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  • 特許-成膜装置及びその製造方法。 図1
  • 特許-成膜装置及びその製造方法。 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】成膜装置及びその製造方法。
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
C23C14/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019054505
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152984
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一義
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321244(JP,A)
【文献】特表2011-518255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0196890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で物理蒸着法により粒子放出源から粒子を飛散させて被処理基板表面に所定の薄膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも粒子が付着、堆積する成膜装置用の部品を備える成膜装置において、
前記粒子放出源がスパッタリング装置用のカーボン製のターゲットであり、成膜装置用の部品がターゲットをスパッタリングしたときにターゲット表面からのスパッタ粒子の直接の入射を受けてカーボン膜が形成される防着板であり、
防着板が酸化アルミニウムの焼結体で構成され、スパッタ粒子の直接の入射を受ける防着板の付着面に溶融固化層が形成されることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記付着面への前記溶融固化層の形成範囲を前記付着面の面積の50%以上としたことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記溶融固化層表面の平均粗さを90μm以上としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の成膜装置の製造方法であって、前記防着板の付着面に前記溶融固化層を形成する工程を含むものにおいて、
前記溶融固化層を形成する工程が、酸化アルミニウムの焼結体である防着板を準備し、焼結体表面で互いに直交する二軸方向をX軸方向及びY軸方向として、防着板の表面に対してレーザー光を照射し、このレーザー光をX軸方向及びY軸方向に走査することで防着板の表面を溶融させる工程と、この溶融した防着板の表面を冷却により固化させる工程とを含むことを特徴とする成膜装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内で物理蒸着法により粒子放出源から粒子を飛散させて被処理基板表面に所定の薄膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも粒子が付着、堆積する成膜装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不揮発性メモリ等のデバイスの製造工程においては、電極膜としてカーボン膜が利用され、このようなカーボン膜の成膜には、真空蒸着法やスパッタリング法といった物理蒸着法によるものを利用することが従来から知られている。スパッタリング法によりカーボン膜を成膜する場合を例に説明すると、スパッタリング装置の真空チャンバ内に、成膜対象物としての基板と粒子放出源としてのカーボン製のターゲットとを対向配置する。この場合、真空チャンバ内には、基台とこの基台表面に設けられる、基台及び基板の外寸より小さいチャックプレートとを備えるステージが配置され、ステージで基板が吸着保持されるようになっている。そして、真空雰囲気中の真空チャンバ内に希ガスを導入し、ターゲットに負の電位を持った所定電力を投入してプラズマ雰囲気を形成し、プラズマ雰囲気中の希ガスのイオンでターゲットをスパッタリングすることで、ターゲットから所定の余弦波に従って飛散したカーボン粒子(スパッタ粒子)が基板に付着、堆積して被処理基板表面にカーボン膜が成膜される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スパッタリング法による成膜を行うスパッタリング装置では、通常、真空チャンバ内壁に対するスパッタ粒子の付着を防止するために防着板が設けられ、また、ステージの基台及びチャックプレートの周囲には、径方向外方に露出する基台の上面部分を覆うプラテンリングと称される環状の防着板が間隔を存して配置されている。そして、複数枚の基板に対してカーボン膜を継続して成膜していくと、このような防着板やプラテンリングといった真空チャンバ内に存する部品の表面にもカーボン粒子が付着、堆積してカーボン膜が形成される。この場合、防着板やプラテンリングといった部品としては、チタン、アルミニウムやステンレスといった母材金属のカーボン粒子の付着面に、所謂アンカー効果を持たせる目的で、アルミナを溶射したものが一般に利用されている。
【0004】
