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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】挿入光源
(51)【国際特許分類】
   H05H 7/04 20060101AFI20230810BHJP
   G21K 1/093 20060101ALI20230810BHJP
   H05H 13/04 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H05H7/04
G21K1/093 Z
H05H13/04 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019156791
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034344
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 英男
(72)【発明者】
【氏名】幸田 勉
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-326700(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 13/04
H05H 7/04
G21K 1/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の磁石が列状に配置される第1磁石列と、
この第1磁石列が取り付け支持される第1磁石支持体と、
多数の磁石が列状に配置されると共に、前記第1磁石列に対してギャップを介して向かい合う第2磁石列と、
この第2磁石列が取り付け支持される第2磁石支持体と、
前記ギャップの大きさを変更するため、前記第1磁石支持体及び/又は前記第2磁石支持体を磁石列が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、
前記第1磁石支持体と第1磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第1連結ビームと、
前記第2磁石支持体と第2磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第2連結ビームと、
前記第1連結ビームと前記第2連結ビームの少なくとも一方と、前記ギャップ駆動機構とを連結するための駆動連動機構と、を備え、
前記第1磁石支持体ガイド機構と前記第2磁石支持体ガイド機構は、前記第1磁石支持体及び前記第2磁石支持体の磁石列に沿った方向の移動を許容するものであり、いずれの磁石支持体ガイド機構も、
前記第1磁石支持体、前記第2磁石支持体側に取り付けられる可動ガイド部と、
前記第1連結ビーム、第2連結ビーム側に取り付けられる固定ガイド部と、
前記可動ガイド部と前記固定ガイド部の間に配置されるガイドユニットと、を備え、
前記ガイドユニットは、
磁石列に沿った方向に多数並べて配置されるコロと、
前記コロを支持するホルダーと、を備え、
前記可動ガイド部に形成されたガイド凹部と、前記ガイド凹部に挿入され、前記固定ガイド部に形成されたガイド凸部と、を備え、前記ガイド凹部と前記ガイド凸部の間に前記ガイドユニットが設けられることを特徴とする挿入光源。
【請求項2】
多数の磁石が列状に配置される第1磁石列と、
この第1磁石列が取り付け支持される第1磁石支持体と、
多数の磁石が列状に配置されると共に、前記第1磁石列に対してギャップを介して向かい合う第2磁石列と、
この第2磁石列が取り付け支持される第2磁石支持体と、
前記ギャップの大きさを変更するため、前記第1磁石支持体及び/又は前記第2磁石支持体を磁石列が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、
前記第1磁石支持体と第1磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第1連結ビームと、
前記第2磁石支持体と第2磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第2連結ビームと、
前記第1連結ビームと前記第2連結ビームの少なくとも一方と、前記ギャップ駆動機構とを連結するための駆動連動機構と、を備え、
