IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7330361広角イオンビームのための抽出アセンブリを備えた装置およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】広角イオンビームのための抽出アセンブリを備えた装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20230814BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20230814BHJP
   H05H 1/30 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J37/305 A
H05H1/30
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022505422
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 US2020039179
(87)【国際公開番号】W WO2021021345
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】16/524,646
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, アプ ナビーン
(72)【発明者】
【氏名】ロックウェル, タイラー
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, クリストファー
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510932(JP,A)
【文献】特表2017-533542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325411(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/08
H01J 37/305
H05H 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマチャンバ、
前記プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートであって、第1の抽出アパーチャを画定するプラズマプレート、
前記プラズマチャンバ内に配置され、前記抽出アパーチャに面するビームブロッカ、
前記ビームブロッカに隣接して前記プラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、
前記プラズマプレートの外側に配置された抽出プレートであって、前記第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレート、および
前記非平面電極、前記抽出プレート、および前記プラズマチャンバの外側に配置された基板を、前記プラズマチャンバに対して同じ電圧にバイアスするように電気的に連結された抽出電圧システム、
を備えるイオンビーム処理装置。
【請求項2】
前記プラズマプレートが、電気絶縁体本体を含み、前記ビームブロッカが、電気絶縁体本体を含む、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項3】
前記非平面電極が、導電性内部電極を取り囲む第1の誘電体コーティングを含み、前記抽出プレートが、導電性内部プレート部分上に配置された第2の誘電体コーティングを含む、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項4】
前記非平面電極は、第1の方向に沿った断面が三角形状であり、前記第1の方向は、前記プラズマプレートの平面に垂直である、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項5】
前記抽出プレートが、第1の方向に沿って前記プラズマプレートに対して移動可能であり、前記第1の方向は、前記プラズマプレートの平面に垂直である、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項6】
前記第1の抽出アパーチャおよび前記第2の抽出アパーチャが、細長い形状を備える、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項7】
前記抽出プレートが、前記第2の抽出アパーチャのサイズを変えるように、スキャン方向に沿って互いに対して移動可能である第1の部分および第2の部分を含む、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項8】
前記プラズマプレートの平面の法線に対して30度以上の値を有する抽出角度によって特徴付けられる1対のイオンビームレットとしてイオンビームを抽出するように、前記ビームブロッカ、前記非平面電極、前記プラズマプレート、および前記抽出プレートが、互いに配置されている、請求項1に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項9】
プラズマチャンバ、
前記プラズマチャンバの面に沿って配置された抽出アセンブリであって、
前記プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートであって、第1の抽出アパーチャを画定するプラズマプレート、
前記プラズマチャンバ内に配置され、前記抽出アパーチャに面するビームブロッカ、
前記ビームブロッカに隣接して前記プラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、および
前記プラズマプレートの外側に配置された抽出プレートであって、前記第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレート、
を備える抽出アセンブリ、ならびに
前記抽出プレートと前記プラズマチャンバとの間にバイアス電圧を生成するように、前記プラズマチャンバおよび前記抽出プレートに電気的に連結されている抽出電圧システムであって、前記非平面電極、前記抽出プレート、および前記プラズマチャンバの外側に配置された基板を前記プラズマチャンバに対して同じ電圧にバイアスするように電気的に連結されている抽出電圧システム
を備えるイオンビーム処理システム。
【請求項10】
