(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】集積半導体サンプルにおける3D構造間の接触領域のサイズ決定
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230809BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20230809BHJP
G01N 23/2255 20180101ALI20230809BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
G01N23/2255
H01L21/66 P
(21)【出願番号】P 2022525437
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020025483
(87)【国際公開番号】W WO2021083551
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-28
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ブックスバウム アレックス
(72)【発明者】
【氏名】アヴィシャイ アミール
(72)【発明者】
【氏名】クロチコフ ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】コルブ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォカ オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】リー クムシル
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-019179(JP,A)
【文献】特開2013-065512(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2251
G01N 23/2255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積半導体サンプルにおける第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域のサイズを決定する方法であって、
少なくとも第1の断面像および前記第1の断面像に平行な第2の断面像を取得するステップであり、
前記第1および第2の断面像を取得するステップが、その後、結像のためにアクセス可能な新たな断面を作るために集束イオンビームを用いて前記集積半導体サンプルの断面表面層を除去して、前記集積半導体サンプルの前記新たな断面を結像装置により結像することを含む、
ステップと、
前記取得された断面像の像レジストレーションを実行し、3Dデータセットを取得するステップと、
前記3Dデータセットにおいて前記第1の3D構造および前記第2の3D構造を表現する3Dモデルを決定するステップと、
前記3Dモデルに基づいて、前記第1の3D構造と前記第2の3D構造との相対的な重なりを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記相対的な重なりを決定するステップが、前記3Dモデルから前記第1および第2の3D構造の輪郭を抽出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相対的な重なりを決定するステップが、前記第2の3D構造に対する前記第1の3D構造のミスアライメントを決定するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の3D構造または前記第2の3D構造と、隣の3D構造との間の距離を決定するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
目標配置位置に対する前記第1および/または第2の3D構造の位置ずれを決定するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置ずれがエッジ配置のばらつきである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の3D構造および/または第2の3D構造の形状に基づいて、ならびに/あるいは、前記第1の3D構造と前記第2の3D構造との前記相対的な重なりに基づいて、前記第1の3D構造および/または前記第2の3D構造を欠陥として、または欠陥なしとして分類することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
分類された欠陥を特定のタイプの欠陥として細分類するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の3D構造および/または前記第2の3D構造が、金属線、ビア、コンタクト、フィン、HAR構造、HARチャネル、またはゲート構造のうちの1つである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の3D構造がビアまたはコンタクト構造であり、
前記第2の3D構造が金属線またはゲート構造である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の3D構造と前記第2の3D構造との間の前記相対的な重なりを決定するステップが、前記第1および/または前記第2の3D構造の一部を示す少なくとも1つの仮想断面を分析するステップを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの仮想断面を可視化するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンタクト抵抗を計算するステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合された半導体検査装置。
【請求項16】
集束イオンビーム装置と、
電子を用いて動作し、前記集積半導体サンプルの前記新たな断面の結像に適合した荷電粒子操作装置であって、
