(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230814BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20230814BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230814BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230814BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20230814BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230814BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/30 365
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2019007263
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2018024566
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/054769(WO,A1)
【文献】特開2016-004142(JP,A)
【文献】特開2009-110005(JP,A)
【文献】特開2001-100208(JP,A)
【文献】特開2017-102259(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069252(WO,A1)
【文献】特開2008-096863(JP,A)
【文献】特開2005-164962(JP,A)
【文献】特開2007-241011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010026(WO,A1)
【文献】特開2018-136483(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H05B 33/02
H10K 59/00
H10K 50/00
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して含む積層体であって、
前記垂直配向液晶硬化膜は、
少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物であり、かつ、下記式(2):
RthC(450)/RthC(550)≦1 (2)
[式(2)中、RthC(450)は垂直配向液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を表し、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を表す]
を満たし、
前記水平配向液晶硬化膜は、
少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物であり、かつ、下記式(1):
ReA(450)/ReA(550)≦1 (1)
[式(1)中、ReA(450)は水平配向液晶硬化膜の面内方向の波長450nmにおける面内位相差値を表し、ReA(550)は水平配向液晶硬化膜の面内方向の波長550nmにおける面内位相差値を表す]
を満たし、
前記垂直配向液晶硬化膜が垂直配向促進剤を含み、
垂直配向促進剤として非イオン性シラン化合物を含み、前記非イオン性シラン化合物がシランカップリング剤であり、
前記水平配向膜が(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成されてなる光配向膜であり、
前記垂直配向液晶硬化膜の基材側の面から水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側の面までの総膜厚が10μm以下である、積層体。
【請求項2】
基材が剥離可能な基材である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
水平配向膜の膜厚が10~5000nmである、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
水平配向膜がアゾ基またはシンナモイル基を有するポリマーから形成されてなる光配向膜である、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
水平配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つ以上の極大吸収を有する、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非金属原子からなるイオン性化合物を含む、請求項1~
5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非金属原子からなるイオン性化合物を含み、該イオン性化合物の分子量が100以上10,000以下である、請求項1~
6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
垂直配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有する、請求項1~
7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の積層体と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれかに記載の積層体から基材を取り除いた積層体と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
【請求項11】
積層体を構成する水平配向液晶硬化膜の遅相軸と、偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°である、請求項
9または
10に記載の楕円偏光板。
【請求項12】
請求項
9~
11のいずれかに記載の楕円偏光板を含む有機EL表示装置。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
重合性液晶化合物を含む垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から垂直配向液晶硬化膜を形成する工程、
水平配向膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向膜を形成する工程、および、
重合性液晶化合物を含む水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向液晶硬化膜を形成する工程
をこの順に含む、製造方法。
【請求項14】
垂直配向液晶硬化膜を形成する工程、水平配向膜を形成する工程および水平配向液晶硬化膜を形成する工程をこの順に連続して実施する、請求項
13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜を含む積層体、前記積層体を含む楕円偏光板および有機EL表示装置に関する。また、前記積層体の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
楕円偏光板は、偏光板と位相差板とが積層された光学部材であり、例えば、有機EL画像表示装置等の平面状態で画像を表示する装置において、該装置を構成する電極での光反射を防止するために用いられている。この楕円偏光板を構成する位相差板としては、一般に、いわゆるλ/4板が用いられる。
【0003】
可視光の広い波長範囲で一様の位相差性能を発揮しやすい点で、楕円偏光板を構成する位相差板としては逆波長分散性を示すものが好適である。そのような位相差板として、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を、位相差板の平面に対して水平方向に配向させた状態で重合し、硬化させた水平配向液晶硬化膜からなる位相差板が知られている。また、水平配向液晶硬化膜を備える楕円偏光板に、さらに垂直配向液晶硬化膜を組み込むことにより、該楕円偏光板を有機EL表示装置に用いた場合の黒表示時の斜方色相変化を抑制し得ることが知られており、特許文献1には、垂直配向膜上に形成された垂直配向液晶硬化膜と、水平配向膜上に形成された水平配向液晶硬化膜とを含む積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載されるような垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを含む積層体は、従来、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とをそれぞれ独立に作製した後、両者を粘接着剤等により貼合することにより製造されることが多い。また、従来、垂直配向液晶硬化膜の製造には、重合性液晶化合物を垂直方向に配向するための垂直配向膜が必要とされ、垂直配向液晶硬化膜の形成前に垂直配向膜を形成する必要がある。このため、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを含む従来の積層体の製造工程は煩雑になりやすく、生産性が低下しやすいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に対して新規な解決手段、すなわち、垂直配向膜を形成せずに垂直配向液晶硬化膜を形成し、さらに水平配向液晶硬化膜を連続して形成することが可能な積層体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明者等による上記解決手段の検討において、垂直配向膜を形成せずに垂直配向液晶硬化膜を形成する場合、その液晶配向性が低下しやすいこと、また、垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して水平液晶硬化膜を形成する場合、粘接着剤層により垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを貼合した積層体と比較して、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性が低下しやすいことが明らかとなった。
【0008】
そこで、本発明は、垂直配向膜なしに形成された垂直配向液晶硬化膜上に積層された水平配向液晶硬化膜を含む積層体において、液晶配向性を向上させること、および、垂直配向液晶硬化膜と、該垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して形成された水平配向液晶硬化膜との密着性を向上させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に含む積層体であって、
前記垂直配向液晶硬化膜は、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物であり、前記水平配向液晶硬化膜は、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物であり、
前記垂直配向液晶硬化膜が垂直配向促進剤を含み、前記水平配向膜が(メタ)アクリルポリマーから形成されてなる光配向膜であり、
前記垂直配向液晶硬化膜の基材側の面から水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側の面までの総膜厚が10μm以下である、積層体。
[2]基材が剥離可能な基材である、前記[1]に記載の積層体。
[3]基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜がこの順に隣接して存在する、前記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]水平配向膜の膜厚が10~5000nmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]水平配向膜がアゾ基またはシンナモイル基を有するポリマーから形成されてなる光配向膜である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]水平配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つ以上の極大吸収を有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]水平配向液晶硬化膜が下記式(1):
ReA(450)/ReA(550)≦1 (1)
[式(1)中、ReA(450)は水平配向液晶硬化膜の面内方向の波長450nmにおける面内位相差値を表し、ReA(550)は水平配向液晶硬化膜の面内方向の波長550nmにおける面内位相差値を表す]
を満たす、前記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非イオン性シラン化合物を含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非イオン性シラン化合物を含み、前記非イオン性シラン化合物がシランカップリング剤である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非金属原子からなるイオン性化合物を含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非金属原子からなるイオン性化合物を含み、該イオン性化合物の分子量が100以上10,000以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]垂直配向液晶硬化膜が、垂直配向促進剤として非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物を含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載の積層体。
[13]水平配向液晶硬化膜が少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜の面内方向に対して水平に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜であり、かつ、垂直配向液晶硬化膜が少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜の面内方向に対して垂直に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜である、前記[1]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]垂直配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有する、前記[1]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]垂直配向液晶硬化膜が下記式(2):
RthC(450)/RthC(550)≦1 (2)
[式(2)中、RthC(450)は垂直配向液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を表し、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を表す]
を満たす、前記[1]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16]前記[1]~[15]のいずれかに記載の積層体と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
[17]前記[1]~[15]のいずれかに記載の積層体から基材を取り除いた積層体と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
[18]積層体を構成する水平配向液晶硬化膜の遅相軸と、偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°である、前記[16]または[17]に記載の楕円偏光板。
[19]前記[16]~[18]のいずれかに記載の楕円偏光板を含む有機EL表示装置。
[20]前記[1]~[15]のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
重合性液晶化合物を含む垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から垂直配向液晶硬化膜を形成する工程、
水平配向膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向膜を形成する工程、および、
