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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】乾燥固形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230814BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20230814BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20230814BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20230814BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L29/212
A23L3/40 A
A23L29/262
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019067808
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162521
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 祐子
(72)【発明者】
【氏名】平石 学
(72)【発明者】
【氏名】園部 一憲
(72)【発明者】
【氏名】谷原 望
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章一
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10000774(DE,A1)
【文献】特開昭59-039260(JP,A)
【文献】特開2006-274100(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074301(WO,A1)
【文献】特許第5192616(JP,B1)
【文献】特開平07-289876(JP,A)
【文献】特開平4-94664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ化したデンプンにより固化した乾燥食品固形物の製造方法であって、
デンプン、水不溶性食物繊維及び水を含む原料を混合し造粒処理して、前記水不溶性食物繊維が分散され、かつ、造粒物に成形された混合物を調製する工程、及び
前記造粒物を、前記混合物中において前記デンプンがアルファ化しかつ乾燥固化する条件で熱風乾燥により乾燥する工程を含み、
前記造粒物の水分含量が45~59質量%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水不溶性食物繊維が粉末セルロース又は結晶セルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水不溶性食物繊維が粒子径900μm以下の粒子又は繊維長170μm以下の繊維である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物中において、前記デンプンと前記水不溶性食物繊維の質量比が1:0.3~1:38の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥する工程を、乾燥前の前記混合物の水分含量が45~59質量%であり、かつ、乾燥後の前記乾燥固形物の水分含量が0.9~12質量%となるようにして行う、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥する工程が、60分以内に前記混合物の水分含量を12質量%以下にするように行うことを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥する工程が、前記熱風乾燥を、46~110℃の温度範囲にて、14~60分間行うことを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物等であってよい、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱水中で湯戻しして喫食する食品の乾燥固形物はインスタント食品の具材等として用いられている。
【0003】
特許文献1には、腎臓病用食品やダイエット食品等の用途での使用に適した、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材として、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4~40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物が記載されている。特許文献1では、前記混合物が更に澱粉を含んでもよいことが記載されている。特許文献1の実施例2等では、不溶性食物繊維、グルコマンナン、水酸化カルシウム、加工デンプン及び水等を混合して糊状物を形成し、粒状に成形したのち真空凍結乾燥機で乾燥して、疑似ミンチ肉の乾燥物を調製したことが記載されている。
【0004】
特許文献2では、湯戻り速度の改善された乾燥食品の製造法として、畜肉、魚貝類、卵、穀類および豆類の少なくとも一つを原料とし、その中に吸水性に優れた含水可食性繊維状物を一定方向かまたは不特定方向に分散させた後に水分含量15%以下まで乾燥する方法が記載されている。特許文献2の実施例1では、鶏ミンチ肉等を含む混合生地と、セルロース、コンスターチ、ローカストビーンガムとを混合し押し出して棒状の成形物とし、それを電気オーブン中で焼き調理し、その後に凍結乾燥することが記載されている。
