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  • 特許-非水電解液二次電池用積層セパレータ 図1
  • 特許-非水電解液二次電池用積層セパレータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用積層セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20230814BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230814BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20230814BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230814BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230814BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230814BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021104360
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2022013778
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020113259
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 健作
(72)【発明者】
【氏名】橋脇 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】林 英里
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-040999(JP,A)
【文献】特開2017-126614(JP,A)
【文献】特開2018-060777(JP,A)
【文献】特開2007-299612(JP,A)
【文献】特開2017-098239(JP,A)
【文献】特開2008-300362(JP,A)
【文献】特開2015-037078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルムと多孔質層とを備えている非水電解液二次電池用積層セパレータであって、
上記多孔質層は、バインダー樹脂およびフィラーを含んでおり、
下記耐熱性試験を課した際に、開口部の面積が7.0mm以下であり、
上記多孔質層におけるフィラーの含有量は、当該多孔質層の重量を100重量%とすると、40重量%以上、70重量%以下であり、
上記バインダー樹脂は、アラミド樹脂を含んでおり、
上記アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合であり、
(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち40%以上が電子吸引性基を有しており、
(v)酸クロリド由来のユニットのうち20%以下が電子吸引性基を有している、非水電解液二次電池用積層セパレータ:
ステップ1.リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な正極活物質を含む正極と、上記非水電解液二次電池用積層セパレータと、リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な負極活物質を含む負極とを、この順で、上記多孔質層と上記正極が備える正極活物質層とが接触するように積層した積層体を、非水電解液に含浸させ、試験用電池を作製する;
ステップ2.上記試験用電池に対し、25℃、1Cの電流で4.6V(vs Li/Li+)まで定電流充電した後に、25℃、4.6V(vs Li/Li+)の条件にて、168時間トリクル充電を課す;
ステップ3.ステップ2を経た上記試験用電池から、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出す;
ステップ4.450℃、直径2.2mmの金属芯を、下方に荷重をかけることなく、上記金属芯の先端部を上記非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側の表面に接触した位置に保持することによって開口部を形成し、上記金属芯を、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側から貫通させる。
(ここで、上記正極は、アルミニウム箔上にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)が積層された正極であり、
上記負極は、銅箔上に天然黒鉛が積層された負極であり、
上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製された非水電解液である。)
【請求項2】
上記フィラーは、金属酸化物フィラーである、請求項1に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項3】
上記多孔質層に含まれている上記アラミド樹脂は、(X2/X1)×100≧80(%)の関係を満たしている、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
(式中、X1は、(a)上記ステップ2のトリクル充電を開始する前に、上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範
囲における最大ピーク強度;または(b)上記ステップ2のトリクル充電後に、上記多孔質層の表面のうち、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していな
かった表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度であり、
X2は、上記ステップ2のトリクル充電後に、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していた上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度である)
【請求項4】
上記アラミド樹脂は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合としてエーテル結合を有していない、請求項1~3の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項5】
上記電子吸引性基は、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上である、請求項のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項6】
上記アラミド樹脂の固有粘度は1.4~4.0dL/gである、請求項のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項7】
正極と、
請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、
負極と、
がこの順に積層されている、非水電解液二次電池用部材。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ、または、請求項に記載の非水電解液二次電池用部材、を備えている、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液二次電池用積層セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められている。
【0003】
非水電解液二次電池には、高電圧条件下での充電が可能であることが求められる。そのため、非水電解液二次電池用積層セパレータには、前記充電を行った後であっても変質せず、かつ、耐熱性および耐劣化性に優れることが求められる。
【0004】
特許文献1には、高分子鎖末端の芳香族環がアミノ基を有さず、前記芳香族環が電子吸引性置換基を有する全芳香族ポリアミドが、高電圧が付与された場合であっても変色が少ないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-40999号公報(2003年2月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、4.5Vの状態を1日間保持する条件にて定電流定電圧充電を実施した場合に、平板電池の部材として用いた積層セパレータの変色が少ないという結果は示されている。
【0007】
しかし、例えばトリクル充電を行う場合、1日間よりも相当程度長い時間、高電圧下での充電を行う場合が多いが、そのような場合にも積層セパレータが変質せず、かつ、耐熱性および耐劣化性に優れるということは何ら示されていない。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、高電圧条件下で長時間、充電を行った後であっても変質せず、かつ、耐熱性および耐劣化性に優れる非水電解液二次電池用積層セパレータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]~[12]に示す発明を含む。
【0010】
[1]ポリオレフィン多孔質フィルムと多孔質層とを備えている非水電解液二次電池用積層セパレータであって、
上記多孔質層は、バインダー樹脂およびフィラーを含んでおり、
下記耐熱性試験を課した際に、開口部の面積が7.0mm以下である、非水電解液二次電池用積層セパレータ:
ステップ1.リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な正極活物質を含む正極と、上記非水電解液二次電池用積層セパレータと、リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な負極活物質を含む負極とを、この順で、上記多孔質層と上記正極が備える正極活物質層とが接触するように積層した積層体を、非水電解液に含浸させ、試験用電池を作製する;
ステップ2.上記試験用電池に対し、25℃、1Cの電流で4.6V(vs Li/Li+)まで定電流充電した後に、25℃、4.6V(vs Li/Li+)の条件にて、168時間トリクル充電を課す;
ステップ3.ステップ2を経た上記試験用電池から、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出す;
ステップ4.450℃、直径2.2mmの金属芯を、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側から貫通させる。
(ここで、上記正極は、アルミニウム箔上にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)が積層された正極であり、
上記負極は、銅箔上に天然黒鉛が積層された負極であり、
上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製された非水電解液である。)。
【0011】
[2]上記多孔質層におけるフィラーの含有量は、当該多孔質層の重量を100重量%とすると、40重量%以上、70重量%以下である、[1]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0012】
[3]上記フィラーは、金属酸化物フィラーであり、
上記バインダー樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種類以上を含んでいる、[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0013】
[4]上記多孔質層は、アラミド樹脂を含んでいる、[1]から[3]のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0014】
[5]上記多孔質層に含まれている上記アラミド樹脂は、(X2/X1)×100≧80(%)の関係を満たしている、[4]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。(式中、X1は、(a)上記ステップ2のトリクル充電を開始する前に、上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度;または(b)上記ステップ2のトリクル充電後に、上記多孔質層の表面のうち、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していなかった表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度であり、