重合性液晶化合物を含む水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向液晶硬化膜を形成する工程
をこの順に含む、製造方法。
[21]垂直配向液晶硬化膜を形成する工程、水平配向膜を形成する工程および水平配向液晶硬化膜を形成する工程をこの順に連続して実施する、前記[20]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、垂直配向膜を形成せずに垂直配向液晶硬化膜を形成し、さらに前記垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して水平配向液晶硬化膜を連続して形成することが可能な積層体、およびその製造方法を提供することができる。さらに、前記積層体において、液晶配向性を向上させること、および、垂直配向液晶硬化膜と、該垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して形成された水平配向液晶硬化膜との密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の積層体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体は、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に含む。以下、本発明の積層体の層構成の一例を
図1~3に基づいて説明するが、本発明の積層体はこれらの態様に限定されるものではない。
【0013】
図1に示される積層体11は、基材1、垂直配向液晶硬化膜2、水平配向膜3および水平配向液晶硬化膜4をこの順に積層してなる。
図1に示される積層体11において、垂直配向液晶硬化膜2は、垂直配向規制力を有する層(以下、「垂直配向膜」ともいう)を介さずに基材1上に直接形成されており、基材1と垂直配向液晶硬化膜2とが隣接して存在する。本発明の積層体は、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜に加えて、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、さらに他の層を含んで構成されていてもよい。他の層としては、例えば、保護層やハードコート層などの硬化樹脂層、さらなる水平配向液晶硬化膜、本発明の積層体を偏光フィルム等と接着するための粘接着剤層などが挙げられる。
【0014】
他の層を含む積層体として、例えば、本発明の別の一態様である
図2に示される積層体11においては、基材1と垂直配向液晶硬化膜2とが硬化樹脂層5を介して積層され、該垂直配向液晶硬化膜2上に水平配向膜3および水平配向液晶硬化膜4が積層されてなる。さらに、本発明の別の一態様である
図3に示される積層体11においては、基材1と垂直配向液晶硬化膜2とが硬化樹脂層5を介して積層され、さらに、前記垂直配向液晶硬化膜2と水平配向膜3とが硬化樹脂層5を介して積層され、該水平配向膜3上に水平配向液晶硬化膜4が積層されてなる。粘接着剤層を介して積層体11と偏光フィルムとを貼合することにより楕円偏光板を得ることができる。この際、積層体11の垂直配向液晶硬化膜2および水平配向液晶硬化膜4のいずれの側を偏光フィルムと貼合してもよく、例えば、
図1の積層体11の基材1を剥離した後、垂直配向液晶硬化膜2を、粘接着剤層を介して偏光フィルムと貼合してもよく、また、
図1の積層体11の水平配向液晶硬化膜4と偏光フィルムとを粘接着剤層を介して貼合してもよい。なお、以下、本明細書においては、本発明の積層体の層構成のうち、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に含む最小の層構成を「基本層構成(I)」ともいう。すなわち、例えば、本発明の積層体が基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、第1の水平配向液晶硬化膜および第2の水平配向液晶硬化膜から構成される場合、基材から最も基材側にある水平配向液晶硬化膜(この場合、第1の水平配向液晶硬化膜)までが本発明の積層体の基本層構成(I)となる。
【0015】
本発明の積層体において、垂直配向液晶硬化膜の基材側の面から水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側の面までの総膜厚(
図1~3におけるa-b間の厚み、以下、「総膜厚T1」ともいう)は10μm以下である。本発明の積層体は、垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して直接水平配向液晶硬化膜を形成し得るものであるため、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを別々に作製した後、両者を粘着剤や接着剤により貼合して得られる従来の積層体と比較して、総膜厚T1を薄くすることができる。積層体の総膜厚T1の薄膜化は、積層体全体、および、該積層体を含む楕円偏光板等の薄膜化にも寄与し得る。本発明の積層体における上記総膜厚T1は、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。上記総膜厚T1の下限値は特に限定されるものではなく、通常1μm以上であり、例えば1.5μm以上であってよい。なお、本発明の積層体が、基本層構成(I)の水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側にさらに垂直配向液晶硬化膜および/または水平配向液晶硬化膜を備える場合、上記総膜厚T1は基本層構成(I)を構成する垂直配向液晶硬化膜の基材側の面から水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側の面までの総膜厚を意味する。
【0016】
本発明の積層体において、垂直配向液晶硬化膜は垂直配向膜を介さずに基材上または基材上に設けられた垂直配向規制力を有しない層上に形成できる。本発明の積層体において垂直配向液晶硬化膜は垂直配向膜なしで形成することができるため、積層体の製造工程数が少なくなり、生産性よく製造し得る積層体となる。すなわち、本発明の積層体の一態様において、基材と垂直配向液晶硬化膜とは垂直配向膜を介することなく積層されており、より好適な一態様において、本発明の積層体は基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜がこの順に隣接して存在してなる。このような層構成を有する本発明の積層体は、垂直配向膜なしで基材上に垂直配向液晶硬化膜を形成することができ、さらに該垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜を介して水平配向液晶硬化膜を連続して形成することができるため、より生産性よく製造し得る積層体となる。
【0017】
以下、本発明の積層体の各構成について詳細に説明する。
〔垂直配向液晶硬化膜〕
本発明の積層体を構成する垂直配向液晶硬化膜は、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物である。本発明において、垂直配向液晶硬化膜は垂直配向促進剤を含む。すなわち、本発明において、垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物は垂直配向促進剤を含む。本発明において、垂直配向促進剤とは膜平面に対して垂直方向へ重合性液晶化合物の液晶配向を促進させる材料を意味する。垂直配向液晶硬化膜が垂直配向促進剤を含むことにより、垂直配向膜なしで垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。これにより、本発明の積層体においては、垂直配向液晶硬化膜を形成する必要がなく、積層体の製造工程が簡素化され、生産性よく積層体を製造することができる。尚、該垂直配向液晶硬化膜上に水平配向膜、および水平配向液晶硬化膜を形成する場合、水平配向液晶硬化膜の配向性が悪化しやすい傾向にある。理由は定かではないが、垂直配向液晶硬化膜に含まれるレベリング剤などの添加剤により表面エネルギーが低下し、上層に水平配向液晶硬化膜を形成する際に液晶化合物の配向性が損なわれやすいものと推定される。特に、垂直配向膜無しで垂直配向液晶硬化膜を形成する場合には配向促進剤を更に含むため、その影響がより顕著となる。
【0018】
重合性液晶化合物の垂直方向への配向を促進させる垂直配向促進剤としては、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物等が挙げられる。垂直配向液晶硬化膜が、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物をともに含むことがより好ましい。
【0019】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含むと、非イオン性シラン化合物が重合性液晶組成物の表面張力を低下させ、該重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、乾燥塗膜と空気界面に非イオン性シラン化合物が偏在する傾向にあり、重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力を高め、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0020】
非イオン性シラン化合物は、非イオン性であってSi元素を含む化合物である。非イオン性シラン化合物としては、例えば、ポリシランのようなケイ素ポリマー、シリコーンオイルおよびシリコーンレジンのようなシリコーン樹脂、並びにシリコーンオリゴマー、シルセスシロキサンおよびアルコキシシランのような有機無機シラン化合物(より具体的には、シランカップリング剤等)等が挙げられる。
これらの非イオン性シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、隣接する層との密着性をより向上させる観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0021】
非イオン性シラン化合物は、シリコーンモノマータイプのものであってもよく、シリコーンオリゴマー(ポリマー)タイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)-(単量体)コポリマーの形式で示すと、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトプロピル基含有のコポリマー;メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよびメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトメチル基含有のコポリマー;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよびビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなビニル基含有のコポリマー;3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアミノ基含有のコポリマー等が挙げられる。
【0022】
シランカップリング剤は、末端にビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシル基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1種のような官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基またはシラノール基とを有するSi元素を含む化合物である。これらの官能基を適宜選定することにより、垂直配向液晶硬化膜の機械的強度の向上、垂直配向液晶硬化膜の表面改質、垂直配向液晶硬化膜と隣接する層との密着性向上などの特異な効果を付与することが可能となる。密着性の観点からは、シランカップリング剤がアルコキシシリル基ともう1つの異なる反応基(たとえば、上記官能基)とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。さらに、シランカップリング剤が、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤がその分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基と、少なくとも1つの極性基とを有すると、重合性液晶化合物の垂直配向性がより向上しやすく、垂直配向促進効果が顕著に得られる傾向にある。極性基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシル基およびヒドロキシ基が挙げられる。なお、極性基はシランカップリング剤の反応性を制御するために適宜置換基または保護基を有していてもよい。
【0023】
シランカップリング剤としては、具体的に例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシランおよび3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランが挙げられる。
【0024】
また、市販のシランカップリング剤としては、たとえば、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、およびKBE-9007のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤が挙げられる。
【0025】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~4質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部である。非イオン性シラン化合物の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0026】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非金属原子からなるイオン性化合物を含むと、該重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、静電相互作用によって重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力が発現し、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が膜平面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0027】
非金属原子からなるイオン性化合物としては、たとえば、オニウム塩(より具体的には、窒素原子がプラスの電荷を有する第四級アンモニウム塩、第三級スルホニウム塩、およびリン原子がプラスの電荷を有する第四級ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらのオニウム塩のうち、重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から第四級オニウム塩が好ましく、入手性および量産性を向上させる観点から、第四級ホスホニウム塩または第四級アンモニウム塩がより好ましい。オニウム塩は分子内に2つ以上の第四級オニウム塩部位を有していてもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。
【0028】
非金属原子からなるイオン性化合物の分子量は、100以上10,000以下であることが好ましい。分子量が上記範囲内であると、重合性液晶組成物の塗布性を確保したまま重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させやすい。非金属原子からなるイオン性化合物の分子量は、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0029】
非金属原子からなるイオン性化合物のカチオン成分としては、例えば、無機のカチオンおよび有機のカチオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のカチオンが好ましい。有機のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオンおよびホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0030】
非金属原子からなるイオン性化合物は一般的に対アニオンを有する。上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、例えば、無機のアニオンおよび有機のアニオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のアニオンが好ましい。なお、カチオンとアニオンとは、必ずしも一対一の対応となっている必要があるわけではない。
