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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ガス精製装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20230814BHJP
   C01B 23/00 20060101ALI20230814BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B01D53/04 110
C01B23/00 F
B01D53/86 150
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021071537
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166371
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】大前 智雄
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090181(JP,A)
【文献】特開2000-024444(JP,A)
【文献】特開2001-248964(JP,A)
【文献】特開昭61-038616(JP,A)
【文献】米国特許第03981699(US,A)
【文献】特開2012-051753(JP,A)
【文献】特開2019-172532(JP,A)
【文献】米国特許第03966433(US,A)
【文献】米国特許第04942019(US,A)
【文献】国際公開第1999/019049(WO,A1)
【文献】特開昭58-67317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/04、53/86
C01B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被精製ガス中の不純物を酸化する触媒を収容した触媒筒及び前記不純物を除去する精製筒、又は被精製ガス中の不純物を除去するゲッター剤を収容したゲッター筒を用いて前記被精製ガスを精製するガス精製装置であって、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒を加熱すること、又は、前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する被精製ガスを加熱すること、で前記触媒又は前記ゲッター剤を加熱する加熱装置と、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する前記被精製ガスと、前記触媒筒又は前記ゲッター筒で処理された処理ガスとを熱交換し、前記被精製ガスを昇温すると共に前記処理ガスを冷却する熱交換器と、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒と、前記加熱装置と、前記熱交換器を収容する真空断熱容器と、を備え
前記触媒筒又は前記ゲッター筒を支持する脚を有し、該脚には前記真空断熱容器への伝熱による熱ロスを防止するための断熱材が設けられていることを特徴とするガス精製装置。
【請求項2】
被精製ガス中の不純物を酸化する触媒を収容した触媒筒及び前記不純物を除去する精製筒、又は被精製ガス中の不純物を除去するゲッター剤を収容したゲッター筒を用いて前記被精製ガスを精製するガス精製装置であって、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒を加熱すること、又は、前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する被精製ガスを加熱すること、で前記触媒又は前記ゲッター剤を加熱する加熱装置と、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する前記被精製ガスと、前記触媒筒又は前記ゲッター筒で処理された処理ガスとを熱交換し、前記被精製ガスを昇温すると共に前記処理ガスを冷却する熱交換器と、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒と、前記加熱装置と、前記熱交換器を収容する真空断熱容器と、を備え、
前記触媒筒又は前記ゲッター筒、及び前記熱交換器が、前記真空断熱容器の外部から前記触媒筒又は前記ゲッター筒に被精製ガスを導入する被精製ガス導入管、及び前記触媒筒又は前記ゲッター筒から前記真空断熱容器の外部に処理ガスを導出する処理ガス導出管によって懸垂支持されていることを特徴とするガス精製装置。
