ波の電界は、導波管10を介して処理室2の内部に供給される。ソレノイドコイル12およびソレノイドコイル13は、導波管10および処理室2の周囲に設けられ、磁場発生手段として使用される。
【0022】
また、プラズマ処理装置1は、圧力調整板14と、圧力検出器15と、高真空ポンプであるターボ分子ポンプ16と、粗引きポンプであるドライポンプ17と、排気配管18と、バルブ19~21とを備える。ステージ3と処理室2の底面の間の空間は、真空排気部として機能する。圧力調整板14は、円板形状のバルブであり、排気口の上方で上下に移動することで、排気口へガスが流入するための流路の面積を増減する。すなわち、圧力調整板14は、排気口を開閉するバルブの役目も兼用している。
【0023】
圧力検出器15は、処理室2の内部の圧力を検知するためのセンサである。圧力検出器15から出力された信号は、図示しない制御部に送信され、上記制御部において圧力の値が検出され、検出された値に応じて上記制御部から指令信号が出力される。上記指令信号に基いて、圧力調整板14が駆動され、圧力調整板14の上下方向の位置が変化し、排気の流路の面積が増減される。
【0024】
ターボ分子ポンプ16の出口は、排気配管を介してドライポンプ17に連結され、上記排気配管の途中にはバルブ19が設けられている。ステージ3と処理室2の底面の間の空間は、排気配管18に接続され、排気配管18には、バルブ20およびバルブ21が設けられている。バルブ20は、処理室2が大気圧から真空状態になるように、ドライポンプ17で低速に排気するためのスロー排気用のバルブであり、バルブ21は、ターボ分子ポンプ16で高速に排気するためのメイン排気用のバルブである。
【0025】
以下に、被処理材7の上面上に予め形成された所定の膜に対して、プラズマを用いたエッチング処理を実行する場合について例示する。
【0026】
被処理材7は、プラズマ処理装置1の外部からロボットアームのような真空搬送装置のアームの先端部に載せられ、処理室2の内部へ搬送され、ステージ3上に設置される。真空搬送装置のアームが処理室2から退室すると、処理室2の内部が密封される。そして、ステージ3の誘電体膜の内部の静電吸着用の電極に直流電圧が印加され、生成された静電気力によって、被処理材7は、上記誘電体膜上で保持される。
【0027】
この状態で、被処理材7と上記誘電体膜との間の隙間には、Heなどの熱伝達性を有するガスが、ステージ3の内部に設けられた配管を介して供給される。また、図示しない冷媒温度調整器によって所定の温度に調整された冷媒が、ステージ3の内部の冷媒流路に供給される。これにより、温度が調整された基材と被処理材7との間で、熱の伝達が促進され、被処理材7の温度が、プラズマ処理の開始に適切な範囲内の値に調整される。
【0028】
ガス供給装置30によって流量および速度が調整された処理ガスが、配管31を介して処理室2の内部に供給されると共に、ターボ分子ポンプ16の動作によって、排気口から処理室2の内部が排気される。両者のバランスによって、処理室2の内部の圧力が、プラズマ処理に適した範囲内の値に調整される。
【0029】
この状態で、マグネトロン発振器11からマイクロ波の電界が発振される。マイクロ波の電界は、導波管10内部を伝播し、窓部材4およびプレート5を透過する。更に、ソレノイドコイル12およびソレノイドコイル13によって生成された磁界が、処理室2に供給される。上記磁界とマイクロ波の電界との相互作用によって、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)が生起され、処理ガスの原子または分子が励起、電離または解離することによって、処理室2の内部にプラズマが生成される。
【0030】
プラズマが生成されると、高周波電源9からステージ3の基材へ高周波電力が供給され、被処理材7の上面上にバイアス電位が形成され、プラズマ中のイオンなどの荷電粒子が被処理材7の上面に誘引される。これにより、マスク層のパターン形状に沿うように、被処理材7の所定の膜に対して、エッチング処理が実行される。その後、処理対象の膜の処理が、その終点に到達したことが検出されると、高周波電源9からの高周波電力の供給が停止され、プラズマ処理が停止される。
