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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230814BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022552363
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024374
(87)【国際公開番号】W WO2023275938
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】園田 靖
(72)【発明者】
【氏名】田中 基裕
(72)【発明者】
【氏名】中谷 侑亮
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/161879(WO,A1)
【文献】特開平10-335314(JP,A)
【文献】特開平06-053173(JP,A)
【文献】特開平03-012924(JP,A)
【文献】特開平07-130704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、
プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源と、
磁場を発生させるコイルと、
前記コイルに電流を流す電源と、
前記試料が載置される試料台と、
前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板と、
前記マイクロ波と前記磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置を周期的に変化させるように前記電源を制御する制御装置と、を備え、
一周期の間、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置は、前記遮蔽板の上方から前記遮蔽板の下方または前記遮蔽板の下方から前記遮蔽板の上方へ移動し、
前記電源は、直流電源と交流電源を含み、
前記コイルは、前記直流電源に接続された第1のコイルと前記交流電源に接続された第2のコイルを含むとともに前記処理室の外側に配置され、
前記第1のコイルの高さは、前記遮蔽板の上方となる高さであり、
前記第2のコイルは、前記第1のコイルより前記遮蔽板の近くに配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記第1のコイルにより形成された磁場と前記マイクロ波との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置を周期的に変化させるように前記交流電源を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項に記載のプラズマ処理装置において、
前記高周波電源の周波数は、可変であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源と、磁場を発生させるコイルと、前記コイルに電流を流す電源と、前記試料が載置される試料台と、前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板と、を備え、前記電源は、直流電源と交流電源を含み、前記コイルは、前記直流電源に接続された第1のコイルと前記交流電源に接続された第2のコイルを含むとともに前記処理室の外側に配置され、前記第1のコイルの高さは、前記遮蔽板の上方となる高さであり、前記第2のコイルは、前記第1のコイルより前記遮蔽板の近くに配置されているプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
前記マイクロ波と前記磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置を周期的に変化させる工程を有し、
一周期の間、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置は、前記遮蔽板の上方から前記遮蔽板の下方または前記遮蔽板の下方から前記遮蔽板の上方へ移動することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項に記載のプラズマ処理方法において、
前記コイルに流れる電流を制御することにより前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置を周期的に変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項に記載のプラズマ処理方法において、
前記高周波電源の周波数を制御することにより前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置を周期的に変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に係り、特に、半導体基板等の表面加工をイオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工とラジカルのみを供給する等方性エッチング加工との両方を用いてプラズマ処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、市場からの省電力・高速化の要求により、デバイス構造の複雑化・高集積化が続いている。ロジックデバイスにおいては積層させたナノワイヤでチャネルを構成したGAA(Gate All Around)構造の適用が検討されている。GAA構造を形成するためのエッチング工程には、異方性エッチングによる垂直加工(垂直方向エッチング)を行う加工工程と、等方性エッチングによる横方向エッチングを行う加工工程とが必要となる。異方性エッチングはイオンが半導体基板(ウエハ)の表面に対して垂直方向に偏ってエネルギーを持つことを利用し、そのエネルギーによりラジカルの反応を垂直方向のみに促進するイオンアシスト反応を利用したエッチングである。一方、ウエハの表面に対して並行な方向(横方向)のエッチングを行いたい場合、ラジカルのみによる表面反応を主体とした異方性のない等方性のエッチングを用いる。イオンは垂直方向のエッチングを促進するため、等方性のエッチングの際にはプラズマから(つまり、ウエハに供給される粒子種から)イオンは取り除かれていることが望ましい。GAA構造のエッチング加工を行うプラズマ処理装置には、イオンとラジカルの両方をウエハに供給し異方性エッチングが行える装置と、ラジカルのみを供給して等方性エッチングを行える装置の両方が必要になる。