X2は、上記ステップ2のトリクル充電後に、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していた上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度である)。
【0015】
[6]上記アラミド樹脂は、
(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、
(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、
(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合である、[4]または[5]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0016】
[7]上記アラミド樹脂は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合としてエーテル結合を有していない、[6]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0017】
[8]上記アラミド樹脂は、
(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち40%以上が電子吸引性基を有しており、
(v)酸クロリド由来のユニットのうち20%以下が電子吸引性基を有している、[6]または[7]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0018】
[9]上記電子吸引性基は、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0019】
[10]上記アラミド樹脂の固有粘度は1.4~4.0dL/gである、[4]~[8]のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0020】
[11]正極と、
[1]~[10]のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、
負極と、
がこの順に積層されている、非水電解液二次電池用部材。
【0021】
[12][1]~[10]のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ、または、[11]に記載の非水電解液二次電池用部材、を備えている、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、高電圧条件下で長時間、充電を行った後であっても変質せず、かつ、耐熱性および耐劣化性に優れる非水電解液二次電池用積層セパレータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1における耐熱性試験のステップ4の手順の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態1における耐熱性試験の結果の解釈法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0025】
[実施形態1:非水電解液二次電池用積層セパレータ]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルム(以下、単に「多孔質フィルム」とも称する)と多孔質層とを備えている非水電解液二次電池用積層セパレータであって、
上記多孔質層は、バインダー樹脂およびフィラーを含んでおり、
下記耐熱性試験を課した際に、開口部の面積が7.0mm以下である、非水電解液二次電池用積層セパレータである。
ステップ1.リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な正極活物質を含む正極と、上記非水電解液二次電池用積層セパレータと、リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な負極活物質を含む負極とを、この順で、上記多孔質層と上記正極が備える正極活物質層とが接触するように積層した積層体を、非水電解液に含浸させ、試験用電池を作製する;ステップ2.上記試験用電池に対し、25℃、1Cの電流で4.6V(vs Li/Li+)まで定電流充電した後に、25℃、4.6V(vs Li/Li+)の条件にて、168時間トリクル充電を課す;
ステップ3.ステップ2を経た上記試験用電池から、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出す;
ステップ4.450℃、直径2.2mmの金属芯を、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側から貫通させる。
(ここで、上記正極は、アルミニウム箔上にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)が積層された正極であり、
上記負極は、銅箔上に天然黒鉛が積層された負極であり、
上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製された非水電解液である。)。
【0026】
(1.耐熱性試験)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記耐熱性試験を課した際に、開口部の面積が7.0mm以下である。上記非水電解液二次電池用積層セパレータは、当該構成を充足するため、後述する実施例に示すように、高電圧条件下で長時間、充電を行った後であっても変質せず、かつ、耐熱性および耐劣化性に優れるという効果を奏する。
【0027】
(1-1.ステップ1)
上記ステップ1で用いる試験用電池を構成する正極は、リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な正極活物質を含み、上記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)である。リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、平均放電電位が高いため好ましい。
【0028】
上記正極活物質は、例えば、結着剤、導電助剤等と共に集電体上に積層され、正極活物質層として成形されることが好ましい。上記集電体は、アルミニウム箔である。
【0029】
上記正極の製造方法としては、例えば、正極活物質、導電助剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電助剤および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0030】
上記ステップ1で用いる試験用電池を構成する負極は、リチウムイオンをドープおよび脱ドープ可能な負極活物質を含み、上記負極活物質は天然黒鉛である。
【0031】
上記負極活物質は、例えば、結着剤、導電助剤等と共に集電体上に積層され、負極活物質層として成形されることが好ましい。上記集電体は、銅箔である。
【0032】
上記天然黒鉛は、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい)などの理由から好ましく用いられる。
【0033】
上記負極の製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。上記ペーストには、好ましくは上記導電助剤および上記結着剤が含まれる。
【0034】
ステップ1では、上記正極と、上記非水電解液二次電池用積層セパレータと、上記負極とを、この順で、上記多孔質層と上記正極が備える正極活物質層とが接触するように積層し、積層体を得る。「多孔質層と正極活物質層とが接触する」とは、互いに対向する上記正極の正極活物質層の表面と上記多孔質層の表面とが、少なくとも一部分において重なり合うことを言う。
【0035】
上記多孔質層のうち、上記正極活物質層と接触する部分には、試験用電池がトリクル充電に供された場合、高電圧が長時間付与される。そのため、上記部分は、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの高電圧による劣化を判定しやすい部分となる。それゆえ、上記多孔質層と上記正極活物質層とが接触するように積層を行う。
【0036】
このとき、互いに対向する上記正極活物質層の表面と上記多孔質層の表面とは、当該正極活物質層の表面全部が、当該多孔質層の表面と接触していることが好ましい。また、当該多孔質層の表面は、当該正極活物質層の表面よりも表面積が大きく、かつ、当該多孔質層の表面の一部は、当該正極活物質層の表面と接触していないことが好ましい。当該正極活物質層の表面と重なり合っていない当該多孔質層の表面は、集電体の表面と接触していてもよい。
【0037】
当該多孔質層の表面のうち、当該正極活物質層の表面と接触していない部分は、トリクル充電を課した場合でも変質が生じない。よって、当該部分は、トリクル充電を開始する前の多孔質層と同じ状態にあると言える。それゆえ、当該部分を、トリクル充電を開始する前の多孔質層の表面とみなすことができる。
【0038】
上記積層体を非水電解液に含浸させることにより、試験用電池を作製することができる。含浸の方法は特に限定されない。例えば、試験用電池の筐体となる容器に上記積層体を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉する方法を挙げることができる。
【0039】
上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製された非水電解液である。当該非水電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難くいため好ましい。
【0040】
(1-2.ステップ2)
ステップ2は、ステップ1で得た試験用電池に対し、25℃、1Cの電流で4.6V(vs Li/Li+)まで定電流充電した後に、25℃、4.6V(vs Li/Li+)の条件にて、168時間トリクル充電を課す工程である。
【0041】
上記条件のトリクル充電を課すことにより、上記多孔質層には、長時間、高電圧が付与される。このとき、多孔質層が耐熱性に乏しい場合は、当該多孔質層に変色等の変質が現れ、後述するステップ4において、大きな亀裂が発生する。よって、ステップ2は、上記多孔質層の耐熱性を見極めるために、あえて上記多孔質層の劣化を促すステップであると言える。
【0042】
(1-3.ステップ3)
ステップ3は、ステップ2を経た上記試験用電池から、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出す工程である。上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出す方法は、特に限定されるものではなく、常法にしたがって上記試験用電池を解体し、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出せばよい。
【0043】
(1-4.ステップ4)
ステップ4は、450℃、直径2.2mmの金属芯を、上記試験用電池から取り出した上記非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側から貫通させる工程である。前述したように、多孔質層のうち、上記正極活物質層と接触する部分に高電圧が長時間付与されるため、上記多孔質層が上記ポリオレフィン多孔質フィルムの両面に形成されている場合は、上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層側から金属芯を貫通させる。
【0044】
図1は、ステップ4の手順の一例を示す図である。図1の左側は、ステップ4を実施するために用いるはんだ試験装置の外観を示す図である。はんだ試験装置としては、例えば、太洋電機産業製のRX-802ASを用いることができる。また、図1に示すa~dは、ステップ4がaからdに向かって進行することを示している。
【0045】
図1の左側の図に点線の枠で示す台上に、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを、上記多孔質層側を上にして載置する。次に、台の上方に設置した450℃、直径2.2mmの金属芯を上記多孔質層に近接させ、図1のaに示すように、先端部を上記多孔質層の表面に接触させる。
【0046】
このとき、上記金属芯は、下方に荷重をかけることなく、先端部を、上記多孔質層の表面に接触した位置に保持する。上記金属芯としては、例えば、図1に示すように半田ごてを用いることができる。上記450℃とは、上記金属芯全体の温度であり、直径2.2mmとは、上記金属芯の先端部の直径である。
【0047】
