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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018224483
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020088304
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯島 信行
(72)【発明者】
【氏名】浅川 浩行
(72)【発明者】
【氏名】竹元 啓一
(72)【発明者】
【氏名】原山 洋一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0165956(US,A1)
【文献】特開平06-151322(JP,A)
【文献】特開平10-112437(JP,A)
【文献】特開2001-102436(JP,A)
【文献】特開2005-277074(JP,A)
【文献】特開2015-035485(JP,A)
【文献】特開2011-086919(JP,A)
【文献】特開2016-058748(JP,A)
【文献】特開2003-229344(JP,A)
【文献】特開2018-26427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は、全体が前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、電気的に独立しており、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている基板固定装置。
【請求項2】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、
前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、
前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、
前記金属層の側面及び上下面は前記絶縁層により被覆され、
前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成され
前記発熱体と前記金属層とが同一の材料により形成され、
前記材料は、コンスタンタンである基板固定装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、ビスマレイミドトリアジン樹脂から形成されている請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、エポキシ樹脂から形成されている請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、アルミナ又は窒化アルミニウムのフィラーを含有し、
前記絶縁層の熱伝導率は、3W/mK以上である請求項1乃至の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記金属層は、隙間を介して隣接する部分を有する所定形状のパターンである請求項1乃至の何れか一項に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記所定形状のパターンは、同心円状又は渦巻き状のパターンである請求項に記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記発熱体は、同心円状のパターンである請求項に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。
【0003】
このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックにより、吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0004】
基板固定装置の一例として、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものが挙げられる。この基板固定装置において、発熱体は、例えば、静電チャックに隣接して設けられた絶縁層に内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-78731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板固定装置において、発熱体の厚さ方向のばらつき等により発熱ムラが発生し、静電チャック表面の温度の均一性を阻害する場合があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、静電チャック表面の温度の均一性を向上した基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本基板固定装置は、ベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた発熱部と、前記発熱部上に設けられた静電チャックと、を有し、前記発熱部は、発熱体と、前記発熱体よりも前記静電チャックに近い側に配置された金属層と、前記発熱体及び前記金属層を被覆する樹脂製の絶縁層と、を備え、前記金属層の側面及び上下面は、全体が前記絶縁層により被覆され、前記金属層は、電気的に独立しており、前記金属層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、静電チャック表面の温度の均一性を向上した基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図2】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図5】基板固定装置1が奏する効果について説明する図である。
図6】発熱部に設けられる金属層のパターンのバリエーションを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。図1を参照するに、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、発熱部30と、静電チャック40とを有している。
【0013】
ベースプレート10は、発熱部30や静電チャック40を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック40上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0014】
ベースプレート10の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック40上に吸着されたウェハを冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電チャック40上に吸着されたウェハを冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0015】
発熱部30は、接着層20を介して、ベースプレート10上に固着されている。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、2mm程度とすることができる。接着層20の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20は、複数の接着層が積層した積層構造としてもよい。例えば、接着層20を熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、アルミニウム製のベースプレートとの熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0016】
発熱部30は、絶縁層31と、絶縁層31に内蔵された発熱体32と金属層33とを有している。発熱体32及び金属層33の周囲は、絶縁層31に被覆され、外部から保護されている。
【0017】
絶縁層31としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層31の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。又、絶縁層31の厚さは100~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0018】
発熱体32は、基板固定装置1の外部から電圧を印加することで発熱し、後述の基体41の載置面41aが所定の温度となるように加熱する。発熱体32は、例えば、基体41の載置面41aの温度を250℃~300℃程度まで加熱することができる。発熱体32の材料としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等を用いることができる。発熱体32の厚さは、例えば、20~100μm程度とすることができる。発熱体32は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。