【0005】
特許文献3では、粉末スープ等の乾燥食品の製造において凍結乾燥の際の凍結乾燥速度を向上させるための、セルロースを主成分とする凍結乾燥促進剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-41994号公報
【文献】特開平2-138957号公報
【文献】特開平6-335374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
凍結乾燥法は処理に長時間を有することから、食品として用いる乾燥固形物の製造に用いるには高コストとなり、利用範囲が限定される。熱風乾燥(流動層乾燥を包含する)は比較的風味等を変化させずに乾燥処理が可能であるため、食品分野での利用に適している。
【0008】
一方、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物の製造においては、デンプンに対し比較的多量の水を含む湿潤した混合物を形成し、該混合物中でデンプンをアルファ化させてから乾燥する場合、該混合物から、デンプンに取り込まれた状態の水を十分に除去することが難しく、熱風乾燥を用いたとしても乾燥に長時間を要するという問題がある
【0009】
そこで本発明は、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物を、熱風乾燥を用いて製造する方法において、水分を短時間で乾燥除去するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書は、上記課題を解決するための手段として以下の構成を開示する。
(1)アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物の製造方法であって、
デンプン、水不溶性食物繊維及び水を含む原料を混合し成形して、前記水不溶性食物繊維が分散されている混合物を調製する工程、及び
前記混合物を、前記混合物中において前記デンプンがアルファ化しかつ乾燥固化する条件で熱風乾燥により乾燥する工程
を含むことを特徴とする方法。
(2)前記水不溶性食物繊維が粉末セルロース又は結晶セルロースである、(1)に記載の方法。
(3)前記水不溶性食物繊維が粒子径900μm以下の粒子又は繊維長170μm以下の繊維である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記混合物中において、前記デンプンと前記水不溶性食物繊維の質量比が1:0.3~1:38の範囲内である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記混合物を調製する工程が、前記原料を造粒処理することを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記乾燥する工程を、乾燥前の前記混合物の水分含量が45~59質量%であり、かつ、乾燥後の前記乾燥固形物の水分含量が0.9~12質量%となるようにして行う、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記乾燥する工程が、60分以内に前記混合物の水分含量を12質量%以下にするように行うことを含む、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記乾燥する工程が、前記熱風乾燥を、46~110℃の温度範囲にて、14~60分間行うことを含む、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一以上の実施形態によれば、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物を比較的短時間で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.デンプン
本発明で用いるデンプンの種類は特に限定されず加工デンプンであってもよいし生デンプンであってもよい。加工デンプンとしては、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、エーテル架橋デンプン、アセチル架橋デンプン等から選択される1種以上が挙げられ、ヒドロキシプロピルデンプンが好ましい。二種類以上のデンプンの混合物を用いてもよい。
【0013】
デンプンの起源植物は特に限定されず、馬鈴しょ、タピオカ、甘藷、クズ、小麦、米、豆類、トウモロコシ等が例示できる。デンプンは、小麦粉等の穀粉の形態で使用されるものであってもよい。デンプンが穀粉の形態である場合には、穀粉の使用量を、デンプンの使用量とみなしてよい。
【0014】
2.水不溶性食物繊維
本発明で用いる水不溶性食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース、水不溶性海草多糖類、水不溶性ペクチン質、キチン、キトサン、及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性食物繊維、或いは当該水不溶性食物繊維を含む混合物が好適に使用できる。精製の程度は特に限定されず、結晶セルロースなどの高純度のもののみでなく、小麦ファイバー、ニンジンパルプ、リンゴパルプ等の純度の低い水不溶性食物繊維も使用できる。水不溶性食物繊維は、水不溶性食物繊維からなる粉末の形態、又は水不溶性食物繊維と増粘剤(例えばデンプン)との複合体からなる粉末の形態、好ましくはこれらの二種類の形態の粉末の混合物として使用される。