【0003】
従来、イオンとラジカルを供給して垂直加工を行うプラズマ処理装置と、ラジカルのみを供給して等方性の加工を行うプラズマ処理装置は異なる装置である事が多かった。一つの装置でどちらのプラズマ処理も可能であれば、装置の設置面積や装置台数を削減でき装置コストを下げる事ができる。このような要求に対して、特許文献1(特開2018-093226号公報)には、「試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源と、前記処理室内に磁場を形成する磁場形成機構と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板と、前記遮蔽板の上方にプラズマを生成させる一方の制御または前記遮蔽板の下方にプラズマを生成させる他方の制御が選択的に行われる制御装置と、をさらに備え、前記一方の制御は、前記マイクロ波と電子サイクロトロン共鳴するための磁束密度の位置が前記遮蔽板の上方となるように前記磁場形成機構を制御することにより前記遮蔽板の上方にプラズマを生成させ、前記他方の制御は、前記磁束密度の位置が前記遮蔽板の下方となるように前記磁場形成機構を制御することにより前記遮蔽板の下方にプラズマを生成させることを特徴とするプラズマ処理装置」を開示している。これにより、一台の装置でラジカル照射のステップとイオン照射のステップの両方を実現でき、かつ、イオン照射のエネルギーを数10eVから数KeVまで制御できるプラズマ処理装置およびそれを用いたプラズマ処理方法を提供する。
【0004】
また、ラジカルとイオンを供給し加工を行う異方性エッチングにはより高精度なエッチング技術が求められている。エッチング処理はウエハ表面とラジカルとの化学反応により行われるため、高精度なプラズマエッチングを実現するにはウエハに供給されるラジカル密度を制御する事が重要である。ラジカル密度の制御技術の一つとして、パルス放電を用いたプラズマエッチング方法がある。例えば、特許文献2(特開平09-185999号公報)には、「プラズマによる反応性ガスの分解によって生成されるラジカルの密度および組成を測定し、プラズマ発生装置の電力を一定の周期にてパルス変調し、パルス変調のデュティー比を、測定結果に基づいて制御することによってラジカルの密度および組成を制御する」方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-093226号公報
【文献】特開平09-185999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一台の装置でイオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工とラジカルのみを供給する等方性エッチング加工との両方を実現でき、かつ、微細な構造を加工していくためにイオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工においてより高精度なエッチング加工が行える事の両方が求められている。
【0007】
また上述した特許文献2に開示されたパルス放電を用いたエッチング処理においてはパルアス変調のデュティー比とラジカル密度との関係を測定する必要があり、デュティー比とラジカル密度との関係が容易には明らかでない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工においてイオンとラジカルの密度の比をより直接的に制御できるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に係る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
試料がプラズマ処理される処理室と、処理室内にプラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源と、処理室内に磁場を形成する磁場形成機構と、処理室内に設けられ、試料が載置される試料台と、試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板と、を備え、磁場形成機構は、処理室の外周部に設けられたコイルと、コイルに接続された電源と、を含み、遮蔽板に対してプラズマを生成させる位置を磁場形成機構の電源または高周波電源により制御し、プラズマを生成する位置を遮蔽板の上下に周期的に変えながらプラズマを生成させる技術が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工においてイオンとラジカルの密度の比をより直接的に制御できるプラズマ処理装置およびラズマ処理方法に係る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係るプラズマエッチング装置の概略を示す縦断面図である。
図2A】本発明の実施例1に係る直流コイル電流電源により中心となるECR領域を設定する電流を示す図である。
図2B】本発明の実施例1に係る直流コイル電流電源により中心となるECR領域を設定する電流を示す図である。
図3A図2AのECR領域を初期設定位置としてECR領域をイオン遮蔽板に対して上下させる交流コイル電流電源の電流を示す図である。
図3B図2BのECR領域を初期設定位置としてECR領域をイオン遮蔽板に対して上下させる交流コイル電流電源の電流を示す図である。
図4】本発明の実施例2に係るプラズマエッチング装置の概略を示す縦断面図である。
図5A】本発明の実施例2に係る直流コイル電流電源により可変周波数電磁波発生用電源の中心周波数に対応するECR領域を設定する電流を示す図である。
図5B】本発明の実施例2に係る直流コイル電流電源により可変周波数電磁波発生用電源の中心周波数に対応するECR領域を設定する電流を示す図である。