図1のaは、上記先端部を上記多孔質層の表面に接触させた直後の様子を示している。上記先端部を上記位置に保持することにより、上記金属芯からの熱が上記非水電解液二次電池用積層セパレータに伝播し、図1のaに示すように、上記先端部を中心とした略同心円状の領域(以下、「領域1」と称する)が生じる。これは、ポリオレフィン多孔質フィルムを構成するポリオレフィン(ポリエチレン)が溶融したことによって生じた領域である。
【0048】
図1のbは、図1のaよりも時間が経過した際の様子を示している。熱履歴に伴い、図1のaよりも領域1が大きくなっており、上記先端部の外側に新たな円形の領域も形成されている。
【0049】
図1のcは、図1のbよりも時間が経過した際の様子を示している。上記先端部の周囲には黒い開口部が生じ、上記先端部は上記非水電解液二次電池用積層セパレータを貫通している。開口部の外側には、開口部に隣接して明瞭な円形の領域(以下、「領域2」と称する)が生じている。これは、ポリオレフィン多孔質フィルムを構成するポリオレフィン(ポリエチレン)が、上記多孔質層が含有するバインダー樹脂の内部まで溶融したことにより生じた領域である。さらにその外側には、図1のaに示したポリオレフィンが溶融した領域が存在している。
【0050】
図1のdは、上記金属芯を上記非水電解液二次電池用積層セパレータから離間させ、ステップ4を終了した直後の様子を示す図である。図1のaからdまでの所要時間は、10秒である。dでは、開口部から、開口部の外側に隣接した円に向かって、突起状の紋様が見られている。これは上記非水電解液二次電池用積層セパレータに生じた亀裂である。
【0051】
図2は、上記耐熱性試験の結果の解釈法についての説明図である。図2の「結果解析」に示す1は上記領域1であり、基材を構成するポリエチレンが溶融した半透明の領域である。2は上記領域2であり、ポリエチレンが、上記多孔質層が含有するバインダー樹脂の内部まで溶融したことにより生じた透明な領域である。3は、ポリエチレンが酸化により劣化したことによって生じたと考えられる茶色がかった白色の領域である。4は、上記多孔質層がカールしている領域である。5は亀裂であり、6は開口部である。「MD」は、Machine Directionの略称である。
【0052】
全ての亀裂が領域2で止まった場合は、図2の「(良い)」に示すように、良好な結果と判定することができる。領域2を超える亀裂と、領域2で止まった亀裂があった場合は、やや悪い結果と判定することができる。また、全ての亀裂が領域2を超えて領域1に達する場合は悪い結果と判定することができる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、以上の耐熱性試験を課した際に、開口部の面積が7.0mm以下である。つまり、ステップ4終了後に測定した開口部の面積が、7.0mm以下である。
【0054】
「開口部の面積が、7.0mm以下」という構成は、図2の「(良い)」に示す結果に対応する。上記構成であれば、非水電解液二次電池用積層セパレータの変質は十分抑制されていると言える。したがって、このとき、上記非水電解液二次電池用積層セパレータは、高電圧条件下での耐熱性および耐劣化性に優れると言える。
【0055】
上記開口部の面積は、より耐熱性に優れた非水電解液二次電池用積層セパレータを提供する観点から、7.0mm以下であることがより好ましく、5.0mm以下であることが特に好ましい。上記面積は小さいほど好ましいが、実際上、下限値は1.0mm程度である。上記面積は、光学顕微鏡の画像解析方法によって測定することができる。
【0056】
上記開口部の面積は、例えば、耐熱性を有するアラミド樹脂をポリオレフィン多孔質フィルムに塗工することにより、7.0mm以下に制御することができる。
【0057】
(2.多孔質層)
上記多孔質層は、上記多孔質フィルムの少なくとも一方の面に積層されて、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを構成する。多孔質層は、絶縁性の多孔質層であることが好ましい。
【0058】
上記多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった層である。上記多孔質層は、バインダー樹脂およびフィラーを含んでいる。
【0059】
上記フィラーは、耐熱性フィラーであることが好ましい。上記耐熱性フィラーは、無機フィラーまたは有機フィラーであり得、無機フィラーを含むことが好ましい。上記耐熱性フィラーは、融点が150℃以上であるフィラーを意味する。
【0060】
上記多孔質層におけるフィラーの含有量は、上記多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、当該多孔質層の重量を100重量%とすると、40重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。上記含有量は、50重量%以上、70重量%未満であることがより好ましい。
【0061】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物から選ばれる1種以上の無機フィラーを用いることができる。
【0062】
中でも、フィラーは、上記多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、金属酸化物フィラーであることが好ましい。「金属酸化物フィラー」とは、金属酸化物からなる無機フィラーのことである。金属酸化物フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウムおよび/または酸化マグネシウムからなる無機フィラーを挙げることができる。
【0063】
有機フィラーを構成する有機物としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単量体の単独重合体或いは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン/6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン/エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸;レゾルシノール樹脂等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0064】
上記フィラーの平均粒子径(D50)は、0.001μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、8μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、5μm以下であることが更に好ましい。上記フィラーの平均粒子径は、日揮装株式会社製のMICROTRAC(MODEL:MT-3300EXII)を用いて測定した値である。
【0065】
上記フィラーの形状は、原料である有機物または無機物の製造方法、多孔質層を形成するための塗工液を作製する際のフィラーの分散条件等によって変化するため、球形、長円形、矩形、瓢箪形等の形状、或いは特定の形状を有さない不定形等、何れの形状であってもよい。
【0066】
上記バインダー樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。係る観点から、上記バインダー樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種類以上を含んでいることが好ましい。
【0067】
上記多孔質層は、アラミド樹脂を含んでいることが好ましい。つまり、上記ポリアミド系樹脂は、電池内部短絡時の安全性向上等の観点から、アラミド樹脂であることが好ましい。
【0068】
アラミド樹脂には、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどが含まれる。芳香族ポリアミドとしては、パラ(p)-芳香族ポリアミドおよびメタ(m)-芳香族ポリアミドからなる群から1種以上選択される樹脂が好ましい。
【0069】
アラミド樹脂としては、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0070】
このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンテレフタルアミド)及びパラフェニレンテレフタルアミド/メタフェニレンテレフタルアミド共重合体が好ましい。
【0071】
上記多孔質層に含まれている上記アラミド樹脂は、(X2/X1)×100≧80(%)の関係を満たしていることが好ましい。
(式中、X1は、(a)上記ステップ2のトリクル充電を開始する前に、上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度;または(b)上記ステップ2のトリクル充電後に、上記多孔質層の表面のうち、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していなかった表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度であり、
X2は、上記ステップ2のトリクル充電後に、当該トリクル充電中に上記正極が備える正極活物質層と接触していた上記多孔質層の表面のIR強度をATR-IR法で測定したときの、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度である)
上記1490~1530cm-1の範囲には、アミド基由来のピークが現れる。上記アラミド樹脂が上記関係を満たすということは、トリクル試験を経た後も、上記多孔質層が含有するアラミド樹脂のアミド基の残存率が高いことを意味する。すなわち、高電圧が長時間付与された後でも、アラミド樹脂の構造の保持率が高いことになる。そのため、上記関係を充足する本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、耐熱性および耐劣化性が高いと言える。
【0072】
上記(1-1.ステップ1)で述べたように、多孔質層の表面のうち、正極活物質層の表面と接触していない部分は、トリクル充電を課した場合でも変質が生じないため、当該部分を、トリクル充電を開始する前の多孔質層の表面とみなすことができる。それゆえ、上記X1の(a)の最大ピーク強度と、(b)の最大ピーク強度とは、略同一となるため、上記X1は、上記(a)、(b)のいずれであっても構わない。
【0073】
トリクル充電中に上記正極活物質層と接触していた上記多孔質層の表面は、上記(1-2.ステップ2)で述べたように、あえて上記多孔質層の劣化を促すステップを経ている。それゆえに、上記アラミド樹脂が(X2/X1)×100≧80(%)の関係を満たしている場合、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記ステップを経ているにもかかわらず、劣化に対する良好な耐性を発揮したといえる。
【0074】
上記最大ピークの強度は、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを、ATR-IR法を実施可能な装置に供し、上記多孔質層の表面のIR強度を測定することによって求めることができる。上記装置としては、例えばAgilent社製Cary600 FTIRを用いることができる。
【0075】
上記アラミド樹脂が上記関係を満たすように制御する方法としては、上記アラミド樹脂が下記(i)~(iii)を充足するように、上記アラミド樹脂の分子構造を制御することを挙げることができる。
【0076】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記アラミド樹脂が、(i)主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有しており、(ii)分子の少なくとも一方の末端はアミノ基であり、(iii)主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合のうち、90%超がアミド結合であることが好ましい。
【0077】
上記多孔質層が含有するバインダー樹脂がアラミド樹脂である場合、高電圧環境下で使用した場合、変色が現れやすい等、前述した他のバインダー樹脂よりも耐熱性を維持することが困難である傾向がある。しかし、本発明者は、上記(i)~(iii)を充足させることにより、アラミド樹脂の耐酸化性を向上させることができ、その結果、アラミド樹脂を用いた上記非水電解液二次電池用積層セパレータの耐熱性を大きく向上させることができることを見出した。
【0078】
アラミド樹脂の主鎖とは、例えば、以下の化学式の括弧内に示す構造である。ただし、下記化学式では、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合はアミド結合のみとなっているが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記結合のうち、90%超がアミド結合であればよい。その他の上記結合としては、エーテル結合、スルホニル結合等を挙げることができる。