前記集束イオンビームと電子ビームとが互いに対して角度をなして配置されて操作され、前記集束イオンビームのビーム軸と前記電子ビームのビーム軸とが互いに交差している、荷電粒子操作装置と、
を備える、請求項15に記載の半導体検査装置。
【請求項17】
前記集束イオンビームおよび前記電子ビームが互いに約90°の角度を形成する、
請求項16に記載の半導体検査装置。
【請求項18】
集積半導体回路の製造におけるプロセスの特性評価、プロセスの最適化、または/およびプロセスの制御のために、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を使用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路の切断(cross sectioning:断面化)による3次元回路パターンの検査および測定技術に関する。より詳細には、本発明は、集積半導体サンプル(integrated semiconductor sample:集積半導体試料)における3D構造間の接触領域(contact area:コンタクトエリア)のサイズ(size:大きさ)を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体構造は、最も微細な人工構造物であり、欠陥がほとんどない。これらのまれな欠陥は、欠陥検出または欠陥レビューまたは定量的計測装置が探し求めるシグネチャである。
【0003】
関心のあるトピックは、集積半導体サンプルのコンタクト(contact)を正確に設けることである。異なる3次元(3D)構造間に提供される接触断面積は、導電率または抵抗を制限し、したがって集積回路の性能を制限する。接触断面積は、集積回路製造の駆動要件の1つである、いわゆるオーバレイ精度によって影響を受ける。
【0004】
集積回路の製造において、フィーチャサイズ(features size:特徴サイズ)はより小さくなってきている。現在の最小フィーチャサイズまたは限界寸法は、10nm未満、例えば7nmまたは5nmであり、近い将来には3nm未満に近づく。一般に、必要とされるオーバレイ精度は、例えば、最小フィーチャサイズの1/3であり、したがって、数nmまたはそれ以下のオーダである。したがって、異なる3D構造間の接触断面積を高精度で測定する必要もある。従来技術に従って、以下の2次元(2D)測定技術が現在採用されている。
【0005】
1つの標準的な技術は、走査型電子顕微鏡法(SEM)である。ここでは、走査電子ビームがサンプル(試料)の表面を結像し(image)、表面の2次元像が得られる。しかしながら、2つの3D構造間の接触領域を結像することになる場合、SEM法では、接触領域の視線を設ける必要がある。したがって、接触領域の上方から材料を除去する必要があるが、この除去は、SEM測定のためのサンプル作製で除去される材料が多すぎるかまたは少なすぎるという点で不正確である可能性がある。この不正確な除去は、接触領域のSEM測定の精度に影響を及ぼす。
【0006】
もう1つの標準的な技術は、透過型電子顕微鏡(TEM)である。ここでは、透過時に結像される細いプローブを用意する必要がある。したがって、関心領域/コンタクトの上方および下方の両方から材料を除去する必要があり、この材料の除去は、除去される材料が多すぎるかまたは少なすぎるという点で不正確である可能性がある。この不正確な除去は、2つの3D構造間の接触領域のTEM測定の精度に影響を及ぼす。
【0007】
さらに、SEM法およびTEM法の両方について、2つの3D構造間の正確な接触位置を知ることは困難である。なぜなら、いったん材料が除去されると、サンプル内部の局在化を促進するかまたは可能にさえする固有の構造の多くまたはすべてが、除去後にはもはや存在しなくなるからである。
【0008】
したがって、接触断面積を測定するための一般的な2次元手法は、精度に関して制限される。
【0009】
一方、集積回路の内部構造を解析するためのもう1つの標準的な技術が存在する。nmスケールで半導体サンプルから3D断層撮影データを生成する一般的な方法は、例えばデュアルビーム装置によって工夫が凝らされた、いわゆるスライスアンドイメージアプローチ(slice and image approach:薄く切って結像するアプローチ)である。このような装置では、2つの粒子光学系が斜めに配置される。第1の粒子光学系は、走査型電子顕微鏡(SEM)とすることができる。第2の粒子光学系は、例えばガリウム(Ga)イオンを用いた集束イオンビーム光学系(FIB)とすることができる。Gaイオンの集束イオンビーム(FIB)を用いて半導体サンプルのエッジ(edge:端)の層をスライスごとに切り出し、すべての断面が走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて結像される。2つの粒子光学系は、垂直または45°~90°の角度で配向されていてもよい。
図1は、スライスアンドイメージアプローチの概略図を示し、y方向の集束イオン粒子ビーム51を有するFIB光学カラム50を使用し、x-y平面内で走査して、半導体サンプル10を通る断面から薄層を除去して、断面像平面11として新たな前面52を現出させる。次のステップでは、断面11の前面を走査結像するためにSEM(図示せず)が使用される。本例では、SEM光軸はz方向に平行に配向され、x-y平面ラスタ内の走査結像ライン82が断面像平面11を走査し、断面像またはスライス100を形成する。例えば前面53および54を通してこの手法を繰り返すことにより、異なる深さでサンプルを通る一連の2D断面像1000が得られる。2つの続く(subsequent)像スライス間の距離dzは、1nm~10nmとすることができる。これらの一連の2D断面像1000から、集積半導体構造の3D像を再構成することができる。高精度に再構成するために、一般に断面像の3Dボリュームへの精密配置を意味する像レジストレーション(image registration:像の登録、記録)が行われる。像レジストレーションは、例えば、位置マーカを参照して行うことができる。
【発明の概要】
【0010】