図6A図5Aで設定された中心周波数のECR領域を中心として可変周波数電磁波発生用電源の周波数を変えることでECR領域をイオン遮蔽板に対して上下させる交流コイル電流電源の電流を示す図である。
図6B図5Bで設定された中心周波数のECR領域を中心として可変周波数電磁波発生用電源の周波数を変えることでECR領域をイオン遮蔽板に対して上下させる交流コイル電流電源の電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本実施例に係るプラズマ処理装置の全体構成の概略を示す縦断面図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、真空容器101の内部に形成された処理室100を有する。真空容器101の上部には、真空容器101内の処理室100にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102と、処理室100の上部を気密に封止するための誘電体窓103とを設置し、処理室100を構成する。
【0014】
シャワープレート102と誘電体窓103との間の領域には、ガス配管を通じガス供給装置107が接続され、プラズマエッチング処理を行うための酸素や塩素などのガスが供給される。また、真空容器101には圧力調整弁117を介し真空排気装置118が接続され、処理室100の圧力を制御している。
【0015】
プラズマを生成するための電力を処理室100に伝送するため、誘電体窓103の上方には電磁波を放射する導波管108(またはアンテナ)が設けられる。導波管108(またはアンテナ)には電磁波発生用電源(高周波電源とも言う)110から発振させた電磁波が電磁波整合器111を通して伝送される。電磁波発生用電源110から出力される高周波電流の周波数は、この実施例1では、一定の周波数とされている。導波管108から伝播してきた電磁波によって処理室100内に特定のモードの定在波を形成させるために空洞共振器109が配置されている。電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波とした。処理室100の外周部には、磁場発生コイル112(112a、112bおよび112c)が設けてあり、その電流を制御するため磁場発生コイル112aおよび112bには直流コイル電流電源113(113aおよび113b)が接続され、磁場発生コイル112cには交流コイル電流電源114が接続されている。磁場発生コイル112aおよび112bは直流コイル電流電源113から出力される直流電流により駆動され、磁場発生コイル112cは交流コイル電流電源114から出力される交流電流により駆動される。磁場発生コイル112、直流コイル電流電源113および交流コイル電流電源114は、磁場形成機構ということができる。磁場発生コイル112aおよび112bは第1コイルと、磁場発生コイル112cは第2コイルと、言うことができる。
【0016】
電磁波発生用電源110より発振された電力は、磁場発生コイル112により形成された磁場との電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)により、処理室100内にプラズマを生成する。
【0017】
またシャワープレート102に対向した処理室100下部には試料としての半導体処理基板(半導体基板とも言う)116の載置台(試料台とも言う)をかねる電極基板115が設置されている。電極基板115には高周波整合器119を介して、高周波電源120が接続される。電極基板115に接続された高周波電源120から高周波電力を供給することにより、一般的にセルフバイアスとよばれる負の電圧が電極基板115上に発生し、セルフバイアスによってプラズマ中のイオンが加速され半導体処理基板116に垂直に入射されることにより、半導体処理基板116がエッチング処理される。
【0018】
処理室100は、シャワープレート102と半導体処理基板116の載置台との間にイオン遮蔽板104を備えており、イオン遮蔽板104は処理室100の内部空間を上下の領域に分割している。ここで、この明細書では、イオン遮蔽板104より上の領域を第1領域またはラジカル領域105と呼び、イオン遮蔽板104より下の領域を第2領域またはRIE(Reancive Ion Etching)領域106と呼ぶことする。磁場発生コイル112aおよび112bはイオン遮蔽板104よりも上側に配置されている。磁場発生コイル112cは、磁場発生コイル112aおよび112bの下側に配置され、かつ、イオン遮蔽板104の近傍に配置されている。
【0019】
2.45GHzの電磁波とECRを起こしてプラズマを生成するには、0.0875T(テスラ)の磁束密度の磁場が必要である。処理室100内の磁束密度が0.0875Tとなっている領域をECR領域の位置ということとする。その強い磁場を発生させるため、磁場発生コイル112は100~1000mHの自己インダクタンスを持ったものが使われ、直流コイル電流電源113および交流コイル電流電源114は10~60A程度の電流を供給できるようになっている。複数の直流コイル電流電源113および交流コイル電流電源114からそれぞれに接続された磁場発生コイル112へ供給する電流値を制御することによって、処理室100内のECR領域の位置を精密に制御し、半導体処理基板116に対するプラズマ生成位置を移動させる事ができる。また磁場発生コイル112aおよび112bはイオン遮蔽板104よりも上側に位置するため、これらコイル112aおよび112bによって作られる磁場強度は、コイル112aおよび112bに近いラジカル領域105の方がRIE領域106よりも強くなる様にしている。これは、プラズマが生成されているECR領域まで電磁波を伝搬させたい場合、電磁波の入射方向からECR領域に向かって磁場が弱くなる様に設定した方が良いためである。ECR領域からみて導波管108の方向、つまりRIE領域106から見てラジカル領域105の方向に磁場が強くなる様にするためである。
【0020】
前述のように、処理室100は、シャワープレート102と半導体処理基板116の載置台との間にイオン遮蔽板104を備えており、イオン遮蔽板104より上のラジカル領域105とイオン遮蔽板104より下の反応性イオンエッチング(RIE:Reancive Ion Etching)領域106の2つの領域に分かれている。