【0015】
本発明の好ましい一以上の実施形態において水不溶性食物繊維は粉末セルロース又は結晶セルロースである。
【0016】
本発明の好ましい一以上の実施形態において水不溶性食物繊維は、粒子径900μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上の粒子からなるものである。ここで水不溶性食物繊維の粒子径は次のように定義する。すなわち、散乱式粒度分布計によって測定することができる平均粒子径である。
【0017】
本発明の好ましい一以上の実施形態において水不溶性食物繊維は、繊維長500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは170μm以下、より好ましくは7μm以上、より好ましくは8μm以上の繊維からなるものである。ここで水不溶性食物繊維の繊維長は次のように定義する。すなわち、水不溶性食物繊維の長さの平均値を指し、素材をその構成する最小単位の水不溶性食物繊維が判別できるまで顕微鏡で拡大し、観察された繊維のうち代表的なものを10点選び出し、それぞれについて、その形状が縦長の場合の長さを測定した平均値である。
【0018】
この範囲の粒子径を有する水不溶性食物繊維は、後程詳述する、デンプンへの水の供給、及び、アルファ化したデンプンからの水の蒸散を促進する効果が特に高い。
【0019】
3.他の成分
本発明の乾燥固形物は、他の食品材料を更に含んでいてもよい。
他の食品材料としては、コンニャク原料及びそれを凝固するためのアルカリ性凝固剤、油脂、野菜、果物、香辛料、調味料等が挙げられる。最終製品が低タンパク質食品の提供を意図するものでなければ畜肉、魚介肉、卵、大豆、これらの加工品を添加してもよい。油脂を添加する場合は、食品組成物に畜肉特有の物性(脂の口溶け、肉汁感)及び風味が達成される。
【0020】
コンニャク原料は、コンニャクイモ由来のグルコマンナンを含むものであれば特に限定されず、様々な形状及び純度のものが使用できる。具体的には、コンニャク粉、コンニャクイモ抽出物、グルコマンナンが挙げられる。コンニャク由来のグルコマンナンをゲル化するためにアルカリ性凝固剤を使用することができる。アルカリ性凝固剤としては具体的には水酸化カルシウム等が挙げられ、一般に用いられているものを任意に用い得る。
【0021】
本発明の乾燥固形物がコンニャク原料及びアルカリ性凝固剤を更に含む実施形態では、コンニャク原料中のグルコマンナン1質量部(乾燥物基準)に対して水不溶性食物繊維は好ましくは2~40質量部(乾燥物基準)、より好ましくは4~17質量部(乾燥物基準である。アルカリ性凝固剤の量は、コンニャク原料中のグルコマンナンをゲル化することができる量に適宜調節すればよく、例えば、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して好ましく0.001~10重量部、好ましくは0.01~0.1重量部とすることができる。後述する粒状の混合物を調製する際に、コンニャク原料を水和膨潤させるための水の量は、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して2~1000重量部であることが好ましく、5~60重量部であることがより好ましく、10~30重量部であることが最も好ましい。本発明は、前記のグルコマンナン凝固物の乾燥固形物を製造するために適する。
【0022】
4.乾燥固形物の製造方法
本発明に係る、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物の製造方法は、
デンプン、水不溶性食物繊維及び水を含む原料を混合し成形して、前記水不溶性食物繊維が分散されている混合物を調製する工程、及び
前記混合物を、前記混合物中において前記デンプンがアルファ化しかつ乾燥固化する条件で熱風乾燥により乾燥する工程
を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の方法によれば、比較的短時間で、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物を製造することができる。
【0024】
本発明の方法において乾燥が促進される原因は必ずしも明確ではないが、以下の機構が推定される。
【0025】
デンプン、水不溶性食物繊維及び水を含む原料を混合し成形して調製される、前記水不溶性食物繊維が分散されている混合物中では、デンプンの粒子と、水不溶性食物繊維の粒子とが密着した状態にあると考えられる。水不溶性食物繊維の粒子は水の浸透性が高いため、前記混合物中では、デンプンの粒子へ、水不溶性食物繊維の粒子を経由して水が供給されて浸透する。その結果、デンプンの水による膨潤が促進される。そして、前記混合物を熱風乾燥すると、デンプンのアルファ化が進み、且つ、アルファ化したデンプンが保持する水分は、水不溶性食物繊維を経由して速やかに蒸散することができる。この機構により、比較的短時間で、アルファ化したデンプンにより固化した乾燥固形物を製造することが可能になると考えられる。デンプンの粒子と、水不溶性食物繊維の粒子とが密着した状態にある混合物を熱風乾燥することで、アルファ化デンプンにより結着して固化した乾燥固形物を効率的に製造することができる。
【0026】
(1)混合物の調製
混合物は、少なくともデンプン、水不溶性食物繊維及び水を含み、上記で挙げたような他の成分を更に含んでもよい。
【0027】