前記抽出電圧システムが、前記抽出プレートと前記プラズマチャンバとの間にパルスバイアス電圧を生成するためのパルスコンポーネントを有する、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項11】
前記プラズマプレートが、電気絶縁体本体を含み、前記ビームブロッカが、電気絶縁体本体を含む、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項12】
前記非平面電極が、導電性内部電極を取り囲む第1の誘電体コーティングを含み、前記抽出プレートが、導電性内部プレート部分上に配置された第2の誘電体コーティングを含む、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項13】
前記非平面電極は、第1の方向に沿った断面が三角形状であり、前記第1の方向は、前記プラズマプレートの平面に垂直である、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項14】
前記抽出プレートが、第1の方向に沿って前記プラズマプレートに対して移動可能であり、前記第1の方向は、前記プラズマプレートの平面に垂直である、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項15】
前記抽出プレートが、前記第2の抽出アパーチャのサイズを変えるように、スキャン方向に沿って互いに対して移動可能である第1の部分および第2の部分を含む、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項16】
基板を収容するためのプロセスチャンバを、さらに備え、前記抽出電圧システムが、第1の側で、前記プラズマチャンバに電気的に連結されており、第2の側で、前記抽出プレート、前記非平面電極、および前記基板に電気的に連結されている、請求項9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項17】
前記第1の抽出アパーチャおよび前記第2の抽出アパーチャが、第1の方向に沿って細長く延びており、前記イオンビーム処理システムが、前記第1の方向に垂直なスキャン方向に沿って前記基板をスキャンするように配置された基板ステージを、さらに備える、請求項16に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項18】
イオンビームを生成する方法であって、
プラズマチャンバ内でプラズマを生成すること、
前記プラズマチャンバの面に沿って抽出アセンブリを提供することであって、前記抽出アセンブリが、
前記プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートであって、第1の抽出アパーチャを画定するプラズマプレート、
前記プラズマチャンバ内に配置され、前記抽出アパーチャに面するビームブロッカ、
前記ビームブロッカに隣接して前記プラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、および
前記プラズマプレートの外側に配置された抽出プレートであって、前記第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレート、
を備える、抽出アセンブリを提供すること、ならびに
前記イオンビームを抽出するように、バイアス電圧を印加することであって、前記イオンビームが、前記プラズマプレート、前記ビームブロッカ、前記非平面電極、および前記抽出プレートによって画定される1対のアパーチャを通る1対のビームレットとして抽出されるように、バイアス電圧を印加すること、
を含み、
前記バイアス電圧を印加することが、前記プラズマチャンバに第1の電圧を印加することと、前記非平面電極に、前記抽出プレートに、および前記プラズマチャンバの外側に配置された基板に、第2の電圧を印加することと、を含む、
方法。
【請求項19】
パルス周期を有するパルスバイアス電圧として前記バイアス電圧を印加することを含み、前記パルス周期が、前記1対のアパーチャに隣接する前記プラズマのプラズマシース崩壊期間よりも長い、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本実施形態は、プラズマ処理装置に関し、より具体的には、新規のイオン抽出光学系を使用してプラズマ源から抽出された角度の付いたイオンビームに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]複雑な3D半導体構造の製造は、多くの場合、イオン支援プラズマプロセスを使用する。このようなプロセスの多くは、基板面の法線に対して入射角がゼロまたは小さいイオンビームを使用する。しかしながら、法線に対する大きい平均角度(>50°)を特徴とするイオン角度分布(IAD)を持つイオンビームが必要となる、トレンチ側壁の制御されたエッチングなどのプロセスがある。このような大きな入射角は、ビームをゼロ度(ウェハがデフォルトの「水平」の向きに配向されている場合のウェハ法線に対して)で抽出し、ウェハを所望の角度に傾けることによって得られる。例えば、処理される基板の面積よりも小さい断面を有するイオンビームが、水平面に対してほぼ垂直の向きに沿って当たるように向けられ、その間、(水平面に対して)傾けられた基板は、基板全体をイオンビームに順次曝露するように、水平方向に沿ってスキャンされる。このアプローチの欠点は、ウェハ表面全体にわたってのプロセス不均一性である。すなわち、固有のビーム発散を考えると、ウェハ(基板)がビームの前でスキャンされるときに、イオンビームの線量にばらつきが生じる。
【0003】
[0003]本開示が提供されるのは、これらおよび他の考慮事項に関してである。
【発明の概要】
【0004】
この発明の概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される一揃いの概念を、簡略化された形式で紹介するために提供されている。この発明の概要は、主張された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、主張された主題の範囲を決定するのを助けることも意図していない。
【0005】