前記第1磁石支持体ガイド機構と前記第2磁石支持体ガイド機構は、前記第1磁石支持体及び前記第2磁石支持体の磁石列に沿った方向の移動を許容するものであり、いずれの磁石支持体ガイド機構も、
前記第1磁石支持体、前記第2磁石支持体側に取り付けられる可動ガイド部と、
前記第1連結ビーム、第2連結ビーム側に取り付けられる固定ガイド部と、
前記可動ガイド部と前記固定ガイド部の間に配置されるガイドユニットと、を備え、
前記ガイドユニットは、
磁石列に沿った方向に多数並べて配置されるコロと、
前記コロを支持するホルダーと、を備え、
前記固定ガイド部に形成されたガイド凹部と、前記ガイド凹部に挿入され、前記可動ガイド部に形成されたガイド凸部と、を備え、前記ガイド凹部と前記ガイド凸部の間に前記ガイドユニットが設けられることを特徴とする挿入光源。
【請求項3】
前記ガイド凸部は、第1水平面と、第2水平面と、第1水平面と第2水平面をつなぐ垂直面により構成され、これら3つの面にそれぞれ前記ガイドユニットが設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の挿入光源。
【請求項4】
前記コロの表面側に配置されるスペーサと、このスペーサの前記コロに対する押圧力を調整する機構を設けていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の挿入光源。
【請求項5】
前記ガイド凹部にネジ穴が形成され、このネジ穴へのネジの締結量により、前記押圧力が調整されることを特徴とする請求項4に記載の挿入光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の磁石が列状に配置される第1磁石列と、この第1磁石列が取り付け支持される第1磁石支持体と、多数の磁石が列状に配置されると共に、前記第1磁石列に対してギャップを介して向かい合う第2磁石列と、この第2磁石列が取り付け支持される第2磁石支持体と、前記ギャップの大きさを変更するため、前記第1磁石支持体及び/又は前記第2磁石支持体を磁石列が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、前記第1磁石支持体と第1磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第1連結ビームと、前記第2磁石支持体と第2磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第2連結ビームと、前記ギャップ駆動機構と前記磁石支持体を連結するための駆動連動機構と、を有する挿入光源(insertion device)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空中において光速近くまで加速された電子ビームが磁界中で曲げられると、電子ビームの移動軌跡の接線方向に放射光を発光し、これをシンクロトロン放射光と呼んでいる。このようなシンクロトロン放射光を発生させる光源を、電子貯蔵リング(電子ビーム蓄積リング)の直線部に設置し、高指向性、高強度、高偏光性などの特性を生かした種々の技術の実用化のための研究が行われている。今日の電子貯蔵リングには、より高いビーム電流、より小さなビーム断面積による高輝度光源である挿入光源(アンジュレータ)が複数設けられている。
【0003】
かかる挿入光源として、例えば、下記特許文献1に開示される挿入光源が知られている。この挿入光源は、多数の磁石が列状に配置される第1磁石列と、多数の磁石が列状に配置される第2磁石列がギャップを介して向かいあう構成を備えている。これら第1磁石列と第2磁石列は真空槽の中に封止されるため、真空槽内に磁石列(磁気回路)を配置してから、真空引きをして槽内を真空にしている。
【0004】
ただし、槽内の圧力が低下すると、磁石列を構成する永久磁石(例えば、Nd-Fe-B焼結磁石)や、その他の槽内の部品からガスが発生して真空度が上がらないという問題がある。そこで、真空引きの初期に所定の温度に上げてベーキング処理をして脱ガスを行っている。そうすると、磁石列を支持する磁石支持体は熱膨張により長手方向に延びるため、真空槽の内外の部品で長さに差異が生じる。そこで、磁石支持体と連結ビームとは、磁石支持体ガイド機構を介して連結して長さの差異を吸収するようにしている。これにより、熱膨張の影響がギャップ駆動機構や駆動連動機構に及ばないようにしている。
【0005】