【0021】
ラジカル領域105内にECR領域の位置を設定してプラズマを生成した場合、半導体処理基板116とプラズマとの間にイオン遮蔽板104があるため、イオン遮蔽板104の効果により、半導体処理基板116にはプラズマからのイオンは到達せずラジカルのみが供給され、半導体処理基板116はラジカルエッチング(等方性エッチング)によりプラズマ処理される。
【0022】
RIE領域106内にECR領域の位置を設定してプラズマを生成した場合、プラズマと半導体処理基板116との間に遮るものはないため、プラズマからのイオンとラジカルの両方が半導体処理基板116に供給され、半導体処理基板116はRIE(異方性エッチング)によりプラズマ処理される。
【0023】
ガス供給装置107、圧力制御弁117、電磁波発生用電源110、直流コイル電流電源113、交流コイル電流電源114および高周波電源120には制御装置130が接続されており、プラズマ処理装置10をプロセス条件にあわせて制御している。複数のプラズマ処理ステップからなるプロセス条件の場合、各処理ステップにあわせて順に各装置パラメータを制御装置130が制御することで半導体処理基板116のエッチング処理を行う。
【0024】
本発明はイオン遮蔽板104の上にECR領域の位置を持ってきた場合はラジカルのみが半導体処理基板116に供給され、イオン遮蔽板104の下にECR領域の位置を持ってきた場合はラジカルとイオンがとも半導体処理基板116に供給されることを利用し、ECR領域の位置をこの2つの領域間で周期的に設定することで、イオンとラジカルの密度比を制御した反応性イオンエッチングを行う。通常のRIEでは、100%の時間をRIE領域106でプラズマを生成している。それに対し、RIE領域106でのプラズマ生成に加え、ラジカル領域105でのプラズマ生成を行う事で、イオンとラジカルがともに供給されている時間に加えてラジカルのみが供給されている時間を作ることが出来る。周期的にRIE領域106とラジカル領域105とでプラズマを生成する領域を切り替えることで、全体としてはイオン密度を下げ、ラジカル密度比を上げたRIEを行うことが出来る。また、RIE領域106でプラズマを生成している時間のみイオンが供給されるため、半導体処理基板116に供給されるイオン量はECR領域の位置を周期的に切り替えている1周期のうちRIE領域106に設定している時間の割合に比例することになる。ECR領域の位置をRIE領域106に設定している時間を増加させるとイオンの比率が上昇し、ECR領域の位置をラジカル領域105に設定している時間を増加させるとラジカルの比率が上昇するため、1周期のうちのRIE領域106にECR領域の位置を設定している時間とラジカル領域105にECR領域の位置を設定している時間との比率によってイオンとラジカルの密度の比を変えることが出来る。
【0025】
周期的なECR領域の位置制御およびラジカル領域105とRIE領域106とにECR領域の位置を設定している時間の比を変化させるには、直流コイル電流電源(直流電源とも言う)113から出力される直流電流によって、ECR領域の中心となる位置を設定し、交流コイル電流電源(交流電源とも言う)114から出力される交流電流によってECR領域の位置を上下させる事により行う。
【0026】
図2A図2Bに直流コイル電流電源113によりECR領域の位置を設定する例を示す。なお、ここで、ECR領域の位置は、ECR領域の中心となる位置と見なすことも可能である。磁場発生コイル112aおよび112bによって作られる磁場はラジカル領域105からRIE領域106に向かって弱くなり、またECR領域の磁場強度よりも強い磁場を真空容器101(または、処理室100)の上部に作るため、電流が大きいほどECR領域は真空容器101(または、処理室100)の下方に移動する。そのため図2Aのように、直流コイル電流電源113aおよび113bの電流が小さい場合(IaL、IbL)に作られるECR領域の位置200はイオン遮蔽板104より上のラジカル領域105にある。一方、図2Bのように、直流コイル電流電源113aおよび113bの電流が大きい場合(IaH>IaL、IbH>IbL)に作られるECR領域の位置200はイオン遮蔽板104より下のRIE領域106にある。
【0027】
図1のプラズマ処理装置10では、直流コイル電流電源113と交流コイル電流電源114の2種類のコイル電流電源に対して、最もイオン遮蔽板104に近い磁場発生コイル112cのみ交流コイル電流電源114と接続し、磁場発生コイル112cよりもイオン遮蔽板104から遠い磁場発生コイル112aおよび112bを直流コイル電流電源113と接続している。これは、コイルによって発生する磁場はそのコイルに近いほどその強くなるためイオン遮蔽板104付近の磁場強度には最も近い磁場発生コイル112cの電流の効果が大きい。そのためイオン遮蔽板104に対してECR領域を上下させたい場合、イオン遮蔽板104付近の磁場強度を変化させる必要があるため、もっとも近い磁場発生コイル112cの電流を変化させれば良い。
【0028】
図3A図3Bに磁場発生コイル112aおよび112bで初期設定したECR領域の位置200に対して磁場発生コイル112cの交流電流によってECR領域を上下させた例を示す。ECR領域の位置200の上限Uと下限Lおよびイオン遮蔽板104の位置とそれら位置に対応する各電流値(IU、IL、IP)とを示す。交流コイル電流電源114によって磁場発生コイル112cに流れる交流電流Icacが正の時にECR領域の位置は真空容器101(または、処理室100)の下方に移動し、負の時に真空容器101(または、処理室100)の上方に移動する。図3Aの直流コイル電流電源113によってECR領域の位置200がラジカル領域105に初期設定されている場合は、ECR領域の位置がラジカル領域105にある時間がRIE領域106にある時間より長くなる。図3Bの直流コイル電流電源113によってECR領域の位置200がRIE領域106に初期設定されている場合はRIE領域106にある時間がラジカル領域105にある時間より長くなる。また磁場発生コイル112cに流れる電流Icacが交流であることにより、ECR領域の位置が周期的にラジカル領域105とRIE領域106とを移動する。つまり、制御装置130は、マイクロ波と磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴(ECR)の領域の位置200を周期的に変化させるように直流コイル電流電源113、交流コイル電流電源114を制御する。これにより、一周期の間、電子サイクロトロン共鳴(ECR)の領域の位置200は、遮蔽板104の上方から遮蔽板104の下方または遮蔽板104の下方から遮蔽板104の上方へ移動する。