【請求項3】
前記真空断熱容器の内圧Pが1×10-2Pa≦P<大気圧であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被精製ガス中の不純物を除去するゲッター式又は触媒式のガス精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス中に含まれている不純物を除去する手段として、ゲッター式や触媒式のものが知られている。
ゲッター式は、精製対象のガスがアルゴンやヘリウム等の場合に用いられ、特殊なゲッター剤を充填したゲッター筒に被精製ガスを導入することで、被精製ガス中に含まれる窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、水蒸気等の不純物を除去するものである。
ゲッター式のガス精製方法の一例として、特許文献1に開示される「希ガス精製方法」がある。
【0003】
一方、触媒式は、精製対象のガスが酸素や窒素等の場合に用いられ、特殊な触媒を充填した触媒筒に被精製ガスを導入することで、被精製ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素、水素等の不純物を酸化し、さらに吸着材等が充填された精製筒に導入することで、酸化した不純物を除去するものである。
【0004】
上述したゲッター剤や触媒は、高温で活性化状態となり、各不純物との反応や被精製ガスと不純物との反応を促進される。そこで、ゲッター筒や触媒筒を加熱し、高温にした状態で被精製ガスを処理している。その際、ゲッター筒や触媒筒からの放熱によるヒートロスを低減するため、筒の周囲にグラスウールやセラミックウール等の保温材(断熱材)を設置することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-160010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来のゲッター式や触媒式のガス精製装置においては、常時高温に加熱したゲッター筒や触媒筒を用いてガスの精製を行っている。ヒートロス低減のためゲッター筒や触媒筒の外壁に保温材を設置しているものの、放熱量の低減には限りがあり、電力消費量も多大であった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、常時高温に加熱されるゲッター筒や触媒筒のヒートロスを低減し、運転時の電力消費量を低減するガス精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るガス精製装置は、被精製ガス中の不純物を酸化する触媒を収容した触媒筒及び前記不純物を除去する精製筒、又は被精製ガス中の不純物を除去するゲッター剤を収容したゲッター筒を用いて前記被精製ガスを精製するものであって、前記触媒筒又は前記ゲッター筒を加熱すること、又は、前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する被精製ガスを加熱すること、で前記触媒又は前記ゲッター剤を加熱する加熱装置と、前記触媒筒又は前記ゲッター筒に導入する前記被精製ガスと、前記触媒筒又は前記ゲッター筒で処理された処理ガスとを熱交換し、前記被精製ガスを昇温すると共に前記処理ガスを冷却する熱交換器と、前記触媒筒又は前記ゲッター筒と、前記加熱装置と、前記熱交換器を収容する真空断熱容器と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記触媒筒又は前記ゲッター筒、及び前記熱交換器が、前記真空断熱容器の外部から前記触媒筒又は前記ゲッター筒に被精製ガスを導入する被精製ガス導入管、及び前記触媒筒又は前記ゲッター筒から前記真空断熱容器の外部に処理ガスを導出する処理ガス導出管によって懸垂支持されていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記真空断熱容器の内圧Pが1×10-2Pa≦P<大気圧であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、触媒筒又はゲッター筒を加熱すること、又は、触媒筒又はゲッター筒に導入する被精製ガスを加熱すること、で触媒又はゲッター剤を加熱する加熱装置と、触媒筒又はゲッター筒に導入する被精製ガスと、触媒筒又はゲッター筒で処理された処理ガスとを熱交換し、被精製ガスを昇温すると共に処理ガスを冷却する熱交換器と、触媒筒又はゲッター筒と、加熱装置と、熱交換器を収容する真空断熱容器と、を備えたことにより、常時高温に加熱されるゲッター筒や触媒筒のヒートロスを低減し、運転時の電力消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係るガス精製装置(ゲッター式)の要部を説明する図である。