【0031】
アニオン成分としては、具体的に例えば、以下のようなものが挙げられる。
クロライドアニオン〔Cl-〕、
ブロマイドアニオン〔Br-〕、
ヨーダイドアニオン〔I-〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4
-〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7
-〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF4
-〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6
-〕、
パークロレートアニオン〔ClO4
-〕、
ナイトレートアニオン〔NO3
-〕、
アセテートアニオン〔CH3COO-〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、
フルオロスルホネートアニオン〔FSO3
-〕、
メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3
-〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3
-〕、
p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CH3C6H4SO3
-〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO2)2N-〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6
-〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6
-〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6
-〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6
-〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH3)2POO-〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n
-〕(たとえば、nは1~3の整数を表す)、
ジシアナミドアニオン〔(CN)2N-〕、
チオシアンアニオン〔SCN-〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3
-〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、および
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン
〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕。
【0032】
非金属原子からなるイオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0033】
(ピリジニウム塩)
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-オクチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、および
N-オクチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート。
【0034】
(イミダゾリウム塩)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネートなど。
【0035】
(ピロリジニウム塩)
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム p-トルエンスルホネートなど。
【0036】
(アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
トリオクチルメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-{(3-トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
N-[2-{3-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノ)-1-オキソプロポキシ}エチル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0037】
(ホスホニウム塩)
トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルホスホニウムビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
1,1,1-トリブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
これらのイオン性化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩からなるイオン性化合物が好ましい。
【0038】
重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から、非金属原子からなるイオン性化合物はカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していることが好ましい。非金属原子からなるイオン性化合物がカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していると、イオン性化合物を垂直配向液晶硬化膜の表面に偏析させやすくなる。中でも、構成する元素が全て非金属元素であるイオン性化合物として、下記イオン性化合物(i)~(iii)等が好ましい。
【0039】
(イオン性化合物(i))
【化1】
(イオン性化合物(ii))
【化2】
(イオン性化合物(iii))
【化3】
【0040】
例えば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有する界面活性剤を用いて基材表面を処理し、液晶の配向性を向上させる方法(例えば、「液晶便覧」の第2章 液晶の配向と物性(丸善株式会社発行)等を参照)を応用して重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させることができる。すなわち、ある程度鎖長の長いアルキル基を有するイオン性化合物を用いて基材表面を処理することにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0041】
具体的には、非金属原子からなるイオン性化合物が下記式(3)を満たすことが好ましい。
5<M<16 (3)
式(3)中、Mは下記式(4)で表される。
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数) (4)
非金属原子からなるイオン性化合物が上記(3)を満たすことにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0042】
なお、非金属原子からなるイオン性化合物の分子中にプラスの電荷を有する原子が2つ以上存在する場合、プラスの電荷を有する原子を2つ以上有する置換基については、基点として考えるプラスの電荷を有する原子から数えて最も近い別のプラスの電荷を有する原子までの共有結合数を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。また、非金属原子からなるイオン性化合物が繰返し単位を2つ以上有するオリゴマーやポリマーである場合には、構成単位を一分子として考え、上記Mを算出する。プラスの電荷を有する原子が環構造に組み込まれている場合、環構造を経由して同プラスの電荷を有する原子に至るまでの共有結合数、または環構造に結合している置換基の末端までの共有結合数のうち、共有結合数が多い方を上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。
【0043】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非金属原子からなるイオン性化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。非金属原子からなるイオン性化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0044】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非イオン性シラン化合物および非金属原子からなるイオン性化合物の両方を含むことにより、垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物から形成された乾燥塗膜においては、非金属原子からなるイオン性化合物に由来する静電相互作用と、非イオン性シラン化合物に由来する表面張力低下効果により、重合性液晶化合物の垂直配向がより促進されやすくなる。これにより、重合性液晶化合物がより精度よく垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0045】
垂直配向液晶硬化膜は、上記垂直配向促進剤および少なくとも1種の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物であり、好ましくは、少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜の面内方向に対して垂直に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜である。本発明において、垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物を意味し、特に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する液晶化合物が好ましい。重合性液晶化合物は特に限定されず、例えば位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。
【0046】
重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がさらに好ましい。垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とが水平配向膜を介して積層されている場合、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とがともに少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物の硬化物である場合、(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成されてなる水平光配向膜を介して、連続形成される垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性が向上しやすい。
【0047】
重合性液晶化合物が示す液晶性はサーモトロピック性液晶であってもよいし、リオトロピック性液晶であってもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物は単独または二種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
重合性液晶化合物としては、一般に正波長分散性を示す重合性液晶化合物と逆波長分散性を示す重合性液晶化合物とが挙げられ、どちらか一方の種類の重合性液晶化合物のみを使用することもできるし、両方の種類の重合性液晶化合物を混合して用いることもできる。垂直配向液晶硬化膜を表示装置に適用した際の黒表示時の斜方反射色相の抑制効果が大きい観点においては、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を含むことが好ましい。
【0049】
逆波長分散性を示す重合性液晶化合物としては、下記(A)~(D)の特徴を有する化合物であることが好ましい。
(A)ネマチック相またはスメクチック相を形成し得る化合物である。
(B)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(C)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(D)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、式(iii)
0≦〔D(πa)/D(πb)〕<1 (iii)
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。また、上記記載のように長軸およびそれに対して交差方向上にπ電子を有する重合性液晶化合物は、例えばT字構造となる。
【0050】
上記(A)~(D)の特徴において、長軸方向(a)およびπ電子数Nは以下のように定義される。
・長軸方向(a)は、例えば棒状構造を有する化合物であれば、その棒状の長軸方向である。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、長軸上のπ電子およびこれと共役するπ電子の合計数であり、例えば長軸方向(a)上に存在する環であって、ヒュッケル則を満たす環に存在するπ電子の数が含まれる。
・交差方向(b)に存在するπ電子数N(πb)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
上記を満たす重合性液晶化合物は、長軸方向にメソゲン構造を有している。このメソゲン構造によって、液晶相(ネマチック相、スメクチック相)を発現する。
【0051】
上記(A)~(D)を満たす重合性液晶化合物を、液晶硬化膜を形成する膜(層)上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相やスメクチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物が配向して形成されたネマチック相またはスメクチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。このような重合性液晶化合物を膜状とし、ネマチック相またはスメクチック相の状態で重合させると、長軸方向(a)に配向した状態で重合した重合体からなる重合体膜を形成することができる。この重合体膜は、長軸方向(a)上のπ電子と交差方向(b)上のπ電子により紫外線を吸収する。ここで、交差方向(b)上のπ電子により吸収される紫外線の吸収極大波長をλbmaxとする。λbmaxは通常300nm~400nmである。π電子の密度は、上記式(iii)を満足していて、交差方向(b)のπ電子密度が長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きいので、交差方向(b)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収が、長軸方向(a)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収よりも大きな重合体膜となる。その比(直線偏光紫外線の交差方向(b)の吸光度/長軸方向(a)の吸光度の比)は、例えば1.0超、好ましくは1.2以上、通常30以下であり、例えば10以下である。
【0052】
上記特性を有する重合性液晶化合物は、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。具体的には、例えば、下記式(X)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0053】
式(X)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を有する二価の基を表す。ここでいう芳香族基とは、該環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをさし、例えば後述する(Ar-1)~(Ar-23)で例示されるようなAr基を、二価の連結基を介して2個以上有していてもよい。ここでnは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。芳香族基が1つである場合、二価の基Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基であってもよい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-などの二価の結合基で結合していてもよい。