【0031】
更なる被処理材7のエッチング処理の必要が無い場合、高真空排気が行われる。そして、静電気が除かれて被処理材7の吸着が解除された後、真空搬送装置のアームが処理室2の内部へ進入し、処理済みの被処理材7がプラズマ処理装置1の外部へ搬送される。
【0032】
<検討例におけるガス供給装置の構成>
以下に
図2および
図3を用いて、本発明の従来技術に係るガス供給装置300について説明する。
図3では、
図2に示されるマスフローコントローラボックス(MFCボックス)40およびガス配管接続ボックス50の各々の内部に設けられた配管が示されている。なお、ガス供給装置300は、主にガス配管接続ボックス50が設けられている点で、実施の形態1におけるガス供給装置30と異なっている。
【0033】
MFCボックス40の内部に設けられた複数の配管43には、それぞれマスフローコントローラ(MFC)が取り付けられている。複数の配管43は、MFCボックス40の内部において、複数の継手44によって複数の配管52に連結されている。処理用ガスの供給源となる複数の配管54は、建屋に設けられており、ガス配管接続ボックス50の内部において、複数の継手53によって複数の配管52に連結されている。処理用ガスは、複数の配管54、複数の配管52および複数の配管43を流れ、複数の配管43を集約した配管31を介して、プラズマ処理装置1の処理室2の内部へ供給される。
【0034】
ここで、基本的には、ガスの漏洩が発生しないように、各配管を流れるガスの流量および圧力などが調整されているが、地震などのような予期せぬ事態が発生した際に、ガスの漏洩が発生する恐れがある。特に、各配管の連結箇所である継手44および継手53において、ガスの漏洩が発生する恐れがある。
【0035】
しかしながら、継手44は、MFCボックス40の内部に設けられ、継手53は、ガス配管接続ボックス50の内部に設けられている。そこで、MFCボックス40の内部の気体を排気口42から建屋外へ常時排気し、ガス配管接続ボックス50の内部の気体を排気口42から建屋外へ常時排気することで、仮に、継手44および継手53においてガスの漏洩が発生したとしても、建屋内にガスが拡散することを防止できる。
【0036】
一方で、プラズマ処理装置1の運転コストの低減のために、ガス配管接続ボックス50の排気を省略することが求められている。このため、継手53においてガスの漏洩が発生した場合、建屋内にガスが拡散する恐れがある。実施の形態1におけるガス供給装置30は、そのような要求を満たすように、ガス配管接続ボックス50の排気を省略した場合でも、ガスの漏洩を防止できる技術を提供する。
【0037】
<実施の形態1におけるガス供給装置の構成>
以下に
図4~
図8を用いて、本願発明者らが検討した検討例におけるガス供給装置30について説明する。
図5では、
図4に示されるMFCボックス40の内部に設けられた配管が示されている。
【0038】
図4および
図5に示されるように、ガス供給装置30は、MFCボックス40、複数の配管43、複数の継手44、複数の配管52、複数の継手53、複数のヒータ55、複数の配管カバー60a、複数の配管カバー60b、複数の外周配管61および複数のチューブ62などを有する。
【0039】
MFCボックス40は、吸気口41および排気口42を有する。排気口42は、図示しない配管等の排気用の管路と接続され、プラズマ処理装置1が設置された建屋の床面下方、または、建屋外に設置された排気ポンプ等の排気用の機構若しくはガス処理室などに連通され、連結されている。実施の形態1における排気用の機構は常時駆動される。上記機構の動作によって、MFCボックス40内部のガスは、排気口42から排気口42に接続された管路を通ることで排気されると共に、建屋内の雰囲気である空気が吸気口41から吸気される。MFCボックス40の内部は、プラズマ処理装置1の運転中では吸気口41および排気口42を介して、建屋の内部の雰囲気と常時置換されている。
【0040】