ところで、カーボン膜を成膜した直後の基板表面をみると、微細なパーティクルが付着していることがある。このようなパーティクルの付着は製品歩留まりを低下させる原因となる。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、真空チャンバ内に浮遊するカーボン粒子が微細なパーティクルとして成膜直後の基板表面に付着していることを知見するのに至った。これは、上記部品表面に付着したカーボン粒子が何らかの原因で離脱し、この離脱したカーボン粒子が、真空排気されずに真空チャンバ内で浮遊していることに起因していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-91861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の知見を基になされたものであり、真空チャンバ内に存する部品表面に付着した粒子の離脱を可及的に抑制できるようにした成膜装置用の部品及びその製造方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内で物理蒸着法により粒子放出源から粒子を飛散させて被処理基板表面に所定の薄膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも粒子が付着、堆積する成膜装置用の部品を備える成膜装は、前記粒子放出源がスパッタリング装置用のカーボン製のターゲットであり、成膜装置用の部品がターゲットをスパッタリングしたときにターゲット表面からのスパッタ粒子の直接の入射を受けてカーボン膜が形成される防着板であり、防着板が酸化アルミニウムの焼結体で構成され、スパッタ粒子の直接の入射を受ける防着板の付着面に溶融固化層が形成されることを特徴とする。
【0008】
即ち、本発明のように、部品またはその一部を酸化アルミニウムの焼結体で構成し、粒子放出源から飛散する粒子が付着する焼結体の付着面に溶融固化層を形成すれば、従来から一般に用いられる母材金属の付着面にアルミナを溶射してなるものと比較して、付着した粒子の離脱が可及的に抑制されることが見出された。
【0009】
ここで、本発明において、付着した粒子の離脱を可及的に抑制するには、前記付着面への前記溶融固化層の形成範囲を前記付着面の面積の50%以上とすることが好ましく、また、前記溶融固化層表面の平均粗さを90μm以上とすることが好ましい。これにより、前記粒子放出源をスパッタリング装置用のカーボン製のターゲット、成膜装置用の部品を防着板としたものに本発明を適用した場合に、真空チャンバ内でのカーボン粒子が微細なパーティクルとなって浮遊することが抑制され、ひいては、製品歩留まりの低下を可及的に抑制することができるようになる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の成膜装置の製造方法は、防着板の付着面に前記溶融固化層を形成する工程を含み、溶融固化層を形成する工程が、酸化アルミニウムの焼結体である防着板を準備し、焼結体表面で互いに直交する二軸方向をX軸方向及びY軸方向として、防着板の表面に対してレーザー光を照射し、このレーザー光をX軸方向及びY軸方向に走査することで防着板の表面を溶融させる工程と、この溶融した防着板の表面を冷却により固化させる工程とを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置を示す模式断面図。
図2図1の一部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、物理蒸着法により粒子放出源から粒子を飛散させて被処理基板(以下、「基板Sw」とする)表面に所定の薄膜を成膜するための装置をマグネトロン方式のスパッタリング装置、粒子放出源をカーボン製のターゲット、成膜装置用の部品を真空チャンバ内でターゲットの周囲に配置されるプラテンリングとして、本発明の成膜装置用の部品及びその製造方法の実施形態を説明する。以下において、方向を示す用語は、図1に示す成膜装置としてのスパッタリング装置Smの設置姿勢を基準とする。
【0013】
図1を参照して、スパッタリング装置Smは、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の上面開口にはカソードユニット2が着脱自在に取付けられている。カソードユニット2は、ターゲット21と、このターゲット21の上方に配置される磁石ユニット22とで構成されている。ターゲット21は、バッキングプレート21aに装着した状態で、そのスパッタ面21bを下方にした姿勢で、真空チャンバ1の上壁に設けた真空シール兼用の絶縁体31を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。ターゲット21にはまた、スパッタ電源21cからの出力21dが接続され、ターゲット21のスパッタリング時、負の電位を持つ所定電力が投入できるようにしている。磁石ユニット22は、ターゲット21のスパッタ面21bの下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面21bの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0014】