【0029】
つぎに、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法について説明する。
【0030】
ステップ1)半導体基板の表面にGAA構造を形成するため、試料としての半導体基板116を処理室100内の載置台115に載置する工程を実施する。
【0031】
ステップ2)圧力調整弁117および真空排気装置118により、処理室100の圧力を制御する工程を実施する。
【0032】
ステップ3)処理室100のシャワープレート102と誘電体窓103との間の領域に、プラズマエッチング処理を行うための酸素や塩素などのエッチングガスを、ガス供給装置107から供給する工程を実施する。
【0033】
ステップ4)電磁波発生用電源110、直流コイル電流電源113、交流コイル電流電源114を動作させて、処理室100内にプラズマを生成して半導体基板116の表面をプラズマエッチングによりプラズマ処理する工程を実施する。
【0034】
ここで、ステップ4)は、以下の第1状態、第2状態または第3状態を取ることができる。
【0035】
第1状態は、図2Aに示されるように、ECR領域の位置をイオン遮蔽板104に対して上に設定して等方性エッチングを行う状態である。
【0036】
第2状態は、図2Bに示されるように、ECR領域の位置をイオン遮蔽板104に対して下に設定して異方性エッチングを行う状態である。
【0037】
第3状態は、図3Aまたは図3Bに示されるように、ECR領域の位置をイオン遮蔽板104に対して周期的に上下させて、イオンとラジカルの密度の比を制御して、高精度な異方性エッチングを行う状態である。
【0038】
実施例1によれば、以下の1または複数の効果を得ることができる。
【0039】
1)一台のプラズマ処理装置10で、イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工とラジカルのみを供給する等方性エッチング加工の両方を実現できる。
【0040】
2)イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工において、イオンとラジカルの密度の比をより直接的に制御できる技術を提供できる。
【0041】
3)ラジカルとイオンを供給し加工を行う異方性エッチングにおいて、半導体処理基板(ウエハ)の表面に供給されるラジカル密度を高精度に制御できるので、高精度なプラズマエッチング技術が提供できる。
【0042】
本実施例では3つの磁場発生コイル112(112a、112bおよび112c)としたが、この数に限定されるものでは無い。複数の磁場発生コイルがある場合に、イオン遮蔽板104に近いものから順に交流のコイル電流電源を接続し、残りの磁場発生コイルには直流のコイル電流電源を接続すればよい。
【0043】
一般に、プラズマ処理室内の磁場を高周波の電源を用いて変えた場合、プラズマ中に高周波の誘導電流が流れ、その誘導電流によりプラズマの生成が維持された誘導結合プラズマが生成される恐れがある。その場合、ECRによるプラズマの生成とは異なるプラズマが生成されるため、ECR領域位置の制御を通じたプラズマ生成位置の制御は出来なくなる。そのため、交流コイル電流電源の周波数は誘導結合プラズマが生成しない様、1kHz以下の周波数を用いるのが良い。
【0044】
また、図3A図3Bにおいて交流コイル電流電源114の出力は正弦波を図示しているが、正弦波に限定されるものでは無い。正弦波以外にも方形波など周期的に変化する波形を出力できる交流電源であれば良い。
【実施例2】
【0045】
図4は本実施例に係るプラズマ処理装置の全体構成の概略を示す縦断面図である。プラズマ処理装置11は真空容器101の内部に形成された処理室100を有する。真空容器101の上部に、真空容器101内にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102、処理室100上部を気密に封止するための誘電体窓103を設置し、処理室100を構成する。
【0046】
シャワープレート102にはガス配管を通じガス供給装置107が接続されプラズマエッチング処理を行うための酸素や塩素などのガスが供給される。また、真空容器101には圧力調整弁117を介し真空排気装置118が接続され、処理室100の圧力を制御している。処理室100には、実施例1と同様に、イオン遮蔽板104が設けられている。
【0047】
プラズマを生成するための電力を処理室100に伝送するため、誘電体窓103の上方には電磁波を放射する導波管108(またはアンテナ)が設けられる。導波管108(またはアンテナ)には可変周波数電磁波発生用電源(可変周波数高周波電源とも言う)301から発振させた電磁波が電磁波整合器111を通して伝送される。導波管108から伝播してきた電磁波によって処理室100内に特定のモードの定在波を形成させるために空洞共振器109が配置されている。可変周波数の電磁波の周波数範囲は特に限定されないが、本実施例では1.80GHzから2.45GHzのマイクロ波とした。処理室100の外周部には、磁場発生コイル112(112a、112bおよび112c)が設けてあり、その電流を制御するため磁場発生コイル112a、112bおよび112cには直流コイル電流電源113(113a、113bおよび113c)がそれぞれ接続されている。磁場発生コイル112および直流コイル電流電源113は、磁場形成機構ということができる。電磁波発生用電源301より発振された電力は、磁場発生コイル112により形成された磁場との電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)により、処理室100内にプラズマを生成する。
【0048】