G1およびG2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。
L1、L2、B1およびB2はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B1およびB2、G1およびG2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E1およびE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。また、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-SiH2-、-C(=O)-で置換されていてもよい。
P1およびP2は互いに独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0054】
G1およびG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するG1およびG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1またはL2に結合するG1およびG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0055】
L1およびL2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CRc=CRd-、または-C≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、RcおよびRdは炭素数1~4のアルキル基または水素原子を表す。L1およびL2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa4-1-、または-OCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。L1およびL2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、または-OCO-である。
【0056】
B1およびB2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、またはRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表す。B1およびB2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、またはOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。B1およびB2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、または-OCOCH2CH2-である。
【0057】
kおよびlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0058】
P1またはP2で表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0059】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0060】
式(X)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0061】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が挙げられる。
【0062】
【0063】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。また、Z0、Z1およびZ2は、重合性基を含んでいてもよい。
【0064】
Q1およびQ2は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-または-O-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0065】
J1、およびJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0066】
Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0067】
W1およびW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0068】
Y1、Y2およびY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0069】
Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0070】
Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1およびZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。また、Z0、Z1およびZ2は重合性基を含んでいてもよい。
【0071】
Q1およびQ2は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0072】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0073】
式(Ar-16)~(Ar-23)において、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0074】
また、本発明において垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物として、例えば、下記式(Y)で表される基を含む化合物(以下、「重合性液晶化合物(Y)」ともいう)を用いてもよい。重合性液晶化合物(Y)は一般に正波長分散性を示す傾向にある。重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (Y)
[式(Y)中、P11は、重合性基を表わす。
A11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基および該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
B12およびB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-または単結合を表わす。
E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0076】
A11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3~18の範囲であることが好ましく、5~12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0077】
E11としては、直鎖状の炭素数1~12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、へキサン-1,6-ジイル基、へプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基およびドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~12の直鎖状アルカンジイル基;-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-および-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-等が挙げられる。
B11としては、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-が好ましく、中でも、-CO-O-がより好ましい。
B12およびB13としては、それぞれ独立に、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-が好ましく、中でも、-O-または-O-C(=O)-O-がより好ましい。
【0078】
P11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P-11)~式(P-15)で表わされる基であることが好ましい。
【化6】
[式(P-11)~(P-15)中、
R
17~R
21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0079】
式(P-11)~式(P-15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P-16)~式(P-20)で表わされる基が挙げられる。
【化7】
【0080】
P11は、式(P-14)~式(P-20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p-スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P11-B11-で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0081】
重合性液晶化合物(Y)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、
A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SO3H)、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0082】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報および特開2011-207765号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0083】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、下記式(I-1)~式(I-4)、式(II-1)~式(II-4)、式(III-1)~式(III-26)、式(IV-1)~式(IV-26)、式(V-1)~式(V-2)および式(VI-1)~式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2~12の整数を表わす。これらの重合性液晶化合物(Y)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。本発明において垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物として、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いる場合、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、該重合性液晶化合物は高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0094】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であり、垂直配向液晶硬化膜の耐熱性向上の観点から、2つ以上の重合性基を有する液晶化合物であることが好ましい。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられるが、中でも製造が容易であること、垂直配向液晶硬化膜の耐熱性が向上しやすいこと、垂直配向液晶硬化膜と(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成される水平配向膜の密着性、さらには該水平配向膜を介して水平配向液晶硬化膜との密着性を調整、向上させやすいことから、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0095】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(Z)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(Z)」ということがある)が挙げられる。
U1z-V1z-W1z-(X1z-Y1z-)nz-X2z-W2z-V2z-U2z (Z)
[式(Z)中、X1zおよびX2zは、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1zおよびX2zのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1zは、単結合または二価の連結基である。
nzは1~3であり、nzが2以上の場合、複数のX1zは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2zは、複数のX1zのうちのいずれかまたは全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nzが2以上の場合、複数のY1zは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnzは2以上が好ましい。
U1zは、水素原子または(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
U2zは、重合性基を表わす。
W1zおよびW2zは、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
V1zおよびV2zは、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。]
【0096】
重合性液晶化合物(Z)において、X1zおよびX2zは、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1zおよびX2zのうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0097】
また、重合性液晶化合物(Z)は、式(Z)中、式(Z1):
-(X1z-Y1z-)nz-X2z- (Z1)
〔式中、X1z、Y1z、X2zおよびnzはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(Z1)と称する。〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(Z1)が非対称構造である重合性液晶化合物(Z)としては、例えば、nzが1であり、1つのX1zとX2zとが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(Z)が挙げられる。また、nzが2であり、2つのY1zが互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1zが互いに同じ構造であり、1つのX2zはこれら2つのX1zとは異なる構造である重合性液晶化合物(Z)、2つのX1zのうちのW1zに結合するX1zが、他方のX1zおよびX2zとは異なる構造であり、他方のX1zとX2zとは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(Z)も挙げられる。さらに、nzが3であり、3つのY1zが互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1zおよび1つのX2zのうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(Z)が挙げられる。
【0098】
Y1zは、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRaz=CRbz-、-C≡C-、-CRaz=N-または-CO-NRaz-が好ましい。RazおよびRbzは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1zは、-CH2CH2-、-COO-または単結合であることがより好ましく、複数のY1zが存在する場合、X2zと結合するY1zは、-CH2CH2-またはCH2O-であることがより好ましい。X1zおよびX2zが全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1zが存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1zが存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0099】