【0079】
上記結合に占めるアミド結合の割合は、95%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。また、上記アラミド樹脂は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合としてエーテル結合を有していないことが好ましい。
【化1】
【0080】
上記電子吸引性基としては、ハロゲン、-CN、-NO、-NH、-CF、-CCl、-CHO、-COCH、-CO、-COH、-SOCH、-SOH、-OCH等を挙げることができる。上記電子吸引性基は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0081】
中でも、上記電子吸引性基は、価格の観点から一般的に流通している、ハロゲン、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される1種類以上であることが好ましい。
【0082】
上記アラミド樹脂の分子の両端または少なくとも一方の末端はアミノ基である。つまり、上記分子の末端の芳香族環の少なくとも一方がアミノ基を有する。
【0083】
上記(i)~(iii)を充足するアラミド樹脂は、芳香族ジアミンと酸クロリドとを溶媒中で反応させることによって製造することができる。
【0084】
上記アラミド樹脂は、(iv)芳香族ジアミン由来のユニットのうち40%以上が電子吸引性基を有しており、(v)酸クロリド由来のユニットのうち20%以下が電子吸引性基を有していることが好ましい。
【0085】
上記「芳香族ジアミン由来のユニット」とは、-(NH-Ar-NH)-で表される構造単位である。当該構造単位には、末端がアミノ基である構造単位であるNH2-Ar-NH-および-NH-Ar-NH2も含まれる。「当該ユニットのうち40%以上が電子吸引性基を有する」とは、アラミド樹脂の分子内に存在する上記ユニットにおける芳香環(Ar)の40%以上が電子吸引性基を有することを意味する。
【0086】
芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有する割合は、50%以上であることがより好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0087】
上記「酸クロリド由来のユニット」とは、-(CO-Ar-CO)-で表される構造単位である。「当該ユニットのうち20%以下が電子吸引性基を有している」とは、アラミド樹脂の分子内に存在する上記ユニットにおける芳香環(Ar)の20%以下が電子吸引性基を有することを意味する。酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有する割合は、低いほど好ましく、10%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0088】
上記アラミド樹脂が上記(iv)および(v)を充足することにより、前述した耐熱性試験を課した場合に、開口部の面積をより小さくすることができる傾向があるため好ましい。
【0089】
上記(i)~(iii)に加えて上記(iv)および(v)を充足するアラミド樹脂は、原料である芳香族ジアミンおよび酸クロリドにおいて、電子吸引基を有する芳香族ジアミンおよび酸クロリドの割合を制御することによって製造することができる。
【0090】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、上記アラミド樹脂の固有粘度が1.4~4.0dL/gであることが好ましい。上記固有粘度は、例えば国際公開2016/002785に記載の方法によって確認することができる。すなわち、アラミド樹脂0.5gを濃硫酸100mLに溶解させ、毛細管粘度計を用いて測定することができる。上記固有粘度を制御する方法としては、アラミド樹脂の重合時のモノマーの仕込み比率を制御する方法を挙げることができる。
【0091】
(3.非水電解液二次電池用積層セパレータの製造)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、上述したバインダー樹脂およびフィラーを含む塗工液を積層する工程と、上記塗工液中の溶媒を除去する工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0092】
上記塗工液は、バインダー樹脂およびフィラーと、溶媒とを混合することによって得ることができる。上記フィラーの含有量は、多孔質層の耐熱性を向上させる観点から、上記バインダー樹脂および上記フィラーの重量を100重量%としたときに、40~70重量%であることが好ましく、50~70重量%であることがより好ましい。
【0093】
上記溶媒としては、国際公開2016/002785に記載の非極性溶媒が挙げられる。具体的には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これら溶媒は1種類のみを用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0094】
上記塗工液を積層する工程は、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、ダイコーター法によって、上記塗工液を、多孔質フィルムの片面または両面に積層することによって行うことができる。
【0095】
上記塗工液中の溶媒を除去する工程は、上記溶媒を乾燥除去することによって行うことができる。これにより、多孔質フィルム(基材)の片面または両面に多孔質層が形成され、非水電解液二次電池用積層セパレータが得られる。
【0096】
上記溶媒の除去は、例えば以下の方法によって行うこともできる。
【0097】
(1)上記組成物を、基材の片面または両面に塗工した後、その基材をバインダー樹脂に対して貧溶媒である析出溶媒に浸漬することによって、バインダーを析出させ、多孔質層を形成した後、乾燥させ、溶媒を除去する。
【0098】
(2)上記組成物を、基材の片面または両面に塗工した後、低沸点溶媒を用いて、バインダー樹脂を析出させ、多孔質層を形成した後、乾燥させ、溶媒を除去する。
【0099】
上記析出溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトンなどを使用することが出来る。
【0100】
上記多孔質フィルムは、ポリオレフィンを主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。上記多孔質フィルムは、上記多孔質層が形成された上記積層体の基材となる。上記多孔質層は、内部に多数の細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体或いは液体が通過可能となった層である。
【0101】
多孔質フィルムに占めるポリオレフィンの割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であり、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。
【0102】
また、上記ポリオレフィンには、重量平均分子量が5×10~15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィンに重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、上記積層体の強度が向上するため、より好ましい。
【0103】
上記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体が挙げられる。上記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、上記共重合体としては、例えばエチレン/プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0104】
このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン/α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0105】
多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、6~15μmであることがさらに好ましい。
【0106】
多孔質フィルムの単位面積当たりの重量は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、上記単位面積当たりの重量は、4~15g/mであることが好ましく、4~12g/mであることがより好ましく、5~10g/mであることがさらに好ましい。
【0107】
多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で30~500sec/100mLであることが好ましく、50~300sec/100mLであることがより好ましい。多孔質フィルムが上記透気度を有することにより、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0108】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの透気度は、ガーレ値で30~1000sec/100mLであることが好ましく、50~800sec/100mLであることがより好ましい。上記非水電解液二次電池用積層セパレータは、上記透気度を有することにより、非水電解液二次電池において、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0109】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止することができるように、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.30μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましい。
【0110】
上記多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、以下に示す工程を含む方法を挙げることができる。
【0111】
(A)超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウムまたは可塑剤等の孔形成剤と、酸化防止剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を一対の圧延ローラで圧延し、速度比を変えた巻き取りローラで引っ張りながら段階的に冷却し、シートを成形する工程、
(C)得られたシートの中から適当な溶媒にて孔形成剤を除去する工程、
(D)孔形成剤が除去されたシートを適当な延伸倍率にて延伸する工程。
【0112】
[実施形態2:非水電解液二次電池用部材、非水電解液二次電池]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順に積層されている。
【0113】
上記非水電解液二次電池部材は、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを備えているため、上記非水電解液二次電池部材を組み込んだ非水電解液二次電池を高電圧環境下で使用した際に、当該非水電解液二次電池の耐熱性および耐劣化性を向上させることができる。
【0114】
正極、上記非水電解液二次電池用積層セパレータ、負極については、実施形態1で既に説明したとおりである。上記非水電解液二次電池用部材は、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とをこの順で積層することによって製造することができる。
【0115】
<正極>
正極としては、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0116】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。
【0117】
当該材料としては、例えば、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。リチウム複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するリチウム複合酸化物、スピネル構造を有するリチウム複合酸化物、並びに、層状構造及びスピネル構造の両方を有するリチウム複合酸化物からなる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。また、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物も挙げられる。さらに、これらのリチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ca、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びW等の他の元素で置換したものも挙げられる。