複数の配管43は、MFCボックス40の内部に設けられ、配管31に集約されている。また、
図6に示されるように、複数の配管43の各々には、それぞれMFC43a、バルブ43bおよびバルブ43cなどが取り付けられている。MFC43aによって、配管43を流れるガスの流量が制御される。バルブ43bおよびバルブ43cは、主に配管43を流れるガスの供給の開始および停止を制御する目的で用いられる。配管43において流量を制御されたガスが、配管31を介して処理室2の内部へ供給される。
【0041】
相対的に体積が大きいMFC43aおよびバルブ43b,43cは、MFCボックス40内部の空間の上部の配管43上に配置され、配管43の下部、これに接続された継手44および配管52は、MFCボックス40の内部の空間の下部に位置している。更に、本例のMFCボックス40の右側側壁に配置された排気口42と、好ましくは吸気口41とは、図面の上下方向についてバルブ43cよりも下方の高さ位置に配置されている。このため、MFCボックス40の内部を図面の左から右に向けて通流する雰囲気のガスの流れは、MFCボックス40の下部において、速度または流量が大きくなるように構成されている。
【0042】
また、複数の配管43の各々は、MFCボックス40の内部において、複数の継手44の各々によって複数の配管52に連結されている。複数の配管52の各々は、図面の下方のMFCボックス40の外部へ延在し、MFCボックス40の外部において、上下方向に延在する複数の配管54に複数の継手53の各々によって連結されている。複数の配管54の各々は、図示しないタンクなどの貯留部を含む複数の種類のガス源に連結されている。建屋の床面下方には、複数種類のガスを供給する複数の配管が存在するが、複数の配管54の各々は、複数種類のガスのうち処理室に供給される処理用ガスの供給経路である。また、複数の配管54の各々は、建屋の床面下方の空間の内部において、上記ガス源からプラズマ処理装置1が設置される箇所の近傍まで引き出されている。
【0043】
処理用ガスの種類は、各配管54の各々で異なっていてもよいし複数の配管54に同じ種類のガスが通粒子供給されても良い。ここでは、処理用ガスとして、3種類に大別したガスを例示する。1種類目のガスは、強い可燃性または毒性を有するガスであり、且つ、相対的に液化し難いガスである。2種類目のガスは、強い可燃性または毒性を有するガスであり、且つ、相対的に液化し易いガスである。言い換えれば、2種類目のガスは、1種類目のガスよりも高い沸点を有するガスである。3種類目のガスは、弱い可燃性を有するガスであり、毒性の無いガスであり、且つ、相対的に液化し難いガスである。
【0044】
1種類目のガスは、例えば、H2、CH3F、CH4、Cl2、SO2、HBr、SiF4、NF3またはCO2である。2種類目のガスは、例えば、SiCl4またはBCl3である。3種類目のガスは、例えば、Ar、He、O2、N2、CHF3、SF6またはCF4である。
【0045】
本例においても、プラズマ処理装置1が長期に亘って運転された場合には、性能の劣化または部材の変質等の要因によって、継手53においてガスの漏洩が発生する恐れがある。上述の従来技術の例において説明したように、ガス配管接続ボックス50およびその排気を省略したことで、特に強い可燃性または毒性を有するガス(1種類目のガス、2種類目のガス)については、その漏洩が生じた際にも、その建屋内部での拡散を抑制する必要がある。
【0046】
そのため、実施の形態1では、配管カバー60a、60bと、連通部材として外周配管61およびチューブ62などとを適用する。なお、3種類目のガスは漏洩しても特に問題無いので、3種類目のガスが流れる配管には、配管カバー60a、60bおよび上記連通部材を適用していない。
【0047】
配管カバー60a、60bは、継手53、配管52および配管54の外周側を覆っている。配管カバー60a、60bと、継手53、配管52および配管54との間には、隙間が設けられている。外周配管61は、その下端において配管カバー60aに接続され、配管カバー60aの内部とMFCボックス40の内部とを連通する。また、外周配管61は、配管52を中心軸として延在し、配管52の外周を覆っている。チューブ62は、配管カバー60bの側壁に接続され、配管52と異なる箇所でMFCボックス40に接続され、配管52とは異なるガスの経路を構成する。