[0004]一実施形態では、イオンビーム処理装置が提供される。装置は、プラズマチャンバ、およびプラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートを含むことができ、プラズマプレートは、第1の抽出アパーチャを画定する。装置は、プラズマチャンバ内に配置され、抽出アパーチャに面するビームブロッカを含み得る。装置は、ビームブロッカに隣接してプラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、およびプラズマプレートの外側に配置され、第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレートを、さらに含み得る。
【0006】
[0005]別の実施形態では、イオンビーム処理システムは、プラズマチャンバ、およびプラズマチャンバの面に沿って配置された抽出アセンブリを含み得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートを含むことができ、プラズマプレートは、第1の抽出アパーチャを画定する。抽出アセンブリは、プラズマチャンバ内に配置され、抽出アパーチャに面するビームブロッカ、ビームブロッカに隣接してプラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、およびプラズマプレートの外側に配置され、第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレートを、含み得る。処理システムはまた、プラズマチャンバおよび抽出プレートに電気的に連結されて、抽出プレートとプラズマチャンバとの間にバイアス電圧を生成する抽出電圧システムを含み得る。
【0007】
[0006]さらなる実施形態では、方法は、プラズマチャンバ内でプラズマを生成すること、およびプラズマチャンバの面に沿って抽出アセンブリを提供することを含み得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートを含むことができ、プラズマプレートは、第1の抽出アパーチャを画定する。抽出アセンブリはまた、プラズマチャンバ内に配置され、抽出アパーチャに面するビームブロッカ、ビームブロッカに隣接してプラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、およびプラズマプレートの外側に配置され、第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレートを、含み得る。この方法は、バイアス電圧を印加してイオンビームを抽出することを、さらに含むことができ、イオンビームは、プラズマプレート、ビームブロッカ、非平面電極、および抽出プレートによって画定される1対のアパーチャを通って、1対のビームレットとして抽出される。したがって、バイアス電圧を印加することは、プラズマチャンバに第1の電圧を印加し、抽出プレートおよびプラズマチャンバの外側に配置された基板に第2の電圧を印加することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態と一致する処理装置の垂直断面を示す。
図2A】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を、集合的に示す。
図2B】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を、集合的に示す。
図2C】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を、集合的に示す。
図2D】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を、集合的に示す。
図3】本開示の実施形態に従って配置された処理装置の動作シナリオを示し、抽出領域におけるビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す。
図4A】抽出プレートの異なる構成、ならびに抽出領域における付随するビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す、別の処理装置のさらなる動作シナリオを示す。
図4B】抽出プレートの異なる構成、ならびに抽出領域における付随するビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す、別の処理装置のさらなる動作シナリオを示す。
図4C】抽出プレートの異なる構成、ならびに抽出領域における付随するビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す、別の処理装置のさらなる動作シナリオを示す。
図4D】抽出プレートの異なる構成、ならびに抽出領域における付随するビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す、別の処理装置のさらなる動作シナリオを示す。
図5A】等電位線分布およびイオンビーム軌道を含む、抽出アセンブリの非平面電極に独立してバイアスをかける効果を示す、処理システムのさらなる動作シナリオを示す。
図5B】等電位線分布およびイオンビーム軌道を含む、抽出アセンブリの非平面電極に独立してバイアスをかける効果を示す、処理システムのさらなる動作シナリオを示す。
図6A-6B】図6Aは、本開示の実施形態による抽出アセンブリの正面図を示す。図6Bは、図6Aの抽出アセンブリの詳細を示す。
図6C図6Aの抽出アセンブリの側面断面図を示す。
図7】例示的なプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0016]本実施形態は、いくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。しかしながら、本開示の主題は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全になり、当業者に主題の範囲を完全に伝えるように提供される。図面では、同様の数字は、全体を通して同様の要素を指す。
【0010】
[0017]本明細書に記載の実施形態は、隠れた偏向電極を使用して、基板に向けられたイオンの角度分布を制御するための装置、システム、および方法を提供する。いくつかの実施形態では、コンパクトなイオンビーム源内での、大きなオンウェハ入射角を有するイオンビームの生成を容易にする装置が、開示されている。大きな入射角を有するイオンビームの抽出に加えて、本実施形態は、イオンおよび反応性の高いラジカルを生成するために、化学的反応性プラズマ(原料ガス:C、SF、H、O、Cl、I、Br、および/またはそれらの混合物)の場合に使用され得る。詳細には、大きなオンウェハ入射角(>50°)および数十mAのビーム電流を有する、数百eVから数keVの範囲のイオンビームを抽出することができる。デバイス処理の例として、本実施形態によって提供される対称リボンビームレット抽出の使用は、基板が抽出アセンブリと平行にスキャンされるときに、複雑な半導体構造内の垂直なトレンチ壁を同時処理することを可能にする。