かかる磁石支持体ガイド機構として、具体的には、リニアガイドを用いている。このリニアガイドは、多数のボールが無限軌道を転動するような構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2018/143253A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のリニアガイドは、多数のボールが無限軌道を転動する構成を採用しているため、構造が複雑であり、コスト高であった。また、昨今の半導体製造(装置)における需要高の為、入手困難で非常に納期がかかるという問題もあった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、簡素な構成の磁石支持体ガイド機構を採用してコストダウンが可能な挿入光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る挿入光源は、
多数の磁石が列状に配置される第1磁石列と、
この第1磁石列が取り付け支持される第1磁石支持体と、
多数の磁石が列状に配置されると共に、前記第1磁石列に対してギャップを介して向かい合う第2磁石列と、
この第2磁石列が取り付け支持される第2磁石支持体と、
前記ギャップの大きさを変更するため、前記第1磁石支持体及び/又は前記第2磁石支持体を磁石列が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、
前記第1磁石支持体と第1磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第1連結ビームと、
前記第2磁石支持体と第2磁石支持体ガイド機構を介して一体的に連結された第2連結ビームと、
前記第1連結ビームと前記第2連結ビームの少なくとも一方と、前記ギャップ駆動機構とを連結するための駆動連動機構と、を備え、
前記第1磁石支持体ガイド機構と前記第2磁石支持体ガイド機構は、前記第1磁石支持体及び前記第2磁石支持体の磁石列に沿った方向の移動を許容するものであり、いずれの磁石支持体ガイド機構も、
前記第1磁石支持体、前記第2磁石支持体側に取り付けられる可動ガイド部と、
前記第1連結ビーム、第2連結ビーム側に取り付けられる固定ガイド部と、
前記可動ガイド部と前記固定ガイド部の間に配置されるガイドユニットと、を備え、
前記ガイドユニットは、
磁石列に沿った方向に多数並べて配置されるコロと、
前記コロを支持するホルダーと、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
この構成による挿入光源の作用・効果は以下の通りである。第1磁石支持体は第1磁石支持体ガイド機構を介して第1連結ビームに一体的に連結され、第2磁石支持体は第2磁石支持体ガイド機構を介して第2連結ビームに一体的に連結される。ギャップ駆動機構は、第1連結ビームと第2連結ビームの少なくとも一方を駆動することで、ギャップの大きさを変更する。ここで、第1・第2磁石支持体ガイド機構は、第1・第2磁石支持体側に取り付けられる可動ガイド部と、第1・第2連結ビーム側に取り付けられる固定ガイド部と、前記可動ガイド部と前記固定ガイド部の間に配置されるガイドユニットを備える。さらに、このガイドユニットは、磁石列に沿った方向に多数並べて配置され、その形状が例えば針状乃至円柱状であるコロと、前記コロを支持するホルダーとを備えている。すなわち、コロとそのホルダーによる簡素な構成で、磁石支持体ガイド機構を実現している。このようなガイドユニットは市販されており、従来使用されていたリニアガイドよりも遥かに安価で入手しやすい。その結果、コストダウンが可能な挿入光源を提供することができる。
【0011】
なお、磁石列が向かい合う方向とは、磁石列が設置される態様に依存するものであり、例えば、垂直方向、水平方向、任意の傾斜方向が含まれる。また、磁石列が向かい合う方向の移動は、磁石列が接近する場合と遠ざかる場合の両方がある。
【0012】
また、第1磁石支持体は第1磁石支持体ガイド機構を介して第1連結ビームに一体的に連結されるものであるが、第1磁石支持体と第1磁石支持体ガイド機構の間に更に別の部材が介在する構成も本発明に含まれる。第1磁石支持体ガイド機構と第1連結ビームの間にさらに別の部材が介在する構成も本発明に含まれる。第2磁石支持体ガイド機構に関しても同様である。
【0013】