本特許出願は、出願番号米国特許出願第62/927,954号の米国特許出願の優先権を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0011】
本発明の目的は、集積半導体サンプルにおける第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域のサイズを決定するための改良された方法を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項1によって解決される。従属請求項は、さらなる実施形態を対象とする。
【0013】
本発明の第1の態様によると、2D測定技術を適用する従来技術の欠点は、より正確な3D測定技術を適用することによって克服することができる。本発明は、集積半導体サンプルにおける第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域のサイズを決定するために、例えばデュアルビーム装置によって精緻化されたスライスアンドイメージアプローチを適用する。これにより、接触領域のサイズの測定精度が大幅に向上し、サンプル作製が、想定される極めて薄い接触領域に正確に適合しなければならないという2D測定技術の欠点が克服される。
【0014】
より詳細には、本発明は、集積半導体サンプルにおける第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域のサイズを決定する方法を対象としており、本方法は、
少なくとも第1の断面像(cross section image:断面イメージ、断面画像)および第1の断面像に平行な第2の断面像を取得するステップであって、
第1の断面像および第2の断面像を取得するステップが、その後、結像(imaging:画像化、イメージング)のためにアクセス可能(accessible:接近可能、利用可能)な新たな断面を作るために集束イオンビームを用いて集積半導体サンプルの断面表面層を除去して、集積半導体サンプルの新たな断面を結像装置により結像することを含む、
ステップと、
得られた断面像の像レジストレーションを実行し、3Dデータセットを取得するステップと、
3Dデータセットにおいて第1の3D構造および第2の3D構造を表現する3Dモデルを決定するステップと、
3Dモデルに基づいて、第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なり(relative overlap:対応する(関係する)重なり(オーバーラップ))を決定するステップと、
を含む。
【0015】
像レジストレーションは、断面像の精密配置に関係している。したがって、断面像は互いに正確に位置合わせされる。高い位置合わせ精度を可能にするいくつかの技術が当技術分野に既に存在する。断面像の正しい位置合わせは、このようにして得られた3Dデータセットにおいてさらなる正確なデータ分析を行うための前提条件である。
【0016】
本発明によると、3Dデータセットにおいて少なくとも第1の3D構造および第2の3D構造を表現する3Dモデルが決定される。したがって、3Dモデルは、さらなる調査のための3D構造を表現する。特に、3Dモデルは、関心のある3D構造の形状および/または輪郭を描写する。
【0017】
本発明によると、第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なりは、3Dモデルに基づいて決定される。第1の3D構造および第2の3D構造は、互いに物理的に接触し、したがって接触領域を生成することが意図されている。しかしながら、欠陥に起因して、それらが物理的に接触せず、望ましくない大きな間隙が2つの3D構造間にもたらされる可能性もある。したがって、2つの3D構造がそれにもかかわらず位置合わせされている場合であっても、相対的な重なりは定義によりゼロである。
【0018】
相対的な重なりは、集積半導体サンプル内部の所定の方向、平面および/または層に対して決定することができる。一実施形態によると、相対的な重なりは、集積半導体サンプルの平面内のおよび/または層に平行な領域を表す。
【0019】
第1の3D構造および第2の3D構造は、頂部3D構造および底部3D構造によって表すことができる。これらは、左3D構造および右3D構造によって表すこともできる。重要なことは、2つの3D構造が、少なくとも互いに物理的に接触し、コンタクトを提供することが意図されていることである。
【0020】
原理的には、本発明は、集積半導体サンプルにおける任意のコンタクトの接触領域のサイズを決定するために適用することができる。しかしながら、いくつかの典型的な適用例が存在する。一実施形態によると、第1の3D構造は、ビア(via)またはコンタクト構造であり、第2の3D構造は、金属線またはゲート構造である。
【0021】
一実施形態によると、相対的な重なりを決定することは、3Dモデルから第1および第2の3D構造の輪郭を抽出することを含む。3D構造の輪郭は、3D構造の外形を表す。輪郭は、3Dモデルから抽出することができる。輪郭は、一連の平行な断面像の閉じた線として、特に、3Dモデルから抽出された一連の平行な仮想断面像の閉じた線として表すことができる。各輪郭は、平面内にそれぞれ提供され得る。隣り合う(neighboring:隣接する)輪郭および/またはこれらの平面間の距離は、計算を容易にするシーケンスを通して一定とすることができるが、前記距離は、異なる輪郭でおよび/またはそれらのそれぞれの平面間で変わることもできる。
【0022】
一実施形態によると、相対的な重なりを決定することは、第2の3D構造に対する第1の3D構造のミスアライメント(misalignment:ずれ、整列していないこと、位置ずれ)を決定することを含む。ミスアライメントは、例えば、一方の3D構造の他方の3D構造に対する横方向変位とすることができる。例えば、第1および第2の3D構造が共通に位置合わせされたエッジを有すると想定することは可能であるが、ミスアライメントに起因して、共通に位置合わせされたエッジが存在せず、ミスアライメントの程度に応じて、コンタクトに欠陥が存在する可能性がある。
【0023】