図2図1のガス精製装置全体の具体例を説明する図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るガス精製装置(触媒式)全体の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本実施の形態に係るガス精製装置1は、被精製ガス中の不純物を除去するゲッター剤を収容したゲッター筒3を用いて被精製ガスを精製するものであって、図1に示すように、ゲッター筒3を加熱する加熱装置5と、ゲッター筒3に導入する被精製ガスとゲッター筒3で処理された処理ガスとを熱交換する熱交換器7と、ゲッター筒3、加熱装置5、熱交換器7を収容する真空断熱容器9とを備えている。
上述のように、本実施の形態のガス精製装置1はゲッター式のものであり、アルゴンやヘリウム等のガスの精製に適用することができる。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0014】
<ゲッター筒>
ゲッター筒3は、特殊なゲッター剤を充填した筒であり、アルゴンやヘリウム等の被精製ガス中の不純物を除去するものである。ゲッター筒3によって除去される不純物としては窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、水蒸気等が挙げられる。
【0015】
前述のようにゲッター剤は高温のときに活性化するので、ゲッター筒3を常時加熱して(例えば400℃~600℃)、ゲッター剤を高温の状態に保持している。ガス精製装置1の運転時におけるゲッター筒及びゲッター剤の保持温度を「運転温度」という。加熱されたゲッター筒3に被精製ガスを導入することで、被精製ガスが昇温されるとともに、被精製ガス中の不純物がゲッター表面に不可逆的に反応して取り除かれる。被精製ガスから不純物が除去された高温の処理ガスは、ゲッター筒3から排出されて熱交換器に導入される。
【0016】
<加熱装置>
加熱装置5は、ゲッター筒3内のゲッター剤を加熱して適切な運転温度に維持するためのものであり、ゲッター筒3の外周部に設置された外巻きヒーター等が用いられる。
【0017】
なお、図1に示す加熱装置5は、ゲッター筒3を加熱することでゲッター剤を適切な温度に加熱するものであるが、本発明の加熱装置は、例えばゲッター筒3に導入する被精製ガスを加熱するカートリッジヒーターやフランジヒーターのように、ゲッター筒に導入する被精製ガスを加熱することでゲッター剤を加熱するものであってもよい。即ち、本発明の加熱装置はゲッター筒又は被精製ガスを加熱してゲッター剤を適切な温度に維持できるものであればよい。
【0018】
<熱交換器>
熱交換器7は、ゲッター筒3に導入する被精製ガスとゲッター筒3で処理された処理ガスとを熱交換するものである。熱交換器7に常温の被精製ガスと高温の処理ガスが導入されることで、被精製ガスが昇温されると共に処理ガスが冷却される。
【0019】
ゲッター筒3に導入する被精製ガスを処理ガスとの熱交換によって予め昇温することにより、効率的にゲッター剤を高温に保持でき、加熱装置5の消費電力を抑えることができる。
また、処理ガスを冷却することで配管設備上の効果も得られるが、これについては下記真空断熱容器9の説明にて後述する。
【0020】
<真空断熱容器>
真空断熱容器9は、内部が真空状態の容器であり、真空状態下でゲッター筒3、加熱装置5、熱交換器7及び周辺機器配管を収容している。
真空断熱容器9には、真空断熱容器9の外部からゲッター筒3に被精製ガスを導入するための被精製ガス導入管11、ゲッター筒3から真空断熱容器9の外部に処理ガスを導出するための処理ガス導出管13、ゲッター筒3を支持する脚15、メンテナンス用のホール17、真空断熱容器9内を真空状態に維持するための真空ポンプ19が設けられている。
【0021】
≪被精製ガス導入管≫
被精製ガス導入管11は、真空断熱容器9の外壁を貫通し、熱交換器7を介してゲッター筒3のガス導入側に接続されるものであり、被精製ガス導入管11によって被精製ガスが真空断熱容器9に収容されたゲッター筒3に導入される。
【0022】
≪処理ガス導出管≫