【0011】
[0018]以下の実施形態では、イオンビーム処理装置は、プラズマチャンバおよび抽出アセンブリを含み得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバの面に沿って配置されたプラズマプレートを含むことができ、プラズマプレートは、第1の抽出アパーチャを含む。本開示の様々な実施形態によれば、プラズマプレートは、絶縁体材料から形成され得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバ内に配置され、抽出アパーチャに面しているビームブロッカを含み得る。したがって、ビームブロッカは、抽出アパーチャを2つの別個のサブアパーチャに分割するのに役立ち得る。抽出アセンブリは、ビームブロッカに隣接してプラズマチャンバの外側に配置された非平面電極、ならびにプラズマプレートの外側に配置され、第1の抽出アパーチャと位置合わせされた第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレートを、含み得る。以下の実施形態で説明するように、この配置は、サブアパーチャを通る大角度イオンビームの生成を容易にし、大角度イオンビームは、プラズマプレートの平面に対する垂直線に対して、30度以上などの大きな入射角を規定する。
【0012】
[0019]以下に詳述するように、様々な実施形態における抽出アセンブリは、電気絶縁体本体を有するプラズマプレートと、電気絶縁体本体を有するビームブロッカとを含み得る。同時に、非平面電極は、導電性内部電極を含み、抽出プレートは、導電性内部プレート部分を含み得る。特定の実施形態では、非平面電極は、導電性内部電極を取り囲む第1の誘電体コーティングを含み、抽出プレートは、導電性内部プレート部分上に配置された第2の誘電体コーティングを含む。
【0013】
[0020]有利には、非平面電極は、第1の方向に沿った断面が三角形であり、第1の方向は、プラズマプレートの平面に垂直である。以下に詳述するさらなる実施形態では、抽出アセンブリは、1つ以上の方向に沿ってプラズマプレートに対して移動可能である移動可能な抽出プレートを含み得る。プラズマプレートの第1の抽出アパーチャおよび抽出プレートの第2の抽出アパーチャは、それぞれ細長い形状を有することができ、1対のリボンイオンビームまたはリボンイオンビームレットの抽出を容易にし、リボンイオンビームレットを、(例えば、プラズマプレートの平面に平行に位置合わせされた)基板に対して広角に向ける。限定されないが、本明細書で使用される「基板に対して広角」という用語は、基板の平面の法線(垂直線)に対して、例えば、30度より大きい、法線に対して40度より大きい、または法線に対して50度より大きくてもよい。特定の実施形態では、抽出プレートは、第2の抽出アパーチャのサイズを変更するために、スキャン方向に沿って互いに対して互いに移動可能な第1の部分および第2の部分を含み得る。
【0014】
[0021]図1を参照すると、本開示の実施形態と一致する処理システムの垂直断面が示されている。処理システム100は、プラズマチャンバ102、プロセスチャンバ103、および抽出アセンブリ130を含み、これらは、以下でより詳細に説明される。処理システム100は、抽出プレート114とプラズマチャンバ102との間にバイアス電圧を生成するように電気的に連結された抽出電圧システム124を、さらに含む。したがって、処理システム100は、抽出プレート114の近くに配置された基板122を処理するためのイオンビームを生成するためのイオンビーム処理システムとして機能する。プラズマチャンバ102は、任意の適切な方法によってプラズマチャンバ102内にプラズマ132を生成するためのプラズマ源として機能することができる。例えば、プラズマチャンバ102は、導電性の壁134を通って接地電位に参照させることができる。目的のイオン種は、rf電源(別個に示されていない)によって生成されたrf電力を誘電体の窓104を通ってrfアンテナ136から作動ガスに誘導的に結合することによって、プラズマ132内で生成され得る。しかしながら、プラズマを生成する他の既知の手段が可能である。
【0015】
[0022]図1に示されるように、抽出アセンブリ130は、プラズマチャンバ102の面に沿って配置されたプラズマプレート106を含むことができ、プラズマプレート106は、Al(アルミナ)、石英、AlNまたは他の適切な電気絶縁材料などの電気絶縁体で形成され得る。プラズマプレート106は、第1の抽出アパーチャ138を画定することができ、このアパーチャは、示されているデカルト座標系のX軸に沿って長く延びることができる(x軸は、一般に、ページの平面の中へ垂直に延びているが、図示のために角度を付けて示されていることに留意されたい)。したがって、第1の抽出アパーチャ138は、プラズマチャンバ102からのイオンが通過することができる空間を画定することができる。抽出アセンブリ130は、プラズマチャンバ102の外側に配置され、導電性材料で形成された抽出プレート114を、さらに含むことができる。抽出アセンブリ130はまた、例えば絶縁材料で形成された、ビームブロッカ108を含み得る。図1の配置では、プラズマ132の存在下で、プラズマチャンバ102に対して負の電圧が、基板122(または基板プレート120)に印加されると、抽出アパーチャ138とビームブロッカ108との間に形成されたスリット(サブアパーチャ)に、プラズマメニスカスが形成される。様々な実施形態において、ビームブロッカ108は、イオンビーム112として示される2つの対称的なイオンビームレットの形成および抽出を可能にするために、抽出アパーチャ138の上に対称的に配置され得る。基板122のイオンビーム処理は、基板122をy方向にスキャンすることによって行われ、基板をz軸の周りで回転させることを含んでもよい。様々な非限定的な実施形態において、基板122(厚いまたは薄い酸化物)の電気伝導率に応じて、イオンビーム112は、パルスイオンビームとして抽出され、パルス周波数およびデューティサイクルは、基板がチャージアップしないように、それぞれ10~50kHzの範囲および10~100%の範囲で目標値に調整され得る。有利なことに、抽出プレート114およびビームブロッカ108に誘電体材料を使用することは、イオン種およびラジカル種を生成するために使用される反応性の高いプラズマ内での使用を容易にする。