U2zは、前述の重合性基である。U1zは、水素原子または重合性基である。製造が容易であること、垂直配向液晶硬化膜の耐熱性が向上しやすいこと、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性を調整、向上させやすいことから、重合性基は(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。重合性基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0100】
V1zおよびV2zで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1zおよびV2zは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0101】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0102】
W1zおよびW2zは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-またはOCOO-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
【0103】
重合性液晶化合物(Z)は、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には以下(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)、(A-b)または(A-c)の部分構造を有することがより好ましい。なお、下記(A-a)~(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0104】
【0105】
重合性液晶化合物(Z)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(Z)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(Z)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0112】
重合性液晶化合物(Z)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0113】
本発明において、垂直配向液晶硬化膜は波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有することが好ましく、垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物は、波長300~400nmの間に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物であることが好ましい。重合性液晶組成物に光重合開始剤が含まれる場合、長期保管時に重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化が進行するおそれがある。しかし、重合性液晶化合物の極大吸収波長が300~400nmであれば保管中に紫外光が曝露されても、光重合開始剤からの反応活性種の発生および該反応活性種による重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化の進行を有効に抑制できる。従って、重合性液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、得られる液晶硬化膜の配向性および膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばクロロホルム等が挙げられる。
【0114】
垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とが粘接着剤層で貼合された積層体においては、積層体の薄型化や屈曲性の向上等の観点から、感圧式粘接着剤と比較してエネルギー線硬化型の粘接着剤が有利であると考えられる。しかしながら、垂直配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物から形成されている場合、該垂直配向液晶硬化膜を含む積層体の形成においては、垂直配向液晶硬化膜が上記波長域に吸収を示すため、上記波長域の光(紫外光)により硬化する紫外線硬化型接着剤を利用して、垂直配向液晶硬化膜を水平配向液晶硬化膜等の他の層と高い密着性をもって積層させることは困難である。本発明は、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを粘接着剤層を介することなく連続的に形成することができるため、積層体の薄型化において有利であるだけでなく、密着性に関する上記問題を生じることなく、300~400nmの波長域に極大吸収を有することが多い、いわゆる逆波長分散性を示すような重合性液晶化合物を積層体の構成に用いることができるため、高い光学特性を有する薄型の積層体を得ることができる点においても有利である。
【0115】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本発明において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0116】
垂直配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、垂直配向促進剤および重合性液晶化合物に加えて、溶媒、重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、通常、溶媒に溶解した状態で基材等に塗布されるため、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒および芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
【0118】
重合性液晶組成物中の溶媒の含有量は、重合性液晶組成物100質量部に対して、好ましくは50~98質量部、より好ましくは70~95重量部である。従って、重合性液晶組成物100質量部に占める固形分は、2~50質量部が好ましい。固形分が50質量部以下であると、重合性液晶組成物の粘度が低くなることから、膜の厚みが略均一になり、ムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。
【0119】
重合開始剤は、熱または光の寄与によって反応活性種を生成し、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。反応活性種としては、ラジカルまたはカチオンまたはアニオン等の活性種が挙げられる。中でも反応制御が容易であるという観点から、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0120】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0121】
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、極大吸収波長が300nm~400nmであると好ましく、300nm~380nmであるとより好ましく、中でも、α-アセトフェノン系重合開始剤、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0122】
α-アセトフェノン化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、より好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)およびセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
【0123】
オキシム系光重合開始剤は、光が照射されることによってフェニルラジカルやメチルラジカル等のラジカルを生成させる。このラジカルにより重合性液晶化合物の重合が好適に進行するが、中でもメチルラジカルを発生させるオキシム系光重合開始剤は重合反応の開始効率が高い点で好ましい。また、重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、オキシム構造を含むトリアジン化合物やカルバゾール化合物が好ましく、感度の観点からはオキシムエステル構造を含むカルバゾール化合物がより好ましい。オキシム構造を含むカルバゾール化合物としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュアOXE-03(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0124】
光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。上記範囲内であれば、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向を乱し難い。
【0125】
レベリング剤とは、重合性液晶組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる塗膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、シリコーン系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。レベリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF-4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC-72、同FC-40、同FC-43、同FC-3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R-08、同R-30、同R-90、同F-410、同F-411、同F-443、同F-445、同F-470、同F-477、同F-479、同F-482、同F-483、同F-556(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S-381、同S-382、同S-383、同S-393、同SC-101、同SC-105、KH-40、SA-100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353およびBYK-361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。レベリング剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0126】
レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させることが容易であり、かつ得られる液晶硬化膜がより平滑となる傾向にあるため好ましい。
【0127】
酸化防止剤を配合することにより、重合性液晶化合物の重合反応をコントロールすることができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、ニトロソ系酸化防止剤から選ばれる一次酸化防止剤であってもよいし、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選ばれる二次酸化防止剤であってもよい。重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合するためには、酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。酸化防止剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0128】
また、光増感剤を用いることにより、光重合開始剤を高感度化することができる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0129】
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、垂直配向促進剤および重合性液晶化合物と、溶媒や光重合開始剤などの垂直配向促進剤および重合性液晶化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0130】
本発明において、垂直配向液晶硬化膜は下記式(2)を満たすことが好ましい。
RthC(450)/RthC(550)≦1 (2)
〔式(2)中、RthC(450)は波長450nmにおける垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値を表し、RthC(550)は波長550nmにおける垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値を表す。〕
上記式(2)を満たすことにより、該垂直配向液晶硬化膜を含む積層体において短波長側で楕円率の低下を抑制することができ、垂直配向液晶硬化膜を表示装置に適用した際の黒表示時の斜方反射色相を向上させることができる。垂直配向液晶硬化膜におけるRthC(450)/RthC(550)の値は、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.92以下であり、特に好ましくは0.9以下であり、また、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.8以上である。
【0131】
垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値RthC(λ)は、垂直配向液晶硬化膜の厚さdCによって、調整することができる。面内位相差値は、下記式:
RthC(λ)=((nxC(λ)+nyC(λ))/2-nzC(λ))×dC
(ここで、式中nxC(λ)は波長λnmにおける垂直配向液晶硬化膜の面内主屈折率、nyC(λ)は波長λnmにおける、nxC(λ)に対して面内で直交する方向の屈折率、nzC(λ)は波長λnmにおける垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の屈折率を示し、nxC(λ)=nyC(λ)である場合には、nxC(λ)はフィルム面内で任意の方向の屈折率とすることができ、dCは垂直配向液晶硬化膜の膜厚を示す)
によって決定されることから、所望の膜厚方向の位相差値RthC(λ)を得るためには、3次元屈折率と膜厚dCとを調整すればよい。なお、3次元屈折率は、前述した重合性液晶化合物の分子構造並びに配向状態に依存する。
【0132】
また、本発明において垂直配向液晶硬化膜は、液晶硬化膜の垂直方向に高い秩序度をもって配向していることが好ましい。垂直配向液晶硬化膜において、重合性液晶化合物が高い秩序度をもって配向していることにより、該垂直配向液晶硬化膜を含む積層体を有機EL表示装置に組み込んだ場合に、黒表示時の斜方反射色相変化の抑制効果に優れる傾向にある。垂直配向液晶硬化膜における重合性液晶化合物の高い配向状態を表し、黒表示時の斜方光学補償効果の程度を示す一指標として、垂直配向液晶硬化膜は、下記式(5)を満たすことが好ましい。
-120nm≦RthC(550)≦-30nm (5)
式(5)中、RthC(550)は上記と同じ意味である。黒表示時の斜方反射色相をさらに向上させ得る観点から、垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値RthC(550)は、より好ましくは-100nm以上、さらに好ましくは-90nm以上、特に好ましくは-80nm以上であり、また、より好ましくは-40nm以下、さらに好ましくは-50nm以下である。
【0133】
〔水平配向液晶硬化膜〕
本発明の積層体を構成する水平配向液晶硬化膜は、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化した重合性液晶組成物の硬化物であり、好ましくは、少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物が該液晶硬化膜の面内方向に対して水平に配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜である。本発明において、水平配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物を意味し、特に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する液晶化合物が好ましい。水平配向液晶硬化膜が(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成されてなる水平光配向膜を介して垂直配向液晶硬化膜に積層されている場合、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とがともに少なくとも1つのラジカル重合性基を有する重合性液晶化合物の硬化物であると、前記水平配向膜を介して連続形成される垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性が向上しやすい。特に、水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜との密着性がより高まる傾向にあるため、水平配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物と垂直配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物とがともに水平配向膜を形成するポリマーが有する重合性基と近似するまたは同じ重合性基を有することが好ましく、水平配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜とがともに(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物から構成されることがより好ましい。