【0118】
上記リチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物は、例えば、下記式(2)で表される層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物、下記式(3)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、下記式(4)で表されるスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、下記式(5)で表される固溶体リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられる。
【0119】
Li[Li(Co1-a 1-x]O・・・(2)
(式(2)中、MはNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦x≦0.30、0≦a≦0.5、を満たす。)
Li[Li(Ni1-b 1-y]O・・・(3)
(式(3)中、MはNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦y≦0.30、0≦b≦0.5、を満たす。)
LiMn2-c ・・・(4)
(式(4)中、MはNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0.9≦z、0≦c≦1.5を満たす。)
Li1+w ・・・(5)
(式(5)中、M及びMはAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0<w≦1/3、0≦d≦2/3、0≦e≦2/3、w+d+e=1を満たす。)
上記式(2)~(5)で示されたリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiNi0.8Co0.2、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiMn、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Fe0.5、LiCoMnO、Li1.21Ni0.20Mn0.59、Li1.22Ni0.20Mn0.58、Li1.22Ni0.15Co0.10Mn0.53、Li1.07Ni0.35Co0.08Mn0.50、Li1.07Ni0.36Co0.08Mn0.49等が挙げられる。
【0120】
また、上記式(2)~(5)で示されるリチウム複合酸化物以外のリチウム複合酸化物も好ましく正極活物質として使用することができる。そのようなリチウム複合酸化物としては例えば、LiNiVO、LiV、Li1.2Fe0.4Mn0.4等が挙げられる。
【0121】
リチウム複合酸化物以外で好ましく正極活物質として使用することができる材料としては、例えば、オリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられ、下記式(6)で表されるオリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられる。
【0122】
Li(M PO・・・(6)
(式(6)中、Mは、Mn、Co、またはNiであり、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、またはMoであり、Mは、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、Mは、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、1.2≧a≧0.9、1≧b≧0.6、0.4≧c≧0、0.2≧d≧0、0.2≧e≧0、1.2≧f≧0.9を満たす。)。
【0123】
正極活物質は、正極活物質を構成するリチウム金属複合酸化物の粒子の表面に、被覆層を有することが好ましい。上記被覆層を構成する材料としては例えば、金属複合酸化物、金属塩、ホウ素含有化合物、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、硫黄含有化合物などが挙げられ、これらの中でも金属複合酸化物が好適に用いられる。
【0124】
上記金属複合酸化物としては、リチウムイオン伝導性を有する酸化物が好適に用いられる。このような金属複合酸化物としては、例えば、Liと、Nb、Ge、Si、P、Al、W、Ta、Ti、S、Zr、Zn、V及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素との金属複合酸化物を挙げることができる。正極活物質が被覆層を有すると、当該被覆層が高電圧下での正極活物質と電解質との界面における副反応を抑制し、得られる二次電池の高寿命化を実現することができる。また、正極活物質と電解質との界面における高抵抗層の形成を抑制し、得られる二次電池の高出力化を実現することができる。
【0125】
<非水電解液>
非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiSOF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(COCF)、Li(CSO)、LiC(SOCF、Li10Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlClなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。なかでもリチウム塩としては、フッ素を含むLiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiSOF、LiCFSO、LiN(SOCFおよびLiC(SOCFからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0126】
有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,2-ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3-メチル-2-オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3-プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、またはこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0127】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた非水電解液は、動作温度範囲が広く、高い電圧で使用しても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという利点を有する。
【0128】
また、非水電解液としては、得られる非水電解質二次電池の安全性が高まるため、LiPFなどのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む非水電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電圧で放電させても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0129】
<負極>
負極としては、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0130】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金であって、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープおよび脱ドープが可能な材料などが挙げられる。
【0131】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体などを挙げることができる。
【0132】
上記負極活物質として使用可能な酸化物としては、例えば、SiO、SiOなど式SiO(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO、TiOなど式TiO(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V、VOなど式V(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe、Fe、FeOなど式Fe(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO、SnOなど式SnO(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO、WOなど一般式WO(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;LiTi12、LiVOなどのリチウムとチタンまたはバナジウムとを含有する複合金属酸化物;などを挙げることができる。
【0133】
負極活物質として使用可能な硫化物としては、例えば、Ti、TiS、TiSなど式Ti(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V、VS、VSなど式VS(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe、FeS、FeSなど式Fe(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo、MoSなど式Mo(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS、SnSなど式SnS(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WSなど式WS(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sbなど式Sb(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se、SeS、SeSなど式Se(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0134】
負極活物質として使用可能な窒化物としては、例えば、LiN、Li3-xN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方または両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0135】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質または非晶質のいずれでもよい。これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、主に負極集電体に担持させて、電極として用いられる。
【0136】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
【0137】
また、SiまたはSnを第1の構成元素とし、それに加えて第2、第3の構成元素を含む複合材料が挙げられる。第2の構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム及びジルコニウムのうち少なくとも1種である。第3の構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウム及びリンのうち少なくとも1種である。
【0138】
特に、高い電池容量および優れた電池特性が得られることから、上記金属材料として、ケイ素またはスズの単体(微量の不純物を含んでよい)、SiO(0<v≦2)、SnO(0≦w≦2)、Si-Co-C複合材料、Si-Ni-C複合材料、Sn-Co-C複合材料、Sn-Ni-C複合材料が好ましい。
【0139】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ、または、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材を備えている。
【0140】