【0016】
[0023]抽出アセンブリ130はまた、非平面電極110として示される、バイアス可能なブロッカ電極を含み得る。図1に示されるように、非平面電極110は、プラズマチャンバ102の外側で、ビームブロッカ108に取り付けられている。図1に一般的に示されているように、ビームブロッカ108およびプラズマプレート106は、同一平面上ではないが、プラズマチャンバ102の内側とプラズマチャンバ102の外側との間の、下側の境界を画定すると見なされ得る。したがって、非平面電極110は、プラズマプレート106の上に配置されているかどうかにかかわらず、プラズマチャンバ102の外側にあると見なすことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、非平面電極110は、Z方向(Z軸に平行)に沿って見たときに、断面が三角形状または放物線状の形状を有し得る。導電性であるので、電極の形状は、等電位場線の分布を成形し、その結果、抽出されたイオンビームレットの角度分布(平均角度と角度広がり)を調整する役割を果たす。より具体的には、電場の等電位線は、導電性電極の形状に従うので、これらの電極形状によって、電場線のより良い分布を実現することができる。特に、三角形または放物線形状は、プラズマエッジで形成されるプラズマメニスカスの半径が小さくなり、抽出されたイオンビームレットの集束が向上するように、抽出領域における電場線を形成するのに役立つ。
【0017】
[0024]本開示のいくつかの実施形態によれば、抽出プレート114は、示されるように、第2の抽出アパーチャ140を画定し得る。したがって、抽出プレート114および第2の抽出アパーチャ140は、プラズマプレート106と基板122との間に配置される。いくつかの非限定的な実施形態では、第2の抽出アパーチャ140は、y方向に30~50mmの高さを有し得る。もちろん、以下で論じる特定の実施形態では、y方向に沿った抽出アパーチャの高さは、可変であってもよい。本開示の様々な実施形態では、プラズマプレート106、抽出プレート114、および基板122は、互いに平行であり得、かつX-Y平面に平行であり得る。したがって、プラズマプレート106の平面は、X-Y平面に平行であり、かつ一般に基板122のスキャン方向(y方向)に平行である平面であると、見なすことができる。
【0018】
[0025]ビームブロッカ108とプラズマプレート106との間のスリットから抽出された2つのイオンビームレット(イオンビーム112)の対称性が確立されるように、第1の抽出アパーチャ138および第2の抽出アパーチャ140は、非平面電極110およびビームブロッカ108に対して完全に対称的に位置合わせされ得る。いくつかの実施形態では、(x方向に)300mm幅の均一なリボンビームレットが抽出され得るように、ビームブロッカ108、非平面電極110、第1の抽出アパーチャ138および第2の抽出アパーチャ140は、x方向に350mm~400mm延びるように細長くすることができる。
【0019】
[0026]様々な非限定的な実施形態によれば、非平面電極110および抽出プレート114などの、抽出アセンブリ130のバイアス可能な要素は、基板122と同じ電位に設定することができ、この構成は、有利なことに基板が抽出光学系の一部ではないことを意味する。詳細には、基板122は、非平面電極130および抽出プレート114と同じ電位にあるので、基板122と抽出プレート114または非平面電極110との間に電位差はなく、その結果、電場はない。
【0020】
[0027]したがって、抽出プレート114およびプラズマプレート106などの抽出光学系に対する基板122の相対位置は、抽出アセンブリ130を通って抽出されたイオンビームのイオン角度分布に影響を及ぼさない。この条件下では、Z軸に沿った基板の位置を、5mmから20mm以上まで変化させることができるので、基板からスパッタされた材料によるプラズマチャンバの汚染を大幅に減らすことができる。言い換えると、必要に応じて、基板をZ軸に沿って抽出アセンブリからより大きな間隔で配置して、汚染を減らすことができ、これは、間隔が大きくなるにつれて、抽出アパーチャがウェハを「見る」立体角が小さくなり、それにつれて汚染が減るからである。
【0021】
[0028]電気的にバイアス可能になるように、非平面電極110および抽出プレート114は、上記のように、導電性材料(例えば、いくつかの非限定的な実施形態において、アルミニウム、チタン、または銅などの金属、グラファイト、ドープされたSi、ドープされたSiCが、これらのコンポーネントに使用され得る。)で構成され得る。以下に詳述するように、これらの部品はイオンビームの衝撃に曝されないので、金属および/または炭素の汚染が減少する。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、汚染に対するより完全な保護のために、電気的にバイアス可能な部品は、導電性である内部本体または部分を取り囲む薄い誘電体膜でコーティングされ得る。1つの非限定的な実施形態では、適切な誘電体コーティングは、イットリウム、アルミニウム、およびジルコニウムの酸化物の混合物でできており、100マイクロメートルの厚さを有する。このような誘電体材料は、エッチングに対する耐性を提供することが知られている。他の実施形態では、Al、AlFO、酸化イットリウム(Y)、または酸化ジルコニウム(ZrO)を誘電体コーティングとして使用することができる。非平面電極110および抽出プレート114がシリコンまたは炭化ケイ素材料で形成されている実施形態では、Siまたは炭素は、例えば、シリコンに基づく半導体デバイスにとって電気的汚染物質と見なされない場合があるので、誘電体コーティングは任意選択で省略され得る。
【0022】
[0029]知られているように、プラズマメニスカスの形状および位置、ならびにイオンビーム抽出のメカニズムは、プラズマ132などのプラズマ中のプラズマ密度の相対値に依存し、さらに抽出電場に依存する。ただし、誘電体などの非導電性材料を使用してイオン抽出光学系を作製すると、イオンビーム抽出の物理特性が、大幅に変化する。この変化は、プラズマ132とイオン抽出光学系の壁(本実施形態では、ビームブロッカ108およびプラズマプレート106)との間の界面であるプラズマシースが、壁の性質(絶縁性または導電性)の関数であるために、起こる。パルス周波数(f)がイオンプラズマ周波数(fpi)
(n、e、およびmは、プラズマ密度、電気素量、真空の誘電率、およびイオン質量である。)よりも高いパルスプラズマの場合、いわゆるマトリックスシースがあり、イオンは動かず、電子は壁から遠ざけられる。この場合、シースの厚さは、以下の式で与えられる。