【0048】
図7は、
図4および
図5の配管カバー60aの周囲を詳細に示しており、連通部材として外周配管61を含む場合を示している。外周配管61は、上述の1種類目のガスを配管43、配管52および配管54に流す場合に適している。
【0049】
図4および
図5に示されるように、複数の継手53のうち少なくとも1つは、継手53とその周囲の空間とが密閉されるように、配管カバー60aによって覆われている。配管カバー60aは、継手53の上下方向の長さより長い円筒形状を成す。配管カバー60aは、例えばステンレス、鉄若しくは銅、または、これらを主成分とする合金のような金属材料によって構成される。また、配管カバー60aの内部の気密性を高めるために、配管カバー60aを構成する部材のうち、配管52および配管54の外周側壁面と対向する上端または下端の部分に、パッキン等のシールを備えていてもよい。これにより、仮に継手53からガスが漏洩したとしても、そのガスは、配管カバー60aの内部に留まる。
【0050】
外周配管61は、複数の配管52のうち配管カバー60aが設けられている配管52を中心軸として延在し、その配管52の外周を覆っている。また、外周配管61は、配管カバー60aの上部およびMFCボックス40の底部に接続されている。配管カバー60aの内部およびMFCボックス40の内部は、配管52の外周側壁面と外周配管61の内周側壁面との間の空間を介して連通される。これにより、継手53に接続された配管52または配管54の接続部から配管カバー60aの内部へ漏洩したガスは、配管52と外周配管61との間の隙間の内部を拡散し、MFCボックス40の内部へ導入される。
【0051】
また、外周配管61は、金属材料または樹脂材料によって構成される。上記金属材料は、例えばステンレス、鉄若しくは銅、または、これらを主成分とする合金である。例えば、供給されるガスが可燃性ガスである場合に、漏洩した可燃性ガスが爆発することを想定する。配管カバー60aが剛性の高い上記金属材料であれば、衝撃による破損または圧力上昇などを抑制し易くなる。
【0052】
上記樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂である。例えば、供給されるガスが爆発する可能性は低いが、そのガスが毒性ガスである場合、材料のコストなどを考慮して、相対的に安価な上記樹脂材料を適用してもよい。
【0053】
図8は、
図4および
図5の配管カバー60bの周囲を詳細に示しており、連通部材としてチューブ62を含む場合を示している。チューブ62は、上述の2種類目のガスを配管43、配管52および配管54に流す場合に適している。
【0054】
上述のように、2種類目のガスは相対的に液化し易いガスである。このような2種類目のガスを配管54から供給する場合、液化を防止するために、配管43、配管52および配管54の外周にヒータ55を設けることが有効である。ヒータ55によって、配管43、配管52および配管54の内部を流れるガスの温度が、凝縮温度以上に維持される。ここでは、ヒータ55は、例えば帯状の導電体であり、この導電体に電流を流すことで、導電体から熱が発生される。ヒータ55が、配管43、配管52および配管54の外周に沿って上下方向に螺旋状に巻きつけられて設けられていることで、配管43、配管52および配管54の内部を十分に加熱することができる。
【0055】
図8でも
図7と同様に、複数の継手53のうち少なくとも1つは、継手53とその周囲の空間とが密閉されるように、配管カバー60bによって覆われている。配管カバー60bは、継手53の上下方向の長さより長い円筒形状を成す。配管カバー60bの内部を気密に封止するために、対向する配管カバー60bの上下の端部の内周壁面と、配管52および配管54の外周壁との間に、Oリング等のシールが配置されてもよい。なお、
図8では、図面を見易くするために、