【0134】
水平配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物は特に限定されず、例えば位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。具体的には、垂直配向液晶硬化膜の形成に用い得る重合性液晶化合物として例示した、式(X)、(Y)または(Z)で表される化合物を用いることができ、中でも、いわゆる逆波長分散性を示す重合性液晶化合物が好ましく、例えば、上記式(X)で表される化合物を好適に用いることができる。垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0135】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。
【0136】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物に加えて、溶媒、重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分としては、垂直配向液晶硬化膜で用い得る成分として先に例示したものと同様のものが挙げられ、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と、溶媒や光重合開始剤などの重合性液晶化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0138】
また、本発明においては、垂直配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有する場合に有利である理由と同様の理由により、水平配向液晶硬化膜が波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有することが好ましい。本発明の好適な一態様においては、垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜がともに波長300~400nmの間に少なくとも1つの極大吸収を有する。
【0139】
本発明において、水平配向液晶硬化膜は下記式(1)を満たすことが好ましい。
ReA(450)/ReA(550)≦1 (1)
〔式(1)中、ReA(λ)は波長λnmにおける水平配向液晶硬化膜の面内位相差値を表し、ReA(λ)=(nxA(λ)-nyA(λ))×dAである(式中、nxA(λ)は水平配向液晶硬化膜面内における波長λnmでの主屈折率を表し、nyA(λ)はnxAと同一面内でnxAの方向に対して直交する方向の波長λnmでの屈折率を表し、dAは水平配向液晶硬化膜の膜厚を示す)〕
【0140】
水平配向液晶硬化膜が式(1)を満たす場合、当該水平配向液晶硬化膜は、短波長での面内位相差値が長波長での面内位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。このような水平配向液晶硬化膜を上記垂直配向液晶硬化膜と組み合わせることにより、有機EL表示装置に組み込んだ場合の黒表示時の正面および斜方反射色相の向上効果に優れる積層体を得ることができる。逆波長分散性が向上し、水平配向液晶硬化膜の正面方向の反射色相の向上効果をより高めることができるため、ReA(450)/ReA(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.92以下である。
【0141】
上記面内位相差値は、水平配向液晶硬化膜の厚みdAによって調整することができる。面内位相差値は、上記式ReA(λ)=(nxA(λ)-nyA(λ))×dAによって決定されることから、所望の面内位相差値(ReA(λ):波長λ(nm)における水平配向液晶硬化膜の面内位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dAとを調整すればよい。
【0142】
また、水平配向液晶硬化膜が下記式(6)を満たすことが好ましい。
120nm≦ReA(550)≦170nm (6)
〔式(6)中、ReA(λ)は上記と同じ意味である〕
水平配向液晶硬化膜の面内位相差ReA(550)が式(6)の範囲内であると、該水平配向液晶硬化膜を含む積層体(楕円偏光板)を有機EL表示装置に適用した場合の黒表示時の正面反射色相を向上させる効果が顕著になる。面内位相差値のさらに好ましい範囲は、130nm≦ReA(550)≦150nmである。
【0143】
〔水平配向膜〕
本発明の積層体を構成する水平配向膜は、(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成されてなる光配向膜である。水平配向膜は、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して水平方向に配向させる水平配向規制力を有するものである。配向規制力は、配向膜の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている光配向膜では、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。本発明においては、基材上に垂直配向液晶硬化膜を形成し、更にその上に水平配向膜を形成し、その上に水平配向液晶硬化膜を形成するが、この場合水平配向液晶硬化膜の配向性が悪化しやすい傾向にある。理由は定かではないが、垂直配向液晶硬化膜に含まれるレベリング剤などの添加剤により表面エネルギーが低下し、上層に水平配向液晶硬化膜を形成する際に液晶化合物の配向性が損なわれやすいものと推定される。特に、垂直配向膜無しで垂直配向液晶硬化膜を形成する場合には配向促進剤を更に含むため、よりその影響が顕著となる。このため、水平配向膜の種類や厚み等によって垂直配向液晶硬化膜形成時の液晶配向性が影響を受けやすい。
【0144】
水平配向膜が垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物と近似するまたは同じ重合性基を有する場合、該水平配向膜を介して垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性がより高まる傾向にあるため、水平配向膜が(メタ)アクリロイル基を有するポリマーから形成され、垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜がともに(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物から形成されてなることが好ましい。
【0145】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶媒とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる点でも有利である。
【0146】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0147】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0148】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、アゾ基、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、アゾ基またはシンナモイル基を有するポリマーが好ましく、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが、水平配向膜と垂直配向液晶硬化膜および水平配向液晶硬化膜との密着性向上の観点から、特に好ましい。
【0149】
光配向膜形成用組成物に含まれ得る溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0150】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0151】
水平配向膜(光配向膜)の厚みは、通常10~5000nmであり、好ましくは100~1000nm、より好ましくは100~500nm、さらに好ましくは100~300nm、特に好ましくは100~250nmである。配向膜の厚みが上記範囲内であると、水平配向規制力を十分に有し、また、積層体における該配向膜での凝集破壊の発生を生じ難い。
【0152】
〔基材〕
本発明の積層体を構成する基材としては、例えば、ガラス基材やフィルム基材等が挙げられるが、加工性の観点から樹脂フィルム基材が好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して基材とすることができる。基材表面には、シリコーン処理のような離型処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0153】
基材として市販の製品を用いてもよい。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、フジタックフィルムのような富士写真フィルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、および「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材などが挙げられる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、および「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」および「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
【0154】
本発明において、基材は本発明の積層体から最終的に剥離可能なものであることが好ましく、例えば、基材を剥離した後の積層体の垂直配向液晶硬化膜を、粘接着剤層を介して偏光フィルムと貼合することにより楕円偏光板を得ることができる。
【0155】
積層体の薄型化、基材の剥離容易性、基材のハンドリング性等の観点から、基材の厚みは、通常、5~300μmであり、好ましくは10~150μmである。
【0156】
本発明の積層体は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜以外の層を含んでいてもよい。そのような他の層としては、例えば、基材の耐溶剤性を向上させたり、液晶硬化膜の機械的強度を高めたり、補強したりすることを目的とした硬化樹脂層、ハードコート層、プライマー層などが挙げられる。例えば、基材と垂直配向液晶硬化膜とが垂直配向規制力を有しない層を介して積層されていてもよく、垂直配向液晶硬化膜と水平配向膜とが垂直配向規制力を有しない層(粘接着剤層を除く)を介して積層されていてもよい。
【0157】
前記硬化樹脂層は、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成され得る。硬化樹脂層を設けることにより、基材の耐溶剤性を向上させたり、硬化樹脂層に隣接して形成される垂直配向液晶硬化膜が薄膜であっても硬化樹脂層が保護層または補強層として垂直配向液晶硬化膜の強度を十分に補ったりすることができる。
【0158】
本発明の積層体が上記硬化樹脂層のような他の層を含む場合、かかる他の層の厚みは、設けられる層の目的や種類によって適宜決定すればよいが、好ましくは0.1~10.0μm、より好ましくは0.3~5.0μmである。
【0159】
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体は、例えば、
重合性液晶化合物を含む垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から垂直配向液晶硬化膜を形成する工程(以下、「垂直配向液晶硬化膜形成工程」ともいう)、
水平配向膜形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向膜を形成する工程(以下、「水平配向膜形成工程」ともいう)、および、
重合性液晶化合物を含む水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜から水平配向液晶硬化膜を形成する工程(以下、「水平配向液晶硬化膜形成工程」ともいう)
をこの順に含む、製造方法により製造することができる。本発明の積層体において垂直配向液晶硬化膜と水平配向膜と水平配向液晶硬化膜とが隣接して存在する場合、垂直配向液晶硬化膜形成工程と水平配向膜形成工程と垂直配向液晶硬化膜形成工程とがこの順に連続して行われることが好ましい。
【0160】
垂直配向液晶硬化膜形成工程において、垂直配向液晶硬化膜は、例えば、
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を基材上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
【0161】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、基材上や基材上に設けられた垂直配向規制力を有していない硬化樹脂層等の他の層上などに垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。
【0162】
重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0163】
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。この際、重合性液晶組成物から得られた塗膜を加熱することにより、塗膜から溶媒を乾燥除去させるとともに、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して垂直方向に配向させることができる。塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等の材質などを考慮して、適宜決定し得るが、重合性液晶化合物を液晶相状態へ相転移させるために液晶相転移温度以上の温度であることが通常必要である。重合性液晶組成物に含まれる溶媒を除去しながら、重合性液晶化合物を垂直配向状態とするため、例えば、前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の液晶相転移温度(スメクチック相転移温度またはネマチック相転移温度)程度以上の温度まで加熱することができる。
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。また、重合性液晶化合物として2種以上を組み合わせて用いる場合、上記相転移温度は、重合性液晶組成物を構成する全重合性液晶化合物を重合性液晶組成物における組成と同じ比率で混合した重合性液晶化合物の混合物を用いて、1種の重合性液晶化合物を用いる場合と同様にして測定される温度を意味する。なお、一般に前記重合性液晶組成物中における重合性液晶化合物の液晶相転移温度は、重合性液晶化合物単体としての液晶相転移温度よりも下がる場合もあることが知られている。
【0164】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、15秒~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0165】
塗膜からの溶媒の除去は、重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱と同時に行ってもよいし、別途で行ってもよいが、生産性向上の観点から同時に行うことが好ましい。重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱を行う前に、重合性液晶組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶媒を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。かかる予備乾燥工程における乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得る。