ここで、V、k、およびTは、それぞれ、シースを横切る電圧降下、ボルツマン定数、および電子温度を表す。λで示される量は、以下の式で与えられるデバイ長である。
マトリックスシースの場合、壁の電圧の値に応じて、シースの厚さは、デバイ長の数十から100分の1の範囲になり得る。ただし、5×10~5×1011cm-3の通常のプラズマ密度の場合、イオンプラズマ周波数は、2MHz~25MHzであり、抽出電圧のパルス周波数(10~50kHz)よりもはるかに高くなる。この場合、イオンにはシース内の電場によって加速されるのに十分な時間があり、それらの運動が無衝突であると仮定すると、シースの厚さは、以下のチャイルドの法則によって与えられる。
電子温度を3.5eVと仮定すると、シースの厚さは、電圧とともに、かつプラズマ密度の逆数とともに増加し、関心のある範囲において、数分の1ミリメートルから約20ミリメートルまで変化する。
【0023】
[0030]様々な実施形態によれば、本実施形態のイオンビームは、上記のように、パルスイオンビームとして抽出することができる。抽出電圧システムは、例えば、目標とするパルス周期およびデューティサイクルに従って抽出電圧をオンおよびオフのパルスにする回路などのパルスコンポーネントを含み得る。ただし、イオンビーム電流が小さい場合、パルスデューティサイクルは、100%になる場合があり、つまり、イオンは、連続的に抽出される。詳細には、パルス周期およびデューティサイクルは、以下で説明するように、角度の付いたイオンビームの抽出を容易にするように設定することができる。ビームブロッカコンポーネントおよびプラズマプレートコンポーネントは、誘電体材料で形成され得るので、イオンビームのパルスは、プラズマシースの時間依存の進展を考慮に入れるように設定することができる。
【0024】
[0031]図2A図2Dを参照すると、本開示の実施形態に従って、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展が、X-Y空間に示されている。示されているシミュレーションでは、基板上(位置は、x=2.5cmでの垂直線で表されている)の電圧は、20kHzのパルス周波数と50%のデューティサイクルを有する-1kVの電圧のパルスである。ビームブロッカコンポーネントおよびプラズマプレートコンポーネントは、垂直方向に細長い明るい長方形として概略的に示され、これらのコンポーネントの向きは、図1に対して90度回転している。ビームブロッカとプラズマプレートは、誘電体材料(石英)でできているとしてモデル化されており、この材料は、静電的にチャージアップすることができる。図2Aおよび図2Bは、印加された負の電圧パルスの開始後1マイクロ秒での電子およびイオンの分布を、それぞれ示している。石英は電場線の伝達を可能にするので、パルスの開始時(1マイクロ秒)に、大きな電圧降下が、シースで起こり、その結果、相当に厚い(~6mm)シースが発生する。この場合には、図2Aおよび図2Bの両方に示されるように。抽出スリットの近くの電場は、プラズマプレートおよびビームブロッカに対して垂直に(x方向に沿って)配向され、その結果、イオンが抽出されるにしても、ごくわずかである(図2Bのイオン分布を参照)。
【0025】
[0032]図2Cおよび図2Dを参照すると、プラズマシースが時間とともに進展するにつれて、イオンが、プラズマプレートおよびプラズマブロッカの内壁に到達し続ける。接地への経路がない場合、イオンは、プラズマ密度に不均衡を生じさせ、これは、両極性電場の形成をもたらす。この場合、電子とイオンの等しいフラックスが、内壁に向けられる。
ここで、
は、フェースプレートとブロッカの壁に垂直な方向(x方向)のプラズマ密度の勾配であり、Daは、以下の両極性拡散係数である。
ここで、μe,iとDe,iは、それぞれ、電子とイオンの移動度と拡散係数である。両極性拡散の結果として、プラズマメニスカスが抽出スリットに形成され、イオンビームレットが抽出され始めるところまで、シースの厚さが減少(崩壊)する。シースの厚さのこの減少は、図4Cおよび図4Dに見ることができ、そこには、負の電圧パルスの開始後4マイクロ秒での電子とイオンのx-y位相空間が示されている。この場合、図4Dに示すように、イオンビームレットが、容易に抽出され、基板位置に向けられる。
【0026】
[0033]したがって、様々な実施形態によれば、電圧パルスのデューティサイクルおよび周波数は、プラズマシース崩壊およびイオンビームの抽出の開始に必要な時間(プラズマシース崩壊期間)を超える、所与のパルスの持続時間を提供するように、設定され得る。上記の例では、最小のプラズマシース崩壊期間を4マイクロ秒に仮定すると、イオンビームの適切な抽出を確実にするために、10マイクロ秒以上のパルス持続時間が適切であり得る。50%のデューティサイクルでは、このパルス持続時間は、20マイクロ秒以上のパルス周期に等しく、これは、図2A図2Dのシナリオにおいて、イオンを効果的に抽出するために、電圧パルス周波数が、50kHz以下に設定され得ることを意味する。
【0027】
[0034]図3は、本開示の追加の実施形態に従って構成された処理装置の動作シナリオを示し、抽出領域におけるビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示している。より具体的には、図3は、全て導電性の抽出アセンブリコンポーネントの場合のOPERAモデリングの結果を示している。図3において、ビームブロッカ208として示される、ビームブロッカ108の導電性変形例、およびプラズマプレート206として示される、プラズマプレート106の導電性変形例を含む抽出アセンブリ200が、示されている。詳細には、プラズマプレート206は、高さHおよび長さ400mm(紙面に垂直な方向)の、抽出アパーチャ224として示される長方形の抽出アパーチャを有する。ビームブロッカ208は、高さHにほぼ等しい高さDを有するが、長さ(ページ内への)は、プラズマプレート206との機械的接続を可能にするために、抽出アパーチャ224の長さよりわずかに長くてもよい。ビームブロッカ208およびプラズマプレート206の両方が、接地(ゼロ電位)されている。抽出プレート214として示されているバイアス可能な抽出プレートは、プラズマプレート206と平行であり、間隙Δzによってプラズマプレート206から隔てられている。抽出プレート214は、高さがhで、プラズマプレート206の抽出アパーチャ224と同じx方向の長さの、抽出アパーチャ226として示される長方形の抽出アパーチャを有する。寸法がhに相当し得る高さdを有し、抽出アパーチャ226の長方形の開口部をカバーするのに十分にページ内に(X軸に沿って)延びる、非平面電極212として示されるバイアス可能なブロッカ電極が、抽出アパーチャ226の前に配置されている。抽出プレート214および非平面電極212の両方が、基板122と同じ電位にバイアスされ、示されている場合の電位は、-1kVである。