上記非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、上記方法にて非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉する方法を挙げることができる。
【0141】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0142】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0143】
<試験方法>
(1.耐熱性試験)
(1-1.試験用電池の正極について)
正極は、正極活物質であるLiNi0.5Co0.2Mn0.3 92重量部、導電材5重量部、および結着剤3重量部を含有し、厚み58μm、密度2.5g/cmである電極フープを株式会社八山から購入して用いた。
【0144】
(1-2.試験用電池の負極について)
負極は、天然黒鉛98重量部、結着剤1重量部、カルボキシメチルセルロース1重量部を含有し、厚み48μm、密度1.5g/cmである電極フープを株式会社八山から購入して用いた。
【0145】
(1-3.試験用電池の作製)
ラミネートパウチ内で、後述する実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータの多孔質層と正極の正極活物質層とが接触するようにして、かつ、上記非水電解液二次電池用積層セパレータのポリエチレン多孔質フィルムと負極の負極活物質層とが接触するようにして、上記正極、上記非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極をこの順で積層(配置)することにより、非水電解液二次電池用部材を得た。
【0146】
このとき、正極の正極活物質層の表面の全部が、多孔質層の表面に接触し、かつ、多孔質層の表面のうち、正極活物質層の表面と接触しない部分が、正極における正極活物質層が形成されていない部分と接触するように、正極および負極を配置した。その結果、多孔質層の表面のうち、正極活物質層の表面と接触しない部分が、正極活物質層を枠状に囲むように配置された。
【0147】
続いて、上記非水電解液二次電池用部材を、アルミニウム層とヒートシール層とが積層されてなる袋に入れ、さらにこの袋に非水電解液を230μL入れた。上記非水電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを3:5:2(体積比)で混合してなる混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して調製した。
【0148】
そして、袋内を減圧しつつ、当該袋をヒートシールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。
【0149】
(1-4.トリクル充電)
実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータを用いて作製した非水電解液二次電池に対し、東洋システム株式会社製の充放電試験装置を用い、25℃、1Cの電流で4.5V(すなわち4.6V(vs Li/Li+))まで定電流充電した後に、25℃、4.5V(すなわち4.6V(vs Li/Li+))の条件にて、168時間トリクル充電を課した。
【0150】
トリクル充電終了後、上記試験用電池を解体し、上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出して、トリクル充電前の多孔質層表面の色と、トリクル充電後の、正極活物質層と接触していた多孔質層表面の色とを、目視で観察して比較した。
【0151】
(1-5.金属芯貫通試験)
実施形態1のステップ4で説明したとおり、図1に示すはんだ試験装置を用い、450℃、直径2.2mmの金属芯を、上記トリクル充電を課した非水電解液二次電池用積層セパレータの、上記正極活物質層と接触していた多孔質層側から貫通させた。上記金属芯の先端部が上記多孔質層の表面に接してから、上記先端部を上記表面から離間させるまでの時間は、10秒であった。金属芯貫通試験終了後、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの開口部の面積を求めた。開口部の面積は、(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-5000を用いて、付属の画像解析ソフトを使用して測定した。
【0152】
(2.IR強度の測定)
実施例および比較例で調製した非水電解液二次電池用積層セパレータの、多孔質層表面のIR強度をATR-IR法によって測定し、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度(X1)を求めた。装置としては、Agilent社製Cary600
FTIRを用いた。
【0153】
また、上記トリクル充電終了後に、解体した試験用電池から取り出した非水電解液二次電池用積層セパレータについて、多孔質層の表面のうち、正極活物質層と接触していた表面のIR強度をATR-IR法によって測定し、1490~1530cm-1の範囲における最大ピーク強度(X2)を求めた。さらに、(X2/X1)×100の値を算出した。
【0154】
[実施例1]
(1.塗工液の調製)
撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する500mLのセパラブルフラスコを使用した。当該フラスコ内に窒素を流入させることにより充分に乾燥させた後、フラスコ内に、有機溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略す)を409.2g入れ、塩化物として塩化カルシウム(200℃で2時間、真空乾燥して使用)を30.8g添加し、100℃に昇温させて塩化カルシウムを完全に溶解させた。その後、得られた溶液の温度を室温(25℃)に戻して、溶液の含水率が500ppmとなるように調整した。
次いで、芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンを18.11g添加し、完全に溶解させた。この溶液の温度を20±2℃に保持しつつ攪拌しながら、酸クロリドとしてのテレフタル酸ジクロリド(以下、TPCと略す)を25.19g添加した。
【0155】
上記の方法にて、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が2.28dL/gであるアラミド樹脂1を得た。
【0156】
得られたアラミド樹脂1の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂1およびフィラーの濃度の合計が6重量%である塗工液1を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂1およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂1、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液1を得た。
【0157】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製)
超高分子量ポリエチレンからなるポリオレフィン樹脂組成物を延伸して得られた多孔質フィルム基材の片面に、グラビアコーターを用いて塗工液1を塗工し、乾燥させて、塗工液1に含まれるアラミド樹脂1を析出させた。これにより、基材表面に多孔質層が積層された非水電解液二次電池用積層セパレータ1を得た。
【0158】
(3.耐熱性試験等)
非水電解液二次電池用積層セパレータ1を、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0159】
[実施例2]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を7.46gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を10.30gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂2を得た。アラミド樹脂2は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.47dL/gであった。
【0160】
得られたアラミド樹脂2の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂2およびフィラーの濃度の合計が6重量%である塗工液2を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂2およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂2、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液2を得た。
【0161】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ2を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0162】
[実施例3]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を2.49gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を3.51gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂3を得た。アラミド樹脂3は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が3.85dL/gであった。
【0163】
得られたアラミド樹脂3の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂3およびフィラーの濃度の合計が2.87重量%である塗工液3を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂3およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂3、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液3を得た。
【0164】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ3を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0165】
[実施例4]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-シアノ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を5.40g、酸クロリドとしてのTPCの添加量を8.15gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂4を得た。アラミド樹脂4は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてシアノ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が2.62dL/gであった。
【0166】
得られたアラミド樹脂4の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂4およびフィラーの濃度の合計が3.00重量%である塗工液4を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂4およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂4、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液4を得た。
【0167】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ4を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0168】
[実施例5]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を5.53g、パラフェニレンジアミンの添加量を5.53gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を9.38gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂5を得た。アラミド樹脂5は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの75%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.55dL/gであった。