一実施形態によると、本方法は、第1の3D構造または第2の3D構造と、隣の(隣接する)3D構造との間の距離を決定するステップをさらに含む。また、第1の3D構造または第2の3D構造から別の隣の構造までの距離は、集積半導体回路の性能に影響を及ぼす可能性がある。距離が例えば小さすぎる場合、望ましくない帯電効果が生じる可能性がある。これは、歩留まり損失および/または信頼性損失を引き起こす可能性がある。
【0024】
一実施形態によると、本方法は、目標配置位置に対する第1および/または第2の3D構造の位置ずれを決定するステップを含む。目標配置位置は、理想的に意図された位置である。一実施形態によると、位置ずれは、エッジ配置のばらつき(edge placement variation:端の配置の変動)である。一例によると、第1の3D構造と第2の3D構造が完全に位置合わせされ、共通のエッジが存在する場合、目標配置位置に到達する。3D構造の一方の位置を、定義によって完全に位置決めされる基準として定義することが可能である。
【0025】
一実施形態によると、本方法は、第1の3D構造および/または第2の3D構造の形状に基づいて、ならびに/あるいは、第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なりに基づいて、第1の3D構造および/または第2の3D構造を欠陥として、または欠陥なしとして分類(classify:区分)するステップを含む。3D構造の最適な形状は、通常、集積半導体サンプルの設計から分かる。例えば、性能および/または信頼性の著しい低下を引き起こす最適形状からのいかなるばらつきも、欠陥として分類することができる。欠陥の別の例は、性能および/または信頼性の低下を引き起こす第1の3D構造と第2の3D構造との間の相対的な重なりの減少である。必要最小限の相対的な重なりを臨界値として定義し、相対的な重なりがこの臨界値よりも小さい場合にそのコンタクトを欠陥として分類するようにすることが可能である。
【0026】
より詳細には、第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域Aのサイズは、導電率σを制限することになる。導電率σは、抵抗R=ρ・l/Aに反比例し、したがって面積Aに比例する。したがって、最小断面積Aminまたは接触領域Aの有効なサイズが導電率σを制限する。最小断面積Aminを決定することによって、集積半導体構造の導電率σおよび抵抗Rを導出することができ、集積半導体デバイスの性能を推定することができる。断面積Aが小さいと、抵抗Rが高くなり、したがってデバイスの発熱が大きくなり、したがって集積半導体デバイスを例えばより低速でしか動作させることができなくなる。
【0027】
一実施形態では、集積半導体構造の3Dボリューム像(3D volume image:3D体積像、3Dボリューム画像)は、スライスアンドイメージアプローチから得られる。3Dボリューム像生成の実施形態は、例えば、2019年9月20日に出願されたドイツ特許出願第DE102019006645.6号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。3Dボリューム像内で、断面領域のセットを、任意の向きで、例えば集積半導体デバイスの層に対してある角度で導出することができる。第1と第2の3D構造間のコンタクトの有効面積である接触点(contactor)の最小断面積Aminは、したがって、物理的に取られたスライスの向きと比較して、任意の他の向きで導出することができる。
【0028】
一実施形態によると、本方法は、集積半導体構造における最小断面積Aminを決定するステップと、最小断面積Aminをしきい値A0と比較するステップとを含む。最小断面積Aminがしきい値A0よりも小さい場合、集積半導体デバイスは、欠陥デバイス、またはより低速のみが可能なデバイスとして分類される。
【0029】
一実施形態によると、本方法は、分類された欠陥を特定のタイプ(種類)の欠陥として細分類(subclassify:下位区分、下位分類)するステップを含む。このような欠陥の細分類の例は、「材料の欠落」、「接触領域が大きすぎる」、「接触領域が小さすぎる」、「歪んだ形状」などである。
【0030】
一実施形態によると、第1の3D構造および/または第2の3D構造は、金属線、ビア、コンタクト、フィン、HAR構造、HARチャネル、またはゲート構造のうちの1つである。
【0031】
一実施形態によると、第1の3D構造と第2の3D構造との間の相対的な重なりを決定することは、第1および/または第2の3D構造の一部(parts:パーツ、断片、構成要素)を示す少なくとも1つの仮想断面(virtual cross section)を分析することを含む。本発明の3Dモデルは、原理的にあらゆる可能な仮想断面において解析することができるモデルである。3Dモデルは、あらゆる方向にスライスすることができ、したがって、調査に特に有用な方向を選択することができる。少なくとも第1および第2の断面像を取得する際に、サンプルの実際の物理的なスライス方向とは異なる方向にも3Dモデルの仮想スライスを行うことができる。この事実は、集積半導体サンプルを、サンプルの様々な層を切断する方向でスライスすることになる場合に特に重要である。その場合、頂部3D構造と底部3D構造との間のコンタクトを参照すると、コンタクトの領域が位置する平面を通る実際のスライシングは存在しない。これとは対照的に、コンタクトの領域を数回スライスすることが可能である。しかしながら、その場合、第1と第2の3D構造の相対的な重なりを決定するために、仮想断面/一連の仮想断面が調査される。一例によると、仮想断面は、意図された接触領域に平行に配向される。別の例によると、仮想断面は、意図された接触領域に対してある角度で配向される。
【0032】
一実施形態によると、本方法は、少なくとも1つの仮想断面を可視化するステップを含む。これは、ソフトウェアを使用することおよび/または画面上に仮想断面を表示することによって行うことができる。可視化は、欠陥の存在および/または性質を識別ならびに/あるいは理解するのに役立つ。
【0033】