本発明において、前記可動ガイド部に形成されたガイド凹部と、前記固定ガイド部に形成されたガイド凸部と、を備え、前記ガイド凹部と前記ガイド凸部の間に前記ガイドユニットが設けられることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、ガイド凹部の間にガイド凸部を挿入することで、ガイドユニットを構成することができる。なお、凹部や凸部の形状は特定の形状に限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る前記ガイド凸部は、第1水平面と、第2水平面と、第1水平面と第2水平面をつなぐ垂直面により構成され、これら3つの面にそれぞれ前記ガイドユニットが設けられることが好ましい。
【0016】
かかる構成により、角型の凹部と凸部が形成され、3つの面にそれぞれガイドユニットを配置することで、スムーズなガイドを実現することができる。
【0017】
本発明において、前記コロの表面側に配置されるスペーサと、このスペーサの前記コロに対する押圧力を調整する機構を設けていることが好ましい。かかる構成により、コロに適切な押圧力を付与することができる。
【0018】
本発明において、前記ガイド凹部にネジ穴が形成され、このネジ穴へのネジの締結量により、前記押圧力が調整されることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ネジを回転させることで、押圧力の調整を行うことができる。これにより、ガイドユニットを適切に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る挿入光源の正面側から見た斜視図
図2】本実施形態に係る挿入光源の正面図
図3】本実施形態に係る挿入光源の側面図
図4】本実施形態に係る挿入光源の正面側から見た斜視図であり、真空槽を除去した状態を示す図
図5図4の部分拡大図
図6A】磁石支持体ガイド機構の斜視図
図6B】磁石支持体ガイド機構の斜視図(動作図)
図7】磁石支持体ガイド機構の分解斜視図
図8】磁石支持体ガイド機構の側面図
図9】磁石支持体ガイド機構の正面図
図10図9のB-B断面図
図11図8のA-A断面図
図12】ガイドユニットの外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る挿入光源の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る挿入光源の正面側の斜視図である。図2は、正面図である。図3は、側面図である。図4は、真空槽を除去した状態の正面側の斜視図である。図5は、図4の部分拡大図である。
【0022】
図4図5等に示すように、挿入光源は、多数の磁石が列状に配置される第1磁石列M1と、同じく多数の磁石が列状に配置される第2磁石列M2がギャップδを介して向かい合っている。このギャップ空間を電子ビームが通過する。なお、磁石列としては、例えば、特許文献1に挙げたもののほか、特開2001-143899号公報や特開2014-13658号公報に開示されるものなど、種々の構成例が考えられる。従って、特定の磁石の配置に限定されるものではない。
【0023】
第1磁石列M1は、第1磁石支持体1により支持され、第2磁石列M2は、第2磁石支持体2により支持される。例えば、第1磁石列M1を構成する個々の磁石が第1磁石支持体1に対してボルト等により結合される。第2磁石列M2も同様である。
【0024】
また、第1磁石列M1と第2磁石列M2の磁石列が向かい合う方向は垂直方向であるが、挿入光源としては、上記に限定されるものではなく、水平方向や傾斜方向、また、複数の方向の組み合わせを有していてもよい。
【0025】
なお、真空槽3は、支持体600によりベース10の上に支持されている。図1にも示すように、支持体600の上には支持部材610が設けられており、真空槽3の下部を受け止めている。支持体600、支持部材610、真空槽3は、不図示の機械的手段(例えば、ボルトナット)により結合されている。また、支持体600もベース10に対して適宜の機械的手段(例えば、ボルトナット)により結合されている。なお、真空槽3の支持構造は、種々の変形例が可能である。
【0026】
図3に示すように、第1磁石支持体1の上部には、連結軸100が取り付けられ、連結軸100の上端は連結プレート101に連結されている。図2に示すように、連結軸100は、左右方向に沿って8個配置され、連結プレート101も同じく8個配置される。図3等に示すように連結軸100は正面側から見て前後方向に沿って2個配置され、この2個の連結軸100が1個の連結プレート101により連結される。すなわち、本実施形態では、連結軸100は合計16個配置され、この16個の連結軸100が2個ずつ、8個の連結プレート101により連結される。