【0019】
なお、発熱体32と絶縁層31との高温下での密着性を向上するため、発熱体32の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体32の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体32の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0020】
金属層33は、絶縁層31内において、発熱体32よりも静電チャック40に近い側に配置されている。金属層33は、発熱体32の発する熱を均一化して拡散する(不均一な発熱状態の緩和を行う)層であり、絶縁層31よりも熱伝導率の高い材料から形成されている。金属層33の材料としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等を用いることができる。金属層33の平面形状は、例えば、円形とすることができる。この場合、金属層33の平面形状は、絶縁層31の平面形状よりも1回り小さく形成することができる。金属層33の厚さは、例えば、20~100μm程度とすることができる。金属層33と発熱体32とが同一の材料により形成されてもよい。
【0021】
金属層33の側面及び上下面は絶縁層31により被覆されている。このため、金属層33の側面が外部に露出することはなく、プラズマガスに対する金属層33の耐食性を高めることができる。
【0022】
静電チャック40はプラズマに曝されるため、プラズマガスに対する耐食性が低いと、発熱体32や金属層33の成分とプラズマガスによって形成された反応生成物がパーティクルとなって基体41上に付着し、コンタミネーション等の悪影響を与える。金属層33と発熱体32とが同一の材料により形成されている場合、コンタミネーションによるリスクを低減することができる。
【0023】
なお、金属層33は、絶縁層31内において、絶縁層31の厚さ方向に所定の間隔を空けて複数層設けてもよい。又、金属層33は、絶縁層31内において、発熱体32よりも静電チャック40に近い側、及び発熱体32よりも接着層20に近い側の両方に設けてもよい。複数の金属層により熱拡散性を向上できる。
【0024】
静電チャック40は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック40の平面形状は、例えば、円形とすることができる。静電チャック40の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチ程度とすることができる。
【0025】
静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、基体41と、静電電極42とを有している。静電チャック40は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック40は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0026】
基体41は誘電体であり、基体41としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体41の厚さは、例えば、1~10mm程度、基体41の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度とすることができる。静電チャック40と発熱部30の絶縁層31とは直接接合されている。発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上することができる。発熱部30と静電チャック40とを接着剤で接合する従来の基板固定装置の耐熱温度は150℃程度であるが、基板固定装置1では耐熱温度を200℃程度とすることができる。
【0027】
静電電極42は、薄膜電極であり、基体41に内蔵されている。静電電極42は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック40の基体41の載置面41a上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極42に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極42は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極42の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0028】
[基板固定装置の製造方法]
図2図4は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。図2図4を参照しながら、基板固定装置1の製造工程について、発熱部30の形成工程を中心に説明する。なお、図2(a)~図4(a)は、図1とは上下を反転した状態で描いている。
【0029】
まず、図2(a)に示す工程では、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により、基体41に静電電極42を内蔵する静電チャック40を作製する。なお、後述の絶縁樹脂フィルム311との密着性を向上するために、静電チャック40の絶縁樹脂フィルム311がラミネートされる面にブラスト処理等を施し、粗化してもよい。
【0030】
次に、図2(b)に示す工程では、静電チャック40上に、絶縁樹脂フィルム311を直接ラミネートする。絶縁樹脂フィルム311は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム311は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311は静電チャック40上に仮固定される。
【0031】
絶縁樹脂フィルム311としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁樹脂フィルム311にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂フィルム311の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁樹脂フィルム311のガラス転移温度は250℃以上とすることが好ましい。又、熱伝導性能を高める(熱伝導速度を速める)観点から、絶縁樹脂フィルム311の厚さは60μm以下とすることが好ましく、絶縁樹脂フィルム311の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0032】
次に、図2(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に金属層33を配置する。金属層33は、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等の金属箔を絶縁樹脂フィルム311上にラミネートすることで形成できる。金属層33は、上記の材料を用いて、スパッタ法やめっき法等により形成してもよい。金属層33の平面形状や厚さは、前述の通りである。金属層33は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム311の粘着力により、絶縁樹脂フィルム311上に仮固定される。
【0033】
次に、図2(d)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311上に、金属層33を被覆する絶縁樹脂フィルム312をラミネートする。絶縁樹脂フィルム312は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム312の材料は、例えば、絶縁樹脂フィルム311と同様とすることができる。但し、絶縁樹脂フィルム312の厚さは、金属層33を被覆できる範囲内で適宜決定することができ、必ずしも絶縁樹脂フィルム311と同じ厚さにする必要はない。
【0034】
次に、図3(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム312上に金属箔321を配置する。金属箔321は最終的に発熱体32となる層であるため、金属箔321の材料は、既に例示した発熱体32の材料と同様である。金属箔321の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、100μm以下とすることが好ましい。金属箔321は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム312の粘着力により、絶縁樹脂フィルム312上に仮固定される。