一実施形態によると、本方法は、コンタクト抵抗を計算するステップを含む。接触領域のサイズとは別に、電流、電圧、使用される材料などの他のパラメータが、通常、前記計算に使用される。コンタクト抵抗の計算は、コンタクトを欠陥として、または欠陥なしとして分類するのに役立つことができる。さらに、この計算は、集積半導体サンプルの性能をシミュレートするのに役立つことができる。
【0034】
本発明の第2の態様によると、本発明は、プログラムコードが上述の方法のいずれかを実行するように適合されているコンピュータプログラム製品を対象とする。コードは、任意の可能なプログラミング言語で書くことができ、コンピュータ制御システム上で実行することができる。このようなコンピュータ制御システムは、1つまたは複数のコンピュータまたは処理システムを含むことができる。
【0035】
本発明の第3の態様によると、本発明は、上述の実施形態のいずれか1つによる方法のいずれかを実行するように適合された半導体検査装置を対象とする。
【0036】
一実施形態によると、半導体検査装置は、
集束イオンビーム装置と、
電子を用いて(with electrons:電子とともに、電子で)動作し、集積半導体サンプルの新たな断面の結像に適合した荷電粒子操作装置であって、集束イオンビームと電子ビームとが互いに対して角度をなして配置されて操作され、集束イオンビームのビーム軸と電子ビームのビーム軸とが互いに交差している、荷電粒子操作装置と、
を備える。
【0037】
一実施形態によると、集束イオンビームおよび電子ビームは、互いに約90°の角度を形成する。
【0038】
本発明の第4の態様によると、上述の方法のいずれか1つは、集積半導体回路の製造におけるプロセスの特性評価(characterization:特徴づけ)、プロセスの最適化、または/およびプロセスの制御に使用される。これにより、例えば、製造プロセスでの欠陥の発生を回避することが可能になる。さらに、半導体検査装置は、集積半導体回路を製造する際のプロセスの特性評価、プロセスの最適化、または/およびプロセスの制御に使用することができる。
【0039】
上述の実施形態は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに完全にまたは部分的に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図4】
図3に示す2つの3D構造間の接触領域を概略的に示す図である。
【
図5】2D結像技術により決定される接触領域を概略的に示す図である。
【
図6】本発明による集積半導体サンプルにおける3D構造間の接触領域のサイズ決定を示す流れ図である。
【
図7】SEMで取得した一連の2D像であり、構造およびそれらの位置合わせを2Dで示す。
【
図8】集積半導体サンプルにおける3D構造を表現する3Dモデルである。
【
図9】2つの3D構造の輪郭抽出および相対的なミスアライメントを概略的に示す図である。
【
図10】
図9に示す2つの3D構造間の接触領域を概略的に示す図である。
【
図11】別の輪郭抽出および2つの3D構造の比較的良好な位置合わせを概略的に示す図である。
【
図12】
図11に示す2つの3D構造間の接触領域を概略的に示すである。
【
図13】3Dモデルにおける3D構造間の位置ずれの量を示す図である。
【
図14】位置ずれした構造と隣の(隣接する)構造との間の距離を示す図である。
【
図15】コンタクトを形成する3D構造の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、集積半導体サンプルの3Dボリューム像を得るための断面像手法の概略図を示す。断面手法では、3次元(3D)ボリューム像の取得は、「ステップアンドリピート」方式によって達成される。最初に、集積半導体サンプルは、当技術分野で知られている方法によって、後続の断面像手法のために準備される。本開示を通して、「断面像」および「スライス」は同義語として使用される。集積半導体の頂面に溝を機械加工して頂面にほぼ垂直な断面にアクセスできるようにするか、または集積半導体ウエハからブロック形状の集積半導体サンプル10を切り出して除去する。このプロセスステップは、「リフトアウト(lift-out)」と呼ばれることがある。ステップでは、材料の薄い表面層または「スライス」が除去される。説明を簡単にするために、このようなブロック形状の集積半導体サンプル10について説明するが、本発明はブロック形状のサンプル10に限定されるものではない。材料のこのスライスは、視射角(glancing angle)ではあるが、場合によっては集束イオンビーム(FIB)50による法線入射により近い集束イオンビームミリングまたは研磨の使用を含む、当技術分野で知られているいくつかの仕方で除去することができる。例えば、集束イオンビーム51をx方向に沿って走査して断面52を形成する。その結果、新たな断面表面11が結像可能になる。続くステップにおいて、新たにアクセス可能になった断面表面層11を、走査型電子顕微鏡(SEM)またはFIB(図示せず)などの荷電粒子ビーム(CPB)によってラスタ走査する。結像システムの光軸は、z方向に平行になるように、またはz方向に対してある角度で傾斜するように配置することができる。CPBシステムは、2nm未満の高解像度でサンプルの小領域を結像するために使用されている。二次電子および後方散乱電子は、検出器(図示せず)によって収集されて、集積半導体サンプルの内部の材料コントラストを明らかにし、断面像100において異なるグレーレベルとして可視化される。金属構造は、より明るい測定結果を生成する。表面層除去および断面像処理が、表面53および54ならびにさらなる表面を通して等距離で繰り返され、3次元3Dデータセットを構築するように、異なる深さでサンプルを通る一連の2D断面像1000が得られる。代表的な断面像100は、14nm技術による市販のIntelプロセッサ集積半導体チップの測定によって得られる。
【0042】
本方法では、少なくとも第1および第2の断面像を取得するステップは、その後、集束イオンビームを用いて集積半導体サンプルの断面表面層を除去して、結像可能な新しい断面を作るステップと、荷電粒子ビームを用いて集積半導体サンプルの新しい断面を結像するステップとを含む。これらの一連の2D断面像1000から、集積半導体構造の3D像を再構成することができる。断面像100の距離dzは、FIBミリングまたは研磨プロセスによって制御することができ、1nm~10nm、好ましくは約3~5nmとすることができる。