またシャワープレート102に対向した処理室100下部には半導体処理基板116の載置台(試料台とも言う)をかねる電極基板115が設置されている。電極基板115には高周波整合器119を介して、高周波電源120が接続される。電極基板115に接続された高周波電源120から高周波電力を供給することにより、一般的にセルフバイアスとよばれる負の電圧が電極基板115上に発生し、セルフバイアスによってプラズマ中のイオンが加速され半導体処理基板116に垂直に入射されることにより、半導体処理基板116がエッチング処理される。
【0049】
処理室100は、シャワープレート102と半導体処理基板116の載置台との間にイオン遮蔽板104を備えており、処理室100の空間を上下の領域に分割している。ここで、この明細書では、イオン遮蔽板104より上の領域を第1領域またはラジカル領域105と呼び、イオン遮蔽板104より下の領域を第2領域またはRIE(Reancive Ion Etching)領域106と呼ぶことする。
【0050】
1.80GHzから2.45GHzの電磁波とECRを起こしてプラズマを生成するには、0.0643Tから0.0875Tの磁場が必要である。処理室100内の各周波数に対応した共鳴を起こす磁場強度になっている領域をECR領域とする。その強い磁場を発生させるため、磁場発生コイル112は100~1000mHの自己インダクタンスを持ったものが使われ、直流コイル電流電源113(113a、113bおよび113c)は10~60A程度の電流を供給できるようになっている。複数の直流コイル電流制御電源113からそれぞれに接続された磁場発生コイル112へ供給する電流値を制御することによって、処理室100内のECR領域の位置を精密に制御し、半導体処理基板116に対するプラズマ生成位置を移動させる事ができる。また磁場発生コイル112aおよび112bはイオン遮蔽板104よりも上に位置するため、これらコイル112aおよび112bによって作られる磁場強度は、コイル112aおよび112bに近いラジカル領域105の方がRIE領域106よりも強くなる様にしている。これは、プラズマが生成されているECR領域まで電磁波を伝搬させたい場合、電磁波の入射方向からECR領域に向かって磁場が弱くなる様に設定した方が良いためである。ECR領域からみて導波管108の方向、つまりRIE領域106から見てラジカル領域105の方向に磁場が強くなる様にするためである。
【0051】
先に述べたように、処理室100は、シャワープレート102と半導体処理基板116との間にイオン遮蔽板104を備えており、イオン遮蔽板104より上のラジカル領域105とイオン遮蔽板104より下の反応性イオンエッチング(RIE:Reancive Ion Etching)領域106の2つに分かれている。ラジカル領域105内にECR領域の位置200を設定してプラズマを生成した場合、半導体処理基板116とプラズマとの間にイオン遮蔽板104があるため、イオン遮蔽板104の効果により半導体処理基板116にはプラズマからのイオンは到達せずラジカルのみが供給され、半導体処理基板116はラジカルエッチングによりプラズマ処理される。RIE領域106内にECR領域の位置200を設定してプラズマを生成した場合、プラズマと半導体処理基板116との間に遮るものはないためプラズマからのイオンとラジカルの両方がともに半導体処理基板116に供給され、半導体処理基板116はRIEによりプラズマ処理される。
【0052】
ガス供給装置107、圧力制御弁117、可変周波数電磁波発生用電源301、直流コイル電流電源113および高周波電源120には制御装置130が接続されており、プラズマ処理装置をプロセス条件にあわせて制御している。複数のプラズマ処理ステップからなるプロセス条件の場合、各処理ステップにあわせて順に各装置パラメータを制御装置130が制御することで半導体処理基板116のエッチング処理を行う。
【0053】
本発明はイオン遮蔽板104の上にECR領域の位置を持ってきた場合はラジカルのみが半導体処理基板116に供給され、イオン遮蔽板104の下にECR領域の位置を持ってきた場合はラジカルとイオンの両方がともに半導体処理基板116に供給されることを利用し、ECR領域の位置をこの2つの領域(105、106)間で周期的に設定することで、イオンとラジカルの密度比を制御した反応性イオンエッチングを行う。通常のRIEでは、100%の時間をRIE領域106でプラズマを生成している。それに対し、RIE領域106でのプラズマ生成に加え、ラジカル領域105でのプラズマ生成を行う事で、イオンとラジカルがともに半導体処理基板116に供給されている時間に加えてラジカルのみが半導体処理基板116に供給されている時間を作ることが出来る。周期的にRIE領域106とラジカル領域105とでプラズマを生成する領域を切り替えることで、全体としてはイオン密度を下げ、ラジカル密度比を上げたRIEを行うことが出来る。また、RIE領域106でプラズマを生成している時間のみイオンが半導体処理基板116に供給されるため、半導体処理基板116に供給されるイオン量はECR領域の位置を周期的に切り替えている1周期のうちRIE領域106に設定している時間の割合に比例することになる。ECR領域の位置をRIE領域106に設定している時間を増加させるとイオンの比率が上昇し、ECR領域の位置をラジカル領域105に設定している時間を増加させるとラジカルの比率が上昇するため、1周期のうちのRIE領域106にECR領域の位置を設定している時間とラジカル領域にECR領域の位置を設定している時間との比率によってイオンとラジカルの密度の比を変えることが出来る。
【0054】
周期的なECR領域の位置の制御およびラジカル領域105とRIE領域106とにECR領域の位置を設定している時間の比を変化させるには、直流コイル電流電源113から出力される電流によって、可変周波数電磁波発生用電源301の周波数範囲の中心の周波数、たとえば1.80GHzから2.45GHzの場合は中心周波数2.13GHzに対応するECR領域の位置を設定し、その磁場に対して可変周波数電源301の出力周波数を変えることによってECR領域の位置を上下させる事により行う。
【0055】