【0169】
得られたアラミド樹脂5の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂5およびフィラーの濃度の合計が2.21重量%である塗工液5を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂5およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂5、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液5を得た。
【0170】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ5を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0171】
[実施例6]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を3.72g、パラフェニレンジアミンの添加量を2.81gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を10.48gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂6を得た。アラミド樹脂6は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの50%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が3.67dL/gであった。
【0172】
得られたアラミド樹脂6の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂6およびフィラーの濃度の合計が2.15重量%である塗工液6を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、アラミド樹脂6およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、アラミド樹脂6、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液6を得た。
【0173】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ6を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0174】
[実施例7]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を84.83gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を117.05gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂7を得た。アラミド樹脂7は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が2.40dL/gであった。
【0175】
得られたアラミド樹脂7の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂7およびフィラーの濃度の合計が4.00重量%である塗工液7を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、アラミド樹脂7およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、アラミド樹脂7、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液7を得た。
【0176】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ7を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0177】
[実施例8]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を6.98g、パラフェニレンジアミンの添加量を5.15gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を19.06gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂8を得た。アラミド樹脂8は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの50%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.90dL/gであった。
【0178】
得られたアラミド樹脂8の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂8およびフィラーの濃度の合計が3.00重量%である塗工液8を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を40重量%とするため、アラミド樹脂8およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が40重量%となるように、アラミド樹脂8、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液8を得た。
【0179】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに塗工液8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池用積層セパレータ8を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0180】
[比較例1]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を3.72g、パラフェニレンジアミンの添加量を2.79gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を9.45gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂1を得た。比較用アラミド樹脂1は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの50%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.10dL/gであった。
【0181】
得られた比較用アラミド樹脂1の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂1およびフィラーの濃度の合計が4.51重量%である比較用塗工液1を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂1およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂1、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液1を得た。
【0182】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ1を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0183】
[比較例2]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を1.86g、パラフェニレンジアミンの添加量を4.24gとし、酸クロリドとしてのTPCを9.50gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂2を得た。比較用アラミド樹脂2は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの25%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が0.66dL/gであった。
【0184】
得られた比較用アラミド樹脂2の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂2およびフィラーの濃度の合計が4.51重量%である比較用塗工液2を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂2およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂2、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液2を得た。
【0185】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ2を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0186】
[比較例3]
主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有さず、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.90dL/gである比較用アラミド樹脂3を使用した。
【0187】
比較用アラミド樹脂3の溶液に、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用塗工液3を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を90重量%とするため、比較用アラミド樹脂3およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が90重量%となるように、比較用アラミド樹脂3、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液3を得た。
【0188】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ3を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0189】
[比較例4]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を7.44g、酸クロリドとしてのTPCの添加量を10.29gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂4を得た。比較用アラミド樹脂4は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が2.40dL/gであった。
【0190】
得られた比較用アラミド樹脂4の溶液に、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用塗工液4を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を90重量%とするため、比較用アラミド樹脂4およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が90重量%となるように、比較用アラミド樹脂4、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液4を得た。
【0191】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ4を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0192】
[比較例5]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしてのパラフェニレンジアミンの添加量を13.25gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を24.27gとし、最後に添加する末端封止用の塩化ベンゾイルを5.09g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂5を得た。比較用アラミド樹脂5は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有さず、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有さず、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.78dL/gであった。