【0027】
連結軸100は、単一の部品ではなく、複数の部品により構成されている。図3図5
を見ても分かるように、複数の軸部材と、軸部材の端部に位置するフランジなどの複数の部品により構成されている。連結軸100の具体的な構成については、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0028】
連結軸100が配置された上方には第1連結ビーム103が配置される。第1連結ビーム103と連結プレート101は、磁石支持体ガイド機構7により連結される。これは、第1磁石支持体1が熱膨張で長手方向に長さが変化したときに、その変化を吸収するために設けている。従って、熱膨張の影響が後述のギャップ駆動機構50や駆動連動機構に及ばないようにしている。以上のように、第1磁石支持体1と第1連結ビーム103は、磁石支持体ガイド機構7を介して一体的に連結されている。第1連結ビーム103が垂直方向(磁石列が向かい合う方向の一例:以下も同様)に移動すれば、それに連動して第1磁石支持体1も一体的に垂直方向に移動する。垂直方向の移動量は同じになる。なお、第1連結ビーム103と第1磁石支持体1を一体的に連結させる機構は上記に限定されるものではなく、種々の変形例が適用可能である。なお、磁石支持体ガイド機構7の詳細は後述する。
【0029】
第2磁石支持体2も連結軸200、連結プレート201、磁石支持体ガイド機構7を介して第2連結ビーム203と一体的に連結されている。その構成は、第1連結ビーム103の場合と同じであるので説明は省略する。以下の説明に関しても同様である。
【0030】
図1に示すように、第1連結ビーム103は、左右方向に沿って伸びる直方体形状を有した本体フレーム103aを有している。さらに、本体フレーム103aの後方側に2か所支持フレーム103bが連結されており、正面側から見て前後方向に沿って伸びている。
【0031】
<ギャップ駆動機構>
挿入光源の後方上部に前述のギャップδの大きさを変更するためのギャップ駆動機構50が設けられている。ギャップ駆動機構50は、フレーム500を介してベース10の上に設置されている。フレーム500は、水平方向の断面が矩形の直方体形状を有しており、2本設けられている。フレーム500の上部に載置プレート501が設けられており、その上にギャップ駆動機構50が載置される。ギャップ駆動機構50に関しては、前述の特許文献1に開示されたものと同じ機構を採用することができる。
【0032】
ギャップ駆動機構50は、駆動モータ51と、変換部52,53,54を有している。変換部52は、駆動伝達の方向を90゜変換する。変換部53は、駆動伝達の方向を変換するとともに左右に分岐して動力を伝達する。変換部54は左右に一対設けられており、水平方向の駆動を垂直方向に変換する。具体的な構成は、傘歯車等の公知の機械要素により行われるものである。
【0033】
変換部54により垂直方向の駆動伝達に変換されるが、例えば、垂直軸を有するボールネジ機構(不図示)を駆動する。ボールネジ機構は、周知の構造であり、ねじ軸部とナット部により構成される。
【0034】
ボールネジ機構を駆動することで、ねじ軸部が回転してナット部が上下動することができる。したがって、第1連結ビーム103を垂直方向に移動させることができる。第1連結ビーム103を垂直方向に移動させるために支持フレーム103bが設けられている(図1参照)。正面側から見て支持フレーム103bの後方側は、2つのフレームガイド機構103cにより正面側から見てフレーム500の前方側に取り付けられている。正面側から見て支持フレーム103bの前方側は、第1連結ビーム103に取り付けられる(図3参照)。
【0035】
以上のように、フレームガイド機構103cと、変換部54により駆動されるボールネジ機構は、第1連結ビーム103とギャップ駆動機構50とを連結するための駆動連動機構に相当する。駆動モータ51を駆動することで、第1連結ビーム103を垂直方向に移動させることができ、第1磁石支持体1及び第1磁石列M1を垂直方向に移動させることができる。すなわち、ギャップδの大きさを変えることができる。
【0036】