処理ガス導出管13は、ゲッター筒3のガス排出側に接続され、熱交換器7を介して真空断熱容器9の外壁を貫通するものであり、処理ガス導出管13によって処理ガスが真空断熱容器9の外部に導出される。
【0023】
≪脚≫
脚15は、ゲッター筒3の下部に設けられて、ゲッター筒3を支持するものである。脚15を設けることにより伝熱によって真空断熱容器9の外部への熱ロスが生じる恐れがあるので、これを低減するため、脚15には断熱材21が設けられている。
【0024】
もっとも、ゲッター筒3が小型の場合には脚15は必須ではなく、前述した被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13によって、ゲッター筒3を懸垂支持するようにしてもよい。このようにすることで、伝熱の原因となる脚15を設置する必要がなくなるので、熱ロスを更に低減できて好ましい。この場合、被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13にU字管を用いるなどして、ガス精製装置1の運転~停止の温度変化による配管の熱応力を吸収する構造としても良い。
【0025】
上記は真空断熱容器9内部におけるゲッター筒3の支持方法に関して述べたものであるが、これは熱交換器7に関しても同様である。熱交換器7が小型の場合には被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13を用いて懸垂支持するようにしてもよいし、配管による懸垂支持が困難な場合には、断熱材21が設けられた脚15を用いて熱交換器7を支持するようにしてもよい。
【0026】
≪ホール≫
ホール17は、開閉可能に設けられたものであり、加熱装置5のメンテナンスや、ゲッター筒3及びゲッター筒3内のゲッター剤等の交換を行うためのものである。
【0027】
≪真空ポンプ≫
真空ポンプ19は、真空断熱容器9の外側に設けられ、真空断熱容器9の内部を真空状態(大気圧以下)に保持するものである。真空断熱容器9の内圧Pが低い(真空度が高い)ほど、断熱効果が期待できるので望ましい。もっとも、内圧Pを1×10-2Pa程度まで下げると、それ以上内圧Pを下げても(真空度を上げても)断熱効果は上がりにくいので、内圧Pは1×10-2Pa≦P<大気圧とするのが好ましい。
【0028】
また、真空断熱容器9内を真空状態に維持するために、真空部に吸着剤を充填してもよい。これにより真空度がより向上する。尚、経年劣化に伴い真空度が低下すると、微少残留ガスの対流によって伝熱ロスが生じる場合がある。これを防止するため、真空断熱容器9内にパーライトを充填してもよい。
【0029】
上記のように構成された本実施の形態におけるガス精製装置1の動作について、図2を用いて説明する。
図2は、図1のガス精製装置1の具体例であって、ゲッター筒3を用いてアルゴン、ヘリウム等に含まれる不純物(炭化水素、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、水分等)を除去して精製するものである。真空断熱容器9の内外には運用に必要な各種計測器等が設けられているがここでは説明を省略する。また、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
不純物を含むアルゴン、ヘリウム等の被精製ガス(Feed Gas)は、被精製ガス導入管11により真空断熱容器9に収容された熱交換器7を通流し、ゲッター筒3に導入される。ゲッター筒3は加熱装置7によって約400℃から600℃に加熱されており、ゲッター筒3に収容されたゲッター剤は活性化状態となっている。
ゲッター筒3に導入された被精製ガスは昇温されると共に、被精製ガスに含まれる不純物が高温のゲッター剤の表面と不可逆的に反応し、被精製ガスから不純物が取り除かれる。
【0031】
不純物が取り除かれた高温の処理ガスは、処理ガス導出管13によって熱交換器7に導入される。上述のように、熱交換器7には常温の被精製ガスが導入されているので、常温の被精製ガスと高温の処理ガスとで熱交換が行われ、被精製ガスが昇温されるとともに、処理ガスが冷却される。
【0032】
高温の処理ガスが熱交換器7に導入された後は、被精製ガスが予め昇温されてからゲッター筒3に導入されるので、ゲッター筒3における加熱効率が良くなる。
一方、冷却されて常温になった処理ガスは、処理ガス導出管13によって真空断熱容器9の外部に導出されて、精製ガス(purified Gas)として回収される。
【0033】
上述した本実施の形態のガス精製装置1においては、真空状態下でゲッター筒3を収容しているので、従来用いられていた保温用の断熱材を設置することなく、ゲッター筒3の外壁からの放熱量(輻射、対流)を大幅に低減することができ、加熱装置5の電力消費量を低減できる。以下、この放熱量を低減する効果に関し、具体例をあげて説明する。