図5A図5Bに直流コイル電流電源113により中心周波数に対応するECR領域の位置200を設定する例を示す。なお、ここで、ECR領域の位置は、ECR領域の中心となる位置と見なすことも可能である。磁場発生コイル112によって作られる磁場はラジカル領域105からRIE領域106に向かって弱くなり、またECR領域の磁場強度よりも強い磁場を真空容器101の上部に作るため、電流が大きいほどECR領域は真空容器101の下方に移動する。そのため図5Aの直流コイル電流電源113a、113bおよび113cの各電流が小さい場合(IaL、IbL、IcL)に作られるECR領域の位置200はイオン遮蔽板104より上のラジカル領域105にあり、図5Bの直流コイル電流電源113a、113bおよび113cの電流が大きい場合(IaH>IaL、IbH>IbL、IcH>IcL)に作られるECR領域の位置200はイオン遮蔽板104より下のRIE領域106にある。
【0056】
図6A図6Bに磁場発生コイル112で設定した中心周波数のECR領域の位置200に対して可変周波数電磁波発生電源301の周波数によってECR領域の位置を上下させた例を示す。図6Aには、ECR領域の位置200の上限Uと下限Lおよびイオン遮蔽板104の位置とそれに対応する各周波数(fU、fL、fP)とを示す。周波数が中心周波数fcよりも低い場合に共鳴に必要な磁場強度も弱くなるため、周波数が低くなった場合にECR領域の位置は真空容器101の下方に移動し、中心周波数よりも高くなった場合に上方に移動する。図6Aに示すように直流コイル電流電源113によって中心周波数fcに対応するECR領域の位置200がラジカル領域105に設定されている場合は、ECR領域の位置がラジカル領域105にある時間がRIE領域106にある時間より長くなる。図6Bに示すように直流コイル電流電源113によって中心周波数fcに対応するECR領域の位置がRIE領域106に設定されている場合はRIE領域106にある時間がラジカル領域105にある時間より長くなる。可変周波数電磁波発生電源301の周波数を周期的に変化させることで、磁場強度は変化せずに周期的にECR領域の位置がラジカル領域105とRIE領域106とを移動する。つまり、制御装置130は、マイクロ波と磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴(ECR)の領域の位置(200)を周期的に変化させるように高周波電源301を制御する。これにより、一周期の間、電子サイクロトロン共鳴(ECR)の領域の位置200は、遮蔽板104の上方から遮蔽板104の下方または遮蔽板104の下方から遮蔽板104の上方へ移動する。
【0057】
つぎに、プラズマ処理装置11を用いたプラズマ処理方法について説明する。
【0058】
ステップ1)半導体基板の表面にGAA構造を形成するため、試料としての半導体基板116を処理室100内の載置台115に載置する工程を実施する。
【0059】
ステップ2)圧力調整弁117および真空排気装置118により、処理室100の圧力を制御する工程を実施する。
【0060】
ステップ3)処理室100のシャワープレート102と誘電体窓103との間の領域に、プラズマエッチング処理を行うための酸素や塩素などのエッチングガスを、ガス供給装置107から供給する工程を実施する。
【0061】
ステップ4)可変周波数電磁波発生電源301、直流コイル電流電源113を動作させて、処理室100内にプラズマを生成して半導体基板116の表面をプラズマエッチングによりプラズマ処理する工程を実施する。ステップ4)では、図5A図5B図6Aおよび図6Bに示されるように、ECR領域の位置をイオン遮蔽板104に対して周期的に上下させて、イオンとラジカルの密度の比を制御して、高精度な異方性エッチングを実施する。
【0062】
実施例2によれば、イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工において、イオンとラジカルとの密度比をより直接的に制御できる技術を提供できる。
【0063】
(変形例)
次に変形例に係るプラズマ処理装置を説明する。
【0064】
1)実施例2のプラズマ処理装置11において、直流コイル電流電源113cを実施例1で説明した交流コイル電流電源114へ変更することができる。この場合、異方性エッチング加工において、イオンとラジカルとの密度比が所望となるように、可変周波数電磁波発生電源301の周波数と交流コイル電流電源114の周波数とを設置する必要がある。
【0065】
2)実施例2のプラズマ処理装置11において、可変周波数電磁波発生電源301と実施例1の電磁波発生用電源110との両方を設けてもよい。等方性エッチングを行う場合、図5Aに示す状態で、電磁波発生用電源110を動作させる。また、異方性エッチングを行う場合、図5Bに示す状態で、電磁波発生用電源110を動作させる。イオンとラジカルとの密度比を高精度に制御した異方性エッチングを行う場合は、図6A図6Bに示すように、可変周波数電磁波発生電源301を動作させる。これにより、一台のプラズマ処理装置で、イオンとラジカルを供給する異方性エッチング加工とラジカルのみを供給する等方性エッチング加工の両方を実現できる。
【0066】
実施例1および実施例2に記載のプラズマ処理装置(10,11)は、以下の様にまとめることができる。
【0067】
1)試料がプラズマ処理される処理室(100)と、
プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源(110,301)と、
磁場を発生させるコイル(112)と、
前記コイルに電流を流す電源(113,114)と、
前記試料が載置される試料台(116)と、
前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板(104)と、
前記マイクロ波と前記磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させるように前記電源を制御する制御装置(130)と、を備え、
一周期の間、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置は、前記遮蔽板の上方から前記遮蔽板の下方または前記遮蔽板の下方から前記遮蔽板の上方へ移動する(図3A図3B図6A図6B)ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【0068】