【0166】
次いで、得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物の垂直配向状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、垂直配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、熱重合法や光重合法が挙げられるが、重合反応を制御しやすい観点から光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、比較的耐熱性の低い基材を用いたとしても、適切に垂直配向液晶硬化膜を形成できる。また、光照射時の熱による不具合(基材の熱による変形等)が発生しない範囲で重合温度を高くすることにより重合反応を促進することも可能である。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた硬化膜を得ることもできる。
【0167】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0168】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0169】
垂直配向液晶硬化膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.2~3μm、より好ましくは0.2~2μmである。垂直配向液晶硬化膜が正波長分散性の場合には、0.2~1μmがさらに好ましく、逆波長分散性の場合には、0.4~2μmがさらに好ましい。
【0170】
水平配向膜形成工程において、光配向膜は、例えば、光配向膜形成用組成物を垂直配向液晶硬化膜上に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。
【0171】
光配向膜形成用組成物を垂直配向液晶硬化膜上に塗布する方法としては、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0172】
偏光を照射するには、光配向膜形成用組成物の塗膜から溶媒を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、垂直配向液晶硬化膜側(基材側)から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
なお、偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0173】
水平配向液晶硬化膜形成工程において、水平配向液晶硬化膜は、例えば、
水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を水平配向膜上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、水平配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により作製することができる。
【0174】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。重合性液晶組成物の塗布方法としては、垂直配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0175】
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。生産性の面からは加熱乾燥が好ましく、その場合の加熱温度は、溶媒を除去でき、かつ、重合性液晶化合物の相転移温度以上であることが好ましい。かかる工程における手順や条件は、垂直配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得るのと同様のものが挙げられる。
【0176】
得られた乾燥塗膜に活性エネルギー線(より具体的には、紫外線等)を照射し、重合性液晶化合物が塗膜平面に対して水平方向に配向した状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、水平配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、垂直配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0177】
水平配向液晶硬化膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.2~4μmであり、さらに好ましくは0.2~3μmである。
【0178】
本発明において垂直配向液晶硬化膜は垂直配向促進剤を含む重合性液晶組成物から形成され、これにより垂直配向膜を用いなくても配向欠陥のないまたは少ない垂直配向液晶硬化膜を得ることができる。このような垂直配向液晶硬化膜を水平配向液晶硬化膜と組み合わせて含む本発明の積層体は光学特性に優れる傾向にあり、特に有機EL表示装置に適用した場合に黒表示時の正面および斜方反射色相変化の抑制効果に優れる。また、垂直配向膜を形成する工程を必要としないため、生産効率や生産コストの面においても有利である。
【0179】
〔楕円偏光板〕
本発明は、本発明の積層体と偏光フィルムとを含む楕円偏光板を包含する。
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムであり、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0180】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0181】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0182】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0183】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0184】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0185】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0186】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0187】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0188】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0189】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0190】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0191】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15重量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20質量%を上回ると、偏光子の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0192】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0193】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面または両面に保護フィルムを有する。当該保護フィルムとしては、垂直配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同一のものが挙げられる。
【0194】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0195】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0196】
このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、例えば接着剤層を介して透明保護フィルムを積層していてもよい。透明保護フィルムとしては、垂直配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同様の透明フィルムを用いることができる。
【0197】
本発明の楕円偏光板は、本発明の積層体と、または本発明の積層体から基材を取り除いた積層体と偏光フィルムとを含んで構成されるものであり、例えば、本発明の積層体と偏光フィルムとを接着剤層等を介して積層させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。また、本発明の積層体から基材を取り除いた積層体と偏光フィルムとを貼合させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。
【0198】
本発明の一実施態様においては、本発明の積層体と偏光フィルムとが積層される場合、積層体を構成する水平配向液晶硬化膜の遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°となるように積層することが好ましい。
【0199】
本発明の楕円偏光板は、従来の一般的な楕円偏光板、または偏光フィルムおよび位相差フィルムが備えるような構成を有していてもよい。そのような構成としては、例えば、楕円偏光板を有機EL等の表示素子に貼合するための粘着剤層(シート)、偏光フィルムや液晶硬化膜の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム等が挙げられる。
【0200】
本発明の積層体および楕円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本発明の楕円偏光板は、その効果が顕著に発揮されやすいことから有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に好適に用いることができ、本発明の積層体は液晶表示装置およびタッチパネル表示装置に好適に用いることができる。本発明の積層体または楕円偏光板を用いることにより、表示装置の薄型化を実現しやすく、光学特性に優れ、良好な画像表示特性を発現することのできる表示装置を得ることが可能となる。
【実施例】
【0201】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
【0202】
1.実施例1
(1)水平配向膜形成用組成物の調製
下記構造の光配向性材料5質量部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95質量部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化23】
【0203】
(2)重合性液晶化合物の調製
下記分子構造を有する重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を、それぞれ調製した。重合性液晶化合物(X1)は、特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造した。また、重合性液晶化合物(X2)は、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて製造した。
【0204】
【0205】
【0206】
テトラヒドロフラン50mLに重合性液晶化合物(X1)1mgを溶解させて溶液を得た。測定用試料として得られた溶液を光路長1cmの測定用セルに入れ、測定用試料を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルから極大吸収度となる波長を読み取ったところ、波長300~400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは350nmであった。
【0207】
(3)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
下記式(LC242)に示す重合性液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)に対して、レベリング剤(DIC社製「F-556」)0.1質量部と、重合開始剤Irg369 3質量部とを添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンを添加して、これらを混合することにより水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0208】
LC242:PaliocolorLC242(BASF社登録商標)
【化26】
【0209】
(4)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
液晶化合物(X2)100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)2.0質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0210】
【0211】
(5)基材の準備
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM-403 東亞合成株式会社製多官能アクリレート)50質量部、アクリレート樹脂(エベクリル4858 ダイセルユーシービー株式会社製)50質量部、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907;チバ スペシャルティケミカルズ社製)3質量部をイソプロパノール250質量部に溶解した溶液を調製し、アクリレート化合物を含んでなる硬化樹脂層形成用組成物を得た。
続いて、コニカミノルタ株式会社製のTACフィルム(KC4UY)上に、硬化樹脂層形成用組成物をバーコーターで塗布し、50℃で1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:400mJ/cm2)することにより、硬化樹脂層を形成した。得られた硬化樹脂層の膜厚を接触式膜厚計で測定したところ、2.0μmであった。この時、王子計測機器株式会社製「KOBRA-WPR」を用いて、TACフィルムと硬化樹脂層の積層体の位相差値Re550を測定した後、TACフィルム由来の位相差値Re550を差し引いたところ、位相差値は3nm以下であり光学的に等方であることを確認した。
【0212】
(6)垂直配向液晶硬化膜の作製
上記の通り作製した基材上の硬化樹脂層上に、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、120℃に加熱したままの状態で高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、垂直配向液晶硬化膜を形成し、基材、硬化樹脂層および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、0.6μmであった。
【0213】
<垂直配向液晶硬化膜の位相差値の測定>
前記手順にて作製した基材、硬化樹脂層および垂直配向液晶硬化膜からなる積層体の垂直配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、リンテック社製25μm感圧式粘着剤を介してガラスに貼合後、TACフィルムおよび硬化樹脂層を剥離した。得られたガラス、粘着剤、垂直配向液晶硬化膜からなる積層体について、王子計測機器株式会社製KOBRA-WPRを使用して光学特性測定用サンプルへの光の入射角を変化させて正面位相差値、および進相軸中心に40°傾斜させたときの位相差値を測定した。
各波長における平均屈折率は日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を用いて測定した。また、膜厚は浜松ホトニクス株式会社製のOptical NanoGauge膜厚計C12562-01を使用して測定した。前述の正面位相差値、進相軸中心に40°傾斜させたときの位相差値、平均屈折率、膜厚の値から、王子計測機器技術資料(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/reference.html)を参考に3次元屈折率を算出した。得られた3次元屈折率から、以下の式に従って垂直配向液晶硬化膜の光学特性を計算し、Rth(450)、Rth(550)、αth=Rth(450)/Rth(550)の値を算出した。結果を表1に示す。
RthC(λ)=((nxC(λ)+nyC(λ))/2-nzC(λ))×dC