【0034】
表1は、図2に示したゲッター式のガス精製装置1と従来装置を用いてそれぞれ同条件でガス精製を行った場合に想定される放熱量(輻射、対流)の違いを示したものである。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、被精製ガスであるアルゴン20Nm3/hに対し、筒径140mmのゲッター筒を用いて運転温度400℃でガス精製を行った場合、従来装置では、ゲッター筒の外壁から放熱により約550Wの熱損失が考えられるが、図2のガス精製装置1では、放熱による熱損失はほぼ無いと考えられる。これにより、加熱装置5の電気消費量を低減することができて経済的である。
【0037】
さらに、従来では、ゲッター筒3の外周に設置された加熱装置5のさらに外周に断熱材が設けられており、加熱装置5の定期メンテナンスの度に断熱材を取り外す必要があったが、上述のように本実施の形態においては断熱材の設置が不要であるので、メンテナンス時の作業性が向上する。
【0038】
また、ゲッター筒3と共に熱交換器7を真空断熱容器9内に収容しているので、高温の処理ガスを熱交換器7によって冷却してから真空断熱容器9の外部に導出することができる。したがって、真空断熱容器9を貫通する部分の被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13はどちらも常温であるので、真空断熱容器9の材料及び被精製ガス導入管11、処理ガス導出管13の貫通部分において、ゲッター筒3の運転温度(400℃~600℃)を考慮した設計が不要であり、通常の手段・構造(溶接接合、フランジ接合等)を適用できる。
【0039】
また、熱交換器7の一部や熱交換器7~ゲッター筒3間の配管は、ゲッター筒3と同様に高温となるものの、高温となる部分は真空断熱容器9内に収容されているので、保温工事、断熱工事、火傷防止措置等も不要である。
【0040】
[実施の形態2]
実施の形態1のガス精製装置1はゲッター筒3を用いてガスを精製するゲッター式のものであったが、本実施の形態では触媒筒と精製筒を用いてガスを精製する触媒式のものについて説明する。
【0041】
本実施の形態に係るガス精製装置23は、被精製ガス中の不純物を酸化する触媒を収容した触媒筒25及び不純物を除去する精製筒27を用いて被精製ガスを精製するものであって、図3に示すように、触媒筒25を加熱する加熱装置5と、触媒筒25に導入する被精製ガスと触媒筒25で処理された処理ガスとを熱交換する熱交換器7と、触媒筒25、加熱装置5、熱交換器7を収容する真空断熱容器9とを備えている。
上述のように、本実施の形態のガス精製装置23は触媒式のものであり、酸素や窒素等のガスの精製に適用することができる。
図3において、図1図2と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し、触媒式の特徴部分についてのみ、以下詳細に説明する。
【0042】
<触媒筒>
触媒筒25は、特殊な触媒を充填した筒であり、酸素や窒素等の被精製ガス中の不純物を酸化するものである。触媒筒25によって酸化される不純物としては炭化水素、一酸化炭素、水素等が挙げられる。
【0043】
また、前述のように触媒は高温のときに活性化するので、触媒筒25を常時加熱して、触媒を高温の状態に保持している。ガス精製装置23の運転時における触媒筒及び触媒の保持温度を「運転温度」という。触媒筒に収容される触媒の種類及び運転温度は、被精製ガスに含まれる不純物濃度、求められる精製レベル等により大きく異なる。例えば、被精製ガスが酸素ガスの場合、被精製ガス中に含まれる炭化水素の酸化に用いられる触媒の運転温度は200℃~350℃である場合が多い。
上記のように加熱された触媒筒25に被精製ガスを導入することで、被精製ガスが昇温されるとともに、被精製ガス中の不純物が触媒によって酸化される。不純物が酸化された高温の処理ガスは、触媒筒25から排出されて熱交換器7に導入される。
【0044】
本実施の形態の真空断熱容器9は、図1で説明した真空断熱容器9におけるゲッター筒3を触媒筒25に代えたものであるので、図1のゲッター筒3を触媒筒25に読み替えて、以下説明する。なお、実施の形態1における「処理ガス」は、ゲッター筒3によって被精製ガスから不純物が除去されたものであったが、本実施の形態における「処理ガス」は、触媒筒25によって被精製ガス中の不純物が酸化されたものである。
【0045】