2)試料がプラズマ処理される処理室(100)と、
プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源(301)と、
磁場を発生させるコイル(112)と、
前記コイルに電流を流す電源(113)と、
前記試料が載置される試料台(116)と、
前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板(104)と、
前記マイクロ波と前記磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させるように前記高周波電源を制御する制御装置(130)と、を備え、
一周期の間、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置は、前記遮蔽板の上方から前記遮蔽板の下方または前記遮蔽板の下方から前記遮蔽板の上方へ移動する(図6A図6B)ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【0069】
3)上記1)に記載のプラズマ処理装置において、
前記電源は、直流電源(113)と交流電源(114)を含むことを特徴とするプラズマ処理装置。
【0070】
4)上記3)3に記載のプラズマ処理装置において、
前記コイル(112)は、前記直流電源(113)に接続された第1のコイル(112a、112b)と前記交流電源(114)に接続された第2のコイル(112c)を含むとともに前記処理室(100)の外側に配置され、
前記第1のコイル(112a、112b)の高さは、前記遮蔽板(104)の上方となる高さであり、
前記第2のコイル(112c)は、前記第1のコイル(112a、112b)より前記遮蔽板(104)の近くに配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【0071】
5)上記4)に記載のプラズマ処理装置において、
前記高周波電源(301)の周波数は、可変であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【0072】
6)上記2)に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置(130)は、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させるように前記高周波電源(301)の周波数を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0073】
7)上記6)に記載のプラズマ処理装置において、
前記電源(113)は、直流電源であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【0074】
8)上記3)に記載のプラズマ処理装置において、
前記コイル(112)は、前記直流電源(113)に接続された第1のコイル(112a、112b)と前記交流電源(114)に接続された第2のコイル(112c)を含むとともに前記処理室(100)の外側に配置され、
前記制御装置(130)は、前記第1のコイル(112a、112b)により形成された磁場と前記マイクロ波との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させるように前記交流電源(114)を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0075】
また、実施例1および実施例2に記載のプラズマ処理方法は、以下の様にまとめることができる。
【0076】
9)試料がプラズマ処理される処理室(100)と、プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源(110,301)と、磁場を発生させるコイル(112)と、前記コイルに電流を流す電源(113,114)と、前記試料が載置される試料台(116)と、前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板(104)と、を備えるプラズマ処理装置(10,11)を用いたプラズマ処理方法において、
前記マイクロ波と前記磁場との相互作用により生じた電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させる工程を有し、
一周期の間、前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)は、前記遮蔽板(104)の上方から前記遮蔽板の下方または前記遮蔽板の下方から前記遮蔽板の上方へ移動する(図3A図3B図6A図6B)ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【0077】
10)上記9に記載のプラズマ処理方法において、
前記コイル(112)に流れる電流を制御することにより前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【0078】
11)上記9)に記載のプラズマ処理方法において、
前記高周波電源(301)の周波数を制御することにより前記電子サイクロトロン共鳴の領域の位置(200)を周期的に変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
10、11:プラズマ処理装置
100:処理室
101:真空容器
102:シャワープレート
103:誘電体窓
104:イオン遮蔽板
105:ラジカル領域
106:RIE領域
107:ガス供給装置
108:導波管
109:空洞共振器
110:電磁波発生用電源
111:電磁波整合器
112:磁場発生コイル
113:直流コイル電流電源
114:交流コイル電流電源
115:電極基板
116:半導体処理基板
117:圧力調節弁
118:真空排気装置
119:高周波整合器
120:高周波電源
200:ECR領域の位置
301:可変周波数電磁波発生用電源
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B