なお、RthC(λ)は波長λnmにおける垂直配向液晶硬化膜の膜厚方向の位相差値を表す。また、nxC(λ)は波長λnmにおける垂直配向液晶硬化膜の面内主屈折率、nyC(λ)は波長λnmにおける、nxC(λ)に対して面内で直交する方向の屈折率、nzC(λ)は波長λnmにおける垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の屈折率を示し、nxC(λ)=nyC(λ)である場合には、nxC(λ)はフィルム面内で任意の方向の屈折率とすることができ、dCは垂直配向液晶硬化膜の膜厚を示す。
【0214】
(7)水平配向液晶硬化膜の作製
前述の方法にて製造した基材(TACフィルム)、硬化樹脂層および垂直配向液晶硬化膜からなる積層体の垂直配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、水平配向膜形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cm2で偏光UV露光を実施し、水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、200nmであった。
続いて、水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより水平配向液晶硬化膜を形成し、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、1.1μmだった。この積層体における垂直配向液晶硬化膜の基材側の面から水平配向液晶硬化膜の水平配向膜とは反対側の面までの総膜厚T1は、1.9μmであった。
実施例1で得られた積層体は、基材(TACフィルム)/硬化樹脂層/垂直配向液晶硬化膜/水平配向膜/水平配向液晶硬化膜の構成を有する積層体である。
【0215】
<水平配向液晶硬化膜の位相差値測定>
前述の基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜から成る積層体の水平配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、リンテック社製25μm感圧式粘着剤を介してガラスに貼合した後、TACフィルムおよび硬化樹脂層を剥離した。得られたガラス、粘着剤、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜からなる積層体について、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WPRを用いて測定したRe(450)、Re(550)の値から、前述の方法にて予め測定していた垂直配向液晶硬化膜のRe(450)、Re(550)を差し引き、水平配向液晶硬化膜のReA(450)、ReA(550)を算出し、更にαA=ReA(450)/ReA(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0216】
(8)積層体の評価
<積層体の配向性評価>
得られた積層体をリンテック社製感圧式粘着剤(25μm)を介して5×5cm×厚み0.7mmのガラスに貼合し、基材のみを剥離した。得られたサンプルに対して、偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製「BX-51」)を用いて、倍率200倍の条件で観察し、視野480μm×320μmにおける配向欠陥数をカウントした。ここで、配向欠陥数としては測定用サンプルに起因する配向欠陥のみをカウントし、サンプル以外の環境異物等に起因する欠陥数は除外し、カウントしなかった。偏光顕微鏡での観察結果から、以下の評価基準に基づいて積層体の配向性を評価した。〇であれば配向性に優れると判断し、△であれば光学特性に影響を与えない程度の配向性であると判断した。結果を表1に示す。
評価基準:
○(非常に良い):配向欠陥数が0個以上5個以下である。
△(良い):配向欠陥数が6個以上20個以下である。
×(悪い):配向欠陥数が21個以上であるか、又は全く配向していない。
【0217】
<積層体の密着性試験>
積層体の密着性試験を、JIS K5600-5-6の付着性試験(クロスカット法)を参考に、以下の通り実施した。まず、積層体の水平配向液晶硬化膜側と5×5cm×厚み0.7mmのガラスとをリンテック社製感圧式粘着剤(25μm)を介して貼合し、積層体から基材のみを剥離した。得られたサンプルの積層体側にカッターで1mm□の切れ込みを100マス分作製した。得られた100マスの切れ込みの上にセロテープ(登録商標)(ニチバン社製)を貼合し、セロテープを剥離した後、積層体中の層間で剥離したマスの数を確認し、以下の基準にて密着性を判定した。結果を表1に示す。
評価基準:
〇:セロテープ剥離後、積層体中の層間で剥離したマスが30マス未満である。
△:セロテープ剥離後、積層体中の層間で剥離したマスが30マス以上59マス以下である。
×:セロテープ剥離後、積層体中の層間で剥離したマスが60マス以上である。
【0218】
2.実施例2
水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製、および水平配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0219】
(1)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0220】
(2)水平配向液晶硬化膜の形成
実施例1と同様の手順で作製した基材(TACフィルム)、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜から成る積層体の垂直配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、水平配向膜形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cm2で偏光UV露光を実施し、水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、200nmであった。
続いて、水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより水平配向液晶硬化膜を形成し、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、2.2μmだった。
【0221】
3.実施例3
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製および垂直配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例2と同様にして、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0222】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)2.0質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0223】
(2)垂直配向液晶硬化膜の作製
実施例1と同様の手順で作製した基材上の硬化樹脂層上に、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、垂直配向液晶硬化膜を形成した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.2μmであった。
【0224】
4.実施例4
水平配向液晶硬化膜の形成を以下の通り変更した以外は、実施例3と同様にして、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、硬化樹脂層、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0225】
(1)水平配向液晶硬化膜の形成
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM-403 東亞合成株式会社製多官能アクリレート)50質量部、アクリレート樹脂(エベクリル4858 ダイセルユーシービー株式会社製)50質量部、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907;チバ スペシャルティケミカルズ社製)3質量部をイソプロパノール250質量部に溶解した溶液を調製し、アクリレート化合物を含んでなる硬化樹脂層形成用組成物を得た。
続いて、基材(TACフィルム)、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜から成る積層体の垂直配向液晶硬化膜面にコロナ処理を実施し、硬化樹脂層形成用組成物をバーコーターで塗布し、50℃で1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:400mJ/cm2)することにより、硬化樹脂層を形成した。得られた硬化樹脂層の膜厚を接触式膜厚計で測定したところ、2.0μmであった。
次に、前述の方法にて作製した基材(TACフィルム)、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、硬化樹脂層から成る積層体の最外層にある硬化樹脂層面にコロナ処理を実施し、水平配向膜形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cm2で偏光UV露光を実施し、水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、200nmであった。
続いて、水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより水平配向液晶硬化膜を形成し、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、2.2μmだった。
【0226】
5.実施例5
以下の通り垂直配向液晶硬化膜の作製方法を変更した以外は、実施例3と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0227】
(1)垂直配向液晶硬化膜の作製:
日本ゼオン株式会社製COPフィルム(ZF14-23)にコロナ処理を実施した後、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した。次いで、120℃に加熱したままの状態で高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、垂直配向液晶硬化膜を形成し、基材および垂直配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.2μmであった。
【0228】
6.実施例6
基材の準備を以下の通り変更した以外は、実施例3と同様にして、基材、硬化樹脂層、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0229】
(1)基材の準備
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM-403 東亞合成株式会社製多官能アクリレート)50質量部、アクリレート樹脂(エベクリル4858 ダイセルユーシービー株式会社製)50質量部、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907;チバ スペシャルティケミカルズ社製)3質量部をイソプロパノール250質量部に溶解した溶液を調製し、アクリレート化合物を含んでなる硬化樹脂層形成用組成物を得た。
続いて、三菱樹脂株式会社製のPETフィルム(ダイアホイルT140E25)上に、硬化樹脂層形成用組成物をバーコーターで塗布し、50℃で1分間乾燥後、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:400mJ/cm2)することにより、硬化樹脂層を形成した。得られた硬化樹脂層の膜厚を接触式膜厚計で測定したところ、2.0μmであった。
【0230】
7.実施例7
水平配向膜の膜厚を30nmへ変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0231】
8.実施例8
水平配向膜の膜厚を500nmへ変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0232】
9.実施例9
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製を以下の通り変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0233】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調製したイオン性化合物A(分子量:645)2.0質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0234】
10.実施例10
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製を以下の通り変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0235】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0236】
11.比較例1
垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製を以下の通り変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0237】
(1)垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0238】
12.比較例2
水平配向液晶硬化膜の製造工程を以下の通り変更した以外は、実施例5と同様にして、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜および水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を作製し、積層体の密着性および配向性評価を実施した。表1に結果を示す。
【0239】
(1)水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製
重合性液晶化合物(X1)および重合性液晶化合物(X2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1質量部と、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンを添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0240】
(2)水平配向液晶硬化膜の形成
前述の方法にて製造した基材および垂直配向液晶硬化膜から成る積層体の垂直配向液晶硬化膜上にコロナ処理を実施した。続いて、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の4質量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ0.2μmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施し、水平配向膜を得た。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
続いて、水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより水平配向液晶硬化膜を形成し、基材、垂直配向液晶硬化膜、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜をこの順に隣接して積層した積層体を得た。得られた水平配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ―で測定したところ、2.2μmだった。
【0241】
【0242】
本発明によれば、垂直配向膜を形成することなく垂直配向液晶硬化膜の作製が可能であり、液晶配向性および密着性を同時に向上させ得ることが確認された(実施例1~10)。これに対して、垂直配向促進剤を含まない重合性液晶組成物を用いた場合、垂直配向膜を形成せずに垂直配向液晶硬化膜を得ることができず、これに起因して水平配向液晶硬化膜の位相差値を算出することができなかった(比較例1)。さらに、水平配向膜が光配向膜でない比較例2では、垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜との密着性が劣っていた。
【符号の説明】
【0243】
1:基材
2:垂直配向液晶硬化膜
3:水平配向膜
4:水平配向液晶硬化膜
5:硬化樹脂層
11:積層体