【0193】
得られた比較用アラミド樹脂5の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂5およびフィラーの濃度の合計が6.0重量%である比較用塗工液5を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂5およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂5、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液5を得た。
【0194】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ5を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0195】
[比較例6]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしてのパラフェニレンジアミンの添加量を12.77gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を24.71gとし、末端封止用アニリンとして4-アミノベンゾニトリル0.85gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂6を得た。比較用アラミド樹脂6は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有さず、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有さず、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が0.73dL/gであった。
【0196】
得られた比較用アラミド樹脂6の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂6およびフィラーの濃度の合計が6.0重量%である比較用塗工液6を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂6およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂6、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液6を得た。
【0197】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ6を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0198】
[比較例7]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を1.87g、パラフェニレンジアミンの添加量を4.22gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を10.51gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂7を得た。比較用アラミド樹脂7は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの25%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が3.55dL/gであった。
【0199】
得られた比較用アラミド樹脂7の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末と、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末とをそれぞれ100重量部ずつ添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂7およびフィラーの濃度の合計が2.21重量%である比較用塗工液7を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を66重量%とするため、比較用アラミド樹脂7およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が66重量%となるように、比較用アラミド樹脂7、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液7を得た。
【0200】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ7を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0201】
[比較例8]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての2-クロロ-1,4-フェニレンジアミンの添加量を11.20gとし、酸クロリドとしての4,4'-オキシビス(ベンゾイルクロリド)の添加量を10.51gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂8を得た。比較用アラミド樹脂8は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の66%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの100%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.50dL/gであった。
【0202】
得られた比較用アラミド樹脂8の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂8およびフィラーの濃度の合計が6.00重量%である比較用塗工液8を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、比較用アラミド樹脂8およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、比較用アラミド樹脂8、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液8を得た。
【0203】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ8を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0204】
[比較例9]
(1.塗工液の調製)
芳香族ジアミンとしての4,4'-ジアミノジフェニルエーテルの添加量を17.31gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を17.38gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較用アラミド樹脂9を得た。比較用アラミド樹脂9は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基を有さず、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の66%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットが電子吸引性基を有さず、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.65dL/gであった。
【0205】
得られた比較用アラミド樹脂9の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、比較用アラミド樹脂9およびフィラーの濃度の合計が6.00重量%である比較用塗工液9を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を50重量%とするため、比較用アラミド樹脂9およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が50重量%となるように、比較用アラミド樹脂9、フィラーおよび溶媒を混合し、比較用塗工液9を得た。
【0206】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ9を得て、上記<試験方法>に記載した試験に供した。結果を表1,2に示す。
【0207】
[比較例10]
(1.塗工液の調製)
パラフェニレンジアミンの添加量を5.15gとし、酸クロリドとしてのTPCの添加量を19.06gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アラミド樹脂10を得た。比較用アラミド樹脂10は、主鎖中の芳香環内に電子吸引性基としてクロロ基を有し、分子の両末端にアミノ基を有し、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合の100%がアミド結合であり、芳香族ジアミン由来のユニットの50%が電子吸引性基を有し、酸クロリド由来のユニットが電子吸引性基を有しておらず、固有粘度が1.90dL/gであった。
【0208】
得られたアラミド樹脂10の溶液に、平均粒径0.02μmのアルミナ粉末を添加した。続いて前記溶液にNMPを添加して希釈し、アラミド樹脂10およびフィラーの濃度の合計が3.00重量%である塗工液10を調製した。このとき、多孔質層中のフィラーの含有量を20重量%とするため、アラミド樹脂10およびフィラーの重量を100重量%としたときに、フィラーの含有量が20重量%となるように、アラミド樹脂10、フィラーおよび溶媒を混合し、塗工液10を得た。
【0209】
(2.非水電解液二次電池用積層セパレータの調製、耐熱性試験等)
塗工液1の代わりに比較用塗工液10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ10を得た。しかし、多孔質層の細孔が十分形成されず、上記<試験方法>に記載した試験を実施できなかった。結果を表1,2に示す。
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【0212】
表1中、「主鎖芳香環電子吸引基」は、主鎖中の芳香環内に有する電子吸引性基の種類;、「ジアミンユニット吸引基含有率」は、アラミド樹脂中の芳香族ジアミン由来のユニットのうち、電子吸引性基を有するものの割合;「酸クロリドユニット吸引基含有率」は、アラミド樹脂中の酸クロリド由来のユニットのうち、電子吸引性基を有するものの割合;「末端アミノ基有無」は、アラミド樹脂の分子末端にアミノ基を有するか否か(有する場合を丸印、有さない場合を×で表す);「芳香環連結アミド基率」は、主鎖中に含まれる芳香環を連結する結合がアミド基を有する割合;「多孔質層中フィラー含有率」は、多孔質層の重量を100重量%としたときのフィラーの含有率;「アラミド固有粘度」は、アラミド樹脂の固有粘度、「目付」は、非水電解液二次電池用積層セパレータの1平方メートル当たりの重量をそれぞれ表す。
【0213】
表2中、「トリクル試験後変色」は、上記トリクル充電後に上記試験用電池から上記非水電解液二次電池用積層セパレータを取り出して、トリクル充電前の多孔質層表面の色と、トリクル充電後の、正極活物質層と接触していた多孔質層表面の色とを、目視で観察して比較した結果;「トリクル試験前IR強度」、「トリクル試験後IR強度」、「(X2/X1)×100」は、上記(2.IR強度の測定)に記載したX1、X2、(X2/X1)×100;「開口部の面積」は、上記(1-5.金属芯貫通試験)に記載した、上記非水電解液二次電池用積層セパレータの開口部の面積、をそれぞれ表す。
【0214】
実施例1~8にかかる非水電解液二次電池用積層セパレータ1~8は、耐熱性試験後の開口部の面積がいずれも7.0mm以下であり、変色も少なく、かつ、アミド基の残存率が高かった。よって、非水電解液二次電池用積層セパレータ1~8は、高電圧下で長時間充電した場合でも耐熱性および耐劣化性に優れることが分かる。
【0215】
一方、比較例1~9に係る比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ1~9は、耐熱性試験後の開口部の面積がいずれも7.0mmを大きく超えていた。また、比較例10に係る比較用非水電解液二次電池用積層セパレータ10は好適な多孔質層が形成されなかった。実施例および比較例の結果から、耐酸化性の高い芳香族ポリアミドを設計し、適切な配合量の耐熱性フィラーを含ませることにより、耐熱性および耐劣化性に優れた非水電解液二次電池用積層セパレータを得ることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、非水電解液二次電池を取り扱う各種産業において、好適に利用され得る。
図1
図2