前記混合物中において、前記デンプンと前記水不溶性食物繊維の質量比は、好ましくは1:0.05~1:38、より好ましくは1:0.3~1:38又は1:0.1~1:25である。前記デンプンと前記水不溶性食物繊維の質量比がこの範囲であるとき、水不溶性食物繊維によるデンプンへの水の供給、及び、アルファ化したデンプンからの水の蒸散を促進する効果が特に高い。
【0028】
前記混合物中での水の含有量(乾燥前の水の含有量)の範囲としては、24~75質量%、好ましくは26~70質量%、より好ましくは45~59質量%が例示できる。
【0029】
前記混合物中でのデンプンの含有量の範囲としては、0.5~55質量%、好ましくは5~45質量%が例示できる。
【0030】
前記混合物がコンニャク原料を含む実施形態では、コンニャク原料が含むグルコマンナン1質量部(乾燥物基準)に対して好ましくは3~20質量部(乾燥物基準)、より好ましくは3~10質量部(乾燥物基準)のデンプンを含有する。デンプンの含有量がこの範囲であることにより、造粒、乾燥、水和復元及びレトルト加熱の各処理の際に形状が崩れにくい乾燥食品組成物が得られ易い。
【0031】
デンプン、水不溶性食物繊維及び水を含む原料を混合する際は、各成分、特に水不溶性食物繊維を分散するように混合する。均一に分散するように混合するのがよい。混合は、前記原料を混練することを含むことが好ましい。前記原料を混練することで、デンプンと水不溶性食物繊維とが均一に分散し、且つ、デンプンと水不溶性食物繊維とが十分に密着するため、水不溶性食物繊維によるデンプンへの水の供給、及び、アルファ化したデンプンからの水の蒸散を促進する効果が特に高まる。
【0032】
前記混合物の成形は、乾燥しやすい形状に成形することを意図し、好ましくは、前記原料を造粒処理して前記混合物の塊状物を得ることを含む。造粒処理は、好ましくは、押出造粒処理である。押出造粒処理は、前記原料を混練しながらダイを通じて押し出すことを含む造粒法であるため、前記原料の混練と造粒を一度に行うことができる。混合物を乾燥できる限り成形は任意であるが、成形を行うのがよい。
【0033】
前記混合物の形状、寸法は特に限定されないが、形状は、好ましくは粒状、片状、棒状、麺状等で、寸法は、粒状、片状、棒状等では、体積を5~1000mm、好ましくは20~230mmとすることが例示でき、棒状、麺状等では、短手方向の断面積を5~50mmとすることが例示できる。
【0034】
(2)乾燥
前記混合物を乾燥する工程は、前記混合物中において前記デンプンがアルファ化しかつ乾燥固化する条件で熱風乾燥により乾燥することを含む。
【0035】
熱風乾燥の条件は、前記混合物中においてデンプンが水の存在下で加熱されてアルファ化(糊化)が進み、その後に、アルファ化デンプンが吸収した水が蒸散して乾燥固化する条件であれば特に限定されない。この方法では、デンプンのアルファ化と乾燥を別の工程として行う必要がないため、手順が簡便であり好ましい。また、上記の通り、水不溶性食物繊維の作用により、前記混合物中において、デンプンへの水の供給及び水の蒸散が促進されるため、乾燥固形物を比較的短時間で得ることができる。
【0036】
熱風乾燥の条件は特に限定されないが、60分以内、好ましくは30分以内に前記混合物の水分含量を12質量%以下にするように行うことが例示できる。また、熱風乾燥を、46~110℃、好ましくは48~100℃、より好ましくは50~90℃の温度範囲にて、好ましくは14~60分、より好ましくは14~30分の時間行うことが例示できる。
【0037】
また熱風乾燥は、乾燥後の乾燥固形物の水分含量が0.9~12質量%、好ましくは2~10質量%、より好ましくは4~8質量%となるように行うことが例示できる。
【0038】
熱風乾燥とは被乾燥物を熱風に曝して水分を蒸散させる方法であれば特に限定されず、被乾燥物を静置した状態で行う熱風乾燥や、被乾燥物に熱風を供給し被乾燥物を浮遊流動化させながら乾燥する流動層乾燥等の様々な態様であってよい。流動層乾燥の一実施形態として、多孔板等の整流器の上に前記混合物を供給し下方及び又は上方より熱風を吹き付け、前記混合物を熱風中で浮遊流動化させながら乾燥する方法が挙げられる。また、流動層乾燥の別の実施形態として、熱風送風器を備えた室内を通過する搬送コンベヤの搬送面上に前記混合物を供給し、前記混合物が上記室内を搬送される際に熱風を吹き付け、これを浮遊流動化させながら乾燥する方法が挙げられる。流動層乾燥は、市販の流動層焙煎機やコンベヤドライヤーを用いて実施することができる。流動層乾燥の条件は特に限定されないが、100~110℃の入口熱風温度、46~110℃の排気温度、処理時間14~60分間の条件で流動層乾燥を行うことが好ましい。
【0039】
上記の方法で得られる乾燥固形物は、水和復元して食品として摂取することができる乾燥食品組成物であることが好ましい。乾燥固形物を水和復元する工程としては、乾燥固形物を温水中に漬ける工程(湯戻し)、水中で煮る工程、水蒸気により蒸す工程が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらには限定されない。
【実施例
【0040】
[実験1]
<原料>
【表1】
【0041】
原料中の(A)水不溶性食物繊維として、表2に示す粉末セルロースとセルロース複合体との混合物を用いた。(A)水不溶性食物繊維は、全ての実施例、比較例において同じ配合量を用いた。
【0042】
【表2】
【0043】
原料中の(D)デンプンとして、各実施例、比較例において異なる種類、配合量の表3に示すデンプンを用いた。実施例10、11では複数種の澱粉を用いた。なお、表中の原料の配合量は、下記する水を含む糊状物を構成する全ての原料(100質量%)に対する、各原料の割合を示す。表3の配合量の括弧内の数値はグルコマンナン1に対する該当成分の質量比を示す。