【0035】
なお、絶縁樹脂フィルム312上に配置する前に、金属箔321の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)を粗化しておくことが好ましい。もちろん、金属箔321の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、金属箔321の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0036】
又、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の必要な領域を選択的に粗化することができる。そこで、ドット加工を用いる方法では、金属箔321の全領域に対して粗化を行う必要はなく、最低限、発熱体32として残す領域に対して粗化を行えば足りる(つまり、エッチングで除去される領域に対してまで粗化を行う必要はない)。
【0037】
次に、図3(b)に示す工程では、金属箔321をパターニングし、発熱体32を形成する。発熱体32は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。具体的には、例えば、金属箔321上の全面にレジストを形成し、レジストを露光及び現像し、発熱体32として残す部分のみを被覆するレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンに被覆されていない部分の金属箔321をエッチングにより除去する。例えば、金属箔321の材料が銅である場合には、金属箔321を除去するエッチング液としては、塩化第二銅エッチング液や塩化第二鉄エッチング液等を用いることができる。
【0038】
その後、レジストパターンを剥離液により剥離することにより、絶縁樹脂フィルム312の所定位置に発熱体32が形成される(フォトリソグラフィ法)。フォトリソグラフィ法により発熱体32を形成することにより、発熱体32の幅方向の寸法のばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、エッチングにより形成された発熱体32の断面形状は、例えば、略台形状とすることができる。この場合、絶縁樹脂フィルム312に接する面と、その反対面との配線幅の差は、例えば、10~50μm程度とすることができる。発熱体32の断面形状をシンプルな略台形状とすることにより、発熱分布を改善することができる。
【0039】
次に、図3(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム312に、発熱体32を被覆する絶縁樹脂フィルム313をラミネートする。絶縁樹脂フィルム313は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム313材料は、例えば、絶縁樹脂フィルム311と同様とすることができる。但し、絶縁樹脂フィルム313の厚さは、発熱体32を被覆できる範囲内で適宜決定することができ、必ずしも絶縁樹脂フィルム311や312と同じ厚さにする必要はない。
【0040】
次に、図4(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム311、312、及び313を静電チャック40側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム311、312、及び313を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、絶縁樹脂フィルム311、312、及び313が一体化して絶縁層31となり、発熱体32及び金属層33の周囲が絶縁層31に被覆された発熱部30が形成され、発熱部30の絶縁層31と静電チャック40とが直接接合される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム311、312、及び313の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。
【0041】
なお、絶縁樹脂フィルム311、312、及び313を静電チャック40側に押圧しながら加熱硬化させることにより、発熱体32の有無の影響による絶縁層31の上面(静電チャック40と接しない側の面)の凹凸を低減して平坦化することができる。絶縁層31の上面の凹凸は、7μm以下とすることが好ましい。絶縁層31の上面の凹凸を7μm以下とすることにより、次工程で絶縁層31と接着層20との間に気泡を巻き込むことを防止できる。つまり、絶縁層31と接着層20との間の接着性が低下することを防止できる。
【0042】
次に、図4(b)に示す工程では、予め水路15等を形成したベースプレート10を準備し、ベースプレート10上に接着層20(未硬化)を形成する。そして、図4(a)に示す構造体を上下反転させ、接着層20を介して、ベースプレート10上に配置し、接着層20を硬化させる。これにより、ベースプレート10上に接着層20を介して発熱部30及び静電チャック40が順次積層された基板固定装置1が完成する。
【0043】
ここで、比較例を交えながら、基板固定装置1が奏する効果について説明する。図5は、基板固定装置1が奏する効果について説明する図である。図5(a)では、比較例に係る基板固定装置1Xにおいて、発熱体32が発する熱が広がる様子を楕円で模式的に示している。又、図5(b)では、本実施形態に係る基板固定装置1において、発熱体32が発する熱が広がる様子を楕円で模式的に示している。
【0044】
図5(a)に示す基板固定装置1Xの発熱部30Xは、金属層33を有していないため、発熱体32の発する熱を均一化して拡散することができない。そのため、発熱体32の発する熱に均一性を阻害する要因がある場合、基体41の載置面41aの温度が均一にならない。
【0045】
これに対して、図5(b)に示す基板固定装置1の発熱部30は、金属層33を有している。これにより、発熱体32の発する熱に均一性を阻害する要因がある場合でも、金属層33が発熱体32の発する熱を均一化して拡散する(不均一な発熱状態の緩和を行う)ため、基体41の載置面41aの温度の均一性を向上することができる。
【0046】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、金属層のパターンのバリエーションを例示する。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0047】
図6は、発熱部に設けられる金属層のパターンのバリエーションを例示する図である。第1実施形態では、金属層33として平面形状が円形のベタパターンを例示したが、金属層のパターンはベタパターンには限定されない。金属層は、例えば、図6に例示する各種のパターンとしてもよいし、これら以外の任意のパターンとしてもよい。
【0048】
図6(a)に示す金属層33Aは同心円状のパターンである。又、図6(b)に示す金属層33Bは渦巻き状のパターンである。又、図6(c)に示す金属層33Cは図6(a)に示す同心円状のパターンに略十字状のスリットを設けたものである。又、図6(d)に示す金属層33Dは図6(b)に示す渦巻き状のパターンに略十字状のスリットを設けたものである。又、図6(e)に示す金属層33Eはメッシュ状のパターンである。又、図6(f)に示す金属層33Fはブロックタイル状のパターンである。
【0049】
このように、発熱部30に設けられる金属層をベタパターンではなく、隙間を介して隣接する部分を有する所定形状のパターンとすることで、金属層と他の部位との熱膨張係数の差に起因する静電チャック40の反りを低減することができる。
【0050】
又、特に、発熱体32が同心円状のパターンに形成されている場合には、発熱部30に設けられる金属層を図6(a)のような同心円状のパターンや図6(b)のような渦巻き状のパターンとすることで、発熱体32が発する熱を効率よく拡散することができる。
【0051】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0052】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 基板固定装置
10 ベースプレート
15 水路
15a 冷却水導入部
15b 冷却水排出部
20 接着層
30 発熱部
31 絶縁層
32 発熱体
33、33A、33B、33C、33D、33E、33F 金属層
40 静電チャック
41 基体
41a 載置面
42 静電電極
311、312、313 絶縁樹脂フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6