真空チャンバ1の下部には、ターゲット21に対向させてステージ4が配置されている。ステージ4は、真空チャンバ1の下面13に設けた絶縁体32を介して設置される、筒状の輪郭を持つ金属製の基台41と、この基台41上に設けたチャックプレート42とを有する。チャックプレート42は、例えば窒化アルミニウム製で基台41の上面より一回り小さい外径を有し、特に図示して説明しないが、静電チャック用の電極が埋設されている。そして、図外のチャック電源から電極に電圧を印加すると、チャックプレート42上面に基板Swが静電吸着される。基台41にはまた、図外のチラーユニットからの冷媒を循環させる冷媒循環路41aが形成されている。基台41とチャックプレート42との間には、基台41の上面より小さくチャックプレート42の上面より大きい外径を有し、例えば窒化アルミニウム製のホットプレート43が介在され、通電により所定温度(例えば、300℃~500℃)に加熱できるようになっている。この場合、チャックプレート42にヒータを内蔵してチャックプレート42とホットプレート43とを一体に形成することもできる。そして、ホットプレート43による加熱と、冷媒循環路41aへの冷媒の循環による基台41の冷却とによって基板Swを室温以上の所定温度範囲に制御できるようにしている。
【0015】
真空チャンバ1の側壁には、スパッタガスを導入するガス管5が接続され、ガス管5がマスフローコントローラ51を介して図示省略のガス源に連通している。スパッタガスとしては、真空チャンバ1にプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスが利用される。真空チャンバ1の下壁にはまた、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどで構成される真空ポンプ61に通じる排気管62が接続され、真空チャンバ1内を一定速度で真空排気し、スパッタリング時にはスパッタガスを導入した状態で真空チャンバ1を所定圧力に保持できるようにしている。
【0016】
真空チャンバ1内には、ターゲット21のスパッタリングにより飛散するスパッタ粒子の真空チャンバ1の内壁面への付着を防止する防着板7が設けられている。防着板7は、夫々がアルミナ、ステンレス等の公知の材料製である上防着板71と下防着板72とで構成されている。上防着板71は、筒状の輪郭を持ち、真空チャンバ1の上部に設けた係止部11を介して吊設されている。一方、下防着板72は板状部材で構成され、その径方向外側の自由端には、上方に向けて起立させた起立壁部72aが形成されている。下防着板72にはまた、真空チャンバ1の下壁を貫通してのびる、モータやエアシリンダなどの駆動手段73からの駆動軸73aが連結されている。駆動手段73によって下防着板72は、スパッタリングによる成膜が実施される成膜位置と、成膜位置から下防着板72を所定の高さ位置まで上動させて、図外の真空ロボットによるステージ4への基板Swの受渡が実施される搬送位置との間で上下動される。成膜位置では、上防着板71の下端部と起立壁部72aの上端部とが上下方向で互いにオーバーラップするように設計されている。
【0017】
また、真空チャンバ1内でステージ4の周囲には、径方向外方に露出する基台41、ひいてはホットプレート43の上面部分を覆うと共に、チャックプレート42の外周面をその全面に亘って覆うように、防着板として機能するプラテンリング8が間隔を存して設けられている。この場合、プラテンリング8は、基台41の上面に設けた絶縁体33で支持されている。上記スパッタリング装置Smを用い、基板Sw表面にカーボン膜を成膜する場合、真空チャンバ1内に、ターゲット21、防着板7やプラテンリング8などの各種の部品をセットした後、真空ポンプ61を作動させて気密保持された真空チャンバ1を真空排気する。
【0018】
次に、下防着板72の搬送位置にて、図外の真空搬送ロボットによりステージ4上へと基板Swを搬送し、ステージ4のチャックプレート42上面に基板Swを載置する。真空搬送ロボットが退避すると、下防着板72が成膜位置に移動され、真空チャンバ1内壁へのスパッタ粒子の付着を防止する。そして、静電チャック用の電極に対してチャック電源から所定電圧を印加し、チャックプレート42に基板Swを静電吸着する。これに併せて、ホットプレート43による加熱と、冷媒循環路41aへの冷媒の循環による基台41の冷却とによって基板Swが室温以上の所定温度に制御される。真空チャンバ1内が所定圧力まで真空排気されると共に、基板Swが所定温度になると、ガス管5を介してスパッタガスとしてのアルゴンガスを所定の流量で導入し、これに併せてターゲット21にスパッタ電源21cから負の電位を持つ所定電力を投入する。すると、真空チャンバ1内にプラズマが形成され、プラズマ中のアルゴンガスのイオンでターゲットのスパッタ面21bがスパッタリングされ、ターゲット21のスパッタ面21bからのカーボン粒子が所定の余弦則に従い飛散し、基板Swに付着、堆積してカーボン膜が成膜される。
【0019】
ところで、スパッタ面21bから所定の余弦則に従い飛散したカーボン粒子や、反跳したカーボン粒子が、防着板7の内面だけでなく、基板Swの近傍に位置するプラテンリング8の上面にも付着、堆積し、カーボン膜が形成される。ここで、プラテンリング8として、従来例のように、チタン、アルミニウムやステンレスといった母材金属の表面(カーボン粒子の付着面)にアルミナを溶射したものを用いていると、アルミナ表面に付着したカーボン粒子が離脱し、この離脱したカーボン粒子が、真空排気されずに真空チャンバ1内で浮遊する。なお、カーボン粒子が離脱する理由は定かではないが、上記のようにして成膜する間、プラテンリング8は、ホットプレート43からの輻射で加熱されたり、基台41からの放射冷却で冷却されたりして熱変形することに起因するとも考えられる。