【0044】
水以外の原料は全て固形物であり、表中の配合量から固形物同士の比率が求められ、固形物を除いた残量の水の量が、糊状物の水分含量となる。また、下記する乾燥造粒物から水分を除くことで、乾燥造粒物中の各固形物の含有比率が求められる。
【0045】
【表3】
【0046】
<乾燥食品組成物の製造工程>
(工程1)
粉体の(A)(B)(C)(D)と(E)水とを、30分程度混合し、グルコマンナンを膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物を調製した。
【0047】
(工程2)
工程1で調製した糊状物を押出し造粒処理して造粒した。粒状物が成形される場合は直径3mm×長さ3~25mm程度のミンチ状の造粒物に成形した。
【0048】
(工程3)
工程2で得た造粒物を次の条件で流動層乾燥処理して、乾燥造粒物を製造した。いずれの乾燥造粒物も、水分含量が4~8質量%程度であった。
流動層造粒装置の流動層入口熱風温度100~110℃
流動層出口排気温度46~70℃
仕込み量10kg/1バッチ
流動層内乾燥時間15分間
【0049】
<評価>
「成形性」
上記工程2での造粒において、流動層乾燥に適した粒状物が得られるか否かを観察し、以下の基準で評価した。
◎:押出造粒で流動層乾燥に適する粒状物が成形される。
×:押出造粒の際、粒状物が形成されず、麺状に繋がる。
【0050】
「固定化」
上記工程3で得られた乾燥造粒物の状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:グルコマンナンのゲル化と澱粉のα化で、流動層乾燥後に粒状に固形化される。
×:流動層乾燥後にやわらかく、固形化が不十分である。
【0051】
「湯戻し性」
上記工程3で得られた乾燥造粒物を熱水中で湯戻した。湯戻し後の造粒物の状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:注湯後10-15分程度で肉様組織・食感に復元する。
△:注湯後10-15分程度で肉様組織・食感に復元しない。
×:注湯後に溶ける、或いは、軟らか過ぎる又はモロモロとした不良な食感である。
【0052】
「レトルト耐性」
【0053】
上記工程3で得られた乾燥造粒物を水とともにレトルトパウチに充填して封入し、120℃20分間レトルト加熱処理を施した。処理後の造粒物の状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:水とともにレトルト処理した場合に、肉様組織・食感を保持する。
×:水とともにレトルト処理した場合に、溶ける、或いは、軟らか過ぎ肉様組織・食感を保持できない。
【0054】
<評価結果>
各実施例、比較例の評価結果を下記表に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
[実験2]
<原料>
下記の原料組成のうどん生地を調製した。表5では各成分の割合を重量%で示す。
【0057】
セオラスRC-N81(旭化成ケミカルズ)は実験1でも使用した結晶セルロースであり、粒子径約8~10μmの粒子(前記の粒子径の測定方法により測定)である。
ビタセルL00(J.RETTENMAIER&SOHNE GMBH+CO KG社製)は実験1でも使用した粉末セルロースであり、繊維長約120μmの繊維(繊維長の測定方法により測定)である。
【0058】
比較例1は、表5に示す割合で各成分を含む通常のうどん生地の配合である。
【0059】
実施例21はセルロース10重量%、実施例22はセルロース20重量%、実施例23はセルロース30重量%を含有し、各々セルロースの分比較例1のものから中力粉の量を減らしたうどん生地の配合である。セルロースとして、セオラスRC-N81及びビタセルL00を、表5に示す割合で配合した。
【0060】
実施例24はセルロース(セオラスRC-N81のみ)20重量%、実施例25はセルロース(ビタセルL00のみ)20重量%を含有し、同様に中力粉の量を減らしたうどん生地の配合である。
【0061】
【表5】
【0062】
<乾燥固形物の製造>
上記表に示す各組成の粉体、塩溶解液をヌードルメーカーに投入し5分間撹拌して生地を得た。
【0063】
前記生地を、押出し造粒機により、φ3mmのダイを通過させて押出し、麺状の生地を調製した。
【0064】
前記麺状の生地を、コンベクションオーブン(オーブン機能:風速中レベル)にて、80℃で加熱乾燥を行った。
【0065】
80℃での加熱乾燥中、開始後0分、15分、30分、45分、60分の各時点でサンプリングを行った。
【0066】
サンプリングされた各時点の粒状の生地の水分を、常圧加熱105℃-16時間乾燥法により測定した。
【0067】
<結果>
比較例1、実施例21~25での各時点での水分の測定結果を下記表に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
セルロースを含まない比較例1では30分経過時点で約13%の水分であったのに対して、セルロースを含む実施例21~25では水分低下が早く、30分経過時点での水分が4%未満であった。水分含量が10質量%程度以下の麺状の乾燥固形物を製造するために、比較例1では38分程度を要したのに対して、セルロースを含む実施例21~25では22分程度であり、乾燥時間が大幅に短縮された。
【0070】
水分の低減速度は実施例21~25間で差が小さかったことから、粒子径8~10μm程度の結晶セルロース又は繊維長120μm程度の粉末セルロースからなる水不溶性食物繊維を配合し、セルロースの配合量が10%以上程度であれば、乾燥効率が向上することが確認された。