真空断熱容器9には、真空断熱容器9の外部から触媒筒25に被精製ガスを導入するための被精製ガス導入管11、触媒筒25から真空断熱容器9の外部に処理ガスを導出するための処理ガス導出管13、触媒筒25を支持する脚15、メンテナンス用のホール17、真空断熱容器9内を真空状態に維持するための真空ポンプ19が設けられている。上記の真空断熱容器9に関する各構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0046】
また、本実施の形態においても実施の形態1と同様に、触媒筒25を支持する脚15は必須ではなく、触媒筒25が小型の場合には、被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13によって、触媒筒25を懸垂支持するようにしても良い。また、被精製ガス導入管11及び処理ガス導出管13にU字管を用いるなどして、ガス精製装置23の運転~停止の温度変化による配管の熱応力を吸収する構造としても良い。
【0047】
さらに、実施の形態1と同様に、真空断熱容器9の内圧Pは1×10-2Pa≦P<大気圧とするのが好ましい。
【0048】
<精製筒>
精製筒27は、触媒筒25によって処理された処理ガスに含まれる酸化した不純物を除去するものである。精製筒27としては、例えば2塔切り替え式の吸着塔を用いることが出来る(図3参照)。
【0049】
上記のように構成された本実施の形態におけるガス精製装置23の動作について、被精製ガスの具体例をあげて説明する。下記は、不純物として炭化水素を含む酸素ガスを被精製ガスとした場合の例である。
【0050】
被精製ガスである炭化水素を含有する常温の酸素ガス(Feed Gas)は、被精製ガス導入管11により真空断熱容器9に収容された熱交換器7を通流し、触媒筒25に導入される。触媒筒25は加熱装置5によって約200℃から350℃に加熱されており、触媒筒25に収容された触媒は活性化状態となっている。
触媒筒25に導入された酸素ガスは昇温されると共に、酸素ガス中の不純物である炭化水素が触媒によって酸化され、CO2、H2Oとなる。
【0051】
不純物としてCO2、H2Oを含む高温の酸素ガス(処理ガス)は、処理ガス導出管13によって熱交換器7に導入される。上述のように、熱交換器7には常温の被精製ガス(炭化水素を含む酸素ガス)が導入されているので、常温の被精製ガスと高温の処理ガスとで熱交換が行われ、被精製ガスが昇温されるとともに、処理ガスが冷却される。
【0052】
上述のように、高温の処理ガスが熱交換器7に導入された後は、被精製ガスが予め昇温されてから触媒筒25に導入されるので、触媒筒25における加熱効率が良くなる。
一方、冷却されて常温になった処理ガス(CO2、H2Oを含む酸素ガス)は、処理ガス導出管13によって真空断熱容器9の外部に導出されて、いずれかの精製筒27に導入される。精製筒27に導入された処理ガスは、CO2、H2Oが除去され、精製された酸素ガス(purified Gas)として回収される。
【0053】
上述した本実施の形態のガス精製装置23においても、実施の形態1で説明したゲッター式のガス精製装置1と同様に、従来用いられていた保温用の断熱材を設置することなく、触媒筒25の外壁からの放熱量(輻射、対流)を大幅に低減することができ、加熱装置5の電力消費量を低減できる。以下、この放熱量を低減する効果に関し、具体例をあげて説明する。
【0054】
表2は、図3に示した触媒式のガス精製装置23と従来装置を用いてそれぞれ同条件でガス精製を行った場合に想定される放熱量(輻射、対流)の違いを示したものである。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、被精製ガスである酸素ガス50Nm3/hに対し、筒径160mmの触媒筒25を用いて運転温度350℃でガス精製を行った場合、従来装置では、触媒筒の外壁からの放熱により約400Wの熱損失が考えられるが、図3のガス精製装置23では、放熱による熱損失はほぼ無いと考えられる。これにより、加熱装置5の電気消費量を低減することができて経済的である。
また、上記放熱量を低減する効果以外にも、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0057】
1 ガス精製装置(実施の形態1)
3 ゲッター筒
5 加熱装置
7 熱交換器
9 真空断熱容器
11 被精製ガス導入管
13 処理ガス導出管
15 脚
17 ホール
19 真空ポンプ
21 断熱材
23 ガス精製装置(実施の形態2)
25 触媒筒
27 精製筒
図1
図2
図3