【0028】
[0035]この配置の結果として、静電場線230は、イオンビームレット232が非平面電極212と抽出プレート214との間の空間を通って大きな抽出角度で抽出されるように、形作られる。ここで、抽出角度は、抽出プレート214の平面(XY平面)の法線に対して、すなわちZ軸に対して定義される。したがって、このシミュレーションでは、(基板面の法線に対して、つまりZ軸に対して)+/-60°という、2つの異なるビームレットにおける基板面での非常に大きな平均角度が得られる。静電等電位線は、抽出プレート214を越えて延びておらず、これは、基板122が、効果的に、抽出アセンブリ200の一部ではないことを意味する。この結果は、基板122表面へのイオン衝撃によって生成された二次電子が抽出アセンブリ200に向かって加速されないという点で、大きな利点を与える。さらに、バイアス可能な電極がプラズマと基板122との間の視線を遮るという事実を考えると、基板122からプラズマチャンバ(図では左側)に拡散するエッチング副生成物が少なくなり、プラズマチャンバ汚染が少なくなる。大きな平均角度でイオンビームを提供することにより、Z軸に沿って配向された、基板122上の構造の表面を含む、3D表面の処理が容易になる。大きな入射角はまた、基板上のより大きなビームフットプリント、すなわちY方向に沿って約36mmを伴う。Y軸に沿ったこの比較的大きなフットプリントは、300mmウェハを均一に処理するために、y方向のウェハスキャン範囲が、ウェハの上部と下部の両方がビームに曝されるように、少なくとも372mm(300mm+2x36mm)である必要があることを意味する。
【0029】
[0036]図4A図4Dは、抽出プレートの異なる構成、ならびに抽出領域における付随するビームレット、形状、および静電ポテンシャル分布を示す、別の処理装置のさらなる動作シナリオを示す。前述のように、反応性の高いプラズマの場合、プラズマチャンバの有用な特性は、プラズマと接触する壁が誘電体材料でできており、そのため、壁から来る金属または炭素によるプラズマの汚染がないことである。したがって、図4A図4Dの抽出アセンブリ250は、プラズマ(図示せず)と接触する誘電体材料を提供するコンポーネントを備えている。図3の前述のコンポーネントに加えて、抽出アセンブリ250は、それぞれが誘電体材料で形成されたビームブロッカ258およびプラズマプレート256を含む。前述の抽出プレートと同様に、抽出プレート254は、導電性材料から形成され、第2の抽出アパーチャ260を画定する。様々な実施形態によれば、抽出プレート254は、第2の抽出アパーチャ260のサイズを変更するために、スキャン方向(Y軸)に沿って互いに対して互いに移動可能な第1の部分254Aおよび第2の部分254Bを含み得る。さらに、抽出プレート254は、プラズマプレート256に対して、Z軸に沿って移動可能であり得る。
【0030】
[0037]図4A図4Dは、プラズマプレート256およびビームブロッカ258が誘電体材料(この場合は石英)でできている場合の、抽出プレート254の4つの異なる構成の下でのシミュレーションを示している。図3および以下の図5A図5Bにおいて、この実施形態の寸法は、mmで示されている。特に、抽出プレート254および非平面電極252は、部分的に導電性コンポーネントから形成されているが、薄い誘電体膜でコーティングされた導電性内部部分でできている。図4Aおよび図4Cでは、抽出プレート254の第2の抽出アパーチャ260は、h1の値を有し、図4Bおよび図4Dでは、抽出プレート254の第2の抽出アパーチャ260は、h2の値を有する。図4Aおよび図4Bでは、抽出プレート254は、プラズマプレート256と接触しているが、図4Cおよび図4Bでは、抽出プレート254は、プラズマプレート256から間隙Δzによって隔てられている。すべての構成について、非平面電極252は、三角形または放物線の形状であり、ビームブロッカ258と接触している。放射曲線が、イオンビーム262、イオンビーム264、イオンビーム266、およびイオンビーム268として示されるそれぞれのイオンビームについてシミュレートされており、Y軸に沿った基板上の総フットプリントは、24mm(図4A)、38mm(図4B)、20mm(図4C)、および42mm(図4D)である。図4Aに示されている構成に対応するビームレットの対応するイオン角度分布(IAD)は、平均角度44°、角度広がり~14°であり、図4Bでは、平均角度55°、角度広がり~10°であり、図4Cでは、平均角度42°、角度広がり~13°であり、図4Dでは、平均角度53°、角度広がり~11°である。したがって、平均角度およびフットプリントは、抽出プレート254の構成を変えることによって実質的に変えることができる。
【0031】
[0038]本開示のさらなる実施形態によれば、バイアス電圧システムが、基板または抽出プレートに対するものとして、非平面電極に別個に電圧を印加するように構成され得る。図5A図5Bは、等電位線分布およびイオンビーム軌道を含む、抽出アセンブリの非平面電極に独立してバイアスをかける効果を示す、処理システム300のさらなる動作シナリオを示す。処理システム300は、図4A図4Dに関して上記で一般的に説明されているような、抽出アセンブリ250を含み得る。処理システム300には、抽出プレート254、基板122、およびプラズマチャンバ(別個に示されていない)に対して非平面電極252を別個にバイアスするように構成されたコンポーネントを有するバイアス電圧システム302が、提供されている。図5Aでは、基板122および抽出プレート254は、-1kVに等しい電圧V2にバイアスされ、非平面電極252は、この電位より+100V、すなわち、接地電位より-900Vにバイアスされるシナリオが示されている。図5Bでは、基板122および抽出プレート254は、-1kVにバイアスされ、非平面電極252は、この値より-100V、すなわち、接地に対して-1.1kVである。
【0032】