図4および
図5に示されるヒータ55を省略している。ヒータ55が必要になることで、
図7の外周配管61の適用が難しい場合がある。そのような場合に、チューブ62は、好適に使用できる。
【0056】
チューブ62の下端部が、継手63を介して配管カバー60bの外側壁面に気密に接続されている。これにより、チューブ62の内部と配管カバー60bの内部とが、連通されている。また、チューブ62の上端部は、継手45を介してMFCボックス40の排気口42の下方の側壁面に気密に接続されている。このように、配管カバー60bの内部およびMFCボックス40の内部は、チューブ62によって連通している。これにより、継手53に接続された配管52または配管54の接続部から配管カバー60bの内部へ漏洩したガスは、配管カバー60bの内部からチューブ62の内部へ拡散し、MFCボックス40の内部へ導入される。
【0057】
なお、配管カバー60bには継手63が着脱可能に設けられ、MFCボックス40には継手45が着脱可能に設けられている。チューブ62は、継手63を介して配管カバー60bに接続され、継手45を介してMFCボックス40に接続されている。このため、チューブ62は、配管カバー60bおよびMFCボックス40に着脱可能となっている。
【0058】
また、チューブ62は、可視光が透過可能な樹脂材料で構成されている。言い換えれば、チューブ62は、プラズマ処理装置1を操作するオペレータがチューブ62の内部を目視できる材料で構成されている。配管カバー60bの内部に留まっていた漏洩ガスがヒータ55から離れると、漏洩ガスがチューブ62の内部で液化する可能性がある。その際に、オペレータが目視で液化したガスを確認できれば、オペレータは、継手53からガスの漏洩が発生していることを早期に発見し易くなる。そして、ガスの漏洩に対して、何らかの対策手段を講じ易くなる。
【0059】
以上のように、実施の形態1によれば、ガス配管接続ボックス50の排気を省略できるので、プラズマ処理装置1の運転コストを低減することができる。また、継手53からガスの漏洩が発生したとしても、配管カバー60a、60bと連通部材(外周配管61、チューブ62)とによって、漏洩ガスをMFCボックス40の内部へ導入させることができ、漏洩ガスをMFCボックス40の排気口42から建屋外へ排気することができる。すなわち、実施の形態1によれば、ガスの漏洩を防止できるガス供給装置30を備えたプラズマ処理装置1を提供できる。
【0060】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、連通部材として外周配管61およびチューブ62を例示したが、MFCボックス40の内部および配管カバー60a、60bの内部を連通させるものであれば、連通部材は、他の構成であってもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、3種類目のガスが流れる配管には、配管カバー60a、60bおよび上記連通部材を適用しない場合を例示したが、そのような配管にも、配管カバー60a、60b若しくは上記連通部材、または、それらの両方を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 プラズマ処理装置
2 処理室
3 ステージ
4 窓部材
5 プレート
6 貫通穴
7 被処理材(ウェハ)
8 インピーダンス整合器
9 高周波電源
10 導波管
11 マグネトロン発振器
12 ソレノイドコイル
13 ソレノイドコイル
14 圧力調整板
15 圧力検出器
16 ターボ分子ポンプ
17 ドライポンプ
18 排気配管
19~21 バルブ
30 ガス供給装置
31 配管
40 マスフローコントローラボックス(MFCボックス)
41 吸気口
42 排気口
43 配管
43a マスフローコントローラ(MFC)
43b、43c バルブ
44、45 継手
50 ガス配管接続ボックス
51 排気口
52 配管
53 継手
54 配管
55 ヒータ
60a、60b 配管カバー
61 外周配管
62 チューブ
63 継手
300 ガス供給装置