【0043】
図2は、断面結像ワークフローをさらに示す。プロセスは、既に上述したように、それぞれのサイト(site:位置、場所)の準備から開始する。次いで、2D断面像の積み重ねが、順次FIB切断(serial FIB sectioning:連続FIB切断、シリアル(直列)FIB切断)および荷電粒子ビームを用いた結像によって作成される。ミリング(milling:削り)および結像中に、スライスの厚さが測定され、焦点(フォーカス)およびスティグメーション(stigmation)を調整して、最適化されたスライシングおよび結像結果をもたらすことができる。2D断面像の積み重ねから、3Dデータセットを決定することができる。断面像はレジストレーションされるため、互いに高精度で位置合わせされる。
【0044】
記載された3D断層撮影は、いくつかの利点を有する。3D構造全体を結像することが可能である。これらの構造は、HAR(高アスペクト比)メモリチャネル、FinFETなどとすることができるが、これらに限定されない。さらに、構造配置を可視化するために、任意の方向から断面として3Dボリュームをレビューすることが可能である。換言すれば、仮想断面像を生成することができる。3Dモデルは、3Dデータセットから決定することができ、任意の方向から3Dモデルの3D特徴の可視化および測定をすることができる。加えて、2Dおよび3Dの膨大な量の寸法統計データを提供することが可能である。
【0045】
以下では、半導体デバイスにおける接触領域の定義を与え、接触領域を正確に製造することの重要性を説明する。
図3は、例として2つの3D構造1および2を概略的に示す。3D構造1は円筒形状を有し、例えばビアまたはコンタクト構造とすることができる。3D構造1は、高さhおよび直径dを有する。典型的には、高さhは50nm~10,000nmの範囲とすることができる。直径dの典型的な値は、10nm~5,000nmの範囲とすることができる。
【0046】
第2の3D構造2は、直方体の形状を有する。直方体は、例えば、金属線の一部またはゲート構造によって表すことができる。3D構造2は、典型的には10nm~10,000nmの範囲とすることができる高さh2によって特徴付けられる。3D構造2は、典型的には10nm~10,000nmの範囲にある幅w2によってさらに特徴付けられる。さらに、直方体は、典型的には15nm~1,000,000nmの範囲にある長さL2を有する。
【0047】
ここで、第1の3D構造1および第2の3D構造2は、重なり合って設けられている。したがって、説明する実施形態では、3D構造1を頂部3D構造と呼ぶこともでき、第2の3D構造を底部3D構造と呼ぶこともできる。
図4は、
図3に示す2つの3D構造1および2を重なり合わせて設けた場合を示す。第1の3D構造1と第2の3D構造2とが物理的に接触する領域Aが存在する。この領域Aは、第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域である。
図4に示す配置は、理想的な場合を示し、第1の3D構造1の底面は、第2の3D構造2の頂面と完全に接触している。換言すれば、第1の3D構造および第2の3D構造は完全に位置合わせされ、完全な接触領域Aが提供されている。
【0048】
接触領域Aを正確に設けることは、半導体製造において非常に重要であり、集積回路の性能は、しばしば最大動作速度および消費電力に関して測定される。速度および電力の両方に対する1つの重要な制限因子は、デバイスの接合部の抵抗である。抵抗は、過度の電流密度によって引き起こされる局所的な発熱につながる可能性もある。これは、故障および信頼性の問題につながる可能性がある。オームの法則によって示されるように、抵抗は面積に反比例することがよく知られている。すなわちR=ρ・l/A。ここで、Rは抵抗、ρは抵抗率、lは長さ、Aはコンタクトの断面積である。したがって、抵抗を減らすためには、コンタクトの断面積または接触領域を最適化し、可能な限り大きくする必要がある。コンタクトを形成する2つの3D構造のミスアライメントは、接触領域のサイズに悪影響を及ぼし、したがって、抵抗の増加につながり、これが故障および信頼性の問題を引き起こす可能性がある。したがって、接触領域Aの測定は、集積回路の性能における重要な洞察を与える。接触領域Aを高精度に測定することが重要である。
【0049】
図5は、2D結像技術、例えばSEM法またはTEM法を用いて決定される接触領域Aを概略的に示す。既に上述したように、2D法は、2つの3D構造間の接触領域Aのサイズを測定することになる場合、その有用性が制限される。SEM法を用いて2つの3D構造1、2の接触領域を測定する場合、接触領域Aの視線4が必要である。したがって、接触領域Aの上方から材料を除去する必要があるが、この除去は、SEM測定のためのサンプル作製において除去される材料が多すぎるかまたは少なすぎるという点で不正確である可能性がある。この不正確な除去は、接触領域AのSEM測定の精度に影響を及ぼす。同様に、TEM法の場合、透過時に結像される(imaged)細いプローブを用意する必要がある。したがって、ここでも再び、関心領域、すなわち接触領域Aの上方および下方の両方から材料を除去する必要があり、この材料の除去は、除去される材料が多すぎるかまたは少なすぎるという点でまたも不正確である可能性がある。この不正確な除去は、2つの3D構造間の接触領域AのTEM測定の精度に悪影響を及ぼす。
【0050】
さらに、SEM法およびTEM法の両方について、例えばすべての固有の構造を除去してしまった場合など、いったん材料が除去されると、正確なコンタクトの位置を知ることは困難である。したがって、本発明によると、新規な手法が取られ、2つの3D構造1、2間の接触領域Aのサイズが、3D測定技術、特に3DFIB-SEM断層撮影によって得られる。
【0051】
図6は、本発明による集積半導体サンプルにおける3D構造間の接触領域のサイズ決定を示す流れ図である。図示する実施形態によると、本発明による接触領域のサイズ決定は、以下のように実行される。