[0039]図5Aおよび図5Bの構成についてシミュレートされた放射曲線およびイオン角度分布は、以下の結果をもたらす。図5Aに示す構成の場合、イオンビーム304の基板上の総フットプリントは、Y軸に沿って17mmであり、イオンビーム304の平均角度は39°であり、角度広がりは11°である。図4Bに示す構成の場合、イオンビーム306の基板上の総フットプリントは、28mmであり、平均角度42°、および角度広がり14°である。したがって、抽出プレート254および基板122に対する非平面電極252の独立したバイアスによって印加される相対電圧の若干の変化が、フットプリントおよびまた角度広がりなどのイオンビーム特性のかなりの変化をもたらし得る。
【0033】
[0040]図6Aは、本開示の実施形態による、抽出アセンブリ330の正面図を含む、処理システム350の一部を示す。図6Bは、図6Aの抽出アセンブリの詳細を示しており、図6Cは、図6Aの抽出アセンブリの側面断面図を示している。抽出アセンブリ330は、プラズマチャンバハウジング320の1つの面に配置されている。抽出アセンブリ330は、プラズマプレート310、ビームブロッカ308、抽出プレート314、および三角形の形状の非平面電極312を含む。特に、図6Cに示されるように、ビームブロッカ308は、ペデスタル318を使用してプラズマチャンバ内に保持され得る。
【0034】
[0041]前述の図のデカルト座標系を参照すると、抽出プレート314は、x方向に沿った横の辺を有する細長い長方形の抽出アパーチャ316を含み、プラズマプレート310に対する(バイアス可能な)抽出プレート314の相対的な位置決めが、可能である。図6Bに示されるように、非平面電極312は、ビームブロッカ308の前に配置される。図6Bに示される拡大図はまた、非平面電極が、抽出プレート314に固定されたホルダ318によって所定の位置に保持されていることを、示している。図6Cに示される断面図は、プラズマプレート310および抽出プレート314の長方形の開口部が、Y軸に沿って同じ高さを有することができ、抽出プレート314およびプラズマプレート310が互いに接触していることを、示している。非平面電極212は、Y軸に沿ってビームブロッカ308よりも短く、ビームブロッカ308および非平面電極312は、互いに接触している。
【0035】
[0042]図7は、プロセスフロー700として示される例示的なプロセスフローを示す。ブロック710において、プラズマが、プラズマチャンバ内で生成される。プラズマは、当技術分野で知られているように、任意の適切な励起手段、電源、およびガスの組み合わせを使用して生成することができる。プラズマチャンバは、外部バイアスまたは接地電圧を受け取るための少なくとも1つの導電性部分を有し得る。
【0036】
[0043]ブロック720で、抽出アセンブリが、プラズマチャンバの面に沿って提供される。様々な非限定的な実施形態において、プラズマチャンバの面は、水平な面などのプラズマチャンバの底部であってもよいし、またはプラズマチャンバの垂直な側面であってもよい。抽出アセンブリは、プラズマチャンバと一緒に配置されたプラズマプレートを含むことができ、プラズマプレートは、第1の抽出アパーチャを画定する。いくつかの実施形態では、第1の抽出アパーチャは、第1の方向に沿って細長く延びている。抽出アセンブリはまた、プラズマチャンバ内に配置され、抽出アパーチャに面しているビームブロッカを含み得る。言い換えれば、ビームブロッカは、プラズマチャンバ内に少なくとも部分的に配置されており、プラズマチャンバの外側に配置され、第1の抽出アパーチャに面するコンポーネントからの、プラズマチャンバ内のプラズマへの視線を、少なくとも部分的に遮ることができる。抽出アセンブリは、ビームブロッカに隣接してプラズマチャンバの外側に配置された非平面電極を、さらに含むことができる。様々な実施形態において、非平面電極は、導電性本体を含み得る。抽出アセンブリは、プラズマプレートの外側に配置され、第2の抽出アパーチャを画定する抽出プレートを、さらに含み得る。抽出プレートは、導電性本体を含み得る。
【0037】
[0044]ブロック730において、パルスバイアス電圧が印加されて、イオンビームを抽出し、パルスバイアス電圧の印加は、第1の電圧をプラズマチャンバに印加し、第2の電圧を抽出プレートおよびプラズマチャンバの外側に配置された基板に印加することを含む。いくつかの実施形態では、第1の電圧は、プラズマチャンバに印加される接地電位であり、第2の電圧は、プラズマチャンバから正イオンを抽出するために印加される負の電圧である。いくつかの実施形態では、第2の電圧は、非平面電極にも印加することができ、他の実施形態では、第3の電圧が、非平面電極に印加されてもよい。いくつかの実施形態によれば、パルスバイアス電圧は、上記で定義されたシース崩壊期間をパルス持続時間が超えるような、周波数およびデューティサイクルで印加され得る。
【0038】
[0045]ブロック740で、基板は、第1の抽出アパーチャおよび第2の抽出アパーチャが細長く延びている第1の方向に垂直であり得るスキャン方向に沿って、イオンビームに対してスキャンされる。
【0039】
[0046]本実施形態は、少なくとも以下の利点を提供する。第1の利点は、絶縁性と導電性電極の新規な組み合わせを有する抽出アセンブリに見出され、このアセンブリは、大きなオンウェハ入射角(>50°)を有するイオンビームレットの抽出を可能にする。別の利点は、コンパクトなイオンビームシステムの場合、単純なダイオード静電抽出プロセスを維持しながら、基板が抽出光学系の構成から取り除かれることである。さらなる利点は、同じ電源を使用して基板とバイアス可能な電極を同時にバイアスし、コストと設計の複雑さを単純化することである。本実施形態の利点のさらなる例は、高電圧電源上に浮かぶ簡単な低電圧電源を使用して、抽出プレートおよび基板に対して非平面電極に差動バイアスを提供する能力である。
【0040】
[0047]本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本開示の他の様々な実施形態および修正が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかであろう。したがって、そのような他の実施形態および修正が、本開示の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様の文脈で本明細書に記載されているが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が任意の数の目的のために任意の数の環境で有益に実施され得ることを認識するであろう。したがって、以下に記載される請求項は、本明細書に記載された本開示の全範囲および精神を考慮して解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A-6B】
図6C
図7