なお、下側に位置する第2連結ビーム203も同様に下側に配置されたギャップ駆動機構(不図示)により垂直方向に移動させることができ、その構成は基本的には第1連結ビーム103の場合と同じであるので説明は省略する。以上のような構成で第1連結ビーム103と第2連結ビーム203を垂直方向に移動させることでギャップδの大きさを変えることができる。第1連結ビーム103と第2連結ビーム203を互いに近づける方向に移動させるとギャップδは小さくなり、互いに遠ざける方向に移動させることでギャップδは大きくなる。
【0037】
<磁石支持体ガイド機構>
次に、磁石支持体ガイド機構7の具体的な構成を説明する。図6A図6Bは、磁石支持体ガイド機構7の斜視図である。図7は、磁石支持体ガイド機構7の分解斜視図である。図8は、側面図である。図9は、正面図である。図10は、図9のB-B縦断面図である。図11は、図8のA-A断面図である。図12はガイドユニットの外観斜視図である。なお、作図の便宜上、磁石支持体ガイド機構7以外の部分は概ね省略している。図6等に示す図は、図5に示す部分拡大図に対応しているが、他の箇所の磁石支持体ガイド機構7についても同じ構造を有している。なお、図6等において、第2連結ビーム203については、図示の便宜上、矩形板で示している。第1連結ビーム103側に第1磁石支持体ガイド機構7、第2連結ビーム203側に第2磁石支持体ガイド機構7が配置されるが、いずれも同じ構造であり、単に磁石支持体ガイド機構7と称して説明する。
【0038】
図6等に示すように、磁石支持体ガイド機構7は、固定ガイド部70Aと、可動ガイド部70Bを備えている。固定ガイド部70Aは、第1ブロック70により構成される。可動ガイド部70Bは、第2ブロック71と連結プレート201により構成される。第1ブロック70は、ガイド凸部700が左右に一対形成されている。第2ブロック71と連結プレート201が結合された状態でガイド凹部710が形成される。第2ブロック71と連結プレート201の結合は、ボルト701により行う。第1ブロック70は、不図示のボルトにより、第2連結ビーム203に結合される。
【0039】
図9等に示すように、ガイド凸部700は、第1水平面700aと第2水平面700bと垂直面700cを備えており、これにより、凸部が形成される。第1水平面700aに対向して、連結プレート201にも第1水平面201aが形成される。同様に、第2ブロック71に、第2水平面710bと垂直面710cが形成され、これらと第1水平面201aにより、ガイド凹部710が形成される。なお、図9の符号は図面表記の都合上、左右対称の部分はどちらか一方を表示している。
【0040】
上記の構成において、ガイド凸部700とガイド凹部710の間に空間が形成され、当該空間にガイドユニット72が配置される。具体的には、第1水平面700aと第1水平面201aの間、第2水平面700bと第2水平面710bの間、垂直面700cと垂直面710cの間に、ガイドユニット72が配置される。すなわち、ガイド凸部700とガイド凹部710の間に3つのガイドユニット72が配置され、合計で6つのガイドユニット72が配置される。
【0041】
図12は、ガイドユニット72のみを示す外観斜視図である。ガイドユニット72は、多数のコロ720と、このコロ720を支持するホルダー721により構成される。このガイドユニット72としては、日本トムソン株式会社製のフラットケージやTHK株式会社製のフラットローラーを用いることができる。ただし、本発明に係るガイドユニット72は、特定の構造やメーカーのものに限定されるものではない。コロ720は針状あるいは円柱状に形成される。
【0042】
ホルダー721には、コロ支持部722と、長手方向に沿って形成される溝部723が一体的に形成されている。コロ720は、円柱状に形成されており、脱落しないようにその両端部がコロ支持部722により支持されている。また、コロ720の表面がコロ支持部722によりも少し突出した状態で支持されている。コロ720は、フリー回転できるようにホルダー721(コロ支持部722および溝部723)に支持されている。
【0043】
図7等に示すように、スペーサ73がガイドユニット72のコロ720側に配置されている。スペーサ73は、鋼のような素材で薄板状に形成される。スペーサ73は、ガイドユニット72とガイド凹部710の間に配置される。なお、スペーサ73の素材や厚みは適宜設定できるものとする。
【0044】