【0020】
本実施形態では、図2に示すように、プラテンリング8を酸化アルミニウムの焼結体で構成し、プラテンリング8の上面(即ち、カーボン粒子の付着面)に溶融固化層81が部分的に形成されたものとした。酸化アルミニウムの焼結体は、粉末冶金法などの公知の方法を利用して製作されるため、ここでは詳細な説明は省略する。一方、焼結体の表層への溶融固化層81の形成は、レーザーアニール装置を利用することができる。レーザーアニール装置としては、特に図示して説明しないが、プラテンリング8を保持する可動ステージと、所定波長のレーザー光を照射する光源とを備える公知のものが利用される。そして、プラテンリング8を可動ステージにセットした後、プラテンリング8の上面で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向として、プラテンリング8の上面に対してレーザー光を照射し、この状態で可動ステージを相対移動させることでレーザー光をX軸方向及びY軸方向にその上面全体に亘って所定ピッチで走査させる。これにより、レーザー光が照射されたプラテンリング8の表面部分が溶融し、この溶融した表面部分が自然冷却されることで、例えば、プラテンリング8の上面に、溶融固化層81が格子状に形成される。
【0021】
プラテンリング8の上面への溶融固化層81の形成範囲は、プラテンリング8の上面の総面積の50%以上とすることが好ましく、また、溶融固化層81表面の平均粗さを90μm以上とすることが好ましい。これにより、ターゲット21から飛散したカーボン粒子Caや、反跳したカーボン粒子Caがプラテンリング8の上面に付着、堆積したとしても、真空チャンバ1内でのカーボン粒子が微細なパーティクルとなって浮遊することが可及的に抑制され、ひいては、製品歩留まりの低下を可及的に抑制することができる。
【0022】
次に、本発明の効果を確認するため、上記スパッタリング装置Smを用いて以下の発明実験を行った。即ち、基板Swを直径300mmのシリコンウエハ、ターゲット21をφ400mmのカーボン製のものとした。スパッタ条件として、ターゲット21と基板Swとの間の距離を60mm、スパッタ電源21cによる投入電力を2kWとした。また、スパッタガスをアルゴンガスとし、スパッタリングによる成膜中、スパッタガスの分圧が0.1Paになるようにアルゴンガスの導入量を設定した。
【0023】
発明実験では、プラテンリング8として、酸化アルミニウムの焼結体で構成し、その上面に約50%の面積範囲で格子状の溶融固化層81が形成されたものを用いる一方で、比較実験では、チタンの母材表面に200~250μmの膜厚でアルミナを溶射したものを用いた。そして、積算電力が25kWhに到達するまでターゲット21をスパッタリングして基板Sw表面にカーボン膜を成膜したときの、成膜後の基板Sw表面に付着する0.03μm以上のパーティクルの数を測定した。これによれば、発明実験では、積算電力が20kWhを超えるまでは、パーティクルの付着が殆ど見られず、積算電力が25kWhのとき、70個であった。それに対して、比較実験では、積算電力が5kWhのときに既に100個を超え、積算電力が20kWhに達する前に、200個を超えるパーティクルが付着していることが確認された。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態においては、物理蒸着法を実施する装置としてスパッタリング装置Smを例に説明したが、これに限定されるものではなく、真空蒸着法やイオンプレーティング法により所定の薄膜を形成する場合にも本発明は適用でき、また、粒子放出源をカーボン製のターゲット21としたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、真空チャンバ内に存する部品に付着した粒子が離脱し、これが浮遊して製品歩留まりを低下させる等の原因となるものであれば、広く適用することができる。また、上記実施形態では、真空チャンバ内に存する部品としてプラテンリング8を例に説明したが、防着板7にも本発明は当然に適用することができ、この場合、部品全体を焼結体とする必要はなく、粒子が付着する部分が焼結体で構成され、そこに溶融固化層が形成されていればよい。
【0025】
また、上記実施形態においては、酸化アルミニウムの焼結体8に溶融固化層81を形成するのに際し、レーザーアニール装置を用い、レーザー光をX軸方向及びY軸方向にその上面全体に亘って所定ピッチで走査させることで、格子状に溶融固化層81を形成したものを例に説明したが、溶融固化層81が格子状に形成されている必要はなく、総面積の50%以上の範囲にストライプ状に溶融固化層81を形成し、または、焼結体8の表層側全面に亘って溶融固化層81を形成することができる。また、焼結体8の表層側に溶融固化層81を形成し、このときの平均粗さを90μm以上にできるのであれば、溶融固化層81の形成は、レーザーアニール装置によるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
Sm…スパッタリング装置(物理蒸着法を実施できる成膜装置)、1…真空チャンバ、21…カーボン製のターゲット(粒子放出源)、7…防着板、8…プラテンリング(成膜装置用の部品)、81…溶融固化層。
図1
図2