【0052】
第1のステップS1において、材料の順次(serial:連続、シリアル(直列))結像および切断(断面化)が実行される。より詳細には、少なくとも第1の断面像および第1の断面像に平行な第2の断面像が取得され、第1および第2の断面像を取得するステップは、その後、集束イオンビームを使用して集積半導体サンプルの断面表面層を除去して、結像可能な新しい断面を作るステップと、結像装置で集積半導体サンプルの新たな断面を結像するステップと、を含む。このような結像装置は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)のような荷電粒子結像装置とすることができる。
【0053】
ステップS1において、一連の断面像が取得される。ここで、ステップS2において、取得した断面像の像レジストレーションを実行し、3Dデータセットを取得する。像レジストレーションにより、平行断面像が互いに確実に位置合わせされる。位置合わせ/レジストレーションには、位置マーカを使用することができる。
【0054】
ステップS3において、3Dデータセットにおいて第1の3D構造および第2の3D構造を表現する3Dモデルが決定される。3Dモデルは、第1の3D構造および第2の3D構造を表現するデータ点を含む3Dデータセットからの抜粋とすることができる。3Dモデルは、3Dデータセットと同一とすることもできる。3Dモデルが、例えば測定したデータポイント間の補間のために、元のデータセットよりも多くのデータポイントを含むことも可能である。重要なことは、3Dモデルが第1の3D構造および第2の3D構造を表現することである。もちろん、より多くの3D構造を表現することができ、サンプルのすべての3D構造をモデルで表現することも可能である。第1の3D構造および第2の3D構造の表現は、第1の3D構造および第2の3D構造の形状を描写する。さらに、3Dモデル内に、第1の3D構造および第2の3D構造の位置を表現することができる。
【0055】
本実施形態によると、ステップS4において、第1および第2の3D構造の輪郭が3Dモデルから抽出される。輪郭は、第1の3D構造および第2の3D構造の外形を描写することができる。例えば、円筒形の3D構造は、仮想断面とすることができるいくつかのスライスにおいて円形輪郭によって描写することができる。別の例を挙げると、直方体の輪郭は、やはり仮想断面とすることができる異なるスライスにおいて矩形として表現することができる。結果として、輪郭の抽出は、3Dモデル内の異なるスライスにおける3D構造の輪郭の積み重ねにつながる可能性がある。
【0056】
ステップS5において、第2の3D構造に対する第1の3D構造のミスアライメントを決定することができる。このミスアライメントは、抽出された輪郭に基づいて非常に良好に分析することができる。輪郭は、3D構造の形状、およびサンプルの異なる深さでの/3Dモデル内でのそれらの形状変化を良好に分析することを可能にする。
【0057】
次に、ステップS6において、3Dモデルに基づく第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なりが決定される。この相対的な重なりは、第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触領域Aのサイズに対応する。
【0058】
3Dモデルに基づく第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なりは、図示された方法ステップS4およびS5を使用せずに代替の方法ステップを適用して決定することも可能であることに留意されたい。しかしながら、
図6に示すようなステップS1~S6での方法は、数学的に比較的容易に扱うことができる接触領域のサイズ決定につながることが分かった。
【0059】
図7は、SEMで取得した一連の2D像を示し、構造およびそれらの2Dでの位置合わせを示す。
図7では、3つのコンタクトが白丸で強調表示されている。白丸15は、互いに良好に位置合わせされた2つの3D構造間のコンタクトを強調表示している。これは、構造の右エッジが正しく位置合わせされていることによって明らかになる。しかしながら、
図7はまた、円16および17で強調表示された2つのコンタクトを示し、コンタクトが間に形成された2つの3D構造の位置合わせは理想的ではない(オーバハングコンタクト)。円16で強調表示されたコンタクトの右エッジは良好に位置合わせされておらず、円17で強調表示されたコンタクトの左エッジも良好に位置合わせされていない。
図7による一連の2D像は既に正しく位置合わせされており、したがって、円16および17で強調表示されたミスアライメントは現実に起こっているものであり、不完全な像レジストレーションの結果ではないことに留意されたい。
【0060】
図8は、集積半導体サンプルの3D構造を表現する3Dモデルを示す。3Dモデルは、集積半導体サンプルに含まれる3D構造の位置および形状を表現する。このモデルは、測定された集積半導体サンプルの多くの詳細を示し、3Dモデルを実際のまたは仮想の断面像平面でスライスすることによって、任意の方向で分析することができる。
【0061】
図9は、2つの3D構造の輪郭抽出および相対的な(relative:関係のある、関連する)ミスアライメントを概略的に示す。理解を容易にするために、
図4に既に描かれているように、第1の3D構造1および第2の3D構造2には同じ形状が選択されている。しかしながら、原理的には3D構造のあらゆる形状が可能であることを再度強調しておく。第1の3D構造1の輪郭5は、基本的に円形であり、第2の3D構造2の輪郭6は、角が丸みを帯びた細長い長方形である。第1の3D構造1と第2の3D構造2との間の接触領域は、2つの3D構造が互いに物理的に接触する、第1の3D構造1と第2の3D構造2との間の領域である。
図9から分かるように、第1の3D構造1と第2の3D構造2は、位置ずれしている。このミスアライメントは、両方向矢印Mによって示されている。理想的な位置合わせを仮定すると、両方の構造1、2の輪郭5、6の左エッジは、完全に位置合わせされ、