スペーサ73を介してイモネジ74によりガイドユニット72のコロ720に対する圧力を調整可能にしている。第2ブロック71の側面にはネジ穴711が形成されており、これを介してイモネジ74を回転できるようにしている。これにより、垂直面710cに位置するガイドユニット72に対する押圧力の調整が可能である。他のガイドユニット72に関しても同様の方法により押圧力の調整が可能である。押圧力を調整することで、ガイドユニット72による適切なガイドを行うことができる。
【0045】
図10の断面図において、第1水平面201aに位置するスペーサ73を押圧するイモネジ74が図示されている。そのために、第2連結プレート201にネジ穴201bが形成されている。なお、第2水平面710bには、スペーサ73が設けられていないが、他の箇所と同様に、スペーサ73を配置してもよい。イモネジ74の配置個数については、適宜設定できるものである。
【0046】
図11に示すように、第1ブロック70は、ボルト702により第2連結ビーム203に結合される。第2連結プレート201は、ボルト701により、第2ブロック71に結合される。第1水平面201aに配置されたスペーサ73がイモネジ74により押圧する様子が描かれている。
【0047】
連結軸200は、ボルト703により第2連結プレート201に結合されている。連結軸200は、実際には複数の部品で構成されているので、そのうちの第2連結プレート201に最も近い位置にある部品が第2連結プレート201に結合されることになる。
【0048】
すでに述べたように、真空槽3の真空引きの初期に所定の温度に上げてベーキング処理(120℃程度に加熱)をして脱ガスを行っている。そうすると、第1・第2磁石列M1,M2を支持する第1・第2磁石支持体1,2は熱膨張により長手方向に延びる。そこで、磁石支持体ガイド機構7を設けて、熱膨張によって生じる長さの差異を吸収するようにしている。これにより、部品の破損等の不具合を回避するようにしている。本発明において使用するガイドユニット72は簡素な構成であり、従来のリニアガイドに比べてコスト的な利点を有する。
【0049】
図6Bは、実際にガイドユニット72が作動した状態を示す図である。図6Aと比べてわかるように、可動ガイド部70Bが固定ガイド部70Aに対して移動した状態を示している。なお、具体的な移動量は2~3mmであり、ガイドユニット72としては大きな移動量を必要とはしない。従来のリニアガイドは、無限軌道で移動するボールを備えており、可動範囲が大きく設定されている。しかしながら、本発明の場合は、熱膨張による長さの変化を吸収することが目的であるから、例えば、動作保障としては10mm程度あれば十分である。
【0050】
さらに、本発明によるガイドユニット72を用いた場合、磁石吸引力に起因する連結プレート101,201や磁石支持体1,2の垂直方向の伸びが1~2μm程度であり、従来のリニアガイドを用いた場合が10μm程度であったのに比べると、少なくとも3~5倍程度の剛性を持たせることができた。
【0051】
<別実施形態>
本実施形態において、ガイド凸部は、第1水平面、第2水平面、垂直面の3面を有する構成であったが、2面でガイド凸部を構成してもよい。例えば、傾斜した面を組み合わせて、V字状に突出したガイド凸部を構成してもよい。この場合、V字型のガイドユニットを使用することもできるし、平板状のガイドユニットを2つ組み合わせて使用してもよい。また、3面で構成する場合も、水平面や垂直面ではなく、傾斜した面の組み合わせにより構成してもよい。
【0052】
本実施形態では、可動ガイド部にガイド凹部が形成され、固定ガイド部にガイド凸部が形成されているが、可動ガイド部にガイド凸部が形成され、固定ガイド部にガイド凹部が形成される構成でもよい。
【符号の説明】
【0053】
M1 第1磁石列
M2 第2磁石列
δ ギャップ
1 第1磁石支持体
2 第2磁石支持体
3 真空槽
4 台座
10 ベース
100 連結軸
101 連結プレート
103 第1連結ビーム
200 連結軸
201 連結プレート
201a 第1水平面
203 第2連結ビーム
50 ギャップ駆動機構
7 磁石支持体ガイド機構
70 第1ブロック
70A 固定ガイド部
70B 可動ガイド部
700 ガイド凸部
700a 第1水平面
700b 第2水平面
700c 垂直面
71 第2ブロック
710 ガイド凹部
710b 第2水平面
710c 垂直面
72 ガイドユニット
720 コロ
721 ホルダー
722 コロ支持部
723 溝部
73 スペーサ
74 イモネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12