図9のZ軸に平行である。図示されたミスアライメントMの結果として、第1の3D構造1と第2の3D構造2との相対的な重なりが減少する。第1の3D構造1と第2の3D構造2との間の接触領域Aのサイズに対応する相対的な重なり領域が、
図10に示されている。接触領域Aは、X,Y平面に位置し、第1の3D構造1の形状を表す輪郭線5の積み重ねによって生成される円の一部のみを埋めている。あるいは、別の表現をすると、第2の3D構造2の形状を表す輪郭線6は、第1の3D構造1の形状を表す輪郭線5の円の直径全体に沿って広がっていない。したがって、第1の3D構造1と第2の3D構造2との間の位置合わせが理想的な場合と比較して、接触領域Aのサイズが大幅に減少している。本実施例では、接触領域Aは、サイズが62nm
2である。このサイズは、接触領域の有効サイズに相当(correspond to:対応)する。
【0062】
図11は、別の輪郭抽出と、2つの3D構造1、2の比較的良好な位置合わせとを概略的に示す。やはりここでも、第1の3D構造1は、円筒形状を有し、第2の3D構造2は、角が丸みを帯びた直方体形状を有する。
図11に示す例では、第1の3D構造1の輪郭5は、第2の3D構造2の輪郭6の上により正確に設けられ、特に、輪郭線5、6の右側は、輪郭線5、6の大部分について極めてよく位置合わせされている。
【0063】
図12は、
図11に示す2つの3D構造1と2との間の接触領域Aを概略的に示す。
図9および
図10に示す状況と比較して、接触領域Aのサイズが大きくなっている。図示する例では、接触領域Aのサイズは147nm
2である。
【0064】
図9~
図12のグラフ表示から明らかなように、第1の3D構造1と第2の3D構造2との間の相対的な重なりは、コンタクトを描写する第1の3D構造1および第2の3D構造2のすべての輪郭5,6内の共通の領域Aとして計算することができる。言い換えれば、接触領域Aのサイズは、第1の3D構造と第2の3D構造との間の接触位置に正確に配置された1つの輪郭内の領域のサイズによってのみ決定されるわけではない。これは物理的に意味がない。代わりに、良好に作用するコンタクトを実現するために、接触領域における第1の3D構造1および第2の3D構造2の全体形状も、必要な精度で提供されなければならない。そのため、接触領域Aのサイズまたは有効サイズを決定する際に、3D構造の特定の範囲または特定の部分が組み合わされて、コンタクトが形成されることが考慮される。
【0065】
半導体製造において重要なさらなるミスアライメント測定を行うことも可能である。半導体集積回路の各層は、フォトリソグラフィステップと、それに続くエッチングおよび堆積によって形成される。デバイスが適切に機能し、信頼できるようにするために、リソグラフィステップで許容される誤差の「バジェット(budget:予算)」は小さい。構造の位置ずれ誤差が許容公差を超えている場合、位置ずれした構造が、接触を意図していない近くの構造に接触する(または接触しそうになる)可能性がある。これも、歩留まり損失および信頼性損失を引き起こす可能性がある。
図13は、3Dモデルにおける3D構造間の位置ずれ量Mを示す図である。3D構造7と3D構造8との間の位置ずれ量は、両方向矢印Mによって示されている。図示する実施形態では、位置ずれMは、エッジ配置のばらつきである。位置ずれがなければ、3D構造7および3D構造8の右エッジは、互いに完全に位置合わせされるであろう。3D構造8の位置が正しいと仮定すると、位置ずれMは、予め選択された目標配置位置からのずれを表す。
【0066】
図14は、位置ずれした構造27と別の3D構造28との間の距離を示す。距離は白線29で示されている。3D構造27は3D構造に接触し、3D構造26と27との間に接触領域が存在する。3D構造27は3D構造18に接触しないものとしているが、3D構造27の位置ずれにより、3D構造27と3D構造28との間の距離が減少する可能性がある。3D構造27が3D構造28に近づくかまたは近すぎる場合、これは集積回路の性能に悪影響を及ぼす。本発明による方法により、3D構造27と3D構造28との間の距離を正確に測定することが可能になる。
【0067】
図15は、3D構造21とのコンタクトを形成する3D構造20の形状を示す。本発明による3Dモデルを使用して、3D特徴20および21の形状、ならびに2つの特徴間のコンタクトの形状を正確に決定することが可能である。図示する実施形態では、コンタクト全体の形状は比較的不規則である。不規則な形状は、コンタクトで発生する欠陥の指標であることが多い。形が崩れた構造は、欠陥として分類することができ、さらに特定のタイプの欠陥として細分類することができる。このようなタイプの欠陥は、例えば、「材料の欠落」または「大きすぎる」または「小さすぎる」または「歪んだ形状」などとすることができる。一般に、第1の3D構造または第2の3D構造の形状に基づいて、ならびに/あるいは、第1の3D構造と第2の3D構造との相対的な重なりに基づいて、第1の3D構造および/または第2の3D構造を欠陥として、もしくは欠陥なしとして分類することが可能である。上述した方法のいずれか1つを、集積半導体回路の製造におけるプロセスの特性評価、プロセスの最適化および/またはプロセスの制御に使用することができることに留意されたい。特徴的な故障および欠陥に関する知識は、それぞれの改善を可能にする。
【符号の説明】
【0068】
1 第1の3D構造
2 第2の3D構造
4 視線
5 第1の3D構造の輪郭線
6 第2の3D構造の輪郭線
7 3D構造
8 3D構造
10 サンプル
11 断面表面
15 強調表示されたコンタクト
16 強調表示されたコンタクト
17 強調表示されたコンタクト
20 形が崩れた3D構造
21 3D構造
26 3D構造
27 3D構造
28 隣の(隣接した)3D構造
29 3D構造27と28との間の距離
50 FIBカラム
51 集束イオン粒子ビーム
52 第1の断面表面
53 第2の断面表面
54 第3の断面表面
55 サンプル頂面
82 結像ライン
100 断面像
1000 一連の断面像
dz 2つの続く像スライス間の距離
d 3D構造の直径
h、h2 3D構造の高さ
w2 3D構造の幅
L2 3D構造の長さ
A 接触領域
M ミスアライメント